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2010年1月

桂かい枝さんの

 落語が開始される[1]。一般に落語では、直ちに本題に入る時もあるが、その前に小話がある。この小話を「枕」という。真っ暗な中で聞いても面白い。かい枝さんは、世界12カ国で落語を披露、200公演以上で、中には全編英語の寄席もある、異色で気鋭の落語家さんである。今回の落語でも機知に富んだ枕であった。収録は昨年11月22日のようであるが、放送が新年であることもネタにしてお客さんをくすぐる。かい枝さんは、わカイシ、今後も乞うご期待である。
その枕の一部をお借りした。登場人物は子供と、体重を気にしてダイエットなどに取組む嫁さんである。
・こないだ小学校の運動会にいったら先生が子供に「もとの体形(隊形)にもどれ」と笛ふきまんねん。私も家で笛吹いたろかと思いました。
・最近は音声体重計と言うて、体重計がしゃべりまんねや。まず子どもがのると「ビビビビビー、42.195 キロです」と言いまんねん。下三桁までしゃべりますわ。つぎに嫁はんがのったんですわ。ほたら「ビビビビビー、ひとりずつおのりください」

[1] 1月22日NHK上方演芸会
10.1.31

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犬好きそれとも猫好き

 ということで人間の性格が分析されている[1]。4565人のボランティアの人に、犬と猫どちらが好みか、どちらも、あるいはどちらでもないかを聞き、44項目の質問に答えてもらった。調査の結果は1、46%が犬、12%ネコ、28%がどちらも15%はどちらでもない。2、犬好きの人は、社交的、愛想がよい、用心深い。一方猫好きの人は、心配性でも寛大である割合が多いことを示していた。これまで動物の好みと人の性格の間に相関があることは言われていたが、その違いを説得力のあるデータで示す事は難しく、今回の研究はそれを実現した最初であると書かれている。
 社会科学の実験では、このアプローチの仕方そのものの妥当性など色々議論される。100を超えるコメントがこれについてもアップされている。なかには「自分の家族では、猫好きはローリングストーンズのファンで神経質、犬好きはビートルズファンでのんびりしている」などもある。そのうち土砂降りの議論 [2]になりそうである。

[1] http://www.utexas.edu/news/2010/01/13/personality_dogs_cats/?AddInterest=2221
[2] It rains cats and dogs: 土砂降りの雨である。
10.1.30

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修士論文は

 後輩たちへの贈り物である。これまで2年600日を超える日々で、何を目的として研究に向かったのか、何を期待してそれぞれの実験に取組んだのか、その結果(観察、観測、手にしたものなど)を書く。日記のように、日を追って書くわけではないが、内容を要約してエッセンスだけを書くわけでもない。研究チームによって違うが、特に「当初の期待通りでなかった時のこと」は詳しく述べる。チームの計り知れない財産ともなる。字数制限がある時には、付録あるいは実験ノート○○ページに記載などという記述でやりくりをする。また期待通りの結果であっても、新しくそれに取組む学生、それはちょうど提出する皆さんの三年ほど前の状態の学生が再現できるように、必要不可欠に伝える。こちらも実験ノート番号でもよいが、その時はノートが丁寧であって欲しい。

 ふと研究室の本棚などを見ると、そこには「手あか」でカバーされた修士論文もある。およそ三年の間に「○○先輩の修論どこに行った?」と時には捜したこともある。今度はそれを後輩たちにバトンタッチする順番である。
10.1.29

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遺伝子組み換え米

 は、害虫や真菌病に対して抵抗できる性質が付与され、生産性の向上や安定供給を可能にすることも目的とした商品である。たとえば水不足が課題である中国は、少ない水でも育てることができる米の開発なども行っている。一方で生態系などへの影響、ある企業がそのビジネスを独占するかもという経済的側面、食としての安全性など、議論になる。今回中国人研究者が、三種類の遺伝子組み換え米の栄養成分に注目し、分析した[1]。近赤外反射スペクトル、ガスマス、HPLC、プラズマ発光分光などを使って確認。その結果、一つ目のものはビタミンEが、二つ目は、タンパク質が、三つは、アラニン、グリシン、チロシンを含むアミノ酸が通常の米に比べてかなり減少していた。安全性に加えて、「栄養分についても確認したら、え〜よう」と「米」に期待をコメて、コメントされていた。遺伝子米の話、これでシマイ

