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2010年11月

オウムの色素が羽毛を保護する

 大抵の鳥類は消化した食べ物の中のカロテノイドによって羽の色が出来上がっている。これとは対照的にオウムは自分自身の色素合成ができる[1]。Psittacofulvinsと呼ばれているポリエナール脂肪色素である。クロトンアルデヒドでは二重結合が一つであったのを六つから九つにしてやるとポリエナールの絵にナール。この分子が羽の中の構造タンパク質と超分子を形成あるいは共有結合することで、黄色や赤を作っていると研究者らは考えている。緑色はPsittacofulvinsとメラニン[2]から、青や黒はメラニンそのものから生じる。以前の研究ではこのメラニンがバクテリアによる白や黒色が劣化することを防止していることがわかっていた。今回はオウムの持つ虹色様すべてについて調査し、白や黄色の羽は別の色の羽より速く劣化することがわかった。また色素は羽毛の皮質を厚くすることを助けバクテリアに対する抵抗力も向上させるか、色素が構造タンパク質に結合することで酵素がタンパク質を分解するのを難しくしている可能性があると提案されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, November 1, p. 26.
[2]メラミンと混同してはいけない。メラメラになってしまう。
10.11.30

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配位子が環サイズにダイヤルイン

 できる[1]。オルトブロモスチレンとオルトクロロアニリンとから脱HBr化を伴って生成するジフェニルアミン誘導体の分子内環化反応をPdが触媒する。そのとき用いる配位子を選ぶことで、四種類の違った含窒素複素環すなわちインドール、カルバゾール、アクリジンにジベンゾアゼピンを作り分けることができる。合成できる多種多様な環状化合物のうちDavePhosとして知られているホスフィノアミノビフェニル配位子を使ったジベンゾアゼピン合成が最も興味を引く。生成物の骨格を描くには、NHを含んだ七員環をまず書く。ここでは印鑑はいらない鉛筆でよい。ついでNHの隣の炭素とその隣の炭素を辺としてベンゼン環をどちら側にもつける。最後に手つかずの七員環の炭素二つを二重結合にすれば出来上がる。現在これと類似の骨格を有するカルバマゼピンやオキソカルバゼピンは、高温でのイミノビベンジルの気相脱水素反応によって調製されているが、これらは精神安定剤の基本骨格である、研究者らはこの結果に興奮したかもしれないが。ちなみにここでの反応は7-エンド環化で、(これまでは「しんど」かった)分子内反応の初めての例である」と研究者らは指摘している。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, November 1, p. 25.
タイトルは「LIGANDS DIAL IN RING SIZE」であった。
10.11.29

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本来のクロスカップリングは

 有機金属化合物とハロゲン化物との反応を遷移金属が触媒する玉尾先生らの提案された触媒サイクル「酸化的付加・トランスメタル化・還元的脱離」が基本だった」というお話から講演が始まった。有機ボロン酸を使った反応の発表が最も遅く、二番煎じ、三番煎じだったため論文掲載には苦労した。ただ水中での反応にも適用できるということから岸先生らが1987年パリトキシン合成に適用されて初めて認知されたようなものである。その後血圧降下剤などの製造にも応用された。それでも置換基によっては進行しない系もあって、それを克服するための触媒探索、有機ボロン酸からボロキシンへも展開された。ある時、思わぬ発見から展開した成果を論文にしたところ「なぜ自分の結果を引用しないのか」と連絡がきた。みると彼の論文のsupporting informationに手書きでわずかに書いてあったらしい。セレンディピティ−にはその後のこだわりも大切である」などなどを拝聴した。カニ触媒のアニメも制作された。イカニモの組立てである。カニの左手はPd(0)右手はPd(II)を表しクロスカップリングを実現している。一般の方へのクロスカップリングの紹介には苦労されている。
10.11.28

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有機エレクトロニス

 のことを拝聴した。有機化合物で電気を通す素子(そし)をつくることに挑戦する。素子づくり「そうしよう」では足りない。デザインした分子を苦労して合成して素子を提供しても素知らぬ顔をするデータしか出ないときもある。到達目標の高さが支える分野に参入する使命感と覚悟がそこにはある。午後にはポスター発表があった。どこかの学生が最後の確認と詳細の議論に備えるためか先生と話している。まさに学びの場の会話をここで聞かせていただいた。先生の指導の一言一言も端的だった。聞きながら「自分がそのことを担当した以上は、自分はその実験の、さらにはその分野の第一人者である」と思うことは成熟の一歩であるとかぶつぶつ言いながら、ポスター発表会場に移動した。その学生のポスターはピンクが基調色だった。他にも「説明しましょうか」と声をかけてもらって「話聞いてよ」という姿勢にも打たれた。その後の懇親会では特産の海鮮などもいただき、飽き足らずにオプションにも参加させていただいた。
10.11.27

