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2012年11月

JNCASR訪問

 新設された実験室は、廊下からすべてを見渡すことができる。中には適切な数のドラフト、基本は6名の学生が利用するという実験台だけども10数名は収容できる。実験台の間のスペースも十分。蛍光発光を利用した繊細なセンサーが先生の研究分野である。その次の先生も低分子を利用したセンサー、中には湿気をセンシングする先進の系の開発に挑戦していた。Ila先生に「ここでセミナーをさせてもらってもよいものか」という不安感を伝えた。「中にはファンもいるだろうから、Take it easy」昼時は生協みたいな場所で、Ila先生、同じユニットのヤングスターと自分の8名で食事。しばしの休憩ののち講演も終了。京大で四年ほど過ごしたという先生、最近准教授にプロモートされた。そのためには学外の6名の先生の評価が必要とのこと。論文数などの基準はあるのかと聞いた。5年半で60報出すことができたと次々に別刷が登場した。「まじか!」と、このMaji先生のアクティビティーに圧倒された。

12.11.30

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マイソールから4時間

 ベンガルールに戻った。ILa先生とご主人は、姪の家に立ち寄っている娘さんをピックアップしたいというので、自動車が向かった。日曜日の午後7時過ぎ、様々なビークルがクラクションとともに交錯する。10階建ての建物が何棟も並んでいる。日本で言えば「〇〇ニュータウンと言〜たうんや」みたいなものである。当初は娘さんをピックアップしてそのまま移動の予定が、夕食をいただくことになった。10階に登る。3LDK、清楚でかつゆったり感もある。サブのキッチンがキッチンの横にキチンとあって、香ばしいものの調理はそちらが担当、部屋には香りを持ち込まないとのこと。用意していただいたカレーとライス、宅配のドミノピザがテーブルには並べられた。6歳かの子供を交えて6人で食事。「色々な科目を学んでいるので、大学生より忙しいのよ」と先生はお話される。7時半にスクールバスの迎えがある。このタイプの家はかなり普及、ローンを組むこともできる。アローンではなくて会社のサポートもある。玄関にはゴルフ道具もあった。

12.11.29

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1799年

 英国軍との戦いに敗れて王家は断絶した。往時はイスラム系の親子二代目の王で統治の奮闘努力もするも結果として敗れた。その後イギリスはヒンズー系の王を復活させて、マイソールにこの地方の首都が移った。その王家が巨大な宮殿を10数年かけて建設、1947年のインド独立まで使われていた。門から全体は対称である。一辺が200 m以上もあるかという広場。民衆が集まったところで、一年に一回王家がお目見えする。内部の調度品は、ちょうどいいをたぶん超えて目をみはるものばかりである。750 kgの純金の椅子。虎、ワニ、象、バイソンなどの剥製(特別に見せていただいた)、ダンスパーティー場、王家のセレモニーを司る場、他にも鍵のかかった部屋がいくつもあった。民主化ののち王家は別に移り住み、宮殿は一般人の見学する場となった。そこから丘に登ると寺院もあるマイソール、多くの人が参るそ〜るである。四角柱に近い形の寺院のどの面にも、実に細かな彫刻が施されていた。

12.11.28

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マスターコースを修了の頃

 政府支給の奨学金獲得のために、インド全国統一テストを受ける。合格の後、ここIIScのドクターコース入学を希望。200名ほどの希望者の面接に参入して概ね20名に残ることができれば、初めの2年間は月16,000ルピー(20,000円ほど)、その後の3年間は月18000ルピー(27,000円ほど)を受け取る。授業料、宿舎、食費などは別に、がばっとカバーしてもらえるらしい。独り身で一ヶ月過ごすには不足はない。時に非常に優秀なたとえばトップ1の場合には20,00024,000ルピー受給できる場合もある。どちらも二年生が終わる頃にインタビュー。びゅ〜んと成果が伸びてもプラスアルファはない、でも場合によっては現状維持で終わることもある。ただし最初の額は下回らない。もちろんこれらの奨学金返還義務もない。別のコースとして大学卒業後にマスター・ドクター一環のコースに入ることもできる。こちらも狭き門で奨学金獲得さらにインタビューで厳選される。初めの2年間は10,000ルピー。ただし大学が支給する。この間、多くの授業単位を取得しなくてはいけない。入学して1年半後に配属研究室を決める。8月に入学してその次の5-7月、講義が休みの期間は、いくつかの研究室で研究体験をする。入学してから6–6.5年のコースである。Ph.D.取得後、海外研究指向も多いものの、60%以上は企業に就職するらしい。

