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2015年12月

平成27年12月31日

 大晦日、一年を見直そうか」という日です。研究室のニュース一つ目:改修工事の関連で二度の引越を経験。未だに「どこにあったっけ」と捜し物が見つからないときがある。そのうち別のことに対応していると、捜していること自体や、何を捜しているかを忘れることもある。齢を重ねて記憶力も弱い人になりつつある。ニュース二つ目:第二世代BISEPClケーキの製作が完了した。実験室で誕生してすでに14歳の基幹化合物。今年は首都圏でも合成していただいた。それをモチーフとしたケーキが5年以上前かに誕生した。今年再びチーフが現れた。セレン原子の部分には食用色素である赤色105号が使われた。その化学構造式に唖然「芳香族化合物、食べてるんや」クリーム捏ねるの「困るねん」と苦労したとのこと。ニュース三つ目:1228日中間発表、異例の遅さ。同じ日に忘年会、元素記号ビンゴ、貧乏でも工夫を凝らした景品。今回も26-28/28名の番外でした。ただし番外でも案外いい景品を受け取りました。

最後に:来年のこの日も一年を振り返ることができますように。よいお年を

15.12.31

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精子は卵子に

 DNAだけを託しているわけではない。それは父親の体重についての情報も伝達していることが報告された[1]。研究者らは肥満男性と痩せた男性のDNAのメチル化のパターンを比較した。その結果、食欲を制御することに関わる遺伝子に違いが見られた。さらに肥満男性が減量のために肥満手術を受けた場合には、精子のDNAのメチル化パターンに変化が見られ、痩せた男性のパターンに近づく傾向にあった。これを精子は制止することはできない。この結果は、必ずしも完全に実証されたわけではないけど、肥満男性は自分の子供たちに無意識のうちに、食欲を変化させ、肥満のリスクを高めていることを示唆している。「精子の体重の刷り込みは、食糧が豊富である時代になって食欲が亢進されることで有用で進化的な機能を果たしていたこと、しかし今では、肥満の父親の子供は、後の人生において、母親の体重に関わりなく、メタボリックな疾病のリスクが、より高いこと」を示していると研究者らは考えている。「卵子が知らんし」の間に情報が入り込んでいるらしいです。なおこの情報の取扱いは慎重に。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 December 7, p. 36.

DOI: 10.1016/j.cmet.2015.11.004

15.12.30

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日本でのジェネリックス

 販売促進に向けて、テバ製薬と武田薬品がジョイントベンチャーを立ち上げる。これは2016年第二四半期に決着をつけ、世界で最も急成長中の市場に参入する。これまで日本人は特許切れの薬には消極的だったものの、日本政府は、医療保険の支出を抑制するために、ジェネリックスの使用を医者にも促し、2020年には80%をそれに置換えたいとしている。また日本は、米国、カナダについで三番目に大きな薬の市場であることが、市場調査会社IMS Healthが示している。ちなみに今回の合意より以前に、こしらえられたのはイスラエルだけども、そこのテバ製薬は2011年日本国内で、大洋薬品を9億ドル以上で傘下とし、日本の第三位のジェネリック薬品会社になり、生産設備を拡大している。一方で武田は、政府の方針が届く国内市場を対象としている。現在の政府のアクションによって、特許切れのより安い製品に手が届き、またジョイントベンチャーによって、高品質なジェネリックスを日本に提供することになるだろう。成長するジェネリックス、びっくりするかもね。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 December 7/14, p. 13.

15.12.29

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脳の中の

 ある種の受容体のシグナル伝達を低分子で促進させると、これらの細胞の変化を促し、人の学習を改善できることが報告された[1]。この発見は、アルツハイマー病や統合失調症のような学習障害に関連する疾患の患者さんの新しい治療方法を提供しうる。これまで数十年にわたって、動物の脳ではシナプスがどのように変化するかが研究され、その中で、N-メチル-D-アスパルテート受容体(NMDAR)が、学習中にシナプスを強化させるために、重要な働きを担っていることがわかっていた。そこでNMDARシグナル伝達を増加させる化合物は、変化を促し動物が新しい課題を学ぶ一助になりうる。その中今回の研究者らはD-シクロセリンをその化合物として、人で試験をしたいと考えていた。ただし動物では多くの電極を脳の細胞に差し込み電気信号を記録するが、これを人に施すと人でなしになる。そこで脳波記録法が採用され、頭皮につけられた電極から電気信号を記録した。その結果、シナプスを強化することとニューロンの数が関連していることがわかった。シグナル伝達がよくなる新しい手法です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 December 7/14, p. 12.

