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2015年5月

トリフルオロメチル化剤は

 1940年代に初めて調製された。ただし毒性と爆発性を示すガスだったため、それらを安全に取扱う方法が見出されていない。ジフルオロメチル類縁体も同様であり、化学者は、それらを調製し安全に利用することに40年以上を費やしてきた。癒してくれる人もなく成功例がない現状だった。そこに2010Carreira先生。彼らはトリフルオロメチルジアゾメタンを開発した。それに対して今回は、ウクライナの先生らが、CF2HCH=N2の発生に成功した[1]。ジフルオロエチルアミンとt-ブチロニトリル、触媒量の酢酸をクロロホルム中で還流する。触媒を使わなくても10分以内にCF2HCH=N2が発生し、この危険な反応剤を単離することなく、次の反応に利用できる。たとえばアルキンとは[3+2]環化付加反応が進行し、ピラゾールを与える。得られたピラゾールは農薬として利用されている化合物のコア構造であり、Syngentaのイソピラザム殺菌剤は、小麦、バナナや他の穀物の疾病を制御できる。新型フッ素化剤の登場、Syngentaも信じていたと思います。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 11, p. 3.

DOI: 10.1002/anie.201501529

15.5.31

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鉄触媒を使った

 窒素のアンモニアへの変換反応であるハーバー・ボッシュ法は、最も重要な工業化学反応の一つであり、今もは〜ば〜(幅)を利かせている。ただし窒素の切断と高温高圧でのメタンの水蒸気改質による水素の調製が、このプロセスをエネルギー大量消費プロセスにしている。その中研究者らは、窒素がバインドするにはちょうどよい酸素の空隙を持つ、層になったBiOBr触媒を調製した[1]。ついでナノシート表面に可視光を照射すると、半導体が電子を発生させ、吸着した窒素分子を還元する。同時に溶媒である水分子が酸化されてプロトンと酸素も発生する。全体のプロセスは、窒素と水素をカップリングさせ、アンモニアを製造するものであるけど、これまでに報告されている半導体系よりも高い効率で、室温常圧でそれを達成している。ただし現段階では、光触媒による還元が、ハーバー・ボッシュ法に置換わる、いわばそれを没収することはないけど、新しい展望を開いた成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 4, p. 27.

DOI: 10.1021/jacs.5b03105

15.5.30

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リチウムイオンバッテリーの

 内側の構造、とりわけ熱が引き起す損傷、そんなもんでしょう、で終わらすわけに行かない。解析の必要がある。これまでの分析方法は、障害が起きた後に、機能不全になったバッテリーの内部の成分を精査することに限定されていた。それに対して高速X-線断層撮影法と赤外線法を組合せることで、リチウムイオンバテッリーが加熱され、爆発が起こるその瞬間をリアルタイムにしかも高解像度で観測することができることが報告された[1]。これによって、Liイオンバッテリーの内部構造に、熱によって引き起されるダメージを調査することもでき、バッテリーの安全性の向上にもつながる。研究者らは断層撮影法によって、二つの標準的な市販のLiイオンバッテリーを観察した。一つは内部が強化されていて、およそ250 °Cに加熱しても何も起こらなかった。その後化学反応が熱暴走し、内部温度が1000 °C 以上に急上昇するとバッテリー内部の銅が溶けた。ただし動画はない。もう一方のバッテリーは単純に爆発し、バッテリーのキャプが飛び、溶けた材料が漏れていた。洩れなく、そうなると思います。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 4, p. 27.

DOI:10.1038/ncomms7924

15.5.29

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深海の

 熱水噴出孔で形成する鉄硫化鉱物、好物は知らないけど、二酸化炭素と水素を、メタノール、ギ酸、酢酸、ピルビン酸のような小さい生物有機分子の前駆体に変換できることがわかった[1]。これは、環境調和なプラスチックや燃料の触媒的合成を開発する、指標になりうる。さらにこれは、熱水噴出孔に特徴的な、鉱物と炭素が豊富なアルカリ環境での前生物化学に関する理論の裏付けともなる。対象となっている鉱物であるグレイジャイト(Fe3S4)は、CO脱水素酵素であるフェレドキシンと類似であり、CO2CH4COに変換できることが示されてきた。しかし前生物前駆体として機能するためには、低分子が溶液中に存在する必要がある。そこで研究者らは、様々なpHで実験を行い、メタノールや他の低分子を、常圧・室温下、溶液中で製造するためには、アルカリ環境が鍵であることも明らかにした。コンピューター法も使って、メタノールやギ酸生成が、アルカリ条件に依存することも説明した。グレイジャイトの色、グレイじゃいいと思う?実際には、淡いピンクとありました。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 5, p. 27.

