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2013年12月

12月31日です

 たくさんの方々に支えられて過ごした一年だった。討論会開催では、研究室のメンバー、会議場、財政的な支援などなど、お礼の言葉もない。三度の海外訪問の機会を得たことは、予想だにしていなかった。しかもいずれの折も、旧知の人に、窮地で助けられ、多くの人と知合いになれたこと貴重だった。同様に10月以降、4名の外国人の方々が研究室を訪問された。こちらのぎこちない会話にも快くつきあってもらい、大いに盛り上がった。そんな時でも第一優先は、速報誌の編集である。それ「へんでしゅう」という申入れをいただくことがなかったのは幸いである。これも審査を快く引受けてもらった、のべ300名ほどの先生方のご協力、そしてなにより、日本化学会編集部の若手スタッフの、地道で献身的な対応のお陰で今日に至っている。投稿論文を開き、化学の内容・論理展開・英語表現すべての点で、ほぼ完璧な完成度に達している時には、心地よさと同時に衝撃を感じたこともあった。見習うべしである。

 来年はさらに躍進できますように、皆様よいお年を。

13.12.31

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フルーティな香りが

 蚊を混乱させるらしい[1]。蚊は二酸化炭素と肌の臭い、かすかなそれらを感知して、餌にできる人の肌に飛来する。それに対して、より安全な防虫剤を開発するためには、すべての臭い受容体の作用の解明が望まれていた。その中、蚊のある神経細胞にある受容体、cpAニューロンと呼ばれているが、それはCO2だけではなく、人の臭いにも反応することがわかった。そこで蚊を、塩化ブタノイルにさらしたところ、二重の応答受容体が作用しなくなり、人の足の臭いでコートしたガラスビーズを発見することができなくなった。ただし塩化ブタノイルのいるところは、人にとっても不快で毒性もあるため、化学インフォーマティクスによってcpAを活性化しうる化合物を、500000種類からスクリーニングした。その結果、フルーティな食物の香料であるブタン酸エチルがヒットした。これを服用した蚊は、人の手に対する興味が格段に低下した。蚊はフルーティで、腕も振る〜いてぃ、にはならなかったご様子である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 9, p. 31.

DOI: 10.1016/j.cell.2013.11.013

13.12.30

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スーパーマンは

 石炭の塊を強く握ってダイヤモンドに変えることができる。一方で太陽光発電の様な高度な応用に必要な別の同素体については、スーパーマンでさえも、研究者からのヒントを期待しているかもしれない。今回、石炭からナノスケールの炭素粒子でわずか二から三原子の厚さのグラフェン量子ドットの合成が報告された[1]。これまでのグラフェン量子ドット合成では、高価なプロセスや前駆体を必要として、わずかな量の材料しか、製造することができなかった。それに対して今回は、単段階の湿式の化学プロセスで、安価で豊富な石炭からグラフェン量子ドットを導いている。研究者に聞いたんところ、石炭は脂肪族のアモルファス炭素でリンクしたナノメートルサイズの結晶ドメインが、メインであり、石炭を粉砕して酸に入れると、アモルファス炭素が切断し、たぶん化粧もしていない、結晶の量子ドットが、どっと放出するとのことである。得られたナノ粒子は、バイオメディカルイメージングや光電子工学など様々に応用できる可能性がある。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 9, p. 31.

DOI: 10.1038/ ncomms3943

13.12.29

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二酸化炭素の一酸化炭素への変換を

 固体の炭素基質上で行う反応は、Boudouard反応と呼ばれており、石炭のガス化や製錬では、鍵となるプロセスである[1]。科学者はこの反応をさらに、温室効果ガスであるCO2の変換に利用できないか注目してきた。ただしCO2 + C = 2COの反応は600 °C以上を必要とし、高価である。その中、これまで常勤の人が使っていた、蒸気のような熱の代わりに、マイクロ波を利用することで、先の反応の平衡が生成系に傾いている213 °Cまで下げることができることが報告された。マイクロ波は、不均一系気相反応の速度を増加させることが知られているが、このタイプの加熱をもとにした熱力学は、これまでには観測されていなかった。マイクロ波によって固体の炭素は素早く加熱されるが、CO2は加熱されないままに通過してしまうために、この反応は、マイクロ波による加熱機構の研究にも好適である。たとえばマイクロ波は単に反応物を加熱しているのか、そうさなあ、照射効果もあるのかを決定したい。研究者らの推測は、「CO2は、炭素上で生成した電子ホールのペアと反応する」である。これ完璧あ〜?

