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2017年2月

突然の話があって

 自分から家を去ったぼく[1]。一ヶ月ほどの間、東北から北海道を旅して東京に戻った。今は重度の認知症で入院している著名な画家である父が、かつて一人暮らしをしていた家を、息子である友人に紹介してもらった。静かな山間にあるその家の屋根裏で、自らも画家であるぼくは、密かに隠された未発表作を見つけた。強いメッセージ性と力強さのある絵。ある日近くに住む面識のなかった人、免色渉(めんしきわたる)から「肖像画を書いて欲しい」と依頼があった。その頃夜中に家の近くからかすかな鈴の音が聞こえてきた。封印されていた石室の3 mほどの深さの穴の下にそれがあった。肖像画の完成で免色氏の家に招かれ、食事をともにするとともに、中学生の少女、秋川まりえの肖像画の執筆も頼まれた。その頃イデアである騎士団長が、おいでやと言っていないのに現れてアドバイスのようなことを語る。その姿は屋根裏で見つけた絵の人物である。まりえが肖像画のモデルとして日曜日の午前中にぼくの家に来る。免色氏とも面会するも危うさを感じていた。その彼女が失踪、騎士団長が現れてまりえを発見できる手順をかすかに伝授。代償は大きかった。事が落ち着き9ヶ月前と同様の鞘に収まるものの、提示されたステージが変わっていた。

[1] 村上春樹著「騎士団長殺し」(新潮社)。

17.2.28

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伝統的な人の美しさを

 探求するときは、顔やスタイルの対称性が優先されて、衣装も工夫される。一方、医薬品候補を合成する化学者は、分子の中の非対称性を粘り強く探求する。これは不斉分子あるいはキラル化合物は、立体化学に依存した独特な特性を有するためである。そのような立体中心を直接導くことができると化学者は時間と資源を節約することができる。その中研究者らはイソプロピル基のC-H結合を活性化することで、対称性を崩す反応を開発した[1]。窒素上に4-CF3C6F4基を組込んだイソ酪酸アミドを出発化合物に、Pd触媒、キラルな二座配位子を作用させるとカルボニル基のβ位のC-H活性化が進行し、そこにアリール、ビニルあるいはアルキニルヨージドを組込むことでカルボニル基のα位にキラリティが生じる。このエナンチオ選択的な反応には、光学活性な配位子の設計が重要であり、これによって出発化合物のメチル基がロックされて回転できない、と書いてんねん、記事には。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 February 6, p. 7.

DOI:10.1126/science.aal5175

17.2.27

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バイオから得た

 ビスフェノールが、再生可能なエポキシアミン樹脂をつくるのに利用することができ、これによって有害性が疑われているビスフェノールA(BPA)を使う必要がなくなる[1]BPAは原油由来のいわゆる環境ホルモンであり、米国FDAは、子供製品の包装に使うことを禁じている。堅さと熱特性を有するエポキシ樹脂は、エレクトロニクスや絶縁体として広く使われているが、そのエポキシの中にあるBPAの代替物の探索が行われている。今回研究者らは、天然に存在する内分泌をかく乱しないビスフェノールとしてモクレンなどの植物で見られるシリンガレシノールを使ってエポキシアミン樹脂を合成した。ただしモクレンから、もうくれん、ようになる可能性もあり、ここではシリンガレシノールを化学酵素法によって合成した。得られた樹脂は、応力や熱に対する高い安定性を有し、既存のBPAからの樹脂とそれらの特性は類似だった。研究者らは、BPAに匹敵するバイオベースのビスフェノール探索は、まだ終わっていない、と述べている。バイオ由来、倍多くなる勢いです。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30, p. 9.

DOI: 10.1002/cssc.20d1601595

17.2.26

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付箋紙と

 銀インク、アルミホイルとクリーンルームのティシュを使って研究者らは、安価で圧力、湿気、温度センサーを作り、柔軟性のあるシリコン回路に連結、データ処理、データ転送を可能にした[1]。健康状態を把握する道具に利用できるこれは、付箋紙が伏線にあった。すなわち銀インクコイルあるいはコンデンサをセルロール付箋紙基質にプリント、それぞれ温度および湿気センサーになった。温度変化は、インクの電気抵抗の変化で検出できる。一方で紙の誘電体の誘電率が汗によってもたらされる湿気に応答し、センサーの電子プロファイルが変化する。人の鼓動を追跡するために、アルミホイル片の間に挟んだクリーンルームティッシュを使って、圧力センサーが組立てられた。ティッシュの超極細繊維が、手首の橈骨動脈を通る血液の流れに伴うスタッカートに沿って、圧縮されたり緩んだりして、サンドイッチセンサーの電気容量が心臓の鼓動とともに変動する。それぞれのセンサーは3-Dでプリントされたリストバンドにはめ込まれて、およそ25ドルで仕上がるデバイスになった。アドバイスに従って使いましょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30, p. 9.

