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2011年11月

ヘパリンとは

 血液がへばりんつくのを防ぐ、坑凝固薬である。一般には、牛や豚の腸の粘膜から採取される。それに対してヘプタサッカリドの改良型合成が報告された[1]。ヘパリンはスルホン酸基がいくつか結合したグリコサミノグリカンであるが、合成は未だに難しい。ただし合成品は、品質の制御と安全性の点から期待されている。これまでの合成戦術は収率が低く、酵素法では構造制御が、いまいちだった。ヘパリンできても、パリンと壊れる場合もあったかもしれない。そこで新しく開発された方法で二種類のヘパリンヘプタサッカリド配列が提供された。合成スキームは、発酵によって得られたジサッカリドからスタートし、バクテリアの酵素と化学合成の段階を組み合わせ、おおよそ40%の全収率で生成物を与えた。それは生体内で坑凝固活性を示し、グラクソスミスクラインの合成ヘパリンペンタサッカリドと同様の薬物動態特性であった。新しい化学酵素法は、様々な誘導体の工業的スケールでの合成への糸口となると研究者らは述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 31, p. 35.
11.11.30

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ナフィオンは

 フッ素樹脂の一種で高いイオン伝導性を示す。そのナフィオンは燃料電池の中で電極と反応物を分離するための膜として利用されている。その劣化は、水素、酸素、白金との反応を含み、ラジカル種が生成した後に、劣化している部位と反応するよりもむしろ、損傷していない部位と反応することが報告された[1]。これまで研究者らは、ラジカル種がナフィオン損傷で作用していることは信じてきたが、それがどのように生じて、高分子と反応するかについては確かではなかった。理論分析を使った解析で、燃料電池の触媒として使われている白金表面上で過酸化水素からヒドロキシラジカルが発生することがわかった。ついでヒドロキシラジカルは二種類の方法でポリマーを損傷する。一つはナフィオンが有するC-S結合を攻撃する。もう一方はC-F結合を攻撃するかのいずれかであるが、どちらにしてもナフィオンはなおんない。そこで触媒を修飾することで、過酸化水素の発生を抑制するか、ラジカル攻撃に耐えうる高分子をつくることが燃料電池の長寿命化には必要であると著者らは述べている。
 いずれライオンのように強いナフィオンが誕生しますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 31, p. 35.
11.11.29

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地区講演会

 ビスイミダゾールのベンゼントリカルボン酸塩の金属錯体がつくるナノチューブの中に水が収まっている。特異な挙動も示す。○○水という怪しげな商品が出回る中、この水は本物である。この講演に始まり、らせん状の主鎖がビピリジル錯体を形成する話も拝聴。物性も確認する。円二色性スペクトル、略称CDだけど「名古屋地区でCDと言えば中日ドラゴンズ」で会場は盛り上がる。それはともかく主鎖のキラリティの数を減らしても金属錯体部位は高い光学純度を示す。講演のトリは触媒反応開発にまつわる話。複数のスーパースターを演者は紹介する。スターらもスターラーを使う。また演者も、学生をスターに仕上げるマジックを備えておられる。最適な触媒を探索するためには、温度、配位子、触媒前駆体など様々な因子の組合せを網羅した実験と、時にこの辺りではないかと、条件を設定するセンスも必要である。それをやりきった学生さん、およそ三年間で実験回数3000回、記念のケーキも登場した。それでもある時、生成物の構造がわからない。直接の指導の先生と学生さんらがNMRを何度見てもわからない。で演者の先生が食事時にながめたら「なんやフランか」と直ちに判明。その後、学生さんはフラン合成に一心不乱に取り組んだとのことである。
11.11.28

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土木計画学研究発表会が

 講義棟で開催されていた。スタッフはオレンジを基調とするジャケットをはおり、受付や会場係を担当していた。他から来られた人は、今話題のジャイアンツ色かと思われるかもしれないけど、そうではない。これは本学の学章にも使われている、鵜飼のかがり火をモチーフにしたものかと思う。チーフに聞けばわかるはずである。工学部を出た踊り場では、ポスター展示用のブースがあった。吹きさらしのなかで大変だねえと昨日は思っていたけど、昼は穏やかな気候である。国土交通省からの出展や東日本大震災関連の話題も多い雰囲気である。踊り場を出たところは昼食用の、おくみのカレー販売コーナーである。おくみさんが考案したものではない。奥美濃カレーで、Wikipediaによれば、ルーの隠し味に(極上の)郡上味噌が使われているらしい。白米かガーリックライスを選ぶことができる。なのであたりにガーリック臭も漂っていた。そこで「それはジアリルジスルフィドのイオウ一つが酸化されてスルホキシドになった化合物であるアリシンの臭いです[1]」と解説を差し上げようかと思ったけど、アリシンより地震が主たるテーマのひとつようなので、遠慮した。

