« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »

2016年9月

昔のことわざ

 「ある人のゴミは他の人にとっては宝物である」だからどうなのとトルコの研究者らは考えなかった。これを信じて、アルミニウム加工で副生する害のある赤色の泥から、単純にしかも安価にアンモニアから水素を発生できる触媒が調製できることを示した[1]。この発見は、燃料電池車の長距離走行を可能にするのに十分な水素を安全に貯蔵し発生できるより実用的な方法を導きうることを示した。赤色の泥はボーキサイド鉱を水酸化ナトリウムによって処理した後に生じるアルカリスラッジである。このBayerプロセスとして知られている系は、腐食の化学の一端もあるけれども、鉱物からアルミニウムを取り出す主な方法であり、年間100万トンが生産されており、残溜物には鉄や他の重金属も含まれる。そこでこれを塩酸で処理し700 °Cでアンモニアにさらすと鉄が触媒的に活性な鉄ニトリドε-Fe2Nに変換される。処理された泥は、NH3H2N2への変換を、他の安価などんな金属よりもより良く達成できている。ボーキサイトでエキサイトしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 12.

DOI: 10.1038/srep32279

16.9.30

| | コメント (0)

八本足で

 ソフトなロボットの、触手を振り回すダンスルーティーンがぎこちないけど可愛い。これがタコ(octopus)をまねたロボット(robot)であるとは、にわかに信じがたい。この名付けてオクトボット(octobot)は、置くとぼ〜とっとしているわけではなくて、自分自身で動き始めてそれに連結する綱もない。すべてはソフトマテリアルからできている [1]。以前のソフトロボットはある部分が硬い、あるいは硬いシステムに連結しているかのどちらかだった。この成果は、内視鏡検査のような生体医療応用で利用できる救難手術を行い得る可能性がある。研究者らは三次元プリント・成形・ソフトリソグラフィーを使ってオクトボットを制作した。過酸化水素がこの生き物の燃料である。過酸化水素がPt触媒と接触したとき、それが酸素に変換されて水も発生する。これがロボットの触手に電力を供給する。マイクロ流体の論理回路がオクトボットの四つの腕に同時にガスを分配し空気圧で触手の半分が上下に動く。この流れが、次は別の四つの腕で、ついでこれらが繰返される。でもひっくり返されはしないオクトボットである。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 12.

DOI: 10.1039/nature19100

16.9.29

| | コメント (0)

討論会三日目午後

 座長を賜る。午前中は座長質問も多かった。会場は「金沢歌劇座」「感激する講演ばかりなので、是非活発なご討論を」で始める。いつも以上に発表内容を真剣に聞く。「それではご質疑・ご討論を」で会場から手が挙がった。しかも演者とのやり取り、歌劇座内で過激な様子はないものの、質問の時間枠が過ぎて行った。担当の講演がすべて終わった。Webページ作成や要旨印刷を担当する会社の人と再会。昨年の討論会以来。参加登録費のみが討論会の経費、人手をかけなくてよい運営、これを実現したい。5年が過ぎた。来年は高知。わずかな工賃でできればと願う。討論会も終わる頃、駅に移動。周遊バスを使う。史跡や市場を周る。平日にも関わらずたくさんの観光客。ざわつく金沢駅の土産物店、長蛇の列のお店も多い。お菓子、ケーキ、小物、アクセサリー、輪島塗、金箔など。日本有数の観光都市の駅の雰囲気が満載。北陸新幹線が開通して一年半年余り。東京、名古屋、大阪行き特急の始発駅に、しはったらしい。

16.9.28

| | コメント (0)

ちょうちんのような

 殻で覆われた奇妙なオレンジフルーツであるホオズキ。人好きかはともかく科学者は長年興味を持っている。このフルーツは抗癌、抗炎症作用を示すステロイド型ラクトンであるウィタノリド(withanolides)を含む。地上絵とは関係ないものの、ナス科の植物は草食昆虫に対する防御としてウィタノリドを生産する。たとえばこれは昆虫の脱皮を妨害する。ただしホオズキを餌とするいも虫に対しては毒にはならない。今回この違いが明らかにされた[1]。すなわちウィタノリドは、いも虫の成長の一助になることに加えて、バクテリアの病原菌との戦いを支援する遺伝子の発現を活性化することでいも虫の免疫系も刺激する。これはこれまで研究されている別のすべての昆虫に対する化合物の効果とは逆である。すなわち植物がつくる抗草食昆虫化合物に単に反撃するために利用するのではなくて、昆虫は自分自身のために、ウィタノリドの抑制効果を活性化効果に変換している。その機構を昆虫は公開していないものの、後悔はしていない、と思う。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 12.

