木質繊維の間に

 ソフトなポリマーを挟み、超強なよろいがつくられた。これはとてつもない衝撃を受けても曲がらず、柔らかくて粉砕されることもない[1]。よろいは現在利用されている合成の衝撃抵抗材料よりもかなり軽量である。この木質よろいはアマゾン川入り江に棲む魚であるピラルクーから研究者らがヒントを得た。ピラルクーの硬い外側の肌は、ピラニアの長くて槍のような歯に対しても防衛力を持つ。この強さは、堅い鉱化した外側と、柔らかいもののあまりアラインされていない強いコラーゲン繊維でできた内側との組合せによってもたらされている。そこで研究者らは、本木の細胞壁に豊富に存在して再生可能な物質であるリグノセルロースと、交差連結したシロキサンポリマーとを交互に積み重ねたシートをつくった。それぞれのリグノセルロース層の繊維は、上下の層のそれらと少し違った向きを向いており、これがピラクルーで見られた配列と同じだった。弾道テストでは、9 mmリボルバーからの銃弾は、よろいに小さなへこみを残しただけだった。

 ピラルクー見て、ミラクルな材料ができました。

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 13, p. 7.

DOI: 10.1021/acsnano.1c10725

22.6.29

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敗血症によって

 2020年世界でおよそ一千百万人の人が亡くなった。ただこの敗血症、分子レベルで診断できる方法がない。その中研究者らは、可能性のある分子バイオマーカーとして、ぶらぶらしているかタンパク質や脂質に結合しているグリカンが集まったグライコームに注目した[1]。グライコームは、免疫や炎症で重要な役割を果たす。グリカンはすでにある種のガンの診断に利用されているものの、その可能性を完全には利用できておらず、グライコームに影響する、あるいは依存する生化学の理解は新しい医療を導く可能性がある。そこで研究者らは病原性のバクテリアの四つの株のうち一つを感染させてネズミに敗血症を引き起こさせた。ついでネズミから血液を集めて、その中のグリカンを同定した。その結果、バクテリアの全ての株でグライコームの重大な変化を観測した。O-グリカンのレベルは、MRSAに感染したネズミでは、感染していないネズミの5倍だった。バクテリアの別の株で引き起こされた敗血症では、O-グリカンのレベルは、感染していない場合の2から4倍だった。今回の結果は、敗血症では何が起きているのかを明らかにする良い出発点である。

敗血症罹患の解決にグリカンが使えますように。

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 13, p. 7.

DOI: 10.1021/acsinfecdis.2c00082

22.6.28

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恐竜は

 冷血の爬虫類であると考えられてきた。それに対して、化石の中の代謝マーカーを探してこの謎に研究者らは挑戦した[1]。エネルギーと身体に熱をもたらす酸化反応は、活性酸素種を発生させる。この代謝副生成物が、ある種の化学反応を引き起こし交差連結した分子、チオエーテルやN-、S-複素環のような化合物を導き、それらは骨を含む組織に沈殿する。研究者らはFT-IRとラマンスペクトルを使い、今を生きるイグアナ、ピューマを含む動物や、有袋類やクジラ族を含む絶滅した動物の骨で分子を探索した。絶滅した動物に近い生きた類縁動物の代謝速度を、化石の代謝速度の代わりに使った。研究者らは、2億5千万年前の生き物の歯、骨、卵殻のような数十の化石を調べて幅広い代謝速度を明らかにすることができた。その中で、長い首を持つ不格好な恐竜であるディプロウダカスの代謝速度が、研究をした絶滅動物の中で最も大きかったが、このことは温結だったことを支持していた。一方で肉食動物の中で、ティラノサウルス・レックスの代謝速度が最も遅く、そのライフスタイルは活性な捕食動物よりもゆっくりであった可能性を示している。またステゴザウルスやトリケラトプスを含むいくつかの草食動物の代謝速度も遅く、トカゲやヘビと同様に冷血であることもわかった。今後さらに多くのサンプルを検証し、季節ごとの変化など古代の代謝を明らかにしたいとしている。

 恐竜、郷里にもいますか?

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 13, p. 5.