17.2.25

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空間的に

 接近した分子の間の力場は、様々なタイプの協奏的な動きや分子間振動を引き起す。この種の分子グループのダンスは個別の分子内の振動を変化させて、化学反応性にも影響を及ぼすことができる。ただしこれらの分子動きの詳細は、単一の分子のペアの複合的な振動がこれまで測定されていなかったため、解明は未だにしんどいことであった[1]。その中研究者らは、空間的に設計した走査型トンネル顕微鏡を使って、二つの一酸化炭素、一つはSTMチップの上に、もう一つは銀表面の上にあるそれらの複合的な振動を検証した。振動は、短い距離のCO-CO反発によって引き起こされる。そこで弾性力のない電子トンネルを測定しながら、二つの分子の距離を調整した。分析結果は、隠された並進運動に相当する非対称の振動モードを含む様々な分子の繊細さが明らかにされた。研究者らはこれらの振動の特徴で、チップとサンプルの距離や角度、CO分子の配列に由来する化学情報を引き出すことができるとしている。振動のことわかって安心やどう。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30, p. 8.

DOI:10.1103/physrevlett.118.036801

17.2.24

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液相法を使って

 電気化学的に弱い材料から安価なリンの同素体を、非常に有望なものに変換する方法が開発された[1]。それは新しいリチウムイオンバッテリーのアノードとして活用しうる。電池の研究者らはこれまで、グラファイトがファイトしても、それよりもおよそ七倍高い赤リンの理論的な電荷容量を利用しようとしていた。ただしリンはほとんど伝導体ではなくてリチオ化のサイクルの間に劇的に膨張しアノードが割れてしまっていた。そこでリンと炭素を混ぜるアプローチで伝導性が改善されていたが、リンの含有量が減少し電荷容量の向上に限界があった。それに対して今回はPI3とエチレングリコールと臭化セチルトリメチルアンモニウムとを反応させることで、ヨウ素をドープした赤リンナノ粒子が調製された。ナノ粒子から得られたペレットは、市販の赤リンの100億倍の伝導度を示した。この新しい材料からつくったアノードは、赤リンの理論的な値に近い初期電気容量を示し、数百回繰返すことで徐々にそれが低下していった。責任ある人が赤リン改良に取組んだ成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30.

DOI: 10.1021/acs.nanolett.6b05081

17.2.23

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窒素原子を

 ふんだんに詰め込んだ分子は、普段から爆発性を示し、兵器や推進剤に利用可能である。その中長年合成の標的だった、全てが窒素原子の芳香環すなわちシクロペンタゾレートアニオンがTHF溶液中で昨年合成された[1]。今回その化合物が固体状態で単離・同定された[2]。研究者らは数百回の実験の後、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニルペンタゾールのC-N結合を、酸化的脱芳香族化することで切断し化合物を調製、(N5)6(H3O)3(NH4)Clとして単離した。ペンタゾーレトアニオンは、アンモニウムやヒドロニウムカチオンとの水素結合によって安定化されている。この白色の塩は、空気中室温でも安定で117 °Cまでは分解しない。ただし酢酸エチル中常温で保存すると結晶は6ヶ月の間に徐々に分解し、NH4N3を与える。Nanjing大学の研究者らによって達成されたこの成果、最初は難儀したに違いない。窒素だらけの環内で窒素原子が小っさくなっている。

[1] Chemical & Engineering News, 2016, July 18, p. 8.

[2] Chemical & Engineering News, 2016 January 30, p. 8.

