水中に棲む

 唯一のクモであるスキューバーダイビングスパイダーは、疎水性の毛を使って腹部に空気の泡を集めて、呼吸をしている。高級かもしれないその構造をヒントに、小さな木のような構造を持つ銅表面を製作し、それを1-オクタデカンチオールのろう状の層でコートした[1]。これによって先のクモのように、ガスバブルを形成させることができる。これをCO2が飽和になった水溶性の電解液に浸したところ、電極はその表面に、大きな泡としてガスをトラップし、触媒反応が進行した。その結果、従来の銅触媒によるCO2還元では、エチレンやエタノールがそれぞれ9%, 4%だったのが、今回の系では、それぞれ56%, 17%まで向上し、逆に水素の発生量が、71%から10%に低下した。今回の系は、CO2を燃料や化成品に変換するための、選択性制御についての新しい方法を示しており、今後別の金属表面でも同様な修飾ができれば、さらに電気化学的な変換が拡大される可能性がある。スパイダーで失敗だ〜を回避できますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 10.

DOI: 10.1038/s41563-019-0445-x

19.9.15

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鳥羽で

 一晩を過ごした。伊勢湾が一望できる露天風呂、そこは1階、フロントは3階。多彩な食材が食卓を飾った。たくさんの種類のカードゲーム。卓と牌の貸し出し。部屋まで宅配された。14枚で手づくりを始めた。数字を表す3種類の牌の合計108枚、ここも煩悩か。字牌を含めて136枚。一人34枚の牌を二段に積み上げるところから始まる。翌朝、一足先に戻るためにフロントで送迎バスを待つ。数名のメンバーが見送りに来てくれた。夜更かしの様子、朝食のこと、まだまだ暑いこの日、皆さんはどこに行く予定なのかを聞きつつ、暑さ回避なら水族館か、海の生き物も実感できる。フロントには小さな男の子を連れたご家族も来られた。一緒に送迎バスに乗った。先の見送りに来てくれたメンバーが手を振る。男の子の父:旅館の人が手を振ってくれてるよ。男の子:バイバ〜イ。父:???旅館の人じゃないかもね。地元の大学生が夏休みで、アルバイトで来ているのかなあ???」言葉を抑える中、鳥羽駅に到着した。

19.9.14

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単一のモノマーを

 ポリマーの望みのところに組み込む新しい方法が報告された[1]。研究者らは、開環メタセシス重合反応で、シクロプロペンエステルを、ノルボルネンが重合する複数の箇所に組込んでいる。例えば100ユニットのポリマーで30%の長さを別のモノマーで置き換えた分子を合成するとしたら、30ユニットのポリマーを合成し、ついでシクロプロペンモノマーを加える。ついでノルボルネン重合で残りの70ユニットを組込む。完成するとニヤッとできる。ここで鍵となるのは、シクロプロペンモノマーを加えた後に、ノルボルネン重合を再開する部分である。重合に使うRu触媒へのシクロプロペンの配位が課題であるため、-30 °Cまで反応温度を下げて3-ブロモピリジンを加えた。これが触媒に弱く配位して重合が継続する。この系では、たった一つのシクロプロペンを入れ込むことも可能であった。今後さらに他のタイプのシクロプロペン誘導体も探索し、単一モノマー挿入の必要条件を明らかにしたいとしている。そのモノマー、もポリマーに飲ま〜れるのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 9.

DOI: 10.1016/j.chempr.2019.07.017

19.9.13

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水素化ナトリウムは

 分子から脱プロトン化するのにしばしば使われる[1]。ただし脂溶性の有機分子と溶液中で混ぜるためには、DMSO、DMFやジメチルアセトアミド(DMAc)のような非プロトン性溶媒を使わなくてはいけない。50年以上の前の報告では、これらの溶媒中でNaHは、爆発しうることを示していた。にも関わらず毎年、この組合せを使った反応例が報告されている。2014から2018年の間、OLでは38-62、JOCでは28-46さらにJMCでは67-94の論文にその組合せが記載されている。研究者らの調査では、塩基と溶媒の間でラジカル反応が起こり、DMSOではMeSMeやエチレンの発生の可能性が明らかになった。そのため安全上の危険をもっと認識すべきであること、代替の溶媒としてTHF、また塩基としてはヒドロキシ基かアルコシキドも、あることで敷居も高くない。ただしそれらを使う場合でも溶媒中での安定性について注意を払うべきである。今後はこれらを大学院教育に含めるようにしたいとのことである。NaH塩基、使用の延期を。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 8.