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成田空港から

 新千歳空港に飛んだ。と言っても飛行機の世話になった。有機典型元素化学討論会に出席するためである。「室蘭に行きますか」と聞かれて「ムロン」と答えたのが数ヶ月前。それで新千歳空港でJRの切符を購入。自由席特急券付きの室蘭往復で随分割安になる。こちらが交渉しなくても売り場では安い方が紹介される。しかもこの日の降車駅と数日後の乗車駅が違うことを伝えると素早く計算される。数日前に滞在した国とは対照的である。そこから登別までスーパー北斗で行くと温泉の香りがホームにも漂う。討論会の主題ともマッチした香りであることに間違いない。しばし身体を休め、一夜過ごして車で討論会場に送っていただいた。講演は時間通り、キャンセルや発表者の交代などはない。お茶やお菓子のテーブルも整然と使われている。ここでもしばらく前の学会とは対照的だった。とは言え「時には予期しないことがあったほうが人をたくましくする」と思っていたら、室蘭の焼き鳥は、鶏肉ならぬ豚肉らしい。サプライズであるがプライスはまだ知らない。
10.11.26

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見るのはただ

 安いよ」とルクソール市街で客を引く「買うのは高いよ」と続く。「さらばじゃ」「バザールでござ〜る」もあった。時にJapanが野蛮に聞こえた。その中、現地のバーをのぞく。地元ビールの銘柄二種類:ドライに近い「ステラ」は捨てられない味である。少し苦みのある「サカラ」には逆らえない。ここには価格表示がある。一方で土産物屋やタクシーには料金表示はない、ルクソール駅からホテルまで通常2ポンド(およそ40円)のところを10ポンド支払ったというエジプト人、旅行客ならさらに割り増しになるかもしれない」とのことである。基本的に「定価」はない。いくらかと聞くと「定価を言っていいから」みたいな感じで問いかけられる。安値を言うと初めて高額を提示する。時間をかけて交渉し双方が納得したところに落ち着かせる。という文化も体験した。このコンファレンスの次回開催は南アフリカ2012年であることを聞いて、バスで空港へ戻った。帰路はルクソール-カイロ-成田で直行便ではない。カイロ経由の迂回路だった。空路だけども「待てば海路の日和あり」である。
10.11.25

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ナイル川西岸に

 出向いた。タクシーに行き先を託して、四カ所をまわった。古代エジプト文明の頃の、王や王妃その家族のお墓などがある。メムノンの巨像に拝謁して山に入る。王家の谷である。ここには、王家のお墓がおそらく36余りある。為政者やその周辺の人の死に際して、棺にたどり着くまでの壁の両側にその人の生涯を描き、古代エジプトの神々を描く。ということが3500年ほどまえにあったらしい。それが今も残る。王家の谷、ようけ歩いた。それでもオーケーだった。
石に彫刻をするという工場に案内された。予定外である。細工の方法を聞いた後に、品物を見せられる。電気を消すのでやばいと思ったら、暗闇でも光る石、これに細工がしてある。いわば蛍石に何かがほった〜る石である。交渉の末、お土産にすることにした。その後、葬祭殿にも立ち寄った。おそらく砂岩である岩を砕いて殿にした場所の壮大さに圧倒された。帰り道はみやげもの屋や客引きの人の間を移動しなくてはいけない構造である。1ドル(ワンダラー)と何度も声をかけられる。日本人には「わんだら〜」じゃなくて「あほんだら〜」と言ったほうが売れるよ」と教えてあげようと思ったがやめた。
10.11.24

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自分の講演のために

 会場に出向いた。そのセッションの開始15分前だけど誰もいない。自分は二番目だったが、最初の講演者がいないので、30分ほど前倒しで開始して欲しいという指示。座長には女性の先生がお二人、会場は10名程の聴衆、イスラム系のかぶりものをされた女性に、体格のよい黒人の方、ローレンス・フィッシュバーン似の方も見える。途中でマイクが音を拾わなくなった。マイクうまくいく?と担当者に英語で聞く。根元をしっかり持てと言う。ほとんど抜けかけの電源に足を取られてプロジェクターがダウン、しばしよけいな話をして「一人キャンセルしたので時間は充分あり」と言ってたら、座長が来て「あと5分で終わってくれ」という。数枚のパワーポイントを飛ばして終わった。質疑応答になったが、座長は担当者と話していて質疑を進めない。やむなく自分で「質問ある?」一つもらって再び聞く。なかったので「この講演終わります」と告げて拍手をもらった後、座長が「Any other questions?」と問いかけた。会場からHe has already closed his session by himself.という声があった。で座長「あらまあ彼は、私の仕事を奪ったのね」見たいなことを言っていた。
10.11.23

