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2011年9月

コットンが燃えると

 面倒なことになる。なので難燃剤でコートする。その場合、わずかな時間、火にさらされても表面が焦げた程度で収まる。まさに「そのコットン、凝っとんなあ」である。ただし現在使われている難燃剤は、多臭素化ジフェニルエーテルで毒性の点でいずれ使われなくなる。そこで新しい型の難燃剤の開発が行われた[1]。ポリリン酸ナトリウムとポリアルリアミンを多層構造にしてコーティングがなされた。そのフレームテストの結果は10層構造のものを火にさらした時、焦げはしたものの、重さの41%が残った。高熱では、全く発火しなかった。今回のものは、火や高熱にさらされると、表面を保護できる炭素の泡を形成するが、この熱膨張コーティングが小スケールで多層構造によって行われた最初の例である。別のグループはモンモリロナイトあるいは粘度と直鎖のポリサッカリドであるキトサンを交互の層としたものを開発した。この場合も10秒間ブタンガスにさらすとポリウレタンフォームは黒くなっただけだった。この系について、’cool, sexy, very green approach’と評されているが、研究者らは洗濯によって落ちない、また劣化しがたい材料をねらっている。
新しい難燃剤の実用化、何時になんねんやろうねえ。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, September 5, p. 15.
11.9.30

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必要書類を

 事務室に提出に行く。「この箱です」と言われた箱には「後期授業料免除・・・」と書いてあった。はて授業料免除?面倒なことになるかとお聞きしたら、箱の四面のうち三面は今回提出すべきものが書いてあって、ことなきを得た。その足で学部の就職担当の方のところに行く。学生のことで、ご海容いただけるように作成した例文をお渡しした。同じ階にある会議室で監査のお仕事をするが、始めの部分だけで、あとは退室させてもらった。2,3年生のガイダンスにちょっとだけ顔を出した。午後、講演会があったので、しばしシクロプロパンの話を拝聴させていただいた。配座がリジッドになる分、自由度が減って空間制御の難易度も下がることなどを学んだ。しばらくして三年生が研究内容と研究室の見学に来た。以前からの約束なので真摯に対応しなくてはと思いつつ、わずかに話をして「頼りになる先輩のガイドがいいど」とバトンを渡した。こちらは「バテトンなあ」という一日だった。
11.9.29

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酸素は現在

 大気中で21%存在し、人間もそれを享受している[1]。一方で原始の地球では原始気体の乱気流の中にわずかに酸素が存在したのみである。’Great Oxygen Event (GOE)’と呼ばれる変動が今から20-30億年前に起り、ついで大気中の酸素の著しい減少に伴って、酸素呼吸する生命体の発生を促し、現在のような複雑な生き物が生まれた。研究者らは、酸素は数億年前に地球で発生し、大気に出るまでは大洋の中で酸素オアシスとして低濃度でオワシタのではないかと類推している。また研究者らは現在のイーストをモデルとして使った実験をしたところ、酸素と糖との組合せでエルゴステロールが合成されることがわかった。また酸素がなくてもエルゴステロールがあれば、イーストは成長することができる。さらに酸素濃度の減少に伴い、好気性から嫌気性にイーストが変化する濃度も明らかにできた。このことからイーストの祖先もすぐれものであり、酸素が大気で検出できるほどになる前に、大洋の中で酸素循環を行っていた可能性があるとしている。

 このイーストを使った研究、なかなかイースと思うでしょう。ゴーストじゃないしね。

[1] http://www.spacedaily.com/reports/Breathing_new_life_into_Earth_999.html

11.9.28

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木々や雑木林は

 たまに起る火花で発火することはない[1]。木自体は、天然高分子であるセルロースで出来ておりこれは燃えない。木に火が燃え移るには、まずセルロースの熱的な分解が起らなくてはいけない。しかしそれは二つのプロセスを経て進む。そのうちの一方は火がつくが、もう一方は木を保護できる炭素コーティングが施される。優先的な分解過程は、解重合でセルロースの分子結合を切断する。その結果、レボグルコサン[2]が主成分であるタール状の混合物になる。さらに熱するとこれがアルコール、アルデヒド、炭化水素やケトンを含む揮発性化合物に変化する。気体が木から放出されると、大気中の酸素で発火し、火事になる。別の分解過程は、脱水を伴って進行する。蒸気を放出するとともに、燃えにくい、あるいはくすぶる焦げたものになり、これらは灰になる。この焦げたものは木を保護するバリアーとなりセルロースの熱的分解を抑制する。ここで草木をリン酸系難燃剤で処理すると、脱水過程が増え、解重合が減少するという。このリン酸系難燃剤は、高い温度で分解し、五酸化リンがセルロースの脱水にご参加し、水蒸気が発生、火の冷却とリン酸の発生に貢献し、難燃剤として再び利用できる。

 この五酸化リン方式に、誤算があってはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 29, p. 14.

