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2013年5月

ある種の酵素は

 医薬品分子に含まれるいくつかの官能基と反応し、医薬品が体内で十分な時間働くのを妨げ、それを代謝する。それは「痛いでっしゃろ」ということで、こわれやすい置換基を他のものに置換える研究が行われている。その一つの官能基がt-ブチル基である。これが有するメチル基は、肝臓にあるチトクロームP450酵素によって、酸化を受けてしまい、体内からの排泄が促される。それに対して、この部位をトリフルオロメチルシクロプロピル基とすることで、課題解決がはかられた。それら二つの官能基は、類似であると同時に、脆弱なメチル基を持たない。別の研究者らが、この置換えで、タンパク質に対する、分子のバインド親和性を変化させることを試みてはいたが、代謝安定性が報告されていなかった。今回、ネズミの血流中での化合物の寿命が測定され、t-ブチル基を有する化合物のおよそ4倍であることもわかった。しかも標的タンパク質に対する親和力は、変化しんわ、であった。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 6, p. 34.

DOI: 10.1021/ml400045j

13.5.31

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2003年以来

 300人以上が、南アジアの鳥個体群から発生したH5N1型インフルエンザウイルスに感染している。これを単に観戦している場合ではない。この鳥が感染する病原体から、どのように人に感染するか、あるいは、それは結果的に、人同士で、どうやって伝染性のものになるのか、明らかにしようという試みがなされていた。その中、X線結晶構造を解析することで、これらの疑問を解く手がかりが得られた[1]。一つは、鳥が持つa2,3位で連結したシアル酸受容体と結合したH5N1ウイルス血球凝集素タンパク質である。もうひとつは人の呼吸器系や赤血球の細胞で見つかった、a2,6位で連結したシアル酸にバインドできる、変異したH5N1ウイルス血球凝集素タンパク質である。その基本的な構造の違いから、H5N1ウイルス血球凝集素の鳥の受容体へのバインドは、糖鎖がトランス配座で起こり、変異したそれの人受容体へは、糖鎖がシス配座で起こることを明らかにしている。ウイルスタンパク質が、シアル酸に悪さしある、以上の成果が、ここにあった。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 6, p. 34.

DOI: 10.1126/science.1236787

13.5.30

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調度品の

 クッション、ちょうどいいように、発泡ポリウレタンでつくられている。ただしこれが燃えやすい。なので難燃剤で処理されている。一方で毒物学者や環境科学者は、それらのいくつかが、いわゆる環境ホルモンとして作用しうること、神経障害をもたらしうることを指摘している。EUでは、臭素化されたいくつかの化合物の使用を禁止している。その中、より環境調和型で、ウレタンの性質には影響しない化合物の探索が行われていた[1]。今回、ポリビニルスルホン酸(PVS)と、エビや他の甲殻類から得られる長鎖の糖鎖であるキトサンも、きっと参加できる、すなわちこれらの成分が利用できることが報告された。水中で、キトサンは陽電荷を持ち、PVSは陰電荷を持つ。この逆の電荷のポリマー同士が引き寄せられ、からみあって、コーティングできる。30 nmの厚さのフィルムは素材の重さを5.5%だけ増加させるが、素材の堅さには影響しない。しかも高い難燃性を示す。おそらくPVSが燃えると、燃えないガスである酸化硫黄が発生し、材料と炎の間に、層を形成し、酸素を遮断するためではないかとされている。含硫黄ガスを使った最初の消火の例、紹介しました。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 6, p. 11

DOI: 10.1021/mz400105e.

13.5.29

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鉄を含む酵素は

 医薬品や他の化成品を代謝する。これをヒントに反応性の低いC-H結合を、有用なC-N結合に変換する方法が開発された[1]。これによって飽和な複素環、それらは生物学的に関連する分子の基本骨格のひとつであるが、への迅速なアクセスを可能にしている。「合成化学や有機金属化学の、基本的で挑戦的なテーマの一つは、有機分子のすべての部位に高い反応性を持たせることである」という考えのもと、アルキルアジドの分子内のC-H結合を切断して、環状アミンに変換する系を確立した。その職場にある鉄触媒の鍵となる点は、その電子状態を、天然の代謝に関わる酵素と同じ状態にすることだった。「自分たちがやったすべては、天然のシステムに倣って系を設計したことである」と、研究者らは述べている。これによってC-H結合からC-N結合への変換というこれまで未解決だった課題が解決され、様々な含窒素複素環合成へも応用されるだろうとコメントされている。代謝(メタボリズム)を範とした系、だいじャ。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 6, p. 8.