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州知事のあいさつ

 も含めておよそ1時間のオープニングセレモニー、ついで特別講演、いずれも多目的ホールに椅子を並べた場所で、横のガラス扉からはテラスやプールサイドに出ることもできる。時に誰かの携帯が鳴る。アフリカ特有の音楽の着信音がフリカかかる。通常は小教室に設置されるタイプのスクリーン、クリーンだけど残念ながらあまり見えなかった。午後にはプログラムとは違う方が一般講演している。終わったら○○さんいますかと出席をとる。招待講演3つが流れて、口頭発表を1時間半前倒し、そこにスタンバイする発表者が講演する。指名を受けた方はあわててデータを講演用パソコンにコピーする。余った時間で翌日の講演者も話した。プール脇のテラスでのポスター発表、100ほどの予定が1/3程度が掲示なし、そのうち1/10ほどはA4二枚のみだった。テラスの回りにボードを置き、両面に掲示することになっている。裏側が割り当てられた時には、50 cmほどの通路のような場所での発表になる。このボードの設置、他では暴動になるかもしれないが、そこはおおらかである。そこで用意されたケーキ・コーヒーは2時間の発表時間のうち30分ほどですべて消費された。アフリカでの身のフリカた、時間の使い方を事前に考えても、その通りにならないことを初日に学んだ。
10.11.22

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エジプトに来た

 およそ一年前「第11回アフリカ国際化学会議および展示」という会議でし
ゃべらんかというお誘いを受けた。当初「まさか自分が?」と思って確認のメールを出したら間違いないと言われて準備を始めた。どの飛行機会社で飛ぶか?旅行社のコメントはエジプト航空が便利だが機体が古いので心配とあった。ドバイ経由の別の航空会社では、ドバイでの待ちが長くバイバイがなかなかできない。機体は期待に添えなくてもいいからとエジプト航空にした。満席である。隣にどこかの添乗員の方が座られて話を聞いた。なので機内でもあきない。今回は関空からエジプト経由でベルリンへ、その後6カ国を廻るツアーとのこと「その6カ国、過酷じゃないですか」と聞く。適当に休憩も入れること、また安さの点でヨーロッパ線よりこちらの人気も上昇しているとのことであった。およそ13時間でルクソール到着。村井君らが「ルクソールにくるそ〜る」ということで迎えがあるはずだけど誰もいない。空港の外では、客引きのタクシーがいる。待つこと2時間、学会のシンボルマーク付きのバスに乗り込んだ。
10.11.21

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来年のことを言うと

 鬼が笑う」らしい、鬼にもダジャレで笑ってほしいけど。で役目上、来年のスケジュールを埋めた。まずは2月「鬼は外のあと」のことである。定期試験や入学試験の合間に発表会などを入れる。教室も確保したほうがよいとのこと。ついで4月から始まる23年度の時間割、しかも前学期・後学期両方である。その後、教員にはwebシラバスの入力の依頼がくる。原則は、ほぼ一年先に話す内容、その順序などの詳細を今決めておく必要がある。講義の段になって「シラバスをふくラバス」わけにはいかないけど、そのときには今の自分とは違うことはわかる。などと思っていたら電子シンポジウムやるので、12月1日までに論文書いてほしいと、ペルージャのSanti先生から依頼が来た。今年のことである。不測の事態がなくてもこの先10日ほどのことはわかる。基本的に岐阜にいない。「間に合わないかもしれないがなんとかしてみる」と返答したら5分後には返事がきた。まさにSanti先生からのメールはサンチ直送であった。
10.11.20

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ペンタセンとは

 ベンゼン環五つがつながった化合物である。ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ついでペンタセンである。みかけはオレンジ色の何の変哲もないテトラセン、だれもトリャアセン。それはともかくいずれも有機半導体や太陽電池などにも使われる機能性化合物である。一方でこのペンタセンに置換基を組込んだ誘導体の例は多くはない。そこでベンゾフェノンとアニリンから調製したケチミンとアルデヒドをRe触媒存在下で反応させ、非対称イソベンゾフランを調製、さらに1,4-アントラキノンとのDiels-Alder反応、ついで還元反応で置換基が導入されたペンタセンの合成に成功した[1]。高井先生、國信先生(岡山大)らの成果である。ペンタセン五位に(アルコキシ基、トリフルオロメチル基、臭素、チオフェニル基などがパラ置換の)フェニル基が組込まれているため、ヘキサンやトルエンやTHFにもよく溶ける。その結果、その後の加工も簡単になるだろうとのこと。かっこういい加工もできそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, November 1, p. 25.
10.11.19