[2] 糖類の一種である。

11.9.27

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ムンフバト・ダバジャルガルは

 白鵬関の本名である。20度目の優勝おめでとうございます。かつて研究室に大相撲ファンがいた。宴会のときにか「ムンフバト・ダバジャルガル」とか言っている。聞けば外国人力士の本名を覚えているとのことである。朝青龍は?ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ。日馬富士は?ダワーニャミーン・ビャンバドルジと直ちに答える。正しいかそうでないか判断ができないけど、それらしく聞こえるし、しかもどれも違った音のようだった。こちらもモンゴルだけではだめだと、琴欧州は?で応酬するもカロヤン・ステファノフ・マハリャノフで切り返された。さらに引退力士で責める。「曙は?」「曙太郎」「?!」「彼はハワイ出身やで」「いや今は日本に帰化しています」と言ったかどうかは定かではない。その君、一ヶ月ほど前に研究室を訪ねてくれた。三交代勤務である。時には早い時間の取り組みも楽しんでいるらしい。把瑠都は?と聞いてみようと思ったけど、上司の前、把瑠都(バルト)で困るといけないので我慢した。

11.9.26

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宇宙航空研究開発機構

 によって困難の末、成し遂げられたハヤブサミッションは、宇宙探査器を地球近傍小惑星25143イトカワに送ることから始まった[1]。二年後には小惑星に到達したが、その後「ハヤブサはやぶの中か」と危惧された。が2010年、見事に帰還した。しかもおよそ1500のイトカワにある粒子を携えてである。イトカワはS-タイプ小惑星であり、太陽系内にはよくあるケイ素系の様々な石がある。それらの化学は、コンドライトと呼ばれる昔の隕石と一致している。コンドライトは、原始の物体であり、それがS-タイプ小惑星と関連づけられたことから、小惑星そのものが原始の太陽系であると言うことができる。これまでは、月の粒子をもとにして小惑星の風化について推論していたが、今回のイトカワ粒子で直接の証拠を持つことができた。小惑星の風化は、それが太陽風[2]や小さな隕石との相互作用で引き起こされるが、イトカワと月では異なることもわかった。実際イトカワは表面の粒子を失い続けているが、それは10億年後には宇宙から消え失せる速度で進行しているらしい。
 小惑星の掌握のためのサンプル持ち帰りミッションは未だに難しい課題である。それでも小惑星の話で、少しワクワクしましょうね。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 29, p. 7.
[2] 「太陽から放出される電離粒子風」とあった。
11.9.25

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α-ボリルアルデヒドは

 通常、非常に不安定な化合物であるが、それに対して安定な誘導体が開発された[1]。MIDAと呼ばれるカルボン酸(MeN(CH2C(O)OH)2)が組込まれたホウ素化合物でしかもホウ素上にはエポキシドが結合している化合物を出発に用いる。この転位反応によって導かれるα−ボリルアルデデヒドは安定で、求核性を示すボリル炭素と親電子性を示すアルデヒド炭素が隣接している。これを出発化合物に用いると複素環、アルコール、オレフィンなど様々な化合物を導くことができる。窒素上に光学活性な部位を有するMIDA類縁体からキラルで光学活性なα−ボリルアルデヒドも得ることができる。実際にsp3炭素上での立体制御したカップリングを行い、Merck & Co.社が肥満治療薬として開発したグルカゴン受容体のアンタゴニストの合成に適用されている。研究者の一人は「500ほどのMIDA誘導体を有するα−ボリルアルデヒドが製造され、自動合成にも使われるに違いない」と述べている。また「α−ボリルアルデヒドの高い安定性に驚き、立体制御された簡便合成は、なおさらすばらしい(icing on the cake)」とコメントされている。この研究は、Bruke(イリノイ大学)とYudin(トロント大学)のチームからほぼ同時に発表された。Yudinの友人であるCathyも「ボロン化学の領域も格段に拡大する」と賛辞を呈している。ボロンの指摘、決して暴論ではない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 29, p. 5.
11.9.24