[1] Chemicals & Engineering News, January 18, 2010, p. 24.
10

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ぱらべん

 といってもどこかの方言ではない。パラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルの総称である。微生物に対する抗菌性を示すこと、安価であることから、防腐剤として1920年頃から使われてきた。製法はフェノールのカリウム塩と二酸化炭素からパラヒドロキシ安息香酸を導き、そのエステル化で得られる。早い話、石油化学製品である。たとえばメチルエステル(メチルパラベン)は一般に安全と認められるもの(GRAS)[1]に、米国食品医薬品局(FDA)が指定している[2]。ただ合成品であることも相まってか、安全性・毒性がとかく話題になる人気者である。ある化粧品は、その特徴として「パラベンフリー、ノンパラベン」を謳い、これを使っていないことを強調している。なんでも数年前に「乳ガンの細胞20のうち18から検出されたこと、それは肌から浸透したものである」とパラベンの危険性が熱弁された。お蔭で悪者になってしまったがその後、この因果関係を示す研究結果はない。
今も化粧品が腐ることを防ぐべく、パラベンは勤勉に働く。

[1] generally recognized as safe
[2] http://www.realself.com/ingredient/methylparaben
10.1.27

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ウクライナ

 生まれのM. S. Kharasch先生、13歳でアメリカへ。1943年クロスカップリング反応の原型「塩化コバルト触媒、臭化ビニルとフェニルGrignardとの反応」を報告した[1]。がそれまでの業績が主に注目される[2]。1930年頃までは、有機水銀化合物の研究に従事。その後臭化アリルと臭化水素との反応を精査し、過酸化物存在下での反応から、アンチマルコフニコフ則に至り、フリーラジカルの化学の礎を築いた。第二次世界大戦中は、合成ゴム製造にも関わり、Grignard反応との関わりはその後である。
 働き続けているので「数週間休む様」に説得を受けてやむなく休暇をとるが、たいてい予定より早くもどる。学生には深い愛情を感じ、就職先がないときには大学で雇用した。がその経費は時として、実は先生自身が支出していたのでないかとも書かれている。H. C. Brown先生の先生でもあり、J. Org. Chem. の創立者の一人でもある。
 この先人の軌跡に学び、引き継ぎたい。

[1] Kharasch, M. S.; Fuchs, C. F. J. Am. Chem. Soc. 1943, 65, 504.
[2] Morris Selig Kharasch 1895-1957: A Biographical Memoir Washington D.C.: National Academy of Sciences. Accessed 2007-01-20
10.1.26

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パ、パ、パワー先生が

 「遷移金属としての典型元素」という題名の総説を寄稿されている[1]。いわゆる第三周期以下の典型元素化合物の特徴、結合様式、反応性について過去30年あまりに発見されたこと、開発されたことがまとめられている。多重結合化合物、配位サイトを有する低原子価分子、擬配位サイトを有する分子(frustrated Lewis pair)、常磁性電子配置種(ラジカル種)、さらにはジラジカル種など、典型元素を含むこれらが安定化学種として単離されてきた。ついでそれらの結合様式についても議論されてきたが、従来はアルケンなどの第二周期化合物と比較していた。一方遷移金属との類似性を示す成果も多い。近年H-H, H-N結合を温和な条件で切断できる、なかにはイミンの水素による還元を触媒できるものも合成されていること、さらにエテンやCO2が遷移金属に配位するのと同様な反応様式を示すものもあることなどが紹介され、それらの現象を分子軌道の点からも触れている。
 これらの研究の端緒となったのは、1973年のLappertらの、安定なゲルミレン、スタニレン種合成の試みで、固体状態ではGe=Ge, Sn-Sn結合を形成し、しかもGe,Snがピラミッド形であったことであることにも触れている。
 パワー先生[2]の力強い総説である。

[1] P. P. Power, Nature, 2010, 463, 171.
[2] 先生が10年以上前に来日された際、講演でスライドが出てこない。May I have the first slide, please? と繰り返された。懇親会のときのご挨拶の第一声もMay I have the first slide, please?で大いに沸いた。
10.1.25

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バイザイシステムに

 受験生も大学も一喜一憂する。このシステムはセンター試験終了後、受験生が自己採点した持ち点を志望校の名前と一緒に、いわゆる予備校に送る。受験生が気になるのは、自分自身が相対的にどの位置にあるかを見て、二次試験での点数も勘案して、願書を提出する。合格しそうにない大学がわかるので「お手上げシステム」とも言うと教わった。一方大学ではデータのうち出願予定者数が気になる。もっともこのデータも受験生の志望校を変化させるので実際の競争率とはあまり関係がない。むしろここで高すぎると敬遠される時も多い。受験生は「競争率は一倍であって欲しい」と願っていると思う。残念ながら大学側の事情は違う。ある学科の競争率が二倍を切るとガッカリするとともに、全学の会議で「なぜか」と聞かれるそうである。受験報道も、いわゆる難関大学の競争率低下は「少数激戦」であり、それ以外の競争率低下は「○○学部離れ」「○○学部は低迷」となる。