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環状揮発性シロキサンは

 パーソナルケア製品や家庭にもあることがわカっテイいる。一方で化合物は、分解しにくく、環境中の生物に蓄積されるため、カナダ、イギリス、アメリカでは厳しい監視のもとに置かれる様になった。ミミズのような虫、魚類、鳥類や他の動物に含まれるわずかな量を測定する必要がある。なかでも動物中のデカメチルシクロペンタシロキサンというデカい10員環化合物の同定が難しく、有能なデカが嘱望されている。課題の一つは、この化合物がどこにでもあること、たとえば消臭剤やシリコーンを基本にした実験道具にも使われ、たとえサンプリングをしても、それは動物以外からの化合物である可能性もある。別の課題は、化合物の揮発性のため濃縮で消失してしまう可能性である。それに対して「purge and trap」法が開発された[1]。扱う量を最小にし、化合物を環境中にとりだすことがないため、動物の細胞から抽出した量を確保でき、濃縮した形で捕捉できて、質量分析が可能であるらしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, October 25, p. 44.
10.11.18

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塩素化が

 遠足になって、サラに進展する話をする。エチレンと塩素との反応で1,2- ジクロロエタンを生成、ついで脱塩化水素、再び塩素化、脱塩化水素で、1,1-ジクロロエチレンを与える。この重合でポリ塩化ビニリデン(PVDC)が合成された。そんな中、ある日のことアメリカの技術者らが遠足(ピクニック)に行くことになった。ランチ用のためかレタスも持参、それを先のPVDCで包んでいた。通常ならば乾涸びてレタスが枯れたスになる。ところが食べる段になってレタスの鮮度の高さに気づいた技術者は、このポリマーが食品包装用や保管用として利用できるのではないかと商品開発。二人の奥様の名前(サラ、アン)にちなんでサランラップが誕生した[1]。という話をして「古くなってもサランラップ」と言ってみたが全く反応がない。確かに「さら」は「新しい」を意味するがこの地域ではなじみがない。かつて「さらのフラスコ持ってきて」と頼んだところ戸惑っていたので「さらのやつ」と念をおした。手元には「時計ざら」が届けられた。

[1]Wikipedia「サランラップ」も参照
10.11.17

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再利用できるリン配位子は

 遷移金属触媒反応のコスト削減を可能にする。一般に電子豊富なリン配位子の合成は、多段階を要し費用もかかる。いわばelectron-richでかつfinancially-richという立地(リッチ)条件が必要である。そこで再利用できる配位子が開発された[1]。N,N-ジアリールイミダゾリウム塩の二つの窒素で はさまれた炭素上にジアルキルホスフィニルメチル基が結合した塩である。これは室温では1,4-dioxaneには溶けないが、100℃では溶ける。たとえば臭化ベンゼンからフェノールを合成する反応では、先の配位子がつくるPd錯体が溶解している一方でフェノラートイオンが生成すると沈殿するので、これを除去したあとに錯体が再利用できる。 一方で薗頭カップリングでは生成物が溶媒に溶けており、冷却することで配位子が沈殿する。配位子は空気、湿気に対して安定であり反応性がそれほど変化せずに再利用が数回、行える」とのことである。
まあ再利用で配位子を使えば、てっとりばやいしネ(やばいしとは違う)

[1] Chemical & Engineering News, 2010, October 25, p. 44.
10.11.16

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TATPとは

 トリアセトントリパーオキシドのことである。テロリストは、TATPを尊ぶ。調製が簡単、見つかりにくい。蛍光を発しない、紫外線を吸収する、簡単にイオン化するなどの特徴があり、いわば靴爆弾としてTATPがあれば吹っ飛ぶ。でこれまでのTATPを検出する方法では、高い装置などが必要で気相では検出できなかった。それに対して危険な工業ガスを検出するカラーセンサーが開発された[1]。ここでは固体酸触媒が鍵である。TATPは2,2-ジヒドロキシプロパン三分子から水酸基上の水素を取り去り、酸素同士が結合した9員環化合物である。この蒸気をその触媒で分解し、過酸化水素とアセトン蒸気に変換し、レドックス感受性の染料をいくつも並べた中を通すと特徴的な色の変化が見られる。2 ppbのTATPも検出できるデバイスで、食べ物や化粧品などのパーソナルケア製品があっても邪魔をされない。「検出限界の低さに加えて、複数の分子をセンサーとして使っていること、その色の変化をコンピュータのパターンと組み合わせていること、なにより伝統的な化学と機能性の応用との狭間で複雑さに取組んでいる美しい例」であるとのコメントがある。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, October 25, p. 11.