DOI: 10.1073/pnas.1509262112

15.12.28

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新しい固相材料や素子は

 秩序だったクリスタルネットワーク次第であるかもしれない。ただし色、磁性、多孔性のような様々な特性を、構造配列を維持しながら、結晶に付与することは、チャレンジングな課題である。今回、結晶構造における類似性を利用することが、結晶を溶接する一助になることが報告された[1]。研究者らは、有機カチオンが、Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+あるいはZn2+を含む金属アニオン錯体と、ペアになっている系を利用した。カチオンとアニオン、前者が勝ちよるわけではなく、水素結合と静電相互作用によってお互いが相互作用し、金属によらず、構造と単位格子体積が類似の結晶ができる。ついで金属結晶を二種類選び45-255μm離して固定し、それらを異なる金属を含む構成要素の不飽和溶液に浸した。その結果、もとの結晶は種結晶として働き、それらの間で成長する結晶を溶接させることを可能にした。それによって異なる特性を有する区分けできる領域を有する単結晶生成物を得ている。クリスタル、すたれることは決してない。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 30, p. 25.

DOI:10.1021/jacs.5b10586

15.12.27

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寄生性のカリバチの一種は

 イモ虫に卵を生む。ただし保護用のリポソームで卵をコーティングした後である。リポソ—ムは一連のタンパク質兵器を持ち、それはカリバチの孵卵にとっては好ましくないイモ虫の免疫系と戦う一助になり、これによって子孫の誕生をしそんじることも軽減される。これまで研究者らは、リポソームウイルス性の容器に似たもので、ウイルス様の粒子と呼んでいた。今回ウイルスの起源の証拠がみつかった[1]。カリバチのゲノムで見つかったリポソーム組織をつくる遺伝子は、未確定ウイルス(nudivirus)DNAに相当することがわかった。数百万年前、未確定ウイルスがカリバチに感染し、そのDNAがカリバチのゲノムに入り込んだことが提案されている。その後何年にも渡る間にカリバチは、ウイルスDNAに別の目的を持たせる方法を進化させてきた。特に感染性の繁殖の目的のためである。研究者らはさらに、この発見は人がウイルスリポソームを使ってドラッグデリバリーシステムを構築する一助になりえるともしている。カリバチのこと、わかりばちたか?

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 30, p. 25.

DOI: 10.1126/sciadv.1501150

15.12.26

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治ることのない

 慢性的な外傷。この居直るやつは、糖尿病の典型的な合併症である。化学者は、この治癒に関する問題を理解できていないため、代替の治療法がほとんど利用できない。以前の糖尿の外傷をもったネズミモデルでの研究結果は、二種類のマトリクス・メタロプロティナーゼであるMMP-8MMP-9が高濃度であることが要因であることを示唆していた。ただしMMP-8は、糖尿でない人でもみつかるために、それは有益な効果もあると考えられている。それとは対照的にMMP-9のレベルは、糖尿の外傷がある人でしか増加しないためそれが、外傷が治癒できないことに影響していると考えられている。その中今回、これら二つのMMPを標的に、ネズミのモデルを使った組合せ治療が行われた[1]。研究者らは、活性なMMP-8ND-336として知られているMMP-9の低分子抑制剤をネズミの局所に投与した。この組合せは炎症を抑え、新しい血管の形成が促進された。またこの方法では、これらどちらか一方を用いた治療より、より早く回復していた。組合せ治療、見合わせることなく挑戦してみませんか。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 30, p. 25.

DOI: 10.1073/pnas.1517847112

15.12.25

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ホスホールは

 リン原子を含む複素環化合物であり、有機エレクトロニクス、バイオイメージングプローブ、触媒としてしばしば使われる。今回、三つの研究室がその新しい合成法を報告した[1]。一つ目は原子効率の高いPd/Cu-触媒によるアルキン置換のフェニルホスフィンの閉環反応で、ベンゾホスホールが導かれる[2]、二つ目のグループは、ワンポット銅触媒によるベンゾホスホールの合成で、アリールマグネシウム反応剤、アルキン、ジクロロホスフィンとをつなぎ合わせている[3]。三つ目のグループは、縮環したフラン、ピロール、チオフェン環を含むホスファフェナレネン、慣れんない名前だけど、をリチオ化したナフタレンとジクロロフェニルホスフィンとの触媒を使わない環化反応で合成している[4]。これらの合成方法に加えて、幅広い化合物をさらに官能基化できることから、今回の報告は、縮環した五や六員環の含リン複素環の化学を拡大することができる。ホスホール、文化ホールで活躍する日も待ち遠しい。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 23, p. 27.

