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2011年8月

CH-π

 相互作用の程度を見積もることは簡単ではない。その中、溶液中で脂肪族C-H結合とアレンの非局在化したπ系との間の弱い相互作用を見積もる方法が提供された。すなわち、いわゆる分子平衡(molecular balance)が、双環性N-(2-メトシキフェニル)イミド骨格に基づいて検討されている[1]。この分子が折り畳んだ構造になって2-メトキシ基がフェナントレンの上にかぶさった場合には、C-Hとアレンが相互作用できる。一方でN-C結合が回転し、アルコキシ基とアレンが離れた場合、相互作用もアレヘンになる。NMRを使ってこれら二つの配座の比を決定し、脂肪族CH−π相互作用の強さが測られた。その結果、相互作用はかなり弱いことが示されている。アルコキシ基と相互作用するための十分な大きさの芳香環がナイ(コキシの)場合との差は1 kcal/mol程度で、これは配座のエントロピーや立体的な反発で容易に解消されるらしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 8, p. 39.
11.8.31

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会食の後

 最近オープンしたclosedという名のバーに行く。そのお店に入るためには鍵が要る。限られた方の特殊空間である。ご一緒した方もそこのマスターをご存知だったらしい。鍵をもらって権利を得たので店を出た。いつものお店にも立ち寄った。そこでは民主党の代表選挙なども話題になった。「頑張って働いている人からは税金をがっぽり取って、でもニートでもオーケー、生活保護も受けれるなんて」みたいな話になった。いやまあ「自分の身を自分で守るしかない社会になると、どれほどお金がかかるかわからない、一億三千万人が、まあまあ、なんとかというのがいいのではないか」とか言いながら、しばらくしてお店を出た。月曜日である。その時に「あ、先生や」と見破るドレスの方がおられた。見送る二人もドレスの女性に身を引いてしまった様子。幸いドレスの方のアドレスも知らないけど、15年来の顔見知りである。でそこはまた今度。でも実はここはclosed shellの街かもしれない。
11.8.30

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台風Muifaが

 8月8日、中国大連を襲い、工場のフェンスを破壊した[1]。およそ1000人の消防隊員と中国陸軍が、工場の回りの堤防を、必死になって修復した。この災害に伴う危機一髪が数千の大連市民を刺激し通りに向かわせ、工場の即時停止を要求した。この工場は、Fujia Groupが所有するもので、15億ドルの設備で最大70万トン/年のp-キシレン、それはポリエステル生産の基幹原料であるが、が製造でき、大連の中心からほぼ20マイル離れた場所にある。2009年から稼働している。市当局は先の市民の要求があった数日後、その工場の停止を命令した。8月17日の発表では、工場を永久に閉じる作業は始まっているとし、市長は「市民の安全がなによりも優先される」と述べていることにも触れていた。コンサルタント会社の長は「当局は警備部隊を出動さないことに躍起になっている、この設備の認可は大連市が出しているため、市とFujia Group との間で賠償についての話が始まるだろう」と指摘している。なおP-キシレン工場を巡っては2007年にも福建省アモイで抗議行動があった。
 
[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 22, p. 11.

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マーチを

 お借りしている。東京の五大学ではない。自動車である。間違いがあってはいけないので普段より慎重にハンドルを握る。これまでイグニッション(エンジンの点火)は、自動車のキーを差し込んで回すことが基本だった。自分が今乗っている車だと、備え付けのダイヤルみたいな部分がそれに対応する。今回のマーチではボタンを押す。停止も同様である。車に乗り込むとまず「ブレーキを踏むんだよ」という表示が出る。ここでブレーキを踏まない人は、励起状態にシフトできないのかもしれない。エンジンが稼働しているときに、ブレーキをしばらく踏んでいるとエンジン音が小さくなる。でブレーキを離すとエンジン音が再びわずかに大きくなる。いま時の機能らしい。同様に、いま時はインテリジェントキーで、遠くからでもドアの施錠や解錠ができる。しかもイモビライザー機能というものもあって、車とキーが一対一対応らしい。限られた鍵を持ってこそ始動できる。
 いずれにしろ代車である。台無しにしないような運転を心がけたい。