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つくばでの討論会

 ポスター発表の後、雨風の中、近くの居酒屋へ出向いた。20名を超える同業者がお店を盛り立てた。炭焼きのために小さな炉が出た。アジ、ブリカマ、マグロなどを焼く。エイひれには、非礼があってはいけないので、丁寧に扱う。けど焼きすぎて「炎上、炎上」でもそれをエンジョイした。初めてお話できた人、以前お会いしたけど改めて名刺をいただいた方などと過ごしてお店をでた。で翌朝の座長をなんとかこなして、その日の夜再び、気鋭の先生方と、その方の恩師の先生も交えて宴で過ごした。先生が若かりし頃、仲間とボートを借りて琵琶湖で過ごされた。ボートで、ぼおーっとしていたら船底に穴があいていたらしい。そこでチューインガムを噛んでは、湖にもぐって、それを穴に貼付ける作業を繰りされた。幸い沈没を免れたという。ポリ酢酸ビニルの力、ガムはガンダムの如くである。そういえば前の日、そのフィギュアも話題になっていたか。ガンダムとガンバルみたいなことではなかったように思う。
11.9.23

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サンゴや軟体動物は

 大気中の二酸化炭素レベルの増加や温度上昇によって引き起こされる大洋の酸性化に対して拒否反応をするが、これが状況によって様々である。すなわち石灰化した海の生き物の殻や骨格がpHの値が小さい場合にどのように成長したり、解けるのかの一般的なパターンを描くことが出来ていなかった[1]。それに対して動物の組織や皮膚の様な層が炭酸カルシウム構造を保護するのに重要な役割を果たしていることが明らかにされた。研究者らはまずイタリアのベスピオ火山近くで、火山活動によってCO2が海底から吹き出ている沖にサンゴ、その前後にかどうかは知らないが、カラガイ、ムラサキイガイを移植した、以外なことに。実験地域は、動物が酸性化条件にどのように反応するかの天然の研究の場である。研究者らはさらに実験室で動物を45Caラベルした水にもさらした。これによって炭酸カルシウムの生成と溶解速度を測定することができる。その結果、生き物はCO2濃度が高いと、より速く石灰化し保護されていない表面はpHの値がより小さい時ほど、溶解する。特に温度が高い水中では速い。全体として石灰化の有害性を下げることが出来るかは、個々の種が、どの程度保護しているか次第である。
石灰化も、やっかいか

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 22, p. 39.
11.9.22

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10年来の疑問に

 答えるべく、共同研究チームが最も確かな証拠を示した[1]。この疑問とは、DNAの構成単位である核酸塩基が宇宙の隕石の中でつくられ、それが原始地球に落ちてきた可能性である。これまでアミノ酸や核酸塩基、これらは生体分子であるが、を隕石中に、以前から発見していた。このアミノ酸は地球外起源のプリン誘導体やピリミジン塩基誘導体で、宇宙から飛来した石から発見されたものであるが、地球で混入したものであるという説明が常になされていた。今回、南極と他の場所で見つかった1ダースの隕石、「中身は何だ〜す」ということで液体クロマト質量分析装置で分析された。二つの隕石には、生体ではほとんどまれかあるいは存在しない微量のプリン誘導体を検出した。これらは隕石近くの氷や土壌からは発見できなかった。一方で隕石中に存在するアンモニアと水とシアン化水素とを実験室で反応させたところ、一連の誘導体が生成した。さらに他の隕石についても分析が続けられている。また隕石中の核酸塩基の合成経路を隠さんと示すことができるかも課題である。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 22, p. 38.
11.9.21

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搭乗機は

 成田空港に○○時頃、タッチダウン(touchdown in)の予定です」という放送があった。着陸は通常landだけど、これは知ランドと思いながら改めて聞いても同様である。離陸して二時間程たって機長からのアナウンス。「気流が不安定かな」と思ったらそうではない。「シアトル・シーホークス対ピッツバーグ・スティーラーズは0対24でした」すなわちシーホークスは一度もタッチダウンを奪えなかったらしい。この機長、几帳面に加えて遊び心もある風である。一方で客室乗務員からは、ため息が漏れる。勝敗についてかアナウンスをしたことかはわからない。そのうちの一人の乗務員、離陸直前に棚に荷物を入れていた。わずかにお手伝いした。「背の高い人、たよりになるわ」などと言われて、およそ9時間後、ゴミ集めをしていたその乗務員にゴミを拾ってわたした。Uhh,I will take this guy to my home[1].とのこと。これまでおそらく1000回程は日米を往復されておられる方である。なにはともあれ、曇り空の成田空港にタッチダウンした、少々手荒だったけれども。

