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2013年6月

リン原子は

 五価の酸化状態で、アデノシン三リン酸として、生命活動にエネルギーを付与し、DNARNAなどの骨格形成を助ける。ただし生命の起源として、リン酸塩が、初めてどのように生命に入ったのかがわからないままだった。地球上のたいていのリン酸塩は無機化合物である。それは水に不溶で、簡単には生体分子に入り込まない。このような中、3–50億年前の岩が、生命の重要な部分に、どのようにリン原子がなったかを、進言している可能性が見出された。言わずもがな、岩はしゃべらないけど。で研究者らは、この昔の岩から三価のリンを含む亜リン酸塩を発見した。これは水に可溶で、反応性も十分に高く、原始の生体分子のリン原子源だった可能性が提案されている。さらに「シュライバーサイトと呼ばれる鉱物の形で、隕石が地球に高反応性なリン原子をもたらした」という2008年に発表された仮説とも符合している。実際に研究者らは「シュライバーサイトを調べなさい」ということで、その類似物と隕石でよくみられるグリセロールとを、水中65 ℃で加熱した。その結果、細胞の構成要素であるリン酸グリセロールを得ている。アデノシンさん、リン酸の起源がわかるかもしれないよ。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 June 10, p. 8.

DOI:10.1073/pnas.1303904110

13.6.30

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のぞみsuper expressを

 数週間で、合せて八回、利用させてもらった。そんなの当たり前という御仁も実際には沢山みえる。でも自分にとっては初めてである、多分。同じ歩調で乗り込み、同じアナウンスを聞く。でも見覚えのある乗客、乗務員には会わない。それはしゃあない。車内もそれなりの混雑である。数百km以上を移動される人々がそれほどに多い。加えて名古屋駅きしめん店も、人で、ひしめきんあい、女三人旅の方も満喫しておられた。入口前に並ぶ人が目に入ると、自分は熱さも忘れて、ほうばってしまう。折しも世界文化遺産に富士山が選ばれるだろうという時期とマッチしていた。間っ違いなくそうなるだろうということで、富士山撮影に、持参したデジタルカメラ。さしたる活躍の場はなかった。見本にできる「美保の松原」を切り取ることもとうてい望めなかった。というか、こちらはもともと見えない。でもかめへんらとカメラが言う(実際には言わんけど)。なので、いずれ、浜辺沿いの松、そこからの富士、お茶の香り、三人男を、カメラ君にも実感させてあげたい。

13.6.29

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二元あるいは二つの触媒

 英語ではdual catalysis、従来のものとは異なり、それぞれのキラル触媒が、異なる立体中心の立体配置を個別に制御できる系が開発された[1]。すなわちCarreira先生と彼いらの研究チームは、アルデヒドとアリルアルコールのカップリング反応で、γ,δ−不飽和アルデヒドを導く反応を行った。キラル配位子を持つIr触媒はアリルアルコールを活性化し、同時に、シンコナアルカロイドから導いた一級アミン触媒がアルデヒドを活性化した。二つの触媒のそれぞれのキラリティーの組合せで、連続する二つの立体中心からなる四つの鏡像異性体をつくり分けることに成功している。この戦略は、新しい世代の立体選択的反応であり、それによって多くの有機分子の合成が、より単純で迅速になる可能性がある。さらにMacMillan先生も、うまっく魅入られたんらしく、この相乗触媒(synergistic catalyst)のエレガントさ、美しさ、さらには複雑な分子を合成できる力量を讃えている。讃えに、耐えられる系でありたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 June 3, p. 9.

DOI: 10.1126/science.1237068

13.6.28

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原子間力顕微鏡(AFM)は

 数年前、IBMの研究者らが、ペンタセンの単分子の原子や結合のイメージを明示して話題になった。それ以降、この技術によって、天然物の構造決定や、C60、多環芳香族化合物の個々の結合の結合次数の同定、チアンスレン異性体の相互変換の解明などが行われている。今回、エンジイン誘導体を銀表面に据え付け、分子の画像を取得した後、表面を90 ℃以上に加熱した[1]。「おっかね〜つ」と言う間もなく環化反応が進行した。そこで、多環芳香族化合物が生成物として得られたが、興味あることに、二種類のみだった。実際、用いたエンジインから、園児では難しいけど、化学者は、様々な可能性のある化合物を想像できる。にも関わらず二種類である。しかもそれら表面での反応生成物は、予測していなかった化合物である。これらへのパスは、溶液中では高いエネルギ障壁がある一方で、表面の銀原子と分子の相互作用が、予期していない化学反応を促進した可能性がある。今回の成果を基に、AFMは、動的挙動の解明にも、指導的に、利用されるものと思われる。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 June 3, p. 7.