 受験生の皆さんは、こんな珍妙な話は気にせず、次の試験に向けて一路邁進を
10.1.24

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オゾンを減らして

 国の空気を浄化したいという提案が、環境保護庁(米国)(EPA)からあった[1]。産業界には高くつく話だけど、皆さんの健康にはいい話とのことである。2008年ブッシュ政権下での大気中のオゾンの基準値は、0.075 ppmであったが、それを0.060~0.070 ppmにするというのが提案である。これを実行するには、190~900億ドル必要となるが、130~1000億ドル分の健康増進になると見積もっている。これに対して産業界は「コストが高すぎる上に、オゾンの基準の効果の根拠がまったくない。」と反発している。という記事である。
 このオゾン、地球上のキゾン(既存)の化合物で、成層圏では紫外線を吸収する一方で、地上付近では、大気を汚染する。また強い酸化力を利用して、水道水の殺菌にも使われている。それを0.075から0.065 ppmに削減するとは10%強の削減幅になるが、0.01 ppmは一億分の一である。EPAが見積もるような利得があればよいが、そうでないと、オゾンでオ〜ゾン(大損)するゾ〜ン。

[1] Chemicals & Engineering News, January 18, 2010, p. 8.
10.1.23

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中国の科学

「は、ちっチャイナ」とは、昔話である。経済成長とともに、化学研究への投資も、欧米より積極的であることからも、過去10年で、特許数、論文数も格段に増加している[1]。JACS誌に掲載されたすべての論文のうち中国(香港を含む)からの分は、1998年には10(2477のうち)であったのが、2008年には157(3414のうち)で全体の5%になった(ちなみに日本からは346)。その増加数は他のデータでも中国は他国を圧倒している。それでも中国化学会事務局長は言う。「中国の化学は、大きいだけで、まだ強くはない。独創性の高い成果がまだまだ少ない。ある分野で革新的、最高あるいは最初であるものはほとんどない」
 この数の増大に加えて、現状を見据える中国化学会の姿勢は、いずれは世界をリードする科学・技術大国になることを予見させる。その時には、アジアの小国である日本は、平安時代の先人たちにならって、科学者を乗せた現代版「遣唐使」の派遣を、検討(けんとう)してもよい。と思って調べていたら、5月の上海万博にちなんで、当時の遣唐使船が建造されているとのこと

[1] Chemical & Engineering News, Jan. 11, 2010, p. 35.
22.1.22(今年最初のアキラルな日)

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科学政策に

 本学の学長だった先生が怒っておられる。その政策とは、自民党政権下の補正予算と民主党政権における事業仕分けである。前者は補正予算のうち科学技術関係に2700億円が組込まれ、そのうち90億円を30件に配分せよということで、先生はおそらくその作業に携われた。500件以上の申請を短期間で審査することになってしまった。後者は、仕分け作業で「文化大革命」を思い出されたそうである。・・・で最後に「巨額の予算を集中すれば科学は進展すると思っている政治家,科学を短期間の効率性でしか考えない政治家,われわれは,いつになったら科学を本当に理解できる,まともな政治家をもつことができることができるのであろうか.」と結んでおられる。しかも「科学政策」についての部分は、中央公論[1]で触れられ、さらに別の所[2]でも同じ文言で繰り返される。お怒りのご様子がひしひしと伝わる。

 でも先生、そうお怒りにならずに。まずは「政治家を育むのは、自分たちも含めた国民」だし「学会やら大学にいれば自分の所属するところがワクワク面白すぎて」「門外漢の方にその内容を伝えることをさぼっていた」ところもあって、自分たちにも責任の一端があります。そこで科学を広める活動の支援や、それに携わる人や雑誌たとえば月刊「化学」を大切に応援していただけるとうれしい限りです。

[1]中央公論、2010、2月号、p. 65
[2]月刊「化学」、2010、2月号、p. 11
10.1.21

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藍より出でし

 染料工業が、ブルージーンズになる。日本のタデ藍、インド藍、ヨーロッパのウォード、バスコ・ダ・ガマがインドにたどりついた。それでインド藍を持ち帰った。青でもなく紫でもなく、その間の色、英語ではindigo blueと言われる。Adolf von Baeyerが、化合物の構造を解明し、ついで化学合成が始まり、1897年には、工業プロセスになった。数年後には、藍の栽培業者が職を失ったらしい。
 この色成分であるインジゴ(C16H10N2O2)そのものは、植物である藍の葉っぱにはない。ましてやイチゴとは関係ない。藍の葉っぱにはインジゴの半分の骨格の分子がグルコースと結合した成分があり、空気中で、加水分解、酸化を受け、藍色を呈するインジゴになる。この色合いは、古代ローマの人も魅了したらしい。そこでは地中海から採れる巻貝から色成分を巻き上げていた。植物成分と甲殻類成分に同じ骨格の分子がある。ただ巻貝インジゴは、藍インジゴの6,6’位の二つの水素原子が臭素原子で置き換わっている。
 以上、有機工業化学の講義内容でした。加えて阿波藍[1]の記事も読んで欲しい。あわ〜あい恋心を抱いて