[2] DOI: 10.1021/acs.orglett.5b02926

[3] DOI: 10.1021/acs.orglett.5b02950

[4] DOI:10.1002/anie.201507960

15.12.24

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複数の生成物を

 与える可能性のある反応で、選択的に反応を実現する伝統的な方法は、望みの生成物ができる遷移状態を安定化することである。ただしいくつかの反応では、遷移状態が一つしかなくて、複数の生成物に至り、選択性の実現には異なる手法が必要である。そのような例の一つが、[1,2][2,3]シグマトロピー転位である。その中エノラートを含むアンモニウムイリドの反応で、物入りやどうかはわからないけど、分子動力学の経路を選択することで[1,2][2,3]のどちらかを導くことができることが示された[1]。イリドと水素結合しないアルカリ金属塩基は、動的挙動として早い遷移状態を好み、[1,2]転位を引き起す。対照的にメタノールやプロトン化されたDBUは、エノラレートの酸素原子と水素結合を形成し、反応のバリアが増大し、ガンバリアと言われながら、遅い遷移状態を経て[2,3]転位が好まれる。遷移状態の「遅かれ早かれ」に、あやかれる系です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 23, p. 27.

DOI: 10.1021/jacs.5b08635

15.12.23

 

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Sheraton Waikiki

 しゃれとんです。腕利きのシェフもいるはず。でもお世話にならなかった。おじさんも楽しめるオーシャンビュー。眼下に広がるビーチにプール。朝早くにはサーファーが爽やかに波に乗る。同じ頃8:00からのセッションに出向く準備をする。部屋は28階。準備OKで部屋を出た。エレベーターホール。11台のエレベーター、ただし呼び出しボタンがその横にはなかった。上下移動ができるのか?戸惑う自分。宿泊客がこの階で降りた。それに便乗して1階に到着。そこで名札を忘れたことに気づく。多くの人が乗込むエレベーターに自分も乗る。複数の階で泊まっては人が出る。やっとのこと28階についた。名札を持ってホールに向かう。その真ん中にあるソファー横にボタンがあった。so far so good、再び下に降りた。帰国の日5:10ドアをノックする音。扉を開ける。「荷物」という日本語。トランクを出した。「引きとらんく」とは言わない。空港にて再会。ホノルル空港を後にした。

15.12.22

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Smelling Sulfur

が満載、ここには住めるんか?幸い実物は登場しない。プロパンは1000 ppmでも臭わない。方やプロパンチオールは0.01 pmであってもキャッチできる。2-プロピルチエタンは0.0001 pmまで閾値が下がる。これを行き違いにならないように道しるべとして使っているのがオコジョ(stoat)[1]である。彼女もそれを頼る。人はアルカンチオールに対して敏感である。ネズミはメチルチオメタンチオール(MTMT)に代表される、硫黄原子を複数含むチオールには、人より敏感。去勢したオスのネズミの尿から先のMTMTを取り出す。これがメスにとっては魅惑的である。臭いは酵素が関わる受容体の、どこが反応するかで脳に指令が飛ぶ。銅や銀イオンはセンシング力を向上させるとのこと。なかなかに複雑である。Perception(知覚)とreception (受信) が関わる。ガスの臭い付けにt-BuSHが使われている。1937年テキサス州ニューロンドンの学校でガス漏れが起きた。爆発で296人が犠牲になったとモニュメントにはある。その後、無臭のガスを付臭する法律が制定された。Eric Block先生の講演、今回もブロックされている謎を見事に解き明かしていた。ブログに記さなくてはいけない。

[1]イタチ科、生い立ちは調べていない。

15.12.21

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有機硫黄化学の

 セッション。天然成分であるジアリルジスルファン(スルフィド)を合成する。現状は天然のタマネギから抽出して飼料として使われる。ただしこれを実験室で作ろうとすると友人を失うかもしれない。フロー系で反応を最適化する。催涙性の成分を含むタマネギ。その構造とそれに至る経路を解明する。ついで、カットしても涙が出ないタマネギを生産。プロジェクトがカットされる局面を乗越えた。涙なしには聞くことができないお話。イグノーベル賞の栄誉に輝いた。賞金は10兆ドル、ただしジンバブエドルで当時は日本円にして400円。今では貨幣として使われなくなった。それでも開発は進む。先の涙なしのタマネギに含まれる成分。脂質の生成を抑制する効果も見られた。あまり長くはない昼食時間。「サンドイッチでどうか」に賛同して意見も一致。午後も続く。天然成分であるリモネンと粉末硫黄を混ぜて合成できる化合物が重金属を捕捉する。ゲル状の成分にHg(II)の滴下で素敵な結果。還元された水銀が生まれて玉になった。たまたまではない。質問タイムになった「その分子、もっとネチネチと配座も計算すればよい」とアドバイスするも登壇者はかわす。「あの方、わかっていないわ」と言いつつ、休憩の間に再び説明をされていた。夜も続くも、寄るところがあって、失礼してしまった。