11.8.28

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先週の披露宴

 終わり頃、村井君の胸に彼女がそっと寄り添ってきた。しばらく前から、こちらが送るシグナルに興味を示していた。近づくと先方の手をするりと抜けて胸元に収まった。つぶらで屈託のない瞳、両腕の中で安定感のある姿勢で回りを見渡していた。柔肌に、ほのかなぬくもり。披露宴の主役をよそに、ツーショットを何枚か撮られた。二人の年齢差に衝撃を受けたからに違いない。一言もしゃべらない彼女、それでも披露宴が始まった当初、ぐずっていたのとは対照的な雰囲気だった。この後どうしようかと考え始める村井君。このまま二人でどこかに行ってしまうことはできない。ようやく彼女もいつもとは違うところにいることがわかった様子で、ヤングママのほうへ身体を傾けた。今度はこちらの両手からスルリとぬけて、もとに戻った。おそらく最高に居心地の良い空間である。この世に生を受けて一年ほどか、彼女にも幸多かれと祈った。「化学って面白いよ」と言いそびれてしまった。
11.8.27

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そのころ研究室での

 緊張感は頂点に達していたに違いない[1]。Sames研のメンバーはSezenの成果を再現しようとし、それに対して前向きで彼自身の研究の目標達成に協力的なメンバーに対して彼は好意的であったようである。しかしSezenのデータがねつ造であったことが確定的である今、それは衝撃的な打撃である。コロンビアはSezenの初期の実験についての調査を開始し、その結果から全体像が明らかになり始めるであろう。一方でSames自身が、Sezenの偽りのデータを見抜けなかったことに対してどう考えているのかはわからない。ただ彼の現在のホームページには、現在所属する多くの活気溢れるメンバーが写し出され、「代謝や神経伝達に対する新しい分子イメージング剤を開発していること、それは新しい結合形成の方法論によるもので、自分たちは触媒的C-H結合の官能基化に興味を持っている」とあるらしい。
 今も「Bengü Sezen」をGoogle検索すれば彼女の写真を見ることもできる。この破壊的な詐欺事件の謎は、かなり前から今後も、私たちに立ちはだかっていることには変わりない。

[1]村井君のブログ、11.8.24、8.25の続き
Chemicals & Engineering News, 2011, August 8, p. 43半ば以降の要約
 記事では、元素分析やNMRをどの様にねつ造したか、学位取得後、B. Sezenはドイツで生化学の学位も取得したこと、調査が開始された当初は協力的であったけど、その態度も変化し、現在は、所在不明であることも記されている。
11.8.26

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少なくとも三名の

 部下(大学院生)がSames研を去るか、あるいはやめさせられた[1]。Sezenの実験結果が疑わしいあるいはさらに踏み込んだために。これらの学生は、Sezenの結果の再現をとるために長い間、うまくいかない実験を担当していた。」とコロンビアの調査委員会の報告にはある。ただし委員会は「なぜ大学院生が研究グループを変わる様に言われたかを明らかにはできていない」けど、担当した学生の履歴には、すでに報告された実験の結果を再現できない状況と、その事実が持つ負のイメージによって相当ネガティブな印象を植え付けられたことになる。
 再現性について疑いを持った学生が、それを確認するために、自分自身のドラフトで同じ実験を二つ仕込んだ。またこれを別の学生一人にだけ打ち明けた。ただし彼は、一つのフラスコにはイミダゾール、もう一つのフラスコではN-メチルイミダゾールを原料に用いた。結果どちらのフラスコからもN-フェニルイミダゾールが得られた。

[1]村井君のブログ11.8.24参考、以降は Chemical & Engineering News, 2011, August, 8, p. 41, 43の一部のほとんど直訳です。
11.8.25

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2000年8月

 彼女(Bengü Sezen)はコロビンア大学大学院化学コースに入った[1]。12月にはSames研に所属、その二年後、JACS誌に論文が掲載された。同じ年、その結果に対して、大学内と学外からも再現性について疑問を呈された。2005年7月にはPh.D.論文の審査会が行われた。同じ頃、そのグループではSezenの実験の再現性の検証を試み、そこでは実験について間違いがあるという最初の検証結果が示された。2005年10月SezenにはPh.D.(化学)が授与された。11月、彼女の論文の中には捏造があることが指摘され、3名による調査委員会が設立された。2006年2月16日調査委員会は、彼女の不正と詐欺を研究科長に報告した。同年3月Sames教授はSezenが主たる実験者であった論文にSezenが協力して公表されたあわせて三つの論文をJACS誌から取り下げた。同年6月Sezenが関わったさらに四つの論文(JACS三報、OL一報)が取り下げられた。2006年8月から2007年2月にかけて、今回の実験データの捏造に関して、大学が設置した委員会の調査が行われた。2010年10月コロンビア大学は、Sezenに対して21の不正行為があることを示し、2011年3月大学はSezenのPh.D.を剥奪した。同年7月Sezenに関する調査結果を公表した。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 8, p. 40参照
続きは明日以降に
11.8.24