DOI: 10.1039/c5cc02078f

15.5.28

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ナノレーザーで

 光をラボ・オン・チップに供給しうるものは、一旦製作してしまうと、その光源の波長をチューニングできるタイミングを失う。その中今回、リアルタイムで858から913 nmにチューニングできるプラズモンナノレーザーが開発された。研究者らは、有機溶媒に溶かした染料分子からなる液体材料で囲まれた金ナノ粒子アレイを使った。制作されたナノレーザーは、外部の光源で光学的に活性化できた。生じた発光波長は、溶媒と基質の屈折率の影響を受けるため、与えられた基質とナノ粒子で、溶媒を変えると発光波長も変わる。そこでマイクロ流体素子でナノ粒子アレイを集積することで、リアルタイムの波長切替えを実現した。たとえばジメチルスルホキシド中、染料IR-140とシリカ上のナノ粒子アレイからつくったナノレーザーは862 nmの光を放った。ここで溶媒をベンジルアルコールに変えると同じ素子は、891 nmの光を放った。すなわち溶媒のアドバイスで、素子は「そうしよう」に変化した。へんかな?

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 4, p. 26.

DOI: 10.1038/ncomms7939

15.5.27

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ポルフィリン環には

 四つのピロール基がある。これを12個に増やしたこれまで知られている中で最も巨大な芳香族分子が、延世大学と京都大学の共同研究チームから発表された[1]。研究チームはここ数年の間、アニオンや金属バインディング、エレクトロクロミズム効果の研究に関連して、大きな芳香族ポルフィリンを合成してきた。最も最近の成果が、どでかい[52π]ドデカフィリンで、一ダースのピロール基が連結し、ペンタフルオロフェニル基で修飾されている。この共役分子は、52 πで、[4n+2]Hückel則には従わない。基準を満たすために、分子をベンゾキノンで酸化し[50π]ドデカフィリンとした。その結果、これが、これまでの芳香族世界記録で、昨年同じチームが合成した[46π]デカフィリンに、勝った。さらに[50π]ドデカフィリンを、メタンスルホン酸を使ってプロトン化させ、分子を平たくし、より電子が非局在化出来るようにした。その結果、芳香族性がさらに向上した。ご奉公することも大切です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 4, p. 26.

DOI:10.1002/chem.201500650

15.5.26

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スーパーモデルや半導体

 薄さが常であるように思われる。エレクトロニクスメーカーは、より多くの成分をより小さな空間に押し込むことを続けている。究極のナイスなサイズは原子スケールのエレクトロニクスデバイスである。その中今回、それに近づく成果が報告された[1]。研究者らは、遷移金属ジカルコゲニドであるMoS2WS2のシートを成長させた。すなわちMo(CO)6W(CO)6とを遷移金属源として、またジエチルスルファンを硫黄源として使って、新しい化学的蒸着法で、単層のシートが創られた。そこに水素ガスを注入し、炭素様の析出物を除去した。得られたフィルム薄さは三原子だけど10平方メートルまで広がっていた。またそれは電界効果トランジスタをつくる十分な品質を有していた。ただしこの方法、限界もある。26時間を要し、550 °Cの温度が必要である。それでも、原子サイズの薄さの集積化を実現する第一歩であり、柔軟なエレクトロニクスや太陽光発電、ディスプレイなどで利用できる、と研究者らは述べている。究極のうすさに凄まじい競争がありそうです。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 4, p. 26.

DOI: 10.1038/nature14417

15.5.25

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ホソクビゴミムシは

 自身を捕食するものを遠ざけるために、暑くて刺激性のある液体を分泌線から出す。このムシの尾節の線には、貯蔵室、反応室、出口チャンネルを含むたくさんの部分がある。貯蔵室には、25%の過酸化水素と10%p-ヒドロキノンと10%のアルカンの水溶液があって、反応室には、パーオキシダーゼとカタラーゼ酵素がある。ゴミムシが見向きもしない時はなにも起こらない。ただ一旦防衛体制に入ると、貯蔵室から反応室に液体が流入し、酵素反応が始まり、p-ベンゾキノンが生成する。これが刺激性で、水が蒸発し圧力上昇して、飛び出させることができる。ある種のゴミムシでは、その液体の温度が100 °Cであり、700 Hzのパルスも発する。この複雑な機構の詳細が今回明らかにされた[1]。ゴミムシをおびえる状況に置き、爆発性スプレーが飛び出すように設定。これのX-線イメージを1秒間に30 から2000コマ得ることに成功した。筋肉は貯蔵室の液体を反応室に押し出すけどその量は一度に5 nLである。ただし反応室に入った瞬間に、密室の状態で反応が起こり、それに伴う圧力獲得で外に発射される。圧力低下後、同じサイクルが繰り返される。その結果、捕食動物は気のん毒にもp-ベンゾキノンを浴びることになる。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 May 4, p, 7.