[1]「この人、家に連れて帰りたいわ」で、ハウスキーパーとしての力量を勘違いされたに違いない。
11.9.20

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Rovis先生は

 ロビーです。ということでお会いした。化学科まで徒歩、蔦のからまる建物である。実験室には窓がない。この日は7人の先生の話を聞かせてもらってセミナー。その後ワインで一休み。四人の先生と一緒である。ここでも話題が飛ぶ。国外での講演、その旅程、明日はワシントンDC経由でモスクワ、シベリアに飛ぶらしい。ハーバードのG.W.先生のノーベルプライズは?みたいな話が続く。村井君は黙ってワインをもらっているだけであるが、つまみがないのが少々つらい。時に「根岸先生は日本でポジションを得たと聞いた」と言う質問も飛んでくる。その後ディナーに出向く。同様に話はサーフィンする。「東京大学薬学部、理学部では、柴崎先生が退職されて、福山先生も来年かなあ、退職の年である。中村栄一先生もそろそろ、その時期である。その後どうなるんや」、「静岡のある先生、ユニークだし、陽気なキャラがすばらしい。機会を得れば来年、訪ねることができる」など、なかにはゴシップ(うわさ話)の国際版もあった。それにしても日本の状況もよくご存知である。これに懲り(ん)ずにフォート・コリンズを改めて訪ねたい。
11.9.19

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デンバーより

 北へおよそ110 kmにフォート・コリンズは位置する。街はアップダウンがほとんどない。最大の雇用を確保しているというコロラド州立大学(CSU)。そこを訪ねる頃だぞということでここに来た。大学の東と西のキャンパスの間をUnion Pacificが走る。大学の北にはオールドタウンが広がる。カウボーイ時代の風情もある。ただし今はいわば飲食店街のようなものである。そこにあるレストランで地元のカクテルのお勧めを聞いた。MOJITOSがポピュラーだという。Wikipediaによれば、ミント、炭酸、ライムジュース、砂糖、white rumを含んだキューバのカクテルらしい。ただし急場しのぎでない、しかもMOJITOSとはいえ、もひとつでは決してないカクテルだった。この地とキューバの縁がわからないまま、ラム酒の余韻に浸りながら、CSUを見ていたら、CSUのスポーツチームはCSUラムズ(rams)だった。ただし、さとうきびと羊さんの違いはあるけどね。
11.9.18

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TexMeX

 はテキサス、メキシコをメックス(mix)した用語である。それが昼食になった。なのでノンアルコールである。それでもアメリカンやカナディアンはよくしゃべる。英語が母国語でない人が聞いていることなど斟酌しない。カレッジフットボールのことも話題になった。シーズンが始まって、地元テキサス・ロングホーンズは2連勝しかも二試合目は17-16の辛勝だった。今年になってロングホーン専用TVチャンネルもできたらしい。その中アジアからの留学生に「フットボールを見るか」を聞いたところ、年間シートを買っているとのこと、大学のスタジアムで6試合ある。一試合8ドル程度だけど、土曜日の試合は研究室があるので行けない。そこでそれを販売するらしい。場合によっては50ドルになることもあるとのこと、本人はビジネスだと言うけど、いわゆるダフ屋である。そのタフさが難易度の高い全合成を成し遂げさせたのかもしれない。
 盛りだくさんのテキサスメニューの終わりは、日本料理店「ミカド」で三日ほどの滞在を閉じた。
11.9.17

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Ben Liu先生

 超一流の学者だった。2000年テキサスに赴任することになったけど6ヶ月待って欲しいとお願いされた。一般には次の候補者にその機会が渡される。それでもテキサスは6ヶ月待った。しかも先生の希望のサラリーが謙虚だったので時の学科長は、先生の書かれた額の横にX3と書いて、それで契約された。自分を本当に必要としてくれていると感じられたそうである。2007年のナカニシプライズも含めて多くの賞を受賞されている。フランクでかつ穏やかな先生に引き込まれた。この日のトピックスは「Diels-Alder反応を触媒する酵素Diels-Alderaseがあるだろうか」についてだった。同様の課題にアプローチされた他の先生の報告も紹介され、自分たちのアプローチの方法、その結果を説明していただいた。「セミナーを楽しみにしている」との言葉。全ての先生がそうはいうもののセミナーに皆が来られるわけではない。その中Liu先生には聞いていただき、共鳴構造についての質問、さらにパワーポイントの中の間違いを講演の後にそっと教えていただいた。研究費が今年で終わるので申請書の作成に神経質になっているとのこと、採択率が8%程度の枠にチャレンジされている。
11.9.16

