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2015年10月

ビタミンB12の

 活性型は、わても知る、アデノシルコバラミンである。様々な作用がある中,最近多くのバクテリアでは、太陽光が引き起すDNA損傷から細胞を守る助けをする光受容性タンパク質の発色団であることも発見された。今回、この新しい過程の機構の詳細が報告された[1]。ここではDNAにバインドする、光受容性タンパク質である転写因子CarHの三つの異なる状態、すなわち暗闇、DNAにバインドした状態、光にさらされた後の状態のX線結晶構造が解明された。それによれば、暗闇では、アデノシルコバラミンは、DNAにバインドするCarHテトラマーの形成を助け転写を防ぐ。光がバクテリアにあたった時、アデノシルコバラミンが光分解されて、CarHの配座変化が引き起こされ、タンパク質はDNAから解離する。これによって、バクテリアは遺伝子を転写しカロテノイド分子が生成し、光誘起による光損傷に対抗する。これらの機構の詳細は、遺伝子転写の光制御の開発や、タンパク質同士の相互作用を制御する方法の開発の一助になる。ビタミンB12が、肩身んの狭い思いせず,十二分に活躍しています。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 October 5, p. 27.

DOI: 10.1038/nature14950

15.10.31

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シアノホルム

 メタンの水素三つがCN基に置き換わった化合物である。有機化学の教科書には時々、強い炭素の酸(pKa = -5.1(水中))であると記されている。ただしシアノホルムの合成の試みが一世紀以上に渡る中、本当に存在するのか疑問が残ったままだった。最も確かなこれまでの結果は、マイクロ波分光法で、分子を、極低温・気相中で、来そうだな」とその消えゆく様子を観測したものである。その中今回、化合物の単離と十分に同定にするのに必要な実験条件が明らかにされ、その存在が確かめられた[1]。まずシアノホルムは水中では、室温でも安定ではないかと考えられた。多くの試みはトリシアノメタニド(NC)3C-塩の硫酸によるプロトン化だったけれども、ここではそれに代わって、無水のフッ化水素を出発化合物・溶媒として使い、低温でトリシアノメタニドのカルシウム塩と反応させている。その結果、シアノホルムを結晶として単離することに成功したが、それは-40 °C以下だと安定で、湿気に敏感だった。そのため失敬することは難しい。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 October 5, p. 26.

DOI:10.1002/anie.201506753

15.10.30

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航空機の

 ジェット燃料のミストは、通常の燃料よりもはるかに燃えやすく、一旦爆発が起こると制御が難しく、大惨事に至る。その中、そのミストを、見過ごすことなく、制御できれば、安全性を向上させることができる。その中研究者らは、ある時に起きた飛行機事故では、プラスチックの窓の一部が壊れずに残っていることに気がついた。かつて使用されていた素材は、事故が起きるとエンジンの稼働を邪魔する性質があった。今回研究者らは、理論モデルを使って、一旦ばらけても、もとに戻る高分子添加剤を設計した[1]4年の歳月をかけてその合成を行い、テレキーレック(telechelic)高分子を手にした。これは高分子鎖の両末端に、塩基が二つ、あるいは酸が二つ組込まれた化合物で、ジッパーのように連結している。これらのパフォーマンスは高く、しかも最も単純である。カルボキシル基が水素結合ドナーで、三級アミンがアクセプターになっている。これを重量比で0.3%添加することで、エンジン操作を妨げることなく、ジェット燃料の爆発も防ぐことが示された。燃料に専用の高分子、公文書にも記載しなくては。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 October 5, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aab0642

15.10.29

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ラジアレンは

 独特な環状の炭化水素で、環のそれぞれの炭素から二重結合が外に向いている。星形で、これが欲しかった。すでに三、四、六員環のポリエンが合成されていたものの、五員環ラジアレンは合成されていなくて、不安定であるとされてきた。今回研究者らは、計算化学から始め、[5]ラジアレンの合成戦略を開発した[1]。その構造と特性は、合成面だけではなくて物理有機化学の点でも興味深い。今回それを手にしたことで、系統的な比較も可能になり、この独自の交差共役な系をπ構築の部品としてどう使うかに関する新しい視点を持つこともできる。一般にラジアレンは1000 °Cに達する温度で、鎖状のポリエンの脱離や転位反応を利用して合成される。この方法では[5]ラジアレンは酸素存在下、直ちに分解する。またその構造はDiels-Alder 二量化で重合も起こし易い。以前研究者らは、デンドラデンと呼ばれる鎖状の枝分かれポリエンを合成したけど、そのときは鉄トリカルボニル錯体にすることで安定化させていた。今回これによって閉環反応を行い、鉄錯体を低温で除去して、化合物を導いた。味あるラジアレン合成です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 October 5, p. 7.

DOI: 10.1021/jacs.5b07445

15.10.28

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アミノ酸の

 カルボキシラート部位をトリフルオロボラート基でおきかえることで、ボラアミノ酸が創製された[1]。研究者らによれば、この新しい化合物はBF3基を持つため、18Fで標識することで、陽電子断層法のプローブとして、細胞内でアミノ酸のトランスポータータンパク質活性を追跡し、疾病の診断や薬開発の一助になり得るとのことである。これらのタンパク質の異常発現は、ガン、薬物依存、精神疾患と関連しているが、それについての生体内での研究は、適切なトレーサーがなくて「とろいさ〜」状態だった。別の研究者らは18Fで標識した糖鎖をPETイメージング用に開発し、アミノ酸カルボキシル部位をボロン酸で置換えることを試みていた。今回はこれにヒントを得て、BF3をアミノ酸に組込み、ボラアミノ酸とアミノ酸が、アミノ酸トランスポーターを区別できる組合せであることがわかった。研究者らは、腫瘍を持つネズミのコントラストがはっきりしたPETイメージングを得ることで、ボラアミノ酸の有用性を実証している。パラボラアンテナみたいなボラアミノ酸、生体情報をキャッチ、常法になるかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 36.

DOI: 10.1126/sciadv.1500694

15.10.27

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ポリアクリル酸は

 様々な高分子を与え、それらは大スケールでも生産され、用途も多い。器用と思います。ただしその主鎖はすべて炭素骨格でつながっているため簡単には壊れない。また水への溶解性のため回収することも難しい。その中研究者らは、分解しうる炭酸エステルで連結した高分子をつくってこの課題を解決した[1]。ポリグリセリン酸炭酸エステル合成のために、ベンジルグリシジルとCO2の開環共重合が、二官能性Coサレン触媒を使って行われてベンジル保護した高分子が導かれた。ついでベンジル保護基をPd触媒による水素化ではずし、期待の高分子を得た。脱イオン化した水の中、ポリグリセリン酸炭酸エステルは、グリセリン酸とCO2に分解し、その半減期はおよそ12日だった。同様に、それとポリエチレングリコールとアジリジンを交差連結させることで作成したヒドロゲルは、対応するポリアクリル酸ヒドロゲルよりも速く分解した。新しいポリマーは、化成品、生物医学、薬への応用など、広い範囲で使われる可能性がある。炭酸ベースのポリマー、簡単にできそうです。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 36.

DOI: 10.1021/jacs.5b07911

15.10.26

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紫外線は

 市街地にも届く。この見えない光や可視光は、11-シスレチナールをすべてトランスに異性化する反応も引き起こす。これによって視界も広がる。化学者はまた、水酸基のOH伸縮振動を標的に、近赤外光で、OHそのものやその近傍の置換基の配座を変化させる系の研究も行っている。配座変化は、異性化する置換基より離れた位置にあるN-H結合によっても引き起こされる可能性があった。そこで今回、異なる環で、離れてMeONH基が含まれる双環性化合物である6-メトキシインドールについて研究が行われた。シン配座は、MeO基がNH基の方を向き、安心なことに、アンチは逆向きである。研究者らは、分子に近赤外レーザー光を照射すると、波長によってそれぞれの配座でのN-Hの伸縮振動を制御し逆の配座に異性化させた。この離れた位置の光誘起による結合のフリッピングは、太陽光による大気反応を理解する端緒でもある。近赤外、離れた親戚の方にもご紹介を。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 35.

DOI: 10.1021/ jacs.5b08588

15.10.25

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(–)-incarviatone Aは

 2012年に単離された天然物である。モノアミンオキシダーゼ抑制作用を示し、鬱病、アルツハイマー病や他の神経疾患を治療する可能性のある化合物である。ただし入手の困難さが、より深い研究を妨げていた。その中、北京にある大学と研究所のチームは、異なるC-H結合を官能基化する方法を開発し、14段階を経る最初のエナンチオ選択的な、それの全合成の一部に利用した [1]。フェニル酢酸を出発化合物に、分子の官能基化されたインダン骨格を組み立てる反応に使われている。なおC-H官能基化の反応開発は現在、有機化学の主たる研究課題の一つだけれども、この例のように複数のC-H結合を連続で反応に関与させて、複雑な天合成を効率的に行う系は、難易度の高い課題であった。この前例によって、複雑な分子の短段階合成に、これまでには考えられなかった(unthinkable)経路が考案される可能性が示された。Unthinkableで安心か。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 35.

DOI: 10.1021/jacs.5b08551

ちなみに日本では、フェニル酢酸、入手の際に許可が必要、たくさん購入できるかわかりません。

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病院で

 皮肉にもある種の病原菌ももらってしまう。薬は、腸内微生物も殺してしまい菌が生き残る環境になる。時には、重大な感染で、下痢や炎症を引き起こす。医者は通常、感染をバンコマイシンのような抗生物質で処置するけれども、バクテリアは回復力があって、およそ20%の患者さんは、感染が少なくとも一回は戻る。そこでその毒性を、抗生物質を使わずに、中和できる方法が探索されていた [1]。ここでは毒のプロテアーゼドメインを抑制することがメインである。一旦毒が、内皮の細胞の細胞質を通り抜けると、プロテアーゼは、グリコシルトランスフェラーゼドメイン(GTD)にダメージを与えてしまう。そこでハイスループットスクリーニングで、探索したところ、化学療法による脱毛の治療薬として、臨床実験が行われているエブセレンが、有効であることがわかった。その毒に感染したネズミにエブセレンを投与したところ、GTDの放出が完全にブロックされ、炎症の軽減と病原菌によるダメージが軽減された。質量分析の結果は、エブセレン中のセレン原子がプロテアーゼドメインの活性部位にあるシステインと反応することも突き止められた。今後はエブセレンの構造を変えた化合物での実験も必要であるものの、化合物の単純な構造が、毒をブロックする低分子の始まりになり得ると研究者らは考えている。エブセレン、構造は見せれんですが、東京化成でも販売されています[2]

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 13.

DOI: 10.1126/scitranslmed.aac9103

[2] http://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/E0946/

15.10.23

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1666年アイザック・ニュートンは

 プリズムを使って、白色光を虹色に分けた。そこで彼は二つ目のプリズムを使って、分けた色を再結合させた。このリズミカルな実験によって「光はスペクトルである」という重要な結論を導いた[1]。ニュートン以来、彼の予想を超えて光科学は進歩してきた。光はラジオ波からガンマ線まで何でも表現することができ、それは電場や磁場の振動からできている。また振動は単に波ではなく粒子の特性も有している。電磁スペクトルの理解と制御が発展するにつれて、物質はどのように光を吸収・反射・透過するのかについての理解も進み、光を触媒や、化学システムの理解や制御するためのプローブに使うことも盛んに行われるようになった.1993年に発行の書籍では「化学の歴史そのものが、光化学や分光学と深く関わり、化学結合の本質が発見された時のインターフェースであった」とも記されている。さらに光を使って、低分子から巨大なタンパク質の化学構造を解明、分子が引き起す反応の動力学も探求、光化学によって、新しい分子も誕生している。2015International Year of Light[2] に敬意を表して、光の歴史と化学で鍵となったいくつかにハイライトを当て、化学者がどんなふうに、光利用を推進し、新しい発見が誕生するのかという将来展望も記した。ひっかかることなく光を、しっかり学びましょう。

[1] Chemical & Engineering News, October 12, p. 13.

LIGHTING UP CHEMISTRYの序の部分。次のページには年表もあり、是非ご覧あれ。

[2] http://www.light2015.org/Home.html, http://iyl2015-japan.org

15.10.22

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ACSは

 1018日から24日まで、National Chemistry Week (NCW)を開催する。今年のテーマは「Chemistry Colors Our World」である。ACS185の支部セクションが、体験型の活動を、小学校、博物館、ショッピングモールや他の公の場所で行う。NCWの目標は、化学や化学者をコミュニティに連れて行くことであり、テーマは、誰でもが関わり、それ自身がある程度簡単で、革新的かつ、触れてみて面白いものとして、色々な中から「色彩」が、選ばれた。NCWの出版物「Celebrating Chemistry」は英語とスペイン語版があり、活動の考えや他の資料も含まれている。また存在する中で最も暗い材料についてのビデオも販売される。化学の先生の協会は、高校の化学の先生方に、色彩化学に関する講義プランを提案する予定である。さらに高校三年生以下は、絵入りの詩のコンテストに参加することもできる。「色彩に触れて、鬼才を発掘できる機会」であることも記載しておきましょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 October 19, p. 9.

日本でも今週は化学週間です。

http://www.chemistry.or.jp/news/information/post-155.html

15.10.21

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Richard F. Heck先生が

 109日フィリピンのマニラでご逝去された、享年84[1]。先生は2010年に根岸先生、鈴木先生らとともに、Pd触媒によるクロスカップリング反応の開発で、ノーベル化学賞を受賞された。これらの反応は現在、有機合成で広く使われ、医薬品や材料を含む様々な化成品が提供されている。先生の名を著名にしたクロスカップリング反応は、化学会社であるHercules Powderに在籍していた先生が、196070年代に行った先駆的な研究に端を発する。そこでPdが炭素炭素結合形成反応を触媒し、芳香環とアルケンが連結することを発見した[2]。「先生の貢献の幅の広さは、人を圧倒し、Heck反応を遥かに超えていた」と1971年から1989年に在籍していたDelaware大学の先生は述べている。先生は、π-アリル金属錯体を同定した最初であり、遷移金属触媒プロセスの機構を探索した最初の人の一人でもあった。先生の最後の学生だったSilverberg教授(Pennsylvania州立大学)は、「先生は自分が今までにお会いした中で最も素晴らしい人で、思いやりがあり、謙虚な方でした」と述べている。ご冥福をお祈りします。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 October 19, p. 7.

[2] DOI:10.1021/ja01022a034

15.10.20

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人類は

 独自の無数の細菌に囲まれて生きている。最近これらの細菌で人物を同定できることが初めて示された[1]。人は微生物の痕跡を、自分自身が通った場所や大気に残すことが知られていた。ただしこれまでの研究は、検出できる細菌を区別することに成功していなかった。今回研究者らは、細菌を採取し、ある部屋に置き11人の人に入ってもらった。一方でそれら細菌の遺伝子の配列も明らかにした。その結果、数時間以内に、大気中やセットしたものから、区別できる細菌の放出を見つけることができた。数千の細菌のグループから、これらの細菌の指紋を区別できている。研究者はこれを犯罪捜査などに使えないかと考えている。たとえば調査官は、犯罪現場にいた人の存在を検出することができる。あるいは医療関係者は、感染症になった人を追跡することも可能である。どちらにしても今回の結果は、われわれが出会う微生物は、他の人によって積極的に放出されたものも含み、それらは家族、仕事仲間あるいは、完全に知らない人からであるかもしれない。細菌の指紋、もやしもん[2]にも聞くべし。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 35.

DOI: 10.7717/peerj.1258

[2] 石川雅之作の漫画、主人公は菌が見える。

15.10.19

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要介護な

 祖父と母と三人で暮らす健斗、五年ほど勤めた会社を退職。アルバイトをしながら自宅で、行政書士のための勉強に取組む。コツコツという耳障りな祖父の杖。つれえ。祖父に自分のことは自分でできるように仕向ける母親。時にきつい言葉が祖父に向けられる。「そろそろ迎えにこんかと言う祖父」に尊厳死をと考え始めた健斗。検討すべきは何か、友人の話に従って,出来うる限りの世話をすることにした。これで体力的にも衰えて、穏やかに死を迎えてもらえるのではないか。限りなく続く時間と圧倒的な退屈さ。なんとかしてあげたい。母親とは真逆だけど、理念がある点は共通である。特攻に行き損ねた身であること、時になんだか自分で準備をしては、決して口にしないだろうと思っていたものを食べている気配。あるとき様子がおかしい。病院に急ぎ連れて行った。猫なで声の応対にうんざりしつつも家に戻った。デイ・サービスで見た祖父の姿に悶々とした。再就職が決まった。駅まで見送りに行きたいという祖父。母の運転する車。「週末には戻ってくれば」という母。「わしのことは気にせんで」という祖父。素早く走り去る車、いつまでも手を振ったりの二人だった。

[1] 羽田圭介著「スクラップ・アンド・ビルド」(文藝春秋)

15.10.18

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エリックが

 リュックをかついできた。キャスター付きバッグも持参。恵まれた天候、エドモントンを彷彿させる。人口50万都市を車で移動。ここに来るまでの状況とは違う。午前8時の丸ノ内線、足下に鞄をはさんで身体が固定される。フレキシブルな分子が、溶媒から沈殿して同様の状態になる。励起状態からの戻りで、楽チンな振動が、しんどうくなって、光エネルギーとして放出される。午前11時半の昼食。カジュアルレストラン、豊富なメニューとその安さ。ここは日本の方がお手頃らしい。一方でコンビニは本国の方が、とのこと。空の青さと建物が織りなす色合い、キャンパスの入口。I cannot pass. シーンをi-phoneで切り取る。工学部の上階に到着。中庭の椰子の木に目がいく。この配置の珍しさ、カリフォルニアで過ごしたときのことが話題になる。セミナーの後、その部屋のつくり、照明、素晴らしいというメッセージをもらった。政治的な意味はそこにはない。改修本部・施設部の奮闘のお陰である。

15.10.17

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がぶ飲みする

 ソフトドリンクは、虫歯を引き起しうる。長年に渡って酸性飲料は、歯のエナメル質の主成分である、ヒドロキシアパタイト(HA)を浸食する。これをナメルと歯が痛くなってくる。なので飲むのを諦める場合もある [1]。そこですでに、食品として安全なHAを保護する高分子電解質を飲料に添加することが提案されていた。ただしこの導電性高分子がどの程度保護の効果があるのかほとんど知られていなかった。今回の実験では歯の表面の唾液によるコーティングと添加剤がどのように相互作用するかを理解するために、表面イメージング法が使われた。まずHAの平面の層が調製されて唾液でコーティングすることで、タンパク質や他の歯にある唾液様の分子の保護層を刺激した。次に歯の表面を、多くのソフトドリンクのpH 3.2に近い酸性度の流れ三種類に浸した。一つはクエン酸のみ、別のものは、クエン酸と、アニオン性高分子電解質とカルボキシセルロースあるいは、カチオン性高分子電解質とキトサンである。原子間顕微鏡や他の表面技術を使ったところ、アニオン性カルボキシセルロースは、歯の上の層を通り抜け、HA近くの小さなタンパク質と混ざり合っていた。一方でカチオン性のキトサンは、歯の表面に吸着し、大きなムチンと呼ばれるグリコシル化タンパク質と、おそらく交差連結していることがわかった。さらなる研究が必要だけど、キトサンが、きっと酸から守ってくれる可能性が高いです。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 28, p. 10.

DOI: 10.1021/acsami.5b07118

15.10.16

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神経毒のメチル水銀は

 残留性汚染物質で、食物連鎖を経て、動物の中に蓄積する[1]。これまで科学者は、工業地域の近くでメチル水銀のホットスポットを観測してきたものの、サンタクルーズ近くのAño Nuevo州立公園まで、来る〜ずことはなかった。そこには数千頭のゾウアザラシがいる。それらは身長14フィート、体重5000lb(およそ2トン)になりうるけれども、1年に二回、Año Nuevoに巡礼にくる。春と夏には、交尾し出産する。冬には脱皮の過程で、アザラシたちの肌や体毛が脱落する。研究者らは、その脱皮した皮の中に高いレベルのメチル水銀を観測した。加えてAño Nuevoより離れた水中のメチル水銀の量も、海岸に近い場所より高く、脱皮の時期には急上昇した。奇しくもアザラシたちは、このことを知らずに高濃度のメチル水銀を表皮に蓄積して遊泳している。これは、これまで認識されていなかった大洋での、メチル水銀の移動機構である。貴公も理解できたかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 26.

DOI: 10.1073/pnas.1506520112

15.10.15

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蚕から

 得られる絹は、強さと耐久性を持つ、自然界からのタンパク質繊維の贈り物である。ただしそれは自然界のベストな生体高分子ではない。クモの糸、意図するまでもなく、より強くて切れる前に、より伸縮する。ただしそれは大量生産が難しい。この生糸のジレンマを解決する方法として、二酸化チタンのナノ粒子を蚕の餌に混ぜる方法が報告された。研究者らは、蚕の餌に染料をまぜると色つきの繭が得られたという報告に触発された。また餌を与える方が、繭からできた生糸に加工を施すより容易である。蚕に重量比4%までのTiO2を含む餌を与えた。ほとんどのTiO2は排泄されたものの、つくられた繭にもそれが含まれていた。1%TiO2を混ぜた餌を経て得た生糸は、重量比で0.005%のチタンを含み、従来の生糸と比較すると、強さの点で優れ、UV照射に対する崩壊に対しても抵抗性があった。一方で2%TiO2を与えた場合には、従来のものと同様で、それより多い量のTiO2を与えた場合には、強度は低下した。蚕も、かわいい子やなあと、育ててあげてくださいね。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 26.

DOI: 10.1021/acssuschemeng.5b00749

15.10.14

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ステロイド様の化合物である

 ウルソル酸やトマチジンは、リンゴや緑熟トマトに含まれる成分であり、培養検査では、人の筋肉細胞の成長を促進し、ネズミでは加齢による筋肉の衰えの強力な抑制剤であることが示されていた。その研究チームは、その化合物が、価値のある医薬品あるいは栄養補助剤として、わかれいへんけど、加齢による病や傷さらには、アスリートや予備役兵の、トレーニングからの回復の助けになると信じていた。そこで彼らはそれらを商品化すべくEmmyonと呼ばれる会社を設立した[1]。そこで奇跡的な分子が作用する機構が明らかにされた。ネズミでの実験では、タンパク質である転写因子ATF4を、加齢による筋肉衰退のメディエーターとして同定した。さらにウルソル酸やトマチジンは、ATF4-が制御するmRNAsを含む、筋肉でのmRNAの複合的な変化を引き起すこともわかった。筋肉の組織細胞を試験することで、ATF4活性を減少させると、筋肉の衰えや縮小が、ネズミが年をとる間に、抑えられることもわかった。そのうちウルソル酸も売るそうや。かたやトマチジン、ちっと待ちジンかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 26.

DOI: 10.1074/jbc.m115.681445

15.10.13

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タンパク質は

 治療薬として価値のあるものになり得る一方で、それらはしばしば免疫反応を引き起す。その負の効果を軽減させる代表的な方法は、タンパク質をポリエチレングリコール(PEG)でコートすることである。それでも多くの患者で、免疫系が反応し、抗PEG抗体ができて、薬の効果が減少しアレルギー反応が出る。その中、研究者らは代替物として、ポリカルボキシベタイン(PGB)に注目した[1]PGBは、両性イオンであるカルボキシベタインアクリルアミドからつくられ、両性の高分子となり、親和性が向上しPEGより生体適合性が向上している。研究者らは交差で連結したPGBネットワークを、わ〜くわくしながら、つくった。それは免疫系による認識から治療のためのタンパク質の表面が覆われて保護されていた。そこで痛風のための酵素療法であるウリカーゼに応用した。保護しないウリカーゼは、健康なネズミでは、高いレベルの抗体が発生した一方で、PGBでコートしたそれでは、抗ウリカーゼあるいは抗PGB抗体は発現しなかった。この方法は、これまで治療に使うには免疫原生が高すぎると考えられていた生体分子でも、両性イオンを適用することで、利用の可能性を開く端緒になり得る。ベタインが、めっちゃいんらしい。ウリカーゼの売買いも活発になるゼ。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 26.

DOI:10.1073/pnas.1512465112

15.10.12

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カリブ海の

 海綿動物から20年前に単離された、batzelladineアルカロイドは、次の二つの理由で化学者を魅了している。1、化合物は強い抗HIV活性を示すこと、2、その複雑な構造が全合成に値する標的であること。ただし化合物はたくさんの含窒素官能基を有するため、合成はチャレンジングである。これらの求核的な置換基は酸化を受け易く、予期せぬ反応を引き起す可能性もある。以前の合成では非芳香族N-複素環から出発し、窒素保護基を利用することでこの課題を解決したものの、その脱着に余分な過程を、わかっていても、必要とした。それに対して今回、官能基化されたピロールのような芳香族含窒素複素環を出発化合物として、合成スキーム後半で、選択的にピロールを還元する方法が採用された[1]。それによって(+)-batzelladine B9段階合成が達成され、以前の方法のおよそ半分のステップである。この方法は、脂肪族含窒素成分を使うことが適切ではない場合に適用できることに加えて、窒素の軽々しい(promiscuous)挙動を和らげることも可能である。理想の窒素によりそう方法かな。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 25.

DOI:10.1038/nature14902

15.10.11

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鉄ニトリド錯体は 

 窒素原子を有機物に移動させることができることを発見した研究者らは今回、錯体が窒素原子を、部分的に他の金属錯体に移動するのに利用できることも発見した。金属窒化物の新しい局面に加えて、得られたニトリド橋架二核錯体は単分子マグネットとしても作用しうる[1]。単分子マグネット(SMMs)は、ぐねっとはしていないけど、常磁性種であり、印加磁場にさらした後も磁性を保持している。SMMsは独立型だけれども、昔からあるバルクの磁石のように作用する。それは高密度情報貯蔵や量子コンピューターへの応用で興味が持たれている。そこで新しいSMMsは、鉄(IV)トリスカルベンボラート錯体とV(II)メシチル錯体を結合させることでつくられ、構造分析とX-線光電子スペクトルの結果は、部分移動反応は、二電子過程で、窒素がFe(II)V(V)イオンを、無事に、ブリッジしていることを示していた。なおこの橋架けを仕掛けたのは、インジアナ大学とボルドー大学の研究者らである。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 25.

DOI: 10.1021/acs.inorgchem.5b01455

15.10.10

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同位体存在度と

 原子量に関するIUPACの委員会は二年ごとに、原子量を評価する[1]。どの元素が対象になるかは、新しいデータがでた〜かどうかに依存する。今年は中国の計量学国立研究所が明らかにした質量分析の結果だけが新しいもの[2]で、イッテルビウム(Yb)が標的になった。平均して元素の原子量は14年ごとにアップデートされるらしい。ただし中にはそれより長い間同じである元素もある。たとえば鉛、原子量が確かであることと、実験は、高価で同位体が多いサンプルが必要となるため、1969年にアップデートされたのが最後である。Ybの場合、標準の原子量は七つの同位体の重量の平均として計算されている。またその同位体の比は、地球上の天然存在比に由来する。その結果1934年化学分析から原子量173.04になり、その後、質量分析でも確かめられた。ついで2007年、追加の質量分析で173.054に修正された。さらに今回173.045になった。「イッテルビウムのわずかな重さが、どこかに行ってるビウム」って誰かが言ってルビウム。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 9.

[2] DOI: 10.1039/c5ja00054h

15.10.9

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芳香族含窒素複素環は

 様々な生理活性化合物で見られる化合物群である。今回、有機化学のホットな話題である、C-H活性化と光レドックス触媒を組合せて、様々な置換基と構造を持つそれらを導く反応が開発された[1]。これまでの金属触媒を用いる方法とは違って、配向基を芳香環に導入する必要はなく、超原子価ヨウ素反応剤を用いる芳香環アミノ化の様に、過剰量の反応剤は不要である。また反応は位置特異的に進行し、大抵の場合、電子供与性置換基のパラ位の、水素を払いのけてC-N結合が生成する。また合成経路が長い場合でも、かなり後半部分にでも、利用できる反応である。そこで反応は、芳香族化合物と、イミダゾールあるいはピラゾールのような芳香族含窒素複素環、または炭酸アンモニウムのようなアンモニア等価体を加える。そこにアクリジニウム触媒と共触媒であるTEMPを存在させ、酸素存在下、ブルーライトを照射することで達成されている。ブルーライトで結果もブライト、サムライも驚きです。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 21, p. 5.

DOI: 10.1126/science.aac9895

15.10.8

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核合成いいんじゃない

 星の中心部では、新しい元素が誕生するプロセスがあって、p過程と呼ばれている。勝手に始まるかどうかは知らないけど、そこでは原子がプロトンを捕まえる。ただし核崩壊が速いため、あまり解明されていない反応である。これまでの標準的な実験では、対象となる重い元素からできた標的に、加速器からプロトンビームを向ける。それに対して新しい方法では、連続する重いイオンを、いわゆる貯蔵リングに送り、そこでそれらに水素標的をヒットさせた[1]。貯蔵リングでは、イオンはぐるぐる回ることが出来て、標的を繰返しヒットした。これによって、イオンのエネルギーをp過程反応に適した大きさにチューニングできる。とりわけ研究者らは今回、96Ruイオンの流れを使って、97Rhイオンを発生させ、反応速度を測定した。この技術は、別のp過程反応や、同様のエネルギーを必要とする天体物理学過程にも適応できるとのことである。貯蔵リング、小僧がリング上で使うことはない、多分。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 14, p. 33.

DOI: 10.1103/physrevc.92.035803

15.10.7

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Hello. This is Satoshi Ōmura.

 ノーベル賞受賞おめでとうございます[1]。ありがとうございます。謹んでお受けします、驚きました。ノーベル賞を受賞されてどう感じておられますか?大変重要な研究をされた本当にたくさんの研究者がおられます。自分の研究はノーベル賞に値するほど影響力はないと感じていました。たしかによいことはしました。がたんさんの素晴らしい研究者が世界中におられます。自分は大変ラッキーだったのでしょう。・・・あなたは自然の中で、微生物を探索されておられます。・・・そして重要なエバーメクチンを、地方のゴルフクラブで発見されたと聞いています。人々がそう信じているのは、私がゴルフファンだからでしょう。でも実際にはゴルフコースに非常に近く、時にはゴルフコース内であるとも言えます。ゴルフコースには草、砂、ときには木があって、その木の近くでそれを採取しました。皆さんは、自分が芝生でゴルフをしていると信じていますが、実際には芝生ではありません。それはいい話ですねえ。・・・12月ストックホルムで歓迎できることを楽しみにしています。

I wish your lovely evening in Japan.

[1]大村先生の電話インタビューより(http://www.nobelprize.org)

15.10.6

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レチナールは

 目の中にあって、光によって二重結合の異性化が起こり、これによって見ることが制御されている。そこでドイツの化学者は、このことを参考に、EオレフィンをZオレフィンに異性化できる一般的な触媒合成プロセスを創製した[1]Zオレフィンは構造的には束縛された分子であり、通常はEオレフィンより不安定でEオレフィンに戻ってしまう。その中、先のE-レチナールを活性化させ、Z-レチナールに異性化できる発色団であるリボフラビン(ビタミンB-2)を参考に、Zオレフィン合成法が開発された。平面の共役Eオレフィンを、ねじれた共役していないZオレフィンに異性化させるリボフラビン触媒反応である。ねじれたZオレフィンは、光によっては十分には励起されず、E異性体には戻らない。ここでのトリックはレチナールのようなポリエンを使わず、二重結合が一つのより短いオレフィンを使っていること、さらに別の置換基を組込み、異性化の後、好ましくない非結合性相互作用が生じる点が秘訣である。この方法は、ドラッグデリバリーや農薬研究で、複雑な分子の枠組みをつくるための有機合成において有用な方法になり得るものである。新しい異性化の方法で、威勢もよい。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 14, p. 33.

