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2011年6月

曲芸師が

 関わる化学分野で、Gladysz先生ら(テキサスA&M大)は、高分子が内側と外側で回転する珍しい異性化現象を発見した。二つのリン原子を三つの(CH2)14鎖でつなげた「かご状の双環性分子」を調製した[1]。かご状でも過保護にしてはいけない。それはともかく化合物の31P NMRスペクトルを注意深く検討した。その結果、この分子のアルキル鎖はお互いが可逆的に、「つらいど」とも言わずにスライドし、分子を反転させ、リン原子をフリップさせ、さらに三つの立体配置異性体を相互転換させることがわかった。これらの異性体は、二つのリン原子上の非共有電子対が、分子の内方向に向くか、分子の外方向に向くかによって、in/in, out/out, in/outと名づけられている。この種の異性化は、これまで見逃している原子や分子をカプセル化する場合の一般的な機構であるかもしれない。またこれは、リンの非共有電子対に配位するゲスト分子を封鎖、輸送、配達を制御するのにも役立つ可能性もある。このリン化合物、臨機応変である。

[1] Chemical & Engineering News, June 13, p. 33.
11.6.30

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原子番号114,116

 の元素をIUPACが承認し周期表に加えられることになった。昨年2月112元素がコペルシニウムと命名されたが、114元素は1999年にロシアとアメリカのチームが独立で報告した。一方116元素については前途多難な経緯があった。1999年、先のアメリカのチームが116元素、1118元素を発見したと発表した。がチームメンバーの一人が偽造テータを有していることが発覚してこの論文は取り下げられた。それでも2000年、同じ研究チームは改めて116元素を観測したと報告した。今回の元素は幻想ではなかった。さらに2004年と2006年に共同研究チームは、116元素を三回観測し、これらは委員会を納得させるに十分であった。委員会でも「これでいいんかい?」という人がいなかったのであろう。それに対して日本で最初に発見された113元素、他に115、118元素についても同様に「発見した」という主張があり、これについて議論が行われたが、これらについては結論が出なかった。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, June 13, p. 33.
11.6.29

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フェノール誘導体は

 医薬品、電子材料、プラスチックなどの主要成分である。これまで主に、フェノールの芳香環を修飾する方法でこれらの誘導体が合成されていた。それに対してStahl先生(ウイスコンシン大学)らが、関心できる系を開拓された。すなわちシクロヘキサノンの酸化反応をPdが触媒し、脱水素とともに期待のフェノール誘導体を与える。たとえばシクロへキセノンに有機金属反応剤を1,4-付加させて得られる化合物の酸化ではフェノールのメタ位に芳香族置換基を組込んだ生成物も合成できる。従来法では、フェノールの配向性のために、このメタ置換合成は、メッタ難しく、メッタにない。類似の酸化系はシクロヘキセノンが用いられていたが、両論量の反応剤が必要だった。それに対して今回、分子状酸素のみを用いている。鍵はPd触媒で、オルトジメチルアミノピリジン配位子が使われている。さらに窒素原子や他の塩基性部位を有する反応基質でもこの反応が適用できるか興味深いとコメントされている。
 Stahl法が、従来法をスタラセル日が来るかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, June 13, p. 8.
11.6.28

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阪神甲子園球場で

 プロ野球観戦をした。1924年に完成した球場、干支でその年が「甲子」だったので「こうしよう」と名付けられたらしい。スタンドの観客は、老若男女がないまぜである。ひいきチームのユニフォームで全身あるいは一部を覆ったファンも多い。歓声は聞こえるが試合そのものは淡々と進む。外野の広さと外野手の守備位置をみると「どこでもヒット」になりそうな雰囲気がするけど、意外や、フライの多くは守備範囲に入る。試合は、新人沢村投手の快投と、なぜかこの日は安定感の欠いた能見投手の投げ合いで進行した。3歳にも満たないかなという少女が「・・・桧山よ〜突っ走れ」と歌う。このままではがっかりの阪神ファンに対して、9回裏に巨人は見せ場を設けてくれた。投手交代とともに連打で2点差、しかもノーアウト1,2塁。阪神側は足の速い代走を送る。巨人側も投手交代。「一球目にダブルスチール、成功すればノーアウト2,3塁、失敗してもワンアウト2塁」だと思ったが、実際は違った。密かに観戦していた巨人ファン、試合終了後オレンジ色のタオルをふって余韻に浸っていた。
11.6.27