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光学活性化合物の

 鏡像体過剰率を決定するためには、キラルHPLCの様に、二つの鏡像体の比を測定する方法が一般的であるが、時間がかかるため、合成法開拓を行っている場合に数百、数千の反応を解析することが困難になる。この時間短縮のために、キラルカルボン酸がゲストの場合にホストとして作用できるアキラルな銅を含む分子が開発された。ゲストが銅に配位した際には、金属のキノリン配位子は、気乗りがしようがしようまいが、ねじれてプロペラ形に変化する。このねじれの向きがゲストの立体化学に依存する。その結果、錯体は違った形で円偏光を吸収する。研究者らは、鏡像異性体の既知の混合物の円二色性スペクトルを使って検量線を作成し、鏡像体過剰率未知の混合物のそれを決定するのに適用した。この技術は3%程度の誤差があってHPLCほどには正確ではないが、100倍以上も速く見積もることができる。
 このAnslyn(テキサス大)らの成果で、安心する研究者も多いはずである。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 8, p. 38
11.8.23

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重金属の環が

 金属原子を捕捉するという記事[1]。レニウム(Re)とアンチモン(Sb)でできた三員環複素環化合物Re2SbをPd触媒と加熱すると六員環化合物であるRe4Sb2が生じる。しかもPd元素を環のほぼ中央に取り込んでいた。さらにホスフィン配位子をこのRe4Sb2Pd錯体の溶液に加えるとPd元素が取り除かれる。さらにPd触媒を加えると、一部Pdが取り込まれる。研究者らは、別の金属原子の取り込みや、別の重原子複素環の合成も視野に入れており、類似のホストゲスト化学を展開できるとしている。「これまでゲストを取り込む かご型の様々な金属クラスターが合成されてきているが、ゲストの原子を遊離させるような系はなかったように思われる。環構造が特異的であり、これによって別の同様な可逆の系があっても驚きはしないだろう」と別の研究者が言及している。
なおこのレニウム、アンチモン合成を行った一門(イチモン)は南カリフォルニア大学とテキサスA&M大学のグループで、クラスターと暮らした成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 8, p. 13
11.8.22

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乾杯の発声を

 させていただいた。お招きにあずかったお陰で、趣向を凝らしたパフォーマンスも鑑賞できた。乾杯の後、料理長が登場し「カーテン、オープン」の声で、ガラス越しに調理場が一望できる。4〜5名のコックさんたちで、こくのある料理を提供される。使っている食材に仕上がりの品の名前をすらすらと紹介される。会場は「アマンダン テラス」で料理長の漫談を聞いたようなものである。トップ・ガンのテーマでマスターが登場、ミッション:インポシブルのテーマに乗って二人のためにカクテルをつくる。どちらもトム・クルーズ主演の映画だけど、マスターの手はクルーわない。複数のアルコールを入れてシェーカーを振る。しばらく続く。ブルーの液体がシャンパン・グラスに注がれる。二人はコリアンスタイルでこれを飲み干した。度数の高いカクテルを飲んで、その後、どうするかはわからない。特別なカクテル、名前は「愛はカクレテル」にしたい。
 改めて、ご結婚おめでとうございます。文(あや)の組合せで、ほのかな家庭を
11.8.21

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「アンダーグラウンド」

 は地下鉄サリン事件の被害者およびその家族のうち、村上春樹さんがインタビューされた方々のお話が記された書[1]である。著者は、事件の当日、実際には何が起きたのか、またその背景は何か、加害者が悪でそれ以外は正義という枠組みでよいのかなどと考えた。事件からしばらくたって、マスコミのインタビューは受けたくないという人も多い中、62名の方の協力を得た。それぞれのインタビュー内容は、生い立ちやその当時の生活、お仕事、勤務経路から始まり、被害にあった時の状況や病院へたどり着くまでのこと、その後の生活などを含んでいる。身動きをとることができないほどの地下鉄のラッシュアワーであったのは共通だけど、決まった車両に乗っていて被害あってしまった方々、たまたまその日にその電車に乗ってしまわれた方々、様々な生活がそこにある。体調不良になり、視界も狭くなるにも関わらず、出勤や仕事に対する責任感の強さはすべての人に共通である。異常な事態の中、お互いを助け、地上では、待てども来ない救急車をあきらめ、見知らぬワゴン車を停止させて、病院までの移動をお願いし、実際に連れて行ってもらったこと、地下鉄職員の必死でかつ献身的な対応が読み取れる。それに対して政府や消防の対応、その後のメディアの伝えた方に対して、疑問が呈されている。著者はかつてノモンハン事件について調査を行い、当時の軍部のずさんな体制に驚愕した[2]。しかも今回の地下鉄サリン事件の背景にも同様の体質が継承されていること、現場の人たちが苦しむ一方で、体制(システム)はそのままであることを指摘している。加えて類似のことが起りかねないと警鐘していた[3]。