[1] Eric Brock著「Garlic and Other Alliums」RSC publishing (2010)に詳しい。
2011.11.27

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ロタキサンは

 ダンベル型の分子がドーナツ型の分子の穴の部分に入り込んだ分子である。今ではロタキサンの例もたきさんになった。またタヌキさんがこの分子を好むと好まざるに関わらず、これを合成する際には、たとえば鎖状のアンモニウム塩とクラウンエーテルとで水素結合などを利用した組織化をしておくことが必要である。それに対してGrubbs先生らは、事前の組織化を経ない高分子ロタキサン合成に成功した[1]。すなわちジエニルアンモニウム塩とクラウンエーテルは溶液中で絡み合い、そこへ鎖状ユニットのキャップ部分になるべき原料と、Ruジエンメタセシス触媒を加えることで合成できる。この特異な高分子は、ポリアンモニウム部位にクラウンエーテル、さらに両末端にはジメトキシアレン基を有している。機械的に連結した高分子を高い効率で、しかも容易に導くことができることから、素早く色々なユニットを組込むことができる。そのため多様なポリロタキサン構築を可能にするだろうと、先生らは述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 31, p. 34.
11.11.26

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恒星が誕生すると

 それを濃いガスが円盤状に取り巻く。planet-forming diskや原始惑星円盤などと呼ばれるらしい[1]。その中、地球からおよそ176光年の距離で、大陽と類似だけれども、誕生から500から1000万年ほどしか経ていないTW Hydraeのplanet-forming diskの円盤の出番がきた。これまで天文学者は、原始太陽系のしゃく熱の内部からは温水しか検出できていなかった。それに対して、天文台の周波数変換式の遠赤外測定装置を利用することで、TW Hydraeでは、氷粒子から生じる様に冷たい水がdiskの外の領域に近いところにあることを特定することに成功した。さらに原始惑星円盤にある冷たい水の量は、地球上の数千の大洋を氷でつくることができるのに充分なくらい存在していることを示していた。氷水が検出された円盤の領域は、われわれの太陽系では氷で覆われたすい星が存在するのと、同じ領域である。
 惑星の話、わくわくせいへん?

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 24, p. 37.
11.11.25

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Metal-organic frameworks(MOFS)

 日本語では、金属有機構造体と訳されている。配位子が複数個と、金属が複数個で金属クラスターを形成するが、配位の方向性が規定されているらしい。さらにMOFの空孔は、毛布の如く柔らかく、様々な分子を取り込むことができる。そのため新規なMOFSの設計が広く行われている。今回トリアゾールにCF3基が一つあるいは二つ組込まれた化合物を配位子として、銀を組込んだMOFが合成された。このMOFはヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、p-キシレンを吸収することができる。また現在使われている原油流出の時の吸収剤よりも高い効率で吸収できる。活性炭、有機粘土、多孔質ゼオライトなどの従来品とは違って、今回のMOFはフッ素原子によって表面が疎水性になっているために水を吸収せず、さらに毛管現象も示し、好感も持たれる。これによってC6—C8の炭化水素を選択的に吸収できることから、流出物の一掃や有機化合物の貯蔵に利用できることが期待されている。
ちなみにMOFは日本の財務省(Ministry of Finance Japan, http://www.mof.go.jp/ )の略でもある。こちらは毛布の様じゃないだろうねえ。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 24, p. 37.
11.11.24

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秋のソフトボール大会が

 中止だった。この学科の大会には景品がある。参加チームは参加費を支払い、景品を事前にリクエストしておく。この景品は上位のチームから希望のものを選ぶ。基本的には自分たちが願った品が手元にくるはずである。中には誰もいらない景品をリクエストしておいて他のチームの希望の景品を持っていく場合もある。で中止の場合には、くじ引きとなる。研究室は二年連続、「松茸」を希望して手元に届いた。昨年は不在で「松茸、待ったけよ」と言ったけど、写真を見せてもらうに留まった。今年は四台の炊飯器に14合かの米、人参などの食材も合わせた松茸ご飯をいただくことができた。水加減にご飯の柔らかさもすばらしく絶品だった。短時間でほぼ完食。それでも参加できなかったメンバーのための分を確保していた。なぜか餃子やキムチの香りが松茸の風味に拮抗している。その松茸の風味マツタケオールは、1-オクテン-3-オールである。だから飲食会の始まりが、少し「遅れてん」なあと納得。
11.11.23