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 9.

DOI: 10.1021/ jp4076965

13.12.28

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硫化リチウム電極は

 理論的に、通常のリチウムイオンバッテリーの4倍のエネルギーを蓄積することができる[1]。ただしその寿命は、バッテリーの充電やそれからの放電の過程で、物理的あるいは化学的に欠陥が生じて寿命が短くなる。また硫化リチウムの陽極は、大量のリチウムイオンを吸収・放出するが、それによって体積量がおよそ80%拡大したり収縮する過程で劣化する。レッカーで運ぶ必要はないが、この課題を解決するために、硫黄を酸化グラフェンでコーティングすることで調製された複合陽極が使われた。酸化グラフェンは、硫黄にバインドしリチウムと反応した際に、溶解するのを防ぐこともできる。さらにゴム様の材料が、バッテリーをつなぐバインダーとして、使われた。通常のバインダーであるフッ化ポリビニリデンは、もろくて陽極の体積変化に耐えることができない。最後にイオン液体と混ぜた通常の有機溶媒からなる電解液を使った。その結果、バッテリー材料1 kgあたり500W/hの電気を蓄電した場合、1000サイクルでは300 W/hまで低下したが、従来のものに比べて「こうせい」と言わなくても、高性能だった。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 9, p. 11.

DOI: 10.1021/nl402793z

13.12.27

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どの程度の量のメタンガスが

 排出されているのかという推定値は、「大気の実際はどうか」という新しい分析によれば、小さすぎることがわかった。名探偵でも難しいメタン排出量推定は、米国環境保護局(EPA)のような政府機関から出される排出目録にあり、ボトムアップ・アプローチによって作成されている。すなわち家畜や天然ガス採取によって放出されるメタンの量を推定し、排出量が計算されてきた。それに対して今回のメタンの測定は、2007 年、2008年に、地表面、タワーの上、さらに様々な場所で飛行機によって行われた。ついで大気移動モデルを利用して、測定値から排出点をたどった。その結果、メタンの排出は、EPAが推定している量よりも50%程度多かった。それらは全米の家畜からの分と、過小評価されている中南部地域の化石燃料の採掘からのものを含んでいる。そう言えば「家畜からのメタンガスの排出量の多さ」を授業で紹介したときの反響は大きかった。ついでにニュージーランドでは、その対策に「ゲップ税」があること、ただし月賦払いかどうかは知らないことも伝えた。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 2, p. 29.

DOI: 10.1073/ pnas.1314392110

13.12.26

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新しい複素環が

 あったらしい」というお話[1]。窒素、酸素あるいは硫黄原子を含む環状有機化合物は、多くの医薬品において極めて重要である。数え切れないほど多様な誘導体があるにも関わらず、化学者は常に、新しいあるいは珍しいそれらを導く実用的な合成経路を探索している。これに関して最近二つの報告がなされた。一つはフランスのS. Z. Zard先生、「マイ・フレンド」ほどではないけど村井君と分野は近い。そのグループで「負けないで」合成をなし得た複素環は、ジヒドロ-1,2-チアジンである。先生らが長年研究されているキサントゲン酸エステルとオレフィンをカップリングさせ、得られた中間体が閉環し、対象化合物に至る。別の例は、1,4-オキサジン。これまではその置換誘導体や縮環した誘導体は知られていたが、置換基を有しない親化合物を導いた最初の例である。この不安定な化合物、置換1,4-オキサジンの瞬間真空熱分解で導かれている。○○ジン合成で、人類にも貢献している。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 2, p. 29.

DOI: 10.1021/ol402973q, DOI: 10.1039/c3cc47801g

13.12.25

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α炭素

 どこにでも、あるわぁなあ炭素で、カルボニル基に結合していて反応性も高い。強塩基を使ったり、注意深く設計された触媒を使えば反応は進行する(be good to go)。一方でβ炭素は、その隣りの炭素で、となりると、簡単には変換できない。これまでβ置換のカルボニルの調製は、多段階を要するとされてきた。ただしβ位が置換された化合物は殺虫剤や医薬品候補でもよく見られるために、化学者は、系の単純化に取組んできた。その結果、いくつかの系はそれを達成しているが、一般的に適用できる系はまだなかった。その中Guangbin(UT, Austin)らは、合成の道具箱に、単純ケトンのβ位に芳香環を挿入する方法を加えた。Pdが触媒するプロセスでは、アリールヨージドやブロミドを使い、銀塩が活性な触媒を再生している。Dong先生は「反応はまだまだ未成熟である」と自らを戒めているが、反応経路の解明と、安価でないとあかんということで、銀塩の代替の探索を行っている。UT Austinは、化学分野での特許化を目指している。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 2, p. 28.

