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2009年7月

JonがやってきたI

 It is nice to see you again、で始まるがすぐに、研究費獲得の話になる。アメリカの現状を憂えている。採択率は、8%である。20%程度ならば、数回申請書を出せばなんとかなるが、8%では獲得のチャンスはほとんどない。どの申請枠にも、全米の著名な先生方が応募している。有名大学(UC Berkeley, CIT, MITなど)への資金集中の一方で、地方の中規模大学の状況は厳しい。獲得した資金の60%は大学へ収めなくてはいけない。これで大学経営を行っている。たとえば、文系の先生、世界的に有名な先生がいても、彼らは研究費獲得の機会はないに等しいので、先の費用で彼らを養っているようなものである。この形が維持できない大学の経営は厳しい状況である。個人として巨額の研究費を獲得することは可能だけど、学科として、大学としてそれだけに頼っている。アメリカの教育システムが危うい。

 テキサス大学若手教授、最近テニュアを取得できたChris Bielawski、全米若手100人の科学者に選ばれた。オバマ大統領と面会する。彼が選ばれるかどうかが話題になっていたとき、FBIから電話があって彼の身辺調査が行われた。これで受賞を確信した という。Chrisはオバマファンなのでちょうどよい。昨年は、C. G. Willson教授が 2007 national medal of scienceに選ばれ、ブッシュ大統領と会食したが、彼は熱烈な共和党支持者なので、こちらもマッチングはぴったりであった。

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JonがやってきたII

 女性の先生が、ある大学に引き抜かれてしまった。「テキサスになじまない、よりよい学生と一緒に研究したい」という理由でテキサスを離れるのは、やむを得ないが、先方の金銭的条件がよいということ(money game)で移動してしまったのは、大変残念である。世界金融危機の二ヶ月まえの話。
 講演は、漫画、映像、動画も織り交ぜてTNTやリン酸を捕捉する系の話、腎臓透析の新しい系を目指している。高分子に捕捉したアニオンレセプターなど
 講演でのジョークその1:テキサスではだれも地球温暖化など信じていない。説得のため、年代ごとの女性下着の写真がでる[1]。だんだん小さくなっている。で女子学生に聞いたらしい。「このスライドどうか」「先生、このスライドは使わないほうがいいですよ」、一方で男子学生に聞いたら「もっともっと地球温暖化が進んでほしい」
 その2:材料化学を始めたいが、自分は素人なのでまずは、Google searchをした。materialという単語で、「初めに見つかったのは」・・・でスクリーンにはマドンナが登場した[2]。
 講演のあとの話:ビジネスマンは、一年後に「儲かるか儲からないか」ばかりを見ているが、われわれ大学人は、5年後、10年後を見据えて、しっかりした化学をやることを忘れてはいけない。
 他にもpretty girl students、Pharmacyclics、オバマ政権のことなど、とてもここでは紹介できない話題も。今回も盛りだくさんの刺激、エネルギーをいただきました。See you next in Texas. ••• with Texas margarita.

[1]オリジナルは、ノーベル賞候補者の一人スタンフォード大学Richard N. Zare先生とのこと
[2] Madonna, 1985年Material Girlというシングルを出している。日本語では、「物欲の強い少女」か?