DOI:10.1126/science.aah3840

17.2.22

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フッ素原子を

 農薬や医薬品に組込んでも、違約金は発生せず、その活性が向上する。そのためフッ素原子組込みの様々な方法が開発されているが、芳香環への組込みでは、塩化アリールと金属フッ化物との反応、アリールトリフラートのPd触媒によるフッ素化、フェノールとフェニル硫黄フルオリドやフルオロイミダゾールのような脱オキシフッ素化剤との反応が知られている。ただし、コスト、反応剤の安定性の低さ、官能基受容性の限界、塩基のような添加剤の利用という課題があった。その中よりよい方法が探索されて今回、アリールフルオロスルホネートを経由する反応が開発された。芳香環には電子供与、求引いずれの置換基も持たせることが可能で、フッ化テトラメチルアンモニウムがフッ素化剤として使われ、反応が室温で完結する場合もある。反応は、フェノール誘導体に、フッ化スルフリル(SO2F2)ついで(CH3)4NFを加えてワンポット無触媒で、市販の薬や除草剤の類縁体を含む芳香族、複素芳香族化合物を導くことができる。勤勉さが、簡便さを生んだのかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30, p. 6.

DOI: 10.1021/jacs.6b12911

17.2.21

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石炭火力発電は

 大気中の水銀を人為的に発生させる最も大きな要因である。水銀は神経毒で、過ぎんたるはの基準もかなり低い。一方で大気中では一年以上浮遊するため、ある地域の空気中の水銀量は、その地域で発生したものかグローバルに浮遊してきたものかを明らかにすること、また地域の水銀発生量を削減する効果はどの程度かを見積る必要があった。その答えを得るために1992年から2014年まで米国北東地域の大気の水銀量が測定されてきた[1]。研究者らは、発電所やほかの場所からの水銀と二酸化硫黄の排出量に関するグローバルさらには米国のデータを使い、何がこれらのレベルに影響しているかを推定した。その結果、二カ所で毎年2から8%ずつ水銀が減少していた。2000年までは、廃棄物の焼却場の減少が水銀量低下のおもな要因だった。それ以降は地域の発電所減少と関連がある。これはおそらく2008年の景気後退や安い天然ガスへの移行に伴う石炭火力発電所の閉鎖と関連しているものと思われ、地域の水銀量は地域の排出量が制御していることも確かめられた。水銀は、石炭から来てたんや。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30, p. 5.

DOI: 10.1021/acs.estlett.6b00452

17.2.20

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398種類の

 トマトのゲノム配列が決定された[1]。ついで味覚を判定するパネリストの助けを借りて、トマトフレーバーや臭いを呈する化合物28種類を同定した。それらには、葉っぱ様の酢酸ゲラニル、フロラール様のβ-イオノン、柑橘系の6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含む。たいていのスーパーマーケットのトマトはこれらの分子のうち13のレベルが伝統的なものと比べて極端に少なかった。次にトマトゲノムのどの領域がこれらの化合物の生合成に関わっているのかを明らかにするために、化合物と遺伝子のロードマップが作成された。この研究の目的は20世紀前半にあったトマトの特徴を取り戻すことである。ここ数年アメリカでは、トマトの人気が上昇し需要も増加する一方で、生産者は、味にはこだわらず、見かけや保存の長さに重きを置き始めている。たとえば、たいていのスーパーマーケットトマトは、熟成ホルモンの生産を、とまっとるように、遅らせる遺伝子操作を行い棚に陳列して長持ちするようにしている。奇しくもこれが香りや糖の生産も減少させている。また本来、緑色の斑点もあるのが普通だけど全体を赤にするために、甘みや香り生産の不可欠な葉緑素が取り除かれている。香り味も最高で熟成したトマトを求めて、苦戦している。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 30, p. 5.

DOI:10.1126/science.aal1556

17.2.19

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共有結合性有機構造体(COFs)は

 多孔質の結晶高分子で、合成の部品を選ぶことで孔のサイズを調整することができる。研究者らはこれまでCOFsなどを、選択的な膜、触媒担持や別の応用のために研究してきた。ただしCOFsは加工が難しい微結晶粉を形成してしまう。その中ここではCOFsを安定なコロイド研濁液として調整する方法が報告された[1]。これによって通常起こる結晶の不可逆な会合と沈澱が抑制される。研究者らは、COF-5として知られているボロネートエステルが連結したヒドロキシトリフェニレン材料を研究していた。X線散乱液体セル顕微鏡や他の分析法をもとに、ニトリル溶液が結晶の会合を妨げ構造体の重合は抑制しないことを見つけた。さらにCOF-5合成のためのジオキサン—メシチレン溶媒に少量のアセトニトリルを加えるだけで、沈澱が抑制でき、数週間安定なコロイド研濁液が得られた。これらの研濁液を使って、高品質な透明なフィルムを成型することができ、これは応用の鍵となるものである。COFsで興奮して、幸福になれるかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 23, p. 8.