DOI: 10.1126/science/1261166

15.5.24

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半導体のシートに使われる黒リン

 数原子の厚さで、高速で低電圧なしなやかなエレクトロニクスとして有望である。ただし高品質のこれを調製するには接着テープでもって、材料の塊の層をはがすため、恐ろしく時間がかかる。その中、溶液法でより簡便に大量の材料を製造する方法が報告された[1]。これによって研究のスピードの向上と実用化の可能性が広がって来た。黒リン、国有林にあるかどうかは知らないけど、をN-メチルピロリジンのバスに入れる。そのバスには、超音波のチューブがあって、高速で振動する金属チップで液体をかき混ぜることができる。この超音波処理によって、黒リンがナノメートルサイズの厚さのシートになって溶液中に浮揚する。ついでそれらのインクを表面に塗布し、黒リンの薄片でカバーする。ここで薄片のそれぞれがトランジスタになる。この溶液から剥離した黒リンから得られたそれの電荷移動度は、接着テープで剥離した黒リンのそれとほぼ同等であった。ここでは黒リンの研究が、懲りんと続けられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 27.

DOI:10.1021/acsnano.5b01143

15.5.23

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不活性な金属だった

 金が、ナノサイズの粒子として調製されると、Auも触媒としてええと言うことが明らかにされてから、10年以上経過するものの、金属の高い活性の基礎については謎であった。ナノクラスター内で、構造を規定する有機配位子を含むそれぞれの原子の位置を知ることで、粒子の構造と機能の関係を理解することが可能になるはずである。ただし、金をもとにした触媒、バイオメディカルなセンサーあるいは他の応用の発展を促進させるまでの詳細な点は未だに曖昧である。X線構造解析では大きな結晶が必要になり、顕微鏡では、低分子量のため、配位子の原子を見ることは難しい。その中、Au68(SH)32クラスターについて、原子分解能顕微鏡分析の結果と昨年発表された新しいコンピューターによる解析とを使って、重たい軽いすべての原子の位置が特定された[1]。すなわちかなり高い安定性を示すAu68(SH)32の四つの異性体の構造が明らかにされた。ついでこれらのクラスターは、COCO2に変換できる、空気清浄触媒として、正常に作用できることを示していた。クラスター、成果もハイクラスだった〜。

[1] Chemical & Engineering News, 2014 April 27, p. 26.

DOI: 10.1126/sciadv.1400211

15.5.22

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同位体凝集を同定した

 二つの成果についての記事である[1]。切り取ってもいい。光合成の際、独自の同位体比が、発生する酸素に与えられる。この同位体凝集(isotopic clumping)と言われる現象は、分子が二つもしくはそれ以上の重同位体が蓄積することである。凝集した同位体を有する分子は通常ではないけれども、現代の質量分析装置を使うと、それらの存在比を確実に測定することができる。同位体凝集という分野はわずか10年ではあるが、鉱物が生成する温度を引き出すのに利用されている。その凝集は、系が化学平衡にある場合に、ランダムな機会より多くみうけられる。その中、ヒアシンスの同位体が凝集されたO2(18O-18O18O-17O)の研究結果は、光合成では実際には予測されるよりも低い割合で凝集が行っていることがわかった[2]。別の報告では同位体凝集したメタン(13CH3D)が研究され、その相対的な存在比によって、家畜によって生産されるメタン源を同定することができることを示した[3]。凝集の特異性は、生物地球化学的に酸素やメタンの由来がどこかを位置づけることが今後可能になる。同位体凝集について、どう言いたいことありますか。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 26.

DOI: 10.1126/science.aaa6284

DOI: 10.1126/science.aaa4326

15.5.21

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爆発しやすい化合物の

 共結晶ペアが化合物の化学的安定性、衝撃感度や、他の爆発物として有用であることをきめる特性を改良できる方法であることが報告された[1]。アセトン過酸化物は簡単に調製でき安価である。ただしそれらは意表を突いて爆発することがある。また低密度であるため爆発力が大きくはない。これらの因子が市販の爆発物としての有用性を制限していた。その中研究者らはジアセトン過酸化物(DADP)と三種類のトリハロトリニトロベンゼン(トリクロロ(TCTNB)、トリブロモ(TBTNB)、トリヨード(TITNB))と1:1で共結晶を形成させた。明日になっても共結晶である。これによってDADPの密度と安定性が向上した。またDADPと比較して、DADP-TCTNBは、衝撃に対して敏感だけども揮発性は小さい。DADP-TITNBの衝撃に対する感度はDADPTITNBに比べて小さかった。これは単独の成分よりも共結晶になったほうが安定な最初の例である。共結晶化、爆発的に広がるかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 26.