DOI: 10.1038/s41586-022-04770-6

22.6.27

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我が国の人口の

 三分の一近くは65歳以上である[1]。また人口一人当たりの100歳以上の人の数は他のどこの国よりも多く、65歳以上の人のうち5人に一人は一人暮らしである。認知症で苦しむ人口も世界でもっとも多い。一方で人口減少が進む中、日本政府は支給すべき年金の不足、いかにして長寿の市民の面倒をみるかという問題に直面している。高齢化した政治家が政府に影響力を持ち、日本のメディアは、歳を重ねてから入居する施設に関するバラ色の物語を喧伝している。それに対して映画「PLAN 75」の監督である早川千絵にとって、高齢者は役所が担当する枠外である世界を想像することは難しくはなかった、と言う。実際すでに彼女が思うことは日本ですでに起きている。日本では安楽死は違法である。にもかかわらず時に身の毛もよだつような犯罪として実行される。2016年障害を持つ人16人が就寝中殺された。犯人は「彼らは家で暮らすことも難しく、社会活動もできないので、安楽死すべきである」と主張した。この事件が、早川監督に映画のアイデアをもたらした。これは孤立した事件ではなくて、この国のどこでも起こり得る事件で、日本はかなり不寛容な社会に移行していると監督は感じた。

 75歳になった時のプラン、空欄である。

[1] New York Times 2022.6.17 「A Filmmaker Imagines a Japan Where the Elderly Volunteer to Die」から

22.6.26

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レオロジーの道具を使って

 クッキーの中の美味しいクリームの流体力学を明らかにすることにMITの学生が挑戦した[1]。彼女は小さい頃、オレオ・クッキーを食べる時、それを捻って別々にして食べるのが好きだった。それに対して最近彼女は、オレオは研究室のレオメーターがどのように働くかを学生に伝えるのに最適のモデルであることに気がついた。二つの平行にあるプレートの間に流体を入れて、これを逆向きに回転させるとサンプルの粘度を測定することができる。彼女は普段、3Dプリントのインクの特性を明らかにするためにそれを使っていたが、クッキーのクリームを研究する理想的な方法でもある。クリームの破壊力学試験を行い、回転速度、クリームの量、香り成分、応力歪みのかかるカーブの部分の変数の影響を見積もった。定量的な測定の結果は以前の定性的な結果と同様だった。クリームはウエハースの同じ片側だけにほとんどの場合付着していた。このことから彼女は3D-プリントしたオレオメーターを設計した。それはゴムバンドと硬貨で作動するデバイスで、研究室の装置が10万ドル必要とするのに対して、これは6ドルで完成する。オレオロジー[2]の新しい分野の実験を家で行うことができる。

 オレオロジー、俺も個人〜 でできるかなあ。

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 6, p. 32.

DOI: 10.1063/5.0085362

[2] オレオロジー(oreology)は、オレオ・クッキーとレオロジー(rheology)に由来する用語

22.6.25

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半導体ナノファイバーや

 ナノ粒子から3D電子材料をつくるために研究者らはナノファイバーを3D印刷し、それらをドープすることによって材料の電子特性を調整する。ただしこの方法では、伝導度をある程度向上させるにとどまってしまう。それに対して今回、木材パルプから抽出されたセルロースナノファイバーの分散系を凍結乾燥し、かなり多孔質の紙が作り出された[1]。次いでこのセルロースナノファイバーをヨウ素の蒸気で処理し、それを長い時間をかけて、ゆっくりと段階的に加熱した。熱処理された紙は、半導体のように作用し、その伝導度は、最後の加熱処理の際の温度に依存して変化していた。さらに研究者らは3D折り紙や切り紙を作成し、材料が多くの用途を持つことも示した。その一つの例として、グルコースを動力源とした燃料電池を製作し、小さなランプの光を灯した。これまでセルロースナノファイバー紙は2D電子デバイスに注目されていたのに対して今回の研究は、微視的にも巨視的にも独自な3D構造であるため様々な可能性を提案している。

折り紙つき折り紙、神業です。

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 6, p. 9.

22.6.24

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アジピン酸

 工業的にも広く利用されている商品を、出発化合物に選んだ。そこからPd触媒さらに特別に設計したキノリン–ピリドン配位子を使って、医薬品のモチーフの一つである一連のブチロラクトンを導く方法が開発された[1]。この反応の困難な部分は、アジピン酸のγC–Hを活性化する段階である。その部位の横にはβC–Hが存在する、配位子の設計を最適化することによって、βよりもγを指向することができた。これは、Pdと配位子からの二つの環からなる安定なラセン状の中間体を発生させたことが鍵である。中間体が二つの六員環を形成するとγC–Hは分子の別の末端にある標的となる元素と完全に配列できて、期待の新しい結合の生成と環化が完了する。この方法を使って、抗ガン剤であるmyrotheciumone Aを含む複雑な天然物が導かれた。この反応ではジカルボン酸を必要とするが、反応に関与しなかったカルボキシル基は別の官能基に変換できる。

 γ選択性、ガマンも要るかな?それはかまわん。

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 6, p. 9.