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水の都と言えば

 ここでは大垣である。松尾芭蕉が奥の細道の旅を終えたことから、むすびの地とも言われている。また東京から東海道本線で410 km地点で、それにちなんだ説明がある。そこへ45人分の分子模型セットを持って出かけた。大垣駅前のバス停、路線図と時刻表が表と裏に表示されている。小雨降る中、路線図は雨ざらし側である。「屋根がなくて、や〜ね〜」と月並みなことを思い浮かべながら、この表裏をぐるぐる回って発車時刻も確かめた。高校の周辺の電柱には東海地区の私立大学の看板が目立つ。宣伝文句も添えられている。それを通りすぎて正門から入る。校長先生から丁寧なご挨拶をいただき、110分の授業に臨んだ。いつもの話題に加えて、アダマンタンやフロンタリンなどの助けも借りて化学の紹介をした。「すごい数の有機化合物ができそうな感じがわかった」という感想ももらった。模型を回収している際に「自分の家にもこれありますよ。もっとたくさん入ったセットが。それでヘムつくりました。」と教えてもらった。「なかなかやるじゃん」と手応えも感じた。ただ全員でヘム作りだと、中にはヘこム生徒もいるだろうね。
11.11.22

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プロ野球シーズンが幕を閉じた

 三振を喫した瞬間にチャンネルを変えた研究室のメンバーも多かった中、インタビューまでつきあった。ワイドビューなテレビを見る。秋山監督が選手一人一人と抱き合い、その後胴上げがおもむろに始まった。オーナーの胴上げもあった。これも珍しいけど、球団名の如くソフトな雰囲気である。勝利監督インタビュー。目頭を熱くしながら答える。「さあ次はアジアチャンピオンシリーズですが」の問いかけに「そのまえに」とその質問を制して「3月11日の震災被害に対してプロ野球として何が出来るのか、被災された方々に勇気と希望を与えることができたのではないか」ということに言及していた。監督の非凡さがこちらに伝わった。たしかに3月25日開幕予定だったのが、電力需要などの理由から、それは数週間後に始まった。結果としてスケジュールはタイト、でも対等な条件だった。最後はセ・パのシーズン優勝チームが、時に切迫(セっパく)感のあるシーンをしのいだり、凌駕したりのゲームだった。
11.11.21

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トイレの改修工事が

 しばらく前に完了した。老朽化してきたというのが理由の一つである。最も近い場所のそれは以前、一階から七階までを男子が占有していた。今回は階ごとに異なる。なので「今度のトイレは遠イで」という人と「トイレが近い」という人に分かれる。和式と洋式だったのがすべて洋式になり、しかも温水洗浄便座になった。和式は「生活の中で足腰を鍛えるわずかな機会を提供するものなのでそのままに」というお願いは通じなかった。また講義棟はすでに改修されているので、その数は局所排気装置いわゆるドラフトの数に匹敵する。この状況は欧米のどこの大学に比べてもあり得ない状況で群を抜いている。別の見方をすればガラパゴス化である。ただし「グローバル化に対応するには」と頑張る方々は、このことは主張されない。そのうちこの様式にしか慣れていない学生さんが育ち、海外留学の場で用を足すことができないという状況になるかもしれない。なにせあちらでは、場合によっては6畳以上のスペースだったり、個室の扉は基本的に足下から数十センチ空いていて足下が見える。中には扉そのものがない国もある。
11.11.20

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一日一コマだけの

 日は避ける様にというお話である。専門科目の時間割編成である。もちろん一コマの日でも学生は全学共通の履修をしている場合もある。ただその「避ける様に」は、開講科目を増やすようにということかと思っていたら、0コマの日があれば大学に来なくてもよい日になるので、という希望があったらしい。このコマの話に困った。実際にその学生さんがいるとすれば、それは惜しい。大学は単位をとるためだけのところではない。「GPAがどうのこうの」も大学生活のほんの一部である。キャンパスでは18歳から20代の人たちがあふれ、授業を受けたり、他の活動も盛り沢山である。人工の川とは言えカモも住み、come on と呼びかけているようである。移転して30年ほど経て、生長した木々の変化を視覚でも嗅覚でも実感できる。人生のうちでこの場に通うことができるわずかな年数である。その間に、自分の立ち位置、人と人との距離感を感知したり、自分には知らないシーンや物事がこんなにもあるのだなあと体感しながら、「まさか自分がこんなに成長するなんて」と、入学した時点では思いもよらなかった変貌を遂げて巣立ってほしい。キャンパスはその場である。You can pass the exam.だけではない。
11.11.19