[1] 事件は1995年3月に起きた。本は1997年3月に刊行されて、現在は講談社文庫にある。しばらく前に、震災後に読むべき本として村上春樹著の「アンダーグラウンド」「神の子どもたちはみな踊る」(新潮文庫)が紹介されていた。ただし前者は777ページもあって読み切れるかと躊躇していたところ、プレゼントしていただいた。すいすいと読み込んでしまい、村上さんの凄さを改めて痛感した。
[2]村上春樹著「ねじまき鳥クロニクル」(新潮文庫)
[3]福島原発のことがよぎった。
11.8.20

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グラフェンは、

 機械的、電子的、熱的など様々な特異的性質を示すため、材料としての高い地位がグラつかフェン化合物である。化学蒸着による合成が一般的ではあるが、グラフェンを成長させるための高価な基質と純度の高いメタンやアセチレンや有機材料を必要とする。それに対してライス大学のチームは、これら高価な原材料は、きライス(嫌いです)ということで、別の原料を使う方法を開発した[1]。すなわち原料は、糞尿、草、ゴキブリの足、バルクのポリスチレン、チョコレート、ガールスカウトクッキーである。これらの固体サンプルを石英ボートの中、銅ホイルの上に置き、減圧水素—アルゴン流雰囲気下、1050℃に短時間加熱する。加熱した後、ホイルのサンプル側には様々な「かす」が残っている一方で、裏側には純粋でほとんど欠損のないグラフェンが生成していることを、ラマン、紫外可視、X線陽電子スペクトルなどで確認した。「これは、高純度のグラフェンを、不純物を含んだ厄介ものの炭素源から大量に成長させることができること、これまでは純度の高い炭素源が必要であるとされてきたため、驚くべき成果であり、アイデアもすばらしい」などの指摘がなされている。ただしグラフェン成長の機構は、だれも知ラフェンらしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 8, p. 13
11.8.19

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電子豊富な

 N-複素環カルベンRh(I)錯体は、酸化反応を受けてRh(III)に変換されにくいのはなぜか」が検討されていた。その中でかさ高いイミダゾイリデン配位子を有するエチレンロジウム錯体が窒素雰囲気下、Rh窒素錯体を形成することがわかった[1]。さらにこの錯体の単結晶を酸素雰囲気下に放置したところ、錯体の色が黄色から青色に変化した。信号とは逆ではあるが、これは「酸素がRhを酸化したわけではなく、安定なRh酸素錯体を形成したためである」と、したためてあった。さらにこのRh酸素錯体を一酸化炭素雰囲気下に放置した。すると結晶は青色から茶色に変化し、酸素の部分が一酸化炭素に置き換わっていた。すなわち窒素、酸素、一酸化炭素錯体のX-線結晶構造の解析中に、これらの不可逆な配位子交換反応が、結晶性が変化せずに結晶中の分子配列がわずかに変化するだけで進行していることが見い出された。すなわち固体状態で、その形がほとんど変化しないで起る化学反応のめずらしい例である。研究者らは一酸化炭素がRh錯体に最も安定に配位できるため、COセンサーにもなり得ると考えている。ちなみにセンサーについても詮索してみましょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 1, p. 37.
11.8.18

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亜酸化窒素

 N2O、笑気ガスとも呼ばれる。麻酔効果もあるので、医療現場でも使われている。ただしこのガスはオゾン層を破壊する温室効果ガスの一種である。CO2の300倍以上とも算定されている。笑気ガス削減に賞金がかかっているかは知らないが、これまでこのガスが大洋から大気中に放出される経路としては、単細胞のバクテリアが関与し、アンモニアの酸化と窒素酸化物の還元によって生じるとされてきた。一方で同位体による亜酸化窒素の研究結果と大気中のそれとの比が一致していなかった。今回それに関して研究が行われた結果、海洋の古細菌の培地では、アンモニアの酸化によって亜酸化窒素が生産されることがわかった[1]。加えて古細菌由来のガスの同位体の酸素と窒素の比が、天然のそれとほぼ同じであった。このことは、アンモニア酸化古細菌は、大洋の表面近くでの亜酸化窒素生産では重要な役割を果たしていることを示している。古細菌に関する最近の成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 1, p. 36
11.8.17