DOI: 10.1126/science.abq3048

22.6.23

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SARS-CoV-2の

 スパイクタンパク質に関する研究が過去二年広く展開されてきた。その中研究者らは、アミノ酸15個の長さの316 のペプチドに分解したタンパク質からなるライブラリを購入し、スパイクタンパク質のアミロイド探索を開始した[1]。その結果7つの候補が特定された。そのうちスパイク192と名付けられた候補が、研究室での実験では、アミロイドを上手く形成していた。この結果から研究者らは、人の細胞由来の酵素は、スパイクタンパク質を原繊維ペプチドに変換する可能性を考えた。実験結果から、感染によって引き起こされる炎症に応答して、ある種の免疫細胞が放出する好中球エラスターゼがスパイクタンパク質をスパイク192とほぼ同じペプチドに細かく切断していることがわかった。以前スパイクタンパク質は血栓の形成を引き起こし得ることを示していた研究者は今回の結果から、出血を制御するために血栓を形成するタンパク質であるフィブリノゲンの中のアミロイドを誘発するのに、スパイクタンパク質が使われる点に注目した。血栓は通常分解するが、COVID-19ではそれが進行しない。今回の成果を報告した研究者らは、重篤なCODV-19や長期間COVIDである場合のスパイクアミロイドと血栓との関係についてさらに研究することを計画している。なおCOVIDに罹患して亡くなった人の解剖結果は、91%の人で血栓が見つかっている。

 血栓との関係が、今のところ解せん。

[1] Chemical & Engineering News 2022 June 6, p. 7.

DOI:10.1021/jacs.2c03925

22.6.22

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普段の生活用品が

 水中のnmサイズのプラスチック粒子になるかどうかを知るために、100 °Cの超純水に入れたところ、ほとんどすべてが小さな粒子になった。研究者らは食品に使われるナイロンフィルムや低密度ポリエチレン製使い捨てコーヒーカップに関する結果を公表した[1]。コーヒーカップの場合、粒子は純粋なポリエチレンではなく一部酸化されており、ナノ材料や薄膜は短い間に複雑な化学を経て変化することが示された。直径5 mm以下のマイクロプラスチックは、水、食品、大気、人の血液、肺の組織や排泄物を含む至るところで見られる。これまで公開されたマイクロプラスチックの毒物学研究では、ポリスチレンビーズが使われているが、それは環境中で見つかるマイクロプラスチックの代表ではない。研究者らが一年半以上かけて分析した結果、水中のマイクロプラスチックは尖った角がある鋭い面のある破片が主だった。大気中のそれらは球状ではなく破片である。水から得たサンプルにはポリスチレンもあったが、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリアミドなど他のポリマーもたくさんあった。マイクロプラスチックは可塑剤、色素や金属も含む。マイクロプラスチックが環境中に広がる過程の一つは、それが紫外線による風化を何度も受け、より小さな破片になって広がる。この紫外線風化によって性質が変化した物質は、疎水性が低下し、生体分子、ミネラルや金属でコートされ、電荷や極性という特性も変化し得る。

 このような状況の中、実験室で様々なタイプのマイクロプラスチックがつくられ、その健康への影響を明らかにする研究が進展しつつある。

 マイクロ、ま〜いくら苦労しても、なんとかしなくては。

[1] Chemical & Engineering News 2022 May 30, p. 21.

DOI: 10.1021/acs.est.1c06768

22.6.22

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数百種類のチーズが

 あるにもかかわらず、それらの製法はいくつかの共通した段階を経る[1]。第一段階は酸性化:反対かという人も、有益なバクテリアをミルクに入れてその溶液を加熱する。バクテリアは、ミルク糖の一つであるラクトースを乳酸に変換し、これによってミルクのpHが下がる。ついで凝固の段階である。ミルクの中のカゼインタンパク質が凝集すると凝乳になる。カッテージチーズのようなソフトチーズでは、酸性化が凝固を引き起こす。固いチーズでは、カゼインを加水分解することによって凝固を促進するレンニン酵素を含むレネンを加える。レネンを入れないと寝れん。ついで湿った内容物を減らす作業である。凝固したカゼインネットワークは水と脂肪を含む。そこから水っぽいミルクを取り去る。調理の時間と温度が、得られるチーズの特性に影響する。食塩水に浸すかチーズの表面を塩でこすることによって、水が失われるのを抑える皮が表面に出来上がる。フレッシュなチーズはそのままで、別のチーズは熟成させて、香りや触感を付与する。熟成するにつれて、砂糖、タンパク質、脂肪が徐々に分解して、フレーバーな化合物になる。短い鎖の脂肪酸、エステル、アルデヒド、ケトンや硫黄化合物が、チーズの香りをもたらす主な成分である。例えばブルーチーズの香りは主に、メチルケトン由来である。

 チーズ製法の地図でした。お静かに

[1] Chemical & Engineering News 2022 May 30, p. 19.

22.6.20

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