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化学で上り降り

 に見える分子を磯辺先生(東北大学)らが合成された。いわば分子レベルでのペンローズの階段である。ペンローズの階段は、四角形のそれぞれの辺に階段がある。ある辺を上りきると次の辺も上りである。四つの辺を歩くと始点のカドと高さに戻ってしまう。変だなあと錯覚する階段である。今回の分子は、らせん[4]ヘリセン分子であり、空間3Dを通常使われる2D分子構造に投影すると、それぞれの目は、環状構造に沿って、一方は下降(descend)もう一方は上昇(ascend)に見える。「はて」と思えばじっくり見ればよい。ヘリセンは、減りはせん。分子は審美的な興味にとどまってはいない。磯辺先生らは「共有結合と非共有結合との組合せに加えて興味ある位相幾何のため、新しい型の液晶分子開発にも有用である」と述べられている。
 ちなみにペンローズの階段をモチーフにしたエッシャーの作品は伊坂幸太郎著「ラッシュライフ」[2]にも登場、舞台は仙台である。同じ仙台から先の3月30日に、今回の論文が投稿された。

[1] http://www.chemweb.com/alchemist-current/index_html#3
[2]「村井君のブログ」11.5.1
11.6.26

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戸外の大気汚染に対して

 室内については、あまり知んない。そこで20年余り室内大気環境の研究が、学生とともに行われてきた。その結果、室内大気の改善について要点が述べられている[1]。
1、尿素やホルムアルデヒド樹脂や、木を圧縮した製品を含む家具を買わない。パーマネントプレス加工の衣類などは、使用前に洗濯すること。
2、入浴中や風呂掃除で、化成品を使っている場合には、ファンを回すか窓を開けること。
3、塩素を含む漂白剤などは、汚れた衣服と化学反応を起こし得て、クロロホルムを発生し、これが部屋にとどまるので、窓を開けて使うこと。
4、靴をきれいにするためにフロアーマットを全ての入り口に備えること、あるいは室内では、靴を脱ぐこと、靴は殺虫剤などの害のある化成品や重金属を室内に運び入れる主役である。
5、妊娠中や子供が生まれて数年間は、家の大掛かりな改修(カーペット、家具の買換えなど)は避けること。
らしいです。加えて、香りを出すキャンドルで遊んどることはせずに、どうしてもキャンドルが必要な時は、蜜ろうや、大豆キャンドルを大事(ダイズ)に使うとよいなどもあった。

[1] http://www.utexas.edu/know/2011/06/02/corsi_indoor_air/?AddInterest=1284
11.6.25

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大気中の水銀量

 がもし、発展途上国で増加している場合には、工業先進国に対して削減を促すべきである。そこで大気中の水銀量が、地球規模で長期間にわたって観測されていた。その結果、予想に反して、過去15年間で最大38%減少していた[1]。1996年から2009年の間で、大気中の水銀濃度が一年あたり1.4~2.7%の減り具合である。全般的には、世界中の水銀排出の1/3は、石炭の燃焼などの工業プロセスに由来し、残り2/3が大洋や土壌に析出した水銀や火山の噴火に由来する。大気での減少量が大きすぎるため、人為的に対応された結果なのか大気の水銀酸化が促進されたことに起因するとは言いがたい。研究者らは、世界各国で、工業プロセスでの制御が厳しく行われ、工業製品における水銀も削減させた結果、水や土壌中へしみ出す水銀量が抑制されたためではないかと考えている。
「たかが水銀にすぎん」とは対照的に、苦言(クゲン)も言わずに削減(サクゲン)した結果かも。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, June 6, p. 38.
11.6.24

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共重合体

 別に今日中につくりなさいというわけではない。様々なタイプがあるが、少なくとも二種類以上のモノマーを使う。これら二つが交互に並ぶ場合、同じ種類のモノマーがある一定の割合で結合した後に、もう一方がある一定の割合で結合する場合などがある。決してモノマー同士がモノマネをすることはない。今回δ-バレロラクトンとε-カプロラクトンをモノマーに使い、環状のgradient copolymer(傾斜共重合体?)の合成に成功した[1]。得られた高分子は、モノマーの一方がまず優先的に重合し徐々にその割合が低下、反応の後半ではもう一方が重合し、環状化合物になる。N-複素環カルベン触媒を用いて、δ-バレロラクトンが優先して(アバレロうとしてか)反応する。成長する高分子は両性イオンで陰電荷を帯びたアルコキシドが成長末端にあり、陽電荷を有するイミダゾール部位がもう一方の末端にある。得られた高分子は、従来のものとは、大いに違う。研究者らは「すべてが白紙である」(All bets are off)と述べており、それらがどのようにふるまうかを正確に見るために、高分子の形態や機能特性を検討中である。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, June 6, p. 38.
11.6.23