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井上雄彦って

 知ってる?と聞いたら「スポーツ選手?」と言われた。で「スラムダンク知ってる?」と投げる。「あ〜あバスケ」とリアクションは大きい。その井上雄彦論から始まる街場論[1]では「バカボンド」に至った経緯も考察する。この本で登場するマンガは60を超える。なのでほとんど自分は知らない。それが樹先生の切り口でちりばめられて、端的なストーリーや言葉になる。以下その一部:「子どもは葛藤のうちに置かれることによってしか成熟しない」p. 31、「教育されることは本来教わるものに「のびやかな開放感」をもたらすはずである」p.39[2]、「1950年代の日本のメンタリティをもっともみごとに映し出している『鉄人28号』において「鉄人」は米軍(および創設されたばかりの自衛隊)を表している。だとすれば、その操縦を委ねられる「戦後生まれで、侵略戦争に加担した経験をもたない無垢な正太郎少年」は、論理の経済からして、「憲法九条」の表象以外にはありえない」p. 161の部分に至っては「ぼくは正太郎、負けるものか」という歌のフレーズしか思い出せない自分の浅はかさに止まってしまった。ボーイズラブ論、宮崎駿論、養老先生との対談では手塚治虫、赤塚不二夫、日本人の識字率の話なども飛び出す。
 マンガが読みたくなってきたけど、とりあえずマンガはガマン

[1]内田樹著「街場のマンガ論」小学館
[2]続き:「そのためには「私は私を教育するプログラムの意味や構造について完全に理解した」ということがあってはならないのである」とある。
10.11.14

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国際交流関連の

 会に出席、本学の海外に於ける協定大学の数が15カ国39大学、海外オフィス2カ所、留学生受入数385名などの話を聞いた後、現在本学で学ぶ留学生二人とアメリカ留学を体験した看護学科の学生の話を聞いた。彼女は「英語力の向上、先進的であると言われている米国の看護の状況や現場を実感したい、将来性」を考えて留学に至った。初めは留学生向けの授業でもほとんど英語がわからず、宿題の内容も友達に教えてもらうような状態であった。友人の助けがなくてはやり通すことはできなかったし、アメリカ人大学生はよく勉強するとも感じた。出産現場では「普通分娩は麻酔をして行うのが通常で一日後には退院、帝王切開の場合でも、歩くことはできなくても車いすに乗って三日後に退院する」状況を見た。医療保険制度の日米の違いかもしれないが「アメリカのシステムがすばらしいとは一概に言えないと思いました」というのがだいたいの内容だった。「10ヶ月間のアメリカ生活が実に貴重だった」感があふれていた。
10.11.13

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トリフルオロ酢酸は

 pKaが0.3でいわゆる強酸で皮膚にかかると火傷する。1922年に最初の合成が行われ、溶媒や反応剤として使われる。その酸素原子ひとつをイオウ原子に置換えたトリフルオロチオ酢酸は1960年に合成され、酸素版よりわずかに酸性度が高く、こちらも有用な反応剤である。さらにこの硫黄原子をセレン原子に置換えると酸性度の向上も期待されるが安定性の低下も予測される。そのような中R. M. Romanoら(アルゼンチン)のグループはその合成に挑戦した[1]。Ph2P2Se4いわゆるAldrichで売〜りんに出ているWoollins試薬とトリフルオロ酢酸との反応を行い、化合物を単離した。真空ラインを使った技術で無色液体は46°Cで沸騰すると見積もられている。様々なスペクトルや理論計算によって特性を解明している。化合物の反応性も検討され、光分解ではCF3ラジカルが発生するため、これを利用できるかもしれないとしている。ただこの反応、一酸化炭素やセレン化水素も発生すると思われる。セレン化水素を「吸いそう」になったら逃げるべし。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, October 25, 43.
10.11.12