DOI: 10.1021/ja410389a

13.12.24

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スターフルーツと呼ばれている

 黄色い星型のトロピカルフルーツ、口の中では、酸っぱい柑橘系の味が広がるのではと期待する。でも肝機能障害がある場合には、しゃっくり、混乱、中毒、発作、嘔吐さらには、死に至ることもある。これは、スターフルーツはカラムボキシンを含んでおり、正常な肝臓では、絡むことなく、代謝できる一方、障害のある肝臓では代謝できないことが報告された[1]。以前研究者らは、このフルーツの毒成分の同定を試みていたが、間違ってシュウ酸塩に注目していた。このこと衆参でも指摘はされなかった。が今回、カラムボキシンが単離され、その構造解明、さらにはこのフェニルアラニン様の分子が、神経伝達物質であるグルタミン酸塩に対するイオンチャンネル受容体に作用することによって、動物モデルでは、毒性の兆候を示すことも明らかにされた。また室温で保存されたカラムボキシンは、徐々に閉環構造を形成し、毒ではなくなることもわかった。今後この、閉環した化合物やカラムボキシン[2}は、わからん受容体に関する研究に利用できるとしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 2, p. 28.

DOI: 10.1002/anie.201305382

[2] フェニルアラニンのフェニル基が、2-カルボキシル、3-ヒドロキシ、5-メトキシで置換されている。

12.12.23

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物忘れが激しい

 マリファナの常習者、コメディではよく登場する。でもその最も精神活性を示す成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の記憶障害の効果は、大麻を、コメディならぬメディカルに利用する際に、重大な障害である。これらの効果はTHCの刺激によってCOX-2の生産が増加することによる。ここでCOX-2は、アスピリンのような非ステロイド系抗炎症剤によって抑制される酵素である[1]。研究者らは、ネズミのCOX-2が、THCの服用する量や時間によって増加することを確認し、さらにTHCCOX-2抑制剤とをネズミに投与した行動特性テストでは、両方を投与されたネズミは、THCだけを投与されたネズミが体験する記憶障害や恐怖に苦しむことはなく、倦怠感も示さなかった。これまでTHCはアルツハイマーに関わるアミロイドβ斑を消す効果があることが明らかにされている。今回の成果と合わせると、 THCの医療的な応用も広がる可能性がある。さらにカンナビノイド[2]活性に関する研究も、かんなりのびる可能性もある。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Dec. 2, p. 28.

DOI: 10.1016/j.cell.2013.10.042

[2] マリファナなどの作用に関わる化合物

13.12.22

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パーキンソン病とリンクする

 遺伝的な因子はそれほど出んしなあ、ということから、研究者らは、環境中に残存する化合物が神経系の疾患を引き起す可能性を探索していた。殺虫剤などの人工低分子は、パーキンソン病と関連しているが、加えて、天然に存在する物質も原因となる可能性が検討されていた。その中、菌類によって放出される化合物が、ミバエにパーキンソン病に似た兆候を引き起すことが明らかにされた。化合物は、1-オクテン-3-オールであり、これはカビの特徴的な臭い化合物である揮発性化合物である。ミバエをこのアルコール0.5 ppmにさらしたところ、パーキンソン病の患者と同様、ミバエの動きは鈍くなった。さらにミバエの脳にあるドーパミンを生産する神経細胞が死滅した。これは別の神経変性の病気の特徴である。その結果、欠陥のある輸送タンパク質を持つミバエの生存率は低下した。さらにこの結果より、かびによって放出される化合物に日常的に暴露するという、水によってダメージを受ける建物で、よくある課題であるが、それは神経毒の作用、いわばカビに過敏に反応した結果ではないかとも、類推されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 25, p. 27.

DOI: 10.1073/pnas.1318830110

13.12.21

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粉末硫化水銀HgSが

 明るい赤色色素として使われたのは、古代ヨーロッパやアジアに始まる。ただしヨーロッパで、色素として知られている朱色は、時間を経るにつれて、灰色から黒色に変化する。様々な分析方法で可能性のある分解した水銀化合物の同定を行ってきたが、黒くなってしまう要因やそれを回避する方法を考えるための反応機構が明らかではなかった。そこでX線回折や理論研究によって、朱色がくすんでくる経路が提案された。それによれば、湿度の高い空気中の水滴によって運ばれる塩化物イオンが、硫化水銀の表面上に吸着しHg3S2Cl2を形成する。その中の硫黄が酸素と反応し、二酸化硫黄となって、ガスとして放出される。水銀原子は、Hg34+クラスターとして、暮らした〜後、HgHgCl2に変化する。後者はさらにHgに変化しうる。さらに分析の必要はあるが、この水銀が、多くなりすいぎんて、灰色を呈する要因ではないかとされている。いわば朱色のくすんだ部位に、水銀が住んでいるようなものである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 25, p. 26.