DOI: 10.1126/science.1238187

13.6.27

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異なる光の波長で 

 有機金属触媒のヒドロホウ素化や他のタイプの反応の反応速度を制御することができる[1]。これによって、単一の触媒を使っても、光スイッチを切り替えることで違った生成物を導くことも可能にする。UT AustinChirsらは、苦しみながらかどうかは知らないが、光応答性部位を有するN-複素環カルベン配位子を調製した。ここではNHCの二つの炭素上それぞれに、チオフェンが3位で結合している。ここでUVライトにさらすと環化反応が進行し、NHCの電子供与性と触媒活性が低下する。一方で、可視光照射で開環が進行し、NHCの電子供与性と触媒能が向上する。すなわち閉環と開環が、いい感じで進行して、活性がチューニングされている。この光変換型NHC金属錯体は2009年香港のグループによって提案されてはいた[2]。類似の反応があるのもの、今回の報告は、NHCを使うことによって金属触媒反応を制御する最初であり、配位子の電子供与能を修正することによって、それを行った最初の例である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 27, p. 40.

DOI: 10.1021/om400348h

[2] DOI: 10.1021/ja808791e

13.6.26

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ビアリール骨格は

 抗生物質、液晶、不斉合成における配位子など、広く利用されているものの、光学的に純粋な誘導体を得るためには、多段階合成あるいは効率的ではない分割に依存している。その中で、こんな方法があり〜うるのかというビアリール合成法が開発された[1]。従来のアリール環をカップリングさせる方法は避け、N-NあるいはN-Oのような弱い結合を形成し、シグマトロピー転位を利用する。ヒドラジンのそれぞれの窒素に、ナフチル基2位を結合させる。これをキラルリン酸触媒を使って転位させている。別の方法は、1900年代に開発されたインドール合成をビアリール合成に応用している。いずれもコンピューター化学も利用して、キラル選択性を最大限にしていること、また反応の基本様式は、古くから知られた伝統的な方法で、遷移金属触媒を用いる必要もない。ただしヒドラジンを使った系では、ジアミノビナフタレンを、へたれんように合成しなくてはいけないとのことである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 27, p. 40.

DOI: 10.1021/ja401709k, DOI: 10.1021/ja400897u

13.6.25

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古代エジプトの革

 今と変わりがあるかどうかを知りたい。とりわけ色彩を反映する色素を特定したい。この種の分析には、表面増強ラマン散乱が使われている。ただし材料の表面から必ずしも適切にサンプルをとりだすことができなかった。特に油状や不溶性化合物の取り出しが鍵であった。そこでレーザー照射による方法が開発された[1]。革を小さな真空箱に入れて、顕微鏡を使って、レーザーパルスを照射する部位を特定する。ついでレーザーが材料の数マイクロメートルを気化させ、ナノ粒子の上に沈殿させる。そこでラマン散乱による測定を行った。たとえばエジプトの革から採取したサンプルには、赤色レーキ、これは西洋アカネの根から取り出される赤色染料を、難水溶化したものであるけど、それが金属に結合していた。ここで金属は革へのなじみを向上させている。この手法によって、他のタイプの難溶性のサンプルの分析がさらに拡大するものと期待されている。レーザーをleather(革)に照射する詳細が述べられていた。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 11, p. 27.

DOI: 10.1021/ac400440c

13.6.24

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ブラキシズム

 マルクスらが起源の主義とは違う。歯を食いしばるほどではないけど、上下の歯がこすれたり、歯ぎしりが高じると歯が減る。歯が粉になることが口内で進行する。その「け」があると歯科検診で指摘を受けた。ブラキシズムで、自分の気も沈む。普段の生活で、知らず知らずに、上下の歯の噛み合わせが過ぎているため、それを見合わせる必要がある。これが進んだ事例を専門の冊子で見せてもらった。力が入り過ぎて、歯が真ん中で二つに割れている様子など、痛ましい。でブラキシズムの改善、ブラッシングがよいというお話はなかった。まず唇は閉じて、口内で上下の歯の間に隙間をつくった状態を意識して心がける。熱い戦いを観戦している時や運転中も要注意。できるだけ「ぽか〜ん」がいいと思われる。またパソコンに集中しているとき、歯を強く噛み合わせる状態が続く。なのでディスプレイの横にメモ書きを貼っておいて、意識をキープしておくことも一つの方法らしい。歯の浮くような自分へのほめ言葉でも書き留めておくといいかも。

13.6.23

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ゲートシステム更新の

 芸当がどんなふうかはわからない。ただ大学構内に入るところに設けられたバーを上下させるシステムが新しくなって、その工事も始まった。それに伴って磁気パスカードがICカードと交換になる。希望者はその場所まで赴く必要がある。静寂が保たれている事務室、担当の方が、新しいカードと小さな説明書を準備しておられる間、「磁気カードが、じきに使えなくなるので」とつぶやいた。一瞬、顔がほころんで、少し間があって「今のは、シャレですか」「はいそうです」近くで聞いていた別の方、この短いやり取りに、大いにうなずかれた。静寂の室内のその空間だけが、ほがらかな笑いで、しばし満たされた。「交換に来られた方には、是非そうお伝えください」「はい」「気がつかれた方は、シャレ心のある方です」で研究室に戻った。この話、彼らのICカード受取日を確認しながら学生さんにも披露。ほぼ瞬時にある学生さん、「言われた時は、I see.で」と返し技。カードの裏にもメモっておきたいほどの出来映えである。カードで頭も稼働している。

13.6.22

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光照射下

 しっかりと化学反応を媒介できるため、酸化チタンは光触媒として、殺菌消毒ガラスや他の表面、水から水素を発生させる場合など、広く応用されている。数年前、研究者らはナノクリスタル状の酸化チタン合成にフッ化水素酸を使い、最も活性の高い表面をさらしたところ、相当に触媒活性が向上することを発表した。結晶面は化学的には同じであるかもしれないけれども、構造や電子的な違いは、表面エネルギーや触媒活性の点で違いを生み出す。酸化チタンのいわゆる001面は、他の面に比べて活性が高いことが知られており、HFの使用はこの面を増加させるからだとされてきた。今回X線回折を利用した分析と001面の反応性の解析を行ったところ、 001面であってもフッ化物を除去すると活性は低下した[1]。表面に結合したHFが酸素分子の吸着を増加させ、それが光によって放出される電子を捕捉し、反応性向上につながることが提案された。すなわち反応性向上の酸化チタン、発端は、表面残渣である酸でした。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 27, p. 10.

DOI: 10.1021/cs400216a

13.6.21

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キラリティーを

 決めるきらりと光る新しい方法が開発された[1]。これまで、旋光度、振動円二色性スペクトル、ラマン分光などを測定する方法が知られていたが、これにマイクロ波分光法が加わった。これは回転状態間の転移エネルギーを測定しており、従来法に比べて、より高い感度と、混合物の中の標的とする化合物に対して、高い選択性を示す。たとえば1,2-プロパンジオールのようなサンプルを冷やした気相に、二種類のマイクロ波電場を照射する。この電場は、違った方向に分極しており、分子の双極子と相互作用し、別の方向にマイクロ波を放出する。鏡像異性体の場合、三次元のうち、二つの双極子は、全く同じ強度と向きである一方で、三つ目のそれは、強度は同じだけど、反対方向である。この位相の特性が絶対配置の決定に利用される。加えて、放出されたマイクロ波によって、化合物が同じであるかを判断でき、強度から、鏡像体過剰率も推定できる。ただし室温から始めて、急速に7Kまで冷却した方がよい。それによって得られるより大きなシグナルに、うなることになる。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 27, p. 7.