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バリウム回収しませんか

胃腸X線撮影のため、硫酸バリウムを飲んだ。その前に、発泡剤を5 mL程度の水で飲み干す。理論的には120mLほどの二酸化炭素が発生するらしい[1]。「ゲップ(二酸化炭素)を出すのを我慢してくださいね」と言われる。地球温暖化防止のためではない。で5mLほどの硫酸バリウム・水懸濁液を飲み、X線装置に乗る。単結晶構造解析ではないので回転の軸は一つであるが、その分自分自身で回ることを要求される。「少し右へ身体を回してください。・・・」としばらくすると、もとの位置に戻り、今度は300 mL程度の液を一気に飲んでくださいと言われる。飲み易くするために、ライムで少し味付けされているが、美味くない。装置が90度ほど回転し、「身体を右へ、もっと右へ、うつぶせから一回転してください・・・」と指示される。上部の棒に捕まっていないと、ころげ落ちそうである。胃の中でバリウム懸濁液が拡散していることを実感できればまだ余裕がある。「大きく息をして、はい止めて・・・小さく息をして止めて・・・」このまま続けば胃潰瘍になりそうである。「最後にもう一回だけ・・」で安堵感がわき上がる。もとの位置に戻って、お腹を圧されて完了。次は下剤をいただく、今飲んだ分を早く出すために。
 こりゃ健康でなければできない検査だと今年も実感、
 で硫酸バリウム、国内生産量13,904トン[2]、用途は様々だが造影剤用は塩化バリウムと硫酸ナトリウムから調製、X線撮影のため、年間1750万人が飲むという(Wikipedia)、一日60000人弱が世話になっている勘定である。廃棄量も半端ではない。「下水処理場からの硫酸バリウム回収技術の開発」で申請書かいてみませんか。

[1]発泡剤は、炭酸水素ナトリウムと酒石酸を含み、これらが反応し、二酸化炭素、酒石酸ナトリウム、水が生じる:澁谷光一ら、日本放射線技術学会雑誌、56, 605 (2000)参考
[2] 2005年度(150107の化学商品(化学工業日報社))
09.7.29

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Jonがやってくる

Jonathan L. Sesslerテキサス大学教授が、30日岐阜にやってくる。Wikipedia free encyclopediaにも名前があった。1956年5月20日生まれ。・・・1984年からテキサス大学。学生時代に癌の治療を受けたことが、いわゆる「テキサフィリン」[1]の考案、合成のきっかけになる。その誘導体を診断薬、治療薬とするために、Pharmacyclicsという会社を設立して事業展開・・・
テキサス大学でケミストリーサーカスを主催している。
ポリフィリンが欠乏することで引き起こされるポリフィリア(ポルフィリン症)についても講義をおこなっている。
でWikipediaの最後に、Porphyria, ••• may be related to the origin of myths about vampires and werewolves.(ヴァンパイアやオオカミ人間の神話の起源と関連しているかも)とあった。これは是非拝聴したい。

[1]テキサフィリンは、窒素原子五つを含む大環状芳香族五座配位子であるが、金属が配位しない状態では単離されていない(1988年最初の合成)。この発明からJonは「環拡大ポリフィリン」という言葉を使い始めた。また分子の形がテキサスの州旗(State Flag of Texas)に似ていることから、State Molecule of Texasにノミネートされたが、一位はフラーレンであった。その発見者の一人R. E. Smalley(ノーベル化学賞受賞)はライス大学(ヒューストン)教授であった。
09.7.27

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歯医者さんにお世話になった

 「は〜い、つめますからねえ」「ハア(口があいたままなのでうまく返事できない)」返事はしっかりしてくださいとは言われない。先生は寛大である。接着剤をまずは、歯の欠けた部分に塗る。エアージェットで乾燥させ、光をあてる。最後に、歯科用製剤(複合材料)を、注射器から絞りだして、歯の形にする。治療は完了したが、口の中にはアクリル系の味が残る。これはなにかとWeb検索した。
接着剤のひとつは、リン酸、1,10-デカンジオール、メタクリル酸の三成分から水二分子を取り除いた分子であった。リン酸部位のヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウムのようなもの)やカルシウムに対する高い親和性、10のメチレン鎖がつくる疎水性部位に加えて、メタクリル基は光重合(473 nm付近の光らしい)させて、残った歯に製剤をつなげる役割をしている。
 みなさん、歯医者さんにお世話になった時には、口の中で進行する高速重合反応や疎水性相互作用を体感してみましょう。先生のアシスタントのお姉様に見とれている場合ではありません。
09.7.25