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「原発のウソ」

 小出浩章著の新書[1]。著者自身は「原子力の利用に憧れてそれを学んだ、でもその危うさに驚愕」して以来、原子核研究は進めながらも、それを利用した発電には一貫して反対されている一人である。福島のことを第一章に、第二章では、チェルノブイリで起きた事故や、1999年に東海村で起こった事件も紹介されている。東海村で起きた臨海事故では二人の方が命を落とされた。被爆した当初は、やけどした感じだったのが、身体の内側から変化が起きて、最後を迎えられた。そのドキュメントが放映されて、書籍もあるので是非、読んでいただきたいと紹介もしている。安全なレベルの被爆などないこと、行政と電力会社の構図にも触れている。原子力発電は、CO2を出さないということを前に出して推進してきているけど、CO2は出さない代わりに「死の灰」と呼ばれる放射性廃棄物を出す。しかもその取扱いの難しさ、孫さらにその孫の時代になっても蓄積されるものであること、原子力行政が示した年度目標の延期の事例も抑制的に紹介されている。

[1] 扶桑社新書
11.8.16

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男子学生の

 二日酔いが「つわりです」の場合、「男のつわりは、いつわり」と見破ることができる。小さなウソである。男女のウソが川に流れて「カワウソ」になったというのは中くらいのウソかもしれない。「ウソも方便」とも言うので、大事を成し遂げるためや、あるいは気持ちを和らげるために、大きなウソが必要な時もある。子供たちに「カミナリが鳴っとる。ミナリを整えよ」と言っても聞いてはくれないだろうから「おへそとられるぞ」と言う。この程度のうそだと、うるそう言わなくてもよい。ところがこの範囲を超えたものがあると言うというお話を聞いた。まずは「統計」。その上が「エビデンスベースト(証拠にもとづいた説明)」らしい。共通点は、それらが提示されるプロセスには「取捨選択」が入ること、自分たちに都合のいいものだけが優先的に選別されて並べられる時もある。節電モードの8月。「エビデンスベースト」、「地球温暖化」「電力行政」など、考えてみませんか。
11.8.15

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コーヒー屋に

 一人で入ったのは十数年ぶりか。本を二冊買って店に入って、アイスコーヒーを注文した。若い家族連れから老夫婦に、カウンターでくつろぐ一人客らで、にぎわっていた。そこで「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」[1]を読んだ。店内にいても、脳内はスコットランド、アイルランドにいる気分である。快晴の日がめずらしく、牧草が目に映える北の地の旅行記で、パブやウィスキー製造所へも立ち寄る。グラスゴー西に位置するアイラ島、さしたる観光スポットはないけれど、その島で滞在する客人も多いらしい。クラシック音楽、高級ウィスキーにグラス、電話線を引き抜き、本を読む。時に天候が悪くてもそれを受け入れる。そんな島。シングルモルト(大麦だけで製造したウィスキー)を標榜できる島らしい。アイルランドの黒ビール。店によって、温度、注ぎ方、グラス、泡が違う。定番がそこにはないと言う。「チェイサーを交換させていただきます」という店員さんの声で、我にかえった 。コーヒー屋の彼女をえこーひーきするわけではないけど「この本すばらしいですよ」と言いたくなった。
 ちなみにコーヒー代は校費で支払ったわけではないのでご安心を

[1]村上春樹著、新潮文庫
11.8.14

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第一、第二世代の

 のGrubbs触媒の反応は、最初の段階はリン配位子の解離である。この段階は第一世代の触媒のほうが速いにも関わらず、メタセシス全体の活性は第二世代触媒の方が高かった。この世代間の違いが盛大に議論されてきたが、これまでの計算化学の手法では単純化したモデルを用いていたこともあって、適切な解は得られていなかった。それに対してTruhlarらは、Mo6-Lと名付けられた新しいDFT計算法、この方法では実際の触媒を示す多くの系を高速処理できるが、を用いてチャレンジした[1]。それによれば、いずれの触媒でもベンジリデン置換基が回転し、あたかも電気回路のトグルスイッチの様にメタセシスを始動させる。この回転が第一世代の触媒では解離より先に起る、一方で第二世代では、解離が起ると同時に起る。ついでオレフィンがRuに配位すると触媒は回転により生じる電子的効果を乗り越えなくてはならないが、第二世代の方がこの障壁が小さいことがわかった。このページの図を見れば「回転も書いてん」ねんなあということがわかる。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 25, p. 39.
11.8.13