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Fagnou先生一周忌

 先生が急逝されて一年が経つ。ご家族のことを思うと今も言葉がない。お願いしていた総説を世に出して、せめてものお弔いにしたいということで、執筆する人を捜すことから始めた。先生の論文をチェックし、その二ヶ月弱前にいただいたメール内容に合致する論文に氏名のある学生にメールを直接出した。メールは無事「その執筆に関わる様に」と指示を受けていた学生に届いた。それで「遺構として出したい」というこちらの意図は即座に伝わった。むしろ研究室が今後どうなるのか、自分たちが学位を取得する時のメンターは誰かなど、不安が先立っていた。しばらくしてDepartmentの中でメンターが指定され、課程や条件を満たすことで学位取得できる体制にはなった。が「まだまだ論文を書くレベルに不安がある」と本人の弁で、指導を受けながらの執筆で時間を費やしているというメールを時々もらっていた。半年ほど過ぎて原稿を受け取り、その分野をリードする先生に査読もいただいて、11月号のChemistry Letters誌(http://www.chemistry.or.jp/journals/chem-lett/cl-cont/newissue.html)への掲載が実現した。
先生のグループのホームページ(http://mysite.science.uottawa.ca/bliegaul//index.html)は今も更新され、今年も多くの成果を送り出している。
10.11.11

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(-)カイトセファリンの

全合成について拝聴した。セリンなどを出発化合物にアルドール縮合や環化反応などを駆使してそれぞれの段階をクリアする。時に反応効率が悪い、期待の反応が進まないときには、振り出しに戻ってしまうので突破するために様々な検討をする。たとえば水酸基の立体化学を反転させるために混み入った部分の水酸基を一旦酸化し、還元を行う。Swern酸化をしても反応が進行しない。一般には塩化メチレン中、DMSO, 塩基と塩化オギザリルを用いるが、文献調査の結果、塩化オギザリルを置き去りにして、無水トリフルオロ酢酸をTHF中で用いると反応温度を少し上昇させることができて期待の反応に成功。NaBH4を用いた還元でも水を加える、pHを9に調製などの工夫をされている。エチルエステルをメチルエステルに変換するいわゆるエステル交換反応、前例は「すてる」ほどあるが、改めて条件検討する。K2HPO4がよい触媒であることがわかった。ここでNa2HPO4では全く進行しない。E-デヒドロアミノ酸誘導体合成に直面して安藤法で乗り切った。最後はAlCl3/Me2Sで複数の部位の脱保護を一挙に達成して目的生成物を数グラムスケールで得た。「うまく行った時を夢見て」
チャレンジされるそうである。
10.11.10

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若手女性研究者の

 比率増を」に萎えている。化学と工業の論説[1]がしばらく前の講演を思い出させた。その講演では「OECD加盟国における女性研究者のランキングで日本は最下位・・・増加させるための政策として科学研究費の採択者も女性割合を増やすかも」という指摘もあった。まず「何が研究者のくくりなのか」定職が必須なのか、ともかく統計科学的な前提条件がわからない。また科学研究費は、その平均採択率が25-30%程度で、申請者の70%以上が悔しい思いをするシステム[2]である。それに対する配慮も欲しい。いわばその時の聴衆のほとんどすべてはこの70%の経験者である。
 ちなみに10年ほど前からか、女性の社会進出を支援するということも含めて「男女共同参画」と言う動きが登場した。その結果の一つとして、企業側としては新入社員のマーケットが概ね二倍になった。「いやならやめてもいいよ。来年同様の数の新人が供給されるからね」みたいな経営で、人件費を安く抑えることに成功する場合もある[3]。任期付研究職の増は、同様のことを引き起こしかねないと思う。
ではなにか妙案は? で考えてみた。
男子学生同士の話:「ドクター取得してどうするの?」「家事手伝いします」という選択肢もあり、でどうですか。家事労働や小・中学校を中心とする地域に生きることも極めて大切である。

[1]「化学と工業」11月,p.881.
[2] 課題も多い。それでも科学研究費は悪くはない研究費配分システムである。アメリカのように政治家がその申請枠の策定に力を発揮するわけでもなく、審査を政治家や役人が担当することはない。なので申請者の男女を問わず、この採択率の向上は切なる願いである。
[3]これと相まって、「やりがいのある仕事を見つけようという謳い文句」も使う転職情報提供ビジネスも登場した。実際にはどこを捜しても「やりがいのある仕事」というようなパッケージはない。順番が逆で、なんだかわからないけど、やらせてもらっているうちに生まれる充実感・達成感である。
10.11.9