DOI:10.1021/jacs.5b00661

15.5.20

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スチレンが

 英語読みは「スタイレン」に近くて、スタイル良さそうな響きである。ファインケミカルプラスチックス、エラストマーなどのための工業的に広く使われているこの原料は、2000万トンオーダーが世界で製造されている。一般にAlCl3HFあるいはゼオライトを使って、ベンゼンとエチレンからエチルベンゼンを合成し、脱水素でスチレンが導かれる。その中研究者らは、Rh触媒が一段階でその合成を完了させることを報告した[1]。そこではベンゼン、エチレンに加えてCu(II)反応剤も用いて、Cu(I)化合物と100%スチレン選択性でそれを与える。Rh触媒は実際の工業的な利用では高すぎるけれども、今回の成果は、より効率的な工業プロセスに近づく重要なステップで、反応の高い選択性は前例がない。さらに「もし銅酸化剤を酸素でリサイクルすることができれば、商業化の可能性も高まる」とコメントされている。スチレン合成の一連の流れ、一年生にもわかってもらえたでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 26.

DOI: 10.1126/science.aaa2260

15.5.19

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新しいカリホルニウム(Cf)錯体が

 合成され、後周期アクチノイドが、配位子に対してイオン的な相互作用で繋がるよりも、配位子との間で共有結合を形成できる証拠が提供された[1]。それを今日言うことにした。歴史的には、ウランのような前周期アクチノイドは共有結合を形成する一方で、後周期のそれは軌道収縮のためイオン結合性が増加する傾向があるのではないかと考えられてきた。研究者らの以前の研究で、Cfボラート錯体が合成されCf-O結合が強い共有結合性を示していたことから、先の考えが打消された。ただし電子豊富なボラート配位子だと例外的にそのような錯体を形成する可能性もあった。そこで今回、2,6-ジピリジンジカルボキシラート配位子を使った錯体(Cf(HDPA)3•H2Oでも同様の共有結合性が観測された。ここでは配位子の電荷密度がCf5f,6d,7s,7p軌道に供与されている。とりわけ錯体の緑色フォトルミネッセンスは、共有結合した配位子と金属の間の電荷移動に特徴的である。共有結合を形成するのは、Cf(II)酸化状態の相対的な安定性とCf(III)がより小さいサイズであることがもたらす効果のためであるらしい。後周期についても公衆に講習をお願いしたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 26.

DOI:10.1038/ncomms7827

15.5.18

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半導体のインクは

 紙やプラスチックなどの安価な材料に電子デバイスをプリントするのに使われている。一般にこれらは、有機あるいは金属酸化物材料で、その電子特性は、半導体に使われるシリコンと比べて不十分である。そこで以前研究者らは、シクロペンタシラン環をもとにしたシリコンインクを開発した。これは紫外線によってポリシラン鎖に変換し、それを350 °C以上の温度で焼くことでアモルファスシリコンを形成させる。ただしこの温度が他の安価な材料にダメージを与えて、だめであった。今回日本とオランダの研究チームは、レーザーを使って、シクロペンタシランインクを低温で多結晶シリコンに変換した[1]。それを紙の上に広げ、紫外光を照射、ついでパルス光レーザーをぶつけた。28ナノ秒のレーザーパルスは、シリコンの結晶化を駆動するのに十分なエネルギーであり、紙に損傷を与えることも回避できる。現時点では機能性デバイスのプリントは行なわれていないけど、柔軟で安価なセンサーや高周波発信機の作成も期待されている。特に公衆は高周波に注目しているかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 25.

DOI: 10.1063/1.4916998

15.5.17

 

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炭素とケイ素

 どちらも14族に位置する。それらがオキシドをつくる。CO, CO2は単量体として存在し、室温でどこにでもある化合物である。一方でそのケイ素同族体であるSiOは高温でしか単量体として存在しない。SiO2は、けい土、石英、砂として地球上で最もたくさんある化合物の一つだけど、それは別個の分子というより、隣接する酸素原子がケイ素原子に結合したネットワークである。その中研究者らは以前、嵩高いNHC配位子で保護したSi=Si結合を合成していた。このジョージア大の常人やないチームは、その化合物をN2OあるいはO2で酸化することで、Si2O3Si2O4化合物を合成した[1]。この単量体である酸化ケイ素を初めて単離できたことは、基礎科学と科学的美しさの両面で画期的な成果である。また室温で調製できるSi2O3Si2O4によって、酸化ケイ素の科学の詳細を解明することもでき、ケイ素表面の酸化やドーピングというマイクロエレクトロニクス工業においても重要な過程を理解する一助にもなる。ちなみにSi2O4SiO2が二量化した構造でSi-Si結合はない。一方でSi2O3酸化ケイ素は、Si-Si-Oで三角形(そ)をつくっている。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 27, p. 8.