DOI: 10.1021/acscentsci.6b00331

17.2.18

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アフリカでは

 HIV/AIDS関連による毎年の死亡者およそ200百万人のうちの三分の一は菌類感染であるクリプトコックス髄膜炎に由来する。この疾病や別のHIV/AIDS関連の菌類感染に対する最重要な薬は、フルシトシンとアンフォテリシンBとの組合せである。これらの二つの薬はWHOでも基本的な薬のリストにストアされているものの世界的な価格や販売の不平等性のために、アフリカの人の手にはほとんど入らず、ジェネリックの欠如のため価格低下の機会もない。その中研究者らは合理化した合成法を提供し、これによって利用できる人が拡大される可能性が出てきた[1]。現状ではフルシトシンはウラシルを出発化合物にフッ素化、塩素化、アミノ化、加水分解の四段階で製造されている。それに対してここではパイロットスケールの連続フロープロセスを開発しシトシンを1時間あたり60 gの速さで直接フルシトシンに変換している。これによって菌類感染だけではなくフルシトシンが抗がん剤やHIV医薬品の中間体としても利用拡大できる。フルシトシンが、都心の他でもフル出場している。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 23, p. 8.

DOI: 10.1021/acs.oprd.6b00420

17.2.17

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痛みを制御する

 より効果的な方法を探索していた研究者らは、リン脂質でできた細胞のようなもので注入可能なリポソームを開発した[1]。これに近赤外光を照射して1分すると部分麻酔の刺激が繰返し放出される。このオンデマンドなシステムはいつか医師や患者に、今までの方法よりもよりよい部分麻酔を配送できるシステムになり得る。まずリポソームを、神経を遮断するテトロドトキシンで満たし、脂質膜の外側表面を金ナノロッドでカバーした。どのロットでも、ナノロッドは近赤外光を吸収しこれによって熱が発生、膜組織が拡大して中のものが漏れだす。研究者らはまた、リポソ—ムの膜組織にホスホコリン誘導体を組込み、これも熱によって穴があき、テトロドトキシンが放出を助ける。膜組織が冷えると再び固くなりこのサイクルが繰り替えされる。ネズミの足にこれを打ち込んだ時には、突き刺しても最初の二時間は痛みを感じていなかった。ただし6時間後にはこの効果は薄れていた。さらに座骨の神経をブロックできることも試験動物の片方の足に注入することで確かめられた。テトロドトキシン、どきっとしん?

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 23, p. 8.

DOI: 10.1016/j.cell.2016.12.044

17.2.16

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星間の

 広がりに浮遊している鉄が豊富な粒子は、宇宙の化学進化を触媒する役割を担っていると考えられている。ただし星間空間で固体の鉄がどのような形で存在するか不確かだった。今回、純度の高い鉄粒子として存在しているのではなさそうであることが、核生成チャンバーとレーザーを搭載したロケットを地表から300 kmに打ち上げることで明らかにされた[1]。研究者らは鉄原子を温度と圧力を制御した核生成チャンバーで蒸発させた。ロケット内のチャンバーを放物線のパターンで飛ばすことで、宇宙の微小重力をまねることができた。その結果、レーザー干渉計を使って、純度の高い粒状の鉄の形成が観測されたが、それはかなりまれで、簡単にまねできない。鉄の崩壊が10万回起こる間にわずか一回程度起こり、その結果原子はお互いくっつき核粒子になった。この低いくっつきの可能性から、星間では、鉄原子は宇宙に浮遊するシリケートや炭素の粒子のような存在する粒子で捕獲されている可能性が高いとしている。チャンバー内でチャンバラはしない。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 23, p. 5.