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エクリプスからNewman先生

7月22日日食(eclipse of the sun)だった。有機化学でエクリプス[1]と言えば重なり形、だれが最初にそう呼び始めたかわからない。分子模型で炭素−炭素結合軸に沿って回転中に思い浮かんだのか。Newman投影式を書いて表現されることが多い。投影式は、○を書いて真ん中に点を書く。真ん中の点が手前の炭素を、○は後ろの炭素を意味する。それぞれ三本の結合を出す。
 Melvin S. Newman、オハイオ州立大学教授、Newman先生の研究に対する熱愛は伝説的であった。ゴルフの腕前や情熱も研究同様であり、85歳でこの世を去るまで、衰えることはなかった。学生が立体化学を理解しないので、1952年Newman投影式を考案した。ときに44歳であった。Newmanは常に謙虚で、文体は簡潔、講義は冗談を差し挟む以外、実に的確であった。ニューオリンズ育ちであったことからか、ジャズもこよなく愛した。
 追悼文[2]から「生前の先生にお会いしたかった、講義をお聞きしたかった」と思ってしまった。すごい先人である。

[1]映画で「エクリプス」と言えばマット・デイモン主演1999年アメリカ映画。なぜか日本語タイトルが途中で「リプリー」に変わってしまった。お金持ちの放蕩息子に取り入り、ついに彼を殺し、そして成り代わって財産や彼の恋人も自分のものにしようとする。映画を見ながら、なぜか主人公の企みの成功を祈ってしまう自分と、それではすまねえぞと思う自分が錯綜する。最後のグウィネス・パルトロウの叫び声で引き戻される。
[2]Google検索でMelvin S. Newmanと入力してください。オリジナルを捜せます。
09.7.23

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元素キャラが飛び出す日

「私たちは今、元素の王国にいる。」1Q84を彷彿させるような本の帯である。もちろん、青豆や天吾に会う、戎野先生のお話を聞く、空気さなぎをのぞく、タマルからポケベルに連絡がある、月が二つある、ということは全くない。
 寄藤文平著「元素生活」(化学同人)の帯である。主役は118の元素。20年前の周期表では、106であった。人間の煩悩と同じ数だけ元素もあるのかと思っていたら追い越して118である。ただし112以降は名前がまだない。ポケモンの様に400を超えてしまうことがないように祈っている。113元素は、理研の研究チームによって2004年に発見された。命名権が与えられる日を待っている。「アマテラスニウム」どうですか。
 さて本には、元素の基礎データ、使われ度合いの歴史的変遷に続いて、寄藤氏のイメージする元素がキャラクターで描かれている。周期性を表現するための工夫、それぞれの元素のイメージを表す一言、ついで人間の原価などなど盛りだくさんである。原子番号34元素を見る。「善と悪、2つの顔をもつ男」こりゃまさに今、キーボードをたたいている人物のことではないか、なぜ著者はそれを知っているのか。さらにページを進んで「元素の食べ方」を一読。「若々しい人生を応援するサポーター」とお褒めの言葉をいただく。照れるではありませんか、元素になり代わってお礼申し上げます。
 ここに登場する118の元素キャラ、いずれ本からとびだし、邪悪な「リトルピープル」に対峙する日を楽しみにしています。バックに流れるは「シンフォニエッタ」それとも「元素のマーチ」?
09.7.22

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マニフェストに「分子戦略」を

C&E ニュース(C&E News July 20, p. 17, p. 30)から、農薬に関する話題二つ
 燻蒸剤のひとつである二フッ化スルフリル(SO2F2)をトマト、ペッパー、きゅうり、メロンなどで使ってみたいと、あるアメリカの化学系の会社が申し出た。EPA(環境保護庁)はそれを認めなかった。その化合物は、二酸化炭素の4780倍の温室効果ガス効果があるという。
 モンサント社が1972年以来、販売していたglyphosate(C3H8NO3P)を主成分とする農薬の販売を縮小する。そのため900人がレイオフ(一時解雇)される。900人とは本学全体の教職員の半分強の数である。glyphosateの特許は2000に切れた。そしてその価格は2008年8月現在で10ドル/1 kgだったのが2009年6月では3ドル/1 kgになった。Glyphosate供給への中国の参入が著しいらしい。