12.11.27

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イギリス支配下にあった

 マイソール王国、ベンガルール(バンガロール)に高等教育機関を設立したいと、当時のインド実業家ジャムシェトジー・タタが立案。王国は土地を提供することにした。その企画にイギリス政府も許可を与え1909年に創立したIndian Institute of Science (IISc、インド理科大学院)。その二年後に化学科も総説された。先のタタは開学を見ることはなくてこの世を去ったけど、タタの業績は、多々以上、多岐にわたる。かのインドの自動車もそうである。銅像が見守る前にメインビルディングがあって、中にはコンファレンスルーム、レセプションホール、以前は英国支配当時の詳細な資料も置かれていた。ヨーロッパ風の重厚な石造りの建物の中の多くは木造、建物周辺には樹齢100年かとも思われる木々や庭園が学府のムードをつくる。伝統ある化学系の建物も古い。その建物は記念館として残し、3年後には新しい建物が完成する予定とのこと、ただしインディアンタイムで5年を見積もっている。ここでもスタッフはタフで、海外経験を得て赴任している。ブリティッシュもどき、アメリカンもどきの英語が飛び交っていた。

12.11.26

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200 MHzのマグネットが

 モニュメントになっているNMRセンター前、中には700 MHzを始めとして、600 MHz x 1, 500 MHz x 4, 300 MHz x 2台かのNMRが設置されている。複数のテクニシャンがオペレートしていて90サンプルかのオートサンプラーを搭載した装置もある。IICT全体からのサンプル測定を請負い、得られたデータは研究者がネットでダウンロードして解析できる。測定数が多いので一台ダウンしてもパニックになる。その近くの建物に移動、RIGAKUのタンパク質構造解析装置を拝見。「単結晶として、いたんけっ」という立方体になった透明な結晶を顕微鏡で見せていただいた。ここの国でも律速は、タンパク質の単結晶化である。次に分析センター、並列で何台も並ぶ液クロ。設置の苦労が伺われるも使い勝手のよい配置である。最近その職についたというInstitute directorにもあった。分野によっては、研究員の応募に多数の優秀な候補があつまる一方で、ここ数年の科学の拡大路線で集まりにくい領域もあるという。欧米やアジアの他の国のFacultyはまだ採用していない。ただしインド生まれで、海外で活躍する研究者を招聘することはある。財団からの資金や会社からの寄附など、そこからある程度のオーバーヘッドを得て、インフラ整備などに使う。政府との交渉はCSIRが行うこともあって官僚的な業務はそれほど多くない。などなど聞かせてもらった。最後には、数リットルの実験や蒸留ができるパイロットプラントが目にとまった。プラット入った。ここでも研究者をテクニシャンが、しゃんとサポートするらしい。ただしインドのね。

12.11.25

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銀行をご案内します

 「確かにキャンパス(IICT)[1]内にATM、便利だわなあ」とか思いながら中に入った。受付の青年が一人いて人を呼びに行った。ここの責任者であるという女性科学者が登場した。上履きに履替えてほしいとのこと。厳重に鍵がかかっている部屋に案内された。ATMはない。替わって長さ2cm直径8 mmほどのマイクロチューブ、底にはバーコードがつけられている。インド国内さらには契約書を交わして条件に同意すれば世界中のどの研究者もここにサンプルを送ることができる。25-100 mgが望ましいけれども、天然物などのように採取が難しい分は、それより少なくてもいい。サンプルが入ったチューブは10X10本ほどが差込みできるプレートに収められて窒素雰囲気下-20℃の条件で保管できる収納庫に格納する。昨年の9月から始まった化合物保管。1600万個を収納できるキャパシティがある。現状では既に15000サンプルが中にある。それらの化学構造式は公開されていて、生理活性をテストしたい場合には、依頼をすれば入手できる。不活性ガス雰囲気下低温保存なので、分解の心配はないとのこと。銀行だけどお金のやり取りはいっさい必要ない。政府が支援している。分子を保管するNATIONAL MOL BANK [2]。番狂わせだった。


[1] IICT : Indian Institute of Chemical Technology

[2] Universal Store DST CSIR SPONSORED NATIONAL MOL BANKCSIRが主導のOPEN SOURCE DRUG DISCOVERYとも関連しているらしい。