[1] 化学と工業、2009、12月号、p. 1250.
10.1.20

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水銀が蓄積される

 と中毒になる。「水銀なんて使っていない」と思っていても、蛍光灯一本あたり、約8 mgを含んでいる。また魚類に蓄積されていることもある。英語版Wikipediaには、「2008年12月、ある俳優が水銀中毒であると診断されたこと。彼は 20年にわたり、スシを1日に2回食していた」ことが紹介されている。この水銀、生体系ではタンパク質の中のアミノ酸の一種であるシステイン残基(SH基を持つアミノ酸)と強く結合するために、毒性を示す。同様に生体系の抗酸化元素であるセレンとも相互作用する。そのため水銀セレニドを形成、あるいはセレンを含む酵素の活性部位に結合して、セレンの生体利用を妨げる。
 そこで三脚型の水銀を組込んだ配位子を使って、イオウ、セレン、テルルに対する水銀の親和性が検討された[1]。その結果Hg-Se, Hg-Teはそれぞれの元素の共有結合半径から予測される距離よりも短かった。X線構造から、水銀のセレン親和性はイオウ親和性より大きいことが推測された。いずれ水銀中毒の治療に、セレンさらにはテルルが有効であり、Hg-S結合を「切れ〜」というキレート剤が開発されるだろうとのことである。

[1] Chemicals & Engineering News, Jan. 11, 2010, p. 33.
10.1.19

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カメムシが多いと

 雪も多いと言われている。実際、過去15年程のカメムシの発生量と積雪量の間の相関があるかも、というデータをネットで見ることもできる。2009年秋は、例年に比べてカメムシが多かったが、気象庁は暖冬の予報。今回はカメムシの勝ち。
 名前は、背中が亀の甲羅のように見えたのが由来とされるが、虫はムシろ、五角形に見える。なので英語名は、pentatomoideaと「五」を意味するpentaが使われている。そのカメムシ、時として強い臭いを出す。その主成分がトランス-2-ヘキセナール[1]、アルデヒド類で沸点146 ℃なので、一旦付着すると長いおつきあいをしなくてはならない。2-ノネナールはいわゆる加齢臭であるが、カメムシのそれは老若によらず、胸のあたりから出し、警報あるいは性誘因フェロモンの役割であると類推されている。外敵を威嚇し、カメムシ仲間には、危険を知らせるらしい。なので洗濯物にカメムシを見つけたときは「おじさんを扱うが如く」やさしく接してあげれば、きっとどちらも臭わずにすむ。

[1]ちなみに以前にも紹介したが、シス-3-ヘキセナールは青葉アルデヒドで、こちらは緑茶や紅茶のなかにアルデ
10.1.18

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センター試験初日

 の監督業務のため、8時30分集合。時刻を合わせるために、まずは電波時計の確認、ついで腕時計もあわせる。秒単位の狂いも無い様に、「無秒催促」[1]される。こちらの気の狂いは修正しない。なんとか2科目終了。
 3科目目途中、写真用シールが一枚足りない。配布してもらった先生が何度も確認されるが確かにない。受験生にも「余分に配られた人はいないか」聞くが出てこない。試験場本部へ戻って、責任者の先生に聞くと「他の部屋の分が足りなくなってしまったので、さっきの休みの時間に、一枚シールいただきましたよ」とのこと。こちらは知〜る(シール)よしもがなである。
 いよいよ英語(リスニング)の時間である。問題冊子、ICプレーヤーを配布し、その不具合の有無を確認する。受験生に「問題ありませんね」と伝えると、「いや問題冊子はあります」などとは誰も言わない。プレーヤー一台交換、試験前なので安堵。試験中に不具合で試験が中断されると、その受験生に「再開テスト」を実施することになる。リスニングテストが中断された以降のみの問題をその日に解く。この再開テスト、ミサ(イ)カイ(見境)もなくやるわけではないが、対象者0人を祈って、30分寡黙になる。本日の科目終了。同室で担当していただいた先生方のお蔭で、無事であった。