DOI:1 0.1038/ncomms12530

16.9.27

| | コメント (0)

アルカリ金属を

 水に入れると爆発する。ただしナトリウムとカリウムの合金の液体をゆっくりと水の表面に滴下すると、異なる壮観な、でもそう簡単ではないシーンが見られる。この現象は高速イメージングと光学分光学によって明らかにされた[1]。まず最初は合金と水が反応しアルカリ金属水酸化物、水素、熱が生じる。合金の浮力とガスの発生で,金属と水の接触が制限されるため、爆発的ではない反応が進む。不活性ガスが水素の発火を押さえている。0.3秒後、二つの接触面が青になる、これは溶媒和電子からのもので、その水中での寿命がサブミリ秒であるにも関わらず目視できる。滴下を続けて2秒後、ある温度になると、アルカリ金属が蒸発し始めて滴下は赤熱に変わる。およそ3秒後、金属蒸気がなくなり、合金の温度が下がり、それは透明な溶融した金属水酸化物になる。蒸気の層に支えられて、滴下は数秒間浮かび、その後水の中に入って、水酸化物と水の混合物として、劇的に爆発する。ひょうきんそうな合金、でも真似してはいけません。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 9.

DOI: 10.1002/anie.201605986

16.9.26

| | コメント (0)

コーネル大学の研究者は

 よ〜寝るかどうかは知らない。ただし原子のサイズに関して長年に渡って精度のより高い結果を導くことに注力している。物質の様々な形態での原子に関する質の良い実験結果を集め、原子の性状についてより精度のある理論を構築しても、それが唯一な答えにはならない。つねに「恣意的である」という批判を受ける。そのため実験、とりわけ結晶構造のデータといかに一致しているかが、定義の妥当性を見積もる指標になる。それでも標準化した類推は、結晶のパッキングや分子構造のような物質の特性を合理的に説明する際の一助になる。研究チームは、大きさの制限をセットし、これまでの類推値をもとに、電子密度がbohr3当り0.001電子になる原子核からの平均距離とした[1]。ついで相対論的全電子密度汎関数理論計算を行った。これによって得られた半径は結晶構造からの推定値とかなりよく一致していた。なおbohrはボーア半径で0.53 Åである。ぼや〜としていると見過ごす。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 9.

DOI: 10.1002/chem.201602949

16.9.25

| | コメント (0)

アクチノイド元素のひとつ

 バークリウム13 mgBkCl3として合成された[1]249Bk249Cf1.2%/一週間の速さで減衰するとともに電子を放出する。249Cfは高エネルギーγ線放射をする。そこで我慢せいとは言わず、安全性を担保することが実験を行うポイントだった。研究者らはBkIII)トリス(ジピコリネート)とBk(III)ボレートを調製し性状解明に挑んだ。すでに類似のアクチノイド化合物は合成されており、それらと性格の違いを見ることも出来た。放射能の危険のため、合成したサンプルを学生二人のチームに分けて、X線回折、磁化率などの測定を行ってもらった。249Bkは電子を放出するために、結晶は陽電荷を持ち結果的に爆発する。そのためすべての測定は24時間以内に完了しなくてはならなかった。実験結果は、バークリウムは隣接するアクチノイドのいくつかの性質を示し、電子構造はキュリウムと同様で通常のf遷移である。ただしその配位化学は、カリフォルニウムに類似だった。さらにランタニド類縁体のテルビウムと異なり、バークリウムは共有結合性を持ち、基底状態と最低励起状態が混合していた。バークリム、休憩はアイスクリームで

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aaf3762

16.9.24

| | コメント (0)

2002年

 Yu先生は勇敢にも、挑戦的課題としてカルボニル化合物のβ位にあるメチレンのC-H結合を切断し、そこに炭素置換基を導入する不斉触媒反応を達成することを掲げた。それから14年、学部生と大学院生15名、博士研究員30名が研究に参画し、それを触媒する反応を達成した[1]。二級アミドを出発化合物に、キノリンに光学活性二級アセトアミドが組込まれた二座配位子を設計しPd錯体触媒を発生させ、ヨウ化アリールを用いている。この飛躍的な成果はカルボニル基を有する基質の他へも適応できるとしている。また研究者らの共同研究先であるBristol-Myers Squibbではすでにこの反応を使った医薬品候補の合成を行っている。同じタイプの生成物を得る従来法は、α, β-不飽和カルボニル化合物を用いる方法だけど、アルケニル基を有する出発化合物の提供が常に簡単であるというわけではない。ちなみに配位子の設計には、実験の積み重ねに加えて、計算化学によるサポートも貢献している。途中、使うのが廃止になった配位子も多かったに違いない。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 September 5, p. 7.