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日本シリーズです

 今年は地上波でも完全中継。アウェーいわば適地で二勝したドラゴンズに名古屋ドームでの勝ちを期待したドラゴンズファンもいた。研究室でも盛り上がる。でも基本的には冷静なファンが多い。虎キチとは一線を画する。それはともかく中四日でチェン投手が先発。チェンジが遠い苦労の投球である。接戦の中、摂津投手がホークスのマウンドにたった。秋山監督の短期決戦モードである。前日の試合、ドラゴンズはノーアウト満塁。現場であるドームからムードを伝える電話が研究室のファンにあったらしい。本人もシンクロしていた。その時ホークスは、森福投手を起用して抑えてしまった。江夏投手の21球に匹敵するとメディアは報じた。30年以上も前のシリーズだけど今でも蘇る。それ以上に、解説者の方々が言われる如く、シリーズは終わるまで何が起こるかわからない。ほんのわずかなことで潮目も変わる。落合監督、打ち合いで勝利をお願いしますとファンに成り代わって念じています。
 野球ファンにとってはシーズン終了が寂しい限りなので7戦を期待している。この感覚って、村上春樹の長編を読んでいる時に、ようやくあと30ページだと思っている自分だけど、それで終わりは寂しいよ〜うみたいかなあ。

11.11.18

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鉛が

 たまりすぎるとよくない、中毒になると昔から言われていた。一方で鉛の欠乏については言及されてこなかった。それに対して、米国、国家毒性プログラムは、血液中の鉛の濃度が一定以下の場合には、健康に悪い影響があるという中間報告を作成した[1]。最終報告が上程された後に連邦政府は、労働者の鉛暴露量や現在高い値の血液中の適正な量のレベルを緩和することになるらしい。報告では、鉛の血中濃度が5マイクログラム/デシリットル(μg/dl)以下の場合には、知的学修能力や認識機能が低下し、子供の多動性障害や問題行動が増える可能性がある。さらに10 μg/dl以下では、子供の思春期の遅れ、成長遅延、IQの低下、聴力低下を引き起こし、成人では循環器疾患の増加の可能性があることが示されている。
 鉛の血中濃度は、1985年以前は30 μg/dl、1991年までは25 μg/dl、で現在は10 μg/dl以下が基準である。今後様々な委員会が関わって適正な値が示されるようである。この値が変更になっても、鉛自身は「あんまりやで」とは言わないはずである。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 24, p. 7.
11.11.17

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硫化水素も

 細胞シグナルリングでは、貴重な役割を演じている[1]。それは血圧調整、代謝速度、血管形成や坑炎症効果など、多くの生体プロセスを媒介する。さらにスルフィドの量は、アルツハイマー病や肥満状態によっても変化する。そのため、硫化水素の生体内での量の測定は、疾病の診断にも役に立つ。にもかかわらず実際にそれを可能にするプロセスはまだない。いわば硫化水素については推測の域を脱していない。それは、生体内にはチオールやスルフェン酸や亜硫酸塩など硫化水素と同様に振る舞う分子が多数存在するためである。そこでこの硫化水素の検出はチャレンジングなテーマであった。それに対して二種類の分子プローブが開発された。一つは硫化水素がアジドのアジトを見つけて還元することで、蛍光発光できる化合物である。もう一つは、分子内のα、β−不飽和部位とアルデヒド部位に付加して環状ヘミチオアセタールを形成し、こちらも蛍光発光できる化合物である。最近開発されたばかりで、この方面での今後の研究の発展が期待される。
 将来、血液検査に、硫化水素レベルという項目も登場するかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 17, p. 60.
11.11.16

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直鎖アルカンが

 波形の金表面で、中程度の温度で重合することが報告された[1]。近年、金を触媒とする様々な反応が開発されているが、それに新たな系が加えられている。しかもアルケンの様な官能基化した出発化合物を使う必要もなく、安価にポリマーを導いている。さらにこの研究は、固体触媒を含む反応における分子スケールでの表面構造についての機構的な役割も検討している。表面再構成と呼ばれているプロセスで1.22 nm幅の溝が金表面で形成し、これが、どんな魂胆があるかはわからないけど、ドトリアコンタン(CH3(CH2)30CH3)のような長鎖アルカンが一次元チャンネルに拡散することを制限している。走査トンネル顕微鏡法と他のタイプの分析結果から、研究者らは、表面上での閉じ込めによって分子の特定のC-H結合、とりわけ末端のメチルと最後から二番目のメチレン基を活性化していると結論づけている。さらにこれによって水素が脱離し、炭素−炭素結合が形成し、モノマーの端から端が繋がることにつながっている。
 「アルカンにもこんなことがあるんか」と驚いた。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 17, p. 55.
11.11.15

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学科名を

 わかりやすいものにしたい」らしい。組織見直しという議論の中である。たとえば採用担当の人から「どこの学科を訪問すればよいかわからない」と指摘もあったという。でも自分は、学生の就職に関する当番で、その話はまだない。「応用化学」だからかもしれない。なのでこの名前は残してほしい。でも危うい。ちなみに訪問していただいた企業の採用担当のほとんどが「会社名だけではわかってもらえなくて」と自分たちの展開しているお仕事の話を始められる。相当数の会社の名前は「ほんわかとして、なんでもあり」という雰囲気である。この曖昧さが今は鍵であると授業でも話す。かつては、○○窒素肥料や○○石けん、○○セルロイドなどの企業名が主流だった。と付け加える。通称「トヨタ自動車」でさえも、今は「トヨタ」である。それでも誰も弱っていないし、自動車ではない領域も視野に入れるという意気込みではないかと思う。
 実際、単純明快な名前の学科に入学、中身が違って、ガッカりされても困るので、ここはやはり「その名前なんじゃ、難解やなあ」で如何でしょうか。
11.11.14

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光学純度の

 計算方法がわかりませんと学生が質問に来た。今は講義担当ではないけど、有機化学の先生だと思ってか、先月に続いて訪ねてもらった。しかも朝8時20分頃にである。なので大切にしなくてはいけない。説明が終わって、わかってもらえたかもしれないが、理解するのに苦労する章である。その前までは、一つの分子の形を見ているのが、ここでは集まりになる。最後の頃に、はたと気がついた。以下はそれである。
 クラスでフォークダンスをすることになった。ただし男女比が違うのでどちらかがあぶれる。あぶれる人の割合が光学純度である。たとえば男子46名、女子9名のクラスだとする。その差をその和で割り算して100をかけた値、この場合には67%になる。すなわちクラスの総数のうち67%はパートナーがクラス内には いないので他で捜す必要もある。その分、向学で活性でなくてはいけない。
 このダンスの喩え話で、数段(す)、簡単に理解していただけるとありがたい。
11.11.13

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11.11.11に

 Baumgartner 先生に、遥か彼方(カナダ)から名古屋を廻って来ていただいた。北米の先生とは必ず研究費のことが話題になる。カナダとアメリカでは以前、かなり状況が違っていたけど、今ではアメリカ型になりそうな感じで、ある申請枠の採択率は50%程度だったのが今では16%にまで下がっているらしい。過去の実績は評価対象にはならない。申請内容のクオリティで五つのカテゴリーにランキングされて、カテゴリーごとに金額が決まる。上位のカテゴリーの人の希望額が少ない場合には、下位のカテゴリーの人にも研究費の配分はあるが、その逆のこともある。
 大学の先生のポストについて:研究費を獲得することができていれば退職の必要がない分、若手教員の使うスペースが減る。それとは必ずしも連動はしないけど新人教員の採用枠が国全体で少ない。こちらもかつては一つのポジションに100ほどの応募だったのが今では300くらいあるとのことである。
 革新的なアイデアと成果を惜しげもなく紹介する講演に圧倒された後に会食である。少しの日本語を覚えておくべきだったと言うので、話していると先生(sensei)という言葉は知っているけど使い方がわからないとのこと、外国人が使う分には、それほど堅苦しくもなくカジュアルすぎることもないのでと、使い方を指導する。Sensei is sensational(センセーショナル).は受けるかもしれないと付け加えた。
 およそ3週間の日本国内行脚を満喫していただきますように
11.11.12