DOI:10.1038/nchem.2234

15.5.16

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美術館では

 昔の傑作を復元するために、その作品に使われているニスや塗料の層を視覚化する必要がある。ミスを回避し徒労に終わらせたくはない。その中英国に拠点がある研究者らは、超高分解能フーリエ・ドメイン光コヒーレンス断層映像法と呼ばれる技術を改良した。これによって絵画の層を非侵襲で見ることができ、従来の破壊によるサンプリングと同様の深さの分解能で、およそ1 μmである。この文化遺産の科学は、目の組織層を視覚化するための映像法を活用した成果である。ただし深い塗料の層でもその感度を低下させない工夫は必要だったが、その結果、1600年より以前のたぶんラファエロによって描かれた「Madonna and Child」(ロンドン、国立美術館)のニスと塗料の層を視覚化することで、その技術力が明らかにされた。その絵ではニスが黄ばんでいるため、マドンナのドレスの一部分が、本来は青であるのに緑に見えていた。「ま〜どんなに変化したのでしょうか」鈍感な自分にもわかるかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 20, p. 25.

DOI: 10.1364/oe.23.010145

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複数の金属を

 を含む構造体で、金属イオンの比を変えることで、多成分反応の選択性を変化させる系が、スペインから報告された[1]。研究者らは三種類の等構造のMOFを調製した。それぞれのMOFには、Al, Ga, Inのいずれかが、inにあるがなである。そのいずれかを触媒として使って、ベンズアルデヒド、トリメチルシリルシアニド、アニリンとのワンポットStrecker反応を行った。その結果Al入りMOFは、α-アミノニトリルを与え、Ga入りMOFはシアノシリル誘導体を導き、In入りのMOFではイミンが得られた。ついでIn-Ga混合MOFとして、これらの金属が格子の均等な場所にあって、様々な比のものが提供された。ここでInGaの比によって反応速度や生成物の選択性が制御された。Gaが豊富なMOFでは、Al入りMOFと同様の反応を触媒し、30分でα-アミノニトリルを収率96%で与えた。一方Inが豊富なMOFは、四日後で収率64%だった。ちなみにこれらの結果とIn-Gaの比の因果は記されていなかった。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 20, p. 25.

DOI: 10.1021/ jacs.5b02313

15.5.14

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いわゆるスマートウインドウ

 運動はしないけど、化学的な酸化還元を使ってスイッチが切り替わり暗くしたりすることができる。ただしこの技術の実現には効果的な電力供給が課題である[1]。それぞれの窓にバッテリーを使うことは現実的ではなく、太陽電池をつけると一部の窓の邪魔になる。その中研究者らは、摩擦電気によるナノ発電機(TENGs)を使った研究を行っていた。それは動きが電気に変換されるものであるけど、二つのTENGsが先の電力供給に利用された。一つ目のTENGsは、デバイスの上にあって、雨滴の落下によって静電エネルギーを獲得する。もう一つは、風が吹いて二つのデバイスの層が動いた時にエネルギーを集めることができる。プルシアンブルーナノ粒子が窓の色の変化をする層を形成し、ZnHCFナノキューブは、素子のイオン貯蔵材料を構成している。TENGsは、柔軟なディスプレイ、身につけることができるエレクトロニクス、エネルギー効率のよい建物など別の自己電力供給システムでも利用可能である。TENGs、天狗さんの力も借りたい。

[1] Chemical & Engineering News 2015 April 20, p. 24.

DOI: 10.1021/acsnano.5b00706

15.5.13

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ニッケル錯体で

 硫黄、セレン、テルル原子を含む化合物(Ni2E2 E = S, Se, Te)2001年に発見され、それは通常でない結合距離を示していた[1]。そこで化合物の電子状態をどう表現すればよいか曖昧さが生じ、相当な議論になった。そこでは三つの可能性が示された。単結合のS22-(エスツー2マイナス)ユニット、三電子ハーフ結合ユニットでこの場合にはS23-(エスツー3マイナス)Niは混合原子価を持つ。さらに二つの独立したS2-(2マイナス)ユニットである。これを特定すべく結成されたチームが今回、ウイスコンシン州マジソンで、渾身の力をこめてマジで研究した結果、結晶構造さらにはスペクトル的な実験と、それらを計算化学が裏付けることで、電子状態を特定した。それによれば先の三つの可能性は区別することができ、M2E2化合物は、E2結合が連続している状態よりもむしろ、量子化された酸化状態、すなわちこれまでよく知られているS2-S22-と違ってS23-であった。混合原子価錯体、今後も登場します。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 20, p. 24.

