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2011年2月

「もやしもん」が

 出てきた。怪しいもんではない。石川雅之作の漫画で「菌やウィルスが見える・話もできるという主人公」が大学に入学して、様々な出来事に巻き込まれる話である。内田樹先生が紹介されていた[1]のが縁で数年前に読んだ。その後部屋のどこかにまぎれていた。それが出てきた。読んだ当時、「農学」についての教授の弁「農学は生物の全てを学ぶ学問だ。農という人の営みに限定された物を学ぶわけではない。はるか太古から微生物や自然が営み創り出して来た物や現象を学び乍ら未だ我々が定義すら出来ない新たなものを発見していく事も農学の使命なんだ。つまり農学は太古と未来をつなぐ至高の学問と言ってもいい」[2]に度肝を抜かれた。ちなみに本学は7年ほど前に「農学」の看板が「応用生物科学」に変更された。
 でなんで「もやしもん」なんや? 漫画は「もらいもん」じゃなくてAmazonから購入した。漫画本の購入は「あぶさん」以来である。

[1]内田樹著「街場の教育論」ミシマ社p. 51. p. 59ページ:自分の「ものさし」を後生大事に抱え込んでいる限り、自分の限界を超えることはできない・・・「学び」とは「離陸すること」です。
[2]石川雅之作「もやしもん」講談社p.123.
11.2.28

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いただいたチョコレートを

 チョコっとずついただく、頭痛を回避するためにも。そのチョコレートが超食品(super food)であるらしい[1]。朝食の一品ではない。健康増進や疾病予防の特性を有する食品のことである。粉になった黒チョコは抗酸化剤やポリフェノールを含むが、これらの成分はガンや心臓病から身体を守ると考えられている。研究ではチョコ、ココア、ホットチョコミックスとクラムベリーやザクロ入りのフルーツジュースのひと絞りの成分比較が行われた。その結果、黒チョコとココアのほうが抗酸化活性も高く、フラボノールの含量も多いことが明らかされた。研究者は「カカオの種は超フルーツ(super fruit)であり、カカオ種からの抽出物でできた製品であるココア粉や黒チョコは超食品と考えるべきである」と述べている。またチョコを熱すると健康によい特性を持つ成分が分解してしまうことも明らかにしている。ちなみにココアには熱いお湯を注ぐけれども、その時の変化は示されていない。ここは、コア(核心)に触れるのは怖いのかな。

[1] http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8306796/Chocolate-is-the-new-super-food.html
11.2.27

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運動適正テスト

 としては「立幅とび、上体起こし、腕立伏臥腕屈伸、時間往復走、5分間走」の5種目が挙げられている。これらの体力はいずれも計量し数値化できるものである。一方でどこが発信源かはよくわからないけれど、大学生が身につけるべき「基盤的能力」が提唱され、様々な項目の○○力が列挙されている。しかもその出来・不出来を水準として分けるようにという話で、直接担当される先生が苦心の末に作成された。また大学で開講する授業科目とそれらの○○力の間の相関を示して学生にも提示することも話題となった。その場で短気になってしまい、力尽き果てた。それほど多くの○○力を横軸に示し縦軸には講義名を掲げたリストが学生の学び欲を亢進させるとは自分は思えなかった。また学力に関する○○力は計量できなければ数値化できるものでもない。しかも○○力がついたという結果よりも、様々なことを学んでいる場にいて、気がつけば脱皮していたというそのこと自体が大切である。講義や実習だけではなく、文化・芸術、部活動、ボランティア、アルバイト、旅行、恋愛などなどを通して、学生たちは成熟の過程をたどるはずである。一覧になった○○力を、どう伝えるか、いチカラ考え直してみたい。
11.2.26

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レコードプレーヤー

 と言われても今ではお目にかかったことがない学生も多いかと思う。テニスプレーヤーのプレーヤーとも違う。これは別の例や。レコードプレーヤーはCDが登場する前には主流だった円盤状の音声の記録媒体だった。そこに針を静かにのせて音楽などを聴く。このタイプの単分子が開発され、室温均一系溶液中で磁気特性を切り替えることができることが報告された[1]。同様のスピン交換挙動は、バルク材料あるいは極低温に限定され、分子磁気貯蔵への応用が困難であった。ここで合成された分子はポルフィリンNi錯体の外側に、3-ピリジル基を有するアゾ基が導入されている。アゾ基は緑色、青色の光でトランス-シス異性化させることができる。トランス型ではピリジル基はNiに配位せず、平面四角形型で反磁性となり、シス型ではピリジル基がNiに配位し四角錐型で常磁性になる。研究者らはこの錯体は思いのままにオン・オフできるMRIの造影剤として利用できるかもしれないと述べている。磁性の研究も進展するご時世である。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 31, p. 45.
11.2.25

