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2013年9月

1923年

 C&ENの前身「Industrial & Engineering Chemistry」が発刊された。それから90年、この間、化学は、地球に幅広い効果をもたらした。多くは、よりよく、時に悪い影響もあったが、常に何かを変えてきた。今回90にちなんで9つの話題を取り上げる。1. Bonding:肥料、医薬品、繊維や染料の大量製造は、化学合成によってなしえた。一方で、化学結合の概念化は未だに課題である。2. Antibiotics:抗生物質の発見は数えきれないほどの人の命を救った。一方で1980年代以降、効果的で新しい抗菌薬が登場していない。3. Nanotechnology4. Structural Biology5. Computational Chemistry6. Instrumentation7. Catalysis:原油を様々な利用できる成分への変換を可能にした。始まりは第二次世界大戦で枢軸国の戦闘機より、連合国のそれが速く飛ぶことを可能にした高いオクタン価の航空燃料製造、8. Plastics20世紀半ばのこの発見は、我々の生活を、より明るく持続的なものにした。その反面、いつまでも環境中にそれらが残る課題が残る。9. Environmental Awareness:製品の環境に対する影響を考えることは主流ではなかったが、いまでは製品のライフサイクルや気がつかない影響を、考えるようになったけど、前途遼遠である。のnineである。これ以上ないんか、どうかは記されていない。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sep. 9, p. 27.

http://cen.acs.org/ninety.html.(フリーアクセスできる)

13.9.30

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亜酸化窒素

 N2O、笑気ガスとして知られている[1]。歯科治療の時に吸引すると陶酔した感覚を得ることができる。化合物の反応性の低さが、これを効果的になし得る一因である。一方でこのガスは温室効果ガスの一つであり、その軽減と、水素、一酸化炭素や他の低分子ガスと同様に工業的な合成に反応剤として利用したい。笑気ガスの活性化に賞金がかかっているわけではないけど、スイスローザンヌのK. Severin先生と共同研究者らは、それを目指し、N2ON-N結合にNi錯体の挿入、これを二つに切断する方法を開発した。ここではN-複素環カルベンの高い反応性を利用してN2Oを切断している。すなわちカルベンがN2Oの末端の窒素をつかみ取り、分子を捕捉、N-N結合が弱くなって、Niシクロオクタジエン錯体の攻撃を受ける。切断されたNNO部位は結果として生じたNiニトロシル錯体から解放されるか、別の段階を経て有機分子に移動する。こりゃあいいど〜う。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 9, p. 24.

DOI: 10.1021/ic401524w

13.9.29

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過去10年

 新規な、さらには改良された合成法が次々に報告されることで、有機フッ素化学(Organofluorine chemistry)は、発展してきた(flourishing)[1]。それでも挑戦すべき課題の一つは出発化合物の予備的な官能基化を経ないで、C-H結合を直接C-F結合へと変換する方法の開発であった。これを受けてアリル基のC-Hフッ素化のための触媒反応が開発された。Pdスルホキシド-Crサレン共触媒を用いて、Et3N•3HFを安価な求核的フッ素化剤として利用し、フッ化アリルを導いている。反応は中程度の収率、高い選択性で、分岐アリルフッ化物を与える。この成果は、医薬品の発見や製造、構造材料やPETのための低分子トレーサー開発などを支援しうる。たとえば研究者らは、フッ素原子をステロイドに導入することで、医薬品候補の後期の段階での導入に適用できることも示した。チームリーダーであるDoyle先生に、今度要るフッ素化合物をお願いしてみよう。

[1] Chemical & Engineering News, September 2, p. 42.

fluorineflourishをかけている、多分)

DOI: 10.1021/ja407223g

13.9.27

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短い方がいいのは

 結婚式のスピーチと○○の丈」と言う。では分子中の原子同士の非結合性距離の長さはいかに[1]。以下にそのことを記す。しばらく前、研究チームは、大環状双環性in,in-ビスホスフィンを設計し、分子中の二つの橋頭位のリン原子同士の距離が、異常に短くなっていることを明らかにした[2]。今回さらにこの研究を推進し、in,in-ビスヒドロシランを合成した[3]。二分子のトリフェニルヒドロシランが持つフェニル基のオルト位同士がSCH2基で連結して双環性化合物を形成している。その中の二つのケイ素上のSi-H結合がお互いに向き合った状態になっている。込み合った分子は、Si-Hの水素同士の非結合性の距離が1.56 Åであった。これまで結晶学的に明らかにされた非結合性距離の最も短いものは、かご型シクロデカンの中の1.617 Åで、それよりも短く、新記録である。この研究の価値をC&ENが聞いたところ「安定な分子構造の限界を探索、現代計算化学のために校正できる点を提供すること、非天然物合成のための方法論を探索すること」とPascal先生らは答えられた。これは助かる。