[1]「無病息災」をもじった
10.1.17

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運営費交付金とは

 国立大学に、政府から毎年交付される経費である。過去6年間の達成度に応じて評価がなされ、その結果に基づき平成22年度は、交付額が大学によっては増減があったこと、最大2500万円増になったところもあるというお話を聞いた。文部科学省ひいては財務省の意図か、それとも大学側が「○○をしないと交付金が減らされるかも」と解釈しているのかはわからない。けれども一般的に「ある種の競争をさせて査定し、その結果をお金に換算」というやり方に、「学び」の場では同意したくない。とはいえ大学内では「質の高い研究(どうやって判断するかはわからないけど)を行った場合」や「授業評価が高い場合」には処遇に反映させるということが話題になる。
研究は本来、外に向かって差し出すもので、それによる評価も、外からいただくものである。また大学での教育・学びは、接する学生さんの状況次第で臨機応変である。それでも大学が「処遇」を話題にするのは「査定を受ける枠にはめられた大学」自体が、この「お金に換算」という方式に染まっているように思われる。そこからの脱出を考えてみませんか。
10.1.16

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棚が

 きタナと喜ぶのも束の間、自分たちで組み立てなくてはならない。シェルフサービス[1]である。シェフもいない。いつもお世話になっている業者の方、職員の方にお願いして四人で始める。一つ目の棚、組立ての手順を見ながらの作業。デンマーク製だが手順は幸い日本語。それでも頭ひねって、ネジもひねって進めるが、時々板をはめる順番やネジを入れる穴を間違える。男の子は間違えてはいけないと言いながら作業する。棚は六段だが、免許皆伝に至らず、段取り悪し。
さらに二つの棚の組み立て。廊下を通る人から「注文があるので、後でお願いね」と業者の方に声がかかる。彼らの携帯も鳴る。一人の方は、数日前に新型インフルエンザから復帰されたばかりである。4時間を過ぎた頃、最後のガラス扉の取り付けが完了。男の共同作業はなかなかの出来栄え。「村井君の厚かましいお願い」に、快く(?)協力していただき、ありがとうございました。

[1]セルフサービスに引っ掛けたシャレ

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弦楽器「ストラディバリウス」

 は17世紀後半から18世紀後半に、アントニオ・ストラディバリによって制作された名器、今でも数億円で取引されることもある。その弦楽器5つに使われたニスの成分と層構造が明らかにされた[1]。シンクロトロン照射マイクロFTIR、マイクロラマン共焦点スペクトル、SEM-EDX、PyGC-MSなど聞き慣れない名前の分析法を駆使して解析される。ニスは主に二層になっていること、上の層は、酸化鉄やカイガラムシから得られるコチニール赤色色素が主で、それはカルミン酸のアルミニウム塩であること、高純度のものが使われていることを推測している。下の層には、乾燥剤成分が酸化されたと思われる炭素数8や9のジカルボン酸が、また上の層にはジテルペン由来の化合物も観測されている。ちなみに五つの弦楽器で、すべて同じ色素ではなく、中には硫化水銀(辰砂)を使っている時もある。
 いずれにしても、ストラディバリは、当時簡単に入手できる成分を含むニスから「どれニスる」と選んで使っていたようで、論文には「そのバイオリンを仕上げる技・腕前が名器をもたらした」と記されている。

[1] J.-P. Echardら著者12名、Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 197.
10.1.14

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なんねんせい?

 と聞かれれば、たとえば「四年生です」と答える。が化学業界では「難燃性」である。高分子材料にこの性質を付与するために、難燃剤を添加する。有機系化合物としては、ハロゲン化合物、リン酸系などが使われる。「デカブロモジフェニルエーテル」はそのひとつであるが、2013年までにその使用を段階的に廃止するという[1]。これを使用している企業側は「数百の研究例は、その安全性と、それが世界で最も効率の高い難燃剤のひとつであること」を述べる一方で、環境保護庁(米国)は、「発がん性、脳障害可能性などの人への影響、環境負荷」を指摘してきた。これを受けて、企業側は廃止を決定、まずは、電子部品、家庭用品、ついで交通機関や工場での使用をやめる。最後に特殊な交通機関や軍事利用のための代替品製造には、だいたい12ヶ月を予定とある。
 ちなみに難燃剤市場動向は、およそ150万トン[2]、46億ドル(2010年)であると予測されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, Jan, 4, p. 10.
[2] と言われてもよくわからない。そこで、1トン=(体重100 kgの人が10人)と換算してみる。1500万人くらいか。
10.1.13