DOI: 10.1103/physrevlett.111.208302

13.12.20

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古代エジプトでは

 高貴な人を埋葬する時には、宝石、クシさらにはミイラ化したビーフジャーキーも一緒だった。無邪〜気に死者が食すわけではない。食肉を保存するために使われる防腐処理剤は、ある場合には、人をミイラ化するのに使われている処理剤よりも有用であることが報告された[1]。研究者らは、乾燥した塩漬けの食肉のサンプルが、ピスタチオナッツを含むピスタチカ属から誘導される松やにで、保存されていることを解明した。古代エジプトでは、ピスタチカやには、高級品で、食肉に香りをつける、ワインを保存する、さらには香料を生産する場合に利用されていた。さらにオレアノール酸や他の酸が、アメンホテプ3世の配偶者であるティイ女王の埋葬室にあることも発見した。3世の時代は長きにわたって繁栄したことが知られており、彼の高いステータスのため、女王の墓所にあるビーフが、通常の死者に利用されている動物の脂肪酸ではなくて、ピスタチオやにで処理されていた可能性も高い。そうやに〜!

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 25, p. 26.

DOI: 10.1073/pnas.1315160110

13.12.19

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2-フッ化ピリジン

 のような複素環は、かなりな人気者である。それらの電子的な特性のために、さらなる反応を容易に施すことができて、より複雑な誘導体を導くこともでき、医薬品候補の改良にも繋がる。ただしフッ素化ピリジンそのものを、簡単に導くことができなかった。今回、古くから知られているChichibabinピリジンアミノ化反応にヒントを得て新しい系が開拓された。その反応では、NaNH2のナトリウムにピリジン環の窒素原子が配位し、さらに隣接するC-H結合を活性化しNH2が炭素に付加する。新しい反応は、AgF2を使い、銀に窒素原子が配位し、隣接する炭素上にC-F結合を形成する。「この反応は、実際に簡単な操作で行うことができ、高い付加価値がある上に、他の方法では導くことが難しい、フッ素複素環へのアクセスを、あくせくせずに、提供していることから、近々利用されるであろう」とコメントされている。面と向かっておっしゃったかは、わからないけどね。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 25, p. 26.

DOI: 10.1126/science.1243759

13.12.18

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鈴木・宮浦カップリング反応では

 有機ハロゲン化物と有機ホウ素錯体を、Pd触媒存在下で反応させ、ビアリール化合物を導く。それらは医薬品合成でよくみられる中間体である。さらに系を発展させるために、N-メチルイミノ酢酸がホウ素上に組込まれた化合物(MIDAボロン酸エステル)が近年開発され、市販品としても入手できる。一方で、遷移金属触媒と界面活性剤(TPGS-750-M)との組合せの系が提供され、これは水と混合すると最適な大きさのミセルを形成し、通常の有機反応に対するナノリアクターとして作用する。今回これらの成果を合体した系が報告された。すなわち水中でMIDAボロン酸エステルを用いて、通常室温で反応を行う。ミセルに魅せられてか、触媒量も少量で十分で、有機溶媒を使うことなく生成物を簡単に回収できる。水溶液の反応混合物と触媒は再利用もできて、廃棄物の出ない系である。とりわけ医薬品骨格で見られるものの、クロスカップリングでは不安定な、2-ピリジルユニットを導入することもできる点、特徴的である。クロスカップリング、ますます苦労しないカップリングになってきた。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 25, p. 9.