15.12.20

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Pacifichem2015

 オープニングセレモニー。現地の歌唱団の方々の入場。こちらの衣装をまとい、歴史・文化・信仰なんかが盛り込まれた歌とダンスが披露される。高校生たちのグループも入る。概ねアカペラで、独特な打楽器が音楽をバックアップする。およそ30分。現地の言葉、時に「フラ」「カービカ」みたいなフレーズをキャッチするも「歌詞はわからんし」だった。盛大な拍手の中、今回の会議の実行委員長Stang先生が登壇。「Pacifichemの学術講演、ハワイ、ホノルルにようこそ」ついで環太平洋の化学会の方々の紹介。「今回で7回目を迎えるこの学会およそ15000人が集う。ちなみにワイキキビーチには、シャーク(shark、サメ)が棲む。化学者を選り分けて飲み込むので、是非会場にいてほしい」とのことだった。サメでしゃ〜くな思いはしたくない。ついでオープニングの講演、Hgから始まって周期表や106番元素Sgも登場。ウェルカムパーティー、雑踏の中、普段はお話できない方々ともお話する。突然のシャワー。なんだ?と思っているうちに止んだ。「傘が」と悔やんだことも忘れた。

15.12.19

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非常口座席に

 落着いた。前方が広くて足は楽チン。でも運賃は同じである。注意書をいただく。万が一の場合「乗務員をサポートする」乗務員が脱出の準備を完了するまでは、一般の乗客を制止してほしいとのこと。精神を統一しなくてはいけない。中部国際空港からおよそ6時間、ホノルル空港への着陸態勢に入る。真向いの席に客室乗務員が座る。見つめることもなく、間隔をつめられることもない。時に目が合った。なんだか気恥ずかしい。無事に着陸。そこで初めて「気温は23 °Cらしいですよ」と声をかけられた。「ホノルル線の勤務が主ですか」「いえ普段は、ニューヨーク、ワシントン、フランクフルトです」「・・・ビーチで泳がれますか」「以前は観光したりもしてましたけど、泳いだことはないです。夕食をゆったりとできればいいかなって・・・」「・・・今回はホノルルで学会です」「なのでジャケットの方も多いんですねえ。普段のホノルル線とは違っていました・・・入国検査に時間がかかるかもしれません」いい雰囲気の中「お泊まりは、どちらですか」の一言も出ず、大事には至らず「ハワイ界隈で、ワイワイしてきます」でお別れした。

15.12.18

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リチウムイオン電池では

 エチレンカーボネートのような可燃性の溶媒が使われているが、堪忍せいと言われても燃えてしまう可能性がある。それに対して水の電解質は安全な代替物であるものの、水は電気自動車などが必要とする電圧では、電気分解を受ける。そこで電池の中の水の安定性を各段に向上させるために研究者らは水の電解質の濃度を上げた[1]。典型的な電池の電解質はおよそ6Mあるいはそれ以下の塩濃度である。それに対してリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド溶液を20 M以上で用いている。これによって電池で水を使える電圧の範囲がおよそ二倍になった。これらの濃度の濃い電解質では、水が電気化学的に分解する前に、塩のアニオンが減少する。ついでフッ化リチウムのフィルムが陽極で形成される。研究者らは、このフィルムが、より高い電圧で水が分解を受けるのを防いでいるのではないかと考えている。今回の成果は、水化学を使った電池の保護に関する最初の報告である。濃い濃度ノ〜とは言えません。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 23, p. 26.