DOI:10.1021/jacs.5b07136

15.10.5

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エピコラクトンは

 三年前、わりと最近ね、菌類から発見されて単離された天然物。菌類発祥、でも皮肉にも、抗菌性・抗真菌性を示す。三つの四級炭素中心、複雑な水酸基とカルボニル基のつながりを含む、多環式化合物である。それに対して多感な合成化学者は、エピコラクトンの全合成に挑む。今回ドイツの先生らは、それに至る天然資源と生合成経路に着目した[1]。その結果、生合成経路を模倣することで、バニリルアルコールからわずか8段階でそのラクトンを導くことができた。合成の鍵となる部分は、カスケード反応であり、二つの芳香族出発化合物を組合せて、5つの環と三つの四級炭素、三級アルコール部位を持つ、かご型化合物が導かれる。これによって高い効率の初めての全合成が達成された。研究者らは「このレベルの複雑さを有する化合物を、最初からすべての経路を考えるのは、相当に難しい。それに対して自然に倣うことは、価値のある合成戦略である」と述べている。価値のあるモノマネ、かっちょいいマネージメントの成果です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 14, p. 32.

DOI: 10.1038/ nchem.2336

15.10.4

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キツネノテブクロ

 スズラン、オオカバマダラ、ヒキガエルは、心臓発作を起こす防衛ための毒である、強心配糖体をつくる植物・動物の仲間に、はいっとうたい。強心配糖体は現在、猫いらずから心臓蘇生剤まで様々な領域で利用されている。一方で、自然界でこの毒が行き渡ると、多くの昆虫,両生類、は虫類、ほ乳類は、心臓毒に対する耐性をつくる。そこでオーストラリアの研究者らは、これらの幅広い生き物の耐性戦略を比較し、イオン輸送タンパクであるNa+/K+-ATPase12種類のアミノ酸に帰結することを明らかにした[1]Na+/K+-ATPaseのこの領域は、強心配糖体の毒がバインドし、適切な心臓の動きを邪魔する。すべての動物の分類群で、タンパク質の二つのアミノ酸を置換えることで、毒に対する防護ができるようになることもわかった。これは収束進化の典型的な例で、異なる化学種が、独立に、分子上は類似な特性を進化させている。今後も進化、しんかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 14, p. 32.

DOI: 10.1073/pnas.1511706112

15.10.3

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窓や壁に

汚れや指紋を残さないために、水と油をはじくコーティングが施される。ただし大抵のコーティング剤は、フッ素を含む化合物を使い、油分をはじき疎水性も確保している。そのような化成品は高価で、しかも相当に安定なため環境中に蓄積する。その中、フッ素が含まれていないコーティング剤を探索していた研究者らは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の単分子層を使えないかと考えた。それらも水と油の両方をはじく。これを軸として、しかもPDMSは医療用インプラントにも利用され、毒性がないと考えられている。そこでPDMSを含む透明なポリウレタンコーティングが作成された。表面のPDMSの鎖のお陰で、コーティングをガラスにしたところ、インク、塗料、指紋をはじいた。コーティングはかなり摩耗したあとでも、その特性を保持していた。そのことからスマートホンのような手持ちの電子デバイスでも有用であると提案されている。今日から起算して、使ったシロキサンを数えてみましょうか。

[1] Chemical & Engineering News, September 14, p. 32.

DOI:10.1002/anie.201504892

15.10.2

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より環境調和な

 鈴木宮浦クロスカップリング反応を達成するために、Lipshutz先生らはすでに、有機溶媒を使わない、ほとんど加熱の必要なし、再少量のPd触媒で進行する系を開発していた。それでもその再利用可能な水溶液中での反応系は、高価な稀なPdを必要とする。そこでさらにPdの量を削減したいと、会社との共同研究が始まった。その結果、研究者らは、ある種の市販で入手できるFeCl3には、ppmオーダーのPdが含まれていることを発見した[1]。この鉄塩をナノ粒子にすることを決断し、クロスカップリングを進行させるのに十分のPdが確保された。これはTPGS-750-Mと呼ばれる界面活性剤の設計者である先生が故に実現している。小さな反応容器のサイズと構造が、反応物、触媒、生成物の、ナノミセルへの出入りを制御し、反応速度を最適化している。なおナノ粒子には、通常のクロスカップリングで使われるPd1/100程度の量が含まれていることも示された。ナノミセル、見せることはできないけど、魅せられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 September 7, p. 33.

DOI: 10.1126/science.aac6936

15.10.1

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