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2012年6月

19世紀後半

 ベンゼンの検出はイサチンとの反応を利用していたらしい。二つを混ぜると青色呈色することで確認する。ところがある日、安息香酸の脱炭酸で純度の高いベンゼンを合成し、同様のテストを行ったけど、変化しない。このことからベンゼン中にわずかに含まれていたチオフェンをViktor Meyer(1848-1897)先生が、1882年に発見したと言う。「Viktorさんはびっく(りし)たぁ」それ以上に、それから130年、莫大な数のチオフェン合成法が開発されてきた。ハロゲン化やリチオ化など、それらの反応の出現とほぼ同時期にチオフェンにも適用されてきた。最近ではクロスカップリングの対象化合物である。さらに有機エレクトロニクス分野でも鍵化合物になっている。で1882年当時に発見された反応の機構:チオフェンがイサチンのカルボニル炭素上に攻撃、その後にもう一分子のチオフェンが組み込まれて、indophenineに至り、これが青色らしい。マシンガントークの演者に「これでええんじゃ」とスキームを確かめることができなかったのが惜しい。
12.6.30

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3,5-ビス(トリフルオロメチル)基が

 組み込まれたリン酸系、プロリン系さらにはチオ尿素系の有機触媒が威力を発揮する。そのうちチオ尿素の窒素上に(3,5-(CF3)2C6H3)を導入した化合物とバレロラクトンとの相互作用が探索された。IR、NMRで少々奇妙なシフトがあった。13C NMRの詳細、二次元NMRも確認した。この場合、チオ尿素の窒素上二つの水素原子がカルボニル酸素と水素結合して、反応性を向上させると考えられていたが、それに加えて芳香環のオルト位の水素とのCH-O相互作用も紹介された。X線構造解析もその距離の近さを示していた。講演では一連の尿素、チオ尿素のDMSO中でのpKaの測定結果も紹介 [1]。収率や鏡像体過剰率の良さだけを主張するだけにとどまらない研究成果の広がりは大きい。Schreiner先生の成果、知ゅらない人は原著を見てね。ちなみに現在Justus-Liebig大学に在籍、フランクフルトからバスで1時間ほど、ただし先生のドライブだと25分でたどり着くとのことである。

[1] Org. Lett. 2012, 14, 1724.
12.6.29

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急用ができた先生に代わった

 グラス先生の講演がラスト。日本の方と入れ替わったこともあってか、座長紹介の後「ありがとうございます」から始まった。ほんの一握りの人への聴衆へのメッセージである。アルツハイマーに至る原因、体内の鉄あるいは銅イオンが還元された後に、酸化されてついでスーパーオキシドが発生するみたいな話で、還元電位の小さな有機硫黄化合物につながる。思わぬ発見も見事に利用している。ストーリーの組立ての素晴らしさに打たれる中、講演・質問時間も終わってしまった。そこで主催者からのアナウンス「プラネタリウムへ行く」という。これもネタになるかと階上に移動した。宇宙の成り立ちをビッグ・バンから紹介、銀河系その後に太陽系、プルート、ネプチューン、ウラヌス、セーラムーンだわなと思いながら聞く。地球は飛ばして、水星、金星で自分たちのプラネットに戻った。暗闇の中のエンターテイメント、お寝みになっちゃった先生もおられた。惑星の話、わくわくせんかったのかも知れない。
12.6.28

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ヤスナ・グラ修道院

 1380年頃に建立されたチェンストンホヴァ市街地にあるカトリックの教会である。豊かな敷地に大理石の柱を並べた荘厳な建物で、その日も敬虔な人たちが礼拝に来られていた。まっすぐに続く参道もある。ポーランドはスウェーデン、ドイツ、ソビエトの侵略も受けた国である。その様々な歴史を静かに見守り、その時々を包み込んできた建物がここにある。絵画「ブラック・マドンナ」が、どんなものかを拝ませていただき、コンサート会場へ移動した。しばし待った後に、牧師さんの挨拶の後、演奏者が、おらんがなと思ってはいたが、パイプオルガンの重奏な響きが空間を占めた。その後、クアルテットが登壇した。アカペラである。カメラにその姿を写し、合唱に聞き惚れる。トランペットの豊かで柔らかな音色にも耳を奪われた。ほとんどの曲名はわからないけど、教会音楽に浸っていた。ハレルヤも聞いて、心も晴れるや、おなかは減れるやで、市長主催のレセプション会場に向かった。
12.6.27

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カトヴィツェの空港に

 降り立った。学会関係者の出迎えを受ける。彼らの自動車でチェンストホヴァまで移動。「何時間ほどかかるのか?」「40 kmほど(ハテ)」「学生さんですか?」「食品工学を専攻、博士課程に所属」まで聞いて、あまり話しかけると運転にも差し支えるので、控える。車には無線の連絡装置も搭載されていて何度も情報交換、さらにi-phoneでもしきりに連絡を取る。その間、片手運転が続く。高速道路の時速制限は70 kmらしい。でもスピードメーターは100から120さらには140 kmを示すこともあった。車間、車間と盛んにご注意申し上げようかと思ったけど、ポーランド語には不案内で沈黙。しばらくすると突然、ほぼ70 kmを遵守する走行。純粋になったのか、そうではない、監視カメラ設置の標識が並ぶ。それを過ぎると再び快調に飛ばす。始めの「何時間ほどかかるのか?」に答えなかった意図がわかった。ともかく目的地に無事到着。一週間ほどポーランド、なので日本には、おらんど〜である。
12.6.26

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フランクフルト

 工夫すると、しばしの時間をうまく使えたかもしれない。夕方以降にも入ることができる施設までの移動方法をフロントで聞き、電車(Die Bahn)で移動した。改札のないシステム、それでも駅の自動券売機で往復チケットの購入を試みる。英語の表示に従ってユーロ紙幣を挿入するが、返却される。紙幣の向き、しわのせいかわからないが、数回繰り返すと次に進むことができた。自分だけではなかったので、乗車券の販売を基本的に嫌がる券売機だった。倦怠期なのかもしれない。車内では何かの方法で確認するかと思ったけど、そのような様子や機械もなかった。降りて目的のタワーに向かった。始めは自分の読み違いで銀行らしきビルに到着、気を取り直してフロントで◎印をつけてもらったところへ移動。入口にはだれもいない。観光スポットというよりビジネスセンター風だった。ホテルに戻り改めてネット検索。そもそも降りた駅の名前や近くの通りの名前が違っていた。お聞きしたときに発音が違っていたのかもしれない。マインタワー、参ったわ〜。
12.6.25

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ルフトハンザ

 煩雑な手続きは必要ない。同様にチェックインカウンターで手続きをして、時間になれば搭乗する。「空の同盟」という意味らしい。でもドウメイスティックではなくてインターナショナルである。それぞれの座席のモニターも似た〜ようなものだけどゲームはない。時代を先取りしてか、Telekom_FlyNetでWi-Fiに接続できる。ただしヨーロッパ線の場合、中国領空内ではコネクトできない。うむ政治的意図かと思った。でも現状、中国以南アジア諸国の上空では、どこのエリアも接続できない。
 客室乗務員のユニフォームは、黒に近い黒が基調で、たとえばスカーフに黄色が混じる。かつて黄色のワンピースだった時期もあったはずである。今はシックで、これもしっくりくる。それでもドイツ人乗務員の足の長さ、背の高さは変わらない。目線がおへその少し下になってしまう。飲み物をサーブしてもらってお礼を言う段になった。ダンケ・シェーン、これだ(ん)けでっしぇ〜ん、言えるドイツ語は。
12.6.24

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400 m程の橋をわたると

 大鳥居がそびえる。階段を上がり道なりに左手に進むと八百富神社本殿がある。市杵島姫命を祀る神社、日本七弁天の一つ。要は、養和元年(1181年)に、国司として赴任していた藤原俊成が、この地を開拓・開発し、その完成成就を願って、琵琶湖・竹生島から勧請[1]したという。ただ当時、愛知県三河湾に在るこの地や島に目にとめた理由はよくわからない。温暖な気候に、穏やかな海が豊かな漁場だったかもしれない。今も4月から5月にかけて、潮干狩りに、日替わりで多くの人たちが訪れるらしい。で神社にお参りの後、左手奥に進むと龍神の松がそびえる。階段を下りると島を外周する海岸沿いの道。外周700 m弱の、ところどころから磯に降りることもできる。そこでは、女子高生、小さな子供連れ、ベトナム(たぶん)や韓国から来られた人々が戯れていた。また大正から昭和にかけて多くの作家が、この地・蒲郡を題材にして小説もできた。「海辺の文学記念館」も立ち寄ってみたい。ちなみに幸い領土問題とは縁がない、この竹島、ここだけにしまうのには惜しい景勝地である。

[1] 神仏の分身・分霊を別の場所に移して祀ること
12.6.23

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オメガ3脂肪酸

 おめえさんが捜すんだよ」と栄養補助食品として、また食品製造市場に、Ocean Nutrition Canadaは供給していた。その会社をオランダの化学メーカーDSMが5億3千万ドルで買い取るらしい[1]。これはDMSの健康・栄養・工業原料市場での拡大戦略の一貫である。たとえばDMSは栄養になる脂肪酸を藻の発酵で生産していたMartek Biosciencesの買収に11億ドルを投資している。1997年に設立されたOcean Nutritionは、かたくちいわしから得た油からEPAやDHAを得ていた。DSMは買収によって、これらの年間1億8500万ドルの売り上げを見込んでいること、栄養脂質ビジネスを藻の発酵技術と組み合わせて強化できることも期待している。これらの脂肪酸は人間の目、脳、心臓によいものとして販売できる。BASFも同様にこの分野でのビジネス拡大を行っている。
 2011年の報告によれば、2003年からオメガ3脂肪酸を食品に添加することが少しずつ始まっているが、当初は、味や品質保持の点で課題があったが、今やこれらはほとんど解決し、類似の製品の添加物の候補として拡大しつつある。
 買収を通して「かたくちいわしも、買ったくち」と言わしたいのかも

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 28, p. 5.
12.6.22

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水のもっとも小さなクラスターで

 エネルギーも低く、すなわち最も安定な、三次元水素結合ネットワークを持つヘキサマー「貴様はその構造わかるかな?」ということで、水の構造を理解するための鍵となるクラスターである。研究者らは酸素18でラベルしたクラスターの回転スペクトルをマイクロ波分光法で測定し、それをもとにクラスターの酸素の枠組みを類推した[1]。その結果、低温でカゴ型、プリズム型、本型の三種類を同時に観測したが、これは異なる型のクラスターを同時に観測した最初だった。また測定の際のキャリアガスとしてアルゴン、ネオン、ヘリウムを使ったところ、アルゴン中では、かご型ヘキサマーのみが観測された。このことから、これが最も低いエネルギーの構造ではないかと提唱されている。なおサマーでもヘキサマーは「カゴ型でへいきさ〜」かどうかは記されていない。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 21, p. 33.
DOI: 10.1126/science.1220574
12.6.21

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磁性を持つ浮遊している泡が

 こぼれた油を一掃できる可能性のある材料として開発された[1]。ポリウレタン泡とサブミクロメーターのポリテトラフルオロエチレン粒子とオレイン酸でキャップした酸化鉄ナノ粒子とから調製される材料が、混じり合っていない水と油から油分だけを、充分に吸収し、きれいになった水だけを後に残した。酸化鉄ナノ粒子は材料に磁性を持たせ、オイルで滑らかになった表面を、そこに触れることなく移動することができる。酸化鉄は弱い表面の引力で泡の孔のネットワーク内に結合しており、再利用のため泡から、慌てることなく、ナノ粒子を取り除くことも容易であると研究者らは述べている。今のところ、小さなサンプルに対して泡を使っているが、高くない材料で組み立てることができるため大規模なオイル漏れに対応するためのスケールアップも可能であるらしい。磁性ポリウレタン泡、いずれ「売れたんやわあ」というご時世もくるとよい。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 21, p. 33.
DOI: 10.1021/nn3012948
12.6.20

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原子同士を混ぜてマッチさせた時に

 いったい、いくつ安定な組み合わせがあるか、元素化学の分野では興味が持たれている。その中アジドホスフェニウム塩が合成された[1]。ヘキサメチルジシラザンと三塩化リンからルイス塩基(Me3Si)2NPCl2をつくる。これとGaCl3との低温での反応はホスフェニウムイオン(Me3Si)2N=Cl+を導く。ついでシリルアジドMe3SiN3を反応させることで塩(Me3Si)2N(+)=P-N3 GaCl4(-)ができる。ただしアジドホスフェニウム塩は溶液中-40 °C以下でしか安定ではない。固体では不活性ガス雰囲気下、凝固点温度で保管しなくてはいけない。化合物は、凝固点以上では仰天して、シリルアジドの脱離に伴って分解し、新しい型のイオン液体Me3SiN=P GaCl4に変化する。研究者らは低温単結晶X線解析で単離した化合物を同定し、すべての反応を31P NMRスペクトルで追跡した。しかも温度可変である。これはかめへんかったらしい、化合物にとっても

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 21, p. 33.
DOI: 10.1002/anie.201201851
12.6.19

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Nantokiteって

 なんと書いてあると思って記事を読む[1]。銅を使って屋根ふきをした建物のそれが腐食して、塩化銅(CuCl)を含む緑色の寄せ集めに変化する。これがnantokiteである。これをなんとかすることで積極的に利用できないかと建築家や日曜大工をする人[2]は考え、保存科学者はどうすれば銅は腐食に持ちこたえることができるかを理解しようとしていた。それに対して研究者らは低速度撮影のシンクロトロンX-線回折を利用して謎解きを行った。nantokiteを意図的に作成した。すなわち空気がない雰囲気で銅に塩化銅(CuCl2)をメッキした。一方で空気中、塩化銅を銅の上にたらした。その結果、空気にさらすかさらさないかは、さらさら関係なく、どちらも純朴な緑青(ろくしょう)が生じた。しかしながら反応が終わった後にnantokiteを水でゆすぐと副反応が進行し、赤い酸化銅(Cu2O)や緑色のparatacamite (Cu2(OH)3Cl)が生じることもわかった。ちなみに水でゆすぐ手法は日曜大工では、一応じゃなくて、通常行う典型的な処理らしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 21, p. 32.
DOI: 10.1021/ac300457e
[2] do-it-yourselfers
12.6.18

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ヒョウ柄の恩師が

 参上するというので、少々緊張感も走る。トップがアンダーよりアンダーになってもお元気である。20年程まえに弟子入りした。開店前に店に赴き、掃除、口取り二品の用意などを終える。接客のマナーなども躾られて時にはお叱りを受けるも、実際、客人へは笑顔で接しなくてはいけない。厳しい修行に、違ったスタイルのお店での経験を重ねて、自分が主になる日が来る。新装のレイアウト、色調に柄(ヒョウ柄にはしない、たぶん)、照明、お役所の許可、カード会社との契約、食品を扱うのでその講習など様々を経て、いよいよ始めるという前には、品々を買いそろえるが、その物品の多さに一抹の不安、なんとか棚に入っタナと安堵する。「本日開店って書いてんで」と呼び込むわけではない。あくまで口コミである。落ち込みの激しい日もあるけど、そこは「またいい日もあるわな」と気持ちを切り替えて、その日を終える。別の日、客人が、お店の鍵を開けるのを嗅ぎ付けて来るのを待つ。
12.6.17

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教科書について議論ができた

 担当者が、様々な状況を乗り切ることも配慮された。その議論の中「ページ数が増えた教科書も読み物として学生にはいい」という話があった。ふむふむなるほどと思ったけど、飲み物を強要してはいかん様に、読み物も一つだけ名指しで購入させるのはいかがなものかと、夜には翻った。むしろ学問体系をどんな流れで学生に伝えるかが先にあって、じゃあそれに見合った教科書はどれか、というのが手順ではないかと気がついた。(兄ちゃん、そんなんあたりまえやろ、という声が聞こえてきそうである)、結果として教科書も、それに従っている何冊かを提示して、受講する学生が「とりあえずこれ」と手に取ればよい。中にはネットでチェックするので不要という輩(やから)もいるはずである。そやからと言うことで学生を責めなくてもよい。そこから始めて「この分野、めっちゃ面白いで、はまりそう」と身体で感じることが出来るまでガイドすることも、当方にいただいた役割である。実際、○○マジックと呼ばれる程に、後進を育てられた先達も多い。
12.6.16

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プルトニウム239の

 核磁気共鳴シグナルが観測された[1]。これによって科学者はNMRの手法で、核燃料や核廃棄物、Puを含む超伝導におけるPuの配位、電子構造、核スピン緩和過程を直接調べることが可能になる。これまで239Puは放射性とその複雑な酸化化学のために、研究することが難しかった。Pu(IV)は非磁性であるため、磁化率や電子スピン共鳴ではほとんど情報を得ることができない。また孤立電子と核スピンの共鳴は、速い緩和で、あかんわと言う間にシグナルが消失する。これに対して米国ロスアラモス研究所と日本の原子力研究開発機構の共同チームは239PuO2を4 Kに冷却することでスピン緩和の速度を落とした。通常のNMR実験では、ラジオ波を変化させている間、磁場は一定に保たれるが、これとは対照的にここでは、ラジオ波を一定にして磁場を3から8テスラの幅で掃引している。これによってシグナルが観測される特定の周波数と磁場の組合せを予測できる磁気回転比を発見、それを書いてるん(2.856 x 2π MHz/tesla for 239PuO2)である。混合酸化物のNMRシグナル研究も行った結果、239Pu NMRはPu回りの環境に敏感であることもわかったが、速い緩和過程が今も課題である。それでもこれはプルトニウム解析のルートを生む研究成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 21, p. 9.
12.6.15

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明治以前に

 岐阜の大名の家来が鹿児島に働きに出たのか?」という海外からのメールの付録があった。「岐阜県人、鹿児島で過ごしました」という話は知らなかった。早速Google検索:「岐阜、鹿児島、工事」。Wikipediaの「宝暦治水事件」が目に入った。これに違いないと読み込む。1754年幕府の命により、薩摩藩は、幕府直轄の木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)流域の治水工事をせざるを得なくなった。財政的負担に人足の派遣も重圧だったけど、加えて工事を始めると幕府の役人から受ける様々な規制、幕府は薩摩藩の弱体化、さらには、おとりつぶしも狙っていたらしい。限られた食料や工事用の必需品不足の中、赤痢も流行、一年弱で工事は完成したものの、51名の自殺者を含む84名が命を落とした。ということを初めて学んだ。無知な自分を反省している場合ではない。これを先方に英語で送らなくてはと格闘。英文に当分できない。多分ずっと先もできない。それなりに解説して送った。一時間もしない間にメールのお返事、最近、南西アジアを専攻して、学士の学位も取得したので少々日本事情も記憶にあったのかなというお返事。変人を超えた先生の依頼を引き受けてしまった。
12.6.14

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一酸化窒素NOを

 捕捉するためにフラストレイテッドルイスペア(FLP)を利用し、安定性を示すニトロキシドラジカルを導く方法が開発された[1]。すなわちジメシチルホスファンとビス(ペンタフルオロフェニル)ボランとからFLPを調製する。リンに結合したアルケニル基がヒドロホウ素化を受け、リン原子とホウ素原子が炭素二つを隔てて向き合った構造で、二つの原子の結合形成はNoだけど、この間にNOが組込まれる。この新しいFLP-NO種は、ヘキサジエンやトルエンなど様々な分子から水素を引き抜くこともできる。加えて新しいラジカルを使ってスチレンのラジカル重合も制御できる。このFLP-NOはTEMPO[2]より高い反応性を示す。しかもリン原子とホウ素原子上の置換基を工夫すれば、ニトロキシドラジカルの反応性も制御できるため、ラジカル重合分野へも新しい命を吹き込んでいるとも評されている。FLPを最初に示したStephan先生らも、この捨て(ファン)がたい新しい展開にインパクトを受けている。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 21, p. 7.
DOI: 10.1021/ja302652a
[2] テトラメチルピペリジンN-オキシド、生体系ではスピンプローブとして、また選択的酸化や重合にも利用されている。
12.6.13

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原子番号114、116元素の

 名前がIUPACによって承認された。114はフレロビウム(flerovium)、116はリバモリウム(livermorium)、有無を言わさないで、元素記号はFl, Lvである。またどちらも発見した研究チームによって選ばれた。フレロビウムはロシア、ドゥブナにある核反応のフレボ研究所に敬意を表しており、そこで1999年この元素が初めて確認された。一方でリバモリウムは、ローレンスバークレー国立研究所が1999年以前に観測していたが、1999年研究メンバーの一人が偽造したデータを発見したため取り下げた。2000年ローレンスリバモア国立研究所がワンモアと改めて観測し、名前はこの研究所にちなんでいる。肝臓とは関係ない。2000年以降、何年にも渡ってリバモアとドゥブナの研究所は、今回の114,116番元素に加えて、共同でかつ別々に、新たな超重元素の発見と確認を行っている。これらのチームの連携で113,115,117,118元素も観測されている。命名の前に銘々の発生の確認を待たなくてはいけない。

[1] Chemical & Engineering news 2012 June 11, p. 36.
12.6.12

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化学者はベンゼンの囚人についてじっくり考える

 という題の記事[1]。ベンゼンが高圧条件下どのように重合するのかという命題に対して計算化学によるアプローチがなされた。ベンゼン二分子を非常に接近させ、量子化学プログラムの配座の最適化条件を解消して計算を行った。その結果、12のベンゼンダイマーが導かれた。大魔〜神もびっくりである。そのうち8つはすでに知られている化合物だったが、四つは新規化合物だった[2]。また全てのダイマーは相互作用していない二つのベンゼンよりもエネルギーは高く不安定だった。そこで次にダイマーがもとのベンゼン二分子に戻るか、あるいは別の化合物に至る分裂経路も計算した。これらの過程は、二重結合の異性化を伴う水素原子のシグマトロピック転位、12員環を形成する逆環化反応、一つのベンゼン環の開環、ダイマーのDiels-Alder反応を含んでいた。ホフマン先生らの成果、ご不満はないと思う。

[1] Chemicals & Engineering News, 2012 May 14, p. 39
DOI: 10.1021/ ja302597r
[2] そのうちの一つが図示されていた:ベンゼンの1,4位ともう一分子のベンゼンの1,2位が結合したプロペラ型のダイマーだ。今〜、時の分子になった。
12.6.11

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猫(cat)が

 触媒反応(catalytic reaction)を見据える(catch)。実験台の上では「まさか」ということが起こった。かつて自分が行っていた実験、いくつかのユニットを組み合わせて、数十を超える配位子を合成、不斉触媒反応に挑戦していた。期待通りの結果が出たはずだったが再現性がとれない。申し訳なさそうに話す辻森スバルこと菊池明斗。ひょんなことから猫、スバル、明斗が入れ替わってしまった。新型メタセシスか?計算化学をベースにした研究でほぼ修士論文を仕上げていた明斗、その身体は今、病院で静かに横たわっている。でも意識は辻森さんに宿る。反応開発も大詰めの段階である。幸い猫に宿る辻森さんとは意思の疎通ができる。その指導のもと、研究室に向かってメンバーと会話を交わし、慣れない合成実験も始める。手際の悪さが不斉収率の悪さの一因かと思うが、それも腑に落ちない。何かの拍子で意識と身体がもとに戻った、がしばらくした後、再びシフトしてしまった。研究室にある化合物がそのトリガーではないかと感じた二人(正確には一匹と一人)。研究室の夜の張り込み、怪しい化合物の監視。暗中模索する中、覚醒剤もどき、も時々登場。いやこれも鍵になって、「猫色ケミストリー」[1]のストーリーは展開する。研究室を切り盛りするバルキー体形の先生、研究室秘書、高校時代の苦い思い出・・・

[1]喜多喜久著(宝島社)、野良猫?「著名な先生のお名前に依って話を、おさめたのかな」と頭によぎった。
12.6.10

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教科書を

 強化しよう。とは言え千差万別、ここでなにもせんさではいけない。Amazon検索「本、有機化学」。検索結果2857件、すべてをざっと見ることも難しい。実に多くの方々が、高校生から一般、文系学生、理系の化学系じゃない学生や化学を専門とする学生を対象に執筆している。それほどニーズのある業界かとも思う。そのうち主に化学系学科の学生向けに書かれた書籍として、いわば外国の先生の執筆された本の日本語訳がある。かつて「クラム・ハモンド」は問答無用で学べ、「モリソン・ボイド」はavoidせずに読めという書籍もあった。この10年以内に新たに出版された分、加えて改訂された分も7種類ほどみつけることができた。上・下あるいは上・中・下で合わせて1000ページを超える。版を重ねるとどうしてもページ数も増えて1700ページを超えるものもあって「重みのある学問」であることも実感できる。ではどれにするか。「確かに、本学の学生さんにはこれが最適だなという書を選ぶ」という話し合いの場があればありがたい。
12.6.9

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原子力発電所の解体費用が

 低く見積もられているらしい[1]。米国GAO[2]は、法律で決められた稼働最大年数が数年に迫っている12の原子炉を調査した。これらの原子炉の退職が近いため、所有者は解体費用がいくらほど必要かを公にしなくてはならない。がそれを検証したところ、原子力規制委員会(NRC)が利用した方法では、12のうち9基について、必要経費を低く見積もっており、5基については必要な経費の50-76%程度の値であった。一方で企業側は、解体費用は一基あたり4億から8.36億ドル必要であるとしている。法律では、原子炉が停止した後には、その場を別の目的で利用できる様に60年かけて撤去し整備することになっている。GAOはNRCの方法は30年前の式に基づいていることから時代にそぐわず、解体費用の見積もりは妥当性を欠くと指摘している。また104の原子炉のうち27基を検証し、解体費用が24億ドルほど不足すると予測している。
 買いたいと言っても解体しなくてはいけない原子炉、素人にも全体の費用を正直に教えてほしい、本邦でも。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 14, p. 11.
[2] GAO: Government Accountability Office:(米国)政府説明責任局
12.6.8

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江戸時代の芸者

 その美しさは、鉛系のおしろい(おそろしいねえ)に始まりそれに終わる。封建時代の日本では、この悪名高い製品が使われ、徐々にそれが使われなくなってきた」と(たぶん外国では)一般にそう思われている。それに対して「都風俗化粧伝」という江戸時代の書を熱心に読み込んだ方がいる[1]。一般に美しさを保つためには、過度な日焼けを避けること、肌を清潔に保ち、オイルで肌に潤いを与えることが肝要である。芸者はこれら三つの概念に詳しいことが書から伺うことができる。たとえば多層構造になったやかんを、夜間も昼も利用していた。そこにノイバラの花びらを入れ、蒸気でむす。やかんの上部には冷水を入れる丈夫な部位がある。これによって、抽出物が液化し、湯のみで回収、場合によっては絹に吸着させることもでき、それで肌を潤す。今では多くの会社がノイバラ抽出物をスキンケア製品に利用している。先の書に記載のやかん蒸留は、植物の揮発性成分を抽出・濃縮する古典的な方法で、これによって肌を潤す低分子量の植物オイル、抗酸化・抗炎症特性のモノあるいはセスキテルペン、よい香りの低分子アルデヒドも得て、それらを衣服や肌に直接つけることもできる。当時すでに、実に洗練された方法が利用されていた。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 7, p. 33.
記事のタイトルはGEISHA ALCHEMYだった。
12.6.7

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ポリエチレンテレフタラート

 いわゆるPETは、エチレングリコールとテレフタル酸とから合成される。ここで前者は遠からず、糖からやってくるが、後者は石油化学原料の変換によって調達されており、その消費量も多い。そのためテレフタル酸が、すたれる日が危惧される。それに対してバイオ材料を用いたp-キシレン(テレフタル酸の原料だね)の合成が報告された[1]。これまで再生可能な方法によるp-キシレン合成法はあったものの、いずれも高価であるか低収率であった。今回はY-ゼオライト触媒を脂肪族溶媒中300℃で用いてエチレンとグルコースから導いた2,5-ジメチルフランとのDiels-Alder反応、続く脱水反応による経路を達成している。二つの反応物がゼオライトの微小孔に閉じ込められ、それが反応性の低いエチレンを刺激し、一心不乱にジメチルフランと反応すること、また触媒のブレンステッド酸部位がDiels-Alder付加生成物からの脱水を、お安い御用と、加速していると考えられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 7, p. 28.
DOI: 10.1021/cs300011a
12.6.6

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燃料電池への

 電力供給には、水の分解で水素を発生させる必要があるが、それとともに水を酸化することで酸素も発生させる必要がある。しかもそれを、空〜からのソーラーエネルギーで達成したい。これまで最も高性能な電解触媒はIrやRuから調製されてきたが、より安価で地球上に豊富な金属が将来の需要に見合うとされている。たとえばCoやFeはすでに検討が行われている。それに対してCu電解触媒が開発された[1]。高いpHで銅塩とビピリジンを混合すると、系中ではビピリジンヒドロキソ銅錯体が生成する。水溶性の触媒は通常、多段階調製が必要であるのとは対照的である。さらにこの触媒が1秒間におよそ100回のサイクルで酸素製造を促進することがわかり、しかも既知の触媒のどれよりも速い回転数だった。錯体は現状では750 mVより少し過電圧が必要で、反応を完結させるためにはエネルギーを供給しなくてはいけないけど、研究者らはこれを改良したいとしている。「銅電解触媒、はよ出んかい」と願っていたか、今後もどう出るか注目。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 7, p. 28.
DOI: 10.1038/nchem.1350
12.6.5