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24年前

 含窒素環状五座で芳香族配位子とその金属錯体をつくりたいというプロジェクトを引き継いだ。それまで担当していた学生は、その難しさに、ある日から来なくなったらしい。彼のイニシャルでBKFメモリアルという課題になった。ただしリアルにそれが突破できるか疑問だった。まずは配位子そのものをつくりたい。一歩手前の前駆体は手元にある。それを酸化すればよいのだけと、どの酸化剤も使えなかった。そこで、まずは金属錯体と前駆体を混ぜて、それを酸化させようと考えた。反応を仕込んだ次の日、反応液は緑色に変わっていた。テキサフィリンCd錯体の誕生の日である。それから24年、未だに配位子そのものは単離されていない。この前駆体の酸化的錯体化の手法が今も引き継がれていた。でJon. Sesslerは村井君を伝説の人(legendary person)に仕立てていた。在籍する学生の羨望の視線をあびながら(こちらが勝手に感じている)、現状の報告をもらった。「そこらへんのおじさん」であることが、ばれる前にGood by, See you tomorrow.をした。
 ちなみに伝説を持つチームは強い。ただしそれがそのチームのボスであってはいけない。そうではなくて「彼のことを後輩が聞けば凄いと感じる。でも当時は彼もみんなと同様だった」というストーリーである。
11.9.15

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手荷物受取所には

 複数のラインがある。ボードには航空便とその便の荷物がどのラインから出るかが表示されている。それを確かめていたら横のおばさんが「便名しかないじゃないの」とお怒りの様子、実際には小さな文字で書いてあるのだけれどね。しばらくして村井君と同じラインであることがわかってThis is typical Austin.の一言。とりあえずHave a nice day.で「あのラインが嫌いんだったのかな」と思いながらお別れをした。Austin 市街からダウンタウンに移動。目新しい高層ビルの多さは、この地域の経済発展の速さを示している。しばし休憩の後、大学へ向かった。この街Austinはテキサス州の州都で、大学のタワーからジョージ・ワシントンの像、さらに州会議事堂がほぼ直線に並ぶ。像には「1775年7月3日、革命軍が結成されたときの指揮官」とある。初代大統領とは書かれていない。国の違いを感じた。このキャンパスには大きなしっぽのリスも多い。リスと共生してリスク回避をしている。
11.9.14

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デンバーまで

 ミニバンを利用する。途中までは乗客が2名で1時間半ほど走ったところで、少し大きめのバンに乗換えた。そこで6名になった。ドライバーが「実はもう一名、女性客がいるが、予定の時間に来ない。あと15分ほどしたら到着するというのだけど、ここでしばらく待ってよいか」と乗客に聞いた。とりあえず自分は構わないと誰かが言った一言で、一同やむなしと思った雰囲気である。遅れて女性客が来た。送ってきた彼氏とハグをしてキスをしてから「みなさん、ごめんなさいね」と機嫌良く乗り込んできた。誰もハローも披露しない、無言である。それでも無事空港に着いた。ドライバーがゲートを開けるためにライセンスをかざす。信号は緑に変わってもゲートが開かない。担当に電話して事情を話している。別のゲートを使ってみてくれと言われている様子。ただし後ろに車が来たので身動きがとれないと、やりとりをしている。後ろの車がまず別のゲートに移動、その後こちらも移動して、中に入る事ができた。事情を知らない別の車が、話題のゲートに近づく。ゲートでどんな芸当を使ったのか不明だけど、難なく開き、こちらの車から笑いとざわめきが漏れた。ドライバーには、いばらの道だったかもね。
11.9.13

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ララミーから

 北西に行くとMedicine Bow National Forest と呼ばれる地域が広がる。かつてインディアンがここで薬になりそうなものをみつけたのか、ここで病気予防のまじないをしたのかはわからないけど、「まじないがなじまない」というこ風景でもない。ただし、あちらこちらの松が松くい虫の被害にあっていて、そのMedicineはここにはない。この数年、冬の気温が下がりきらずに松くい虫が越冬したことが原因らしい。山、湖、雪、岩、その間にトレイル(小道)が続く。歩くのがトレイなあと言われても、なにせすぐに息切れがする。標高は2800 mほどなので、空気も薄い。ララミーでさえも標高2000m程で、水は92℃で沸騰し、ジエチルエーテルを使うのが難しいらしい。日本から持ってきたインスタント田舎そばの容器もパンパンに張っていた。すべての湖に名前がつけられている。山を見事に写し出しているのはミラー湖である。訪問者に見ら〜れている。Lewis湖もある。ただしpHの表示はない。一日歩いてやっとたどり着くという湖もあるらしいけど、South Gap湖までで引き返した。Gapまででもアップアップだった。
11.9.11