 農薬は、「食料の安定供給に貢献する」というカテゴリーの化合物の一つである。害虫(とは言え、あくまで人間にとってである)を駆除し、ほ乳類には害がない。散布してしばらくすると分解し、自然と調和できる分子であることも要求される。これに加えて、合成・製造が適度に難しいことも認可のファクターかもしれない。認可すべきものは、「物質あるいは用途特許を取得でき、自国の利益(すこし謙虚に言えば、雇用)を確保できる化合物」だけなのか、ここにも国家戦略が必要な時代かと、上の二つの記事を読んで思った。農薬に限らず、医薬、化成品など、グローバルに取引される商品にも、いわゆる分子が含まれ、時として雇用環境に波及する。我が国では、選挙が近い。マニフェストに物質、いや「分子戦略」の項目を掲げる政党を捜すべし。
09.7.21

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搭乗券、下さ〜い

シャルル・ドゴール空港、チケット・カウンターに行く、搭乗券を受け取るために。だが「搭乗券の発行はできない」「そんなはずはない。e-チケットには、座席まで指定してある。これをみてよ」「I know. I know.」「Why? This is your not your but your company's fault. You  have to have to provide any classes of seats for me.」などと言うが埒が明かない。「40分ほどして戻ってきてくれ。」「念のため名刺をくれ」「わかった。マネージャーを呼ぶ」と返答された?!。ともかくマネージャーがやってきた。「今の状況を説明したい。英語がいいか、フランス語がよいか」と英語で聞かれる。「Japanese」「I am sorry I cannot speak Japanese.」のあと、英語で説明が始まった。JALとの共同運行便である。JAL側の席が余っているが、そちら側の乗客が全員チェックインしてからでないと、席を確定できない。とのこと。ついで「Are you thirsty?」「Yes, I am thirsty and angry」で飲み物サービス券をもらった。「30分後二人ともここにいるな。」と聞いたらうなずいた。
 30分後、案の定二人はいない。すこし遠い席にマネージャーが座っている。フランス語で、別の担当者に話している。パスポートを見せて欲しいとのこと、すんなり搭乗券がでてきた。「この席は通路側か?」「いや真ん中」「当初、通路側で頼んでいたので、それに変更してくれ」と詰め寄る(いやなおじさんである)。No, No,と、そんな無理なことを言うなという雰囲気である。しばらくして彼女がつぶやいた。It's business. おもわず笑みをこぼしてしまった。
09.7.18

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多重結合10年

 スペインを発つ日、午後0時、ホテルロビーでチェックアウト、ロビーには、Block夫妻、Glass夫妻がおられた。これからクルマを借りてスペイン北部からポルトガルまでドライブされるという。60を超えて久しい先生方、化学を満喫されている上に人生もエンジョイされているご様子。Hashmi先生(金触媒反応開発の先生です)は、電車で帰るという。この学会中、彼の横にはいつも、どこかの国の女性がいたように思う。国際交流人である。
 Robinson夫妻が来られた。空港までタクシーで行きたい。料金をクレジットカードで支払いたいなどの話をされていたので、一緒にどうかと誘った。1997年Robinson先生の「Ga-Ga三重結合化合物を合成したという論文」が多いに話題になった。当時のC &E News の記事は「Gallium ‘Triple Bonds’ Under Fire」で始まる[1]。それは二重結合だよ、いわば極限構造式の一つで二重結合と三重結合の間である、などのコメント、JACS誌にもこれに関して様々な立場から論文が投稿されたという。重い典型元素多重化合物の結合次数を語るのに大切なのは、結合距離よりも電子構造か。・・・
 それから10年あまり、今回は、原子状ケイ素二重結合[2]化合物も含めた講演を行った。二つのケイ素原子にまずは二重結合を書く。それぞれのケイ素原子上には、孤立電子対一つと空の軌道が一つずつ。講演では、時間の無駄だといいながら、この空の軌道を炎上させていた(先のC &E Newsの記事をもじったのか)。ほかにもユーモアたっぷりであった。見習うべし。2008年C&E Newsはこの成果も取り上げていた[3]。「Diatomic Silicon Carbene-stabilized Si(0) compound could spark new wave of silicon chemistry」 今回はフレンドリーである。「この分子は、学術的な面白さのみにとどまらないだろう。溶解度の高さからケイ素化合物の均一系での変換反応を実現できるでしょう。」と結ばれている。
 タクシーが空港についた。サングラスをかけて降りてきたRobinson、ヴィング・レイムス[4]を彷彿させた。彼もmission impossibleな課題に挑戦している。一方で「チェックインカウンターが2時間前にならないとオープンしないようだ、これほど人が待っているのに、早くチェックインして、搭乗口付近で、リラックスするのが好き」と繊細。それにしても絵になる夫妻である。