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札幌市時計台にも

 行っとけい」と足を運んだ。といっても札幌駅から南へそれほど時間もかからない。写真でみるムードとのギャップに驚く観光客もいるが、そこも楡の木(エルム)の木立がスリムに並ぶ場所である。ハリーポッターの杖の材料もエルムだったかなとか思いながら、時計台の中を見学。明治の始め頃、札幌農学校の演武場として建てられた。時計は後に乗せられた。少々サイズが大きい。農学校の講義は全て英語で、学生は宿舎に戻って4時間の自習が課せられていたらしい。近くには「化学講堂」もあった。で早々に報告会へ出向こうとしたところ雨である。こりゃいかんなあと傘を買った。次の日「傘がない」という事態に陥らない様に、嵩ばるのもいとわずに肌身離さず、空港まで来た。これを持ち込んでいいかどうか、もちろん機内にであるが、聞かないとわからない。先が尖っていないのでよいとのこと。保安検査場を通過。アルミ缶入りコーヒーを持っていたことを忘れていた。なんだか機械でチェックしている。「開けてください」と言う。臭いチェックをされる。缶の出口辺りを鼻に近づけて、手で風を起こして嗅いでいる、化学実験の様に
11.6.22

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チオフェンをつなぐ

 話を聞いた。Peter Bäuerle先生である。昨年のイタリア、名古屋に続いて札幌で三度目の拝聴である。今回はデンドリマー型にチオフェンをつなげた分子、分子からデバイスのストーリーである。教材になりそうな英語表現と発音、でも合成から物性にシフトすると村井君は脱落していた。今回もその覚悟で、デバイス評価の方法やその比較、よりよいものにするための要因などまでメモはできたけど、メモがメモリーには残らない。話はデンドリマー、聞き手はドリーマーである。同じ日のミキサーで話もできた。話の中で「ミュンヘンと札幌がほとんど同じ緯度」[1]に挑んだが、緯度[2]の英語が出て来ない。それでもとりあえずは理解してもらった。原発事故でも「来日に許可が出たか」と聞けば「問題ないよ」と言う。ついで日本政府からの情報の出具合についても聞かれた。「その地域に数年以上、住むことは出来ないだろう」などという公式発表は未だにないが、どこかでリークしている。「避難地域の家畜の餓死、原発事故対応地域の臭いなど」についてのマスコミ報道はトーンダウンしている。ネットで見る現場情報や海外メディアの報道のほうが踏み込んでいる、と伝えたつもりである。「もしドイツで同じことが起きれば?」と聞いた。ドイツでは反原発ではあるが、フランスの電力の70%は原子力で、そのうちのいくつかはドイツ国境沿いにあると言う。原発推進、撤退は政治的に変更されるとのこと、我が国も同様である。なので再生エネルギー推進の予算拡大が見込まれる。先生はそれでも、太陽光発電までの見通しは冷静だった、自分自身は太陽電池を目指した研究を推進しつつも。

[1] 「ミュンヘン-札幌- ミルウォーキー」というコマーシャルが随分前にあった。
[2] もともと知らなかったに違いない。戻って調べた。degrees of latitudeとあった。あちらは複合語である。それで「緯度、経度」が生まれた経緯を知りたいと思った。
11.6.21

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新千歳空港から

 バスで札幌に移動した。話題のJR北海道を避けたわけではない。天気のよさにバスからの車窓も面白そうと思った。 しばらく走ると高速道路に入った。恵庭から北恵庭、牛が放牧されている情景が、絵にもなる。輪厚(Wattsu)でドライバーが交代した。北広島で一般道に戻る。明治の頃、広島から移民された人たちがこのあたりを開拓したという話を思い出す。一般道は、それなりに混雑し、信号待ちになることも多い。三井アウトレットパーク、かなりの広さである。しばらく走ると「関東化学札幌営業所」もあった。札幌ドーム前も通過。6年前にここでオリックス対日本ハムの試合を見たことがあった。ここは外野席より内野席のほうが広い。当時はダルフィッシュ有投手が打ち込まれていた。今では日本を代表する投手になった。札幌市内には、球団の選手の顔を描いた旗が目立つ。地元密着になって久しい。40年程前、日本ハムが球団名を募集した。一位はウイ(ン)ナーズ[1]だったらしい。けどファイターズに落ち着いた。まいった〜ず。