DOI:10.1021/ja511607j

15.5.12

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ビール醸造は

 上手におこなわれる。穀物をすりつぶし、そのでんぷんを酵素で糖鎖に変換することから始まる(Mashing)。ついで穀物の皮と砂糖のような液体を分ける(Lautering)。この麦芽汁とよばれる液体をホップや他の香り成分をまぜて沸騰させる(Boiling)。ホップがビールに苦みを与え、より多くの香りやアロマが、後の発酵の段階で付加される。固体をろ過した液体は、発酵に最も適した温度に冷やされる(Cooling)。発酵タンクでは、酵母が麦芽汁と出会い、砂糖成分がアルコールに変換される(Fermenting)。グルコースが主だけど、マルトースやマルトトリオースも消化できる。さらに酵母はホップから出る脂肪酸も食べて代謝できる。酵母によって違った成分を好むけど、すべての酵母は糖鎖をエタノールとCO2に変換できる酵素をエンコードした遺伝子を持つ。さらに500以上のフレーバーやアロマ化合物もまた生産される。酢酸エチル(フルーティ)、酢酸3-メチルブチルエステル(バナナ)、酢酸2-フェニルエチルエステル(ローズ、ハチミツ)などはほんの一例である。すべての発酵が完了した段階で、酵母は会合し液体から分離されて、次の発酵に使われる(Finishing/Bottling)。一方でタンクから取り出された液体こそが、美味しくいただけるビールである。ちなみに、酵母はほうぼうにあって、燃料、ワイン、スピリット、医薬品、パンさえもつくるけど、ラガービール用の酵母は特別、スラッガーの如くである。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 20, p. 8.

15.5.11

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第二次世界大戦以降

 日本は毅然とした平和主義である[1]。その中先月、防衛省が基礎研究費を支給することを知って動揺する科学者もいた。初年度の総額は3億円で、国全体が提供する研究費に比べるとわずかであるものの、学界にとってはお金が支給されることが不吉な予兆である。「年度予算に登場したことは、日本の研究が軍事的様相を呈してきたことを示す様々な変化の中で、最新のものである」と多くの関心ある科学者は述べている。また米国国防総省国防高等研究事業局(DARPA)に端を発する政府のプロジェクトも関心事の一つである。昨年のこのシフトを非難するオンラインキャンペーンを始めた先生は「軍事目的や軍事の論理は学術界に大きな影響を与えかねない」と述べている。1950年日本学術会議は、戦争に結びつく研究を行わないという声明を出しその誓いが更新されてきた。それがタカ派の首相、中国や北朝鮮との緊張が大きくなるにつれて、アカデミアと軍事の関係が変化している。軍事的応用に関する研究の育成に関する議論は、安倍首相が議長を勤める科学技術イノベーション会議がImPACTと呼ばれるプロジェクトを出した時に始まった。12の研究プログラムを含み、5年間で5500億円が支給される。がこれらはハイリスクだけど高い商業用の利益を提供できる。政府によれば、このプロジェクトはそれぞれマネージャーがおり、科学者を基本とする大学間の共同で推進する研究である。またそれは非実際的な研究のためのエネルギッシュなDARPAに刺激されたものであるらしい。・・・以下は抜粋

・この巨額な予算は経済優先であるものの、成果はDARPAの場合と同様、軍事への応用も可能。・プロジェクトの成果は災害救済やヘルスケアへ応用できるという例・過去十数年の間の大学の予算削減の中、科学者の軍事基金に頼る割合の増加。・得られたデータの共有の制限の可能性 。・軍事による研究への侵略のサインに応えたオンラインアピール。などが記されている。

[1] Nature, 521, 13-14 (on May 2015)doi:10.1038/521013a

Nature誌は何も言ってねえちゃ〜だけど記事は取り上げられた。そのうち「防衛科研の申請もしんせい」というお達しがあるのでしょうか。・・・

15.5.10

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手足のかゆみ

 水虫と思っている人の半分、実はそうではないらしい。番組[1]では、かゆみに苦しんでいた方が登場。医師のアドバイス、ゲストがクイズに答える。正解は朝食で摂るある成分を減らすこと。一見ヘルシーだけど課題もあった。でその朝食、冷奴、お味噌汁の豆腐に納豆など、大豆が大好きみたい。ついである大学のチームが納豆を分析、納得そこにはコバルトが含まれていた。これが足の裏に到達してかゆみをもたらすとのこと。金属アレルギーの方は要注意。その症状が改善された方はなによりである。一方で番組ではコバルト金属みたいなものが登場していた。ほかにクロム、ニッケルを含むという食材が登壇した。これらも同様の症状を引き起す可能性があるとのこと。でも止まれ、金属そのものを含む食材には未だに出会ったことがない、多分。鉄分が不足していると言って、鉄くずを細かく砕いたものを補給することはない。コバルトも同様、ビタミンB12の成分だけど、形式酸化数はIIである。たしかに金属は金属イオンになるし、ジャスコはイオンに転換されたけど、これらはやっぱり別物である。

