分子モーターである
シクロビス(パラクアト-p-フェニレン)環は、環状のトラックを酸化還元反応によって動き回る[1]。酸化状態では、環は反対側に位置する正に帯電したビオロゲンのペアよりも離れたところにとどまる。そこに6電子加えると、環やビオロゲンの正電荷が還元されて両側に不対ラジカルが発生する。これがトラックを90 °動かしラジカルペアの相互作用が生じる。電圧を逆にして6電子除去し正電荷を復活させると環は、トラックの反対側に回転する。ここで環は嵩高いイソプロピルフェニレン基と電荷を有する2,6-ジメチルピリジニウム基を有するため、環は時計回りの方向に回転する。研究者らはこれを、電気化学セルで-0.5 Vから+0.7 Vの間でも実現した。環の一方に電極を固定し、振動電圧を印加すると環状のトラックそのものが回転し、この動きによって表面の溶媒が流された。なおこの系は電気を使ったモーターの最初ではない。走査型トンネル顕微鏡のチップから電流を単分子モーターの表面に与えて動かす系も報告されている。別の研究者らはDNA折り紙と呼ばれる技術を使って、電気で駆動するモーターとして作用する、より大きな構造も構築している[2]。
分子モーターも〜、たくさんになってきた。
[1] Chemical & Engineering News 2023 January 23, p. 6.
DOI: 10.1038/s41586-022-05421-6
[2] DOI: 10.1038/s41586-022-04910-y
23.2.4
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