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化石燃料の燃焼

 によって人為的に排出される二酸化炭素(CO2)は、気候変動とは関連性がないという研究に対して、反対の研究結果が報告された[1]。温室効果ガスとしては、CO2、気体になった水、オゾン、メタン、亜酸化窒素、クロロフルオロカーボンが挙げられるが、このうち水蒸気や雲の温室効果は、それぞれ50%, 25%と二酸化炭素の20%を超える。しかしこれらは液化し大気から沈殿するために、CO2や他の液化しないガスとは違った役割である。ただしどんな役割かの記述はない。NASAでは以下の研究がナサれた:理想的な気候モデル実験として、温室効果ガスとエアロゾルを、大気に加えるあるいは除去して、大気温を制御する役割のガスを決定する。その結果CO2がない場合には、地球の温室効果が崩壊し、惑星は凍結状態に陥る。CO2のレベル上昇で温度が上昇する。実際CO2は地球の温度の主な調整つまみとして作用しており、この量を制御することは、深刻でかつ緊急の課題であると書かれている。
さらに詳しい大気の研究に、キタイし「たいき」分である。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, October 18, p. 26.
10.11.8

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ときめき☆ひらめきサイエンス

 という高校生向け講座の日であった[1]。受付を終えた高校生たちは、大学生とは対照的に最前列から着席していた。そのことを伝えた後、昨日書いた内容を話した。ついで専門の先生の電波望遠鏡の紹介に見学の時間である。本学には学内に口径11mのそれが設置されていてこれは全国有数である。続いてナノ、メートル、メガグループに分かれて体験学習である。学振の方から「ナノからマクロの視点」という切り口がめずらしいですね」との感想をいただいた。その発端は工学部の他の系の先生と話していた時のことである。「化学なのでオングストロームで考えています」みたいな言に「受験勉強の時以来、久しぶりにその言葉聞きました。自分らはkm場合によってはメガ」とのこと、で機械系の方は「基本はmかな」との反応から「工学部が扱う学問領域をこのスケール目線で切り取る」というアイデアがスゲエ〜るということになった。それに類した発想で、土木系が「道路・橋を」機械系が「ビークルを」電気系が「そのメカを」化学系が「素材を」つくるというパンフレットもあった。スケール目線で「スケてみえール」様な学部PRをもっと考えてみませんか。

[1]「ときめき☆ひらめきサイエンス」は科学研究の成果を小・中・高校生に紹介する日本学術振興会が主催するプログラム(http://www.jsps.go.jp/hirameki/)である。今年も全国で200余がエントリーされている。
10.11.7

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ナノからマクロの視点

 という講座を開く。いまでは長さの単位はメートル、でも江戸の頃は、尺・寸であった。地域によって一尺の長さが違った。癪にさわったかもしれないが、幸い今はm(メートル)になった。でもたどり着くにはバトルもあった。「1 mどれくらいですか」と聞けば、おそらく自分自身の横幅より少し長い幅を示してくれるはずである。立ち上がって頭から膝までという人は想定しない。どちらにしろメートルは目に「ミエトル」長さである。
この長さの単位が1790年頃フランス革命と関わる。地域による単位の不統一こそ旧体制であると、統一しようという話になった。その結果「北極点と赤道の距離の1千万分の1」になってメートル原器なるものも製造され、1875年メートル条約、1885年に日本も加盟・・・などの話をした後、SI単位系、103の3剰ごとで説明予定なので、ここにはcm(センチメートル)はない。センチメンタルになる生徒もいるかもしれない。・・・アメリカでは今もインチ、ヤード、マイルで、こちらがまいる。ちなみに「1 inchiをメートル換算した値は」と聞いてみる。0.03 mと答えれば、そのインチはインチキ、実際は0.0254 mですと言える。
 こんな骨子で高校生に話す予定である。酔ってはいない。
10.11.6

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FD研究会に

 何を思ったか出席した。冒頭学長のご挨拶があった。その中、「若者は親や地域のなかで、たとえば野球チームの監督などにあこがれを持っていることもあるけど、大学では「人類の知的財産」にあこがれを持たせることが必要ではないか」というご指摘、今も残る。その後、教養教育に対してそれぞれの学部が期待することや要望することを聞き、ある企業からお招きした人の話であった。内容は「入社後の学生が直面する課題」と「産業界が求めること」であった。前半に関連して、今は直近の先輩が10歳も年上ということもあるが、10年ほど前の入社したばかりの人は「丁稚(でっち)」のように年齢の近い先輩に仕事を教えてもらっていたとのこと。思わず「番頭はんと丁稚どん」だったかを思い出した。決して丁稚さんがなにかを「でっちあげる」わけではない。
講演の話にもどる。その後、産業界の求める人材像では、○○力という力(ちから)つきの言葉が「散らか」っていた。こちらは力尽きた。働きかけ力、傾聴力、ストレスコントロール力とかもあった。それでも最後に「人格的成熟度」というワードがあったので、「その通りです。大学を卒業する・大学院を修了する、それを通り抜けることは、成熟することです。その場を提供することが大学の使命のひとつです」と思いつつ、講演に拍手を送った。
10.11.5