DOI: 10.1126/science.aab1595

15.12.17

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Omniphobic

 とは、水と有機液の両方をはじく性質で、この性質のものでコーティングすると、相当に滑り易い。そのため自動車のフロントガラスや飛行機の尾翼で使われることが期待されている。これまでの例では、表面がナノスケールの特徴を有するか、液体の薄い層で、別の液体を滑らせていた。ただし圧力がかかると、液体が行きたい向きに動きだし、ナノ構造の表面に浸透、その結果滑りが悪くなっていた。また液体層を持った表面では、液体が流れ出していた。その中今回、別の提案がなされた[1]。それは共有結合的に液体の層を基質に取り付けることだった。もし水やトルエンのような別の液体が表面に接触した時には、それらは流れてそこから除かれる。この新しいominiphobicコーティングは調製も簡単で速い。基質をジメチルジメトキシシランと硫酸のイソプロパノール溶液に浸けた後、数分間乾燥させるだけで液体をはじくようになる。はじける思いで成果を得たのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 23, p. 26.

DOI: 10.1002/anie.201509385

15.12.16

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指紋に残った

 汗の中のアミノ酸のレベルから男女を同定することができる方法が報告された[1]。ホルモンの違いから、女性は男性と比べて、アミノ酸の濃度はおよそ二倍である。汗は脂質や他のわずかに残った化合物とともに指紋に残る。残した方は知らんもんかもしれない。そこで研究者らは、アミノ酸を、熱希塩酸を使って指紋から抽出する方法を開発した。ついで二つの酵素を含むアミノ酸の量を測定するための比色分析法を開発した。L-アミノ酸オキシダーゼはアミノ酸から過酸化水素を生産する。ついで、ワサビダイコンパーオキシダーゼは、過酸化水素と色素との反応を触媒し、色のついた化合物をつくる。その量がスペクトルで測定できる。ドアノブやデスクトップを含む五つの異なる表面のポリエチレンフィルムの上の指紋でテストが行われた。ついで、反応成分を、妊娠テストやグルコースメーターのように簡単にテストできる紙ら「しいもん」に、仕上げた。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 32.

DOI: 10.1021/acs.analchem.5b03323

15.12.15

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アミド誘導体を

 使ったNi触媒による鈴木宮浦カップリング反応が初めて報告された[1]、鈴木宮浦カップリングはC-C結合形成で広く利用されている反応である。その原型は、Pd触媒を使い、有機ホウ素反応剤と有機ハロゲン化物のような親電子剤とを反応させる。近年化学者は、この型の反応に、より豊富で安価なNi触媒を利用する方法を探索していた。その中UCLAの研究者らは、Ni触媒がアミドのC-N結合を活性化し、ボロン酸エステルとクロスカップリング反応を引き起こし、アシルC-C結合をつくることを発見した。有機化学者は、歴史的にアミドは不活性な出発化合物で、アミドの活性化?それは甘えど、と言われるのが通常だった。今回の発見は、ある種の条件では、それらは有機合成上で有用であることを実証している。またこの新反応は、様々なケトンやアミンを含む官能基を許容する。論文では、抗増殖剤のグラムスケールでの合成も行っている。アミド、御堂筋にもあるかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 31.

DOI: 10.1038/nchem.2388

15.12.14

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蛍光ナノチューブが

 腐った食肉を検出する鼻として使える系が報告された[1]。同じ研究チームは今年の始め、明るく蛍光を発するキラルナノチューブを、不斉のペリレンイミンから調製した。研究者らは、そのエタノール懸濁液をテフロン材に滴下することで、これらのチューブの薄いマットを、つくることができることがわかった。乾燥後、このマットを待っとったのは、チューブ状になったフィルムが大きな表面積エリアを提供できるという特徴だった。それによってプトレッシンやカダベリンを含む腐りかけの食肉から発散されるアミンをセンシングすることができる。これらの刺激臭のあるアミンがフィルムに漂うと、電子がナノチューブに移動し、ナノチューブの蛍光強度が小さくなる。ポーク、魚、エビ、鶏肉を使って、フィルムがppbレベルで痛んだ徴候を検出することができる。別の装置も同様の検出に使えるものの、それらは大きくて複雑である。一方今回の方法は、センサーフィルムとUVランプ、少しの訓練があれば使えるため、苦心はしたものの、格段の躍進である。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 31.

DOI: 10.1021/acssensors.5b00040

15.12.13

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固体に担持された金属ナノ粒子は

 石油の改質、排ガスの浄化や別のプロセスで使われている触媒である。ただし高温に長時間さらされることで、担持からはがれて、異端児になったり、別の触媒粒子と融合、あるいは焼結される。これによって粒子の活性部位が埋められて、触媒の効果が下がってしまう。金ナノ粒子は特にその傾向が強く不活性化するために、低温ではかなり高い活性を示すものの、あまり利用されない。その中今回研究者らは、金と少量のイリジウムをTiO2上に連続で沈澱させることで、金−イリジウムナノ粒子を調製した[1]。これは500 °Cでも焼結に耐えることができる。電子断層撮影や量子計算を含む分析は、イリジウムが粒子とTiO2の間の界面に優先的に集まっていることを示していた。この配列が、粒子のTiO2への吸着を増加させることで、純粋な金ナノ粒子と比較して、焼結の熱力学的な駆動力を低減させている。イリジウムをいじり生みだされた成果です。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 31.

DOI: 10.1021/acs.nanolett.5b03585

15.12.12

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ハロゲン化アリールの

 アミノ化反応、原価がいくらかはともかく、有機合成化学ではアリールアミンを導くクロスカップリング反応の代表例である。アリールアミン生成物は、医薬品、染料、電子デバイスを調製するよく使われるユニットである。ただし出発に用いるハロゲン化アリールは、石油をもとにした化学原料から事前に調製しなくてはいけない。これによって合成の段階が増えること、またハロゲン化物が不必要な廃棄物として生成してしまう。その中今回、ハロゲン化アリールに代わって、バイオをもとにした原料であるリグニンからフェノールを調製し、それを使った反応が開発された。フェノールをアリールアミンに変換する方法はすでに開発されているものの、フェノールを一旦アリールスルホネート、エステルや他の中間体に変換する必要があった。一方で今回の反応は、フェノールとアミンあるいはアニリンとを直接反応させる。ここでは還元・縮合・脱水素反応が連続で進行する。この方法を使って二級や三級のアリールアミン、またジオールカテコールからジアミンや含窒素複素環も導かれる。なお、カテコールはどこかで買ってく〜る必要がある。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 31.

DOI: 10.1002/anie.201506751

15.12.11

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エボラ治療が

 標的であるウイルスそのものに接近してきた。今回研究者らは、大きな有機の「スーパーボール」化合物を合成し、これによって免疫細胞にウイルスが侵入するのを防ぐ系を開発した[1]。以前のエボラに関する研究では、死に至る感染の重要な段階は、DG-SIGNと呼ばれる受容体タンパク質を経て、免疫系の樹枝状細胞にウイルスが侵入する段階であることがわかっていた。新しい化合物であるトリデカフラーレンは、ウイルスの糖鎖でできた外側の膜を模倣することで、エボラの中に入り込む。ずぼらではない。そこでDC-SIGNにバインドする。研究チームは、クリックケミストリーを使い、[60]フラーレン付加物同士や糖鎖分子に連結させることで、この構造を特定した。ついで三つのバージョンのスーパーボール化合物のDC-SIGNへのバインド能がテストされた。そのうちの一つは試験管内では人工的なエボラウイルスが免疫細胞に入り込むのをブロックした。しかも低濃度で、人の細胞には影響はなかった。つぎはドラゴンボールかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 30.

DOI:10.1038/nchem.2387

15.12.10

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古代文明

 マヤ、エジプト、ヒンズー、ギリシャ、これらすべては、ある時期、蜂を崇拝していた。それに関連して、いつ頃から蜜ろうが使われだしたのか謎だった。その中、ブリストールの研究者らは、近しい答えに至った[1]。研究者らは、ガスクロマトグラフィー、質量分析を使い、欧州、中東、北アフリカから6400の陶器を分析した。その結果、蜜ろうのサインである、直鎖のアルカンと脂肪酸、脂肪酸ろうエステルの正確な混合物「蜜ろうの成分は三つやろう」を検出した。それによって、蜜ろうの使用は9000年前に遡ること、その当時は人が農耕生活を始めた頃で紀元前7世紀であることがわかった。新石器時代の人はおそらく、様々な目的で蜜ろうを使っていたと思われる。たとえば陶器の防水、燃料、化粧品成分、宗教的な儀式の道具などである。さらにそれ以前にもトルコのアナトリアでは狩猟採集民が養蜂箱の製品を利用していた可能性もわかった。ただし彼らは陶器を使っていない、いわば登記していないので、分析はできていない。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 30.

DOI:10.1038/nature15757

15.12.9

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永続的な多孔性を持った

 液体が開発された[1]。今回のそれは、溶媒に可溶なグループでコーティングされた穴の空いた有機カゴ状分子に多孔性は由来している。カゴが開いたところは小さく、お加護もあって、表面の置換基や取り囲んでいる溶媒中の大きな溶媒分子で詰まることはない。泡は、液体の中に入り込むものの直ちに浮遊し消散する。これまで固体のゼオライトやMOFの多孔性の永続的なものは知られていたが、それらはチャンネルを通して流すことや表面に伸ばすことはできなかった。実際の流体は、クラウンエーテル溶媒中で、クラウンエーテル表面置換基でコートした穴のある有機コア分子を溶解させることでつくられている。ガス吸着能を最適化するために研究者らは、出来るだけ多くのカゴ分子を流体にパックした。これをメタンにさらしたところ、液体は溶媒だけのときと比べて8倍のガスを吸着した。ただしクラウンエーテルの調製は難しいため、共同研究者らは、ジアミンの混合物でコートし、ヘキサクロロプロペンに溶かした。この液体は先のクラウン型より10倍ほど容易に流れた。永続的な多孔性で、多幸なり。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 16, p. 5.

DOI: 10.1038/nature16072

DOI: 10.1002/anie.201409420

15.12.8

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潰瘍によって生まれる

 バクテリアであるヘリコバクターピロリ(H. pylori)は、世界人口の約半分の人の消化管で、コロニーをつくる。またこの感染を治療することは容易ではない。アモキシリンやクラリトロミシンのような標準の抗生物質は、H. pyloriと交戦している間に、消化管の中の健康なバクテリアを掃討してしまう傾向がある。加えて、H. pyloriは、そのような治療に対して耐性をつくる。そこで他のバクテリアには手を出さず、H. pyloriだけを選択的に標的にするために、研究者らは、バクテリアにおける新規な酵素系に照準を合わせた[1] H. pyloriは、バクテリアに必要不可欠な電子移動を司る酵素5'-メチルチオアデノシン/s-アデノシルホモシステインヌクレオシダーゼ(MTAN)を使う。別のバクテリアもMTANを使うが、生きて行く上で必須ではない。そこで、H. pyloriMTANが遷移状態になるのを抑制することで、バクテリアを選択的に殺すことができるのではないかと考えて10種類のMTAN抑制剤を開発した。それらは低濃度でもH. pyloriの成長を停止させた。ちなみにヘリコバクターピロリ、ヘリコブターからはちらりとも見えないと思います。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 9, p. 26.

DOI: 10.1021/jacs.5b06110

15.12.7

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討論会の最初の座長を

 拝命した。5分の質問時間。会場では複数の手が挙がる。内容をしっかり把握した上での質問。しかも熟練の先生、若者、分け隔てなく議論が展開された。最初の特別講演、化学を始めた-10 °Cの土地、そこで6年間か熟成されて東へ居を移す。ホウ素の新しい法則「ほう、そうだったのか」と学ばせてもらう。深夜ホテルに戻る。やっと安心や、とはいかず、メールメッセージに対応。来年開催のセレン・テルル国際会議(ICCST-13)の参加登録システムの確認。翌日の昼にも討論会会場で打合せ。二つ目の特別講演、スピロ環化反応を、かんかんに利用して細胞のイメージング、名人芸の凄さを痛感。お寺での懇親会。畳部屋にて、畳掛ける勢いで、お料理、お酒をサーブしていただく。純米大吟醸「空」、サントリー「知多」も振る舞われた。チタンを含まず、知多蒸溜所から来たSingle Grain Whisky。討論会最終日、巨大な分子が近赤外を吸収する。九州ならぬ愛媛生まれ。その波長領域はいわゆる赤外に迫っていた。すべての討論、授賞式も完了。三日間大変お世話になりました。サザエさん一家に支えていただいた会でした。

15.12.6

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湿度の高い環境では

 接着剤はその粘着性を失う傾向にある。そこで性能のよい糊について学ぶために、クモの糊にヒントを探した[1]。クモは巣に沿って粘りのある糊をたらし、それで昆虫を捕まえて餌食としている。もしクモがいつも餌を確保したいとしたら、糊は湿度に関係なく働かなくてはならない。そこで苦悶する研究者らは異なる湿度の場所に棲む五種類のクモに出動してもらって、研究を行った。その結果、それぞれのクモの糊は、そこの環境の湿度に応じて、もっとも大きな粘性を達成していた。高速の写真撮影では、クモは糊の粘度を調整しながら、最大の粘性をつくっていることがわかった。湿度が上がると、粘度は減少する。またそれぞれのクモが、餌食を捕まえるために最適の粘度、いわゆるスイートスポットがあることもわかった。それぞれのクモは、異なるタイプと量の吸湿性の有機塩を使って、居住地の湿度にあった糊の粘度を調製している。この粘度、年度ごとも変わるかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 9, p. 26.