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ワイオミング大学化学科には

 テクニカルスタッフも含めて22名のスタッフが在籍する。いわゆる教授は4名で、6年の成果を評価されるテニュアトラック[1]の職に6名が位置する。物理化学の先生が6名、有機化学でも触媒反応開発や全合成を主とする先生はいない。学科として「エネルギーと化学生物」を軸に人材を集めた。赴任する時にはスタートアップとして必要な装置の費用、中には1億円を超えるものもあったらしいが、それを援助した。掲載される論文の内容でテニュアを獲得できるかが決まるけど、赴任して数年以内に50万ドル(3年プロジェクト)程度の公的な研究費を獲得すること[2]も必要条件であるらしい。その中で村井君は、8時半から午後3時30まで11名の先生を訪ねるスケジュールをもらった。ジュール熱が出そうである。物理化学や無機化学のスタッフとはタフな話になると覚悟した。始めに世間話を1分ほどする。ここで客人の理解力(英語と化学の両方)を見極めている感がある。それでも自分の化学を話す段になると、背景や重要性、それに対するアプローチの方法を、それぞれの礼儀正しさで、化学に関わっていそうな相手に理解させたいという意気込みが伝わってきた。研究のゴールとそれに至るための鍛えられた基礎化学がそこにはあった。成功を切に祈るも、研究費の採択率は、この国でも25%に満たない。

[1] 化学科の先生として採用される時には、独立した研究室を持つメンバーになる。6年の間に公表された研究成果をもとに、大学外の委員も加えたメンバーで「その後も、この大学には必要なスタッフか」が評価される。「残念ながら」という結論をもらった時には、7年後は大学に職があるけど、次の職を探すステージに入る。
[2]米国の主な競争的資金は、学生を雇用する経費も含まれていること、また獲得できた時には、そのうちの40-60%が大学の収入として吸い上げられる点、日本とは違いがある。
11.9.11

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中部国際空港から

 北米へは週六便が飛ぶ。ただしデトロイト便、それより西へ行くのではトロイ。そこで国際線乗継ぎ成田経由でデンバーを選択した。チケットにはデンバーしか記されていないけどシアトル経由である。成田から満席のB777に搭乗した。飲み物にビールをお願い、American かJapaneseかを聞かれた。Americanと答えたがキリンラガーが出てきた。座席のイヤフォンの接触が悪くて、手で支えていないと使えない。「これからアメリカだ」を実感した。シアトル国際空港に着く。入国審査でおよそ30分待つ。今回の旅行の目的は?滞在期間は?のおよそ二つの質問かと思うけど列は進まない。シアトルでは「あっとる?」と繰り返されるのかもしれない。空港内の電車を二回乗換えてDenver行きのターミナルにたどり着いた。Denver空港にてネット接続をしていると、おばさまが尋ねてきた。「私のi-phone、つながらないの、どうしたらよいのかしら」と困っている様子。わいはWiFiについて詳しくないけど、ここはfree、ただし場所によって電波状況が違うみたいとお話した。とりあえず納得された。でバンに乗ってララミーに移動、そこには数名の乗客。「あなた大学の先生みたいだけれど、どこから来られたの」と正体を見破られた。やむなく「ワイオミング大を訪問するタイミングを見つけまして」と続けた。待合せ場所でEdに会えた。家を出て25時間後である。
 ちなみにEdは、はるみさんじゃないからね。
11.9.10

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液晶は通常

 二つの層の間を切り替わり、たとえば二つの色が表示される。それに対して三色に光るシステムが加藤先生(東京大学)らのグループによって開発された[1]。この成果は新しいタイプの液晶ディスプレイやデータ記憶への応用も期待できる。この三色系は、発光部位としてフェニルエチニルアントラセンが主となる大きなダンベル型の分子を、より小さな有機分子と当量でブレンドすることで構成されている。ブレンドでも特性はぶれへんドみたいな系で、一種類の発光化合物で三色出せる最初の例である。UV照射によって混合物のフィルムは赤燈色に変化する。室温でフィルムを切ったりこすったりすると黄色に変化する。また90℃で行うと緑色になる。またこの変化は可逆である。このような特性は材料の力学的な履歴を示すインジケーターとしても利用できるかもしれない。
 なお色の変化は、銀杏の葉をモチーフにして一応示されている。これで「いっちょうやったろうか」という気分に導いてくれるかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, August 15, p. 30.
11.9.9