DOI: 10.1021/acs.oprd.9b00276

19.9.12

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炭素同素体の一つ

 フラーレンが発見されて同定された頃、計算化学は、より小さな炭素分子が環状化合物(シクロ[n]カーボン)として存在することを示していた。が感情的にはならず、実際の分子の合成、単離、同定が行われない限り、類推の域であると言われていた。その中今回、シクロ[18]カーボンが合成されて、特徴が明らかにされた。合成は、原子レベルの技術と、同素体がつくられた1980年代に最初に使われた前駆体分子との組合せである。2016年IBMの研究者らが、走査型トンネル顕微鏡の針先から出る電圧パルスを使って、分子中の結合を一つずつ切断し、ついで原子間顕微鏡で、何が導かれたかを検証するする方法を示していた。それを見ていた今回の研究者とIBMとのコラボで、多環の前駆体から一酸化炭素を取り出す方法を使い、シクロ[18]カーボンが導かれた[1]。分子は9回対称性を持ち、二重結合が連結するよりもむしろ、三重結合と単結合が交互に繋がっていることも決定された。「想像たい」だった同素体の一つが仕上がった。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 6.

DOI: 10.1126/science.aay1914

19.9.11

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工業的に

 貴金属触媒を利用するためには、できる限りそれらを担持材料に分散させることが行われている。粒子が小さくなればなるほど、より多くの原子が表面に出てきて、活性は向上するものの、前口上はともかく、それらは不安定になりがちである。反応条件で、近くの粒子と融合してしまい、本来ならば活性部位で、反応効率を最大化し、コストを押させるべき部分が阻害される。原子や粒子を保持する方法の一つは、担持体の上に、ほんのわずかなそれらを置くことであるが、それでは不活性な触媒になってしまう。その中研究者らは、単一金属を含む触媒的イリジウム種を高い濃度で担持できる、製造が簡単で安価なグラフェンエアロゲルを報告した[1]。以前別のグループが金属酸化物担持を行なったが、濃度がわずかに上がると、単一原子触媒が壊れていた。それに対してここでは、重量比でおよそ15%のIrを担持させて活性化させた。スペクトル的にそれらが離れていて、触媒的に活性であることもわかった。活性な触媒をどこかに、おかっせいて欲しいかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 10.

DOI: 10.1021/ acscatal.9b02231

19.9.10

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遷移金属で考えられていた

 結合様式がBa, Ca, Srでも形成できること、すなわちこれらの元素が4ケルビンで八つの一酸化炭素と18電子錯体を形成することが昨年報告された[1]。ただしこの予想外の結果に懐疑論が持ち上がり、会議も開催されたかもしれない。例えば八つのカルボニルが配位した錯体の形成は間違いないけど、金属とCO のこれまでの科学を無視していると指摘を受けた[2]。すなわち先の分析は、金属とオクタカルボニルが中性成分であるとして結合様式の分析が行われている。懐疑的なグループは、それらの部位が電荷を帯びていて、錯体の電荷密度分布が反映されており、遷移金属に特徴的な結合様式は観測されなかったとしている。これに対して最初の著者らは、Caと(CO)8が中性であるという想定は、結合をつくる前の状態に適応していて、遷移金属に見られるような結合、d軌道が関与したそれらが観測されていることを改めて確認したとしている[3]。いずれにしてもこれらのエキゾチックな分子は境界領域に属するもので、軌道や結合様式についてより幅広い問題を議論する機会にもなる。結合様式の常識が変更されるかもしれません。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aau0839