DOI: 10.1126/science.aaf4434

16.9.23

| | コメント (0)

浜名湖を

 眼(まなこ)を開いて見る雨の中、舘山寺温泉着、貨幣の換算はご無用、円でよい、これも何かの縁。810年弘法大師らがここを訪ねて開祖された曹洞宗のお寺「秋葉山、舘山寺」急な山道を登る。本堂、ついで縁結地蔵尊、たくさんの絵馬・たくさんの願い事で覆い尽くされている。洞穴の中に祭られる穴大師、目の病にいいらしい。ここにも祈願した人たちの足跡がある。周遊道を歩く。誘導するのはところどころの看板と矢印。しばらく歩くと聖観音菩薩。忙殺される日々をしばし忘れて安全を祈願。この地は男女の心中が多かったため80年ほど前に、鎮魂と「思いとどめてもらえますように」という願いを込めて町の人たちが建立した。眼下の湖、昨日の怒濤が一変、穏やかな水面。少しのアップダウンの道を踏みしめる靴音。心地よいほのかな汗。カードゲームに興じた昨晩、手に汗握る戦い、七並べ:パスは三回まで、出せるカードがあってもパスをしてもよい。これが子供向けとされているゲームに駆け引きを付与させて、形式も景色も一変した。

16.9.22

 

| | コメント (0)

新しい陽電子断層法(PET)

 のためのトレーサーを開発することは、フッ素化学の中でホットな話題であり、最も挑戦的な課題の一つである。たとえばトレーサーとして使えるメタ置換のピリジンのための求核的フッ素化は、芳香環が電子豊富すぎて難しい。そこで研究者らは今回、ピリジンに代えてピリジンN-オキシドを出発化合物に用いて、脳のイメージングに適用できる新しいPETトレーサーを開発した。N-オキシドの電子求引性の性質が環の電荷密度を変化させ、室温でメタ位でのフッ素を用いた求核置換ハロゲン化が達成できる。得られた生成物をPd触媒による水素化でピリジンに変換しF18でラベルした3-フルオロ-4-アミノピリジンを得た。これは多発性硬化症のための医薬品4-アミノピリジンの類縁体であり、それはカリウムイオンチャンネルブロッカーであるため、ブローカーはいなくとも、人の神経機能を改善できる。さらにこれを使ったげっ歯類の脳の損傷の非侵襲的探索が行われている。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p. 10.

DOI: 10.1039/c6cc02362b

16.9.21

| | コメント (0)

パンや他の食べ物にある

 穀物は、健康に必要なビタミン、ミネラル、タンパク質や繊維をわれわれに届けてくれる。ただしこれまであまり知られていないより大切な生理活性化合物がある[1]。ベンゾオキサジノイド(BXs)である。数年前研究者らはBXsが、ライ、小麦、コーンのような若い穀物草類を雑草、昆虫、疾病から守ることを明らかにしていた。ただし成長した穀物にもBXsが含まれるのが報告されたのは2009年である。しかも麦芽製造やベーキングの間に、化合物の組成と濃度が向上することもわかった。質量分析代謝学の方法によって、ほ乳類における、BXsが取り込まれ身体を通り代謝される過程が明らかにされて、この取込みが免疫細胞を強化していた。さらにBXsを含むライ由来のヌカは、前立腺ガンを抑制する一助になることもわかった。7種類のBXsが明らかにされて、それらは前立腺細胞に入り、それを含む成分が主な代謝物として検出された。BXsは生理活性穀物化合物、ビッグXは手塚治虫さんの漫画である。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p.9.