DOI: 10.1126/science.1233701

13.5.28

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宇宙船エンタープライズの

 精神に従えば、可能性のある小分子構造の全宇宙をカバーするマップがあれば、研究者らは、大胆に、これまでだれも探索していない、新しい医薬品や新材料の発見に、航海する際の一助になる[1] 。そのようなマップを生み出すアルゴリズムが、ここにあるご、とリズムよく、創り出された。アルゴリズムは仮想の分子のコレクションを、量産できる。そこから、不安定あるいは、合成不可能な化合物を除外して得られた、化合物マップでもって、化学者は目的の化合物の探索ができる。今回、これはDuke大学の研究者らによって報告されたが、この種の試みの最初ではない。たとえば以前、スイスベルン大学の研究者らによっても、1160億個の小分子データベースが開発された。ただし今回の成果は、およそ1060剰個の分子を含む、化学宇宙空間の全体をマッピングした最初の試みである。エンタープライズの乗組員も、サプライズなマップに、満腹感も亢進しそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 29, p. 28.

DOI: 10.1021/ ja401184g

13.5.27

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ためしてガッテンの

 司会者でもある立川志の輔師匠、バンコクで高座に上がられる[1]。今回は選挙の前日だったとのこと。タイでは選挙の前日から投票日の夜までは禁酒。「高座の後の冷たいビールを楽しみにしていたのに、これでは落語も控えめに」と暑い場所で、ホットな話題から入る。人が怒る、悲しむのは、概ね誰しも同じ、でも、どこが可笑しいかは、人それぞれである。実はこの前振りが本編の最後を暗示しているとは、このときにはわからない。小話に入る。そのうち二つ:1、「姉さん、姉さん、粋だねえ」「えっ、私しゃあ、帰りだよ」2、「あなた、この絵は誰の絵かしら」「ゴッホでございます」と美術館員が答える。「わかっているの、あなたのことをたてて聞いているだけ、でこちらは」「ダビンチでございます」「でこれは、言わなくてもいいわ。私わかっているから。ピカソでしょう」「いえ奥様、それは鏡でございます」本編の最後は「多くは食わねえ、たった一膳で」終わるも、当の奉行殿が「なにが可笑しいのじゃ」とさらに突っ込んでいる。

[1] 「全日空寄席5月より」飛行機の中、笑いをこらえるのに苦労しました。

13.5.26

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ジャン・バルジャン

 がんばるじゃん、なにせ剛力である[1]。投獄されていた頃、それを知った、後の警部ジャベール。ジャンは脱獄の後、司教の慈悲で改心し、8年後、市長になった。そこにジャベールが登場して、しゃべ〜る。馬車の下敷きになった男を助けた市長を見て、確信する。再び追跡の日々が始まった。市長は、娼婦になってしまった女性と出会い、彼女の娘コゼットを育てることに。それまで一人の人生だったのが、ここから、豊かに広がると同時に逃げきらなくてはならない。コゼットが18歳になる頃、悪政に苦しむ民衆を救うべく学生が蜂起しようとしていた。その一人とコゼットが恋に落ちる。我が子のように人生を歩んだコゼットを渡したくはない。そんな折、その学生が瀕死の重傷になった。その間もジャベールの追跡は続く。でもジャンからしばらく前に、慈悲を施されたジャベールは、最後の瞬間をわざと逃す。瀕死の学生を救い、ついに二人は結ばれた。ジャンは、世代を引き継き、修道院にいた。

 150分を超える全編ミュージカル、売春婦の宿、果たせぬ恋、金の亡者なども絡んで、あっと言う間の時間だった。画面は、小さかったけどね。

[1]映画「レ・ミゼラブル」(2012)フライト版

13.5.25

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ノースダコタは

 どこだ」から始まった8日間、「知らぬ人、遠方より来るあり」が如くに、どこの大学でも、時には朝食からお付合いいただけた。個人や家庭のことに立ち入りそうな話から、「新しい総理大臣どうかな?」「憲法が危ういか?」「いやそりゃあ、米国でさえも、なし得なかった憲法を小国に授けたのだから」。入れ墨人口が相当に増えた。「日本ではどうか。なにかそれでフリーになるか、不利になるか」「ある町の市長が問題にしていた」「採用時には、わからんだろうに」「いやその後にばれたら」「日本人映画監督のファンである。自分もその年になったので、意気に感じる」、と聞いている自分、まだ見ていない。という合間。一人の時、竜巻のニュースに触れていた。こちらに戻って聞くそのニュース。大きさを単にEFで伝えていた。方や米国では •••Fujita scaleと藤田先生の名を告げていた。

戻って、竜巻で甚大な被害を受けられた方々には言葉もありません。

13.5.24

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帰路につく

 現地で日本時間夕方に戻す。オースチンの空港でビールをお願いするも、今の時間は扱っていない、なにせ朝食メニューである。米国内の移動のフライトを待つ、予定の時刻に搭乗が終わらない。座席は、小さな子供づれの方と同じ列。頭は夜中時間なので、寝始めた自分。でもキュートな男子の小さな足にくすぐられる。時に母は、母乳を授けている。出発が遅れた上にフライトも遅れ気味。つらいと思うこちらの気持ちよりも安全第一な飛行である。気になるトランジット、でもじっと待つしかない。幸いなことにこの国は、一旦空港に入ったら、出国の際は検査がない。江戸幕府に学んだに違いない。国際線のほとんど最後尾の座席。降りるのに相当な時間がかかった。ぼけっとしていたか、ポケットから定期入れが落ちていた。再び幸いなことに、後ろの韓国からの方が、担当者に届けていてくれていた。国内便にも滑り込めた。地元に戻る途中、「幸運は続かない、今回をもって最後にしたい」と思った。でも多分一週間もすると、その気持ち、吹っ飛んでいる。

13.5.23

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ワイン醸造所

 Winery、わいなりに、どこにあるかを考える。冬冷え込む地域に限定かと思っていた。白ワインは確かにそうだけど、赤ワインは,南フランス、チリ、カリフォルニア(CA)さらにはテキサス(TX)でも醸造できる。しかも全米のワイン醸造、一位がCA州でTX州が二位であるとのこと。オースチンから車で1時間半ほど西に向かう。フレデリックスバーグに近づくとWineryが目につく。1800年代、ドイツから多くの人たちがここに入植してきた。町のレストランでは、ドイツ、メキシコ、テキサス料理をミックスした料理を供するレストラン、地ビールを醸造する所もある。しばしそこを見学、美味を食して、Wineryを訪ねた。6種類を選んで試飲ができる。し〜いんとしている人はあまりいない。香りを確かめて一言、口にころがして一言、軽さと苦さ、酸味に賛否両論。数本を手にした。お嬢様のピアノリサイタルがあるという。帰路につくも渋滞、こりゃ痛い。でも冷静なハンドルさばきで、大学までは戻った。お世話になりました。See you soon. す〜んでのところで伝えることができた。

13.5.22

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総面積は日本の二倍である

 テキサス州、そこで育まれた合成化学の成果を6人が紹介する。加えてテキサス大学出身で、今は企業に在籍のスピーカー、そしてなぜか村井君がいた。午前850分に始まったTex-Syn-1シンポジウム。スパースピードの英語に、相当な成果が盛り込まれたトーク。遠くを見つめる村井君。「持参した内容でよかったか?」「今更、変更してはいけない」などと葛藤の中、自分の発表時間も近づく。「自分より前のスピーカーのペースを一旦断ち切って、これまで繰り返して練習した内容を、ゆっくりめに、話すこと」呪文をかける。それでも座長が紹介している間に、自分の頭に上空から冗句が飛んできた。『「25年前にも、この講演会場はあった、今は改修されて新しい。一方で、両サイドにある周期表は、当時と変わらない。(原子番号110番以降は名前がまだない)」「それでも、ことは足りる」単に酸素原子を、硫黄、セレン原子に置き変えるだけである。しかもそれらの元素の置換えは、ChemDrawで簡単にできる』とか話したかと思う。笑いが収まるのをしばらく待って次に進んだ。ただし講演の前半で、時間を使いすぎた。冗句から教訓を得た。

13.5.21

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大学院博士課程に合格

 

 いよいよ米国での学生生活が始まる。移民費用が毎年50ドル必要、でも大学から22000ドルが支給されるのでこれで賄う。住居は寄宿舎で、部屋をルームメイトと二人で借りる。5年のプログラムで、誰でも参加自由の場での発表が三回ある。二年を終える頃までに、あるトピックについて論文を読みこなして、あたかも総説を書くが如くに内容をまとめる。これをpublic seminarで紹介する。同じ頃、講義を受けた後の試験(comprehensive exam. 総合試験)を受ける。講義の幅は広くて、数学が特に課題である。寛大な処置を願うもそこは厳格である。なんとか合格して3年目にmini proposalを二つ作成する。これは自分が研究を行っているのとは異なるテーマを自分で発案する。四ページほどで、先生方がメンバーの委員会を経て、そのどちらかについて、maxi proposalを作成する。自分の構想力が試される。この場合には参考文献は少なくてよい。この内容を、いいように、皆さんの前で発表する。1時間ほどであるが、その後の質疑応答が半日に及ぶこともある。これを通過して初めて、博士号を取得する候補(Ph.D. Candidate)になった。さて最後は博士論文の発表(defense)を終えて、晴れてPh.D.である。

13.5.20

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テニュアを取得して

 一安心、なに言ってにゅんあ、これからも研究に邁進、という先生方は、日本でも著名である。一方で「研究や〜めた」という場合もある。その結果、研究費の獲得はできずに、年間3ヶ月分の給与を賄うことはできない。ただし研究費が獲得できても、化学薬品のため、学生のために使い果たして、自分に還元されないことも多い。准教授、教授の如何に関わらず毎年、研究・教育・社会貢献[1]の観点から評価される。ここに30代でテニュア取得後、研究を「や〜めた」先生がいた。定年制のないシステムのため、たとえば70歳を超えても在籍できる。講義の担当をするも、それが格別多くなることはない。「や〜めた」先生の場合、五段階評価を受ける授業の部分で、そこそこだったら、あるいは学生からのよほどのクレームがなければ、それほど給与にも反映されないし、退職を迫られることもない。最大25%程度の減額にはなるものの、主な業務は、一週間に360分の講義らしい。幸い、この類いは少数である。

[1] なんだかどこかで聞いたようなフレーズだけど、オリジンは多分この国と、おじさんも納得した。

13.5.19

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新しいスタッフの

 公募情報、レベルの高い候補者の応募を期待してNature, Science, C&E News誌に掲載する。結果、有機化学の場合には100-150名の応募がある。そこから資料をたよりに、学科の先生方で候補を絞り込む。概ね5-10名程度にした後、面接の段階になる。これまでの成果の発表は、学生、教員だれもが参加できる。これが一日目、二日目は、今後の研究計画などを、限られた面接委員の前で発表する。それぞれ数時間になることもある。しかもその空いた時間帯は、学科所属の先生と1 : 1、一体どんな人物であるかを、すべての先生に解きほぐされる。食事の際、候補者はくつろげるかと思いきや、さにあらず。朝、昼、夕食とすべての機会に、誰かが食事をともにして、選考過程が継続している。面接前日に現地に入ると、その日の夕方からそのモードであるけど、ムードよく対応しなくては、先はない。幸いすべての経費は大学あるいは学科が負担する[1]。最後に選ばれた人は、それなりの額の、研究室立ち上げ経費と、7年ほどのチャンスを手にする。3年で学内中間評価がある。ただしもし夫婦共働きで小さな子供がいる場合には、その期間は、緩和される[2]

[1]たとえばここでは、大学が5000ドル負担するが、先の公募情報の掲載で、4000ドル程度、他に候補者の旅費、食費などが必要になる。

[2]このお話、教えてもらった先生、過去に受けた面接過程については「easy」、3年後の本審査については「だめなら、他を捜せばいいや」みたいに、涼しい顔だった。@寿司レストラン(ボルダー)にて。

13.5.18

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コロラド州ボルダー

 に、おるんだ〜と、少々息切れ気味の自分や、遠くの山々を見て、実感する。アスリートが、コーチと高地トレーニングをするところでもある。ネット予約をしていたバンをデンバー空港で待った。予定の時刻になっても一向に現れない。40分ほどして、受付カウンターに出向いたところ、場所を間違えていた。次の便に空きがあれば、余分なチャージなしで振替ることができるとのことで、事なきを得た。待ちぼうけで暑かったろうと、冷えたペットボトルをいただいた。正しい待合所まで同行してもくれた。夕方ではあるが、バンが来た。「乗客は一人なので、どこでもよいから座ってくれ」とのこと。50分ほどして、開業以来100年以上を経ているというホテルに到着。1909年に設置されたエレベーターが今も稼働している。ただしベルを鳴らしてオペレーターを呼ばなくてはいけない。ダウンタウンには、子供の遊び場、公園、散策できる小道。大小の花壇は、普段から手入れが行き届いている。赤、黄、まだらなオレンジ色のチューリップが咲き誇っていた。その間には、紫、黄金、すみれや黄色のパンジーが、ここでも色彩を豊かにしていた。

13.5.17

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それぞれの母国を離れて

 この地でポストを得る気鋭の先生方と夕食。家族で過ごすべきところをキャンセルして、つきあっていただいた。この日は、閉店のお店も多い。営業していた地元のインド料理店。ビール「タージマハール」に、はま〜るも、最後の一本だった。「ムックとは、どこでお知り合いに?」という問いに、しばし戸惑う。ガチャピンもいるのか?と、頭によぎる。この国、年齢差があろうとも、多少の立場の違いがあれども、基本的にはファーストネームで呼び合う。なのでフルネームをインプットしておかなくてはいけない。しかも略称で呼ぶ事も多い。Hi, KimKimberly。必ずしも韓国人ではない。次の日、朝からケミストツアー。先の先生方もそれぞれ「光照射下でのキラル転写反応」「芳香族カルボン酸の触媒的脱カルボキシルマイケル付加」について語る。その分野の発端を切開いた先人に、日本の先生が挙げられている。「一人ぼっちで始めたら、人口密度が高くなっちゃった」という領域があるのを忘れてはいけない。皆から「セミナー楽しみにしてるから」と声を掛けられる。講演の後、30分程、貴重なアドバイスや質問の嵐の中に立っていた。地ビールに、キュウリ入りのモヒートが、喉を潤し、のどかにした。

13.5.16

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海抜

 600 mほどか、人口およそ10万人、辺り一面、ほとんど平地、住居は基本的に一階建て、だって800 m2ほどの敷地が2000万円ほどで購入できるというファーゴ。この西海岸とも東海岸とも随分と違う環境でも、全米のルールが浸透している。NSF, NIHなどの財団へ応募する。先生方の給与は9ヶ月分が大学から支給される。残りは自分次第、ただしmedical schoolの先生方は、20%支給で、その代わりは、競争的資金を獲得して、その一部をサラリーにする。一方で、講義はさらり〜としか担当しないらしい。「教えなくてはいけない」と「教えたい」との違いが顕著である。高額の機器が別の建物に設置されている。移動するための通路、屋根つき、エアコン完備である。-30 ℃にもなるという冬でも対応できるようにとのことである。フットボールゲームもドーム競技場で開催される。カレッジのチーム名は、NDSUバイソンズ。倍、損してはいけない。寒くても声援を送る。この数年は強豪であるらしい。

13. 5.15

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オヘア国際空港にて

 乗継ぎ。「担当者は横柄や」ということもなし、お部屋に案内されることもなし、でも次の便のゲートまで2時間ほどを要した。入国審査の列、丸太の様な二の腕にタトゥー、怖そうと思ったけど「左手四本の指」などと柔らかな日本語で指示してもらった。次に荷物を一旦受け取って、再び預ける。空港シャトルで、ターミナルを移動して保安検査場。そこは長蛇の列。順番が近づいてきたら、靴、ジャケットを脱ぎ、パソコンをバッグから出す。パスポートと搭乗券を手に前に進む。身体を、直径1 mほどの透明な円筒型の筒に入れる。扉が閉まると3秒間、ホールドアップしたポーズを取る。無事通過して小さくガッツポーズ。次の目的地へのエアークラフト、60名ほどが定員の小型だった。離陸・着陸の際には、左右への揺れ、臨場感を満喫した。中部国際空港を出て、およそ20時間、ファーゴ(Fargo)についた。まさにgo far [1]である。

[1]直訳は「遠くまで進む」だけど「成功する」も意味する。

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国際空港近くの

 ホテルに前泊した。空港からのシャトルバスを、待っとるのも退屈なので、7分ほど徒歩で移動。オレンジサイトとグリーンサイトの間、レースをまとった犀が出迎える。サルバドール・ダリの制作で世界に8体あるうちのひとつかもしれない。「ダリって誰」という方は各自でWikiってください。で夜が明けた。早朝、混雑する朝食会場、異国情緒溢れる色彩の衣服、パンとご飯の両方を組み合わせる人、耳慣れない言語。日本語がむしろ少数な風であるも、活気に溢れていた。食べ終えて空港に向かった。わずかな時間で搭乗手続きを済ます。時刻、座席の確認をしてもらった。ふと見れば、ベルトで運ばれる自分の手荷物に、青色のタグが巻かれて、そこに「HOT」とあった。「あれは何でしょうか」「成田での乗継ぎの時間が、少し短いようですので、到着後、放っておかれないようにHOTを、つけさせていただいています」とのことだった。ほっと一安心するも、結果はシカゴにて、である。

13.5.13

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電子デバイス

 たとえば太陽電池、電界効果トランジスタ、発光ダイオードなどでは、チオフェンが重要な地位を占めている。さらに電子的な特性や、オリゴマーでも困〜らんように、安定性を向上させることが求められている。その一つの手法として、チオフェン環内の硫黄原子を部分的あるいは完全に酸化することが考えられるが、実際には、これを高い効率でなし得る反応剤はほとんどない。そんな中、フッ素原子様の分子が使われた[1]。フッ素は最も強い酸化剤の一つである。ただしその極度に高い反応性の制御が難しい。そこでHOF•CH3CNが開発された。窒素ガスで希釈したフッ素ガスをアセトニトリル中にバブリングする。バブル崩壊も起こらず得られた化合物で、臭素原子を有するジチオフェンの酸素をスルホキシドに酸化、さらにそれを酸化されていないチオフェンとクロスカップリングすることで、部分的に酸化されたオリゴチオフェンを導いている。この新しいオリゴチオフェンは、より狭い電子バンドギャップと高い酸化・還元電位を示す、お利口〜チオフェンらしい。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 15, p. 21.

DOI: 10.1002/ chem.201203936

13.5.12

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バイオ燃料のための

 微細藻類の生産を促進する低分子を探索すべく、マイクロプレートで、四種類の微細藻類を使ったスクリーニングが、カリフォルニア大学の研究者らによって行われた[1]。化合物は、脂質の生産は促進する一方で、藻類の成長を阻害してはいけない。低分子の濃度はピコモルからマイクロモルまでの範囲である。そこで500 mLのバッチ式培養基を使って、一部の化合物の活性が探索された。そのうち確かな効果が見られたのは、緑茶の酸化防止剤である、エピガロカテキン没食子酸塩や、没食子酸プロピルエステルさらには、通常の食品の防腐剤のうち、ヒドロキシアニソールブチルエステルであった。なおここで没食子酸とは、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸であるが、後者の二つは、真正眼点藻綱として分類されている藻類の脂質の生産を60%以上向上させている。しかもこれらは5万リットルの池に入れるとしても4セントも、せんとのことである。藻類の将来も明るい。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 15, p. 20.

DOI: 10.1021/ cb300573r

13.5.11

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patent medicine

 医師の処方箋がなくても買える薬」らしい。19世紀後半から20世紀初頭のそのような医薬品は、必ずしもその全てが、あてにならないもの(snake oil)ではなかった。ただし不老不死の薬だと言われたものの分析、すでに1925年に行われていたけど、それはアスピリン、カフェインあるいはチャコールとあまり変わりなかった。今回の研究では、誰かが志願してか、ミシガンの美術館にある薬の分析をして、そこには鉄、カルシウム、亜鉛が含まれていることを明らかにしている。それでもある医薬品が謎であったため、エネルギー分散X線蛍光分析が行われた。この非破壊技術によれば、通常の元素に加えて、その酸化状態やどんな化合物かまではわからないけど、ヒ素、鉛、水銀を含むこともわかった。この成果は、現代の薬物療法の最初、すなわち医薬品がいい役を演じ始めた頃について、情報を提供しており、さらにNMR研究によって、詳細が明らかにされるはずであると、研究者らは述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 15, p. 21.

13.5.10

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医薬品や農薬

 などの生物学的に関連する分子には、キラルなアミンやアルコール官能基が、随所に見られる。そのため化学者は、それらを合成する新しい方法を常に探索している。その中、エナンチオ選択的なアミンやアルコールの単純な合成法が報告された[1]。反応ではアリルボロン酸エステルを、窒素上にジフェニルホスフィニル基を導入したイミン、あるいは電子不足のカルボニル基に付加させる。変換の鍵となるのは、有機触媒であり、それが反応を練り上げる。研究者らは、十分に供給できるアミノ酸のひとつバリンから安価な反応剤を使って化合物を調製する。アミノ酸の窒素原子には、3-t-ブチル2-ヒドロキシベンジル基が組込まれている。そのバリン由来の触媒は、威張りんこともなく、がんばり屋さんである。わずか0.25 mol%で、収率85%以上で目的化合物を与える。研究者らは、この系を、別のタイプの炭素−炭素結合形成反応へも展開しようとしている。Hoveida先生らの、平坦じゃなかったはずの成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 15, p. 20.

DOI: 10.1038/nature11844

13.5.9

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生体高分子である

 リグニン、不規則で複雑な構造を持ち、植物の細胞壁において、セルロースやヘミセルロースを取り囲んでいる。これをバイオベースな化成品の工業用原料(feedstock)として利用する試みがなされている。その中、リグニンの水酸基を選択的に酸化し、さらに炭素−炭素、炭素−酸素結合を選択的に切断する段階的なアプローチは、こうあんねんで、と考案された。ニトロキシルラジカルであるTEMPOのアセトアミド誘導体を、有機触媒とし、鉱酸を共触媒として用いて、分子状酸素を酸化剤として反応させる。これによって、リグニンのモデル化合物の中の、特定の水酸基がカルボニル基に変換される。さらに続く過酸化物を使った酸化で、芳香環を切り出すこともできる。最初の酸化段階は、リグニンそのものでも成功しており、今後、実際の系での、第二段階の達成を目指すとのことである。役人も驚くリグニン利用、渾身の力でWisconsinのチームが挑んでいる。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 15, p. 20.

DOI: 10.1021/ ja401793n

13.5.8

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村上春樹先生が

 56日、京都大学で講演をされた。「河合隼雄物語賞・学芸賞」創設にちなんでいる。河合先生は心理学者として、いわゆる心の病を抱える数千かの人たちと向き合われた。その先生と対談をされた春樹先生。人のことについて同じレベルまで深く降りた人という共感が、そこにはある。人が生きるには物語が必要である。作家はその発端を提供するだけで、それ以上は読者に委ねたい、みたいなお話もされたらしい。面がばれると日常生活にも支障をきたす。なので録画、録音はできずに、代わって講演会を聞いた若者がインタビューに答える。「今までも多分、質問には、まじめに答えていたけれど、もっと真摯に答えているところが、印象的だった」「売れ筋作家なので、キザな人を想像していたけれど、違っていて」だったかのコメント。ちなみにこの話を入手できたニュース番組。普段は次の話題に移るとき、表情をもとに戻す司会者、でもこの時、なにげに安堵な笑顔。それが話題のふくよかさを伝える。ここにも豊かな色彩があった。

13.5.7

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炭素−炭素二重結合を有する

 アルケン、この低分子は、塗料、香料さらには様々な化成品の合成原料である。ただしアルケンを修飾する反応は、エネルギーを必要とし、時には高価な金属触媒も必要である。それに対して新しい系はこれらいずれとも無縁である[1]。金属に替えて、有機化合物の組合せを触媒として利用している。市販品のアクリジニウム塩と2-フェニルマロノニトリルである。そこに低エネルギーの15W発光ダイオードランプからの光を照射すると、アルケンがカチオンラジカルに変換される。これは多種多様な化合物へ付加できる。たとえば付加は、アルコール、カルボン酸、アミンへ、庶民も納得の様式で進行する。2-フェニルマロノニトリルをチオフェノールで置換えると、3日間を要していた反応が、およそ15時間まで短縮された。付加は、伝統的な化学の教義であるMarkovnikov則に従わない。現状では、二あるいは三置換アルケンが使われているが、一置換アルケンへ適用できれば、より価値の高い反応である。いずれイソブタノールを、アルケンと水とから、大量に導きたいと研究者らは述べている。深みのある付加反応を知っても、前後不覚にはなりませんように。

[1] Chemical & Engineering news, 2013 April 15, p. 8.

DOI: 10.1021/ja309635w

13.5.6

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5月初旬

 といえば、家々に鯉のぼりが、なびいていた。今では随分と減ってしまった代わりに、どこかの川辺や公園では、50匹以上、なかには数百匹の鯉が遊泳し、憩いの場でもある。で文部省唱歌、作詞不詳の歌が、耳に響く。七音・五音の七五調で、まずは視覚から入る。突き抜けるアオ空に、甍、いわゆる瓦で屋根葺きにした波と、雲の波、概ねクロとシロの色調で、その「重なる波の中空」でなびく。そののぼりはアカも入ってカラフルである。しかもこれだけでは終わらない。緑の葉っぱ満載の橘、薫風を、鼻と肌で感じさせる。で一番が完了して、二番、三番は、鯉のぼりの如く、鯉の如く、「百瀬の滝を登りなば」は、様々な体験・経験で「たちまち竜になりぬべし」:成熟せよ、ではないかと勝手に解釈している。Wikipediaでは90年前が初出とある。でもYou Tubeではこの一年以内に公開されたバージョンもある。子供の頃には退屈だった唱歌。それが後に甦る。今も「唱歌の紹介、もっとしようかい」であればよい。

13.5.5

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電荷を持たない

 窒素や酸素原子、求核の旅に出る。そこに豊かな色彩がある。有機化合物をLewis点構造式で表す。てんでわからないなあと思っているうちに、線構造式が先行し始める。そこで失ったものが、孤立電子対である。構造式を見ても、窒素、酸素さらには硫黄上にそれが存在することに慣れるまでには、しばし学びを深めなくてはいけない。確かに、孤立電子対すべてを、点で、たとえばパリトキシンの構造式に加えると、ぱりっとしんので、止むを得ない。しかも「化学反応は、プラスとマイナスがくっつく」という様式だけを刷り込まれると、電荷をもたない分子中の、ある原子が反応に関わることに、違和感が生じる。(誰もいわんか)でも生体中の反応は言うに及ばず、酸を添加しない条件でも、含窒素、含硫黄化合物の孤立電子対は、この電子を他の分子と共有したいと働きかける。幸いカルバニオン程のやんちゃではないので、それを欲している部分に出会って初めて、柔らかなダイアログが始まって、結合形成が成就する。上手である。

13.5.4

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太陽光を吸収して

 働く光触媒は、水の電気分解や、廃水中の汚染物質の分解などの化学反応を促進できる点で、有用である[1]。ただし二酸化チタンのようなたいていの光触媒は、紫外光によって、活性化されるが、紫外光は、太陽光の5%程度である。いわば太陽が貸与してくれるエネルギーの効率が高くない。そこで光を、ひっかり使えるように、色素やドーパント原子を、光触媒に添加させて、可視光利用を促している。それでも太陽光のおよそ45%である近赤外は利用せずにそのままだった。それに対して銅ミネラルであるCu2(OH)PO4がこの領域の光を使った触媒として利用できることが報告された。新しい銅触媒の反応性の秘密は、結晶格子である、ひずんだ三方両錐構造から隣接する八面体構造への電子のすみやかな移動が起こる。これを使って、水溶液中で殺虫剤である2,4-ジクロロフェノールの分解を行ったところ、高い効率であった。同様の光触媒開発は、二重の配位環境が、見込みあるモデルであるとされている。近赤外吸収触媒の、試金石が、ここにあった。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 8, p. 36.

DOI: 10.1002/ anie.201301306

13.5.3

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二つの炭素を橋かけし

 陽電荷を有するハロニウムイオンを、ハローウとは言わなくても形成する塩素、臭素、ヨウ素原子。これらは、置換反応で、隣接する炭素上の置換基の、反応の立体化学への影響を理解するために、重要な中間体である。ただしハロゲン原子のうち、最も軽くて、周期表で最も電気陰性のフッ素原子について、同様の方法で、溶液中、同様なイオンを形成するかどうか、わからなかった。それに対して、フルオロニウムイオンの存在を支持する成果が報告された[1]。しかけは、二つのノルボルニル基を化合物に持たせ、それらの橋頭位がお互い接近した場所に位置させ、片側にはフッ素原子を導入した化合物である。これをトリフルオロエタノール中で、加熱すると、フッ素原子は、脱離基を有するもう一方の炭素原子を攻撃し、橋を形成する。研究者らは、速度論、重水素ラベル化実験と計算化学からその形成を確認した。さらにこの短寿命の化学種の反応性も探索し、このイオンを手なずけることで、父祖伝来の方法に、新たなフッ素化合物合成法を提供できるとしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 8, p. 36.

DOI: 10.1126/science.1231247.

13.5.2

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crème de la crème

 フランス語で、最高の中の最高品という意味らしい。今やクリックケミストリーの中で、銅触媒によるアジドのアルキンへの付加でトリアゾールを導く反応が、そう呼ばれている[1]。一方で、その反応機構の詳細が未だにはっきりとはしていない。最近の研究では、触媒サイクルの中には銅が二分子関与するところまでは明らかになっていた。さらに一分子目の銅原子は、銅アセチリドを形成するだろうことも類推されていたが、その後が、どうにもならない。そこで同位体を使った質量分析が行われた。銅は、Cu-63Cu-7657:3の比であるけど、純粋なC-63が使われた。二番目の銅が単に、アルキンのπ配位を受けるのみだとしたら、銅トリアゾリド生成物にはこの銅は組込まれない。一方で実験では、50%の銅トリアゾリドに同位体が組込まれていた。このことは反応中で、二つの銅が等価になる機構を含んでいることを示していた。反応機構解明の成果に加えて、銅同位体を利用する方法は、生体系にも応用可能である。「銅の同位体が、いいどうと言いたい」

[1] Chemical & Engineering News, 2013 April 8, p. 5.

DOI: 10.1126/science.1229506.

研究室の皆さん、雑誌会で紹介してもらったものの、さらに詳しい機構です。貴公、貴女にも理解してもらえるとうれしい。

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