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二次の同位体効果は

 組込んだ同位体が結合形成や開裂に直接は関与しないけど、それが導入された炭素上の反応の速度に影響を及ぼす効果である。ここでは酸性化合物のこの二次の同位体効果が「いったい」どうなっているのかについて新しい知見が明らかになった[1]。同位体を組込むと酸性度が減少することがわかっていた。それについては振動数や基底状態のエネルギーを重水素が低下させることに起因していることが知られていた。また別の可能性として炭素−重水素結合における双極子モーメントの減少による誘起効果がエントロピー変化を引き起こす可能性が、実際にはエントロピー変化の測定はできていなかったけれども、別の因子として考えられてきた。それに対して今回NMR滴定実験が行われ、このエントロピー変化の可能性が否定された。「実験はすばらしい着想に基づき、実際の実験も実施されており決定的な内容であると思われる」と評価されており、いずれ大学院クラスの教科書には採用されるべき成果であるとも付け加えられている。
これで「双極子モーメントで、も〜めんとこ」の機運も高まるかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 25, p. 39.
11.8.12

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シリルトリフラートは

 ルイス酸性も高いシリル化剤である。トリフルオロメタンスルホン酸とクロロトリメチルシランとを加熱還流すると、塩化水素の発生に伴ってシリルトリフラートが生成する。その後、蒸留によって高い純度の化合物として得られる。ただしこれでフェノールやカルボン酸をシリル化した場合、これらの化合物のプロトンは酸性度が高いため、シリル基置換基もスルリとはずれる。それに対してCorey先生らはケイ素上にt-ブチル基二つとイソプロピル基を組込んだシリルトリフラートを開発した[1]。これを用いれば、酸性度の高い水酸基の保護も可能であり、水酸基の復活(フッカツ)にはフッ化物イオンを使えばよい。また一級アミンのシリル化生成物も通常は簡単に加水分解してしまうがこれによって保護でき、この場合にはフッ化水素酸で脱保護できる。安価な出発化合物から二段階で合成できるが、不憫でないように瓶からすぐ出して利用できるように市販品とすることも検討されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 25, p. 38.
11.8.11

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ラダラン

 (ladderane)は、シクロブタン環がハシゴのようにつながった分子である。ただしハシゴと違って四角形がジグザグに折れ曲がった階段の様な形である。名前がラダランだからと言って、ダラ〜ンともしていないし、決してクダラン分子ではない。この骨格は、ある種のバクテリアの脂質膜を形成していることも報告されており[1]、また光電子工学の材料としても利用されるなど様々な可能性を秘めた骨格である。今回、シクロブタンが五つつながった化合物の両末端に4-ピリジル基を四つ導入した化合物が合成された[2]。ただしその化合物の立体化学が多次元NMRスペクトルによってもわからなかった。なんとか研究者らは、アキラルなほうの単結晶を得ることができたが、キラルなものはアモルファス結晶であった。そこでそのアモルファス結晶に3,5-ジニトロ安息香酸を加えることで、ピリジル窒素とカルボン酸プロトンとの間ならびにピリジル基のオルト位水素とカルボニル酸素との間で水素結合が形成されX線構造解析できる単結晶を得ることができた。
 ダラダンで一家らんだんもありかな。

[1] Damsté, J. S. S. et al., Nature, 2002, 419, 708.
[2] Chemicl & Engineering News, 2011, July 18, p. 28.
11.8.10

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ふげん、もんじゅ

 どちらも敦賀市にある原子力発電所である。1954年が起点とされる原子力研究開発の中で、これら二つの炉が建設された。もし原子力に関わる技術者だったら、この政府の流れに意気を感じて「安全かつクリーンなエネルギーシステムを提供する」のは自分たちの使命であると現場で打ち込んでいたに違いない。言葉の由来が「普賢菩薩、文殊菩薩」であることも後押しする。ところがこれがそのうちに「お金が回る事象」になってしまった。関連施設の建設を、当時の政権与党の議員さんと関わりの深い企業が落札した。結果として地元の一部の人は恩恵を受けた。それはともかく、ふげんは2003年に運転を終了して廃炉のステージに入った。解体完了はそれから35年後を予定しているという。で「もんじゅ」の話。「最高の科学技術を日本が」という面を看板にしながら、さまざまな利権も絡む。なので公開の場で「廃炉にしようという議論」には入ろうと誰もしなかった。菅総理は予算委員会でそれに言及された。