DST : Department of Science and Technology

CSIR: Council of Scientific and Industrial Research

12.11.24

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学生二人の案内で

 チェンナイから南へおよそ80キロのところ、マハーバリプラムに案内してもらった。大学が用意した自動車と運転手、裸足。で果たしてどうなるか。サンダル履きにて運転席についた。前方との車間距離、左右の車との幅も数センチまで接近して追い越す。何度も何度も鳴らすクラクション、楽デッションと座席にいても危険を感じる。バイク二人乗り、三人乗りも多い。怪傑ハリマ王風の女性ライダー、カラフルなマフラーをなびかせて疾走する。お陰で1時間弱で到着。巨大な花崗岩一つから五つの石彫りをした寺院。7~8世紀頃に彫られたらしいけど、神の使いらしい象の像は今もリアルである。ヒンズー教の寺院、苦行のストーリーが繊細に彫刻されている。その近くにはバターボールと呼ばれる巨大な石が斜面にある。つくったわけではない。今にも転げそうに見える。でも8世紀頃に象に引かせてトライしたものの、えらいもので何も起こらなかったらしい。チェンナイにフルスピードで戻る。世界第二位の長さであるという海岸にあるマリーナ・ビーチに向かった。暑い中、広大な砂浜で人が戯れるも、泳ぐ人はほとんどいない。ベンガル湾に見入って「・・・・・」と誓った。

12.11.23

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ホストの先生に

出会えてホットするも、すぐにケミストリートーク、遠くから来ましたと自己紹介はない。開環と酸化が同時に起こる反応、二つの化合物を混ぜると融点が下がって新型の反応場になる。ドイツさらにはCorey研でポスドクを経験された先生である。訪問する前から予定が決まっているわけではない。電話をして「次頼むは?」で移動する。こちらもドイツさらにToste先生のBiofuelプロジェクトのメンバーだった先生。赴任したばかりである。この地でポジションを獲得するためには、米国を含んで二カ所でのポスドク経験が3年ほどあったほうがいいらしい。30分ほどして人工糖鎖合成の先生のお話を聞く。「大阪大学のある研究室で過ごした。とってもユニークな若い先生もいた」とのこと、さらに人工オリゴペプチドでイオンチャンネルのモデルをつくる。はたと「自分は今どこの国にいるのか」と自問する。昼食には学科の先生32名のうち7名に同行していただいた。「私、千葉にいました」「学生が岐阜で世話になったことがある」「インドの印象は?」「この国の識字率は高くはない、でもモバイルは使っとるんで、参るわ」「日中関係は?」昼食後もツアーが続いた。講演させてもらった後、スパイスジェットで移動。ハイダラーバードに入っだら〜、学生さんが快く迎えてくれた。

12.11.22

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夕食のお誘い

先生方4人と一緒に会員制の場所に行った。かつて大学があった場所で、会員になるのも制約がある。スポーツ施設もあって、週末は映画上映、屋外である。先生方は全員、学位取得の後、ヨーロッパや韓国などでポスドク経験し、さらにアメリカでの研究にも従事して本国に帰国。この大学で教員公募をすれば200名ほどの応募があって、研究業績・出身大学・海外経験などを加味して10名ほどに絞り込んで面接するという。赴任して8年の間の研究成果などでその後、継続できるかどうかが決まる。「研究費申請、しんどいでっせい」でも採択率はIITクラスだとほぼ100%だという。このIITにはキャンパス内に病院、教員宿舎、学生用ドミトリー、見取り図もある。生活に必要なものもショッピングセンターで購入できる。ただしキャンパス構内は禁酒、でも皆様、ビール、ウイスキーなど好みのお酒に会話も堪能。村井君は「いたんやのう」と時に内輪話になって取り残される。36歳独身、候補はいるものの、成就するまでのハードルが高い。無理矢理、会話に入り込む「どれも研究よりもハードルは低いでっせ、多分」とりあえずさらに盛り上がった。That’s true. •••

12.11.21

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ローカルエアーで

降りたインドチェンナイ。迎えが見ぇんない。実は空港の外でしか待つことができなかったらしい。インド工科大学(IIT)専属の運転手つきの車でゲストハウスに移動。しばらくしてホストの先生とその友人が登場「よければ、友人のラボとケミストリーどうか」というお誘い。気にしてもらった「旅の疲れは」突かれないように「行きましょう」と出向いた。昔言うチョークトークが始まった。ただしホワイトボード。学生も入ってきて恥じらいながら話す。OL(オフィスレディとは違う)に採択されたばかりという資料を見せてもらって聞く。モレキュラーシーブ、渋〜ったほうがeeもいいだっかと聞こえて、その心はと訪ねた。イミンが副生成物として残らないのがポイント。別の学生に交代。付加環化でスピロ環をつくる。しかも不斉点を制御したい。プロリン由来の不斉触媒を工夫して、目的達成を目指しているという。インドでは17歳で大学入学。たとえばインド全体のIITで、ある分野の募集人員が6000人だとすれば400000人が応募する。人口の半分が25歳以下であるという国である。化学系は3年の後、博士前期課程2年、後期課程5年である。前期課程から後期課程は基本的に別の大学に移籍。だから5年かかる。顔つき、目つき、体格、学生さんイケメンやと思った。いけまへん出張中です。

12.11.20

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羽田発深夜便

 週末を海外で過ごしたい人たちで賑わう。早めに出国審査を受けてラウンジに、運次第(うんじだい)では、ほとんど個室の区画でくつろぐことができる。かつては海外へ出向く最大の空港だった。その後、国際線が成田で成り立ってしまって、自分の最初の出国もそこだった。昭和50年頃までは、いざ海外へと、ここ羽田に委ねだ人、跳ねた人もいたに違いない。今も古式ゆかしき風情もあるかなあと搭乗口まで歩くも完璧なリニューアルである。2年前10月のことらしい。ゆったりとした空間、適度な間隔に据えられたインターネットスポット、どこかでスポッとはまる仕掛けである。ガラスばりの窓、昼間だったら空港の外が全貌できると思う。しゃれたDuty Free Shopのビニール袋、ここにはTokyo International Air Terminalとあった。今も東京国際空港である。ライトブラウンが基調のシンガポールエアーラインの機内へと向かった。よい子は寝る〜時間。最終目的地はネルー研究所である。

12.11.19

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名古屋駅まで

 今年赴任された先生と同行する。教育・研究に対する熱意を感じた。話はフレッシュ、電車は少々ラッシュだった。中央本線普通に乗換え、最寄り駅に到着。高校までタクシーに身を託し〜たい誘惑にめげずにバスを待った。バス車内、Wi-Fi環境あり。乗客のワイワイ騒ぎの防止策か。校長応接室にてご挨拶、ここで絶好調になればよいけど、しばし緊張する。「素直な生徒ばかりで打ち解けてくると質問も飛び出す」とのこと。二人組の生徒が講師を呼びにくる。声がかかった。一年生だけど大学受験のことが気になるらしい。いつもの如く講義を始めた。「この高校の出身者が、現在研究室にみやはる」ことも披露する。大学の紹介も含めてほしいというお話だったので「希望学部、学科イメージを膨らませすぎない、ゾーンで方向を決めよう、でもぞんざいではなくってね」など伝えた。最初に出迎えてもらった生徒さんに「話わかった?」と聞く。「わかりました」とすばらしい心意気、こちらもいい気分で帰路についた。

12.11.18

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NMRについて報告です

 とのこと。昨晩積算中にフリーズした。フリーに動かせない。再立ち上げの試みも失敗、担当のスタッフも不在。世話役がいないときに限って体調不良になる様子。来年成人式を迎えるマシーン。ビンテージですと提示もできる齢である。まずは自分で再立ち上げをするもエラーメッセージ、えら〜いことやと見ると、ユニットの一つに赤ランプ。そこをマスクして操作した結果、チューニングは無事完了した。でもロックシグナルが上がらない。確定にすぐなるも小さな値。あたいでは対応できないのでJEOL RESONANCEなんですのコールセンターにコンタクト。赤ランプはユニットのバッテリーがへばってり〜の可能性あり。マスク対策はオーケーとのこと、風邪予防にもなる。ついでシム用ユニットのリセット。これで済む様にと願ったけど先は長い。重アセトンで調整、ついで重クロロホルムで調整、でも微妙なシム値に落ち着いた。「これじゃあ、あかんしゃ」よりむしろ、感謝の気持ちで丁寧に接すればシム値も安定するはずである。皆さんお願いね。

12.11.17

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Breslow中間体は

 1958Breslow先生によって披露されたもので、チアミン(ビタミンB1)(チアゾール誘導体)が関わる生化学の反応がカルベン経由であるという。この分野でのもっとも基本となる中間体でその存在は信じられているものの、だれも単離できず研究はslowだった[1]。その結果、Breslow中間体はNHCカルベン触媒の分野では、ヒッグス粒子[2]であるとも言われていた。そんな中N-アルキルチアゾール塩の硫黄原子をRN基に置換え、不飽和結合を還元した化合物から発生させたカルベンと芳香族アルデヒドとの反応でBrewslow中間体が単離同定された。それに対して、確かに今回の成果は一歩前進、でも硫黄を含まず芳香族系ではないので、ヒッグス粒子発見とは言い難いとも指摘されている。Breslow先生自身は、自らの提案したものに関連した化学種を見せてもらったこと、研究者は自分の研究室の博士研究員だったことも述べられている。いずれ、これこそBreslow中間体ですろ〜という成果も出るにちがいない。

 [1] Chemical & Engineering News, 2012 October 29, p. 8.

DOI: 10.1002/anie.201205878

[2] ヒッグス先生によって提案された素粒子で、今年になって観測されたことが発表されて、世界がびっくりすた。

12.11.16

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アジド化合物は

 含窒素化学種を調製するために一般に使われる化合物である。ただしこれらの合成にはいくつも安全性を確保しなければいけない。たとえば爆発性アジ化水素酸(HN3)の抑制である。そのような中、医薬品候補化合物の合成のスケールアップのために、企業の研究者らは、メソビスエステルの非対称化を、Pd触媒存在下シリルアジド(TMSN3)を求核剤として行っていた。ただしHN3が発生した場合に技術的な工夫によって制御することよりも、その発生の抑制法を探索した[1]。一つはTMSN3を少なめにすること、ただし出発化合物であるメソビスエステルは捨てることになる。そこで別の方法を検討した。すなわち非対称化反応の後、反応溶液を水酸化ナトリウムと反応させると、未反応のTMSN3は含水アジ化ナトリウムに、確かになっとりうむ。ついで抽出することでこの水層を取り除く。研究者らは、この方法は、安全性、収率、廃棄物の量 (safer, better, less)、いずれの点でも優れていると述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 22, p. 35.

DOI:10.1021/op3002646

12.11.15

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金ナノ粒子を

 ある特定の金属酸化物に固定化することで、反応性の低い長鎖アルコールをカルボン酸やエステルに選択的に変換する方法が開発された[1]。しかも廃棄物も最少で、最高の系である。一般に長鎖アルキル脂肪酸やエステルは界面活性剤や潤滑油として工業的に重要である。研究者らは以前、メタノールやエタノールに関する研究を行っていたが、それをもとに酸化ニッケルに固定化した金ナノ粒子は1-オクタノールの酸化を選択的に触媒することを発見した。加えて酸化セリウムに固定化した金ナノ粒子は、オクタン酸オクチルエステルのみを導くことができる。アルコールの酸化は通常塩基性条件を必要とし、塩基がない条件では、元気がないわけではないが、アルデヒドを与える。また塩基性条件の場合、反応後、強酸による中和も、注意も必要であり、コストがかかることと大量の無機塩、これが消えんので、廃棄物として扱わなくてはならない。一方、今回の反応は中性条件下酸素を酸化剤として用いることができる。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 22, p. 34.

DOI: 10.1002/cssc.201200324

12.11.14

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Koto Concertから

 Kyoto Conferenceが始まった。日本の伝統音楽の琴の音色に身をまかせる。時に不協和音が入る。直ちに協和音に戻る。IKCOCプライズの授賞式。サプライズはない。でもこだわりの賞状。聞けば、全体のレイアウト、名前の大きさ、賞状を包む和風装飾、すべてにこの国際会議を始められた先生の 思いが埋め込まれているらしい。カルボニル化合物の不斉還元、金属触媒ではない。酵素エンザイムを使う。財務状況はわからないけど、高い反応効率、鏡像体過剰率を示す。今では市販されている。900名を超える参加登録者を歓迎するパーティー、Toste先生の乾杯(Toast)に始まる。進行役の先生のこの冗句に先生自身も共鳴する。歓迎会場をうろうろしていると、懐かしの卒業生とも出会う。この一年下の学年の卒業生はすべて既婚だけど、あんたの学年は?とプレシャーも投じる。別の大学を巣立って企業で活躍する方々、組織委員長のご夫人ともお話できた。IKCOC-12、今回も愛国心で口頭、ポスター発表を拝聴しましょう。

12.11.13

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Lunar(月)が

 あるなあと夜空をながめる。がその月の誕生過程について、巨大な物体が地球に衝突したというのが1970年代以降一般的だった[1]。ただしこれでは、最近明らかになってきた地球と月の化学的な類似性との整合性を説明することが難しい。そこで新しい二つのシミュレーションが可能性のある別のシナリオを提案している。一つは、高速回転する誕生してまもない地球に、火星のおよそ半分の重さの小さな惑星が衝突した説。別の説では地球とほぼ同じサイズのものによる、より大きい衝突がシミュレートされている。これらのモデルで誕生する月は、地球と似た化学的な性質を示す。また別のグループは亜鉛の重い同位体が、地球より月には豊富に見られることを発見し,強い衝突の後、揮発性化合物が発生期の月から追い出されたのではないかという考えに至っている。加えてこの発見は、水和した月の鉱物の発見に始まった「月の内部には水が豊富にあるのではないかという説」とは距離を置くものである。月の誕生秘話、尽きません。通勤の折りにでも思いを馳せてみるとよい。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 22, p. 34.

DOI: 10.1038/nature11507; 10.1126/science.1225542; 10.1126/science.1226073

12.11.12

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ひつまぶし

 暇つぶしで食してもよいけど、美味を堪能したい。おひとつ、いかがですかの誘いに、おひつの蓋を開ける。焼いたうなぎが一面にまぶされていてその下にはご飯が盛られている。サクサクした味わいは、名古屋の少しばかり高級な逸品である。まずは味付けされたタレの味で、誰もが舌鼓を打つ。ついで山椒、ワサビ、ノリ、薬味ネギなどをふりかけて、自分好みの味にする。駅弁ではここまでだけど、お店ではさらにお茶漬けにしてもよい。満腹感で、東別院のホテルに向かった。中畑さんでも、西川さんでもない、ホテルキヨシ。二年前、いつものように居酒屋で研究会、もうすぐ男児が誕生予定で「名付け」が始まった。突如「村井先生は、どこに泊まるのか」と聞かれて「ホテルキヨシ」、それがいいかもと盛り上がる。他に「コウタ」「タテタ」など、ウケ狙いで提案するも、苗字とのバランスでたぶんどれも採用されなかったはずである。ということが頭によぎりながら、この日も「きよしこの夜」を過ごした。

12.11.11

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もうそんな時期

 という言葉にもめげず、いつもの授業評価アンケート、三択で選ぶあるいは数字で答える質問と自由記入欄がある。200字程度書込むことができる。かつては色々書いてあったアンケートもあったけど、最近はそんなの知らんケートが多い。せいぜい多くて20文字くらいで10文字以下がほとんど。モバイル世代がいっばいいる。幸い絵文字はまだない。最多の書込みは「特になし」最も短いのは「図」他に「眠い」「寝てた」「単位のため」「難しい」「分かりやすい」「補講は嫌だ」「休講が多い」「楽しかった」「有機が好き」「専門のため」「化学なので」「反応きこう」少々長いものは「ダジャレが良い」「もっとダジャレを言ってほしい」「ダジャレが寒いです」などがある。前にも書いたけど、本人はいたってまじめに講義をしているつもりである。まして、ジャレてもいない。でもそう感じるのは聞き手の感度の高さである。しかも「暑さ、寒さ」は肌で感じる。講義を肌で実感できるのはすごい。でも寒さで風邪ひかんように。

12.11.10

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110分の半減期の

 18Fは陽電子放出断層撮影(PET)に利用されているけど、この同位体を化合物に組込むために充分な時間は与えてくれない。それに対して新しい酸化的なフッ素化反応は、水溶性のフッ化物をアレーンやアルケンに一段階で組込むことを可能にしている[1]。その結果、これまではフッ化物の乾燥で時間がかかり、放射性トレーサー合成、やっとれ〜んさ〜という状態だったのを避けることができる。ここではアリールニッケル触媒と超原子価ヨウ素酸化剤と水溶性フッ化物の組合せが利用されている。変換反応は第一周期にある遷移金属を用いた最初のフッ素化の例でかつ、18Fフッ化物水溶液を使った室温数秒以内にフッ化アリールの合成が完了する初めての反応であると研究者らはコメントしている。さらに合成が比較的単純であるために、放射性トレーサーをつくる人が利用する場合でも難しくはないと指摘している。トレーサー合成にレーサーの速さが付与された。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 22, p. 34.

DOI: 10.1021/ja3084797

12.11.9

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エチレングリコールや

 ジオール類は、ポリエステル樹脂、不凍液、化粧品、医薬品を製造するために必要な鍵となる原材料である。グリコールは一般にエポキシドの加水分解で生産されている[1]。たとえばエチレングリコールは工業的には、エチレンオキシドに対して20倍以上の水を高温で作用させて高い効率で選択的に供給される。しかし過剰の水を利用するために10%程度しかエチレングリコールを含んでおらず沸点197 ℃のそれを蒸留によって分離しなければならない。そのような中Dalianチームは40 ℃で98%の選択性、水とエチレングリコールの比が2以下の系を達成した。通気性のないシリカ材料FDU-12に金属有機化合物を密封することでCo3+サレン(salen)錯体を調製した。このナノ細孔の中に多数の触媒を密封した系が触媒性能を向上させることを明らかにし、さらにナノ細孔の入口をシリル化によって狭くし、触媒のにじみ出しを抑制している。このサレン錯体誰でも、触れるんようで、工業的応用の可能性も高い。で誰やん「Dalianってどこ」って考えているのは。中国、大連です。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 22, p. 10

DOI: 10.1002/anie.201203774

12.11.8

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テルペノイドアルコール

 ファルネソールには三カ所二重結合があるが、いずれも三置換アルケンであるけん、ほとんど同じ化学的な環境である。そのうちの一つを二重結合の選択的エポキシ化がペプチドを基にした触媒で達成された[1]Yale大学のチーム、やるねえである。エポキシ化の戦略では、鍵となる触媒成分としてアスパラギン酸を含む小さなペプチドによって特徴づけられる。触媒サイクルでは、アスパラギン酸のカルボン酸側鎖がカルボジイミドによって活性化を受ける。この化学種が過酸化水素と反応し、寿命の短い過酸が発生する。過酸は不飽和結合をエポキシ化し、過酸自らはご破算で酸に戻る。研究はこのアスパラギン酸周りのアミノ酸の探索をコンビナトリアルアプローチで最適化し、ファルネソールのアルコールに最も近い部位の選択的エポキシ化に成功し、80%以上のエナンチオ選択性を示す。さらにアミノ酸を最適化することで、ファルネソールの水酸化に二番目に近いアルケン部位の選択的エポキシ化にも成功した。皆さんも明日からアスパラギン酸、使ってみませんか。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 15, p. 33.

DOI: 10.1038/nchem.1469

ファルネソール:(CH3)2C=CHCH2CH2C(CH3)=CHCH2CH2C(CH3)=CHCH2OHで中と右の二重結合はE配置

12.11.7

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ボレニウム塩を触媒とする

 イミンの還元をカナダの化学者がカナえダ[1]。クイーンズ大学のキャッシー先生らのグループは、B(C6F5)3あるいは[(C6H5)3C][B(C6F5)4]DABCOとピナコールボランをカップリングさせた。その結果得られる触媒塩は、高い親電子性を示すボレニウムカチオンとフルオロフェニルボレートが対になった化合物である。この錯体が様々なタイプのイミンを活性化し、ピナコールボランからの水素でイミンが還元されて二級アミンを温和な条件で与える。反応機構の詳細はいずれキャッシー先生があきゃっし〜てくれるはずである。ほぼ同じ時期トロント大学のダグラス先生らは、同様のボレニウム触媒、ただしNHC由来の触媒で水素の活性化とイミンの還元を達成した。これらどちらもボレニウム塩触媒を用いた金属フリーな還元系で、化学両論量のボロヒドリドの使用を避けるための新しい手法である。ほれぼれするボレニウムに溺れそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 15, p. 32.

DOI:10.1021/ja307374j

DOI: 10.1021/ja307995f

12.11.6

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運動用の衣類に

 ナノ粒子を組込み、衣類にいる汗を餌としている悪臭のするバクテリアの成長を抑制する技術は既存である。さらに今回、汗の分析とそれによって着用している人が脱水症状に近いかどうかを判断できる高性能な繊維が開発された[1]。この機能性綿生地は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)やポリ(スチレンスルホナート)からなる導電性高分子を含み、銀ワイヤーを繊維の中に集積して回路を完成させている。これでできた衣服を着用している人が汗をかいたとき、汗と銀ワイヤーの塩イオンの間で、にぎ(ん)わいや〜ながら、酸化還元反応が起こり素材全体にイオンが流れる。このイオンの流れによって、脱水状態になる過程の汗の塩濃度の変化を知ることができる。塩濃度が上昇すればアスリートは脱水症状に近いことを示す。すなわち水溶液中で汗っぽい条件での塩濃度を検出できる初めての電子織物であって、アスリートにとっても好都合である。ただし「銀ワイヤー、わいはいやや」という人には向かない。また研究者らは、この機能性繊維は異常に高い塩濃度を示す嚢胞性線維症[2]である人の診断と監視にも利用できると言及している。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 15, p. 32.

DOI: 10.1039/c2jm34898e

[2] 体内の水分の流れに異常をきたす遺伝性疾患のひとつ。

12.11.5

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海外へのおみやげ

 みあげたもんだと思っていただけるように悩む。「しばらくは手元にあって、気がついたらどっかいっちゃった」になるかもしれないけれど、和風扇子が定番になった。落語ネタに「扇子は誰でも持てるけど、センスはそうはいかん」みたいなのがあったがこれを英語で説明するのは難しい。今回は百貨店、和装雑貨の売り場。怖そうな人は出て来ない。丁寧な物腰の店員さんがいくつも扇子を開いては、富士山、浪などはいかがかと勧められた。箱に入れて丹念に包装してもらって一通りの準備はできた。通常、この一品に「一家に一枚周期表」を持って行く。カラフルで元素の用途もわかる。たいてい「上の人物は誰か」と聞かれる。日本人ノーベル賞受賞者と答える。米国では「同じものをこの国でつくったら一人一人は豆粒みたいな大きさでっせ」で冗句になった。でも韓国では「俺んとこ一人もおらんで」と言われてしまった。プレゼントした自分が唖然とした。次回は人物なしバージョンにしたい。

12.11.4

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痛っ

 投げた側、話題になってしまった判定を下した審判、実際にあたった選手、それぞれのチーム、すべてがダメージを受ける。先日は「容態はいかんに」と心配もした。投げちゃった投手が謝罪もした。謝罪されたほうは「もうなかったことに」と答えたかどうかは知らない。今回は、ただものではない選手が登板していただけに、大変に惜しいし悔しい。方や打者には葛藤もあったにちがいない。そんな中、所属する球団にあこがれて三年越しで入団した投手が、シリーズで二勝をあげた。打つ身にとっては最高難度、なんとかなんどという相手ではなかった様子。今回の両チームのうち一方は、二年連続ドラフトで、ほとんど入団の可能性のない選手を一位指名した。昨年は「すがすがしいのう」と感じて、とりあえず今年はまだわからない。来年「チームにおったにい」を期待したい。シリーズも残りわずか、こちらのチームを応援したい人はしばしの間、誰かに「はむかった」らよいかもしれない。

12.11.3

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アルキン部位とジイン部位を有する

 化合物が加熱条件下、Diels-Alder反応を引き起こしベンザインが発生、その後例えば分子内のシロキシ基でトラップされてポリ環状ベンゼノイド生成物を与える反応が、偶然見出された[1]。分子内にトラップできる置換基がない場合でも、アルコール、アミド、ハロゲン化物に酸の様な反応剤と分子間で反応し複雑な構造を持つベンゼノイドに至る。反応性の高いベンザインに、バンザインしたかどうかはわからないが、これを経由する環化付加反応であるためHDDA(hexadehydro-Diels-Alder)反応と名づけられている。HDDA反応の最初の例は1997年に報告され、最近になって金属テンプレートを利用した方法も報告されていたが、これを合成目的で利用した例はほとんどなかった。最初の例を報告されたJohnson先生は「この論文の価値は高く、反応系は見事で、長年見落とされてきた環化反応であり、合成目録にリストアップされるものである」とベタホメである。研究を推進したHoye先生らも「ほらほやなあ」と感じているだろうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2012 October 15, p. 7.

DOI: 10.1038/nature11518

12.11.2

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AIDSの合併症や

 ある種の遺伝性疾患に関わる細菌は、菌体数感知機構によって生体膜形成や毒性の活性化を行っている。また抗生物質に対する耐性はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような病原菌によってもたらされる。そこで研究者らは、これらの化学コミュニケーションを禁止することで菌に対抗する手法に、ますます関心を寄せていた。その中ブロッコリが有する二種類のイソシアナート、すなわちスルフォラファンとエルシンがコミュニケーション機構に含まれる重要なタンパク質に結合することで、タンパク質が関わるオシャベリを妨げることが明らかにされた[1]。すなわち細菌の界隈での会話をストップさせる道具箱に加えられた。なおこれまで菌体数感知機構を干渉する硫黄原子を多く含む化合物としてはニンニクや西洋ワサビから得られるイソシアナートやジスルフィドが知られている。ちなみにサプリメントには、スルフォラファン入りもあって、トラファンにも愛用してほしい。さらにブロッコリからエルシンも得れるしん、次はこのサプリかも。

[1] Chemical & Engineering News, October 8, p. 43.

DOI:10.1039/c2md20196h

スルフォラファン:CH3S(O)CH2CH2CH2CH2N=C=S

エルシン:CH3SCH2CH2CH2CH2N=C=S

12.11.1

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