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2013年10月

長時間のフライト

 つらいときもある。ネズミも同様であることがわかった。げっ歯類と人類は、体内にある24時間分子時計あるいは24時間周期リズムの奴隷であり、これによって、睡眠と活動のパターンが制御されている。その中、日本の研究者らは、ネズミを時差のシフトの負の効果から解放することに成功した。遺伝子工学によって、げっ歯類の脳にある、対になった受容体タンパク質V1aV1bを取り去った。これらは神経ペプチドであるバソプレシンにバインドする。ついで、通常の明暗のサイクルから時間を8時間ずらした。それでもネズミは活動と体温調節のサイクルの調整を、遺伝子工学を施していないネズミと比較すると、半分の時間で行っていた。研究者らは、頻繁に旅行する人や、昼夜逆転して働いている人など、癌や他の疾病のリスクが高い人の治療法を、この成果から導くことができるかもしれないと述べている。ただし、タンパク質バソプレシンは、血管収縮や身体の水分保持の制御も行っているため、それを直接標的にするのは難しいかもしれないと指摘もされている。実際冒険である、時差ぼけ解消は。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Oct. 7, p. 44.

DOI: 10.1126/sci ence.1238599

13.10.31

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毒を持ち

 たくさんの足に、長さは8 インチもある中国の赤頭のムカデは、恐ろしくて、避けたい生き物である。なので「はむかうで」という人はあまりいない。しかし新しい研究結果は、この嫌な生き物の毒に含まれるペプチドが、慢性の痛みを治療できる候補であることを示していた[1]。これまでFDAが認可した医薬品のうち六種類は、様々な毒で発見されたタンパク質あるいはペプチドから誘導されたものである。たとえば鎮痛作用を示すPrialtは、イモガイで見つかった化合物を合成したものである。ついで、先の中国のムカデの鎮痛効果が調べられた。研究者らは、奇妙な生き物の毒から46種類のペプチド残基を単離した。ネズミを使った実験では、その鎮痛効果は、モルヒネのそれよりも高く、副作用もなかった。ペプチド配列も、これまでのものとは異なっていた。研究者らは、化合物は選択的に、痛みと関わっている、特異な電位依存性のナトリウムチャンネルを抑制すると考えている。ムカデ毒でお得です。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Oct. 7, p. 44.

DOI: 10.1073/pnas.1306285110

13.10.30

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非芳香族化合物である

 たとえばテルペンのC-H結合を、本来出発化合物が有する性質に頼らずに、酸化する触媒が開発された。合成の遅い段階での誘導体化は、創薬分野でリード化合物に様々なオプションを付与できる点でも重要であり、今回の発見は。これまでの方法では酸化できない部位を酸化していることからも、それに適うものである。数年前White先生は、この課題にファイトし、Fe(PDP)と呼ばれる酵素様の安価な触媒を開発、複数のC-H結合を有する脂肪族化合物のある特定のC-H結合の酸化を達成した。この種の結合は一分子の中に、多く存在し、それらを区別して強い結合を切断することは困難である。それを一部達成したFe(PDP)ではあるが、それは最も電子豊富で立体的に混み合っていないC-H結合の酸化のみが進行する。そこでその触媒に四つのCF3基を組込むことで、今回の発見に至った。たとえばイソロイシン誘導体のカルボニルβ位のC−H結合のC-OH結合への選択的変換を達成している。さらに抗マラリアや薬であるアルテミシニンを、触媒が触って、ミシン目を入れるが如く、特定部位が酸化されている。

[1] Chemical & Engieerning News, 2013 Oct. 7 p. 12.

DOI: 10.1021/ja407388y

13.10.29

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ハイパーハロゲン

 といってもハロゲン原子は、いっぱいどころか、それを含まない。ただしこの種の化合物は前例のない電気陰性度を示すために、そう呼ばれている。スーパーハロゲンに囲まれた金属で構成されている[1]。ハイパーハロゲンは、ロケット燃料や水素貯蔵材料として期待されるものの、その安定性を担保できてのことである。そこで米国の研究所と北米トヨタの研究所のチームが、その課題に取組み、安定なハイパーハロゲンの塩としてK[Al(BH4)4]を合成し性状を明らかにした。ここでAl(BH4)4-は、非常に高い電子親和性を有している。合成はAl(BH4)3KBH4とのカップリングで調製された。これまでの塩とは違って、これは154 °Cまでは安定である。研究は、新しい機能性材料を提供できたことに加えて、スーパーハロゲンやハイパーハロゲンを基にした新規化合物合成の合理的な設計には、計算化学の利用も有効であることを示している。しかもこれは○○ハロゲン研究に励んだ成果である。その後は、ハーゲンダッツで脱力感を。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Oct. 7, p. 44.

DOI: 10.1021/ jp407230a

13.10.28

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1999年

 討論会の開催をお手伝いした。会場は未来会館だった。村井君は今回もここを希望した。でも閉館だとのこと。でこりゃいかんと「国際会議場」を利用した。当時その会館の最上階にはレストランがあった。若い女性が、マネージャーかなにかで、切り盛りされていた。爽やかな応対で、学生さんや他大学の先生にも人気があった。同じ会館で開催した懇親会もお世話してもらった。それから13年余りが過ぎた。その方、今では、長良川沿いにある老舗旅館の若女将である。しばらく前にネットでおみかけして、「もしや」と思ったけど、お姉様かもしれないとも思っていた。今回その旅館を利用させてもらって、ご本人であることもわかった。長良川鵜飼が終わった週末にも関わらず、多くの客人で賑わっている。一時は利用客の減少もあったらしいけど、ここでも手腕を発揮されて、活況になったにちがいない。お目にかかることは叶わなかったものの、その後メールをいただいた。短い文章なるも、「登り鮎」の如く、奥ゆかしさと力強さを感じた。

13.10.27

 

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討論会が終わって

 しばし安堵感に浸って振り返った。参加人数は、自分たちも含めて391名、作為的ではない。データを足し算した結果である。北は北海道、南は九州、30を超える都道府県から参加していただいた。繰り返しだけど、寄附、広告掲載、機器展示で貢献してもらった企業の関係者。お土産もの販売。会議場の舞台担当にスタッフ。看板設置、印刷などの業者さん。タクシーには討論会の宣伝掲示。お陰で開催期間中は、聞かんでも討論会開催がわかった。観光協会のご尽力である。最終日には写真撮影もお願いした。共催していただいた学協会、隣の大学や本学の先生方に学生、研究室の学生。映画だったらクレジット・タイトル[1]になる。じっとしていても俳優さんから、関わった多くの人たちの名前が登場。これまではその多さに圧倒されていた。でも今回の討論会を無事お開きにすることができたのは、それに匹敵するほどの支援のお陰だったと、改めて実感した。時間の許す限り継続したい気持ちである。

[1]映画のラストシーンの後、延々と続く字幕。

13.10.26

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NASA惑星探査機

 キュリオシティは、この一年、火星の表面の化学的に複雑な地域の探査を行っていた[1]。この探査機は、これまで地球の外で展開した装置の中では、最も洗練されたそれらを搭載しており、これによって、岩を砕き、サンプルを採集、それを焼結、質量分析やX線装置に供することができる。多くの科学者が参画する国際チームは、キュリオシティに教えてィと、データをもらい、分析し、新発見をレポートとしてまとめた。以前キュリオシティは、昔の火星は、湿った穏やかなpH環境で、有機体にも適していたということをほのめかしていた。様々な多くの結果は、アルカリやバラバラになったマグマを検出したが、これはこれまでには見つかっていなかったものの、地球の火成岩とよく似ていた。火星表面を加熱したサンプルは、二酸化炭素、二酸化硫黄、水、酸素などの揮発性化合物を放出した。これらは惑星の大気にあったものの可能性もある。いずれにしても、これらのデータは、地球のお隣さん惑星について、これまでになかった理解をもたらすものである。

火星(Mars)について、ま〜ずま〜ずを、超えた成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 30, p. 27.

DOI: 10.1126/science.1244258

13.10.25

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プロポフォール

 2,6-ジイソプロピルフェノールは、手術の時に、静脈注射によって体内に注入される、もっとも一般的な麻酔薬である[1]。それは吐き気を引き起すことはほとんどなく、即効である。それでも時に低血圧や息苦しくなるという副作用を引き起す。そこで次世代プロポフォールをプロポーズすべく、研究が続けられていた。ただしプロポフォールがどのように作用しているかについての正確な情報もなかった。これまでの研究は、GABAA受容体と呼ばれるイオンチャンネルのサブユニットの間の部位に作用すると指摘されていたが、多くの証拠は間接的であった。今回の報告では、その部位は、チャンネルの膜貫通に関する部分と細胞外領域の間であることを示していた。これはプロポフォールと類似の生物活性を示し、光によって活性化できるラベル化剤であるO-プロポフォールジアジリンを開発することで明らかにされている。さらに研究者らは、動物で結合部位を変異させることで、活性にどう影響するかを解明しようとしている。

「麻酔薬で、まずい事態」にならないよう改良が続く。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 30, p. 27

DOI: 10.1038/ nchembio.1340

13.10.24

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少し遅れて

 大垣駅到着。ここでさらに西へ向かう列車は、階段を上がって降りた別のホームである。米原駅乗換、定刻通り。普段は降りない滋賀県内の駅で降りるため、窓の外をいつも以上に見ていた。この県では初めての出前講義。いままでのしがない経歴が解消される。JR西日本管内に入ると関西のムードが漂う。大垣から西に向かうごとに、うどんの味も違う。愚鈍な自分にもわかる。講義を始める少し前に高校に到着。生徒さんたちから一様に、屈託のない顔で挨拶をもらう。心地よさを感じて教室へ。講義を始めてしばらくして、講義場所である化学実験室の黒板横に、周期表大判サイズが掲示してあるのに気がついた。しかも最新版である。その前の版から、山中先生の顔写真が加わった。さらに114, 116番元素が、名前つきでリストになっている。当初そのハンディ版の入手ができなかった。そこで「最新版のそのサイズくださいず」とささやいていたら、縁あってプレゼントが届いた。唖然とすることもなく、それを高校生にプレゼントすることもできた。ここでもまたお世話になってしまった。

13.10.23

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クジラの耳あか

 が生きている間、層を形成し続ける。この現象は年輪と同様に、動物の年齢を特定するのに使われている[1]。今回この追跡方法を、汚染物質やホルモンの濃度を特定するのに適用された。ここではシロナガスクジラが持つ長年蓄積された耳あかを、対象としている。その中、研究者らが最も興味をそそられた発見は、クジラがおよそ9歳の頃、テストステロンが生じていた。これは性的な成熟の始まりを示している。ただしそのすぐ後には、ストレスホルモンであるコルチゾールが見つかった。オスであれば大筋、納得できる。成熟するとパートナーを捜そうとするけど、ともかく巨大なクジラ同士が、目くじらたてて戦うこともある。そりゃあストレスもたまるで、と類推されている。さらに今後は、博物館にある標本や船と衝突して絶命したクジラからのサンプルも分析し、人間の、クジラやエコシステムに対する影響評価に適用したいと研究者らは考えている。「耳あか蓄積、きみはあかんで」

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 30, p. 27.

DOI: 10.1073/pnas.1311418110

13.10.22

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抗生物質の

 豊富な備蓄があるにも関わらず、結核によって年間100万人以上の人が命を失い、菌は、最も新しい抗生物質に対しても抵抗性を示すようになっている。その中、研究者らは、ミコバクテリウム族(M)の結核菌に対して有望であるβラクトンとして知られている一連の環状エステル化合物を特定した。この場合、菌が生き延びるために必要な酵素を標的とするが、これまでの医薬品ではそれを対象としていなかった。まずM結核の非病原性類縁体に対して14種のβラクトンがテストされた。そのうち4つが、バクテリアの成長を抑制した。さらに最も可能性のある二つについて詳しく検討したところ、M結核そのものの成長も抑制した。新しいβラクトンは多分、損傷を受けたり、不必要になったバクテリアのタンパク質を分解し除去する働きのある結核菌の酵素と反応するのではないかと、酵素分析から類推されている。最も高い活性を示す化合物は、βラクトン骨格のカルボニルα位にベンジル基が組込まれ、これが活性と関連があるのではないかとも考えられている。この「ラクトンで身体も、楽やとん」と思える日も近いか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 30, p. 27.

DOI: 10.1021/cb400577b

13.10.21

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集まった採点用紙

 集計をする。発表資料、発表内容、質疑応答、項目ごとの評価点を加算する。お母さんにはお願いせずに自分たちですべて行った。合計点の高い順のリストを作成。賞を授与できるのは、対象学生十人に一人程である。リスト作成の結果は、上位三割程度にほとんど差がない。同じ発表を別の日に行えば、多分順位は入れ替わる。質疑応答の際の、ほんの小さな戸惑い、沈黙が、差をつけたのかもしれない。ここより上が受賞対象というつらい決断の後、賞状を作成してもらった。閉会式前に受賞者の発表と賞状の授与。名前を呼ばれた学生さんたちが登壇した。一様に、なんだか達成感がにじみ出ている。賞状を読み上げて手渡した。受け取る純粋な笑顔に圧倒された。「おめでとう」という気持ちと、「ほんのわずかな差で、会場で悔しい思いをしている学生さんのことも忘れないで欲しい」という思いが錯綜した。

 研究室のメンバー、サポートをお願いした先生方に学生さん、展示、広告、寄付などで支援していただいた企業、会議場のスタッフ、発表申込、参加していただいた方々、多くの人たちのお陰で討論会を閉じることができた。来年は札幌、「さっぼろ」じゃなくて、参加しようね。

13.10.20

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懇親会の打合せ

 ホテル一階のレストランの担当者と話す。まずは式次第。委員長の挨拶の後に、乾杯。その間に別の方の挨拶を挟むかは、この時点では未定。「はさみてい」と思ってもお願いする人の都合次第である。担当者:「お祈りをする場所を設ける必要はありますか。ベジタリアンの方は」と聞かれる。今時は、その対応もできる体制らしい。国際化である。「乾杯のときのビールは、アサヒかキリンでよろしいでしょうか」「他も用意できますか」「事前に教えていただければ」「じゃあ、来年この会は、札幌開催なので、札幌ビールでお願いします」とここで、来年に無事パスできますようにと願う。実際の会場、立食形式にセットする。司会者にマイクの場所。机にテーブルクロスをかぶせるか。苦労することはないが、床と色調を合わせたテーブルはそのまま使ったほうが、柔らかさが引き立つ。その後ビュッフェ形式の料理を紹介していただく。飲み放題で、日本酒、焼酎、ワイン、ソフトドリンクを用意。加えて地酒五種類をお願いした。参加していただいた皆さん、楽しんでいただけたでしょうか。

13.10.19

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おはようございます

 岐阜大学の村井でございます。今回討論会の開催にあたって、沢山の方々に口頭発表、ポスター発表を申し込んでいただきありがとうございます。この複素環化学討論会は。複素環化学というくくりの中、理工系や薬学系の先生方や企業の方が一同に会するという他にはない討論会です。・・・・・・

 なおこの会議場メインホールですが、先の月曜日は、さだまさしさん、来週月曜日は松山千春さんのコンサートです。講演者の方々には、自分がシンガーになったつもりで、「そんなことシンガナー」とは言わずに、登壇していただければと思います。

・・・・・同様のドジが、これから3日のうちに色々あるとは思いますが、そのときの苦情は、是非私村井まで、お伝えください。最近物忘れの数も多くなってきたので、(身体に応えないという意味で)、ちょうどいいかと思います。

 他にもお話したいこと山ほどありますが、委員長、もういいんでちょうと指摘を受ける前に、最初の座長にマイクを渡します。是非三日間、満喫していただきますよう、お願い致します。

1017日開会の討論会での挨拶でした。

13.10.18

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ステロイド

 畜牛に与えられて成長を促進させる。でもその結果、それらが飲料水にも混入する可能性がある[1]。それらは野生生物にとっては、いわゆる環境ホルモンになりえる。ただし酢酸トレンボロンから生じるような代謝した生成物のいくつかは、直ちに分解して、問題はないと信じられてきた。でもそれほどは速くはないと、ある研究者らは述べている。実験室あるいは広場の実験でも、17α17βトレンボロンは、日中、光誘起の水酸化によって分解するが、暗くなると元の化合物に戻ることがわかった。つまりトレンボロンは、ぼろんぼろんはならない。再生反応の駆動力は、ステロイド骨格で共役トリエノン系が再構築されることであるかもしれない。同様な再生は、経口避妊薬として使われるステロイドや、違法だけれども、ボディビルディングに使われるステロイドでも起こる。これらの結果は、ステロイドからの汚染物質は、再生の可能性があるために、環境リスク評価のモデルの一環として取扱うべきであること示している。どこでも捨てろいど、ほるもんにしてはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 30, p. 26.

DOI: 10.1126/
science.1243192

13.10.17

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トリフルオロメチル化のフロー化学

 芳香族あるいはヘテロ芳香族化合物の特性を微調整したいときにはしばしばトリフルオロメチル基(CF3)で、それらを着飾る[1]CF3基は溶解度を変え、医薬品の活性を向上させることができる。CF3基を環に組込むにはいくつもの方法があるけど、フロー系、(風呂桶を使うわけではない)で行われた例はなかった。ただし既存のいくつかの方法は位置異性体を与え、別の系では。取扱いや加える方法に注意を要する反応剤を必要とする。そのため単純で大量合成にも適用できるCF3化が探索されていたところ、研究者らは、これまでに得られた成果を組合せて、フロー系でのCF3化が開発された。その結果、ほんの数分でCF3化された芳香族やヘテロ芳香族化合物を合成できるプロセスは(こうあんねんで)と考案されている。銅が媒介するクロスカップリング反応は。アリールヨージドを出発化合物に、安価で取扱い容易なトリフルオロ酢酸カリウム塩をCF3源として用いている。この反応の旗ふろ〜役は、Buchwald先生とChen先生である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept 30, p. 26.

DOI: 10.1002/ anie.201306094

13.10.16

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理論化学は

 それに見合うだけの敬意を必ずしも表されない。でも今回のノーベル化学賞は違った[1]Karplus, Levitt, Warshel先生ら[2]は、複雑な化学系の多重スケールモデルの開発者として、高く評価されている。40年ほど前、三人は化学反応やタンパク質のホールディングプロセスのモデル化のために計算手法の開発を始めた。量子力学と分子力をQM/MMと呼ばれる技術として組合せ、今では生体分子をシミュレートする最高水準の技術である。この手法の美しさは、量子力学のサイズの制限を克服し、巨大なタンパク質の環境をも見ることができる点である。Karplus先生とWarshel先生らは、1970年代初頭に共同研究し、たとえば、有機分子であるジフェニルシクロヘキサトリエンのスペクトルをシミュレートしている、さらにWarshel先生, Levitt先生らは、そのシステムをより大きな系に拡大できる「生体分子QM/MM」をリリースされた。厳格なアプローチであるQMと、系を単純化して表現するMMの融合をなし得たことで、実用レベルにまで到達しており、たとえば身体の中で医薬品が、タンパク質と、(たとえ、わんぱくであっても)どのように相互作用するのかも見ることもできる。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Oct. 14, p. 5.

[2] Martin Karplus 1930年、オーストリア生まれ、Michael Levitt1947年、南アフリカ生まれ、Arieh Warshel1940年、イスラエル生まれ。稀な組合せである。

13.10.15

 

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タバコが

 跋扈していた時代が終わり、どこの国でも、規制が厳しい。その中、米国ではFDANIHが、行政科学のタバコセンターを14箇所、2013年に設立することが計画されている。53百万ドルを投じてである。センターは、タバコ製品を使うことと関連するリスクをより深く理解するための研究を行い、その結果、タバコの規制の方針を打ち出す一助となる。タバコ会社によってFDAに支払われているお金がこのセンターを資金的にサポートする。センターは、NIHの疾病予防オフィスが統合し、三つのNIHの機関:国立ガン研究所、ドラッグ依存研究所、心臓・肺・血液国立研究所が運営する。センターで推進される研究は、タバコ製品の多様性、中毒、毒性、健康への悪影響、マーケティング、経済、政治の7つの領域が対象である。FDAは5年間で273百万ドルを供与し、センターを支援する予定である。タバコは人類史上も、古いし、効用はこうだったのよ〜という部分もあればと願う。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sep. 30, p. 23.

13.10.14

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ドラム・カートリッジ交換で

 ドラマが始まった。印刷ができない。来週の討論会にお配りする資料である。予定の業務もストップした。交換部品、手元にない。「メーカーは、おめ〜か〜」とホームページを発見して電話。別の部署から連絡があるとのこと。しばらくして「どんな書類と一緒にお持ちしましょうか」「納品・見積・請求書でお願いします」「それでは何時になるかわかりかねます」書類を作成する別の人がいるらしい。「製品のお届けだけですと、今日でもお伺いでできます」「3時間ほど後になりますが、その時間でも、そちらに配送の者は入りそうでしょうか」と聞かれる。その時間帯、大学はロックされていない。19時半頃、別の学科の事務の方から電話があった。「ドラム・カートリッジお届けの業者さんが、来られていますが。・・・これって検収が必要ですか」「お願いします」その事務の方、駐車場で迷っておられた業者さんを案内、時間外の検収の後、村井君の部屋に、しかもまたその業者さんをトラックまで案内されるとのこと。気がつけば何度も「ありがとうございます」が、飛び出ていた。

13.10.13

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OPWC(化学兵器禁止機関)は、

 ハーグを本拠地とする国連と関連する団体で、化学兵器やその前駆体の生産、貯蔵、利用を禁止する条約を管理している。そのOPWCの行動計画が国連安全保障委員会で9月27日認められたが、それはシリアの化学兵器の生産能力を111日にまでに破壊すること、また2014年半ばまでに、すべての化学兵器を除去するという内容である。それに従って、OPWCは、ダマスカス入りし、1000トンとも推定されている死に至りかねない化学兵器貯蔵庫を発見し、排気し、破壊するという困難な任務を遂行するための本部を設置し始めた。化学兵器には、マスターの講義でも特徴を紹介したマスタードガスや神経ガスサリンも含まれると考えられている。まずシリアの軍需物資や施設を、知り合い、確保する必要がある。伝統的に、化学兵器の処理は、その国内あるいは兵器貯蔵庫の近くで行う必要があり、OPWCは、指導はするが、破壊すること事態はシリア政府の責務である。今後,化学軍需物資の破壊に経験を持つ、米国やロシアの支援も必要になるだろうとのことである。

 この記事がC&E News[1]に掲載された折しもその週、OPWC2013年ノーベル平和賞を授与された。

[1] Chemical & Engineering News, 2013, Oct. 7, p. 10.

2013.10.12

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抗生物質が

 自ら更生して、その効果が消滅すれば、医薬品に対して耐性をもつ菌が発生するという課題を解決できる糸口になる[1]。その中、光を利用することで、修飾したキノリノン抗生物質の活性を制御することができることが明らかにされた。研究者らは、キノリノンにアゾベンゼン基を結合させた。それはアゾベンゼンがトランス配座の場合には、不活性である一方で、紫外線照射、アゾベンゼンの光異性化で、シス配座になると、キノリノンが気乗りして、活性を示す。アゾベンゼンは可視光でトランス体に戻ることができる。研究者らは、このオン・オフを少なくとも三回繰り返すことができることを示し、それでも抗生物質は活性を保ったままだった。しかも光によって必ずしも活性をオフにする必要はなく、数時間後、熱的にトランスにトランスファーする。この自己不活性化によって、環境中に代謝されていない活性な抗生物質が、環境中に蓄積することを抑制することができる。「ああせいこうせい」言わなくてもいい、賢い分子である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 23, p. 27.

DOI: 10.1038/ nchem.1750

13.10.11

 

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水銀を含む化合物は

 錬金術の頃から、科学者を魅了してきた[1]Millon塩である[Hg2N]OH•2H2OCalomelと呼ばれているHg2Cl2などはその好例である。ただし水銀を含む化合物は毒性もあり、窒素原子のみとの組合せは、爆発性を示すため、研究が難しい。がこれにチャレンジした研究者がドイツにいた。どぎつい爆発性を示すMilonのアジド塩[Hg2N]N3を合成し、性状を明らかにすることで、水銀の未開領域に明かりを灯した。まずHg(N3)2を合成し、水中でアンモニアと結合させた。その結果、[Hg2N]N3が黄色化合物として生成し、立方体あるいは六方体として結晶化した。また別の反応によってそれらを個別に合成することにも成功した。ただし得られた化合物の爆発性のために、サンプルの分析は限定的にしか行うことはできない。それでも粉末X線回折、IR、ラマン、発光分光法には適用できた。得られた[Hg2N]N3は、三次元ネットワーク構造を持つ最初のニトリド金属アジドとして、特徴づけられる化合物であるとのことである。

爆発性化合物で、成果も爆発させたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sep. 23, p. 27.

DOI: 10.1002/anie.201305545

13.10.10

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応答速度の速い

 スマートホンや大量のデータを保存できるタブレットコンピューターを組み立てるために技術者は、相転移カルコゲニド材料を利用している記憶素子の利用を考えた[1]。ほんのわずかな熱のパルスで、結晶とアモルファス状態が変化し、メモリーセルでは1S0Sとになる。そこで最も小さな相転移材料が、争点になった。一次元のゲルマニウムテルルのナノワイヤで、2nm以下の直径である。これを作るために、勇気あるUKの研究チームは、炭素ナノチューブをテンプレートとして使い、ナノチューブの内側の部位を、キャピラリーを使って、融解したGeTeで満たした。その結果生じたアモルファスGeTeナノワイヤは、結晶状態、アモルファスと電子ビームで加熱することで変化した。このワイヤは、これまでにない全く新しい記憶素子の基盤に据えうるものである。さらに単純なデバイスにナノワイヤを集積することが検討されている。こん なのはいや と言わずに、ナノワイヤ、お使いあれ。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 23, p. 26.

DOI: 10.1021/
nl4010354

13.10.9

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カビ臭いワイン

 ください」ということはまずない。でも中にはカビ臭いワインもあって、これはコルクの汚れとして知られている2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)が原因であると考えられていた[1]。すなわち残留したコルクの中でカビが発生し臭いの原因になり、TCAのような臭い化合物は、ある特別の嗅覚細胞を活性化すると予測されてきた。それに対して大阪大学のチームはサッポロ醸造所やスターバックスのような会社で利用されている梱包製品の製造業者と共同で現象を調査した。その結果、TCAは、特別なタイプのタンパク質のイオンチャンネルを、ちゃんとね、ブロックすることを発見した。しかもTCAはたとえ非常に微量でもである。TCAはピーナッツやチキンや酒など様々な食品や飲料にも含まれている。そのためTCAはこれらの食べ物もいためる可能性はある。それでもTCAの臭い抑制機構が、どのようにカビ臭さを感じさせてしまうか、まだ確かではない。かび臭さも奥が深い。これは「カなりビっクりサ」

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 23, p. 26.

DOI: 10.1073/pnas.1300764110

13.10.8

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溶媒効果は

 化学反応の速度や選択性を決定するのにきわめて重要である[1]。一方、ある特定の反応で、異なる溶媒を探索するのは、労力のかかる実験的なプロセスである。それに対してコンピューターの助けをかりて、数千の溶媒の反応速度定数に対する効果を探索する分子設計プロセスが開発された、二分子求核置換反応をテストケースに使って、六つの溶媒に対して、量子力学でもって、計算した速度定数を使ったプログラムをキャリブレートした。ついで1300以上の溶媒の速度定数に対する効果を確認し、そのうち9つについては、詳細なコンピューター計算を行った。この手法はたとえば、ニトロメタン中での速度定数がアセトニトリルのそれより40%大きいことを予測していた。さらにこの方式は、選択性の評価へも適用できる。しかも溶解度に用があるときは、そのファクターや毒性のようなファクターも考慮することができるとのことである。ここでは溶媒効果よ、うばいこと公開している。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 23, p. 26.

DOI: 10.1038/ nchem.1755

13.10.7

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Richmond Sarpong先生

 生まれはガーナやが〜な。少年期友達と山を走っていると、両側に、サルとヒヒの群れを発見。20頭余りの中のボスヒヒが眼前に現れる。目があった瞬間180度回転して、一目散に逃走。ヒヒからの危機を回避できた。アフリカ他2カ国で過ごして、17歳にして渡米、ミネソタ州の大学を卒業、Princeton 大学で学位取得。博士研究員を経て、職探しのインタビュー。先生方との会食の場、突然息苦しさを感じた。場所はシラキュース、万事窮すである。会食を早々に解消していただいて休む。何が原因だったかわからないまま、数ヶ月後、再び同様な、でも少し症状が重い。さらに数ヶ月後、同じことが起こって、これはエビによるアレルギーではないかと察した。それ以来、エビを選びないようにしている。16日間の日本滞在。京都を起点に、タイトなスケジュールをこなされた。帰国後も国内での講演も多くて、家にはほとんど不在。小さなお子様からの「なぜダディは、仕事ばかりなのか」というクレーム。でも幸い父と呼ばれている。

先生と、貴重な時を過ごさせていただいた。

13.10.6

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ジェット燃料に

 含まれるバイオディーゼル燃料は、5 ppm が上限である。この工業的な基準は、バイオディーゼルをつくる動物の脂肪や野菜油から導かれる脂肪酸メチルエステルが、石油由来のアルカンよりも高い凝固点を示すためである。異なるタイプの燃料を注入、貯蔵し、高い高度で寒いところを飛行している場合に、燃料の粘度が増加し、エンジンのパフォーマンスに影響を及ぼし、場合によっては失速する可能性もある。現在の分析法では、燃料の品質を検証するには、お金と時間がかかってしまう。それに対して今回、使い捨ての光学でも、安価なセンサーが開発された。ナイルブルー塩化物と呼ばれる染料をメタノールに溶かし、これをエタノール中で作成したエチルセルロースフィルムに入れる。バイオディーゼルメチルエスエルは、フィルムに浸透するために、より極性の高いアルコールと交換し、センサーが、青からピンク色に変化する。これによって、0.5 ppm濃度のバイオディーゼルを検出することもでき、「やばいよ」と教えていただけることもある。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 16, p. 29.

DOI: 10.1039/c3cc43958e

13.10.5

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食品科学者は

 魚の油に含まれるオメガ-3-脂肪酸を食品に入れたいと考えている。それは身体にいい成分であると信じられているものの、人間は、それを生合成できる整合性のある経路を持たない。ただしこの不安定な脂肪酸は、酵素酸化や化学酸化で分解し、魚臭が生じて、逆らえない。そこでこの厄介な臭いの成分の研究が行われていた。植物由来のα-リノレイン酸、魚由来のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸をそれぞれ、リポキシゲナーゼあるいは銅塩存在下、酸素と反応させた。ガスクロ、質量分析によって、六種類の反応は、同じ11種類の化合物の混合物を違った比で与えることが、明らかにされた。そのうちのひとつエポキシドデカジエナールは食品の中でこれまで同定されてはいなかった。魚臭は、銅塩によって酸化されたエイコサペンタエン酸由来であり、α-リノレイン酸からは魚臭は出なかった。研究者らは、中性の油の混合物で見つかった濃度で11種類の化合物を混ぜ合わせることで、臭いを再現することもできた。さかなも、なかなか複雑である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 16, p. 28.

13.10.4

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蚊(mosquitoes)も

 好き〜という人はあまりいない。でも人によっては蚊にとって魅力的で、ある人たちは蚊をあまり寄せ付けない。この疑問に対する明らかな答えを求めて1990年代から研究が続けられた[1]。その結果、人の肌の表面に分泌されるか、もしくはバクテリアによって肌の上でつくられる1-メチルピペラジンのような低分子複素環化合物が、蚊に対するマントのような役割を果たすことがわかった。蚊にとっては、近くに人がいても、肝心のときに、感知できない。すなわちこの化合物は、多くの虫よけスプレーに含まれる活性成分であるDEETN,N-ジエチル-m-トルアミドとは作用が異なる。そこで新規な、虫さされ防止クリームやローションの成分として利用できる。これはDEETが臭いや収斂性を示すために、それを好まない人に利用していただけそうである。そこで化合物の用途のための特許権を得た研究者Ulrich R. Bernierさんら、これを売ってrichになろうとしているかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 16, p. 28.

U.S. Patent 8,207,157 B2

13.10.3

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元素周期表は

 14族のケイ素、ゲルマン、スズは、炭素のように直鎖の分子を形成できることを、予兆している。実際これらから、ポリマー状の分子がつくられ、シリコンやスズの短い鎖のモデルとしてオリゴマーも、おりま〜すと報告されてきた。一方で、適切な高収率合成法が未開拓だったのが、ゲルマンである。それにロマンを感じてか、オクラホマの研究者らは、ヘキサゲルマン化合物を含む直鎖ゲルマンの合成法を開拓した。反応は、環状のフェニル置換のテトラゲルマンの開環と水素付加でGe4とした。ついでイソプロピルゲルマニウムアミドと反応させ、両末端にGeを付加させ、Ge6とした。この成果は、非金属様のケイ素と類似でもなく、金属様のスズとも異なる元素であるGeの特性を解明する興味ある成果である。得られたGe6は発光するとともに、二色性も示す。すなわち無色の化合物に、偏光を一方から照射すると、灰色がかった白色に、別の方向からだと、明るい青色を示すことから、光ファイバーにも利用しうる。Ge6、元禄時代にはなかった。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 16, p.6.

DOI: 10.1039/c3cc45450a

13.10.2

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テキスタイルで

 素敵なスタイルに飾ることもできる。これが有機触媒の分野にも波及した。新しい有機テキスタイル触媒が、汎用で、安価で、実用的な固相担持の触媒として提案されている[1]。再利用可能、医薬品やファインケミカル分野で使えるらしい。有機触媒に本来備わっている利点は、酵素や金属触媒と比較すると、容易に固相担持できることである。ただしこれまで報告された担持触媒は均一系のそれよりも活性が低かった。それに対して今回はナイロンのような繊維を、単に紫外光を使うだけで、有機分子に修飾できた。ついでルイス塩基やブレーンステッド酸やキラル有機触媒でさらに修飾した。繊維は高い安定性、高活性、再利用性を示した。たとえばシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸無水物の非対称化反応では、高いエナンチオ選択性を示し、不斉触媒は250回、回転した。これは従来の触媒に比較して、非常に高い回転数である。しかも担持触媒は一般に数回回転すると活性が低下するが、この場合には、一気呵成に反応を促進させている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Sept. 16, p. 5.

DOI: 10.1126/ science.1242196

13.10.1

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