16.9.20

| | コメント (0)

化学プロセスは

 熱で始まることが多い。それに対して触媒は高温でしか進行しない反応の温度を下げる。今回研究者らは極低温すなわち-150°Cで一酸化炭素の酸化反応を進行させる金触媒を報告した[1]。これによって低温化学の理解が深まり、宇宙空間での燃料利用も射程である。御舎弟にも伝えるべし。研究者らは金ナノ粒子をおよそ15 nmの直径に成長させ、それらを200 nm幅のシリカで包み込み、ついで20 nmの暑さのチタニアでコートした。ついでシリカをエッチングし、卵黄殻の構造を残した。多孔性チタニア殻は、触媒のコアとの間にガスを拡散させ、金ナノ粒子の凝集も防いでいる。アモルファスチタニア殻は、ナトリウムチタナートとシリコン不純物を含み、これらが極低温反応に必須だった。不純物がないと触媒は失活した。さらにもし卵黄殻のモルフォロジーがガスの選択的取込み、例えば炭化水素のサイズや含硫黄ガス混合物の分離に活用できれば、触媒の失活を防ぐことも可能になる。「卵黄、知らんよう」って言う人いないよねえ。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p.8.

DOI: 10.1016/j.susc.2015.10.008

16.9.19

| | コメント (0)

川が

 流れて、行きたいように、大洋に接する。そこでは淡水と海水が混じる。これは270 mの高さの滝で水が落ちる時に放出するエントロピー過程と同様である。この値と同様のエネルギーを得るための新しい方法が報告された[1]。二つの銅ヘキサシアン酸鉄電極と、一つは高い塩濃度、もう一つは塩濃度の低い流れからなるデバイスが組立てられた。これがいわゆる濃度セルを作り、塩溶液の濃度の違いをもとに二つの電極間に電気化学的なポテンシャルが生じる。素子が放電し、電気が流れるに従って、濃度の高い電極はナトリウムイオンを取込み、低い塩のそれはそれらを放出する。二つの電極の電位の差がゼロになったときに、研究者らは溶液を入れ替えて、高い濃度と触れていた電極を低い濃度のそれに、またその逆も行った。これによって再び電位が生じプロセスが再開される。この素子は、膜1 m2当り0.4 Wの電気を生み出した。以前の方法では、淡水と海水の混合で0.03から10W/m2の間のエネルギーが生み出されていた。電極の入替えで電気が再発生、なかなかできん。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p. 8.

DOI: 10.1021/acs.est.6b02554

16.9.18

| | コメント (0)

飲料水には

 鉛と鉄が残存する。ただしなぜパイプラインから水に毒性の鉛が漏れだすのに鉄が影響しているのかが、エキスパートにとっても複雑でスパッと理解するのが難しい。研究者らはこれまで金属は溶け出しているか粒子で存在していると考えていた。後者は450 nmより大きな金属片である。ただしこのどちらの範疇にも入らないコロイド状のナノ粒子で、直径がおおよそ 10 nmのものが飲料水のサンプルの鉛成分の30%以上に相当することがわかった[1]。北米では、鉄が主なパイプラインで長距離の水が配られる。より短い鉛の配水管がメインのラインを居住地やオフィス街に繋げている。研究者らは数ヶ月間系にあった水を集めてサイズ排除クロマトグラフィーならびに誘導結合プラズマ質量分析を行い、ナノレベルの鉄ミネラルの存在を明らかにした。ただし未だに鉄粒子と鉛パイプがどのように相互作用するかわからない。それでも電気化学的に鉛が放出されて吸着している可能性が示唆された。鉛がたまるとたまりません。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p. 7.

DOI: 10.1021/acs.est.6b01153

16.9.17

| | コメント (0)

15段階の

 変換反応で、市販の(S)-プレゴンから(+)—リアノドールの合成が達成された[1]。リアノドールは天然物であるリアノジンの加水分解化合物で、熱帯の灌木から得られる殺虫作用のある分子である。またそれらは動きや認識にとって重要なリアノジン受容体として知られるカルシウムイオンチャンネルを標的とする。今回の合成法の開発で、これらの受容体を研究する生物学的プローブとしても有用なリアノドール類縁体の合成も可能になった、リアノドールの五つの環と複数のアルコール部位が、とりわけ合成を挑戦的なものにしている。今回の研究者らは、鍵段階としてPauson-Khand反応によるアルケン、アルキン、COの環化付加で五員環を構築した。別の鍵段階は、二酸化セレンによる酸化で分子中の三カ所が同時に酸化に参加している。以前報告された段階が35段階で、その当時はそれでも最短記録だったけれども、今回はさらにそれを半分以上短縮している。祝福のコメントが記載されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p. 6.