[1] Dagni, R. C & E News 1998, Mrach 16, 31.
[2] Robinson G. et al. Science 2008, 321, 1069.
[3] Ritter S. C & E News 2008, 86(34), 10.
[4] 映画ミッション・インポッシブルでトム・クルーズ扮するイーサン・ハントのよきパートナー役などを演じている俳優
09.7.16

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カヌー、先生危うし

 スペイン学会が主催するツアーがあった。国立公園見学か、カヌーによる川下りかどちらかに参加する。ここはアウトドアでいきましょうと何人かの方をお誘いした。中には「Your family name sounds like Canoe.」と日本語で強引に誘ったら、快く(とこちらは思っている)一緒に来てくださった。参加者十数名のうち日本人8名である。
 二人のりカヌー、オールの両側には長方形の板のような水をかく部分がついていて、オールの形はいわばアキラルアレン型である。自分は、若手気鋭の先生とペアになった。二人がここで溺れれば、中日新聞の三面間違いなし、学部長クラスのコメントがあって「国際学会中でのアウトドアの参加は慎むように」というおふれが出ても不思議はない。
 カヌーは二人のリズムが合えば、前に進むが、呼吸が合わないと同じところで回りだす。回りながらRかSかなどと考えている場合ではない。力を入れればよいというものでもない。深瀬は流れがゆるやかなので、二人でシンクロしながら漕ぐ。浅瀬では流れが急なのでそれに乗ればよいが、あまりに浅いところでは座礁してしまう。落ち着けば峡谷の静かな雰囲気、眼前にせまる山間の情景に見入ることもできる。サケが何匹も川を遡上している。なかには飛び上がっているサケもいる。自分たちも自然に溶け込んでいる。が油断していると木が生い茂った下を通過するはめになる。あっと言う間に、岸辺に座礁してしまった。これはオールだけでは脱出できないと、一旦降りて、押せばよかろうと降りた。それほど深くはない。ただ砂地であった。足を水に入れ、さらに川底についても足はさらに砂の中に、ほぼ全身が水につかった。なんとか、はい出すことができた。参加者を代表して、スペインの川を全身で体感させていただいた。ちなみに1.5ユーロのメガネストッパー、安い買い物であった。
09.7.14

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チュニジア人と昼食

スペインでの学会、昼食の時間は長い、赤ワインも目の前に、隣席の外国人(ここでは自分も外国人だけどね)にどこから来たのかと聞く。ヴァーサイユ、フランス? しばらく考えてベルサイユ、(アンドレとオスカルか)、で彼は続けた。「パリで学位を取ったがもともとはチュニジア」、まずは赤ワインをとグラスに注ぐが、「自分はいらない」「宗教上の理由があるのか」「私はモズラム(イスラム)である。」でここから、色々込み入った話になった。チュニジアの宗教は主に、イスラムでスンニ派である。それほど戒律に厳しくない。アフガニスタンの女性のように、ブルカをかぶることはない。シーア派との違いは、(なんだかよくわからなかったけど)コーランの教えを直接伝える方々の範囲ではないかと理解した。で彼は言う。どちらの宗派もよいし、キリスト教でも同じである。唯一と考えると色々問題が生じる。「我が国では、八百万(やおろず)の神(We have 8 million gods.)[1]」と口をはさむ。「それだけいれば新しい神ができたって誤差の範囲だね」と彼は微笑んだ。
 「で政治的に、国はどうか。」と話題を変えた。「チュニジアは安定している。隣は、リビア、アルジェリア」「カダフィの国か。」「うん、もともとチェニジアはフランスが支配していたが、その後独立した。アフリカは、ヨーロッパの国に支配されていた(歴史的には、アフリカ分割と言われていることかな)。チュニジアとフランスの関係は悪くない。「アフリカには、原油を始め、様々な元素資源、ダイヤなんかがあって[2]、内戦が繰り返される国があるのでは」、「しかも色々な武器が、両方の勢力にヨーロッパから流れてくる[3]」とお互いハリウッド映画を例にとりながら話は進んだが、このあたりで記憶がとぎれている。
 しかもどんな化学やっているのか聞き忘れてしまった。Hetero-Diels-Alder反応で生理活性を示す含酸素、窒素の縮環化合物の合成法開拓しているようである。たしか、チュニジアでは合成実験ができる体制にはまだない と言っていた。