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組の集まりに

 36軒37名が参加する。「黒い略礼服に、サングラス、組長が外車から降りるのを、頭を垂れて、お待ちする」ということはない。町内の新年互礼会である。それでもまず組長さんのご挨拶、これまで対応されたことのお話。街路が暗いので、街灯の設置を市へお願い、いガイトウ難しく、断念。犬のフンに憤(フン)慨されていた方のリクエストで、「フン持ち帰り」の看板の設置は成功。ここは奮(フン)闘できたとのこと。
 変わって自治会長さんのお話、数年前全国で話題になった不法産廃、やっと撤去方針が決まり予算もついた。税金が原資で補助金となる。建築廃材をコンクリートでかためたもの、合わせて40万トン、それを三年間かけて処理場へ移動する。2トントラックで運び出してもトラックが20万往復する、雑な計算でも200台/一日。そんな数のトラック、ここでは見たことがない。グットラックと祈る。
その後は、お食事。お酒も入って、歌の好きなおばさまたちに導かれて、宴につかる。「新しく自治会に加わっていただいた方は、一曲お願い」という、いつもの役目もこなした。
10.1.12

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33年ぶりの電話

 を幼なじみにする。一昨年夏、脳内出血で倒れ、40日ほど生死の間をさまよった。いまは車椅子生活でリハビリ中、ハリ治療に通っていたことから、縁あって電話することになった。電話ではお母様の元気な声、今もって変わらず、当時の情景が浮かぶ。本人が出る。電話の向こうの姿を思い描くことができない。「久しぶりです・・・」と感動の言葉「・・・もともと小病もしたことなかったのに、いきなり大病するとは、・・・村井さんはなんの先生してるの。僕の病気なおせるようにできませんか」と無念の言葉、こちらは言葉もない。「縁あって保育所の先生とも会う機会があって・・・それで三丁目に住んでた悪ガキ集めた会をやりたいと思ってる。一番遠いの村井さんやけど」「今は悪ガキかもしれんけど、そのときは品行方正やったで・・・」と言いつつ、昭和40年代がよみがえる。紙芝居のおじさん、竿竹屋さんに豆腐屋さんも往来していた。100円で8つのたこ焼きが、6つになり4つになった頃、三角ベースで野球をやった。アポロ11号の月面着陸を、その悪ガキたちと一緒に見た。
10.1.11

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美繭子に会おうとして

 「三四郎」を再び読んだ。漱石が描く三四郎は、熊本から列車で上京する。その日は名古屋泊まりである。宿を見つけたが、同じ列車に乗り合わせていた、見ず知らずの女性と同じ部屋で過ごすことになってしまった。風呂を使っていると、彼女が後からくる。蚊帳の中には、蒲団は一組しかない。三四郎23歳は、真ん中に仕切りをつくって、一夜を過ごした。翌朝「あなたは余っ程、度胸のない方ですね」と言われた。三四郎に登場する最初の女性である。
 それから東京での学生生活が始まる。講義については、友人与次郎に言わせる。「大学の講義はつまらんなあ」「何故って、そう、活きてる頭を、死んだ講義で封じ込めちゃ、助からない。外へ出て風を入れるさ」「講義が面白い訳がない。君は田舎者だから、今に偉いことになると思って、今まで辛抱して聞いていたんだろう。愚の至りだ。・・・」いずれの言も、納得である。
 先輩野々宮君の妹よし子、入院中である。遠巻きに見えた彼女の表情から「ものうい憂鬱と、隠さざる快活との統一」を見出し、これは「最も尊き人生の一片」で「この刹那の感に自己を放下(ほうげ)しさった」というのが、三四郎の感性である。美繭子と会うのは、その後だが、なんだか、色々まき込まれていくところがよい。

10.1.10

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「東京物語」

 と言えば、小津安二郎(おずやすじろう)監督の映画である。BBCが21世紀に残したい映画100本の一本に選んだ映画[1]である。You-Tubeでも「東京物語」と捜せば、英語字幕付きを少し見ることができる。「小津さんの映画は落語である」と立川志らくさんが話す[2]。かたや黒澤明監督の映画は、講談のようであると
 年老いた夫婦が、息子夫妻、娘夫妻が住む東京に遊びに行く。それぞれの生活がある息子たちはあまり相手もせずに、代わって亡くなった次男の未亡人が東京見物につれて行く。この未亡人と義理の父との会話が終盤の大切なシーンである。家族、親子、老いなどが絡み合って展開する話に、主人公を演ずる笠智衆(りゅうちしゅう)さんの語りも落語が如くで、全体を小津監督独特のローアングルカメラが捉えていく。50年を過ぎた今でも躍動感のある映画である。一方で1953年当時の情景や文化にハッとする部分もある。「早く勉強しなさいよ」と言われた中学生である孫、止むなく「The very cold winter is gone. Spring has come.」と始める。中学一年生に現在完了形である。