[2] DOI:10.1126/science.aay2355

[3] DOI: 10.1126/science.aay5021

19.9.9

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触媒的非ラセミ化反応は

 ラセミ体混合物を単一の鏡像異性体に変換する反応であるが、系のエントロピーが減少するために、熱力学的には辛い仕事になる。加えてそれぞれの中間体が行ったり来たりで、指摘を受けなくても、微視的可逆性に従う。その中研究者らは、ラセミ体に衝撃を与え、キラル触媒を使いそれぞれの中間体が片側に変換されるように仕向けた[1]。すなわち環状の尿素のラセミ体混合物を使い、R体のみを与えるようにした。青色光でIr触媒を活性化し、尿素が持つ窒素原子より、電子を取り出し、R体とS体のラジカルカチオンを発生させた。ついでキラルなリン酸塩基がC-H結合からプロトンを引き抜き、アキラルな炭素ラジカルが発生。ただしリン酸塩のキラリティーは、Sラジカルカチオンの反応性を向上させている。より遅いR体中間体は脱プロトン化を受けず、出発化合物のR体に戻った。最後に系中に加えたチオールを含むキラルペプチドが、アキラル炭素ラジカルの一方の面から水素を渡し、R体を与えた。ほとんど定量的な収率、94:6の鏡像体比だった。非ラセミ化、夏の終わりに、セミか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 9.

DOI: 10.26434/chemrxiv.8206634.v1

19.9.8

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淀屋橋から

 京阪特急。京都三条まで覚えのある行程。Webサイトを見ると「プレミアムカー」なるものがあった。ミレニアムの頃に出来たのか。いや平成になった頃かららしい。その間気づかずに利用していたようである。ネット予約もできる座席指定券500円。それぞれの座席にはコンセント、こうせんと使えないなどということはない。プラグを差し込むだけで良い。車内ではWiFiも使えて、静かな50分間がプレゼントされる。時々乗務員の方が、冊子はいかがでしょうかと、車内を回る。希望することを察してはそれを渡す。この京阪電車、昔は、エコーの効いたええ声のアナウンスで駅の名前を告げていたが、今回はエコーが抑制的だった。小学生の頃は、終点京都三条まで地上だった。七条を過ぎた辺りから、左手に鴨川を見て、ゆっくりと走っていたような、それで「京都に来たんだ」と感じた覚えもある。今では地下を走り、出町柳まで延伸されて、おいでまちや になった。

19.9.7

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胃腸の中の

 ある種の大腸菌は、コリバクチンと呼ばれる一連の代謝物を製造する。これが人の結腸ガンのリスクと関連している。コリバクチンは10年以上前に発見されたものの単離には至っていない[1]。以前に二つのグループがコリバクチン-DNA付加物を報告していた[2]が、全体の構造は解明されていなかった。今回それらのうちの一つのチームが、分子とDNAが交差連結したコリバクチン代謝物の構造を明らかにした[3]。また構造決定の段階で、合成法も開発し、その分子のさらなる研究を可能にしている。研究者らは構造解明のために、DNA中の二つのアデニンとの交差連結した付加物として分子を捕まえて、質量分析、同位体標識、化学合成を組み合わせて構造を決定した。コリバクチンは、二つの求電子的スピロシクロプロピルジヒドロ-2-ピロンと容易に加水分解されるジカルボニルを含む。その中のシクロプロパン環が開くことでDNAを惹きつける。合成は、ジアミンを二つのβ-ケトチオエステルでアシル化し、二重シクロ脱水化を経ている。今回の結果を受けて、さらにバクテリアの病原性、片利共生やガンでの役割に関する研究を推進することができる。コリバクチン、こりばきちんと解明されますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 8.

[2] (DOI: 10.1021/acs.biochem.8b01023, DOI: 10.1126/science.aar7785

[3] DOI: 10.1126/science.aax2685

19.8.6

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«内科的腫瘍学では