[1] 直訳であるが、映画「千と千尋の神隠し」の英語字幕はそう書かれているそうである。
[2] レオナルド・ディカプリオ主演「ブラッド・ダイヤモンド」
[3] ニコラス・ケイジ主演「ロードオブウォー」

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お疲れ、Magnus I

 スペイン、オビエドでの学会最終日(09.7.5)、すべてのプログラムも終了、夕食を終えて午後10:30、ホテルのバーへ、そこにMagnus Ruepingがいた。こちらへどうぞとの誘いに、ブランデーをいただくことにした。彼は、フランクフルト大学から最近アーヘン工科大学に移動した。光学活性ビナフチルリン酸触媒、Hantzschエステルを使った、イミンなどの不斉還元を行っている。この系は、2004年の秋山先生ら、寺田先生らの二つの論文が世界を触発し、今では世界中の研究者が参入する激戦区である。その中で、Magnusはわずか4年ほどで、Angewandte Chemie誌に10以上の論文を発表、気鋭である。
 この短期間での業績のすごさを讃えると、「学生たちのお蔭である。・・・彼らの奨学金獲得のための書類書き、職探しのための推薦書書きは、論文執筆、研究費申請などを含めた書き物に使う総時間数のうち、45%程度に相当するだろう。」と
 「で生まれは?」「ミュンスター」「あのウエストファリア条約で有名な」、ところがこれが通じない。the treaty for each country not to invade each other in 16 or 17 century とかなんとか言ったら、あ〜ヴェストファーレン条約と 
 「ベルリンの壁崩壊(1989.11.9)は、テレビで家族と見た。本当に起こっている出来事なのか。それまではベルリンに行くまで、いくつも検問所があった。物価も5倍以上の差であった。」「ドイツが二つに分かれたことなどは学校で教えられるのか」「歴史のうち2/3は近代史、WWI, WWIIのこと、ナチス、ホロコーストなどなど」「ソ連がWWIIの終わり頃、ドイツに侵攻した」「いやソ連だけではない。他の連合国も」 ここで、WWIIの頃の世界情勢の込み入った話に、「日本がWWIIに突入したのは、石油も関わっている」「ドイツも・・・」なんだか同盟国側の人間同士みたいな雰囲気に、
 「韓国は北朝鮮のことが心配だろう」「日本もある程度」「韓国は隣国だし、ミサイル実験のこともあって」・・・「アフリカでは・・・」「そんな情報はどこで仕入れるのか」「イギリスBBCは世界情勢を広く、詳しく伝えてくれる」