[1] 他の日本映画は、西鶴一代女(溝口健二監督)、椿三十郎、乱(どちらも黒澤明監督)、ソナチネ(北野武監督)の四本
[2]「知る楽/おもしろ人物伝」NHK教育1月6日22:25~放送
10.1.9

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3時間を超える説明会

 に出席した。来週末に行われる、いわゆる「センター試験」の監督のためである。説明をしていただいた教務担当の先生は、ただものではない。「余人をもって代えること難し」である。それでも3時間を超えた。2006年から始まったリスニング試験についてが、実際の試験時間を超える説明を要していた。この試験のお蔭で、ICプレーヤー特需となった。まさに「ニーズは作られるもので、もともとあるものではない」の典型で、加えて今回の試験監督用の資料もあわせて、200ページを超える。こちらも消費活動に貢献している。
 この試験、始まりは1979年、共通一次試験(通称)である。最近では50万人を超える受験生で、彼らが「ほぼ同じ時刻に、全国の試験会場で、同じ説明を聞き、解答を始める」 
また「印刷された問題冊子が盗まれる」や「試験終了後の解答用紙の輸送車が襲われること」もなく30年を過ぎている。日本は、このシステムが維持できる世界で唯一の国であるに違いない。

10.1.8

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椅子がきた

 研究室にはイスがある、いつものように。イースねえ。50脚ほどか。村井君より前から研究室を支えたイスも数多い。昭和生まれ、平成生まれ、それぞれである。男子学生ばかりだった頃からの古手のイスは、女子学生も研究室を希望した初めには、彼女たちを支えてどぎまぎしたかもしれない。イスは研究室のメンバーとは、深いおしり合いである。すべての重みに耐えてきた。それでも座らせてもらうとおぼつかないイスもあるので、一部入れ替えてさせてもらうことにした。
 アスクルから荷が届いた。ワイワイ言いながら、現メンバーが組み上げる。赤、黄、緑、黒などカラフル、新しいイスの誕生である。
 「期待した結果が出ずに悔しい」「情けない思い」「時には興奮する結果」それらを冷静にかつ、起こったことを「丹念に、ていねいに、実験ノートに書きこむ」メンバーを下支えする使命を受けたイスたちである。
 これも、後輩たちに引き継がれる。居座りすぎず、尻軽でありすぎず、お世話になろう。
10.1.7

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ヒ素化合物をつくる

 南西太平洋ニューカレドニアに棲む海綿動物から、C3H6As3O3の化学式を有するアルセニシンAと呼ばれる有機ヒ素化合物が単離されている[1]。三酸化ヒ素(As2O3)が、急性骨髄白血病の治療薬として承認されているように、この新たに発見されたヒ素化合物も、病原菌に対して殺菌性を示す。構造は、アダマンタンの三級炭素の部分をヒ素原子で置換える。6つのメチレン炭素のうち三つを酸素で置換えるが、(AsO)3という部分構造は持たないように酸素を配置する。そこでオーストラリアの研究者らは、この構造を確かめることも目的として、化学合成に挑戦[2]。メチレンビス(フェニルアルシン酸)を鎖状のテトラアルシンとし、フェニル基部分をヨウ素に変換、加水分解、脱水環化反応により達成している。
 有機ヒ素化合物は「毒性も高く、役にも立たない」[3]とかで、いまではその合成研究者は少なく、密(ヒソ)やかである。それでもそこに挑戦したチームに賛辞を送りたい。

[1] Chemical & Engineering News, December 21, p. 33.
[2] D. Lu et al., Organometallics, 2010, 29, 32.
[3]かつて有機ヒ素化合物であるサルバルサンは、梅毒治療薬であった。
10.1.6

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マグネシウムに注目が

 ギリシャ、マグネシア地方で発見され、地球上でもっとも豊富に存在する元素の一つ、1808年に高純度で単離された[1]。マグネシウム(Mg)は室温で、酸と激しく反応、窒素や二酸化炭素雰囲気でも可燃性、空気中では明るい白色光を放つ。低密度であることから、光学、電子素子にも使われる。酸化マグネシウムや塩化マグネシウム(MgCl2)から金属は得られる。記事はその後、生体系での重要性、有機・有機金属化学における重要性にも言及している。
 さて、このマグネシウムをエネルギー源として循環社会を実現しようという話にも出会った。海水からMgCl2を抽出、この時海水の淡水化も実現し、水資源問題にも取組む、ついでMgCl2を還元、Mg金属とし、これを燃焼させてエネルギーを得、Mg酸化物は再び金属に還元という系である。矢部孝先生(東工大)の研究をライター山路さんが紹介[2]。内容はエネルギーや水資源問題の現状、この循環社会を達成するために乗り越えなくてはいけない課題も、数字を使って披露される。また太陽光にレーザーも鍵である。本の題名から「Mgだけの話」と考えないでほしい。研究・開発途中の苦労話はほとんどないが「・・・とにかくお金がないため、なけなしの貯金をはたいて・・・」(p. 88)から想像したい。
 さらにMg、学科事務室前に「マグネシウム・デザインコンテスト」(http://www.magnesium.or.jp/contents/contest.html)への応募の誘いのポスターもあった。
 Mgがホットである。放っと(ホット)くわけにはいかない。