[1] 15.5.6放送「ためしてガッテン」

15.5.9

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高分解能質量分析は

 混合物の中の類似の分子を同定する場合には効果を発揮する。はっきりしている。一方で異性体を区別することは難しい。その中EHTの研究者らは、紫外スペクトルとマススペクトルの組合せで、生体分子異性体の構造を同定する方法を改良できることを発見した[1]UVレーザーパルスを使って低温にしたイオンを分裂させ、結果生じたフラグメントのスペクトルをOrbitrap社の質量分析で測定した。二次元スペクトルは、構造に特異的な指紋を示し、これを使ってペプチドの立体異性体やホスホリル化されている部位だけが異なるペプチドを区別した。さらに混合物の相対的な組成比を定量化することもできた。これに対してインディアナ大学の研究者は、ほとんどのペプチド残基がUVを吸収しないこと、様々なペプチドの高分解能UVスペクトルが予測できないこと、液体ヘリウム冷却イオン貯蔵システム、Orbitrap社の装置、チュニングできるUVレーザーの価格が相当に高いこと、などから実用的ではないと指摘している。ただし実用性がすべてでもないとも述べている。実用にも強うならんといかんでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 20, p. 24.

DOI: 10.1021/acs.analchem.5b00822

15.5.8

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シクロプロパンとフッ素原子

 この二つの最も単純なユニットは、にやっとはしないけど、薬品や農薬に安定性を付与し、その生理活性も向上させる。そのためフッ素化シクロプロパンはよく見られるユニットになってきた。ただしフッ素化シクロプロパンを導く一般的な方法の開発が課題だった。その中Rh触媒を使ったジアゾ化合物のフッ素化アルケンへの付加反応が、高度に官能基化されたフッ素化シクロプロパンを導く方法として報告された[1]。この化合物は、フッ素化カルベンのアルケンへの付加、フッ素化アルケンの閉環、シクロプロパンのフッ素化、そしてフッ素化アルケンへのカルベン付加で調製されている。この最後の反応をピバル酸ジロジウムが触媒し、様々なジアゾ化合物がパーフルオロフッ素化アルケンに、中程度のジアステレオ選択性で付加する。得られた生成物を中間体として利用することもでき、より幅広く誘導体を導くことができる。エナンチ選択的な系が開発されればさらに有用性が広がる系である。ユニクロにはない、シクロについての苦労話でした。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 13, p. 37.

DOI: 10.1021/acs.orglett.5b00576

15.5.7

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オルタネーター

 ボンネットにおるじゃあねえか〜。交流の電気を生成する発電機。これが数年前から濁音を発していた。今年始めの車検。じゃんけんで決めたわけではないけど交換をお願い。ついでにへばってり〜なバッテリーも新品にした。これで15万キロ走行も可能になった。そうこうするうちにこのことを忘れていた連休のある日、エンジンのかかりが悪い。夕方寿司店に出向く。大変な混雑、一旦お店を出るために車の始動を試みた。ライトは点灯、ナビの画面も立ち上がる。でもエンジンの始動する音は聞こえない。この時間帯ディーラーさんには人がまだいるはずだと電話した。しばらくして来ていただいた。まずはバッテリーがあがった可能性を考えて対応する。でもキュルと発しただけでエンジンはかからない。一月にオルタネーターもバッテリーも交換しているので問題なし。セルスターターらしい。セルフで交換は難。ディーラーから別の方々が登場。「後はおまかせあれ」と代車も用意していただいた。この好意も台無しにしないように運転します。

15.5.6

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原子惑星円盤の

 回転部の中で、多くのシアニドが検出された[1]。この史上初の発見は、新しく生成する太陽系では、複雑な有機化学が随所で見られることを示している。C-N結合を持った低分子はしばしば、アミノ酸や他の生体分子の前駆体であるので、天体化学者の興味をひきつける。その中ハーバードスミソニアンセンターの天体物理部門の研究者らは、チリ・アンデスの天文台で、問題もなく、われわれの太陽の二倍の重さで455光年先にあるMWC480星の周りの円盤が観測された。研究者らは、シアン化水素のラジオ波スペクトルを同定、これは今までも同様の円盤で観測されていたが、加えてより複雑なアセトニトリルやシアノアセチレンが、この円盤の外側の領域で検出された。この領域は、われわれの太陽系では、揮発性物質が存在する彗星が生まれる領域である。この発見は、原子太陽系星雲で観測される豊かな有機化学は、それ独自のものではないことを暗示している。安心しましたか?