DOI: 10.1021/acsnano.5b05658

15.12.5

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トラマドールは

 カメルーンやその近隣の国々にある木が生産する化合物であることが以前に報告された[1]。これによって、トラマドールは新しく発見された天然物で、植物によってつくられる鎮痛剤のリストに加えることができると、提案された[2]。それに対して、ドルトムンドの研究者らは、農夫はトラマドールを家畜牛に与え、牛が猛暑に耐えうる一助として利用しており、それによって化合物が大気に放出され、結果として木に蓄積したものであると異論を唱えた[3]。今回この研究チームはこの議論に決着をつけた[2]。すなわち環境の中のサンプルから得られるトラマドール分子には炭素同位体14Cを含んでいない。それに対して生きた植物によって生産される分子の中には、14Cや他の同位体が含まれ、その比が地球の大気の比とマッチしなくてはいけないはずである。その結果、14Cを全く含まないということは、分子は合成であることを示している。と結論づけた。同位体が活躍、どう言いたいことありますか。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 9, p. 26.

[2] DOI: 10.1002/anie.201305697

[3] DOI:10.1002/anie.201406639

[4] DOI: 10.1002/anie.201508646

15.12.4

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真昼の日蝕が

 太陽電池の発電に依存した国の配線網を損傷する可能性がある。それでも320日あった日蝕でもドイツの配線網は良好に稼働していたことが報告された[1]。前回の皆既日蝕は1999年であり、そのとき欧州に設置されていた光起電能力は1ギガワット以下だった。それ以来その割合が増加し90GW(ゴールデンウイークではないよ)に達し、これはドイツ全体の容量のほぼ半分である。この光起電にかなり依存している状況に興味を持った太陽エネルギーシステムに関わる研究者らは、送電網に対する日蝕の影響をシミュレートし予測した。ドイツにある数百の光起電設備と伝統的な発電所から集めたデータから出た見解は、日蝕は17GWの電力低下を引き起す」であった。ただし電力の低下の影響は、隣国からの電力供給によって賄われ、国の電力供給そのものは、不安定化しなかった。ちなみに日蝕の蝕はeclipse(エクリプス)、クリップで有機化学の教科書に、はさんでおきましょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 9, p. 26.

DOI: 10.1002/ente.201500228

15.12.3

 

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キセノン

 再び興味をそそる化合物を形成することが示された[1]。今回は、一般式KMXeNaO6であるペロブスカイト結晶である。ここでMはカルシウムあるいは同類のアルカリ土類元素である。ここでも、希ガスは分子を構成することはできないと考えられていたけど、実際には、様々な化合物を形成している。研究者らは、無水のナトリウムパーキセネートNa4XeO6を、硝酸アルシウム、バリウムならびにストロンチウムの水酸化カリウム溶液で取扱った。その結果、端っこにXeO6NaO6とが端を交互に共有するオクタヘドロンでできた三次元KMeNaO6ペロプスカイト骨格ができ上がった。キセノンがペロブスカイトの中に入り込む能力は、キセノンについての逆説を解き明かす手がかりになるかもしれない。地球の大気には、昔の隕石の分析をもとにした結果よりもキセノンの量は少ない。地球内部の主なシリケートはMgSiO3ペロブスカイトであると考えられている。でももし、より高い温度と圧力が、シリケートへのキセノンの溶解性を向上させているとすれば、キセノンの謎は地球表面のかなり奥に隠れているはずである。シリケートの取扱いはデリケートに

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 9, p. 26.

DOI:10.1002/anie.201506690

15.12.2

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ポテトが

 Clostridium puniceumと呼ばれる菌に感染すると、病原体は不快なピンクの粘液を生産し、これが貴重な食用作物を破壊してしまう。これまで研究者らは、酸素がない環境では通常に育つ病原菌が、酸素が豊富な大気中ではポテトの表面を、なぜ破壊することができるのか、わからなかった。答えは粘液のなかで、現役で活躍する分子クロストルビンにあった[1]。研究者らはクロストルビンABをみつけ、それが微生物のポリケチド組織とともに生産され、病原体が大気環境下で見られる活性酸素種の襲来にあっても生き残る助けをしていることを明らかにした。ただしそれがすべてではない。クロストルビンは抗生物質でもある。それらは塊茎の領域に侵入しようとする別の競合相手を菌が殺すのを補助する。研究者らは、クロストルビンをつくる微生物の酵素を標的とすることで、新しい抗生物質や植物保護材への方向性を示すことが出来るかもしれないと、議論している。クロストルビンで、苦労しとるびんでした。

[1] Chemical & Engineering News, 2015 November 9, p. 25.

DOI: 10.1126/science.aac9990

15.12.1

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