[1] Chemical & Engineering News, 2013, September 2, p. 42

[2] DOI: 10.1021/ ol400728m

[3] DOI: 10.1021/ja407398w

13.9.26

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前回はフィレンツェにて

 開催された国際会議。第十回のISCCは同志社大学寒梅館が会場である。主催者に配布してもらった袋には、「八重さんボールペン」もあった。大河ドラマで話題である。「ゾウの時間、ネズミの時間」随分と以前に話題になった新書。生物の大きさとその時間スケールは、もっと以前から考察されていたらしい。時間を空間で制御する。含蓄のある冒頭の講演。2010年から2013年の間に、この分野に多大な貢献をした5名の先生方がこの世を去られた。前回はオープニングを飾ったSchlosser先生もその一人である。若い頃にはWittig反応の開発に尽力されて、のちにSchlosser塩基と呼ばれるアルキルリチウムとブトキシカリウムとの混合系の重要性を示された。この単純な組合せがすごい。二日目の最後を飾ったSniekus先生、スニーカーで足下を固めていたかどうかの確認を怠った。御年77歳。芳香環の特定の位置から有機リチウムを発生させる。長年探索されている系に磨きをかけた成果に冗句。「村上春樹」さん[1]も登場した。

[1]ジャパンタイムズ2009.11.27の記事。

13.9.25

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氷はなぜ浮くか?

 400年前、フィレンツェにて、ガリレオと彼の説に反対するL. delle Colombeとの間で、三日間、議論が展開された[1]Colombeの基本的な前提は「氷は水が固体になったもので、その密度は水よりも大きい。浮力は形だけの問題であって、密度とは関係がない」であった。実際には、氷が水に浮くことは密度と関係があって、水は、固体の方が液体より密度が小さい珍しい例である[2]。このときガリレオはアルキメデスの密度理論、すなわち「水中では、水の重さに相当する浮力を受ける」をもとに議論を展開した。ただしガリレオ自身が、浮かれてしまったわけではないが、「物体の浮き沈みは、その形によって影響をうけない」とまで論を展開した。ガリレオは表面張力の説明をしなかったが、ここでも実際には、物体が液体の表面と接する程度は、浮き沈みと関連がある。Colombeは議論の最後の日、球状と薄い板のような黒檀(木の一種)を持ち出し、水に入れた。いずれも同じ密度で、一方は沈み、一方は水に浮いた。で浮力と密度は関係ないとして、閉会に至った。「これでへいきかい」とガリレオに聞くこと、今ではかなわない。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 26, p. 28。ちなみに、これを記念して7月には、水に関わる様々な、今でもわからない疑問について24名の研究者らが集い、会が開かれた。

[2] 他には、ヒ素、ビスマス、ガリウム、シリコンなどがそうである。

13.9.24

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カフェインと安息香酸の

 共結晶を、研究者らは長年追跡している[1]。この組合せは、たとえば頭痛薬として可能性がある点から興味が持たれていたものの、共結晶の形成ができていなかった。カフェインは他の様々なカルボン酸と共結晶を形成するが、安息香酸とだけはだめで、ここで即、降参しかけていた。そこで国際共同研究チームがプロジェクトを開始させた。まず計算の結果は、対象となる組合せは安定な共結晶を形成することを示していた。ついで、カフェインとフッ素化安息香酸との共結晶をつくり、これを目的とする組合せの種結晶として利用したところ、安定な結晶が析出し、X線構造解析によって、その会合様式が解明された。いったん種結晶ができれば、今までは不成功だったような場合にでも、結晶化に成功した。もしかしたらフッ素化共結晶が、検出限界以下の量でも存在すれば、種結晶として作用しているのではないかと考えられた。またカフェインと安息香酸の組合せは、なぜ捕まえることが難しかったのか、今後明らかにしようとしている。昨日も今日も、共結晶作成に邁進である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sep. 2, p. 42.