DOI: 10.1126/science.aag1028

16.9.16

| | コメント (0)

より少ない塩分

 脂肪、糖分だけれども味感を犠牲にしたくない。未完成であるこの課題に新しい香りが提案された。ACSミーティングでフランスの科学者が、ある臭いを食べ物に付与すると塩分に敏感になることを報告した。さらにお好みのフレーバーにできるアロマ分子を同定する新しい技術も報告した。この研究のゴールは食品産業が、低塩分、低脂肪分、低糖分でも、もとの食品と同じ味わいのある製品を提供できるようにすることである。そこで、ハム、ベーコン、いわしのようなアロマに注目した。ある層には塩を濃縮し別の層にはハムアロマを濃縮したカスタードをつくった。これは試食した人によれば通常のカスタードよりも40%ほど塩分が多いように感じられた。別の香り向上アロマを見出すために、ガスクロマトグラフィーや人の鼻にただよう臭いを追跡できるデバイスが開発された。GCはアロマ分子をジュースの上に漂うガスから分離できる。またGC末端にあるデバイスに代わって、被験者に装置の端から出てくるガスを臭って、それをある特定の臭いと関連づけてもらった。ついでアロマ分子をジュースに加えたところ、甘さが数倍強く感じられた。あらま〜のアロマ分子、もっとあろます。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 29, p. 6.

16.9.15

| | コメント (0)

太陽光と光活性触媒の組合せは

 害のある病原菌を水から除去する単純で安価な方法である。ただしこのプロセスで使われる触媒は、太陽エネルギーの4%である主に紫外光のみに応答するために時間がかかる。その中今回、およそ50%の太陽エネルギーに相当する可視光を効果的に獲得できる触媒が設計された[1]。スタンフォードの研究者らは、MoS2を垂直に310の分子層に成長させて、その特性を分析した。水の中の触媒を可視光にさらすことで、電子励起が起こり、バクテリアをぱくっと食ってしまう反応性酸素種、たとえば酸素アニオンラジカル、一重項酸素、ヒドロキシラジカルや過酸化水素が、触媒のシートに沿って発生した。コントロール実験では、MoS2ナノ構造系を使った可視光による殺菌では、20分以内に、バクテリアの99.999%が死滅した。これは現在使われているTiO2や別のMoS2の別の形態のものより遥かに高い効率だった。3-10の分子層、もっとなにかしそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 22, p. 11.

DOI:10.1038/nnano.2016.138

16.9.14

| | コメント (0)

将来のタッチパネルは

 オリンピックの体操選手のように、柔軟で伸縮性もあって弾力的なものになるだろう。これらの特性を併せ持ったタッチパネルはポケットや財布、手提げ鞄の中の棒とは違って、電子デバイスを身につけるレオタードのように、それが「おった〜ど」という感覚である。ただし今日までの大抵のタッチパネルは、インジウムチンオキシドやカーボンナノチューブのような伸縮性のない材料で組立てられている。今回、透明タッチパネルで、機能性を失わずに伸縮性がもとの素材の10倍あるものが報告された[1]。このデバイスは、塩化リチウム塩を含むポリアクリルアミドヒドロゲルで出来ている。ヒドロゲルの高い水分量の為に塩は溶解しイオン伝導体として働く。研究者らは腕につけるタッチパネルもつくりビデオゲームに使っている。2020年のオリンピックの頃までには、体操選手が休憩中に、レオタードに埋め込まれたタッチパネルでファンにメッセージを送ることもできるだろう、とのことである。オリンピック、ピックリすることも多い。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 22, p. 11.

DOI: 10.1126/science.aaf8810

16.9.13

| | コメント (0)

ボラジン

 (B3N3H6)90年前に、ベンゼンの無機化合物類縁体として発見され、化学者は炭素を含まない芳香族化合物をつくることができるという思いに至った。それ以来研究者らは13族と15族の元素のたくさんの可能性を探索してきたが、ほんのわずかなそれらが報告されたのみであった。その中今回二つの新しい仲間が加わった、一つはリン—ケイ素、もう一つはヒ素—ケイ素芳香族類縁体で同時に反芳香属性を示すシクロブタジエン類縁体も報告された。トリホスファベンゼンとトリアルサトリシラベンゼンは、取り調べもなく、リンあるいはヒ素を含むZrシクロペンタジエニル錯体と嵩高いクロロシリレンとのメタセシス反応で得られた。これらベンゼン類縁体は単結合と二重結合の間のP-SiAs-Si結合が、共役ベンゼン環で期待される少し歪んだ構造をしていた。計算結果から化合物の芳香属性も確認された。これらの新しいベンゼン類縁体は、ケクレの芳香族化合物の報告から150年ほど経過した今年、無機芳香族系や芳香属性についての新しい知見を加えることになった。長年、芳香族に奉公してきた化学である。この方向性は変わらない。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 8, p. 11.