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ヒドラジンと言えば

 スペースシャトルなどの燃料としても使われる化合物である。なので水和物として使うのが通常である。かつて無水ヒドラジンの調製を目的に蒸留をしていた途中で爆発、顔中にガラスの破片が飛び散った場面に遭遇したこともある。そのヒドラジン、何人(なにじん)でも、カルボニル化合物との反応や還元剤として使えるが、今回Pd触媒を使ったアリール化反応に利用された[1]。還元力が強いため電子供与性の配位子が鍵である。Mor-DalPhosと呼ばれる配位子は、ビスアダマンチルフェニルホスフィンで、モルフォリル基がオルト位におる」と言う構造である。この二座配位子、立体的因子によって選択性を制御し、また触媒を単量体として維持し分解を防ぐ、またC-N還元的脱離を促進などがポイントではないかと述べられている。また2グラムスケールでは大丈夫だけど、それより大きなスケールの反応の危険性の予知は難しいとのことである。
 最後にwolfe先生のコメントがあるが、その中「relatively small perturbations of ligand structure」の部分がよくわからない。

[1] Chemical & Engineering News, 2010. October 18, p. 8.
10.11.4

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二酸化チタン

 と言っても結晶構造や、どこから、ち(き)たんかによって性質も違う。そのうちどれかはわからないけど、化粧品成分として使われ、白色顔料として使いすぎると「いわばチタンが飛びチッタン状態で」厚化粧感が出るとも記されている。400 nm以下の光を吸収し日焼け止めなども可能。強い酸化力を示し、光触媒としても利用できる。この最初の発見が、本多健一先生と今回文化功労賞を受賞された藤嶋昭先生によるものである。1972年、酸化チタンを水中に入れて光を照射すると水の電気分解が進行した。その後この酸化力の強さで、有機化合物も分解しうることもわかった。それでガラス表面にコーティングすれば、表面の汚れを太陽光との共同作業で分解できるので実用化段階に入った。藤嶋先生によれば、その段階で電話があった「俺たちの商売を奪う気か」と。ビルの清掃関連の方だったとか「チタンをコーティングのために買うていんぐ」とはいかなかったらしい。
 それでもストックホルムへの道が先生にも開かれること、念じています。
10.11.3

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10月31日締切

 の原稿をなんとか送った。4月半ばカーディフからのメール「本のone chapter書かない?」という誘いを安請け合いした。10年前に書いた分のリニューアル版みたいなものでお題はC=Se化合物、「夏休みにやればよいか」と当時は、高を括っていた。が真っ白だった予定が8,9,10月と黒ずんでくる。SciFinderで文献調査をした。10年前とは雑誌の種類が随分と増えている。かつては有機系や典型元素系、バイオ系も少々あったかなという程度であったのが、理論計算、無機材料なども登場、初めて聞くジャーナルも多くて、ドーナルと思っていたら、大学の電子ジャーナルで入手できる論文も多かった。難解な内容も「なにかいな」と目を通してやっとのことまとめた。中にはシリカ表面のPtイオンを選択的に抽出するのに、C=Se化合物を塩酸で処理したものが高い選択性を示すというのもあった。これに付録が必要だが、付録の文献は袋の中である。苦労はまだ続く。このこと「ふクロウ便」で英国へも送りたい。
10.11.2

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非喫煙者であるか

 喫煙者であるかは、保険会社にとっても気になるところである。また職場でのいわゆる受動喫煙やガンになる危険を評価することも必要で、その型の分子’smoking gun’の探索が行われていた。研究は喫煙者が利用する56箇所のカフェやレストランの空気をサンプルとして集め、これぞ「タバコの煙からという分子」を特定した[1]。タバコに火をつけることで数千の分子が放出される。そのうちニコチン、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、リモネン、それにナフタレンなどがこのマーカーとして提案されていたが、これらは自動車、調理、他の火を使う活動から出される空気にも含まれる。それに対して2,5-ジメチルフランは、特異的にタバコに火をつけたことを示す証拠として利用できる。フランの臭いを一心フランに消そうとしても難しい。そこはフランチャイズである。また喫煙できる環境で働く非喫煙者二名の息からもこれが検出されたが、これはいわゆる副流煙を吸引した結果である」と記されている。ちなみにこれでフランの研究がフくランでいけば、なおさらよい。

Chemical & Engineering News, 2010, October 18, p. 26.
10.11.1

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