DOI: 10.1039/c3sc51419f

13.9.23

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花火は

 ナビによるガイドはなくても美しい。ただしその燃焼する色成分の多くは、過塩素酸混合物で、一般には、買えんそうさんだけど、環境負荷もある。それに対して、軍事使用や一般の花火大会で利用される花火製造術へ、よりましな化合物を提供すべく研究が行われてきた[1]。たとえば科学者は最近、窒素原子が多く組込まれたニトリイミノテトラゾール塩を合成し、過塩素酸の代替物として報告している。ただし窒素原子が多く含まれた塩は、市販ではなく、またそれぞれの花火の色をつくるには、個別の金属塩も必要である。そこで、容易に利用できて、しかも窒素原子豊富な無水5-アミノテトラゾール(5-ATZ)が、赤や緑の炎を出す用途に利用できることが、今回発見された。硝酸マグネシウム、バリウム、あるいはストロンチウムを含む5-ATZの混合物のうち、二つの混合物が、緑や赤を発することができ、従来のものと同等のパフォーマンスで、しかも安定性も高かった。花火素材ハ、5-ATZに、ナビき始めるか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 26, p. 25.

DOI: 10.1002/chem.201300779

13.9.22

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式年遷宮

 を記念して、伊勢神宮に22名が出向いた。宇治山田駅から自由行動。一部のグループは「お参りは外宮から」に従ってそちらに向かった。参道は直線がベースのような雰囲気、後に参拝する内宮はゆるやかな曲線がベースな風とは違う。社殿の上にある丸い棒(鰹木というらしい)は、外宮は奇数で、内宮は偶数。その両端にある千木、その木の端の切り口も、外と内とで違う。このわずかな違い、気がつかないものが他にもあるに違いない。式年遷宮は西暦700年以前には始まったらしい。その時の人たちの繊細かつ大胆な感性に触れる。樹齢数百年を超える木々と、長年手入れしてきた人々とのシンクロがつくる空間。涼風に少しの暑さ。手順に従って参拝して、願いを託す。時に岩がつくるスポット。外宮、正殿近くには亀石。カメラで切り取ってもかめへんしと、大勢の参拝客も集まる。大雨の後の五十鈴川、いつもの涼しさ、穏やかさ、でも水かさ、流れの速さ、流木の多さ、違っていた。

13.9.21

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分子ユニットを

 秩序だった方式で拡げることで形づくるネットワークによって、様々なタイプの金属有機構造体(MOFs)を導くことができる。それに対して、金属フリーの、共有結合で繋がった有機構造体(COFs)の例は多くなかった[1]。ただしこれらの構造体のいくつかが有する高い多孔率とガス吸着力は、製造業者にとって、ガス分離や貯蔵のために、工業的利用価値も高く、COFsでも興奮できる。ただしMOFsと違ってCOFsは、結晶化が難しいため、不可逆の共有結合によって自己組織化してしまい、粉になった化合物に変化してしまう。その中、許容性のより高い結合を利用することで、結晶化を改良した方式で行うこともでき、ネットワークを形成させる方法が示された。すなわち可逆の自己付加重合によって、モノマーと、テトラヘドラルに配向したニトロソ基との間に共有結合を形成させ、巨視的な、アゾジオキシCOFsの単結晶が調製された。それを示す写真は、その見事さを如実に示している。ニトロソ基とモノマーの、モノマ〜ネのできない組合せが鍵のようである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 26, p. 24.

DOI: 10.1038/nchem.1730

13.9.20

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Gilman反応剤

 であるR2CuLi、反応性が高く、これまで中間体の存在を類推するにとどまっていた[1]。それに対して、THFを溶媒に用いた系で、一連のキュプラートカルボニルπ錯体を安定化させ、すでにNMRデータを得ることに成功していた。さらに今回、それらのうちの一つをグラムスケールで合成。これもすげ〜るだけど、さらにX線構造解析に適した単結晶を成長させることにも成功した。カルボニル化合物としてフルオレノンを用い、そのC=O基のπ軌道が銅に配位した三中心結合が観測されている。この場合、同情する必要はないけど、銅上には、メチル基が二つ結合している。またLiへは、C=O基の孤立電子対が配位し、さらに三分子のTHFも配位していた。この構造は、これまでNMR や理論計算によって導かれた構造予測と一致していた。さらにX線とNMRの結果を合わせることで、これらの中間体の不安定性を巧みに利用し、触媒反応のチューニングにカスタマイズもできる。そのときは「まずいず」じゃあなくて「うマイズ」で

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 26, p. 24.