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ゴキブリは

 腐りかけたビールやピーナッツバターに集まり、時にはペストなども拡大してしまう。そこで食品の中の何がゴキブリを集めるのかを明らかにするため、いくつかの情報伝達物質(semiochemical)の同定がGCならびにMS分析によって行われた[1]。装置にはゴキブリの触覚を接続し、検出器として使い、候補の化合物の嗅覚実験により評価がなされた。いわばゴキブリの働きぶりが鍵であった。その結果、虫はエタノール、DDMP[2]の組合せによってビールを渇望し、1-ヘキサノールがピーナッツバターに興味を抱かせることがわかった。DDMPはアミノ酸と還元した砂糖との反応から生成するため、ゴキブリは砂糖の存在を感知し、1-ヘキサノールは脂質の存在を示していると研究者らは考えている。またこれらの化合物はゴキブリ削減計画の中で餌として利用できることも指摘している。粘着剤があれば実験室でも「ホイホイ」できそうである。
 そのゴキブリのゴキは「御器」に由来し、室町時代にはすでにその名前で呼ばれていたことをどこかで読んだことがある。高貴な方が使われる「茶碗のつや」を連想させたらしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 31, p. 44.
[2] 2-シクロヘキセノンを書く。4位のCH2を酸素に、2,6位のHをOH基に、3位のHをCH3基に入れ替えるとDDMPになる。
11.2.23

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発表者全員9時には

 集合」というお知らせに5分前着席完了だった。「今日は皆さん良い子です」の一言をぐっと抑えて学科長挨拶をお願いする。続いて卒論プレビュー発表が始まった。持ち時間2分以内だけど、ほぼ全員時間内に完了する。予期せぬトラブルもなく11時半頃には終了した。午後はポスター発表90分で31名のグループが二組である。中には聞きそびれた発表もあったが自分のテーマや実験内容も把握できている学生さんの発表もあって新鮮だった。5時終了、会場の撤収作業にかかる。それぞれの研究室から応援にきてもらった先輩たちに加えて、発表を終えたばかりの四年生も、始めは戸惑いながらポスターボードを解体する。そのうち瞬く間にボードが移動用の台車に乗せられた。発表が終わった安堵感・高揚感が駆動した迅速さかもしれない。
 ちなみに数週間前、会場やボード借用のために担当の方にお電話を差し上げた。どちらも実に快く必要書類のこと、前日・当日の段取りのことを教えていただいた。終了後のお礼にも爽やかに応対していただいた。
11.2.23

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低分子の鉄触媒である

 Fe(PDP)がヒドロキシル化や混合ヒドロキシル化に加えて脂肪族カルボン酸のC-H結合を不飽和化し、ヒドロキシルアルケン誘導体を与えることが報告された[1]。ちなみに「(ヒドロキシル化、知るか)と言わないでね」。でこの発見は酵素以外では最初の例である。またこの反応系は、幅広い特性を示すピクロトキシンの様な医学的に重要な天然物の類縁体合成にも利用できる可能性がある。発見したM. C. Whiteらはカルボキシル化された出発化合物から、Fe触媒によって水素の引き抜きが起こり短寿命のラジカル中間体が形成、その後、一方ではヒドロキシル化生成物を与え、もう一方ではアルケン形成に至り、反応条件下さらに反応が進行すると考えている。ラジカル機構を確かめるためにタキサンの同様の酸化反応によってノルタキサンを形成することも示している。このタキサンを使った例がたくさんあるかは知らないが、植物中での酵素P450によるノルタキサン生成、こちらもラジカル機構で進行し、今回の反応も同様であると研究者らは考えている。
 一連の成果は安い金属触媒を使ったC-H結合活性の幅を広げるものであり、複雑な分子合成にも拡大されるものである」とも評されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 31, p. 10
[2] PDP:まずピペリジン二分子を2位で結合させる。つぎに2-ピリジルメチル基を二つのピペリジンそれぞれの窒素に組込んだ構造の0価の四座配位子
11.2.22