11.8.9

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電池の電極は

 通常、異なる金属を使う。古くは1800年に発明されたボルタの電池で銅/亜鉛の組合せである。金属が違うことで電位差が生じて電流が流れる。それに対して銀が両極に使った電池が開発された。一方は純粋な銀でもう一方はコンゴーレッドという名前で知られているアゾ染料を組込んだ銀を使っている。研究者らはこれまで数%の低分子、高分子、有機金属触媒や酵素を金属にドープさせ新しい触媒材料の開発を行ってきた。有機@金属複合材料を、ドーパントを含む溶液中で金属イオンを還元させてつくっていた。金属が還元されることでナノサイズになって会合し、純粋な金属の特性が保持された多孔質材料になる。今回、開発したコンゴーレッド@銀複合材の電極の電位は、純粋な銀の電極との差が十分で、電池に使うことができた[1]。そこで加工した電極を電解質であるレモンに差し込むと電気がながれLED照明が点灯した。
 ちなみにレモンを電解液に使うのは、サイエンスフェアなどで子供たち相手にやる手法らしい。「レモンを電気のいれもんにして」みたいなものである。今後もコンゴーレッド系が発展していくものと思われる。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 18, p. 11.
11.8.8

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四配位のモリブデン

 アルキリデンは、これまでのところ、最もパワフルなアルケンメタセシス触媒である。Mo上にはナイトレンとヘキサフルオロt-ブタノキシ基が二個結合している。一方でこの錯体は空気や湿気に対して敏感でこれを使った反応をするのはなかなか厳しい。その中、Fürstnerらは、モリブデンアルキリデンを2,2’-ビピリジルあるいは1,10-フェナントロリンとトルエン中室温で反応させることで、安定な前触媒に変換できることを明らかにした[1]。「活性な触媒を発生させるためには、前触媒をトルエン中100℃で塩化亜鉛と混ぜれば、ええんか」ということも発見している。ここではピリジン・塩化亜鉛付加体も生じるが、触媒へは影響がないためろ過などの処理を必要としない、通常はろ過を、かろんじてはいけないけど。研究者らは「この方法は、有用性が十分に実証された活性種の利点を存分に生かすことと、結晶や実験室で安定な前触媒を扱う利便性が組合わさったものである」と述べている。
 この記事のタイトルはTaming a metathesis catalystとある。触媒を使うタイミングなどと訳してはいけない。「tame:〜を手なずける」、lion taming:ライオンの調教らしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 18, p. 28.
11.8.7

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尿酸は

 C5N4H4であるプリンが酸化された化合物である。この尿酸がようさんになると痛風になる可能性がある。ビールの愛飲者に多い。なので筆者は常に危険にさらされている。痛風になると、普通ではなくて激痛が走るらしい。またこの尿酸は、鳥類や、は虫類の排泄物であって、基本的に人間の含窒素排出物は尿素であるらしい。それに対して馬の尿から発見された有機酸は馬尿酸と名付けられている。「尿酸と同様か」と思った場合は、場違いである。α−アミノ酢酸(いわゆるグリシン)のアミノ基上にベンゾイル基が組込まれた化合物である。この馬尿酸が特殊健康診断で検出されることがある。その時はトルエン由来であると指摘を受ける。肝臓でトルエンが安息香酸まで酸化されてグリシンと反応することで生成する。なので実験室の換気、溶媒の管理などが適正であることを確認して、快適に実験できるようにしなくてはならない。「トルエンでなにやっとるえん」と言われないようにね。
11.8.6

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和歌山に出向きました

 岐阜からJRを乗継ぐ。新大阪駅からスーパーくろしおを利用した。かつて、くろしおは天王寺発のみで勝浦などへ海水浴に行った。ただし人気の高い列車で、小学生のころは指定席券を手に入れるため、乗車の一ヶ月程まえだったか早朝に父に連れられて駅でならんだ。くろしおで苦労しよった頃である。この日乗ったくろしおは、新大阪駅で折り返す。到着するとすぐに車内点検と清掃が行われる。上半分がクロ、下がシロの制服の方々がくろしお内で作業に当たっていた。パンダではなく、シャチである。腰には、マリンブルーのポシェット、真夏の南紀をイメージしている様である。この列車、大阪駅には停車しない。お蔭で新大阪—和歌山が59分、やれば出来るものである。乗客の中には、熊野古道散策の行動に移る方もいるに違いない。一方で自分は和歌山大学へ。そこでは、NMRのデータの理論的考察を、先生を交えて学生さんにも解説していただいた。なんのしかけもないこちらの「おしかけ」だったけれども、過分なお世話になってしまった。
11.8.5