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お疲れ、Magnus II

 「ところでクロスカップリングでは、だれがノーベル賞か」と聞かれる。「日本の先生方も候補者は、たくさんおられるし、フランスCorriuも」「Heck反応のHeckはどうか?」「どちらにしても3名しか受賞対象にならないので、しばらくはないかも」、これに続いて昔話を紹介する。「今回の特別講演者Jean Marie Lehnは1987年に、Cram, Pedersenとともにノーベル賞受賞したが、他に候補者は少なくとも2名いたと聞いた。田伏先生、その年の春頃かに亡くなられた。Breslow先生、その年の始め頃、実際とは異なるデータを研究室の博士研究員との共著で論文発表してしまい、C &Eニューズなどで多いに話題になってしまった。結果3名が選ばれたのかもしれない。
Pedersenの父はノルウェー人、母は日本人、MITを学部で卒業し、Ph.D.を持たないノーベル賞受賞者の一人である。論文数は多くないが1967のJACS論文は1000回以上引用され、そこではIRスペクトルを基本にいわゆるクラウンエーテルの構造や金属への配位様式などを解明している。Cramは1960年頃までは、Cram則とか言って反応の立体化学を追求していたが、方向転換しMacro-ringというシリーズで論文が多い、Lehnは、三次元の金属配位子を合成、多分Tetrahedron Lett誌に最初の結果を掲載したと思う。その後その重要性を見抜いて今に至ると思う。」
 「話もどして、ミュンスターの後はどこで学んだ」「ベルリン、スイスDeebach研、ハーバードEvans研」「ボストンは楽しんだか」「冬に80 cmくらい雪が積もって、今のワイフも一緒に過ごした2年」「奥様は?」「ドイツで知り合ったイギリス人、スイスへも一緒に行った。」「子どもは英語かドイツ語か」「両方」「ごちゃ混ぜにならないのか」「じいちゃん、ばあちゃんには、ドイツ語だけでしゃべっていたりする」
 気がついたら午前1:30 荷物のパッキングもしないといけないし、ここらで終わりに、他にも、政府の研究費の出す方向、学生の就職動向、製薬会社の状況、特許のことなどなど、盛りだくさんの3時間であった。スペインブランデーがカンフル剤になったのかもしれない。

Thank you for your nice talk, and have a nice flight, Magnus. You, too. Your flight is longer than I. How long? About 12 hours from Paris. See you some time.

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講演でジョークも

スペイン、オビエドでの学会二日目(09.7.2)、自分自身の発表でジョークをいくつか試みた。
「ローソン反応剤は、市販である、だがコンビニでは販売していない。」と言ったが会場からは何も反応がない。「ローソンは日本だけでしょう。セブン・イレブンだとわかるかも」と指摘された。7:11比で混合すれば、最高の活性を示す反応剤を開発するまでこのネタはしまっておこうと決心。
 講演の最後のパーワーポイント、研究室のメンバーが映しだされている。
These are the current group members. In our university, majorities of the members are master course students, and 4th grade undergraduate students, generally 21 or 22 years old. So, the average ages of these people are less than 25 years old, including me. 手応えあった。

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村上春樹とsulflower

09.7.11
スペイン、オビエドでの学会初日(09.7.1)、ホテルを出て会場に向かう。参加者であると思われる人物に声をかける。「どこから来たか」「ロシア、君は」「日本」「日本の○○大学に友人がいて、昨年そこを訪ねた。彼の娘は彼より日本語もうまいし、将来小説家になりたいと言っていた」「ロシアには、トルストイやドストエフスキーなど文豪がいるよね、ぼくはあまり読んでいないけど、その彼女も日本文学のロシア語翻訳者になってもいいなあ、ところで日本の文学、なにか知っている」と聞いた。「Haruki Murakami. I like his feeling and mood」 ぎょえ、村上春樹の書が、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語など10カ国語以上に翻訳されていることは知っていたが、まさかその名が化学者の口から、しかも国際会議初日にたまたま出会った参加者から飛び出すとは不覚であった。ついつい「最近出た長編は一ヶ月以内にミリオンに達した」と話の腰を折ってしまった。その化学者V. G. Nenajdenkoは、チオフェン4分子からすべての水素を取り去り4つイオウを加え、内側は炭素のみで8員環、外側はイオウと炭素で16員環を形成している通称sulflower (sunflowerを連想させる) 分子について、合成法、構造、性状について講演していた(V. G. Nenajdenko et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2006, 45, 7367)。その間「村上春樹のどこに彼は魅せられたのか、内田樹先生の書(村上春樹にご用心)にヒントはあったかなあ、いや外国人の目線については触れていなかったよなあ」、「あの分子は交差共役系か、かなりひずみがありそうな」「ロシアにもこのような基盤的化学分野を資金面で支援するシステムがあるのか」など頭の中では、並列処理が進んでいたが、ほとんど何も処理できなかった。

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