DOI: 10.1021/jacs.6b07389

16.9.12

| | コメント (0)

合成メラミンナノ粒子

 でつくられた合成の肌は、もしそのフィルムの周りの空気の湿度が十分に速く変化すると、その色をカメレオンよりも速く変えることができる[1]。肌は、カメレオンや自然界に生息する他の色を変化させる生き物よりも素早く色相が変わる。誰しも好きそうな現象である。が実際にはこの自然界の生き物に触発されてこの系が開発された。ミドリツバメで見られるような玉虫色の鳥の羽は湿気の変化に応じて可逆的に色が変わる。今回の研究を主導した三つの大学の研究者らは、これは湿気をもらったり失ったりすることで、羽の繊維が膨張・縮小するためだと考えている。人工の肌の色の変化は速いけれども、同様の変化を伴っている。すなわち合成のメラミンであるポリドーパミンからできた一連のナノ粒子がケラチン構造の役割を果たしている。なおここでできたナノ粒子のフィルムは、迅速で簡単に読み取り可能な湿気センサーとしても利用可能である。カメレオン、カメルーンにも棲める〜んです。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 22, p. 10.

DOI: 10.1021/acs.chemmater.6b02127

16.9.11

| | コメント (0)

大気中のエアロゾルは

 光を散乱させることで雲を形成する因子になったり、惑星を冷却させることができる。その前駆体の一つとして脂肪酸が加えられた。科学者は長年これらの分子は、光化学的に大気中を通る光に対して不活性で、大気化学の対象として待機しているとは考えていなかった。それに対して今回、もし脂肪酸が十分な濃度で存在すれば、大気中に関連のある波長で光化学的に活性であることが明らかにされた[1]。その濃度は水と空気の接点で存在しうる。ここではノナン酸を大洋の表面に浮遊する有機分子のミクロ層で見られる化合物の代表として使っている。希釈したノナン酸を半分だけ満たした反応器に照射し、溶液の上の気相でアルデヒドを検出した。量子力学計算をもとに、表面では脂肪酸が光を吸収し三重項状態に励起して分解、ヒドロキシルラジカルとアシルラジカルを形成するか、あるいは近接する分子から水素原子を引き抜く可能性がある。どちらの経路も科学的に活性な二重結合を含む化合物に至り、それらはオゾンあるいはヒドロキシラジカルと反応し、エアロゾルを形成しうる。ノナン酸もなんのその、光はそれを励起させる。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 22, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aaf3617

16.9.10

| | コメント (0)

研究室の電気が

 突然切れた。分取装置に接続されたパソコンのエラー表示画面が空しい。質量分析測定のために別の棟に移動。自動ドアの開き方が微妙。こちらも暗い。この辺り一体か、エレベーターに閉じ込められた人はいないかと事務室に行った。エレベーター内の音や声を確認して気配がなさそうだったとのこと。聞けば停電は西濃地区全体。いっせいのうで復帰は無理か。信号も止まったまま。何時まで続くか?帰宅困難の可能性。ここで過ごすとしたら水に食糧が必要。工学部には災害に備えて水1400本程は保管されている。ただし夏休みとは言えこの建物には少なく見積っても1000人程度の人がいるはず。乾パンの数は看板にも掲示がない。備蓄された毛布4600枚、もう古くはなっていないか、担当者が時々確認しているのでOK。状況もわからないまま過ごしていると一斉に点灯した。碧南火力発電所での異常によるものだったらしい。岐阜から80 km ほどの碧南。平気なんじゃなかったです。学んだことも多かった。

16.9.9

| | コメント (0)

鞭毛虫である

 キネトプラスト目の昆虫に年間数百万の人が感染し、これらがシャーガス病、リーシュマニア病、睡眠病を引き起こし、数万人が命を落としている。とりわけラテンアメリカ、アジア、アフリカの貧しい地域社会で優先して起こる。これらの感染に対する薬を必要としているが、医師は未だに適切なものがないし」としている。その中これらキネトプラスト目の共通の標的が同定され、同じ分子で治療を可能にすることが明らかにされた[1]GNF6702と呼ばれる化合物がネズミの場合に、これまでの薬剤と比較して先の三つの疾病を治療できる。また分子の薬効は新しい機構によるもので、帰省中でもそうでなくても、寄生虫のプロテオソームと呼ばれる細胞内タンパク質を抑制する一方で人のそれは抑制しない。GNF6702の安全性のテストが必要であるものの、経口投与できるために現在の治療薬と同等あるいはそれを超える効果が期待できる。なお今回3百万の化合物のハイスループットスクリーニングを行い、医薬品化学による生体利用効率、有効性、選択性、毒性の小ささを向上させることでGNF6702に至った。キネトプラスト目対策のプラスとなる薬剤も目前です。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 22, p. 8.