DOI: 10.1021/
ja404105uDOI: 10.1002/anie.201303783

13.9.19

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ライム病

 自分が病になったわけではない。クロアシダニが媒介する感染症である。米国では昨年3万件の報告があったけど、その数が一挙に増大している[1]。ライム病は、生物が媒介する疾病のうちで、米国では最も数が多いが、その数が低くカウントされてきた。これまでは医師によって報告された分のみであった。今回、2200万の医療保険の請求、臨床検査室さらには、不特定多数の人を調査した結果も合わせて、その数が見積もられた。伝染病学では、ほとんどの疾病に対して10%程度しか報告されないのが通常である。さらにライム病の数を推定することを難しくしているのは、感染した初期の段階では、間違ってはいるものの、陰性を示す点である。ただし感染したまま放っておくと、身体的に弱体化し、神経系で重篤な問題を引き起こす可能性がある。米国での実際の数は年間30万を超えると予想されているが、ダニ媒介の疾病に関する研究費の増額を、ある非営利団体は、働きかけている。さらに、ダニ媒介でも、ライム病と似た疾病もあり、これらも対象にした対策も必要である。いやダニと言わずに、ダニの数を制御するための研究を推進するべきである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 26, p. 8.

13.9.18

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メチルグリオキサール

 2-オキソプロパナール(MGO)は、生体細胞でつくられるよくある代謝物だけど、いったい(しゃ)、糖尿病のような疾病でどう働くのか、その役割もあまり理解されていない一方で、化学療法に対して抵抗性がある[1]。その中今回、MGOに選択的に結合できる分子が開発され、それは蛍光発光し、MGOをモニターできる。これによって、MGOの生化学的な挙動解明の研究への着手も可能とする。蛍光センサーである分子は、BODIPY(MBo)が母体であり、そのBODYには、メチルジアミノベンゼンが組込まれた、一酸化窒素(NO)を検出するマーカー分子の誘導体である。研究者らは、細胞培養でのセンサーの効果を公開するために、MBoを生体細胞に浸し、ついでMGOを加えた。その量が増えると蛍光強度も、より明るくなった。しかも、他のジカルボニル化合物よりもMGOに対する選択性も高く、NOとの干渉も非常に小さかった。ただし実用化には、さらに改良する必要もあるらしい。MGOに対して、まごまごしていた時代は終わったか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 19, p. 25

DOI: 10.1021/ja406077j

13.9.17

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東京駅到着

 ピンクの制服に身を整えた清掃スタッフがスタンバイしている。「そこに、いたんバイ」と気がつく。概ね降車し終えた車内に一斉に入る。座席にかけられたシートを外す。床の清掃をする。もとの位置に戻っていない椅子を戻す。その向きを180度回転させる。ただし90度付近で一旦止めて、間を清掃する場合もある。複数のスタッフが、あらかじめ決められた役割をこなす。時間短縮のための練習もあるらしい。時に座席が湿っていたり、汚れていたりするときもあるけど、30分もしないうちに折り返す時には、その清掃は間に合わない。「汚損していて利用できない」と記された紙が、そこにはあった。普段は、車内で検札担当かと思われるスタッフが何かを持ってきた。すると座席のお尻の部分だけを取り外した。そこに新しいものを取り付けて作業完了。「これで大丈夫です」椅子も丈夫である。見ていた乗客の方「すごいですねえ、簡単に取替えできる椅子、い〜すねえ」とかなんとか、感嘆されていた。