[1] Winners(勝者)とwiener(ソーセージ)だよ。
11.6.20

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クイズです

 と言って、講義の終わり頃に紙を配る。試験が合格点に達していない時に、救うためのクイズ、いわばスクイ〜ズではない。あくまで学生諸氏が、自分自身でどこまで学んでいけてるか、教える側の説明が伝わっているのかを確かめるために毎回やっている。そのためにB6版の紙を用意する。いつもは、お願いしていたのを、今回は自分でやった。事務室にある裁断機が更新されていた。B5用紙を半分にする。新しい器具でスマート感もあったので、20~30枚一挙に裁断できるかと思った。なにげにやってみたけどうまく行かない。裁断で紙がいがんだ。最後の一押しが効かない。右下に目をやると、!マークが△に入った注意書きがある。10枚以下で使用してくださいなど三つあった。用紙以外のものを裁断すると・・・が三番目だった。「裁断について誰かが騒いだんだ」と思いつつ、用紙を前に「ようし」と気合いを入れて少しずつ裁断した。次回の講義では使用予定なので、ご期待を
11.6.19

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長鎖アルカン

 に何があるかんなあ」と調査した。ヘプタン、オクタンだけど、次はノンタン[1]ではない。ノナン、炭素数12でドデカンだがそれほど、でかくはない。かめ虫の分泌物の主成分がトリデカン。炭素数20はアイコサンで用途の一つに相転移材料とある。相転移の例は固体が液体に、液体が気体に、またその逆もしかりである。この転移現象を利用して、たとえば暑い昼間に熱を吸収しアルカンは液体に、夜間に熱を放出して固体に戻る。これによって熱を遮断できるという。炭素数30はトリコンタン、何か魂胆があるかもしれない。マラリアを伝染させる蚊の表皮からC29とC31が検出された[2]。またこの二つの比が、蚊の年齢依存で、15日を超えると大幅に変化する。ちなみにこの比が2.6以上であるメスの蚊では10%程度が、一方で1.8以下である場合には90%程度がマラリア伝染に十分な年齢であることが予測されている。
 がどれも個別のことである。通常の1H NMRではブロードにしか見えないこの長鎖アルカン化学、未開拓な部分も未だ多い。構造異性体の数の多さ(C31H64では10,660,307,791)に加えてC20代、30代、40代と、それぞれ固有の化学があるはずである。いずれにしてもアルカン化学解明には、歩かんといかんかな。

[1] Nontanはキヨノサチコの絵本シリーズ。ぶたさん、うさぎさんも登場するが、あいこさんがいるかどうかは知らない。
[2] Brei, B. et al., J. Med. Entomology, 2004, 41, 807.
11.6.18

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連続フローマイクロリアクターを使って

 鈴木−宮浦クロスカップリング反応が行われた[1]。マイクロリアクターは、より安全な操作、よりよい熱伝達に物質移動、滞留時間による改良された制御、空気や湿気などを避けることもでき、バッチ式よりもスケールアップも容易などの特徴を有している。その中MITのJensen, Buchwaldらのグループは、このスリム化された方法を使った多段階有機合成法開発に挑んだ。テスト反応では、フェノールと無水トリフルオロメタンスルホン酸とを100マイクロリットルのチューブ反応器で反応させ、アリールトリフラート中間体を調製、ついで400マイクロリットルの充填床反応器内のPd触媒がこの中間体とアリールボロン酸のカップリングを媒介し、ビアリール化合物合成を行った。成功の鍵は、マイクロ流体液−液抽出器を使って素早くアリールトリフラートを精製したこと、カップリング段階の最適化が充填床反応器を使って行えた点である。反応は滞留時間7分以内に完了。1時間あたりミリモルスケールを見守ると、収率95%以上であった。
 「彼らはいずれ、フロー系で不老長寿薬に挑戦するかもしれない。」これはふろ〜く(付録)でした。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, June 6, p. 39
11.6.17

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メスの吸血蚊は

 犠牲者から発散される二酸化炭素をセンサーの合図として検出し、次の獲物の辺りをつけている。このセンサー系を邪魔する化合物があれば、それは蚊の気をそらすことで疾病の伝播を軽減することに用いることができる。その様な中、研究者らは、三種類の蚊で、2,3-ブタンジオンが二酸化炭素—センシングニューロンを活性化させることを発見した[1]。そのうちのある種では、1秒間のパルスが蚊の二酸化炭素への応答を5分以上、十分に鈍らせていた。さらに2,3-ブタンジオン、1-ヘキサノール、1-ブタノールと1-ペンタナールのカクテルは2,3-ブタンジオン単独よりも濃度が低い場合でも効果的だった。蚊は、2,3-ブタンジオンが隠れてるカクテルに対してカテルと考えたのかもしれないが、実際には酔ったようである。また温室での実験では、臭いをブレンドしたものを嗅がせると、小屋に入り、CO2の餌をつけたわなに入るメスの蚊の数が減少した。