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午後8時過ぎ

 飲食の後、家路を急ぐ。昼間はわずかに汗ばむものの、夜には涼風が身体をすり抜ける心地よさである。車の往来が頻繁な幹線道路も、この時間は閑散としている。その分、車は疾走していた。道路脇のにぎやかなショップもすでに閉店である。しばらく走った頃。次の信号を左折すれば近道と思った。少し手前で自転車のハンドルを左へ切った。身体に浮揚感がすりぬけた。ブレーキを握る手、その分、身体を保護するすべはない。足からよろけて、膝と顔面左が身体を守った様である。前方にはメガネとそこから飛び出したレンズがあった。地面に落ちた顔にある眼球は、右手前方の青信号を待つ車をとらえていた。ハリウッド映画のワンカット、次は自分の頭上に自動車の車軸が通過する場面がよぎった。動かぬ身体を動かして、メガネとレンズを回収した。両膝に痛みを感じてもズボンに、破れはない。体制を戻した。車道と歩道の間には15 cmほどの高さのガードがあった。自転車は、傷ついた持ち主を家までガイドしてくれた[1]。この日の自転車、十点しゃ満点だった。

[1]「村井君ブログ6月3日」に続く。
12.6.4

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擦り傷にメガネ

 [1]帰宅してメガネの損傷を確認する。クレームをつけたいほどにフレームの左側部分は歪んでいた。でも頑丈で柔軟なフレームは慎重に少しずつ力を加えると形状が戻ってきた。それでも「ここにレンズを入れようとするも、はいれへんず」である。被害を拡大してはいけないと作業を中止して、セロテープでレンズをフレームに取り付けた。今度は両膝である。ズボンの裾をたぐるとどちらも直径4 cmほどの擦り傷である。小学校低学年以来であるものの、その当時は、オキシドール(およそ3%過酸化水素水)に赤チン(マキューロクロムと呼ばれる有機水銀を含む殺菌・消毒液)で処置した。自分の家にはない。擦り傷用の薬には、塩化ベンゼトニウムなどが成分として記されている。化学式を調べる気力もなくその日は終えた。別の日、メガネ屋さんに出向いた。しばらくお待ちくださいと10分ほどでレンズをはめていただいた。ただ随分歪んでいるので、外れやすい状態であると言われる。フレームだけを交換することはできるかと聞いたところ、フレーム全体のうち、前の部分が6割、両側がそれぞれ2割の価格で交換できるというお話を聞いた。お店の方は「おめ〜がねえ、メガネ修理できるんだってねえ」というレベルまで研鑽を積まれている。

[1] 「村井君のブログ6月4日」の続編です。
12.6.3

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インド、イラ先生が

 いらっしゃった。大学を退職して今はバンガロールにある研究所でがんばる身である。講演では、Molecular diversity ということで、基本となる複素環を一旦手にすれば、そこから放射状に広がる豪勢な合成スキームが飛び出す。両論反応、触媒反応、ラジカル反応、様々な手法を駆使して、これまでにはあまり見ない多環複素環も合成していく。展開の速さに時として置き去りにされる。数十年にわたる研究生活の中で、欧米には何度も出かけられたが、日本は今回初めてである。ホストの先生は無理のない旅程を慎重に組まれた。それでもイラ先生[1]は緊張感を持って来られた。貴重品の入ったカバンを肩から、たすきがけにして、食事の時もそのままだった。スペインでの苦い経験がそうさせているらしい。体調不良になってはいけないと、刺身・寿司・火を通した魚類も口にされない。かたや山菜のテンプラ、たけのこにふきの煮物、ごま油で炒めたピーマン、ご〜満足いただけたかもしれない。

[1] Eur. J. Org. Chem. 2011, 20/21の表紙、100人の女性化学者、キュリー夫人の左横におられる。
6.2

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イソシアン酸

 HN=C=O(HNCO)、こしあんとは違う。食べてはいけない、有毒である。沸点23.5℃で揮発性。バイオマスや石炭の燃焼でも発生する[1]。単位体積当たり1 ppbの濃度で大気中に存在すれば健康を害する可能性がある。ただし大気中におけるイソシアン酸の量を測定することができる分析方法が開発されたのが最近であり、世界の分布状況を把握できてはいなかった。それに対してコロラド州、ボールダーにある研究チームは、化合物が移動するモデルを使ってHNCOの世界中での分布を類推して発表した。その結果、HNCOは、ある季節によっては山火事が発生する地域で有害な濃度に達する。たとえば東南アジア、西アマゾン流域、熱帯アフリカ。それに加えて中国では、高い濃度のHNCOが人為的な放出で、もたらされていたこともわかった。これらの予測は、将来の研究にとっても有用であると述べられている。イソシアン酸のことも思案してみたい。
 そんなの「いっそ、知らんさん」のほうがいいって

[1] Chemical & Engineering News, 2012 May 7, p. 28
12.6.1

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