DOI: 10.1021/ja409663q

13.12.17

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「和食」千年のミステリー

 そこは[1]、ケミストリー満歳だった。しょうゆベースで話が展開する。アスペルギルス・オリゼという菌が鍵である。木灰でアルカリ性に強い菌を育てたという。でもそれは置く。池田菊苗先生のテーマだった昆布。収穫してすぐには食材にはならない。くさみ・ぬめりという力強さを抜くために寝かす。そこで平成元年収穫の昆布が出る。最近のものとの違いが分析された。元年ものには、フマル酸、コハク酸、ピログルタミン酸が含まれていた。最後の化合物はγラクタムの窒素原子の隣にカルボキシル基が組込まれている。昆布の蔵には微生物やカビも多い。番組は、昆布の上でカビがたくましく育った様子をリアルに写す。ついでカビのめぐみの鰹節。昆布と鰹だしをうまく混ぜる。結果7から8倍のうまみを感じるという。カビとのつきあいから生まれた「和食の王道である」らしい。

 他にも知恵・知識満載の情報がふんだんだった。普段だったらめぐり会えない番組である。

[1] 201312152115分、NHKスペシャル。オンデマンドでも見ることができるらしいけど、何度も放映してほしい番組です。

13.12.16

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インパクトファクター(IF)を

 ぱくっと理解するには絶好の時評である[1]。自分の出した論文でその数値を上げたいと思った場合、たとえば2013年に掲載された論文を、2013年に100回引用したとしても、全くIFには反映されない。2014年、2015年に引用した回数が反映される。その後の引用は5IFまでは有効である。一方で、たとえばホットな成果の早い公開が必須であると、IFの高くない論文に掲載させ、その後5年間苦労したため、自分でも引用することが適わなかった、でも10年後時点での引用回数が多いという場合には、IFには寄与しない。これを潔しとするかは本人次第である。日本化学会速報誌についても言及されている。自誌引用率の低い雑誌のひとつである。これはたぶんよいことである。また2012IF1.594だけども、算出根拠の期間2010~2011年の論文の中に、171回引用されたhighlight reviewがあることも記されている。この論文、ライジングスターだったFagnou先生がご逝去されて1年後に掲載されたCMD機構に関するレビュー[2]である。

[1] 月刊化学12月号、p. 32「インパクトファクターの功罪」

[2] D. Lapointe, K. Fagnou, Chem. Lett. 2010, 39, 1118.

13.12.15

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多くのハロゲン化合物は

 冷蔵庫の冷却剤や難燃剤として利用できる化合物である一方、それらの特徴のために化合物が大気中で長い間、存在することも可能にしている。その結果、それらは温室効果ガスとして作用し、時には地球を保護しているオゾン層と干渉するという、おぞんましいことも起こりえる。その中これまではチェックが、なされていなかった分子として、パーフルオロトリブチルアミン(PFTBA)が見つかった。これは電子工学や熱伝導剤として利用されているものだけど、最も可能性の高い温室効果ガスの一つである。質量分析によってその検出と定量が行われ、ついで赤外吸収スペクトルのデータを用いて、PFTBAの放射効率、すなわち熱をトラップする能力が、計算された、その結果、大気中でこれまで見つかったどの化合物よりも高いことがわかった。大気中での寿命が500年であると推定されていることと合わせると、PFTBAの温室効果ガスとしての指数は、CO2に対して7100と、これまでのどの化合物よりも大きかった。温室育ちの人がさらに増えそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 18, P. 27.

DOI: 10.1002/2013gl058010

13.12.14

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魚が腐った臭い

 誰にとっても嫌うものである。ただしその嫌悪感は、どのような機構なのか化学的な見地からはあいまいであった。そこで熱帯淡水魚であるゼブラフィッシュをモデルに研究が行われた。その結果、嗅覚の受容体であるTAAR13cが、タンパク質が腐敗して深〜い不快臭であるカダヴェリン(1,5-ジアミノペンタン)に応答することが明らかにされた。カダヴェリンが、だべりんに来ることはないが、腐った魚の主な臭い成分である。TAAR13cは、アミノ基を両末端に持たない化合物へは応答しないことから、二つの遠隔位のアミノ基の両方を受容体が認識する者と思われる。さらにこの受容体は、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)を含む、タンパク質が腐って生成する他のC4C8ジアミンにも応答した。そのような臭いに体する嗅覚受容体の同定は、化学者に、ゼブラフィッシュが、ぶらぶらしている周りの魚や、たぶんそれを餌にする動物において、嫌悪感や魅力に関する生化学や神経学を、化学的に取扱う機会を与えるものである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 18, p. 27

DOI: 10.1073/pnas.1318596110

13.12.13

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生理活性があると信じて

 120種類ほどの全合成を達成された。しかも世界で最初である。何をターゲットにするかをゲットするところから始まる。ただしそれは極秘である。他の研究者に「その標的分子は素敵」ということを見抜かれて先を越されてはfirst synthesisには至らない。当初の立案が予期しないところで頓挫したり、予想以上にステップが進行し幸いということを繰返して到達する。そこでその先生らのグループは必ず活性試験をされる。すでにそれらの天然物は生理活性のある化合物として、その構造が同定・発表されている。それでも先生らが全合成を達成された1割程度の化合物は活性を示さない。自然はスペクトルの限界を切抜ける。ほんのわずかな別の成分が生理活性については主役である場合もある。そこで先生らのグループは、その全合成の成果は公表しないという決断をされる。たとえ学位がかかっていても、である。これがDr. Total Synthesesと呼ばれる由縁の一つ、他には言えん賞賛である。

13.12.12

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光が活性化する

 いわば光によって感化される環化付加反応はエノンのC-C二重結合を別のアルケンと結びつけて四員環を形成する。この反応の発見から100年以上も経過しているが、この変換反応をエナンチオ選択的に行うことは、今でも挑戦的なテーマであった。これまでキラル補助剤を反応物に一時的に組込んだ系は知られていたが、補助剤の導入と取り外しに余分なステップが必要である。それに対して、この反応の立体化学を制御できる、より単純な系が開発された。キラルルイス酸触媒存在下、UVライトを照射し、5,6-ジヒドロ-4-ピリジノンを反応させると、ライトが嫌いと言うこともなく、エナンチオ選択的な分子内環化反応が進行した。報告されている収率は、中から良収率で、鏡像体過剰率は82-90%である。研究者らはこの反応を使って、(+)ルピニンと(+)サーモプシンの合成を行っている。この戦略は同様のエナンチオ選択的環化反応で、エノンを使う場合に、ええのんだと述べられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 18, p. 27

DOI: 10.1126/science.1244809

13.12.11

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これまでにない電荷容量を

 要領よく達成できるリチウムイオンバッテリーの研究では、典型的なグラファイト陰極をシリコンでつくられたそれに置換えることで、原理的に10倍のファクターで、容量を上げることができることが発見されている。ただし、それぞれの充放電サイクルごとに、シリコンが相当に膨張、収縮し、陰極が裂けて、電池の寿命が直ちに終了してしまう。その中、この裂けるという問題は、伸縮自在の自己回復可能な高分子で、陰極をコートすることで制御しうる可能性が示された。研究者らは、安価なミリサイズのシリコン粒子で陰極を修飾し、さらにランダムに枝分かれした水素結合高分子でコートした。その結果、高分子は室温では、しなやかで伸縮自在、その分子鎖は裂け目で容易に再生する。すなわち高分子が陰極の裂け目を修復し、シリコンの中の電気接点を、イージーに、維持している。これまでのシリコンを使ったリチウムイオンバッテリーとは違って、10倍のサイクルの充放電にも耐えうると報告されている。田中嶋のバッテリーが如くである。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 18, p. 26.

OI: 10.1038/ nchem.1802

13.12.10

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グラフェンの

 例外的な高い評判は、その材料特性が電子工学や他の領域での応用を、強く期待させているためである[1]。ただし、これらの応用には、グラフェンと他の材料を化学的に融合させる必要があるが、残念ながらグラフェンの反応性の低さが、そのような素子組立を阻止する、たとえそうしたいと思わなくても、である。研究者らは、通常これを克服するために、厳しい酸化条件にさらし、酸素官能基を組込み、後に酸化されたグラフェンを化学的あるいは熱的に還元し、それによって本来有する特性を発現させる。ただし還元が不十分で、このプロセスがグラフェンに欠陥を残し、望ましくない特性も発現する。その中研究者らは、原子状酸素で酸化することを回避する方法を開発した。概念実証テストでは、グラフェンを酸素原子とジエチル亜鉛にさらし、安定で均一な酸化亜鉛ナノクラスターを形成できた。金属酸化物によってコーティングされたグラフェンは、電子工学や光触媒で利用される。これによってグラフェンの形態は保持されたままで欠陥も生じない。このグラフェンに関する成果、だれかに送らふぇんといかんかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 18, p. 26.

DOI: 10.1021/ja408248z

13.12.9

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自然出産で

 子供を授かった。爆発間近のクリプトン星から、その子に希望を託して宇宙へ脱出させた。カンザスのケント夫妻のもと、クラークとして暮ら〜すことになった。小さい頃から超人的な力を持ち、時に人を助け、時にそれを持て余すクラーク。教え諭す養父。竜巻が迫る中、人を助け、犬を逃して傷を負った父。超人力で助けようとするクラークに、最後のメッセージを送った。成人した頃、クリプトン星のゾッド将軍らが地球来襲。クラークと、しばらく前に彼を取材した女性記者ロイスを引き渡せと、圧倒的な力で迫る。なんとか難を逃れ、一旦撤退する将軍らだけど、地球すべてを破壊すべく重力操作による攻撃を開始した。敢然と立ち向かうクラーク、それに歩調を合わせる軍と女性記者。養母も攻撃対象になり、間一髪のところを救う。それでも容赦のないゾッド一味、ぞっとする間もなく、激闘を繰り返した。一味の一人が密かに逃げるも、彼らは力つきて、なんとか収まった。「地球のために命を捧げる以外の仕事」に記者を選んだ。検討される間もなく、ケントは、新米記者になった。迎える仲間。ロイスの「Welcome to the planet[2]が耳に残った。

[1] 映画「マン・オブ・スティール」ザック・スナイダー監督、2013。スーパーマンの誕生である。

[2] 日本語字幕は「歓迎するわ」だけだった。「地球にようこそ」でどうでしょうか、ストーリーとしても。

13.12.8

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飲み屋は

 ここのみや」とお店に入った。突然の8名を受け入れてくれた。定番「とりあえず生ビール八杯」「はいわかりました」という心地よい返事。しばらく待って乾杯。おかわりを注文。ジョッキが出払ってストックがないと言う。ショッキングである。「じゃあ瓶ビール」コップの数が人数分はない。ジョッキに少しずつ注いでいただく。次は日本酒で、ということで注文。おちょこの数が、ちょこっと足りないかもとのこと。幸い人数分あったらしい。空になったので「次も日本酒で」とお願いした。今度は、お銚子が足りない。なんとも調子が悪い。厨房に確かめに行った店員さん。なんとか大丈夫ですとのこと。どこかに大酒を楽しんでおられる客人がいるに違いない。こちらも人数とメンバーのせいか、熱燗がすすむ。いつ扱わんようになるか心配しながら、注文は続いた。ほぼ終わりかけの熱燗。口にした瞬間、銘柄が変わったことに気がついた。商売っけのないお店だったけど、気のいい店員さんに、ほだされた。

13.12.7

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アミンのような

 窒素原子を含む置換基は、多くの医薬品や他の生理活性化合物で、非常に重要ある。これまで反応性の高いC-H部位やC=C部位にアミンを導入するために遷移金属触媒が用いられてきた。ただし、二つの反応経路がある場合に、いずれかを選択する系の構築には、反応剤の組合せを変えることでのみ達成されていた。それに対して今回、銀錯体が、どこにC-N結合を形成するかを、簡単に制御できることが明らかにされた。カルバミン酸O-ホモアリルエステルを出発化合物に用いる。銀トリフラート触媒とフェナントロリン配位子とを4:5の比で混ぜた場合には、アジリジン化反応が進む。一方でその比を1:3にすると、反応は優先的にアルケニル基に隣接する炭素上のC-H結合が切断されてC-N結合が形成する。配位子の強い意志が反応を制御しているかもしれないけど、研究者らは、その比が触媒の立体的な環境を混んだ状態にするために、C-H挿入が進行し、その逆の場合には、アジリジン化が進行するのではないかと考えている。さらにこの系を別の有機化合物の化学選択的アミノ化へも拡大することが行われている。まさにいぶし銀の銀錯体である。

[1] Chemical & Engineering News, November 8, p. 9.

DOI: 10.1021/ja406654y

13.12.6

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化石燃料や

 石油をもとにした化学資源の代替としてメタノールを利用することが提唱されている[1]。実際メタノールは、天然ガス、石炭に加えて農業廃棄物からも製造することができる。また、大気中の二酸化炭素をリサイクルすることでも導くことができる可能性があるため、カーボン・ニュートラルな燃料源としても考えることができる。このことは南カリフォルニア大学のPrakash先生と、おらがOlah先生によって推進されており、メタノール・エコノミーとも呼ばれる。これが好み〜かどうかは別として、すでに中国やイランはこれを採用している。さらに外国から輸入される燃料への依存度が高いイスラエルでは、首相が支援する新しい試みの中で、二人の先生に賞(100万ドル)が授与された。これに対してPrakash先生は「イスラエルの様な技術立国でも、メタノール・エコノミーに弾みがつくことは喜ばしいことである」と述べられている。いずれ燃料がメタノールに、イスラエルでも替えられる日がくるに違いない。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 November 18, p. 9.

13.12.5

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トリフルオロメタン

 (CHF3)、別名フルオロホルムあるいはHFC-23は、フッ化高分子生産の際に大量に生じる副生成物である[1]。この化合物は、オゾンフレンドリー、いわばオゾンには触れんどり〜で破壊し難い。一方で、工場では分解するのに経費を必要とする温室効果ガスの可能性が高い。そこで化学会社は、CHF3をフッ素化医薬品や農薬のための安価な化学資源として再利用することをもくろんでいる。ただしCHF3が有する強くて反応性の低いC-H結合を活性化する効率的な方法を必要としていた。すでに亜鉛、銅、イリジウムが媒介するCHF3の反応が報告されていたが、加えて今回、Pd(II)を用いた系が報告された。ホスフィン触媒によって、PdO(H)H-CF3の間の水素結合を含む前例のないあり〜うる機構を経て、アリールPdCF3錯体が導かれている。Pdは、アリールCF3結合形成を促進できる数少ない金属の一つであることから、この発見は、芳香環のCF3化の領域を、さらに進展させることができる可能性が示唆されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 11, p. 27.

DOI: 10.1021/ja409533s

13.12.4

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有機化学者は常々

 有用な量の生理活性天然物を導いたり、医薬品として作用しうる複雑な分子を合成するための、より効果的な方法の探索を行っている[1]。要請があれば、多様性のある構造を持つ六員環を含む分子をつくることは、そのための常套手段である。それに比べて、五員環炭素骨格形成は、立ち遅れていた。その中、二つの研究チームから、素早くシクロペンチル骨格を組み立てる方法が報告された。一つは、不飽和アシルアンモニウム中間体を、簡単に利用できる酸塩化物とキラルアミンとから開発し、ケトマロネートとカップリングさせ、ラクトン環が縮環したシクロペンタンを導いている[2]。このプロセスでは、最大三カ所の隣接するキラル炭素とともに二つの環が形成している。さらにこれを含窒素複素環合成へも拡大している[3]。一方でクロミウムアミノカルベン錯体にアルケニル基が組込まれ、加熱することで、分子内環化付加が進行、含窒素複素環が縮環した生成物を与える[4]。この反応は電子供与、電子求引、不活性アルケンに関わらず進行する。五員環合成しても、ご印鑑は不要である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 4, p. 29.

[2] DOI: 10.1038/nchem.1788

[3] DOI: 10.1002/anie.201306050

[4] DOI: 10.1021/ ol4025887

13.12.3

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イオン液体が話題である

 エネルギー貯蔵や使用済み核燃料の再利用のような分野に応用できる[1]。いずれも液体を電子的過程にさらす系を含んでいる。ただし液体と電子との相互作用に関する知見がほとんどなかった。それに対して量子分子動力学シミュレーションによって、そのような応用で使われる可能性のある電子が液体に挿入した後の最初のピコ秒で何が起こるかが研究された。特にビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンを含むアルキルアンモニウムあるいはピロリジニウムがもとになったイオン液体が対象となった。その結果、電子は最初に数個のアニオン上に非局在化し、一連のアニオンの間を移動した。50フェムト秒を超えると、電子はあるアニオン上にあるよんという局在化状態になり、イオンの分裂過程に入る。そのときには窒素硫黄間の結合切断が進行しているようである。これらの過程のより深い理解は、電子が引き起す分裂に抵抗できるイオン液体の提供や、イオン液体中での電子の移動に関するより詳細な全体像を提供するのに役立つはずである。イオン液体へ期待もふくらむ成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2013 Nov. 4, p. 29.

DOI: 10.1021/ja409338z

13.12.2

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奈良公園に東大寺

 そこで大事にされている鹿。しっかりと町並みになじんでいる。人に寄り添って、食べ物をねだる鹿もいれば、近寄っても反応のない、いわば「しかとする鹿」もいる。多くの観光客で賑わう。海外からの方も多い。ここでは中国、韓国他のアジアからの方が、穏やかに散策をしている。南大門の両側に仁王が立つ。「あぎょう」と「うんぎょう」である。800年以上も前に建立された。その当時の技術力・文化の高さである。その門の前で、国際会議の参加者の集合写真を撮るという。全員をフレームに収めるのが難しい。担当者二人の苦肉の策で、カメラマンを肩車した。カメラを落とさないように、かつぶれないように注意をしながら焦点を合わせる。そのシーンが珍しいのか、カメラで切り取る観光客の人もいた。欧米からの参加者が前列を占めていたこともあってか、こちらの集団も被写体になった。会議が終わった。天気のよさに誘惑されて、興福寺辺りをぶらりと歩いた。「奈良の習わし」を知るまでには至らなかったけどね。

13.12.1

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