13.9.16

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ポイントが

 たまったらしい。特典がある。ウキウキして部屋に入る。シャワーと洗面台共通のノブが新しい。360度どちらにも動きそうなタイプである。だいぶ苦手である。そういえば、前日のホテルのシャワー室には、おへそと、そこから10 cmほどのところに出っ張りがあった。なにかわからずにひねって、お湯を出したら、そこからもお湯が吹き出た。使いこなせればジャグジー気分を満喫できるも、操作に慣れるまでに、存分にお湯を浴びてしまって、ぐジャグジーなムードで終わった。今回のノブ、慎重に向こう側に倒すと、その角度で水圧が決まる。左右の動きが、温度の、音頭をとることもわかった。その中、なんだか夜中に電話である。フロントからである。フロに入っていなくてよかった。支払いについてだった。確かにチェックインの時には、途中で終わったかもしれない。次の日でよいという。で次の日、同じ方が受付で働いておられた。ハードな勤務でも、おもてなしのハートの心意気だった。

13.9.15

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自分の化学は

 これです」という強い気持ちで発表に挑む。口頭発表希望で申し込んでも、発表枠が限定で、そこに入り込むのも縁と運である。なので、うんと準備する。概ね研究室の若手スタッフが登壇する。14分のパフォーマンスの準備も周到である。新反応発見、その適用範囲、反応経路の毛色を伺う実験事実を述べて、スキームをつくる。それに基づいて、量論反応を実施、でも予想とは違った結果を得る。謎解きに聞き入るも、わかったことと未解明なことがないまぜで、聴衆も宙に浮かされる。それでもその慎重さに、こちらも別の案を模索していると時間切れで演者交代。これでええんじゃとも言えずに聞き始める。改めて質疑応答。鋭い質問に、用意してきた資料を出しては、先人の結果を紹介しながら応戦。質問者もポジティブな提案をして、時間切れとなった。座長がさらに質問を許可すると、手が挙がった。しばし議論継続。座長の合図で、人の移動が始まった。記念大会ということで、外国人特別講演二人、先生方の講演にも圧倒される。それでも一般講演の素晴らしさにも、浸らしてもらった。

13.9.14

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二つのタイプの結晶

 一つは赤でもう一つは青。単一の生成物かと思われるが、これがトラブルの兆し、不純物かを思われる。それとは対照的に今回、この観察から、アゴスティック結合を含む錯体の異性化をより深く、解明するに至った[1]。長崎名産、焼アゴスティックとは縁はないけど、アゴスティック結合は配位不飽和な遷移金属がC-H結合と三中心二電子結合で相互作用する結合であり、均一系触媒反応過程の重要な錯体の一つである.研究者らにとって長年、この結合を含む錯体は溶液中で速い異性化をすること、それぞれの異性体がアゴスティック結合を有することは、周知であった。非常にめずらしいケースとして、溶液相の異性体として同定できていた。今回報告された系は、予想外にも、(なので予想を装うことはなかった)異性化によってアゴスティックMo-ホスフィン錯体は二つのタイプの結晶に至った。それぞれの異性体は、区別できる分子軌道配置を持ち、結果として違った色を呈している。アゴスティックもすご〜くステッキである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 19, p. 25.

DOI: 10.1002/ anie.201305032

13.9.13

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金触媒の優れた能力

 何度も登場する。解禁された高い触媒能は、さらに進化を続けている。今回、国際研究チームが、金が炭素にバインドする様子を研究したところ、金触媒に隠された驚きの結果に出会った[1]。有機金錯体において、炭素と金の結合の強さと結合の多重結合性の間には逆の相関があった。そう感じた人は、いたかもしれないけど、実験的には最初である。Au-C結合を見るために、AuIとマグネシウムアセチリドとを使い、質量分析における、エレクトロスプレイイオン化によって錯体を合成、それを光電子スペクトルで検証した。さらに錯体をモデル化し、実験結果とコンピュータの結果を比較した。最も興味ある結果は、ClAuアセチリドの中の金炭素単結合は、ClAuと炭素との二重あるいは三重結合よりも強い結合であった。この強い金炭素結合は、触媒的なクロスカップリング反応の過程で必要なアルキン中間体を容易に形成する金の能力と符合している。そういえば「万金丹」という薬があったか、全然関係ないけど。

[1] Chemical & Engineering News, 2013, Aug. 19, p. 24.