[1] Chemical & Engineering News, 2011. June 6, p. 39
11.6.16

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経済的に重要な金属

 60種類のうち、50%以上のリサイクル率なのはその1/3以下である。調査した金属の半数以上は、リサイクル率は1%以下である[1]。リサイクルは資源効率化経済にとっても大切で、10年以内にその割合を増加させる必要があると報告書で指摘されている。この報告書はリサイクルされていない金属とそのリサイクル率によって再利用できる金属の量を明らかにすることを目的としている。それらは、政府や産業界が金属のマネージメントに関して、理にかなった、しかも的を絞った決定をするための情報である。報告書によれば、自動車や工場で電池に使われている鉛のリサイクル率が最も高い。なので「鉛のあまり」はないはずである。たんまり使われている。ついで鉄、クロム、ニッケル、マンガンのそれも50%以上である。対して1%以下なのは、リチウム、セリウム、インジウムで、これらは充電可能な電池、触媒、半導体、発光ダイオードに使われている。リサイクル率の低さは、製品中で使用されている割合の低さにも起因している。複雑な廃棄物の中から少量を回収することが課題である。今後10年、希土類、主にランタニド類の価格が高騰すればリサイクルの費用効果も向上する。
 今回のブログでは「リサイクル」という単語を使い回してしまった。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 30, p. 9.
11.6.15

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ぼたん鍋では

 イノシシの肉が使われ市場で販売されている。そのイノシシ肉に安全性の疑イがノシかかったらシい。それに対してドイツの研究者らの検討結果は、残留性有機化合物(POP)が含まれることを示していた[1]。たいていのPOPは殺虫剤や工業製品である一方で、今回見つかったものは、無害な場所由来、すなわちイノシシが食すキノコ類による可能性が高い。化合物の由来をGC/MS法で絞り込んでいったところ、起源はドロソフィリンA[2]に至った。これは50年以上も前にキノコを含む菌類からノコノコと発見された塩素を含む天然物である。研究者らは次に化合物が確かにイノシシの食事から来ているのかを確認する予定である。もしそれがイノシシに対して毒性がなければ[3]、毒性について心配しなくてもよいハロゲン化化合物の設計方法について有益な情報となるはずである。最後にハロゲン化天然物研究の専門家は「炭素−ハロゲン結合には本質的に邪悪な点はない」と述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 23, p. 33.
[2] 4-メトキシ,2,3,4,5-テトラクロロフェノール
[3] 逆にもし毒性があれば、多くのイノシシの命が救われていたかもしれない。
11.6.14

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カタルーニャ州

 はスペインの自治州の一つ、人口およそ740万人、州都はバルセロナ、建築家ガウディも生まれ育った。その州が1989年から「カタルーニャ国際賞」を主催。「文化、科学、人文科学分野の価値の発展のための意欲的・創作的活動が評価された人」を対象に毎年一名に授与されるらしい。2009年ビル・ヴィオラビデオアーチスト、2010年ジミー.カター元米国大統領、2011年村上春樹さんが受賞された。村上さんがカタルーニャでなにを語るんやに関心も集まっている[1]が、この賞の存在にまずは驚いた。スペインでの1Q84の人気も上々らしい。とは言え、どこがスペイン人の感性にヒットしているのかわからない。内田樹先生は「村上文学は「邪悪なものをめぐる神話」であり、「青年の成長譚」であり、かつ「血族と因果の物語」でもある。このあまりに古典的な、ほとんど太古的な「物語」特性ゆえに、村上文学は世界文学としての要件を満たすことになった、というのが僕の仮説です」[2]と「はじめに」で指摘されて、村上文学の謎解きを試みられている。おもしろいよ〜ん。でも夢中になりすぎて、網棚にかばんを忘れないように

[1] 「非現実的な夢想家として」(毎日新聞WeB版に全文あり)、You-Tubeにもアップされている。
[2] 内田樹著「もういちど村上春樹にご用心」(アルテスパブリッシング)
11.6.13

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行く川の流れは

 絶えずしてしかももとの水にあらず。鴨長明「方丈記」の冒頭である。ヘラクレイトスの万物流転、本邦でも「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」が鴨長明より以前である。でも三重大学であった吉田先生のお話は、方丈記でなくてはならない。鴨川と桂川だったかが合流する地点の写真が方丈記に重なる。フロー系の反応の始まる起点である。「合成反応はなぜフラスコサイズでなくてはいけないの」「反応時間はなぜ時間単位なの」という素直な疑問、人間の都合と分子の都合は違う。フラスコで撹拌する場合には、素早く反応が終わった分子にとって、残り時間は待ち時間である。その間に分解してしまう分子もある。速すぎず遅すぎず、ほどよい温度とほどよい時間、これらを空間によって工夫する。ここでの時間は、秒のさらに千分の一以下である。最後の一押しは「根性」などなど、学んだ。懇親会では学生諸氏にも話かけられていた。声をかけられた彼らはこれを僥倖であると身にしみて感じるべし。
11.6.12