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ヒスチジンは

 グリシン(α-アミノ酢酸)のα位にイミダゾイルメチル基が導入されたアミノ酸で、酵素の活性中心にもみられる部位である。おそらくヒスチジンはヒツジさんも有していると思う。このヒスチジン部位が配位することで緑色蛍光を発するIr錯体が開発された[1]。これまでの細胞核の造影剤はDNAが配位する場合が多かったため、それとは異なったタイプである。2-フェニルピリジン二分子とDMSO二分子で構成される三価のIr錯体である。これは固体および溶液中ではほとんど蛍光発光しない。一方でこれにヒスチジンやヒスチジンを含むタンパク質を配位させて、488 nmの光で励起させると強い蛍光発光を示す。錯体は細胞質のタンパク質と反応することができるが、おそらくヒスチジン輸送タンパクが直ちに生細胞に錯体を運び、それを細胞の核に運び入れるものと思われる。錯体は細胞核を数分間着色させるが、毒性は低いと研究者らは指摘している。
 なおIrに配位したヒスチジンが縮んでいくかどうかは言及されていない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 11, p. 31.
11.8.4

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ランタニド金属やイットリウムの

 90%以上は中国で採掘されている。採掘者は退屈ではないが、低コストであること、環境規制が中国ではほとんどないため供給国になっている。これらは電子デバイスや電子機器では不可欠な元素であるけど、中国国内での需要の増大が世界の他の地域での供給不足を起こしかねない状況にある。そのような中、これまで大洋の堆積物の中に希土類が含まれていることが指摘されていたが、その分布や濃度についてはマッピングされていなかった。そこで東京大学のチームは太平洋の78カ所から堆積物のコアサンプルを2000集めてその分析を行った[1]。蛍光X線ならびに誘導結合プラズマ質量分析の結果、これらの堆積物にはジスプロシウムやユーロピウムのような元素が豊富であることがわかった。また「北太平洋の1平方キロメートルには、世界の年間需要の1/5をまかなうのに十分な希土類が含まれていて、これらの元素の非常に有望な巨大なリソースを形成している」と類推している。
 ただし希土類が豊富と言って、気取る必要はない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 11, p. 32.
11.8.3

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来年早々には

 冷温停止が可能である[1]。福島第一原子力発電所では、損傷を抑制し、安定化させる努力が確実に実っていること、ロードマップの実行が全体として成果を上げていることをIAEAの天野氏も確認している。

 3月11日の地震と津波により、結果として引き起こされた大爆発と部分的な炉心溶融に対して、作業員たちは、六つの原子炉や施設から放射能汚染が拡大することを防ぐために奮闘し続けている。東京電力は損傷した原子炉からの放射能漏れを減らす第一ステージは成功したと7月半ばに発表した。また炉を冷却した水の蒸発や放射能漏れが回避できる可能性のある冷温停止のスケジュールを当初の2012年1月から変更していない。

 安定に停止できれば、放射能をおびたガレキの除去と使用済み核燃料棒を、損傷を受けた炉から安全に取り出すことに焦点が移る。原子力施設の完全な廃止措置には10年以上かかる。天野氏は、「IAEAは、継続する日本の危機対応を支援する用意があること、汚染除去や使用済み燃料棒の取り出しについてIAEAが保有する情報を提供することもできること」を述べ、日本政府と詳細を話したいと述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 1, p. 8.

11.8.2

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地球からおよそ

 400光年の星、へびつかい座Rho星近くのサブミリ波の放射をスキャンしていたところ、研究室の実験でも見られる過酸化水素と特定できるスペクトルと同様のスペクトルが観測された[1]。さらに研究者らは宇宙でのその地帯では、過酸化水素の量は、水素の100億分の1以下であるとも類推している。それでもこの成果は、過酸化水素が星間宇宙で検出された最初の例であり、酸素や水の化学で鍵になると考えられている天体化学プロセスのモデルを、よりよいものにするためにも利用できる。過酸化水素は、水素と水の気相反応あるいは二つのヒドロキシラジカルの反応によって星間分子雲で形成されることが提案されている。別のモデルでは、酸素と水素原子との反応によってちり微粒子表面で形成されるとしている。これらいずれも天文学者が言ってるもんで、今回の発見はこれらの議論へのヒントにもなり得る。皆さんもこれに参加して、過酸化水素について推測してみませんか。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, July 11, p. 31.
11.8.1

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