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ETH, Seebach先生

 から郵便が届いた。なかにはAngew. Chem.の別刷に先生の直筆のサインがある。「有機硫黄に関する最近の研究よかったです」みたいなメッセージである。73歳になられた先生は現在、名誉教授で、それでもβ-ペプチドや有機触媒の研究を続けられていると著者紹介にある。学生の頃にSeebach先生と言えばCorey研で1,3-ジチアンを研究し極性転換の考えを発展させた著名人であると教えてもらった。ジチアンのことを思案した時期もあった。1970年代始めにはチオホルムアミドの脱プロトン化でチオカルバモイルリチウム発生の先駆的なお仕事もされている。その先生がカルボニル炭素上でのジェミナル置換反応についてminireviewを寄稿された[1]。その途中で村井君たちのチオアミド系の結果にも目が留まった様子で、一部をテーブルとして紹介していただいた。総説では最近の例はアミド、チオアミドが反応基質であること、ケトンに対する反応は以前にあったがそれを最近の論文は引用していないことにも触れ、座右の名(motto)として「早すぎる発見は、ないがしろにされる」と記されている。他には「遅刻した者はボートに乗り遅れる」というmottoもあった。もっともである。

[1] Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 96.
11.2.21

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競争率・偏差値・定着率

 が気になる時節である。競争率が2倍を割り込むと、いずれほとんど全員合格の日がくるのではないかと危惧する。大学側の事情である。受験生にとっては1倍を期待するが実際にはない。また「二次試験で高得点を獲得できれば」という期待を持って試験に臨んでいただくために二次試験の配点を高く設定する。その結果たとえば本学医学部の後期日程試験は今回競争率98倍で3500名弱が受験する。受験料17000円である。
 次は聞いた話である。偏差値が高すぎると「隠れ浪人生を抱えてしまうことにもなる」らしい。とりあえず合格して大学生になる。来年、再来年の医学部受験の準備をする。応用化学科でも同様の学生も在籍するにはするが数は少ない。一方で、ある大学の薬学系では、入学後3年で2割弱が医学部に移籍したり、また特定の医学部への合格者数が上位にランキングされる薬学系もあるらしい。
 受験生の皆さん、合格通知をもらった時には、何かの縁があったと思って、つきぬける勢いで、その分野を学んでみませんか。
11.2.20

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しばしの開放感

 に浸り、最後はカラオケに興じてしまった。この日の前日、発表会が終了して学生表彰の集計をする。上位に選ばれた学生さんは、発表のパフォーマンスに加えて、質疑応答の的確さ、手際のよさ、控えめさ、質問者がとりあえず引き下がる受け答えが秀逸だった。28名から2名を選ばなくてはいけないという激戦で3位以下も僅差だった。「失恋することでタフになれるか」と同様、選から漏れた学生諸氏は、将来の捲土重来を期してほしい。
 その後、街に繰り出す。安堵感や達成感が会話からにじみ出ては、フォア・ローゼズがのど越しで心地よさをかもしだす。企業人になるまでの40日ほどの間、やり残したことをやり抜くのも、遠出するのもよしである。カラオケでは今時の歌もわからず、気がつけば、異常な心持ちで「星条旗」を歌っていた。「激しい戦火の中でも勇敢にひらめく旗、今も自由の国、故郷にひらめいていますか」みたいな歌である。丑三つ時に帰宅した。
11.2.19

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発表会は

 分きざみのスケジュールである。この分きざみに奮起して練習を繰り返す。自分自身の発表の持ち時間と質疑応答にも準備する。「あの先生からは必ず○○が出るので対策せよ」と例年言われていてもできない。その定番の質問のひとつは「君のやったことの一番面白かったこと、発見したこと、解決したことを、門外漢にもわかる様に、短く教えてください」である。この質問そのものには独自性はない。なので「今までの10分程、何を聞いておられたのですか」と聞き返したい気持ちになる場合もあるけど、そこをぐっとこらえて答えなくてはいけない。100文字程度の三つの文章でまとめ上げた回答例を用意しておく必要もある。それでも答えが定番になってしまって「どこに君のオリジナリティがあるのか、それでは先輩と同様ではないか」という指摘が波状し、これには上手に対応できない。一方で発表者が主役の会である。存分に瞬時の知恵で切り返してみたい。「後ほど二人だけになって、じっくりと説明させていただきます」
11.2.18