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収率や選択性を示す比が

 大げさに書かれる傾向について報告されている[1]。Hudlicky先生らは、1955年から1980年と1980年から2005年までに出された論文を比較し、ほとんど完全な収率と驚くべき鏡像体過剰率で報告されているものが最近の論文では当たり前で、1980年より以前は、まれだった。そこでいくつかの反応を抽出し、論文内容と実験結果の収率、選択性の差を検証し、実用限界と相対誤差を決定した[2]。収率や他のデータを誇張する傾向は、時に非公式な会話ではあり得るが、たいていの化学者は「収率95%以上、異性体比200:1、鏡像体過剰率99%以上は」現実的ではないということには同意している。たとえば反応が未完であったり、重さのはかり間違いは論外で、数%は抽出や精製の段階でも失う。
 このような論文は著者や研究者が、サンプルに含まれるものを正確によく調べる能力に欠けるかあるいは、最悪の場合には、故意にデータを操作したことによるかもしれない。この傾向の要因はさまざまであるが、研究者の間にある、より小さなスケールで、高い質とインパクトのある成果を出さなくてはいけないというプレッシャーも鍵である。責任著者が適宜研究を確認しないこと、アカデミックにいる研究者の訓練不足、装置や経済的支援の不足、論文の審査員が適切に論文を検証していないなどもその要因かもしれない。
 「実験のリアリティについて自己欺瞞に陥っている。実際に何を測定しているかも把握できていない。たとえばクロマト精製で収率99%は、まさにばかげた状況である」と先生は指摘されている。この記事のその後は、産業界やOrganic LettersのSmith編集委員長のコメントが続く。
 それでも皆さん、0.2 mmolスケールで単離収率99%を達成できるように、実験技術を磨きましょうね。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 30, p. 52.
[2]原著はSynlett 2010(18): 2701-2707。インパクトも高く、先生は、数百のe-mailを受け取ったりしておられるらしい。ただ先生は過去に自分も、非現実的な収率を報告したことがあることを認められておられて、今回の調査や活動が、実験の再現性向上、化学の発展、研究者の信頼性の向上の一助になればと考えておられる。
11.6.11

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イソシアン酸の

 化学構造式はHN=C=O。知アンかった人は覚えておきましょう。さてこの化合物はタンパク質をカルバモイル化することができる。またカルバモイル化は、アテローム性動脈硬化や関節リウマチに関連した炎症反応である。この種の健康への影響があるにも関わらず、大気中のイソシアン酸の測定は行われていなかった。思案の結果、陰イオンプロトン移動化学イオン化マススペクトルによる測定が行われた[1]。都会や野火の空気のサンプル、実験室で発生させたタバコの煙を採取した。ロスアンゼルスの空気サンプルには100pptレベル、2010年のフォーマイルキャニオンの山火事の後のコロラド州ボールダーのサンプルからは200pptレベルのイソシアン酸が検出された。たばこの煙からのものは特定値の上限を超え、おそらく140ppm程度のそれが含まれているのではないかと類推されている。またバイオマスを燃やした場合の煙にも、生理学的に重要なタンパク質カルバモイル化を引き起こすに十分なレベルのイソシアン酸を含んでいる可能性がある。
 カルバモイル化のことモバイル端末で伝えることもできる。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 23, p. 32.
11.6.10

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アセトアルデヒド

 からエノラートを発生させる。これにベンズアルデヒドを加えてさらに加熱すると、3-フェニルプロペナールにな〜る。エノラートの付加に続いて水酸基の脱離が進む。それほどよい脱離基ではない官能基の脱離には、それなりのゲインがある。その原因は共役系化合物ができるためであると、とりあえず説明する。得られた化合物の慣用名はシンナムアルデヒドで、シナモンの香り成分である。「シナモン、知らんもん、という人いますか」と聞いてもだれもいない。シナモンという品物を皆さんご存知の様である。シナモンは、生薬として使われるときは、桂皮と呼ばれるが、どの程度の経費が必要かはわからない。のど飴にもニッキとして含まれて人気がある。ニッキを食したときには、日記にも書いておきたい。これを紅茶に入れたのがシナモンティー。そこでWikipediaでもチェックした。「紅茶」の項目に飛んだ。なんと「紅茶の化学」という解説もあった。膠着してしまった。
11.6.9

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シスプラチンは

 シス−ジアンミン二塩化白金で、抗がん剤として卵巣、精巣、膀胱、脳などにできる腫瘍の治療に用いられる。がん細胞のDNAが白金に配位することでがん細胞が死滅すると考えられている。シスプラチンには同様にアルブミンも配位することができるが、この詳細が明らかにされた[1]。アルブミンはみんなの身体にもあるブミンで、肝臓で生合成される。研究はトリプシン消化、液体クロマトグラフィー、タンデムマススペクトルを用いて、アルブミンのどの部位がシスプラチンに配位するのかを同定した。その結果、アルブミンの二つの鍵になるヒスチジン部位がシスプラチンに架橋配位することがわかった。これらの部位は主要な亜鉛への配位部位である。この相互作用が、シスプラチン投与の患者さんに見られる副作用、すなわち血液中の亜鉛欠乏と尿中の亜鉛過剰の原因であるかもしれないと研究者らは考えている。またこの成果によって、副作用を軽減できるシスプラチン類縁体開発のプランも提案しうる。

[1] Chemical & Engineering News, 2011 May 16, p. 33.
2011.6.8

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メタンが超臨界CO2に

 屈服する」という題の記事[1]、屈服するはyield toに対応する。yieldといえば業界では「収率」だけど様々な意味を持つ。Yieldの意味調べにも辞書がイールドという感である。米国でドライブしていてYIELDという表示を見る。収率かと思ってやり過ごしてはいけない。前方道路優先なので一旦停止したほうがよい。で記事は、ジアゾ酢酸エチルとメタンガスとの反応で、窒素ガスの発生に伴って、食品、香料工業で使われているプロピオン酸エチルが収率19%で生成することを紹介している。ジアゾ酢酸エチルからカルベン種が発生しこれにアルカンのC-H結合が挿入する反応は知られているがメタンでは不可能であった。この課題解決に、まずいわゆるスコーピオネート(さそり型)配位子にたくさんのハロゲンを組込んだピンサー配位子を調製し銀に配位させた化合物を触媒として用いた。さらに溶媒として超臨界CO2を使った。超臨界CO2は反応中間体とも反応せず、しかもメタンと混ざり合うことができる。
 なおここでの「超臨界」は原子炉とは縁がないはずである。臨界の理解も難しい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011 May 16, p. 32.
11.6.7

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手荷物がひとつ

 なかった。乗換え前の地下鉄に置き忘れた。大阪市交通局に電話した。ものごし柔らかい大阪弁で「忘れた当日は、終発、始発駅のどちらかに保管されていること」とその駅の電話番号を教えてもらった。駅に電話をした。こちらは邪険なおじさんかと思ったがそうではない。同様の応対だった。南森町駅9:50頃、前から二両目と伝えると、可能性のある列車の時刻を調べて、現在のその列車の状況も説明を受けた。忘れ物についても聞かれた。服を収めるバッグだった。「ズボンが二本ずぼ〜んと入っています」とは言わない。ダークブラウンでバッグの厚みは10 cm未満。15分後改めて電話をしてくださいという心地よい言葉に、しばらくして電話、それらしいものがあること、乗務所に保管してあるとのことだった。
 用事が終わって大日駅に出向いた。「忘れ物はこちらへ」と矢印があるので、同様に訪ねる人も多いのかもしれない。でもそこは、正常運行を確保するための下支えの場だった。自分のドジで余分なお仕事をさせてしまった。これからはドジなきように、地下鉄に誓ってった。
11.6.6 

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大阪駅に着いた

 ホームの移動に一旦、上に昇る。最近増設されたルートである。疲れた〜と思ってエスカレーターでホームを移動するが、左は、急ぐ人のためにということで、せわしく歩かなくてはならない。東京では右側、岐阜ではエスカレーターを利用するメンバー次第で右にも左にも、あるいはどちらも移動、停滞など様々である。プラットホームなのでぷらっと出来るかと思いきや、人の多さに圧倒される。その間をくぐり抜けて通ったかつての身のさばきができない。環状線は内回りと外回りがある。二重マルを書いた内と外で左側通行である。なので外が時計回りであるが、この言い方もデジタル化が進めば消えるのかもしれない。「チャンネルを回す」と同様の運命である。かつてはひたすら回っていただけの環状線が、今では奈良方面や関空方面行きもある。後続の列車を待つ人をかき分けて普通列車に乗り込んだ。乗り込めば経路は数十年たっても変わっていない。学生の頃、何周したかも勘定できずに長時間にわたって世話になったこともあった。
11.6.5

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福島から永田町へ

ニュースのトップが移動した。この日まで二ヶ月あまり、メディアでは、総理、官房長官、原発対応の方々が主にフォーカスされていた。東京電力の役員や現場の方は、連日登場しては、時には過剰なバッシングではないかというのもあった。そのニュースが永田町に移り、与党や野党のメンバーに関わりなく写し出されていた。その分、福島原発のこと、被災地の現状を伝える時間が減った。と感じていた中、「ちらつく原発タブー」という記事[1]も目に入った。そこでは、1、浜岡原発の停止要請、2、自然エネルギーの拡大、を打ち出した総理に対して、政治家の中には原発推進のグループから支援を受けている方々が少なくないこと指摘している。そこで原発対応の不備を総理にかぶせて辞任に追い込み、エネルギー政策の総理のメッセージを弱体化しようとしているのではないかという論調だった。

確かに委員会などでの「総理、辞任を」というフレーズを「電力政策は、震災前のままで」と置き換えることもできる。「東電や原発に関すること」を話題にしないための「不信任案審議、問責出すかも」のアクションかも知れないと思った。まさか電力会社から新たな政治献金があったということではないとは思いますが。

[1] 中日新聞63日「話題の発掘、ニュースの追跡」

11.6.4

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雨模様の中

 鵜飼にお誘いいただいた。観覧船に乗船したところで、今回のホストの先生が女性の漕ぎ手の方から声をかけられていた。その前の日の「市の環境審議会」とかでお会いしたとのことである。いずれ経費節減で、市立大学の先生も、漕ぎ手になる日があるかもしれない。船が川岸につけられ、ここで一時間ほど食事をする。ただ船内にはトイレがない。幸いトイレ船が一艘停泊しているので、そこへ行けばよい。ただし「トイレ行っといれ」と気楽にはいかない。船と川岸の間に横幅40cmほどの板が置かれている。この平均台のような渡しを、私も通過しなくてはいけない。川は透き通っていて清らかで、わずかな明かりでも川底まではっきりと見える。自分の船を離れるときには船名を鮮明に覚えておかなくてはいけない。帰りに見失うこともあり得る。幸い観覧船の数も多くなく、鵜船を至近で見学することができた。鵜が勢いよく川に潜る。やわらかでしなりのある動き、篝火に照らされる鵜匠の手縄(たなわ)さばきもあったわなと、堪能させてもらった。
11.6.3

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デンマークの家

 かと思った「Danish homes」。いえ、そうではなくて米国にある退職された方が住まれる場所である。設立されて100年を超える施設もある。そのホームやデイケアセンターで採取された「ほこり」の主な成分はスクアレンやコレステロールだったが、これらが有害であるかもしれない屋内のオゾンの量を削減している可能性がある[1]。スクアレンは、皮膚表面に豊富にある脂質であり、コレステロールは料理の過程で出てくるもので、これらが屋内のほこりの主成分であることを示している。どちらもオゾンと反応し屋内空気を改変している。もしスクアレンが屋内の他の部分にもあれば、屋内オゾンの除去がさらに効率的に行われ、スク(救)ワレルかもしれない。「一方で人の出したものや酸化物が他の人にとってはアレルギー源になったり、害のあるものになる可能性もある。その点この研究は、人は、自分自身の一部を自分の足跡として残すことを示している面もある。」と研究者は述べている。
 またオゾンを屋内に送んないようにしないといけないかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 16, p. 33.
11.6.2

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DuPontの工場は

 1951年から、テフロン生産で使用する界面活性剤として、パーフルオロオクタン酸(PFOA)を大気やオハイオ川におくったんであった。それに対して2001年に起こされた集団訴訟に対して、PFOAによって工場周辺の住民の健康状態の変化がみられるかどうかを検討する資金提供の合意がなされた。動物での実験ではPFOAが成熟を妨げることが明らかにされた。ついで人の性的な発育に対する調査が行われた。8歳から18歳までの少年3076人と少女2931人の協力を得て、DuPontは製造していないけど内分泌かく乱可能性物質であるパーフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)とPFOAの血清中の濃度が測定された。子供たちのPFOAの濃度は一般のレベルの5倍ほどであったが、PFOSはわずかに多い程度であった。この濃度と思春期の始まりの関連を調べたところ、PFOAは少女の場合に遅延と関係があり、PFOSは男女とも遅くなること、概ね4-6ヶ月であることもわかった。結果として、PFOAよりもむしろPFOSが全米でわずかに増加すれば、顕著な発育障害が表面化するかを注視しなくてはいけないと研究者らは考えている。
 発育遅延、そりゃアンチエージングだわなあと「早とちり」してはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, May 16, p. 8.
11.6.1

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