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 13, p. 37

DOI: 10.1038/nature14276

15.5.5

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医師は

 手術室で、150年以上もの間、一般的な麻酔薬を使っている。一方でそれらの医薬品がなぜ患者を眠らせるのかよくは知られていない。その中麻酔薬ケタミン、多民族国家でも使われているけど、が、ネズミの脳の中で嗅覚の受容体にバインドし、活性化することが報告され、その受容体が麻酔の新しい標的である可能性が示唆された[1]。この発見はさらに、中枢神経系における、ケタミンがバインドする別のタンパク質を解明する一助にもなり、さらなる麻酔の標的の発見も可能にしている。嗅覚受容体は、鼻で臭い分子を検出することに加えて、別の細胞でのシグナル伝達にも関連している。研究者らは、ケタミンだけに特異的にバインドする脳内の、三つの嗅覚受容体を見つけ、受容体のアミノ酸配列や関連する受容体構造を使って、ケタミンがバインドする部位のモデルを構築した。さらにその受容体やケタミンに応答しない受容体を突然変異させ、それぞれ医薬品に結合できるかどうかも確認した。受容体の状態、大切です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 13, p. 37.

DOI: 10.1126/scisignal.2005912

15.5.4

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含窒素複素環は

 FDAが承認する低分子医薬品の60%を占める。その中ピペリジンが最もポピュラーである。この僕らにとっても大切な骨格を調製するために、珍しいタイプの分子である3,4-ピペリダインを使えないかと研究者らは考えた[1]。これまで芳香族の2,3-あるいは3,4-ピリダイン(ダインは三重結合だいん〜)の例は多く、脂肪族2,3-ピペリダインも知られていた。それに対して今回の3,4-ピペリダインは前例がなく、カルボキシベンジル保護したMe3SiOSO2CF3が結合したピペリジン誘導体が三段階で調製された。この化合物をフッ化セシウムと反応させると、反応の3,4-ピペリダインが発生し、混合物に求核剤あるいはDiels-Alderパートナーがあれば、それがトラップされる。さらにコンピューターモデルを使って、位置選択性を予見・説明し、一連の新しい官能基化されたピペリジンが調製された。ピペリダインも、だいぶん使われるようになってきたかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 13, p. 36.

DOI: 10.1021/jacs.5b01589

15.5.3

 

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風薫る五月

 新緑と濃緑の木々が、ない交ぜになって広がっている。離れ住まいが故、窓からのシーンは季節感満載。建物を出ると赤、淡いピンクのツツジ、辻だけではなくって通りを飾る。すぐ横にはサツキが満開、さっきみたっけ、こんどはこちらにも咲く。ツツジとサツキでは、サツキのほうが小ぶりで満開の季節が少し遅いらしい。赤い色素の代表アントシアニン、たんと知りたい、まずはWikipedia。ナフタレンの2位にベンゼン環を結合させて、1位のC-Hを酸素に置換えて+チャージを乗せた構造。さらに複数あるC-HC-OHで置換える。先のベンゼン環4位には水酸基、3位と5位の水酸基の数が0, 1, 2個で三系統に分類される。ついで他の部位への水酸基の組込みやC-OMe基への置換え。それらの組合せで様々な赤色を呈する。アルカリ性条件では青色にも変化する。再び屋外へ。ひと月ほど前は満開だった桜。今は木々が葉っぱで覆われる。白い花を咲かせるミズキにハナミズキ。花見好きにも、やすらぐ風情である。

15.5.2

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第一イオン化エネルギーとは

 気相中で、中性の原子から一電子を取り去るのに必要なエネルギーである。周期表の上の方に位置するグループの元素に比べて、第六、第七周期に属する元素が持つ大きな核電荷のために、これらの元素の電子はより速く動く。この拘束されていない高速の電子が相対論効果をもたらし、軌道エネルギー準位も変化する。そこで実験的に第一イオン化エネルギーを決定することができれば、相対論効果を理論的に理解する一助にもなる。ただし超重元素は、重イオン加速器で、核融合炉を使ってしか、つくりだすことができないこと、また半減期が短いことから、さきの実験を行うことも最も難しい。その中、日本原子力研究開発機構の研究者が先導する国際チームが、11Bのビームを249Cf標的に高速でぶつけて、半減期が27秒の256Lrをつくりだし、その第一イオン化エネルギーを実験的に決定した[1]Lrのそれは、4.96 eVで、周期表第一族のそれと同様である。Lrの予測された電子配置は[Rn]5f147S27P1/21である。なおここでp軌道のエネルギーは、相対論効果のために分裂している。Lr(ローレンシウム)、練習も繰返したに違いない。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 April 13, p. 8.

DOI:10.1038/ nature14342

15.5.1

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