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半期は16週

 でその中に試験を含めること」という本省のお達しで、今月14日まで試験日だった。先月末からのインフルエンザがインフルエンシャルに学生間で流行し、試験日と重なる。2日間の出校停止を終えて追試験願いを持参する。日程調整・試験会場の調整もきついし」な試験である。15か16日に実施するのが通例らしいが、この通例もつれ〜いなあと16日午前に割り当てた。同じ日、外国人留学生の入学試験で教室は使えない。別の部屋を確保して3名の学生さんが90分みっちりと試験に取り組んでいた。昼には企業の方の訪問を受けた。直接訪問される企業の方の本学学生への期待は大きい。午後は再テストも実施。最大50分のところ35分ほどで全員提出してもらった。エアポケットのように余った時間をうまく使えないので、そのことを記している。その合間に電話が入った。企業の方がご挨拶に来られる日を決めた。17,18日は修士論文発表会で一週間が終わってしまう。こんな一週間が習慣になってはイカン。いい感じな週にしたい。
11.2.17

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蜂群崩壊症候群(CCD)は

 ミツバチを飼育するところで、それらが大量に死に、甚大な損害を引き起こす現象で、世界中で大きな問題となっている[1]。殺虫剤の使用がその原因とも言われるが、気候変動、生態系の破壊、ウィルス、菌類を含む様々なことが言われている。それでも環境保全活動家は、ネオニコチノイド殺虫剤の使用がハチの行動を変化させ、それがミツバチの巣に持ち込まれることで幼虫の成長が妨げられ、結果として全体が死滅することを強く主張している。一方で議論は泥沼化している。ある研究結果では、CCDは人類がミツバチを使い始めたときから存在し、その殺虫剤が使われる前でもハチによって運ばれる病原体が要因であることをほのめかしている。また政治的な駆け引きから科学的事実を引き出すことが難しい状況でもある。 ちなみにネオニコチノイド殺虫剤は神経毒で中枢神経系を攻撃する[2]。その一般的な問題点は、使った場合に植物の花粉や花蜜を含む様々なところに殺虫剤がしょっちゅう付着し、ハチはそれらを巣に持ち帰ってしまう点である。
 いずれにしろ、「人の行為でミツバチにばちがあたる」のは場違いである。

[1] ChemWeb News Letter, January 26, 2011.
[2] http://www.independent.co.uk/environment/nature/exclusive-bees-facing-a-poisoned-spring-2189267.html
11.2.16

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自然界にある水銀は

 微生物の活動によって、高い毒性を示すメチル水銀を生産する。一方で自然環境では、毒性の低い水銀化合物も生産される。いわば自然界と水銀とはジギルとハイド[1]との関係の如くである。この自然界が導く水銀化合物の変化が何によるものかの研究がなされた[2]。その結果、水性環境での有機物の腐敗物からできる化合物が水銀の循環に影響することが報告された。これらの化合物の濃度が低い場合には水銀が還元される一方で、濃度上昇に伴って「還元反応はあかんげん」と抑制される。酸素のない堆積物と水の中では有機物は水銀の還元のみならず、水銀にも結合する。そのため微生物がメチル水銀を生産できる水銀の量が低下している可能性が指摘されている。さらに全体像を明らかにし、魚類に蓄積される水銀の削減方法を開発したいと研究者らは述べている。ちなみに水銀は石炭の燃焼や工業利用という人的活動に加えて、火山爆発などの自然界からも生じ、堆積物や水中でも観測されている。

[1]いわゆる二重人格者である。ハイド氏は「はいどうぞ」とは、たぶん言わない残酷な男性である。
[2] http://www.ornl.gov/info/press_releases/get_press_release.cfm?ReleaseNumber=mr20110111-00
11.2.15