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旧石器時代の人類は

 染料化学者であったらしい[1]。考古学者らは、南アフリカの海岸沿いにある洞窟で、オーカーとして知られている明るい黄土色の酸化鉄を含む土を発見した。これまで発見されていた最も古いものは4万年前のものだったけど、今回のは10万年前である。当時の人類は、色素で自らの身体やほかの物体の色塗りをしていた。また今回の発見は、彼らが色を塗った化合物やそれを貯蔵する容器に関して、綿密な計画を立て、製造し、さらには情報収集を行っていたことを示している。ホモサピエンスはまた、化学の基礎知識を持っていて、長期計画を立案する能力もあったと結論づけられている。当時人々は、岩からオーカーを掘り出し、骨を加熱することで、脂肪や随を抽出していた。さらにこれらは「やばいんだ〜」ということもなく、色素のバインダーとして利用されていた。しかも昔の絵の具は貯蔵のために、密封されたアワビの殻に保存されていた。それで長持ちする分、アワビの中でも、わびしくはない。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October, 17, p. 55.
11.11.11

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警備担当者は

 不透明なプラスチック容器は潜在的に危険であると判断する。シャンプーなのかそれとも爆発物なのかがわからない。それに対してラマンスペクトル技術で、不透明なプラスチック容器に隠れた爆発物を判断し同定することができることが明らかにされた[1]。緊急対応チームは、通常ラマンを基本とした携帯端末を持ち歩き野外で害のある物質を見つけ出す。ただしその端末は、不透明プラスチックに隠れた化合物のスペクトルを集めるのには苦労している。そこで時間分解ラマンスペクトルならば、レーザーによってサンプルを励起させた後、直ちに検出器の前のゲートを閉じることでプラスチックの向こうを見通すことができるのではないかと考えられた。ゲートが閉じることでプラスチック内容物からのシグナルを避けることができ、ゲートを開けることで、サンプル内、深くから光子を集めることができる。爆発物はラマン光にガマンできないに違いない。開発者らはトリニトロトルエンの副生成物であるジニトロトルエンで満たした容器を5mmの厚さまでの様々な白いプラスチックの後ろに置き、性能を確認した。容器の種類によって違いはあるものの、300~500ピコ秒の間で検出できた。「あれは、ジニトロトルエンに、似トルエン」というレスポンスかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 17, p. 54.
11.11.10

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Venus(ビーナス)には

 絶世の美人という意味もある。でもここでは、気にせいでよい。金星である。ヨーロッパの金星探査計画はVenus expressと呼ばれ、その宇宙船が、金星には表面よりかなり上昇した位置に薄いオゾン層があることを発見した[1]。これまで地球と火星にはオゾン層が存在することは知られていた。今回の結果は、金星のオゾン層は火星のそれと同様に薄く、地球が持つものほどの厚さではないことを示している。科学者は惑星のオゾン層の起源については明らかにしきれていないが、地球の場合のオゾンは微生物や植物によって放出される酸素由来である。一方で金星では、均整がとれているかどうかはしらないけど、地球のそれの100-1000倍程度の薄さで、地球よりも4倍の高い部分に位置しており、生物的に発生するには希薄すぎる。よほどの気迫が要る。そこで金星、火星では、CO2分子が光化学的に分解することで発生すると考えられている。「このオゾン検出は、金星の大気の循環や化学に関する様々な情報を、もたらしてくれている」とコメントされている。
 ちなみに、火星のオゾンで、稼いでみようとしても、おそらく大損すると思います。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 17, p. 54.
11.11.9

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α位が置換されたアミド

 は、医薬品化学において、キラルな合成部位として、抗生物質やペプチドをベースにした酵素阻害薬の合成で重要な化合物である。この化合物に対する従来法では、ラセミ混合物から必要な立体化学を持つ化合物を取り出すことによって得ていたため、半分は不必要であった。それに対して「Chemoenzymatic path」が開発された[1]。Enzymeと言っても財務とは縁がない。酵素である。その脱ハロゲン化酵素がα-ブロモアミドを拘束し、一方の立体異性体のハロアルカン部位を水酸基に変換する。ついで加水分解を受けなかった光学純度の高いα−ブロモアミドと加水分解を受けた同じ絶対配置を持つα−ヒドロキシアミドを、フェノール、エタンチオール、ベンジルアミンなどのヘテロ求核剤による求核置換反応によってα置換の誘導体を導いている。
 この研究を推進したFeringa先生らは、オランダ、グロニゲン大学所属である。苦労人間に恵みが訪れた。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 10, p. 41.
11.11.8