DOI: 10.1038/ncomms3223

13.9.12

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灰皿に捨てられた

 タバコの吸殻「はいざよなら」とはいかない。そのタバコのフィルター部分に残る口紅。何かを暗示している。「その場に探偵、行ったってい」のシーン。犠牲者、犯行現場、二人の間の身体的接触などを伺わせる。ただしドラマと違って、実際にはそれが何を示しているのかを調査するには限界がある。犯罪科学者の手法は現状、エネルギー分散型X線分析やHPLCなど、サンプルの破壊的検査に依存している。それに対してラマンスペクトルを利用すれば、吸殻を証拠品用のビニール袋から取り出すことなく、わずかに残る口紅のブランドや色を区別できることが報告された[1]。すなわち研究者らは、ティッシュ、タバコの吸いさし、織物繊維、スライドグラスについた口紅の特徴的な振動の特徴(fingerprints)を検出し、証拠品のなかの繊維やプラスティックからの干渉を最小限にする条件も決定している。さらにこの口紅分析から、他のタイプの化粧品の同定にも拡大したいとしている。活躍するラマン、ウルトラマンにパワーアップか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 19, p. 24.

DOI: 10.1039/c3ay41274a

13.9.11

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エマ、NMRデータをここに

 それらはどこに?この化合物は元素分析を作成しておいて」という奇妙なメモが、掲載論文のsupporting informationに記されていた[1]。このフレーズは英語を母国語としない人が書いた紛らわしい表現であるかもしれない。あるいはデータをねつ造する指示文かもしれない。このメモに目もくれない人もいれば、ChemBarkはこれをハイライトし、以来、化学のブログで取り上げられるようになり「村井君のブログ」まできた。この論文は、エナンチオ選択的なPd, Pt触媒に関する内容であり、Zurich大学の研究者らの報告である。Organometallicsの編集委員長であるGladysz先生は「投稿は通常通り厳格な審査過程を経ており、そこには混乱はない。ただし著者らが審査員のコメントに対処する際に、以前のバージョンのsupporting informationを添付していたためであり、論文の編集部で間違いが行ったわけではない」としている。研究者らはすでにスイスから、すいすいと他の国に移籍しているが、その人たちに、生のデータの投稿を促し、精査を開始しようとしている。結論が出た段階では、訂正か撤回か、どちらかの結論になるはずである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 19, p. 8.

Emma, please insert NMR data here! where are they? and for this compound, just make up an elemental analysis...

DOI: 10.1021/om4000067

13.9.10

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ヴァーモント・ヤンキー原子力発電所を

 2014年恒久的に停止することが、所有者であるEntergyから発表された[1]。これは今年になって発表された五つ目の原発停止の発表である。これによって620メガワットの発電所の継続に関して、市当局、州政府、住民との間で、長年にわたって鬱積してきた議論に終止符を打つことになった。原発反対活動家の声は、2011年に福島第一原子力発電所で起きた惨事の後、さらに大きくなる。実際このバーモントの施設は、それに酷似している。二年前、原子力規制委員会(NRC)は、40歳になる発電所をさらに20年運転できるように、資金供与を行った。それに対して州議会は、継続を停止する法律を制定した。が運転は継続し、連邦裁判所は州の決定をくつがえす。その中Entergyは、より高い維持費と、安価な電気料金、天然ガス発電との競争などから、今年になって原発停止に至った四つの例[2]を鑑み、停止の結論に至った。NRCによれば、これで米国の原発停止の数は34になるとのことである。

 我が国でも、7年後を見据えて、いかがですか。いかんがですかねえ。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 2, p. 14.

[2] ウイスコンシン、キウォ—ニー発電所;フロリダ、クリスタルリバー3原子力発電所;南カリフォルニア、サン・オノフレ原子力発電所の二つのユニット

13.9.9

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本四架橋

 活況を呈したい瀬戸大橋。瀬戸内海上を、坂出までおよそ10 km、いくつかの島も土台になってつながる。その近くを遊覧する観光船。船頭さんの先導する語りを聞きながら、島々を眺める。児童、先生が四人ずつだった島の分校、いまは廃校だと言う。橋の下をくぐる。透けた天井越しに橋の裏側が見える。世の中には下から見上げたほうが素晴らしいものが二つある。そのひとつである。でも、はしたないことはしない。近くに見える鷲羽山ハイランド「雨模様で、お客さんが入らんど」でないことを祈っていると、およそ1時間の遊覧が終わった。随分なお年の様子だけど、操舵と語りでお元気である。自分たちもそうありたい。ついで児島ジーンズストリートに立寄る機会も得た。「児島で、こじんまりしたお土産を」と考えるものの、高級ジーンズにTシャツ、気持ちがジーン(ず)となって、財布も縮んでしまった。知人にもこのことを話した。衣料品も量販店が盛況なご時世とは、対照的な町並みだった。最後は「葡萄や海鮮も買いんせい」というお店も経て、帰路につく。今回も、大変お世話になりました。

13.9.8

 

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協同金触媒が

 これまであまり検討されていなかった反応を触媒することが報告された[1] Nolan先生らの成果が、載らんじゃあなくて、ここに記載されている。二核水酸化金である[Au(NHC)]2(OH)[BF4]NHCN-複素環カルベン)が、三級アルコールやフェノールのアルキンへの付加を促進する。研究者らはまず「この化合物は二つの異なるタイプの触媒の如くに作用するのではないか」と考え、アルキンのヒドロフェノキシル化に適用した。さらにBF4の部位がアルキンと反応し、金アルキン錯体を形成し、水酸基の部位がフェノールと反応し、金フェノキシ錯体を形成すると考えた。この考えを様々なアルキンやフェノールに適用し、金触媒が、あたかも「今日、どう」と誘い合いながら、協同的に振る舞っていることを発見した。反応では様々なアリールビニルエーテルを、中から良収率で与える。金触媒化学に関する新しい知見を提供するとともに、別の新反応開発へも扉を開いたと、著者らは述べている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 August 12, p. 27.

DOI: 10.1002/ anie.201304182

13.9.7

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医薬品として

 探索される構造修飾した天然のペプチドや人口ペプチドでは、フッ素化されたアルケン部位は、アミド部位の代役として作用することが、有機フッ素化学者の間では認識されていた。フッ素原子は。水素結合能力が減少し、ペプチドミメティクスの安定性や生理活性を改良できる。そこで、そのフッ素化アルケニル部位をペプチド構成要素、ステロイドや別の生理活性化合物に、合成の後期の段階で導入する便利な方法が開発された。研究者らは、N-スルホニルヒドラジンとケトンとを縮合させてビニルリチウムを発生させ、プロトン化によってアルケン生成物を与えるShapiro反応を改変することで、フッ素化アルケン合成を検討した。すなわちH+に替えて、F+源としてN-フルオロスルホイミドを利用して、フッ素化アルケン生成を達成した。もし天然物や医薬品として重要な合成中間体の中のケトン部位の数がわかれば、今回の反応の出発化合物として、様々な「フッ素化アルケンたくさんあるけん」化合物を導くことができる。Altmanらの成果である。とまらんとできた。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 August 12, p. 27.

DOI: 10.1021/ol401637n

13.9.6

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シンクロトロン

 フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)を利用することで、非侵襲で、標識や造影剤を使うことなしに、三次元のイメージングが可能になった[1]。この技術はコンピューター断層診断との組み合わせであり、同様の技術は、二次元のシンクロトロンFTIRとから、三次元の医療X線イメージ作成に利用されてきた。IRスペクトルからは化学的な情報を得ることができる。たとえばこの方法を使って、水酸基や炭化水素のシグナルをもとに、百日草や東洋のハコヤナギの細胞壁の構造を明らかにしている。さらに人の髪の毛のサンプルでは、中心の髄質には、皮質やリン資質が満たされたタンパク質があることをイメージ化している。またネズミの肺葉体を探索し、不均一な脂質の分布があることを明らかにし、それらは異なる細胞であると仮説をたてている。さらに火山ガラス片の分析では水の分布を解明し、これによって、着飾んていても、火山がどのように爆発したかの解明も可能になる。

これらいずれも、イメージングの名人グ芸かもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 August 12, p. 26.

DOI: 10.1038/nmeth.2596

13.9.5

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窒素原子が豊富な

 複素環化合物は、医薬品や別の生物活性分子の鍵となる成分である。ただしそれらが持つN-H結合のため、置換基を導入するには、窒素原子の保護、脱保護という面倒なプロセスを経る必要がある。それに対してBuchwald先生らMITチームは、アリールホウ酸の鈴木宮浦カップリングを保護しない含窒素複素環が有するC-Cl結合の切断を伴って実現した[1]Pd触媒前駆体によって、複素環内のハライドをなだめて、反応に関与させることができた。これによって、これでいいんだというインダゾールから、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インドール、オキシインドール、アザインドール、どれも人形とは縁のなさそうな、様々な化合物への合成経路を確立した。さらにインドールを含むキナーゼインヒビターを二段階で合成した。反応機構の探索結果は、トランスメタル化が律速段階であると結論づけている。これらの成果は、最適な反応条件と反応剤の組合せを選ぶ一助になるだろうとコメントされている。

MITチームの成果に、みっとれてしまったかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 August 12, p. 26.

DOI: 10.1021/ja4064469

13.9.4

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ジョン・コンフォース卿

 1975年、酵素触媒反応の立体化学の研究でノーベル化学賞を受賞された。その先生が「工業科学者にとって理想の反応は、使われなくなったバスタブで、文字が読めない片手の男によって遂行され、100%収率と純度で、配水管から生成物が回収できるようなものである」と、冗談まじりに話されたことがある[1]。実際にはこのハードルを超える反応はレアものであったが、今回、スコットランドのチームが、すこっとその型の反応を達成した。彼らは、溶媒を使わない連続水素化反応を行い、ほとんど純粋の鏡像異性体のみを製造することに成功した。同様の水素化はこれまで、超臨界二酸化炭素を必要としていた。溶媒の使用量の少ない反応は、コストと廃棄物の削減を可能にする。まずキラルなロジウム触媒は、リンタングステン酸を使ってアルミナに担持。ついでそこにあるアルミナをみんな10 mLのスチールカラムに詰め込み、反応基質と水素とをポンプで押し込んでやる。室温5気圧で、S-ジブチル2-メチル琥珀酸エステルを反応容器から98%eeで得た。生成物は45 ppbのロジウムを含んでいたが、これは反応容器から、しみ出たものである。研究者らはさらに安定な触媒を開発中である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 August 12, p. 26.

DOI: 10.1002/anie.201302718

13.9.3

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一日200 mg以上の

 カフェインを、妊婦さんは摂取しないほうがよいと、医師は警告している。これはコーヒー1.5杯分に相当する。これ以下のレベルの刺激物だと、早産や他の妊娠合併症を引き起こすことはないとされている。その中研究者らは、およそ200 mgのカフェイン摂取した場合の、胎児への影響や、母乳からの影響を探索した[1]。すなわち後尾をしてから子ネズミが乳離れするまでの間、その親ネズミにカフェインを与えた。その量は人が一日3—4カップのコーヒーを飲む量に相当する。多分アメリカ人の平均的な飲む量である。その結果、カフェイン摂取の親ネズミから生まれた子ネズミは、ある種の神経細胞の移動が遅いことがわかった。一般に脳の発達では、あるニューロンが脳の特定の領域に生じた後、それが移動しなくてはいけないが、ここではそれが阻害されている。カフェインによるフェイントである。またカフェイン摂取系の子ネズミの脳は、発作を引き起こす化合物を与えた場合、より興奮しやすい。これらの結果は、発達曲線におけるわずかな変化は、脳の構造や機能に大きな変化をもたらしうることを示している。ただしこれはあくまでネズミの話ではあるが、カフェインを常飲している人の乳児への影響も調査する必要がある。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Aug. 12, p. 6.

DOI: 10.1126/scitranslmed.3006258

13.9.2

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東京駅午後10時

 新幹線のこの改札口、見送っていただいてお別れしたこともあった。食とワインそれに音楽まで堪能させてもらって、未だにお礼ができていない。俺いのドジである。この日はそこをしばし逆向きに歩く。東京駅でも人が多くない時間帯があった。丸ノ内線、春樹先生の「アンダーグラウンド」が頭によぎる。平穏な地下道を移動してフォームに降りた。東京駅で乗込む人は少ない。銀座、縁がない。でも銀座のママと呼ばれる方が書いた書物は手にしたことがある。人を見抜いている。車内は普段の混雑さに戻った。霞ヶ関から国会議事堂前、行政府と立法府である。ここから飛んできたご指示で、月曜日朝までに資料作成に至ることもある。赤坂見附、ここで青豆見つけのはずであるが、宿は赤坂のホテルではなかった。少々後悔。特別な階段があるという四谷から、三丁目。夕日君ではない。でもそこから暑さの残る道路沿いを7分ほど移動したところに、宿があった。ここやどと、ホテルを示す表示の蛍光灯、昭和の臭いである。

13.9.1

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