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ハイドロキノン

 入りの化粧品に、先生方の目が点と化す。「還元剤を顔にぬってもいいのかなあ?」である。濃度が鍵だと思う。「アルコール飲んでます」と言われて、98%濃度のアルコールを飲んでいるとは思わない。たいてい薄められている。しかも個人差も大きい。たとえば、一升瓶を渡されておちょこ一杯ほどしか残すことができないほど強い方[1]もいれば、「アルコールを嗅いだだけで顔が真っ赤になるという話」を聞いただけで酔ってしまう方[2]もおられる。ハイドロキノンもおそらく同様である。Wikipediaには、美白作用があること、ビタミンAとの併用も、へいきなようで、その効果が向上すること、2-4%濃度が通常、使用後は肌を守るための衣服(顔だったら覆面かなあ)の着用が勧められる」とある。
 ちなみにハイドロキノンは、明日になってもハイドロキノンである。オドロキ」でもないけど、ノン気にしていると、研究室にある瓶が失せるかもしれない。失せると不憫(ふびん)である。

[1]六代目笑福亭松鶴師匠のネタ
[2]二代目桂枝雀師匠のネタ
11.2.14

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核オーバーハウザー効果の

 原理を自分は理解できていない。電子が主役の有機化学で、その化合物の構造解析には、核の挙動が威力を発揮する。ある特定の電磁波の照射で共鳴する核スピンがある時に、それと相互作用する別の核スピンが影響を受ける。隠すこともできないし、スッピンでも変化するらしい。それを活用したNOE差スペクトルを測定した。10数年ぶりである。「NOEでEかZかわかるで」と言ったものの自分が装置に向かうことになった。NMR装置の手順は同じはずだけとシステムを更新して、コマンドの場所がわからず困んどである。基本プルダウンメニューに収納してあるらしいけど、helpメニューでNOEを捜して手順に出会った。パラメーターをセットしなくてはいけない。PD, PW1にIRATIN。記憶がよみがえる。このIRATINの値。決めるのにいらつく。結局いくつかセットしてはスペクトルを確かめる。数回試した結果、補正前の位相がいいそうなスペクトルが出現した。安堵感にしばし浸る。そこで一次元NMRの技を駆使して獲得できる情報のこと、もっと伝えなくてはと思った。デカップリングやダブルホモデカップリング、別に愛する二人を離別させる話とは違う。NMRの応用、いや基本的な測定である。
11.2.13

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学術・産業懇談会に

 出席した。工学部の就職担当と県内の技術系企業の方々が会する。それぞれの学科の紹介をした。「Chemistryは、化学に加えて(二人の間の)相性を意味すること」や、就職担当として学生に「やりがいのある仕事というパッケージはどこにもない。入社して仕事を授かって、これかもしれないと感じるのがやりがい」という話をした」なども織り交ぜた。懇親会が始まった。乾杯が終わるや否や、ある企業の女性取締役の方に声をかけられた。「先生のやりがいのある仕事の話、まさにその通りです」とヒットされたようである。プレートに食べ物も盛っていただいた。食べる間もなく次々と企業の方々と名刺交換、「好感度が抜群か」はわからない。機械系の会社の方も来られて「Chemistryの意味がわかりました。メッキもやっているので化学系の学生さんの採用を希望しています」と言われる。クロム酸を使ったメッキがめっきり減少、亜鉛塩などを使った技術にシフトしているが、化学式を読める人材が欲しいとのこと。他にも接着系、芯地系、様々な企業の基盤技術と化学の接点について教えていただいた。
11.2.12

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全学共通教育の

 部屋で定期試験を実施した。部屋には様々な警告が掲示されている。たとえば「授業中の私語禁止!」その下に「授業中の私語は、他の学生の受講を邪魔し、権利を侵害する行為です。その他、居眠り、よそ事など授業の妨げになる行為も慎んでください。」とある。担当者が苦心された末の掲示なのだと思う。実際4月、10月の講義の始まりには「やかましい!」と、最も不機嫌な態度をつくって言わざるを得ない場面もある。ただ学びの場には「○○禁止!」の掲示はそぐわない。なので「授業中は先生の話に聞き入りましょう。たとえおもしろくなくても」でどうかなとも思う。
 でもう一つ、居眠りについて:全員に眠ってもらえれば、そのまま退室、次の週に「先週ここまで進みました」と先週分のテストを実施、しかも全員が「優」を期待しているがこのチャンスはまだない。必ず数名は起きて聞いてくれている。また自分自身は学生時代「寝るなら出るな。出るなら寝るな。」で通した。お陰でどれほど授業に出席する機会を逃したか。
11.2.11