DOI: 10.1038/nature12150

13.6.20

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グローバルリサーチカウンシル

 (Global Research Council, GRC)という評議会がある。およそ70の国の研究費を支援する政府機関の代表者が、ベルリンで529日から3日間会合を持った[1]。このカウンシルの関心ある話題が、ジャーナルのオープンアクセス化であり、三つの原則が公表された。研究者がその成果をオープンアクセスのジャーナルに掲載することを促す。それによって成果の認知度を向上させる。研究者らが、公開された成果を無料で利用できるようにする。である。GRCは政府の活動とは関連はないけれども、協力しながら、研究のクオリティ向上を目的としている。実際これを促進するには、大学、図書館、学術会、出版社など様々な関係者との連携が必須であり、今回は、そのスタートラインに立ったばかりである。さらに研究費の授与のもとになる成果に不正があった場合にも、迅速に対応するなどの、研究の公正さに関する取り決めも行われた。研究者や研究機関が、研究の公正さに責任を持つのは当然ではあるが、資金を提供する機関も、支援した研究が高い水準のものであることを確かめる責任がある。これらは法的に規定されたものではないけど、GRCは世界の80%の公的に支援された研究に資金を与えている機関の代表である。「話を聞くかん」と皆が集まるはずである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 June 3, p. 8.

13.6.19

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グラフェンは

 価値のある材料である一方で、製造コストが高い。それに対して、安価な化学プロセスで、植物の廃棄物をグラフェンのようなナノ材料に変換できることが報告された[1]。すなわち炭素ナノ材料を使って、超コンデンサ(supercapacitor)と呼ばれる素子、あたかも「電子が中で混んでるでっさ」という素子だけど、それをつくり、電気エネルギーを素早く勢いよく放出させることに成功した。実用化されている超コンデンサは、自動車のブレーキ系で、使われているが、活性化された炭素が使われている。一方で実験用のそれは、グラフェンを使い、より多くのエネルギーを蓄積することができる。研究者らは、麻の繊維質の廃棄物で、植物の皮のような部位を、180 °C24時間加熱し、得られた炭素化された材料を、水酸化カリウムで処理し、温度を700-800℃まで上昇させた。それによって材料がナノシートに剥離した。これによってつくった超コンデンサは、1 kgあたり49kWを放出した。ちなみに商業用の電極は、17kW/1 kgしか、でん局面である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 20, p. 31.

DOI:10.1021/nn400731g

13.6.18

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成長調整植物ホルモンである

 エチレンを、果物、野菜、花は放出している。一方でこのエチレンが、一連の植物の老化を促進してしまい、より多くの二炭素化合物を放出する。そのままにしておくと、冷蔵庫の中でさえも、わずかな量のエチレンが、植物を腐った農産物に変化させてしまう。それに対して北海道大学のチームは、これのナノスケールでの解決法を開発した。メソ多孔性シリカに担持した白金ナノ粒子は、エチレンを容易に酸化する。少量のこの触媒を使って、研究者らは、0 °C50 ppmの濃度のエチレンの99.8%以上の酸化を達成している。これは、これまで報告されている結果と比較して、低温でのエチレン酸化の最も高い変換率であると、研究者らは述べている。なおこの系では、エチレンは一旦ホルムアルデヒドに酸化され、それが一酸化炭素と水素、さらに二酸化炭素と水に酸化されているが、そのうち、COの容易な酸化が鍵である。

 冷蔵庫には、エチレン入れんぞう(こ)と、シリカで、しっかりガードしたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 20, p. 31.

DOI: 10.1002/anie.201300496

13.6.17

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中部国際空港に戻る

 先生は必ずそこで、ラーメン店に顔を出すという。ヨーロッパ線は概ね朝の到着、機内での朝食を控えてそれに備える。未だ開店せずというときにも、しばらく待ってその美味に浸る。帰国したときのなんとも言えない緊張感を一挙にほぐすには、ほぐされた麺も絶品である。今回は国内線、しかも出張先のラーメンも独自である。なので先生は、小牧空港を選択された。結果として、中部国際でのラーメンの麺は免除である。二年ほど前か、奇遇にも先生と、成田—中部便をご一緒して、ラーメンにおつきあいした。でも自分の儀式は終わらずに、夜到着に限って、缶ビール二本に、和風おつまみが手にある。電車の中。一本は空港から名古屋、もう一本はそこから岐阜までというお話を、そのときにしたらしい。確かである。ただし350 mL二本だったはずだけど、先生の記憶では500 mL二本になっていた。話が大きくなっていた。つぎは多分、3本。ビールの本数も、伸び〜るである。