[1] P. Knochel, Nature Chemistry, 2009, 1, 740
[2] 矢部孝、山路達也「マグネシウム文明論」PHP新書
10.1.5

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36インチ液晶テレビ

 で歌番組をみる。ダンサーを映していたかと思うと、ボーカルの映像、だんだんアップになる。また全景が映る。ともかく数十秒の間に、場面が次々に変わる。スポーツ番組も同様、二つのチームのフォーメションの次には、スクラムの部分のアップ、ここではバックスのポジションは見えない。選手が走るのを移動式カメラで映したものは画面が揺れる。ほとんど船酔い状態。どの現場でも、複数のカメラが設置され、おそらくディレクターさんが、一カメさん、二カメさん、三カメさんと指示を出しているはずである。がしかし視聴者側は、指示の中に一義的に閉じ込められている。
 そこで提案「一カメ、二カメ・・・を視聴者が選べる」テレビいかがですか。発信側は、どのカメラでも「カメ」へん、で視聴者側は、今日は、一カメ目線で、別の時は三カメの視点から、となれば、赤字で苦しむNHKオンデマンドも収益がデマンドと思うのですが。さてどなたか、この技術開発やってみませんか。
10.1.4

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「学問のすすめ」

 「天は人の上に人をつくらず、人の下にも人をつくらず」で始まる福澤諭吉先生37~41歳の頃の著である。随分前に手にした時はこの一文で挫折、今回、斎藤孝訳[1]を手にした。学問をすること、志を高く持つこと、演説の大切さ、男尊女卑の不合理さなど、今も躍動感を持った「すすめ」である。「学問上の緻密さは内に向かって限りなく、学問活用の広がりは外に向かって際限がない。こうなって、初めて真の学者と言えるのだ
 さらに今の日本の文明があることは、「古人による目に見えない贈り物」であって「われわれの仕事というのは、今日この世の中にいて、われわれの生きた証を残して、これを長く後世の子孫に伝えることにある」と、第9編にある。以前にも書いたように、この理路は昨年1月オバマ大統領が、就任演説でも採用した。その134年も前の「すすめ」に原型があったとは、豊かなお年玉をいただいた。さすが諭吉先生

[1] 現代語訳、学問のすすめ(ちくま新書)
10.0103

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大阪天満宮に参拝する

 本殿間近まで、お参りできる。「マジか」と思うが幸いである。後方から飛来するお賽銭がコートのフードに入り込む心配もない。巫女(みこ)のお神楽奉納。とばりの向こうの巫女舞である。「見にいこまい」とさらに近づく。適度なにぎわいのお蔭で警備員の方もおおらかである。
 五穀(米・麦・粟・きび・豆)豊穣になぞらえ「学の豊穣」も願う。待ち時間なしで、おみくじも引くことができた。「ふた心なくたのしむべし」と出る。「愛心」「真心」「遊び心」「下心」「邪心」が交錯する性格を見透かされてしまった。学業:日々の努力が美を結ぶ。もっともです。探物:時間を要するが見つかる、とある。昨年末頃から、メモ帳(ネタ帳)が手元にない。そこには、その場で思いついたこと、アイデア、シャレ、教えてもらったことなど書き込んでいる。拾った方は、使っていただいてもよい。ただ村井君の乱筆を解読できるかが鍵、自分でも時として判読不明なので。

10.1.2

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2010です

 新年あけましておめでとうございます。2010は三の倍数。「それぞれの位の数字の和が3の倍数であれば、その数字そのものが三の倍数」である。素因数分解は2010 = 2 X 3 X 5 X 67となる。このいずれかで2010という数は割り切れる。が、2010年も割り切れないだろう、もともと「人の世」はそうでなくてはいけない。「収率51%で、まあとりあえずいいか」「49 : 51で身を引くか」「まあそう言わんと、だいたいでやりましょうや」が綯い交ぜられている。だからその対極「化学研究」が面白い。ここでは「収率51%で妥協せず」「49 : 51ではラセミ、でなんとかしなくては」「わずかな違いも見逃さず」、とこだわる。今年もメンバーたちとこの場で、もがき、突破し、完成度を極めることをともにしたい。黒澤明監督の「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」が如くに、なにかを「トラ」まえましょう。
2010.1.1

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