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増大する腫瘍を探る分子プローブ

 グルタミン酸は、1,5-ペンタンジオン酸の片側のカルボキシル基のα炭素にアミノ基(NH2)が組込まれた化合物である。この化合物のアミノ基とは遠い側のカルボキシル基のOHをNH2に置き換え、ついでこのアミドカルボニル基のα位に18Fを導入した4-フルオログルタミンの簡便合成法が開発された[1]。18Fは半減期が110分であるためこの元素を合成の最終段階で組込むこと、また立体特異的な反応が必要であった。まずアミノ酸の基本骨格をPasserini三成分反応で組み立て、ついで放射性フッ素を、中性条件下で求核的なフッ化物を用いて導入した。試験管内でがん細胞を使った実験を行ったところ、天然アミノ酸のフッ素化異性体の二種類いずれも細胞に特異的な取り込みが観測された。ちなみに4-フルオログルタミンはアミノ基の結合した炭素がS配置なので、フッ素置換のキラル炭素との間で2S,4Sおよび2S,4Rの異性体がある。後者はさらに生物学的なプローブとして検討されるとのことである。
 いずれ「腫瘍用の主要なプローブにし(ゆ)よう」という日がくることを祈ります。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 23, p. 31
11.2.10

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ピロール合成の一段階法

 が披露された[1]。2,4-二置換ピロール複素環は天然物や薬剤の化学において重要な骨格の化合物の一つである。すなわちピロールには様々なロール(役割)がある。スタンフォード大学のトロスト先生らは二種類の異なるアルキンを使った反応を開発し原子効率の最大化に成功している。すなわちアルコキシカルボニル基をsp炭素上に有するプロパルギルアミン(N上はboc保護)と末端アルキンの反応をPd触媒存在下で行い、4-アルコキシメチルピロール誘導体を導く。反応は湿気や空気の影響も受けず室温で進行する。反応途中で発生する中間体の官能基化も行うことができ2,3,4-三置換ピロールや3-置換ピロリジン-2-オンを導くこともできる。ちなみにピロールの英語発音に注意、ピローなどと言うと枕(pillow)と間違えられて、お先ま(っ)くらになる。
 そう言えばこの話ハワイでお聞きした。論文投稿して国際学会で発表、しばらくしてWeb掲載。見習わなくてはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 17, p. 33.
11.2.9

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人の涙が持つ化学信号

 たいていの動物と同様に人類も身体から様々な化合物を出し、微妙なメッセージを発信している。たとえば人間の汗に含まれる化合物は、考えられていた以上に感情的なシグナルを他の人に送ることができる。たとえば「冷や汗で、あせっていること」がばれたりするかも。一方で涙は無臭である[1]。実際、悲しい映画を女性ボランティアに鑑賞してもらって得た涙と生理食塩水とを男性は嗅ぎ分けることはできなかった。ついで男性ボランティアに涙か生理食塩水を嗅いでもらって、コンピュータで見せられる女性の顔について判断をしてもらった。次の日、前日は生理食塩水を嗅いだチームは女性の涙を、また女性の涙チームは生理食塩水を嗅いでもらって繰り返した。なお被験者にはそれらが何であるかは知らされていない。その結果、男性は涙を嗅いでも悲しみや感情移入が増大することはなかった。一方で表情からくる性的な魅力に対する反応が鈍くなっていた。さらに女性の涙を嗅いで悲しい映画を見ても感情移入の増大はなかったが、ここでも性的興奮が減少した。研究者らは「生理学的には、性的興奮と関連するホルモンであるテストステロンなどの減少を示している」と説明している。さらに研究者らはfMRIによって性的興奮と関連する脳内の部位の活動低下も明らかにしている。これらの結果をもとに「涙の成分化合物は?、男の涙や子供の涙と違うの?、違った感情のときにあふれる涙は違った成分?」など多くの疑問があふれでてくると研究者は指摘している。
 ちなみにこの涙に関する研究はナミではない。

[1] http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-01/wios-wis010611.php
11.2.8

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炭酸(H2CO3)は

 捉えがたい一方で、地球化学、生理学さらには大気過程で重要な化合物である。また炭酸は血液のpH調整、大洋の酸性化や鉱物の溶解にも寄与しているが、以前は固体で研究されており、気体種はご期待に添えず、検出から逃れてしまい、直ちに水と二酸化炭素に分解する。今回オーストリアの研究者らは極低温の希ガスマトリック中で気相の炭酸分子の捕捉に成功し、それらが200K以上でも安定であることを報告している[1]。さらに赤外吸収スペクトルから、H2CO3は二種類の単量体配座と環状二量体が1:10:1の比で存在することを類推している。これらの結果は天体物理学における気相炭酸探索の一助ともなり得る。
 ちなみに炭酸の単量体配座異性体のうちcis-cisはCOに結合する二つのOHのいずれの水素もCOの酸素側にあり(C-O単結合に対してcis)、cis-transはそれらの一方がCOの酸素とは逆側に位置する。環状二量体はカルボン酸二量体と同様にC=O•••H−O型の水素結合の関与による。この関与がないとあカンヨとのことである。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 17, 33.
11.2.7

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結婚式・披露宴に

 列席させてもらった。父と新婦がバージンロードを進み、新郎に引き継ぐ。お父様も同様に数十年前花嫁を授かった。賛美歌を謳い、二人は契りを交わす。披露宴に移る。新婚二人の挨拶に始まり、主賓お二人のご挨拶。根を強く・太く育てることの大切さに、こちらも気が入る。自分は乾杯を担当させてもらった。「学びのアスリートの片鱗」をかいま見たのは5年以上前である。今では「ドラゴボールZやスラムダンクの主人公」が如く成長・成熟する新郎である。新郎のご両親もご挨拶に来られた。「自分の知らない世界に息子を案内した張本人」への感謝のお言葉に身が引き締まった。今の職場での教え子たちが「新郎に、学生時代に色々なことでお世話になったこと、新郎が過ごした岐阜の話を聞かせてもらった」ことを話してくれた。そこに絆や信頼がある。目元が緩んでしまった。さらには今お世話になっている場の先生方の見識・志の高さにも触発され高揚した。用心のためか、最後のひとを押しをされた先生の挨拶は控えられた。黒タイツ姿を見れずにイタイッス。
 改めて、新しいステージに立つ新郎・新婦を祝福。二人の物語を紡ぐ始まりである。
11.2.6

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ポートフォリオを

 学生に課すという。初めて聞いたときは「どんな病か」と間違えた。YAHOO辞書では、1、紙挟み。折りかばんとある。教育関連の意味はそこにはまだない。だからか学修録や学修状況とも呼ばれる。基本は、たとえば半期毎に学業上の目標の確認とそれまでの反省を記入する。それを教員と確認するものらしい。確かに今時の学生の中には、自主独立性が危うい入学生もいる。その点では高校までと同様のスタイルの枠で育成することも必要かもしれない。が大学は学校ではない。ある先生に教えていただいたが「校」という字は「木でできた枠の中に閉じ込める」ことを意味しているとのことである。「子供は何をしでかすかわからない純粋無垢な性分で自制もきかない」その子たちに社会性を持たせて、国を安定化させることに果たす「学校」の役目は大きい。でも「そこからの脱皮」の場や期間を提供するのも大学の使命である。横並びの若者たちだらけになると、それはそれで危うい。「ポートフォリオもほどほどに」と言うのも、へとへとになる。だったら「ぼーっと、しとりーお」と言われそうである。
11.2.5

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授業参観

 と言っても香料が充満する中で、子供たちの元気な姿、緊張した面持ちを参観するわけではない。大学教員が「よりよい授業をするために」見学しなくてはいけないらしい。ともかく学科で一つは実績を残して欲しいという要請で、「ようせん」とは言えない。そこで村井君の授業を30代半ばの先生に聞いてもらった。貴重な時間を割いていただいて申し訳ない。その後、実施報告を作成して提出した。先日の委員会で「報告は委員会でも紹介しない」という話になった。せっかく一生懸命書いたのにと落胆する。なので一部を紹介
話し方・進め方の項目「話し方のスピードや間の取り方はちょうど良いと思われます。」という参観側に対して村井君:「講義にメリハリをつけるために、ダジャレ、ギャク、冗句などお笑いネタを組込んでいるが、今回の学生の感度は低い。この点お笑い芸人にも匹敵できるように自らを鍛え直さなくてはならないと反省している。この日のダジャレ、ギャク
・ミセル構造と言いますが、見せることはできません、ここでは
・水銀はHg、gは小文字で書くように、HGだとハードゲイなので(すでに古いかなあ)
・この短波長の電磁波はガンマ線、がまんせんと間違えんように
など、完成度がまだまだか
11.2.4

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トリニトラミド(TRINITRAMIDE)

 と呼ばれる高反応性化合物N(NO2)3が初めて検出された[1]。この化合物はこれまでは理論化学の対象の範囲内であったが、今回アンモニウムジニトラミドあるいはカリウムジニトラミドのニトロ化によって調製されIRおよびNMRで同定された。研究者らはさらに計算によりトリニトラミドの分解過程、密度や生成熱などの特性を類推している。得られた化合物はロケットの推進剤の成分として利用できる可能性も彼らは指摘している。この研究成果について、窒素を多く含む化合物の専門家であるKlapötke先生は讃えているものの、これまでの推進剤の代替になるかどうかについては慎重な立場である。基本的に貯蔵が容易な成分からなる推進剤が推薦されるが、N(NO2)3が極低温以上で安定であるかどうか現時点では明らかではないためである。
 ちなみにKlapötke先生の講演では色々な多窒素含有化合物が登場し、その爆発実験の映像もあった。これがなかなかエエゾウだった。炎の向きや大きさを制御できる化合物などの探索もテーマの一つである。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, January 10, p. 31.
11.2.3

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ボーキサイト貯蔵所

 から塩が流出した[1]。昨年ハンガリーで起きた事故である。毒性のある赤色の泥が漏れだし、これによって土壌が、植物が育つには塩分が多すぎるレベルに達した。そこでヨーロッパ委員会はハンガリーに対してアルミナ施設の建設を認可しないことを検討している。委員会は赤色の泥が無害であるものに分類されていたことに注視している。この大惨事により10名の方が亡くなられた。さらにpH13の成分がハンガリーの15平方マイルに広がった。ベルギーの大学に所属する研究者を代表とする調査団は、赤い泥で汚染された土壌を集め、それを使って大麦の育成を行った。5%の泥が混入した土壌では、そうでない時と比較して25%低い収穫量だった。また水酸化ナトリウムを土壌に加えて同様の実験を行ったところ、ハンガリーで集めた泥と同様に収穫低下を示した。ナトリウム塩分が主な関心事で、ハンガリー政府は硫酸カルシウム水和物を土地に散布し、pHの減少と土壌を多孔性にし、雨によって塩分がより簡単に流れるような対策を施している。「土壌どうしょう」と言っている場合ではない。ただ土壌には同情したいが。

[1] Chemical & Engineering News, 2010, January 17, p. 11.
11.2.2

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巻矢印(まきやじるし)

 しっかり書いてくれ!と訴えに近い。「こっちの負きやじ」みたいな感じである。有機化合物の特定の部分の結合が切れる時・結合ができる時、それに伴う電子の流れを示す矢印である。一年近く一念を込めて紹介してきた。けど未だに初学者に発する言葉を投げなくてはいけない。「ううう〜」と嘆く。曲がった矢印の起点には必ず電子がある。なので「H+からは電子はでんし」と繰り返したけど以心伝心せず。こちらの威信が砕かれる。エーテル型の酸素に矢印の先が向くことはない。と言っても3割程度がそれを示す。「塩基性条件ではH+は登場しない、酸性条件ではOH-は出ない」に従っている学生さんも少ない。「矢印の順番を間違えると、うまくまとまることもまとまらない。世間と同じ」という説明は、お経の如くだったかもしれない。それでもごくわずかな学生さんの完璧な答えに少々安堵、でも「あかんど、それでは」と自省する。「まだわかんないなあ」という学生さん雰囲気を変えるためにも別の本[1]もひもといてみてください。

[1]たとえば奥山格監修「有機化学」(丸善)ね。

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