13.6.16

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国内線保安検査場

 止められる物品はないものとゲートを通る。画面でチェックしている担当者が「ソムリエナイフ」という。国際線では必ずトランクにしまっていた。なので「しまった。いつもの一本」いつもの如く鞄にトラベルキットを詰め込んで、今回小さなバッグなので、機内持ち込みにした。日本の担当者は丁寧である。「ここで、放棄されますか」と聞かれた。「ソムリエは、それ無理だえ」とは言わない。15年ほど前、オランダの酒屋でワインを買った。ワインオープナーも欲しいと言ったところ、これを使えと、プレゼントされた逸品である。預けることはできないかとお聞きした。再び手荷物カウンターに行っていただくことになるとのこと。専用の箱、お土産にドーナツを買ったときのようである。どうなっていると思う間もなく、手続きの手順も教えていただいた。しかも検査場の外まで案内してもらった。しばらくして再び検査場、先ほどの担当者が軽く会釈する。こちらも「お手数をおかけしました」と、搭乗口に向かった。

13.6.15

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海岸に打ち寄せる波は

 貝殻やサンゴを、時には三々五々、集めては、複雑な模様を描くことができる。それに対して同様の優れた能力を発揮できる化学者はほとんどいない。ここに今回、非常に小さな美しい花模様を彫刻することに成功したチームがある。自然界では、貝殻を成長させる過程で、突然パターンを、たとえば点から波模様に変化させる事ができる。温度、pHや他の因子がそれに影響する。同様の変化を求めて、ガラスの顕微鏡スライド、塩化バリウムやナトリウムシリケートの水溶液とペトリ皿でカバーしたビーカーがまず用意された。二種類の化合物、SiO2BaCO3が溶液からスライドに沈殿した。pHや温度を変化させるとこれらが成長し、数十マイクロで、花になったり、幹様のらせんや、優美な球状にも変化した。この成果に、生体材料の研究者は、ビーカーを開け閉めして、空気から二酸化炭素を入れるという単純な操作にも関わらず、模様の複雑なことに、衝撃を受けている。今後、マイクロ流体工学も使って、同じ模様をなんども描くことができるようにしたいとのことである。マイクロで苦労した成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 20, p. 9.

DOI: 10.1126/science.1234621

13.6.14

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人間の身体は

 外科的に移植されたものを異物として認識し、こら〜と言わんばかりに、コラーゲンの厚い層が、それを取り囲む。いわゆる、異物反応は、免疫系の反応である一方で、医療の移植を妨げる。それに対して新しいタイプのヒドロゲルでコーティングする移植が、この反応を抑制できることが報告された[1]。今回のそれは、両性イオンであり、陽および陰電荷の両方の部位があって、カルボキシベタインが基本である。まずポリ(カルボキシベタインメタクリレート(PCBMA)を、CMBAモノマーと5%CBMAを架橋剤として用いて合成している。この新しいヒドロゲルは、従来品と比較して、タンパク質や細胞の吸着は、より少ない。ネズミで行った実験で比較すると、新しいものは、三ヶ月後でも、通常の細胞組織に近かった。別の研究者らは、あくまでネズミによる成果で、実際に人ではどうかは不明であると指摘しているものの、研究者らは、これは「臨床移植でも、いいんでしょう」という、いい感触を得ており、そちらへも迅速に移行できるとしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 20, p. 9.

DOI: 10.1038/nbt.2580

13.6.13

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地球の衛星である

 月の昔の岩に温存されたマグマの泡には、かなりの量の水が含まれていることが、2年前に発見された。このことは月がいつも乾いていたという考えとは相反している。それを発見した研究チームが今回、月の水と地球の水の同位体成分から、これらは共通の水資源由来であることを発見した[1]。これは、アポロ15号および17号の任務として、地球に持ち帰った月の石を、必死かどうかは別として、分析することで明らかにしている。地球の水は、木星近くの小惑星から降ってくる隕石である炭素質コンドライトによって、種づけされたと信じられている。月は、火星の大きさの小惑星が、発生期の地球に衝突してでてきた破片から成長したとされているため、新発見は、地球が衝撃の際には、すでに湿っていたことを示している。研究者らはさらに、水素のような月にある、より軽い元素は、衝撃の際に、沸騰して月から飛び出したのではないかという考えも、再考する必要があるとしている、最高の仮説を導くために、さあ行こう。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 13, p. 41.

DOI: 10.1126/science.1235142

13.6.12

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雲は

 太陽の放射、地球からの熱を捕捉することから気候の上で、重要な役割を果たす。雲がいかに発生するかを理解することは、気候への効果をモデル化する際のポイントである。今回の研究では、大気中にある鉱物の粉末や金属粒子が、高い高度で行動する、でも、かたすみにあるかもしれない、かすみのような巻雲を発生させるのに必要不可欠であることを明らかにしている。研究は巻雲の氷の結晶を、2002年から2011年の間に、航空機でもって測定を行った四回の結果に依っている。研究者らは、雲に近い空気中の粒子の多くは、硫酸塩や有機炭素でつくられていることを発見した。また雲が形成する段階では、氷は、アルミノシリケートダストや金属粒子の凝縮する傾向がある。また、なんの化合物もない状態で均一に氷が形成される機構よりも、不均一な、氷の核形成機構が支持されている。あたかもそれは、結晶化を促すために、化合物を溶かしたビーカーの壁に小さな傷をつけるようにである。曇りのない、お話でしたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 13, p. 40.

DOI: 10.1126/science.1234145

13.6.11

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大過剰の酸素存在下で

 燃料を燃焼するように設計された自動車のエンジンは、他の通常のエンジンよりも、より高い燃料効率を達成することができる。ただし通常の触媒的な浄化技術では、このいわゆる希薄燃焼型エンジン(リーン・バーン・エンジン)の排気では、窒素酸化物(NO, NO2, NOx)を、化学的に還元することは容易ではない。確かに大量の酸素存在下での還元は、いかんげんなあ。そこで研究者らはこの課題に取組み、今回、PdをドープしたLaSrCoO3材料が汚染物質をトラップし、取り除くことが報告された[1]。反応は窒素酸化物を酸化し硝酸塩とし、定期的に除去し、それを炭化水素で還元する。ここで炭化水素は、エンジンを燃料希薄モードから燃料リッチモードに一時的に切り替えることで、慎重に発生させる。このシステムは、これまでに研究されていた希薄NOxトラップ材料とは対照的に、硫黄による被毒でひどくなることもなく、高価なPtを使う必要もない。加えて、以前ものは、尿素のような還元剤のタンクを搭載しなくてはいけなかったけれども、その必要もなく、より単純で、より小さくしうる。希薄燃焼が、気を吐く日も近いか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 13, p. 41.

DOI: 10.1021/cs400136t

13.6.10

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エブセレン

 セレブの持ち物でもない。ベンゾイソセレナゾリル骨格を有し、Se-N結合の化学的な切断と形成が魅惑的である。しかもセレン原子が組込まれた脳卒中の治療薬として、業界では第一製薬が扱い、国際会議でもその還元作用や機構が議論されてきたけど、ブームは去った。そのエブセレンがMolecule of the Week (ACSのホームページ, June 3)に登壇している。これは生体系で過酸化水素やヒドロペルオキシドを捕捉するのに加えて今回、イノシトールモノホスフェターゼ抑制剤であることが明らかにされた[1]。しかも躁(そう)病のネズミのモデルでは、リチウムと同様な効果があることも発見された。ただしリチウムは副作用もあって、これに代わる薬剤の探索が必須であった。そこで現在、臨床試験も行われている。かつては躁鬱病と呼ばれ、今では双極性障害と呼ばれている疾病の治療薬としてである。オックスフォードから、臆することもなく開示された成果。そう言えば英国開催のセレンテルル化学国際会議(http://www.cf.ac.uk/iccst12/)も近い。

[1] doi:10.1038/ncomms2320

13.6.9

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昭和20年頃の

 ラジオ番組、米軍の管理下にあった[1]。それらは、米国のカバーも多かった。二十の扉(twenty questions)、私は誰でしょう(What is my name?)などである。そこで、日本独自の番組を制作したいという機運の中、昭和241月から「とんち教室」が始まった。その司会(先生)であり続けたのが、青木一雄アナウンサー。昭和14NHK入社、昭和16年出征。通常これでアナウンサー生命が終わるが、現地では、声を出して活字を読みつつ、アナとしての基礎体力を維持した。日本に戻ってしばらくして娯楽番組に抜擢された。その次の年、番組をオンエアすることは決まっていたものの、内容はまだ、ないようだった。制作スタッフの熱い議論。「猫の足音を聞かせよう」とは言え、実際には猫の足音はしない。落語家の師匠「サンマを取って逃げていく話をでもすりゃあ」ピアノの先生「鍵盤の上を軽やかに走らせる」などと真剣に議論した。猫に悩んで、寝込んだ人もいたかもしれない。ともかく、なぞかけなどの言葉遊び、日本語ならではというものも組み入れた。昭和43年まで番組は続いた。

[1]「土曜あさいちばん、68日」から

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発表会場は

 秋葉原。きばらないように注意したい。でも週初め大阪で、京都、東京へと、移動も続き、連日深夜までの白熱した議論に、身体がへばっている。サッカーの試合があった夜も、そのお店では、テレビ観戦できるモードだったけど、大切な話をしつつ、客人の歓声やため息で、試合経過を、軽快ならぬも、予想していた。今回、発表時間は短いものの、中身の濃い質問への対応も必要である。終わった後の脱力感、そう言えば、ここ秋葉原にはAKBなんとかのお店やガンダムコーヒーショップみたいな場もあったはずである。それらを忘れて帰路につく。今時の新幹線、窓側の席だとコンセントが使えて、車内でインターネットサービスの利用も可能ではあるものの、選んだ列車は、少々旧型だったので、それらはなかった。それでも同様のスピードで名古屋駅に到着。ラッシュの時間である。快速に乗るつもりだったのが、エキストラの料金を支払えば、座席が確保される関ヶ原行きの電車が待っていた。誘惑に負けた。いわゆるホームライナーである。幸い「ほ〜ムライやなあ〜」とたぶん誰にも気づかれずに、岐阜まで戻った。

13.6.7

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世界中のバンパイヤが

 乾杯やと、喜びそうなニュース。医学研究者らは、若い血液を投与することで、年取った心臓に若さを取り戻させることができることを、発見した。ただし少なくともネズミである。特に、若いネズミの血液の中の、成長区別因子(GDF11)と呼ばれるタンパク質が、しばしば心不全に至る、心臓肥大とよばれる心臓の状況を逆にすることができる。抗老化化合物を調査するために、研究者らは、年老いたネズミと若いネズミの血管をつなげ、それらの血液を共有できるようにした。この循環システムで四週間、過ごしたところ、年老いたマウスの心臓肥大が劇的に改善した。ついでプロテオミクス法を使って、若いネズミの血液にあって、年とともに失われる、若返りタンパク質を同定し、GDF11が不老不死である薬であると特定した。さらにこのタンパク質を直接、年老いたマウスに注射したところ、同様の効果があった。もしタンパク質が人間でも同様に働けば、この発見は、心臓治療に新しい道を開くであろう。「若者の生き血を」と、血迷いませんように。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 13, p. 40.

DOI:10.1016/j.cell.2013.04.015

13.6.6

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合成のための道具の

 一つ、クリック反応、びっくりっくするほど、高い効率、選択性、収率で分子を組み立てることができる。この反応は、有機合成で利用されることに加えて、医薬品化学、表面科学、高分子化学、バイオ関連の応用でも利用されている。今回、中国の化学者らが新しいクリック反応を、道具箱に加えた[1]。炭酸銀が、末端アルキンとイソシアニドとの環化付加反応を触媒し、ピロールを与える。ピロールは天然物、生理活性を示すアルカロイド、薬剤、農芸化成品などで、よくみられる基本骨格である。反応は、80 °CN-メチルピロリドン中で、最も効率よく進行し、様々な置換様式のピロールを与える。面白い(ソフトバンクのわんちゃんね)ことに、炭酸銀以外の銀塩である酸化銀、硝酸銀などは、勝算なしで、効果がなかった。合成の観点から、この例は、極めて単純で、効果的で、原子効率の高い方法で、置換ピロールを良い収率、高い選択性で与える系であると、研究者自らが述べている。ピロール合成のロールモデルが如しなり。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 13, p. 40.

DOI: 10.1002/anie.201302604

13.6.5

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大気中のエアロゾル粒子は

 化学反応を引き起こし、その大きさや吸湿性を変化させる。これらの特性が、誰も、得せいへんかもしれんけれど、放射線の散乱や、雲の明るさや寿命を変化させることによって、気候に影響を及ぼす。これらの粒子に硫酸塩が加わることは、極めて重要な過程である。今回研究者らは、遷移金属イオンが鍵となる酸化剤として、雲の中にある大気中の鉱物ダストの中の、SO2SO42-に変化することを正確に示すことに成功した[1]。ドイツのシュマックにある、いわゆる地形性の雲を研究対象とした。そこでは空気が上昇し、山に沿って登っていくときに、雲が生じる。そこで雲の向かい風と追い風の中の、硫黄同位体比が比較された。それによってSO2H2O2O3あるいは遷移金属で酸化されるかのいずれかを類推することができる。その結果、遷移金属は、都会ではSO42-の形成には1%程度関わり、いなかでは、いいなかのようで、58%程度関与していた。このことを気候モデルに組込めば、エアロゾルによってもたらされる気候の寒冷化の地理的分布にも変化をもたらすであろう。大気研究に、期待(き)も膨らむ。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 13, p. 40.

DOI:10.1126/science.1230911

13.6.4

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eel がそこに

 いる」と言っても通じはしないけど、即座に「ウナギ」という日本語が飛び出した。海に生息するのか川なのか。天然か養殖か、興味は尽きない。日本には、7月下旬ウナギを食べる日がある。これは全国行事、でもこの食べ方は、この地方に特有であるなどと紹介をする。日本の子供たちが習う典型的な歌は何か。米国だと、たとえば「Old MacDonard had a farm E-I-E-I-O」である。日本の童謡がすぐには出て来ない。でも動揺は隠さず会話を続ける。すると先方が「さくら、さくら」はどうかなと、メロディーを奏でる。実は小学2年生の娘、学校で世界の国々について、ある一定期間ずつ教えてもらっていると言う。その中の日本の文化。盆栽に、日本風の小道具を使って日本庭園も自由につくる。最後は「俳句」という言葉もMikeから飛び出した。しかも少女がそれを詠む。たぶん英語である。「Wind•••」という句らしくて、2年生にしては、それなりに良い出来映えだと、父親の顔になっていた。

13.6.3

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ライフに

 ライフルが必要かどうかはわからない。ただしそれを購入、所持することは、財布と同様に、だれしも自分で選ぶことができる。自動車運転には、免許の取得が必要でも、この場合には要らない。でその拠り所が、合衆国憲法修正第2条であると教えていただいた。ネットでは周知だけど「規律ある民兵は自由な国家の安全保障にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」とある。合衆国の成り立ちを考えると確かにそうである。それから230年以上たった。それでもある団体は、発砲によって、悲惨な事件が起きるのを防ぐためにも、教員は銃を所持すべきであると主張する。この団体は、政治家にも多大な影響力を発揮する。一方で日本国憲法には、同様の条項はない。かの団体からの要求があるとも聞かない。でも改正要件が緩和されて、たとえば「国民が、護身のための道具を保有し・・・」みたいな文言が入るとすれば、如何せん、である。

13.6.2

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化学結合には通常

 一つあるいは対になった電子を共有する二つの原子が含まれる。それでも化学者たちは、それにあがなう分子の発見も継続している。たとえば、三原子が二電子を共有する、多中心結合を有する電子不足分子がある。12年前、四原子が二電子を共有する、これまでにはない異例の分子が発見された。これを発見したMiller先生らは、未来志向で、ある例外に思いあたった[1]。それはTCNEラジカルアニオンを含む遷移金属から磁気材料を調製している時だった。結晶構造では、二つのTCNEユニットは、中心のC-C結合が2.9オングストロームで二量体を形成する。この距離は通常のC-C結合長さの1.5よりも大きい。けれども、結合相互作用できる範囲内である。加えて二量体構造は、構造、スペクトル、磁気特性の観点から、水素結合より強い、四炭素-二電子結合であることが類推された。それでも実際そこに結合があるかを知るために、我慢しながら、Ramanスペクトル測定を行い、しんどいことも忘れて、振動屈曲を解明し、確かな証拠を得た。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 May 6, p. 34.

DOI: 10.1002/anie.201207813

13.6.1

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