DOI: 10.1038/nature19339

16.9.8

| | コメント (0)

副編集長Kateさんの

 系統的調査の結果かどうかは知らない。ChemistryView websiteでは、リリースされた論文の著者にインタビュー形式で記事を作成して掲載しているとのこと。今回は自分たちの順番で、Dear Toshiakiで「やってみない?」というメールを拝受した。8月上旬である。What, How, Wayで始まる質問も含めて16種類の例文がある。さらに自分で考えてもよい。この研究の起源は何か?最も重要な点は?従来の研究との差異は?この研究にはどの程度の期間を要したのか。研究の動機づけを説明してほしい。どの程度のインパクトがあるのか?どの部分が最も挑戦的だったのか?など。日本語で回答を考えた。「なんとも手前みそな感じ、でも誰かは見そうな感じ」と迷いつつ英文にして写真と一緒に送った。迅速なKateさんから即日お返事。It looks really good already. 英文を一部修正したので確認をとのこと。96日リリース予定[1]。早速大切にしまっておきたいコメントをいただきました。

[1] http://www.chemistryviews.org/details/news/9677771/.html?elq_mid=11777&elq_cid=2584652

16.9.7

| | コメント (0)

逆浸透法を利用した

 炭化水素を分離する方法が開発された[1]。これによってp-キシレンのような価値のある高分子合成のための化学原料を調製するための価格を劇的に下げることができる。研究者らは市販のポリ(ビニリデンフッ化物)からできた中が空洞の繊維を使った。この繊維は、分子サイズの孔がたくさんある幕で囲まれたミクロサイズの孔で一杯の担持材料のチューブで出来ている。すなわち「孔だらけ」であるとあなたも気がついたにちがいない。別の穴は、この空孔材料が有機溶媒とは適合しないことだった。そこで研究者らはp-キシレンジアミンで高分子繊維を交差連結させて、ついでこれを550 °Cに加熱し炭素モレキュラーシーブと呼ばれるすべてが炭素の材料に変換した。高圧でこれを使ってp-キシレン:O-キシレンの50:50混合物を85:15の混合物にすることができた。通常p—キシレンは蒸留などで分離されているため、今回の方法によるエネルギー節約はかなりの量になる。一般に従来の方法に比べて逆浸透法は10-50倍エネルギー効率が向上し、浸透法なるもしんどい方法ではない。

[1] Chemicals & Engineering News, 2016 August 22, p. 8.

DOI: 10.1126/science.aaf1343

16.9.6

| | コメント (0)

原子間力顕微鏡(AFM)で使う

 探針が、通常の研究室の道具になる可能性が出て来た[1]。二光子重合と呼ばれる技術を使って研究者らは、解像度がおよそ25 nmAFM探針をプリントアウトした。二光子重合によるAFM探針は10年以上前に初めて作られた。その技術が今回、3-Dプリントの設計の柔軟性やオンデマンド性と組み合わされ、満足できるレベルの探針ができた。たとえばバラの花びらの急なピークや谷を探索できる狭い針が作られた。市販のチップも同様に様々なタイプのものが提供されているものの、ある特定の目的のためのベストな探針はコストがかかる。二光子プリント法は標準のステレオリソグラフィーと同様に、フォトレジストと呼ばれる光反応性高分子を紫外光にさらして、制御しながら3-Dにする。提供された探針は、シリコンや窒化シリコン製に比べて頑丈ではないけど相当に硬い。これによってAFM使用者にとって様々な可能性も広がる。関心をもたれた探針に感心しましたか。

[1] Chemicals & Engineering News, 2016 August 22, p. 7.