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どじょうに

 例えた総理が登場した。「どじょうに同情を」か、「濁をとって発展途上」かあるいは「どうしよう相談しよう」、「どじょうで土壌がため」か、どの作戦かはわからない。でこのどじょうを欧米メディアはどう伝えたか。平野次郎さんが話題にされていた[1]。英語ではloach(自分も初めて知った)、ヨーロッパ系メディアは最初、この部分をカットして発信したらしい。アメリカでは表面上の意味は伝えたものの、的を得ていない。「自らを川底に住むうなぎに似た魚に例えた」みたいな表現だったらしい。その中、イギリス「エコノミスト」誌は、fish called Nodaというタイトルの記事[2]で野田総理について、民主党の他の候補よりも、まっとうな危機感を持っていたこと、自虐的なユーモアのセンスがあることを書いた。このセンスについての指摘は称賛であるらしい。ちなみにその記事後半では正確さを欠く訳だとしながらも、「泥臭く」をstink like mudとしている。
 なにはともあれ、泥にまみれすぎてwithdrawにならないようにと願う。

[1] 9月7日NHKラジオ、時の話題
[2] http://www.economist.com/blogs/banyan/2011/08/new-leader-japan
11.9.8

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ミシシッピー川流域

 について執筆されていた[1]。ここでは硝酸塩の濃度に注目されている。すなわち窒素やリン肥料が地下水に流れ込みさらにミシシッピー川からメキシコ湾へとたどりつき、メキシコ湾では、酸素濃度が低下、多くの生き物が生きることが出来ない状態になる。ただ汚染物質の川への流入量は、降雨のような気候変動によって年ごとに変化するため、この評価は簡単ではない。そこで統計的手法が採用された。すなわちミシシッピー川とその支流8カ所で、1980年と2008年の間に集めたデータが分析された。その結果、三カ所の支流では、硝酸塩の汚染は変化がなかった。一方で五カ所では、最大75%汚染が増加していた。全体としてメキシコ湾への流入は1980年の値と比べて9%増加していると決定された。この分析方法の妥当性が評価されるとともに、これまでの流入量の削減への取組みの成果が見られないことは嘆かわしいことであると指摘されている。
 硝酸塩削減の作戦、未だ勝算なしか。しかもミシシッピー川対策の出費も大きいに違いない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 15, p. 9.
11.9.7

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表面張力に対する

 センサーの応答で液体を区別することができるらしい[1]。リトマス紙やpH試験紙の使用は水溶液に限られるのに対して、全ての液体が独自の表面張力を有している。これを利用するための素子を作成した。すなわち欠陥や亀裂がなくて均一の孔を有する光結晶をアルキルクロロシランの蒸気にさらし、内側を官能基化した。さらに素子をマスクし、酸素プラズマエッチングで保護していない表面を消し、さらに別のアルキルルクロロシランの蒸気にさらすこととプラズマエッチングを期待する表面パターンになるまで繰り返し行われた。この素子を液体に浸すかあるいは湿った布で拭いた。その結果、液体の種類さらにはその濃度によっても違う表示が浮き出てきた。一つの素子は、100%から50%エタノールを区別し、もう一つはイソプロピルアルコール、アセトン、水を視覚的に区別することもできた。この種の素子は、認証や偽造防止への応用も可能である。
 すぐれものである。素知らぬ顔しないで、素子のこと、皆さんに送信してくださいね。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 15, p. 7.
11.9.6

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おもしろきこともなき世を

 おもしろくは、高杉晋作の句である。松下村塾の塾生だった晋作、上海にも渡航、のちに奇兵隊を率いて幕府軍とも戦い、大政奉還への道筋をつけながらも、肺結核によって27歳でこの世を去った。その記念館を見学して生家も訪ねた。ご両親、奥様は明治まで生き抜かれた。実際に使っていたという三味線も展示されていた。「もし彼が生きていたら日本陸軍の行く末は随分と違ったものになっていた」と指摘されることも多いけど、その要点を学ぶこともできずに、名残惜しく、歯ぎしりしながら、萩市を去った。懇親会では、ご当地名物のエビ三昧のおもてなしを受けた。ビールはさておき、刺身、天ぷら、フライ、団子、グラタンまで満喫させていただいた。会場探しから、設営、連絡、おつまみや飲み物の調達まで、本当にお世話になりました。
 そう言えば、萩市にある重要文化財のひとつ菊屋家住宅には、恵比寿様が祀られているそうである。
11.9.5

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松蔭の印象は

 いいんでしょうイン」では収まらない。情動が渡米への思いを押し立て、ペリーに交渉するも失敗。時に松蔭24歳である。その後、幕府の手を経て長州で幽囚、幽閉の日が続いた。そこで松下村塾を開き、多くの言葉を書き記し、幕末から明治にかけて活躍する人材を輩出した。アヘン戦争後の清国の悲惨な状況が「あ、変」というのも、松蔭やその弟子たちを駆り立て、人材を育て、情報を集め、情勢を考え、ついには当時の幕府ではだめだという流れになったのではないかとも感じた。地元、明倫小学校では「松蔭先生のことば」を朗唱しているとのことである。一学期にひとつ、6年間で18の句を唄う。意味がわからなくても、響きのある言葉を繰り返すことは、いずれその言葉が骨身にしみる。教育方法の原点でもある。一年生一学期は「今日よりぞ、幼心を打ち捨てて、人と成りにし、道を踏めかし」である。七五調のこの言葉、実際には、松蔭の従弟の元服の際に送ったものらしいけど、齢を問わず、学期の始めには朗唱してみたい。
11.9.4

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山口市に来た

 名古屋から「のぞみ」でおよそ2時間45分、新大阪以西は山陽新幹線。「出来る限り真っ直ぐに」をモットーにした路線である。「山があればトンネルを掘ればよし」みたいな感じで、ともかく何度も入る。その度に音がこもるので、大人しい自分はハッとする。わずかな合間を縫っては山手の風景を見る。都市になっているところと、そうではないところのコントラストも楽しい。新山口から防長バスで会のある場所へ移動。バスのボディにはBOCHOとある。ホルムエステルのBエステル? 行き先は秋穂であるが、これは「あいお」と読むらしい。飢えのない豊かな地域に違いない。バスには今回の多くの参加者が乗り込み、おそらく普段とは違った具合である。難易度の高いすれ違いを何度も繰り返してバスは目的地に向かう。瀬戸内海を一望できる宿に到着した。台風が接近するという日の露天風呂、そんなシーンが古典にあったかもと考えても出て来ない。天気が好転することを願って風呂を出た。
11.9.3

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Coors light beerは

 アメリカのビールの一つである。「試飲するまえからCoorsはちょっとねえ」という人は食わ〜ず嫌いである。このビールのボトルにはロッキー山脈がデザインされたラベルが貼付けられている。コマーシャルでは「この山脈の色が青色に変化すれば飲むには最適の温度である」と言う。その後、実際の山をながめて「山の色が変わるんだぜ」でコマーシャルは終わる。でこのラベルには、ロイコ染料が使われ、いわゆるサーモクロミズムを利用している。ロイコ染料はジメチルアミノ基を有するトリアリールメタン部位とラクトン部位が組み合わされ、酸性度が小さくなるとプロトン化によってラクトン環の開環でπ共役系が拡張し、紫色に変化する。ただしビール瓶表面の酸性度を調節することはできない。そこでロイコ染料、弱酸、高分子量の溶媒が50μm以下のパーティクルに組込まれて、ラベルにしている。溶媒の融点が鍵で、固化した中で、酸によるロイコ染料のプロトン化が進行するらしい。常温に戻ると脱プロトン化でもとに戻る。ロイコ染料はいつも良い子である。

[1] http://www.chemistry-blog.com/2011/08/02/coors-light-cold-activated-bottles-how-does-it-work/
11.9.2

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水素のような

 燃料の発生を電気エネルギーで行える触媒、あるいは酸化反応に関わる触媒は、将来の発電基地で中心的な役割を果たすことが期待されている。ちなみにあくまで基地内のことで基地外のことは知らない。そこで触媒は水の分解システムに組込まれ、水が有する二つのプロトンから水素を発生させることで、太陽エネルギーの変換に利用しうる。これまで白金が水素の製造、酸化を触媒していたが、白金が高価であること、希少であることから、汎用金属である鉄やニッケルで同様の触媒反応を達成できるヒドロゲナーゼ酵素に注目が集まっていた。そのような背景の中、酵素の機能を超えるニッケル錯体が開発された[1]。7員環化合物で1,4位にPh-P基、6位にPh-N基を有する化合物が二分子、配位子としてNi(II)に配位している。これを触媒として、プロトン化したDMFからの水素発生の実験が行われた。その結果、最も速い天然の酵素の10倍の速度、すなわち酵素より高速で水素を発生させることができた。それに用いた電子と発生する水素分子の量から、ほぼ100%効率ではあるが、研究者らはさらに改良をめざすとのことである。ニッケルの成果で、ニヤケル時期はまだ先であるらしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, August 15, p. 6.
11.9.1

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