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倒木のため

 長野発の列車の発車が遅れた。結果20:40に出発した。通常通りに名古屋まで走れば、岐阜方面の最終には間に合う。ただし単線区間の待ち合いもあるのでわからない。車掌さんに聞いても微妙な感じである。おおよその到着時刻がわかれば教えてください。とお願いした。謝罪と「This is the limited express bound for Nagoya.」というアナウンスはあるけど、松本を過ぎても予想到着時刻の話はない。こちらから出向いた。聞けば「この列車は現在、定刻より○○時間遅れています」と言われる。自分が概算した時間では名古屋到着は0時10分頃である。岐阜方面の最終は0時2分発である。そのことをお伝えしたら「お客様のおっしゃる通りです。そこでその車掌に出発を遅らせてもらうように・・・」などと言われる。まさかと思って、だんだん気持ちもジリジリしてきた。塩尻近くになったので、車掌さんは仕事に戻った。そこで運転手と車掌が交代してしまった。さしたる引き継ぎもない。また説明をする。「列車ホテルで泊まっていただくことも」ということである。「その列車ホテル、拙者はいやじゃ、ビジネスホテルを自分の責任で予約したい」と伝えた。中津川到着の頃にはわかりますと言われても、来ていただけなかったので、再び車掌室へ出向いた。0時までには名古屋に到着するらしいとのことだった。大垣行の快速に乗ることができた。列車遅延の事情とお詫びのアナウンスがあった。自分一人のために待っていただいたのかもしれない。同じ列車に乗り合わせた方々へは陳謝と深謝で一杯である。
11.11.7

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基盤上に

 炭素を成長させるべく実験を繰り返していた。試みの後に基盤を洗浄しなくてはいけない。ある日、洗浄はせんじょうとサンドぺーパーでこすった。一、二度か三度かは不明である。ただしその結果、これまでにはなかった成長が起こり、ここにカーボンナノチューブが誕生した。そのことを論文誌「応用物理」に投稿して掲載された。1976年のことである。それを読んだフランスの先生から「こちらに来て詳細をみてはどうか」という手紙をいただいた。今では、リチウム電池の陰極にも使われている。筒上になったチューブが一重だったのが二重のものもある。いずれはキラルなチューブも成長させたいと展望も広がる。世界中で、このカーボンナノチューブが生体内に入ったときの影響についての研究も行われている。新しい物質の安全性がここまで丹念に調べられている極めて珍しい例である。
 懇親会では「満月の日の俳句の会、みすぼらしい身なりの旅人が一句詠ませて欲しいと申し出た。「三日月の」からの句に、失笑を買うも「三日月の、頃より待ちし、今宵かな」で見下していた方々が青ざめた」という逸話を紹介された。
 遠藤先生のお話、感動した。
11.11.6

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名古屋から中央本線で

 長野に向かった。高山本線同様に、こちらも車窓から、よさそうな山あいの川沿いのシーンが広がる。木曽福島辺りでアナウンスが入る。「寝覚めの床」に浦島堂、太郎が、竜宮から戻ってきて余生を過ごしたらしい。そこには竜宮のおみやげ、弁財天が祀ってあるという。その床、どこやねんと見るけど、日暮れ過ぎた時間帯には見えない。このまま中央本線だと塩尻から東京方面になってしまうので、そこからは篠ノ井線である。松本の二つ前に「村井」という駅がある。ひなびた田舎駅だったような記憶がある。ここでは松本さんがメジャーである。ただし村井君の駅は今もある。松本で乗客が一挙に増えた。特急で通勤される方々かもしれない。時に観光列車、時に通勤特急、特急「しなの」は至難の業をこなす。振り子電車だけあって利口でもある。それでもこの揺れ対策に電車酔いされる乗客もいるらしい。長野駅では、右手に新幹線ホームがあった。東京までこれで、長野から、つながんのかと見学させてもらった。
11.11.5

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えれめんトランプに

 興じた。楽しみ方様々なうち、基本ゲーム「えれめんと」は「UNO(ウノ)」のルールに近い。そのウノは、1971年米国オハイオ州の理髪店のマール・ロビンスによって考案され、今では世界80カ国1億5000万個が販売されている(@Wikipedia)。一方えれめんトランプは中学校の先生が考案された。元素カード112枚と素粒子カード28枚の異なるカードの組合せである。ウノの様に同じ数字のカードが複数枚ではない。また数字と英語のみのウノでは右脳だけを主に使うのかもしれないが、えれめんトランプは漢字、絵もあるので、左右どちらの脳も使うことができる。元素カードにある情報(周期、族、元素記号、気体か液体か固体か)のうちいずれかが一致したカードを場に出すことができる。始めにカード7枚と場札を出してゲームが始まり、手札が0になった時点で上がり。素粒子カードはウノの英文字カードと同様にskip, reverse, draw 2などの機能を持つ。これらのルールを理解するのに「えれ〜えめんもあるか」と思ったが、案ずるより生むが易し。この日、人生最初のゲームにチェレンジした研究室のメンバー、6時間以上は夢中だったように思う。
 ちなみにYou Tubeでも遊び方を見ることができる。
11.11.4

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一位一刀彫は

 飛騨の工芸品である。1159年、時の天皇に、貢ぎ物として飛騨にある木を使って細工した笏(しゃく)[1]を献上したところ、その材のすばらしさに、正一位の位階を授かり、木の名前も一位(イチイ)になって高い地位を得た。その後、長年の変遷を経て、江戸末期にはその形が「一位一刀彫」となって今日に至っているらしい。「一刀彫」と聞くと小刀(のみ)は一本のみで彫るイメージだけど、実際には何種類もの「のみ」を使う。ただ「一刀両断」の如く、ひと太刀加えると、そのけずりを生かして次の太刀を入れて作品にしていくという技法らしい。ところが最近そのイチイの木の入手が困難になっているという。タキソール[2]を抽出するために、過度の伐採が繰り返されているわけではない。樹齢300~400年のイチイを材としていること、植林してから40年程経っても1 mにもならない種類の木であることなどが関係しているらしい。お店の人に教えてもらった後、なにか一品を手にと、巡らせていたところ、微笑む二羽のフクロウが目に留まった。現在進行中のフロー合成の成功も祈念してそれを飾ることにした。

[1]束帯着用の際、右手に持つ細長い板
[2]タキソール(パクリタキセル)はタイヘイヨウイチイから単離された。このイチイは主に、北米アラスカから南カリフォルニアの太平洋北西部に群生する。
11.11.3

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高山駅で降りた

 東山遊歩道に向けて歩く。民家と混在する町並み、地元の人にとっては、遊歩道も言う程ではないかもしれないが、こちらは地図を片手にである。工事中の場所も多い。途中に深さ2 m程、縦幅1.5 mほどの溝があった。ここを渡らなくては先へは進めない。やむなく民家の壁を這うことにした。スパイダーマンの如しであるが失敗だあ〜で終わるわけにいかない。這っている間は、民家のどこも見んかった。やっと宗猷寺についた。史跡めぐり周遊路とあったので登った。墓地があらわれた。ボチボチ歩きながら先を捜すが道を見失った。引き返して、いくつかのお寺を巡り、遊歩道から抜けた。桜山八幡宮にも参拝し、吉島家住宅に日下部民藝館も見学した。飛騨に群生する木々の特徴と「飛騨の匠」の技が凝縮されている。ゆったりとした空間の使い方、適度な非対称性に引き込まれて、心地よさに浸ることができた。残りわずかな時間で飛騨国分寺の大イチョウの木も一応拝ませてもらって待ち合わせ場所に急いだ。
11.11.2

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担持した金や

 金-パラジウムナノ粒子が、ジオールのエステル化の活性な触媒として作用する[1]。この研究によって、これまでそれほど活性がないとされてきた元素である金によって媒介される触媒的変換反応の範囲が拡大されている。加えて研究は、様々な因子が触媒の活性能に影響することも明らかにしている。たとえば触媒調製法、担持化合物にAu/Pdの比である。実際、チタニアや酸化鉄に担持された市販の金触媒と炭素、シリカ、セリアに担持された金触媒、これらはどこかに展示されているかもしれないけど、その活性が比較されている。1,2-プロパンジオールのラク酸メチルやピルビン酸メチルへの変換では、コロイド状になった金/チタニア触媒が、市販のものと同様の活性で10%程度選択性が向上していた。金/セリア触媒はさらに45%選択性は、よくなったものの活性が低下した。Pd/Au系は四倍程度の変換率の向上とラク酸メチルの選択性が改善された。しかもPd含有量を増やすと、さらにラク酸メチルが、らくさんできた。

[1] Chemical & Engineering News, 2011, October 10, p. 40.
11.11.1

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