DOI:10.1063/1.4960386

16.9.5

| | コメント (0)

コンビニ店

 が開店するという[1]。求人広告に応募してそれから18年アルバイト定員として過ごす。変わらぬ準備・変わらぬ忙しい時間帯。8人目の店長の指示、新旧入れ替わるアルバイト定員、でもほとんど同じ光景。小学校の頃の自分の振る舞い、親が呼び出されていた。アルバイトを始めて「変わったわ」と言われるも18年間独身かつアルバイト。友達の「なぜアルバイト?結婚したほうが」をなにげにかわす彼女。ある日新しいアルバイトの彼がきた。程なく普通ではない素行で店を去った。ふとした時彼に会った。定職無し・独身の二人、どうせいなら同棲をと、コンビニがきっかけの二人が、コンビになった。それでも昼勤務を続ける彼女、定職を捜すように促す彼。18年勤めたお店を退職した。会社の面接の日、面接時間までの間コンビニに入った。そこには忘れかけていた音があった。身体は商品の並びを整えていた。そのシーンに怒る彼、これが自分の本能であることに気がついた彼女、退職しておよそ4週間、藻抜けのようになっていた身体が、躍動し始めていた。

[1] 村田沙耶香著「コンビニ人間」(文藝春秋、九月特別号)。

16.9.4

| | コメント (0)

メタマテリアルは

 不思議な特性を示す。たとえば光や音の選択的な反射、吸収、透過する能力である。これはその工学的に改変された構造のためである。多くのメタマテリアルは金属からつくられ、電気あるいは熱的な刺激に応答してonoffの状態の間を入れ替えるものも含まれる。一般に金属は可視光や赤外光を吸収するため、これらのメタマテリアルは様々な光学素子としての利用が阻止されている。その中今回研究者らは、300 nmの厚さのゲルマニウムアンチモンテルリド(Ge2Sb2Te5)(GST)を使って、およそ750 nm130 nmのスペースのあるGST平行になった回折格子をつくった。GSTは相変化材料であり、DVDでデータ貯蔵メディアとして広く使われている。回折格子は1300 nmから1600 nmの近赤外波長の透過をブロックする。ただし緑色レーザー光を照射したときには、GSTはアモルファスから結晶に変化し、これらの波長を透過出来るようになる。研究者らはDVDと同様にZnSSiO2の保護層の間にGSTを入れようとしている。これによって短時間の加熱でアモルファスに戻す時のダメージを避けることも可能になる。メタマテリアルが目玉なリアル製品になりそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 22, p. 6.

DOI:10.1063/1.4959272

16.9.3

| | コメント (0)

リオオリンピック

 最後はマリオも登壇、周りも驚く。その中組織委員会は「持続性」をテーマとして掲げ、2026年までに2百万トンの二酸化炭素の削減のための低炭素テクノロジーの促進を期待する。また組織委員会はこれがブラジルやラテンアメリカの温室効果ガス削減の触媒になることも望んでいる。2010年ダウケミカルはオリンピックゲームの公認化学会社になった。ロンドンでは、エネルギー効率のよいポリオレフィンエラストマーを供給し、これは塩化ポリビニルの代替である。2014年のソチでは、ダウと組織委員会とが二酸化炭素排出を軽減するプログラムを立ち上げ、今回もブラジルを支援し、温室効果ガスについて2025年までに2005年の37%削減を宣言した。ここでは、微小泡柔らか包装、軽量な乗り物の結合剤、水性の路面標識染料が紹介された。ブラジルの担当者はこれによって、この地域の鍵となる工業が、より持続性の高い稼働に参加し、削減活動の契機になったと述べている。東京でもダウ、カウントダウンが始まった。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 8, p. 11.

16.9.2

| | コメント (0)

Psidium Guajava

 和名バンジロウとも呼ばれる。グアバである。がばっと食する人もいるらしい。これが薬草剤として長年使われている。この葉っぱから抽出された天然物は、プシグアジアール Bを含み、それは肝臓ガン細胞に対しては毒性を示す。構造的には合成化学者の「合成したい気持ち」を大いに刺激する。歪みのある環に立体中心が埋め込まれ新しい化学も潜在する。そこで今回プシグアジアール Bの最初の全合成が報告された[1]。合成は単純なジアゾケトンから始まり15段階で完成した。分子のひずみのある縮環したトランスシクロブタン環部分を導くために、ウルフ転位と不斉ケテン付加を組合せたタンデム反応が開発された。これはこのコンビの初めての例である。これによって分子のシクロブタン部位を調製でき、その後のC-H官能基化の重要な配向基の組込みも同時に行われている。この戦略はトランスシクロブタン環を持つ他の分子でも利用することが期待されている。味あ〜るプシグアジアール合成でした。

[1] Chemical & Engineering News, 2016 August 8, p. 9.

DOI: 10.1021/jacs.6b07229

16.9.1

| | コメント (0)

« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »