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2011年5月

バイオフィルム

 と呼ばれ茶緑色のスライムは小川や湖の底を覆っているが、ここにホルモン様に振る舞う汚染物質が蓄積されうることが報告された[1]。いわゆる内分泌かく乱化合物には、ある種の殺虫剤、可塑剤、合成ホルモンなども含まれるが、それらは魚をメス化させることと関連がある。バイオフィルムは小川の食物網では中心的役割である。いわば「魚のえさ場としてえ〜さ」という場である。ここではそのバイオフィルムや堆積物を、環境中でよく知られた内分泌かく乱物質にさらす実験が行われた。バイオフィルムは堆積物が吸収するおよそ10倍の効率でそれらの物質を吸収した。さらに7日後堆積物中では20-30%の内分泌かく乱物質が分解していたが、スライム中では分解したのは10%以下だった。そのためこれらは小川のバイオフィルム中では増大しうること、さらにやがてこの蓄積が小川の食物網にも入り込む可能性を研究者らは指摘している。
 「バイオフィルムをやばいよ、ひるむよ」にしてはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011 May 9, p. 38.
11.5.31

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アメリカには現在

 65の原子力発電所に104の商業用原子炉がある。ただし1974年以降、新しい原発は建設されていない。これら現有の原子炉の包括的な見直しをすることを大統領が指示する一方で、ホワイトハウスは原子力発電の拡大方針は変更していない[1]。米国原子力規制委員会(NRC)は、短期間調査に基づくレポートでは「安全性向上の措置が直ちに必要であるかどうか」を、また日本の状況を把握、分析した結果を含めたレビューを年の終わりまでには提出する予定であるらしい。一方で2016-2020の間に多くても八つの新しい原子炉の稼働が期待され、20年経過の原子炉66の更新が認められ、さらにNRCは16の更新を検討中で、2017年までは20基の更新申請も予想されている。速い話がほとんど全ての原子炉である。そのため今回の日本での災害や、先のレポートやレビューなどが、原子力政策へどう波及するかわからない。推進派は「影響なし」と言う。カリフォルニアにある原発でさえ、断層が横ずれしうる場所にあって、その地層では日本を襲ったような地震や津波が生じないとしている[2]。さらに地震学者は、6.5以上の地震は起りそうにないこと、原発は、7.0の地震にも耐えうる構造であることなど指摘している。一方で政治家の一人は「日本の危機以前では、これは起こりえないことであると言い、原発を褒めちぎっていたが、原子炉設計・建設された当時のリスク想定を精査しなくてはいけない」と述べている。
 
[1] ] Chemical & Engineering News, 2011, May 23, p. 19.
[2]これに対して「日本の地震は沈み込み帯で起こった。そこは巨大なマグニチュードの地震が発生しうる地殻変動の地域であり、その揺れは、日本で見られた大きな津波を引き起こす」とある。もともとの立地が・・・みたいな話である。
11.5.30

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動的接触角の

 測定も行っておられた先生の訃報に接した。2004年発足した「応用化学科」では、自分の専門性がここでも通じるだろうかと孤独感を持って参画されていたかもしれない。それでも副学科長として、よたよたの学科長だった村井君を支え、融和することが念頭だった。そのお陰で、先生が応用を視野に入れながら基礎研究を推進されていたこと、若い頃には随分ご苦労されたことを初めて知ることもできた。それまでの「なんだかなあ〜?」と思っていた自分の目線が恥ずかしかった。接着への造詣も深く、多くの会社の方々と共同研究を推進し、中国からの留学生も多かった。類似の研究や分析法が近辺にはなくユニークだった。ハワイ年会へは何度も出席され2005年には奥様ともハワイでお会いした。講義では、出来うる限り学生を救いたいという姿勢で、3年前に退職される頃には「材料の化学」も担当されていた。「この科目は新入生が最初に聞く専門の授業なんで、いかに化学が大事かを教え込まんと」とおっしゃっていた。その言葉を意気に感じて、その後を引き継がせていただいている。
 先生のご冥福をお祈り申し上げます。
11.5.29

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木村蒹葭(けんか)堂

 という人の話を聞いた[1]。「喧嘩やどう」と言っては仲裁する人ではない。西暦1736–1892に生き、酒造業も営み、さらに幅広い学問に絵画などなどを収集していた方である。これほどの幅の人を呼ぶにはなんと言えばよいのかに苦慮し「なにわ 知の巨人[2]と呼ばれた大坂の町人学者」とされた。医者、僧侶、文学者、美術家、天文学者、鉱物学者や大名などが上方に来ては蒹葭堂を訪ねた。気持ちも家も開放性にあふれていた様子が日記から読み取れる。また当時すでに世界地図もあって日本の相対的な場所もわかっていた。さらにカリフォルニアについては、島なのか半島なのかがあいまいな状況だったということもわかる。サフランの絵を書いた横にはローマ字によるサイン、昆虫などの虫類を細かに写生した資料もあった。ここに出入りしていた方々の中の二人が後に、こよみが合わないのを修正するために、幕府天文方にも招聘された。そのお弟子さんが伊能忠敬であるらしい。職業ではない学問であるが故の徹底主義、民間の研究会などなど90分の講演に聞き入った。文化の香りにいい気分か

[1] 橋爪節也先生(大阪大学総合学術博物館)
[2]「対して野球は阪神」とは、付け加えられなかった。
11.5.28

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ケテンは

 CH2=C=Oの化学構造式を持つ気体で、通常は二量化して液体であるジケテンとして存在するがどちらも有毒である。これはケテンの欠点というより本来有する性質である。ただアルキン、ジエン、一酸化炭素、ニトリルなどの不飽和結合を有する化合物と異なり、ケテンやその水素がアルキル基に置き換わった化合物を使った遷移金属触媒反応の成功例はなかった[1]。ケテンの反応性の低さではなく、脱カルボニル化が進行し反応性の低い金属錯体を形成してしまうためである。それに対してJ. Louie[2](ユタ大学)らはNi–ホスフィン錯体触媒がケテンとジインの環化付加反応を促進し、シクロヘキサジエノンを与えることを明らかにした。反応は様々なジインとケテンの組み合わせである。現在この機構解明も行われているが用いたホスフィン配位子によるものと思われる。確かに原著は、反応効率が配位子依存であること、DPPB(ジフェニルホスフィノブタン)がよいことを示している。
 ケテンの反応、なかなか、いケテンねえ。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 9, p. 39.
[2] Womens Muscular Legsでも著名な先生である。
11.5.27

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多孔質で

 テトラゾールを含む有機高分子からつくられた膜が、例外的なガス浸透性、CO2分離と吸収特性を示す[1]。研究成果は、多孔質であっても高こうはない、いわば低価格でエネルギー効率の高いCO2や他の温室効果ガス捕捉法開発の先進的取組みとなり得る。テトラゾール骨格の構築には芳香族ニトリルとアジド化合物の環化付加反応を用いている。これまで発電所が排出するCO2捕捉の最もよい方法はアミンの水溶液を用いているがCO2との反応は容易であるものの、再生に高温を必要としたため、これにもエネルギーが必要であった。そのため膜を用いる方法が注目されていた。鍵はCO2を高い選択性で捕捉できる材料設計と、それが膜に容易に浸透できる点だった。たいていの膜はこの両方を満たすことはできていない。いままででパフォーマンスの高かったものは、CO2/N2がおよそ20で、CO2の浸透性がおよそ1000である。一方、今回の膜はそれぞれ30, 2000まで向上している。新しい膜の幕開けに、多孔質も多幸であれと祈りたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 9, p. 14.
11.5.26

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リチウムは

 電気自動車のバッテリーに利用される金属である。これは一般に海水の塩から回収されるが、主な輸入先であるチリやアルゼンチンからの塩の中のリチウム濃度は1400–1500 ppmである。一方アーカンソーのそれは100–300 ppmで、あかんそーである。高い濃度の塩からは蒸発と濃縮で炭酸リチウムが回収されるが、低濃度の塩からの濃縮は難しい。これをAlbemarleという企業が可能にし[1]、アーカンソー州マグノリアで生産する。商業的にはいずれ年間20000トンを供給する体制が見込まれ、価格と純度の面で、現在南アメリカから輸入されているものとも対抗できる。2015年までには7500万ドルの売り上げを期待している。このテクノロジーは企業秘密であるが、リチウムを濃縮するために樹脂を用いた吸着法を採用しているのではないかと類推されている。携帯電話などのために炭酸リチウムの需要は上昇しているものの、価格は2007,2008年頃より25%低下し4500ドル/1トンである。現状三大製造業者が需要を満たし、電気自動車のバッテリーの需要拡大は2020年までは、ないだろうともコメントされている。それでも企業側には「がんバッテリー」とエールを送りたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 9, p. 12.
2011.5.25

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日本再構築

 と題して現段階での日本の状況が大学や研究所、化学会社の復帰状況の点で総括され、原子力発電についての最近の米国でのお話が特集されている[1]。特集の導入部分はだいたい以下の様である。
 3月11日の地震と津波から回復してきたとはとても言えない状況だが、風薫る5月、東京を散歩するには最適の季節である。日本への航空便は満席ではなく航空運賃も格安、ホテルも同様に破格の値段、レストランも以前ほどは混雑していない。にもかかわらず福島原発からの放射能もれに恐れて、観光客が戻ってきてはいない。電力不足のため、東京の夜は普段より暗く電車の本数も少ない。福島の原発では、勇敢な人たちが原子炉冷却停止のために多大なリスクを冒して作業を行っている。鹿島コンビナートでは最も大きなプラントが故障したままである。東北大学や仙台近辺の研究所では、損傷した実験室の復帰に一年はかかる様子である。
 明るい兆しとして、化学工業は全体としては軽いダメージで収まり、鹿島でも遅くとも7月までには概ね再稼働されるはずである。東北地域には化学プラントがあまりなかったため、国全体としてほとんどダメージはない。ある会社の方はC&E Newsに「いずれ地震の被害は大したことはなかったと記憶されるだろう」と述べている。
 これに対して日本の電力については影響が大きい。菅総理が浜岡原発の停止を指示し、再生可能エネルギー開発を後押し、結果としてクリーンエネルギーのグローバルリーダーになることを発表した[2]。
 なお今回の表紙には、破壊された地域の写真に汚れた日章旗が重ねられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 23, p. 14.
[2] Chemical & Engineering News, 2011, May 23, p. 8.日本で報道された菅総理の話や原発収束の工程表のことが同様に伝えられている。
11.5.24

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弁護士

 (Lawyer)はもういいや〜と思う時もある。がこの弁護士は違う。収監された彼女に、テープレコーダーを送り、物語を録音したテープを送り続ける。文盲だった彼女は、いつしか本を借りて、テープと併せて読み書きを習い始める。釈放される間近にその弁護士と再会する。15歳以上も年下で、かつて関係を持った相手である。「朗読者」[1]が「愛を読むひと」になっていたことを教えてもらった。さらにDVDまで貸していただいた。完全無修正版という文字にドギマギした。ケイト・ウインスレッドがハンナを演じる。決してハンナリはしていない。正直でひたむき、時には過激になる。坊や(kid)との出会い、裁判さらには収監後の姿まで30年以上を演じる。顔には老いゆく姿が表現されて、彼女の最後のシーンでは手足の老いも映し出されている。このメークにも目がいく。ある時代に居合わせたために加害者になった彼女、その彼女の蓄えたお金を託された弁護士は被害者の一人に会う。このシーンは自分が読んだ本のシーンとは緊張感もトーンも違って感じられた。でもどちらも印象深い。

[1]村井君のブログ2011.1.15
11.5.23

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サクランボの実が

 なった。15年以上も前に苗木を購入して植えた。数年後から実がつき始めた。今では3メートル余りに伸び、横へも広がる。三月末頃に花が咲く。蜂が受粉作業をする。連休明け頃から少しずつ赤みが出てきた。かなりの数の枝がたわわになって、一部が隣家のガレージの上にも張り出してきた。豊作である。枝を乱暴にゆするとサクランボウの実が降ってきそうである。収穫作業をしなくてはと思うが、最適の日が難しい。早すぎると十分に熟さず甘みがない。熟したものは鳥のごちそう、枝から落ちた分はアリが運ぶ。枝の先に5,6個ついている部分も多いが、すべてが同様に熟しているわけではない。未だ青い実とないまぜである。なので数日は辛抱してサクランボ〜に向かう。今回はたわわになった枝を折って収穫した。サクラの木を切ってしまったときは正直でなくてはならない。で例年、肥料を施したり格別な手入れをしているわけではない。それでもこの時期に上品な甘みに浸らせてもらっている。
11.5.22

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3月末決算

 だった経費について問合せがあった。国の機構からの問合せを、事務担当者はこちらに投げかけた。「MS office」を購入しているが今回の研究テーマとの関連は?「はあ、研究成果を文書にしたりですが」「それでは汎用すぎて困ります。特殊な使い道を・・・」と言うので、怒ってしまった。「機構からの問合せなので」と言うが、予算執行の見張りは事務方のお仕事のはずである。次に特殊性を考えてくださいみたいな話。すでに一ヶ月以上も前のことに後づけの理由などない。怒ったのは申し訳ないと反省しつつも、もしその問合せが機構から実際にあったとすれば、その機構にも唖然としてきた。今回の対象となる物品の購入額は12000円弱である。しかも基本的にその研究で必要とするものである。もちろん研究期間が終了した後も使用できる。ただしユーザー一名限定なので村井君以外は基本的には使えない。200mLナスフラスコを買ったほうがよほど汎用性が高くて高価である。

そこで思い出した。数年前に採択された経費の使用について、担当の方に訪ねていただいた。そこでの指摘は「このプロジェクトのための部屋を別に設けよ。できなければ他の実験との器具の共有は避けよ」だった。この中央と現場のずれを是正するだけで、かなりの経費節約になるはずである。

11.5.21

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TEMPO

 (テンポ)は安定なラジカルで、ピペリジンの2,2,6,6位にメチル基を組込み、窒素上に酸素がつながった構造をしている。分解の速さが大変遅い。いわゆるスローテンポ[1]である。この酸素上に水素が結合したTEMPO-Hは最も弱いO-H結合を有する化合物であり、有機、無機、有機金属いずれのタイプの反応の探索でも貴重な水素原子の供給源である。一方で溶媒和した水が好ましくない副反応を引き起こすため無水のTEMPO-Hが調製された[2]。興味あることに無水TEMPO-Hは安定性が向上し、水和された場合のものとは異なる反応様式を示した。研究者らは、N-複素環カルベン(NHC)やケテンのような低原子価化合物と無水TEMPO-Hとの反応を研究し、NHCの場合には、これまでにあまり例のないC•••H-O水素結合形成が起ることを明らかにした。なお調製はアルゴン雰囲気下、無水溶媒中TEMPOのナトリウム塩とトリエチルアミン塩酸塩との反応を利用している。ただしこの化合物を販売する店舗はtemporary[3]にもまだない。

[1]こちらのテンポはイタリア語で速度を意味する。
[2]Chemical & Engineering News, 2011, May 2, p. 28/
[3]一時的
11.5.20

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ピリジンは

 ベンゼンのCHを一つ窒素原子に置換えた化合物で塩基性を示す。さらにそのピリジンのひとつのCHを窒素原子で置換えた化合物は、二つの窒素原子がそれぞれパラ、メタ、オルトの位置にあるものが、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンと呼ばれ、概ねピリピリしていて臭いも刺激的である。幸い一度嗅ぐと忘れることはできない。ピリジンに含まれる二重結合すべてを還元した化合物はピペリジン、そこからCH2をひとつずつ取り外して出来上がる5,4,3員環環状化合物は、それぞれピロリジン、アゼチジン、アジリジンで、読者の多くは日本人である。
 同様のことを講義でも話した。しばらく全く反応はなかったけど、そのうち顔の表情が変わる学生諸氏もあり、口を抑える学生もいた。間を置いて「・・・ジン」を説明することも肝心で、はやりの「仁」かもしれない。ただこれを契機に二級アミンとケトンからのエナミンへの経路も理解てほしい、コクミンとしてね。
11.5.19

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フリーデル・クラフト反応は

 伝統的な炭素−炭素結合形成反応である。この二人によって1877年に報告された。年号を覚えたい時は「イヤナナ」西南戦争の年である。反応は三塩化アルミニウムのような強いルイス酸触媒を使い、芳香環とハロゲン化アルキルやアルカノイルをカップリングさせることができる。この反応の触媒にカルボランアニオンを有するトリイソプロピルシリルカチオンが適用された[1]。反応は強いC-F結合をさらに強いSi-F結合に置き換える熱力学的な要請によって成り立っている。反応例は1-(o-フルオロフェニル)ナフタレンを出発化合物に使っている。このC-F結合が切断され、形式上アレーンカチオンが発生、ナフタレンの8位炭素が分子内攻撃し環化反応が進行する。加えてジメチルジメシチルシランを塩基として加えることで、カルボランアニオンは触媒量に抑えることができる。出発化合物から脱離するプロトンとシランとでメシチレンが生成、シリルカチオンが再生する。これはグラフェンの基本構造を拡張できることやフラーレンの湾曲した部位などを組み立てることが出来る新しい方法である。
 フリーデル・クラフト反応の研究を実施すること、今もフリーデあル。

[1] Chemical & Engineering News, 2011 May 2, p. 9.
11.5.18

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有機太陽電池は

 溶解処理可能、軽量、低価格、広範囲エネルギー供給可能などの点から広く研究されている。一方で現状では太陽電池の電力変換効率(10%以上が期待値)が低く市場へ大量供給には至っていない。そこで有機エレクトロニクスや太陽電池に応用するための新しい二種類の高分子が開発された[1]。高分子合成はインダセノジチオフェンとキノキサリン[2]とのStilleカップリングを利用している。二種類のキノキサリン、これらが気の利いたものかは知らないが、が使われている。一つは独立したベンゼン環を組込み、もう一つはそれらを縮環させている。一般に、共役系を延ばせば、高分子のHOMO-LUMO差(バンドギャップ)が小さくなり、赤色の光子(エネルギーの小さい光子)が吸収される。こうしようと思ってもなかなかできない吸収である。今回のポリマーは6%の変換効率で、太陽光発電としては高い値である。これは、(1)比較的小さなバンドギャップ(2)アクセプターとして用いたフェニルC61ブタン酸メチルエステルの電子エネルギーレベルとの適度な調和によりエネルギーロスを抑えることができたため、効率的な電荷分布を達成できたとしている。

[1] http://chembites.wordpress.com/2011/04/19/new-conjugated-polymers-for-organic-solar-cells/
[2]ナフタレンの1,4位のCHがNに置き換わった分子である。有機リン化合物であるサリンとは縁もゆかりもない。
11.5.17

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急性膵炎

 (acute pancreatitis)はアルコール依存症が要因のひとつであるが、これに罹患すると、激しい腹痛、吐き気、熱などに苦しむが、診断には時間もかかる。そこで迅速な急性膵炎診断のキットが開発された。しかも1ドル以下で供給できるらしい。マッチ箱サイズのキット内では、二段階の診断過程が進む。第一段階は、患者からわずかな血液をもらい、それをゼラチンとミルクタンパク質の層に落とす。急性膵炎の患者の場合、血液中のトリプシン(酵素の一種)のレベルが高くこれがゼラチンを分解する。第二段階は、苛性ソーダを加える。「もしトリプシンの量が第一の層を分解するのに十分であれば、第二の層に苛性ソーダが流れ落ちる」そーだ。第二の層には、陰極にMg陽極に鉄塩が使われ、これらの間のバリアを苛性ソーダが分解し電気が流れうる状態になる。そこで十分な電流が生じれば、そこにつないである赤色発光ダイオードが点灯し、一時間以内で診断できる。「基本的にトリプシン選択的なスイッチが装着されたバッテリーを開発することができたが、特異的センサーの開発をローテク方式で、時間、お金を節約しつつ、さらには命を救いたいというのが根本である」と開発者は述べている。
 ちなみに陰性であるという診断をキットが下せば、すきっとした気分になれる。

[1] http://www.utexas.edu/news/2011/04/25/crooks_pancreatitis_sensor/?AddInterest=1284
11.5.16

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岐阜長良川では

 鵜飼が始まった。自分の講演の冒頭には、その写真がある。英語では、漁師(fisherman)が糸をあやつる、複数の鵜に機嫌良く鮎捕獲をさせる、小さいものは鵜の腹に大きな鮎は鵜の喉にとどめる。それが漁師のものという話で始める。国内では写真をお見せするだけである。それでも講演まえにお聞きした「おもしろうてやがて悲しき鵜飼かな」を紹介し、講演は「やがて悲しき」にならないようおつきあい下さいと言って始めた。終了後、様々な質問の中に「ダジャレを五つメモしました」とも教えていただいた。自分では、せいぜい二つしか覚えがない。「セレンに未練を残しつつ」見たいな感じである。で質問にもどる。「その反応のからくりは」「その現象はなぜ」「別の機構の提案」など、刺激的なものばかりをいただいた。「少しでも違った目線でみてやろう」という欲張り感の大切さを改めて教えてもらった。加えてホストの先生には二日間、物理から化学、本当に幅広くお世話になりました。感謝の言葉もありません。と同時にまたお願いしたいです。

11.5.15

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リグニンは

 木材に含まれる高分子フェノール性化合物である。バニラの主成分の原料バニリンや接着剤としても使われるリグニンは、幾人(イクニン)もの人々がお世話になっている。それでも現段階では輸送が困難な固体であるため、低分子化して液体にできれば、交通機関の燃料や化成品への利用も拡大できる。一方で酵素によるリグニンの分解は難しく、また芳香族エーテル結合の化学的切断も、厳しい条件でしかも芳香環の還元も伴った複雑な生成物を与える。それに対してJ. F. Hartwig(イリノイ大)らは水素と新しいNi触媒を用いて、リグニンのモデル化合物のC-O結合の選択的切断に成功した[1]。これまで比較的多量な触媒量と強塩基を必要としたが、彼らはバイオマス研究所のグループと共同でこれを克服した。なお「リグニンからは、お金以外ならば、何でも作ることができる。今回の系は触媒をさらに改良しなくてはいけないだろうが、選択的リグニンの脱重合化の可能性を示すとともに、エネルギー問題の解決に対する現代化学の力量の大きさを示している」のでオマス」は、バイオマス変換専門家の言である。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, April 25, p. 11.

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とっかかりになる官能基がない

 アルカンのような場合、燃焼させる以外の化学反応の例はほとんどない。それに対して炭化水素とアミンとの反応を室温でしかも位置選択的に達成できる環境調和型反応が開発された[1]。落合先生(徳島大)、中西先生(和歌山大)らは、1-Br-4-CF4C6H4の臭素上にTfN基が結合した超原子価臭素化合物と炭化水素を反応させている。その結果、炭化水素の三級炭素上のC-H結合のみが切断され、そこにTfN基が組込まれる。一級および二級炭素上のC-H結合は反応には関与しない。寛容である。超原子価臭素は固体状態では安定で、冷蔵庫では一ヶ月分解せずに保存でき、調製も簡単である。ただし「BrF3を使ってHFガスが発生することBrF3はたいていの有機化合物と激しく反応するために取扱注意であること」が指摘されている。
 超原子価ヨウ素/遷移金属系でアミノ化反応を開発する研究者の一人は、アルカンを溶媒として使っていることなどを課題として挙げてはいるものの、この成果は選択的アミノ化を達成する新しい手段であるとしている。
 「官能基がないと、あかんのう」の時代から脱し始めている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, April 25, p. 10.
11.5.13

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炭化物

 英語ではカーバイド、炭素とカルシウム、ホウ素あるいはケイ素などから成る化合物である。たとえばカルシウムカーバイドはアセチレンガスが発生するため激しく燃える。扱いを間違えるとカーバイドがヤバイドになる。その種の化合物のうち炭化ホウ素を基本とした花火用燃焼物が開発された[1]。燃焼の色は緑(green)で地球環境にもグリーンで、ドル紙幣(greenback)にも優しい[2]。これまで使われてきた緑色で燃焼する物は、毒性のあるバリウム、塩素化された有機化合物を含んでいるため環境調和型ではなかった。そのため代替物も特定されてはいたが、高価でしかもバリウムを使ったものほどガンバリ(ウム)がきかず輝きがなかった。今回の炭化ホウ素型は、酸化剤である硝酸カリウムと高温で結合すると、輝度のある緑色で燃えるが、これは準安定な二酸化ホウ素による。炭化ホウ素は、セラミックス工業で広くは使われていたが、着色特性が利用できるとは考えられていなかった。「この発見は燃焼による照明を使う場面、それが軍であれ市民であれ、に対して、革新的で意味のある環境問題の解決方法になりうる」と研究者らは述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, April 18, p. 36.
[2] easy on the greenbacksとあった。「値段もお手頃」ということかな。どちらにしてもgreenを三回続けている。それでもgreeeenではなかった。
11.5.12

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有機フリーラジカルは

 炭素上に不対電子がく(ふ)っついている化学種である。さらに二つ以上のラジカル中心を有する化合物は、有機磁性体を構築するために興味が持たれていると同時に、合成と安定化の難易度は高い。同様に周期表同族のケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛のラジカルも報告されているが、これらの原子を含む複数のラジカル中心を有する化合物は未解明のままであった。それに対して関口先生(筑波大学)らは、p-およびm-キノジメタン誘導体をモデル化合物として用いた[1]。「P-キノジメタンとは、1,4-シクロヘキサジエンの3,6位の炭素からそれぞれ水素二つを取り除き、CH2と二重結合を形成する化合物で、m-キノジメタンはそのメタ位版」であるとキメタンは、誰かは知らないが、後者はジラジカル種である。今回このCH2を(R3Si)2Si基で置き換えたp及びm体が提供された。その結果p体はSi=C結合形成が可能でm体はπ結合を形成せず、違ったスペクトルを示し、それぞれ紫および黄色であった。
含ケイ素磁性体も夢ではない、ご時世たい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, April 18, p. 35.
11.5.11

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C&E Newsの

 編集委員長は以前「福島第一原発が厳しい状況であっても、原子力が短期、中期的には、エネルギー供給には不可欠であること、それによって地球規模の気候崩壊による最悪の事態を避けることができる」と寄稿された。それに対する疑問を呈する意見とさらに委員長の考えが紹介されている[1]。反対の意見は、核廃棄物の保存体制やさらにはウラン鉱山による環境破壊が挙げられている。一方で委員長は、核廃棄物の問題の大きさを認めるとともに、今やCO2は地球規模で気候を破壊しており、人類はこれを回復するすべもなく数千年はこのままであることを指摘する。石炭燃料では水銀を始めとする神経毒になる金属(48トン)を大気中に放出している。化石燃料抽出に伴う環境破壊は昨年のメキシコ湾岸での事故を見れば明らかである。1億8500万ガロンの油が流出した。石炭採掘では山の頂上を破壊し破片は川にも堆積する。天然ガスは、大気汚染が少ないとされているが、その水圧破砕法による採掘が大きな議論の対象になっている。確かに原子炉は高価で放射能に対する恐れを低く見積もるべきではない。なので代替エネルギーの開発は急務で、炭素税の導入も必要であるが、これからの50年の間で、別のエネルギー源で今のエネルギー需要をカバーすることはできない。
 読んでなるほどと思った。でもしばらくして「だいたいやねえ、代替エネルギーは・・・」と言い出すのと同じくらい、ずれているところもあるように感じた。皆さんは如何ですか?

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 9, p. 5.
11.5.10

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浜岡原発

 のニュースがCNNでも報じられている。一国の首相が電力会社に原子力発電所の停止をお願いしたのは、日本初で、世界でも「まれなこと」ではないかと思う。「1954年原子力研究開発予算としてウラン235にちなんだ2億3500万円が計上された。これが日本の原子力の起点であろう」とWikipediaにはある。翌年、原子力基本法も成立し、エネルギー政策が水力・火力から原子力にシフトを始めた。1963年最初の原子力発電に成功した。この年代が「日本も原子力爆弾を保有する」[1]と政府の限られた方々の間で極秘裏に話が行われていた頃とも概ね重なる。それはともかく、石油ショックやCO2排出削減も原子力発電を後押ししてきた。今回のお願いは、浜岡原発の停止にとどまらず、この50年余り続いた原発推進路線に区切りを打つ、いわば撤退することを意味していると思う。どんな場面でも難しい撤退である。「手伝い ましょうか」と自ら言う人も通常はない。それを首相が実行された。

[1]昨年10月第一日曜日の夜だったか、NHKで特集していた。
11.5.9

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着なくなった

 衣類が「いるいる」という業者にお譲りすることにした。品物は着払いで送ればよい。ただし宅配業者が特定されている。で朝9時頃に、その宅配業者に電話した。集配は昼から夕方にかけて行っているとのことである。午後に家で待つ。16時を過ぎても来ない。やむなく電話した。依頼が入力されていることを確認するために自宅の電話番号を告げた。「何時頃になりそうですか」「朝に受けた係のものから電話させますので」と待つが連絡はない。プロ野球の中継も試合途中で終わったため、如何せん観戦して暇をつぶすこともできない。再び電話したら電話番号をまた聞かれた。あわせて4名の受付の人と話した。一様に「申し訳ございません」である。マニュアル化されている。17時半頃には伺いますということだったが、実際には17時50分頃だった。ドライバーの話では、宅配をした後に集配をするので、通常は夕方近くになるとのことだった。このことを受付の方々はご存知ないのかもしれない。マニュアルをリニューアルしてほしい。
11.5.8

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「科学の危機」

とどう向き合うかというNHKのインタビューに野依先生が答えておられた。5月5日午後9時40分頃である。先生は「科学と技術を分けて考えること」「科学は未知の挑戦なので想定外ばかり・・・人間が知りうることは、限定的であること」「社会はリスクとベネフィット、このバランスを冷静に判断して、管理運営していかなくてはならないこと」「人口増加の中で、自然の理にかなったライフスタイルを考えること」などなど意見を述べられた。大越キャスターの最後の問いかけは「原子力に対しては、イデオロギー的に許せないという立場と、経済優先の人たちがいると思いますが」には、「両方とも極端な原理主義なので、どちらにも振れすぎないことの重要性」や「原子力エネルギーは過渡的で、次世代エネルギーの実現にも科学が不可欠であること」と返答されていた。先生は柔和だった。
 対して村井君は「科学の危機」とは?で止まっていた。ここでは「理系離れ」のことではないに違いない。では「自然の前では謙虚であることを忘れてしまう」という根源的なことか?とりあえず留保
11.5.7

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有機発光ダイオード

 略してOLEDに使われる電極材の塩素化が検討された[1]。いわば「塩素化がええんそうや」である。OLEDでは、電子は発光材料からインジウムスズオキシドに移動する。が発光材料の放出する電子のエネルギーはオキシドが受け取ることができるエネルギーより高い。そのため別の層、たとえば銅フタロシアニンがギャップを埋め、電子の流れを促進する。ただしこの層に余分なコストがかかり、製品化を複雑化し、デバイスの電気効率を低下させる。そのためこの追加の層を使わない系が開発された。すなわち電極を、紫外線照射下オルトジクロロベンゼンで塩素化することで、塩素ラジカルが発生、電極表面のインジウム上で、酸素が塩素に置き換わる。極性のIn-Cl結合の層は電位を増加させる。これによって電極が受け取るエネルギーを増加させ、電極とたとえばリン光発光できるIr錯体が4,4’-N,N’-ジカルバゾールビフェニルにドープされたような発光材料とのエネルギーギャップを小さくし電子の直接移動を可能にするらしい。
 これによって使われなくなる「銅フタロシアニン」の瓶はいつも「ふたをしてあんにん」状態になるはずである。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, April 18, p. 10.
11.5.6

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新大阪駅から

 野洲行き新快速に乗った。お安い行為である。京都で席が空いたので着席した。野洲では、やすらぐ間もなく、まもなく米原行きが出発しますとのこと。東向きの列車は向かいホームで旅客を迎えていた。米原までが、いばらの道であるということはない。威張らないで下さいと願いつつ米原へ着く。ここでの乗換は大抵の場合、階段あるいは、疲れ~た~人はエスカレーターを利用する。大勢の旅客が乗換に急ぐ。階段を上がって素直に左へ行けばよいけど、お手洗いを使いたい時には、一旦右手に向かう。用を済まして向きを間違えると新幹線あるいは北陸本線に行ってしまう。加賀温泉方面への列車が誘惑する。我慢して東海道本線に戻る。路線そのものは100年ほど前に敷設された。国鉄の頃はのんびり走っていた。それが時間短縮、乗換便利になった。それでも時間によっては大垣で乗換えなくてはいけない。この日は幸い米原から浜松行の新快速だった。混雑していた。「新快速、はよしんかい」と頭に浮かんだ。即、出発した。

11.5.5

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メチオニンは

 硫黄を含んだアミノ酸であり、必須アミノ酸の一つである。鶏のえさとしても「え〜さかいに」メチオニンの主たる市場になっている。工業的には、取り扱いに注意を要するメチルメルカプタン、シアン化水素に二硫化炭素を用いた一流の合成技術でラセミ体が製造されてきた。それに対してフランス(Arkema)と韓国(CJ)の企業が共同でメチオニン製造の請負人(ウケオイニン)となり、新しい工場をマレーシアかタイに4百万ドルかけて建設、年間8万トンの製造を目指している[1]。これが実現すれば、この共同チームは、年間20億ドル市場の中で、メチオニン製造で世界第五位になる。CJが硫黄を含まない前駆体を糖の発酵によって製造し、Arkemaが硫黄化合物製造を担当し、メチルメルカプタンと前駆体とからL-メチオニンを導く。発酵法が結構であるのは、資本金が抑えられること、より環境調和型である点である。CJはすでにリシンで苦心(クシン)した発酵法開発の経験もあり、幹部は、発酵法はパフォーマンスとコストの面で化学製造法と十分競合できると述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, April 18, p. 8.
11.5.4

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読み終えた本を

 引き取ってもらうために、BOOK OFFへ行った。文庫本から単行本なかには中中辞典もあって80冊ほどだった。改めて読むかもという気持ちを振り払って持参した。じいさんになった自分では持ち運びもままならないので今のうちである。お店の方に手際良くさばいてもらって10分ほどで終えた。で、はてbook offって「本を置いてくる」でいいよなあという疑問が湧き上がり、SPACE ALCに尋ねた。book off:就労拒否をする、ストをする」が最初にあった。BOOK OFFで働く方々とは対照的である。bookも、ぶっくりするほどたくさんの意味を持つ。「本」は、ほんの一部である。[自動]1、予約する、2〈俗〉とても速く走る、[他動]3〈俗〉〜を逮捕する、4《サッカー》(人に)警告を出すなど。ちなみにbook a roomは部屋を予約する」でbook roomは書庫である。「aがない」だけで、あらがいようがない。またbook a hotelとは言わず、book a hotel roomが正しいらしい。ただbook a hotelと言えば「ホテル全体を予約する」ということかなとも思う。
11.5.3

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包装された食品

 たとえば魚や肉類について、フレッシュなものか食べられないかを見分けることは、袋を開けない限り難しい。それに対してセンサーフィルムが開発され、それによって品質管理をすることができる[1]。しかも包装用袋にも組込むことができる。「ほうそうか」もし食品が腐ったときには、フィルムが変色し、そのことを示す。たとえば真空パックに入った鶏肉は新鮮なのか食べることができるのかは見た目ではわからない。賞味期限(best-before date)も保証はない。腐った肉を販売したというスキャンダル(海外のお話)が、不確かさに拍車をかけ、また消費者が適切に保存しなかったため食品が悪くなることもある。このフィルムが開発されたミュンヘンでは緑から黄色になると商品が痛んでいることを示す。でこのフィルムは、魚や肉類が腐ることで生物発生するアミンに応答する。袋の中ではアミンが発生するとセンサー上の色素がこれと反応し、ある一定の濃度になると、黄色から青に変化し、消費者に警告を与えることができる。どんな化合物を含むセンサーなのか、詮索しなくてはいけない。

[1] http://www.nanowerk.com/news/newsid=20901.php
11.5.2

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リストラに会って

 就職活動中の男性、採用試験にチャレンジするも40連敗、ひょんなことから拳銃を手にする。道で出会った老犬をつれて駅辺りを歩く。三人組の若者の喝上げにも会い、ボコボコにされそうになるが、老犬と逃げる。別の若者に助けられた。駅へまた戻る。「人生の勝利者だな」と思われる男性から声をかけられた。信頼できる風だった。若い秘書風の女性が隣に立つ。「仕事を紹介してやる」と言われた。バラ色の展開を一瞬夢見た。でどうなったかは本編を読んでいただくとよい。
 しばらく前、急に物語が読みたくなった。短編もよいけど、手にするなら長編を、と思って「ラッシュライフ」[1]になった。そこには主に五系統の話が入り組み、錯綜して、どこかでつながっている。<参考・引用文献>には「解剖学教室へどうぞ」(養老先生)や「はじめての死体解剖」(アルバート・H・カーター)などもリストになっている。なので中には、読むのに覚悟が必要なシーンも登場する。はっと我に返って「しーんとしんといて」と感じるかもしれない。マウリッツ・エッシャーの作品「上昇と下降」(だと思う)が本のモチーフを暗示する。これもエーデッシャロー

[1]伊坂幸太郎著(新潮文庫)
11.5.1

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