DOI: 10.1126/sciadv.1601992

17.2.15

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ヤモリは

 壁をちょろちょろと上り下りすることができる。これはそれぞれの足の裏にある剛毛と呼ばれるおよそ50万の繊維による。それぞれの剛毛は、へらへらせずに、へらのようなナノ構造に分けられ、弱いvan der Waals相互作用を介して、個別に表面をしっかりとつかむ。でそれらが合わさった数百万の相互作用が強い接着性をもたらす。この粘着性に刺激を受けた研究者らは今回新しい接着パッドを開発した[1]。彼らは以前、キノコの形をしたポリジメチルシロキサン微細構造を開発しヤモリのような接着を製造した。ただしそれらを簡単に使うためには、脱着が思いのままに可能なシステムが必要だった。そこで光を駆動力として考えた。すなわち接着パットのうらに、アゾベンゼン分子を含む伸縮性のある液晶エラストマー層を組込んだ。アゾベンゼンは紫外光存在下トランスからシスへ異性化し、これが接着層を曲げることになる。紫外光を切ることでもとに戻る。接着表面が平面なときには物体にくっつくものの、紫外線照射でそれは曲がり、間借りしていた物体表面との相互作用が少なくなり、握りを手放すことになる。

[1] Chemical & Engineering News, 2017, January 23, p. 4.

DOI:10.1126/scirobotics.aak9454

17.2.14

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窒化ホウ素は

 触媒でも、異端児でもなく、触媒を担持するものとして広く知られているが、これを使った触媒反応が二ヶ月続けて報告された[1]。窒化ホウ素のうち、ヘキサゴナルフォーム(h-BN) について近年いくつか報告があって、これが水分解や他のプロセスに利用できる。研究者らは先月、BN触媒を使った新しい例として、工業的に重要な脱水素化反応を明らかにした。それに続いて今月、ボールミルによる粉砕で調製した欠陥のあるh-BNが、活性な触媒として、プロペン、シクロヘキセン、ジフェニルエチレンや他のアルケンを水素化できることが報告された。h-BNが媒介する水素化は、ニッケルをつかった水素化触媒より温和な条件で進行し、金属フリーのフラストレイテッドルイスペア触媒よりも活性が高い。NMR分析とバインディングエネルギー計算の結果は、窒素の空隙が触媒活性部位であることが、八つの格子欠陥を試験した中で、類推されている。格子欠陥の重要性が更新された。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 7.

DOI: 10.1021/acsomega.6b00315

17.2.13

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ルテニウムビピリジンや

 関連する貴金属錯体は、超寿命でレドックス活性な励起状態を示すこと、それらが太陽電池や発光素子、光触媒有機反応の増感剤として利用できることから、広く知られている。ただしこの貴金属を、よりふんだんにある第一列遷移金属に置換えたいと化学者は探索しているが、励起状態の発光寿命が短かすぎて、身近にあっても使えなかった。錯体の性質を調整して長寿命化するためには、金属イオンを安定化できる配位子の設計が必要だった。その中、嵩高いキレートジイソシアニドターフェニル配位子が設計され、これがCr(0)の励起状態の寿命を改善している[1]。この配位子の効果とCr(0)イオンの周りのカゴ構造が、室温での励起状態の寿命を2.2ナノ秒に押し上げ、以前のFe(II)37ピコ秒を大きく超えている。加えてクロム錯体は、Ruトリス(ビピリジン)よりも強い光還元剤である。そこで光レドックス触媒としてCr錯体やMo錯体がテストされ、また色素増感太陽電池をつくるためにCr(0)錯体を半導体表面に接合することも行われている。課題解決には、配位子設計が早いし、である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 7.

DOI: 10.1021/jacs.6b11803

17.2.12

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駐車場入口には

 「満」の赤表示、指定の時刻が近い。自動車を託して急ぎ入口へ。担当の方の安堵の様子。控え室に案内していただく。この日は、芸術、文化、文化貢献、観光、産業それから学術の分野で活躍された方々に大賞が授与される[1]。その対象となった中で最も若輩の自分。すでに今回で67回を数える伝統と格調ある賞に恐縮している。スタジオで進行を聞くも気持ちは右往左往。名前を呼ばれて前に移動。受賞の後、簡単なインタビューに答えて席に戻る。自分は二番目でよかった。それでも自分の名前が呼ばれて浮いた感じになる。会場内のライトが少し落とされてスポットライトが巡る中を歩く。「おめでとうございます」という言葉とともにクリスタルトロフィーをいただいた。ナイーブな曲線のデザインと存在感を手で感じるとともに賞の重みが身体に染み渡ってきた。向けられたマイク、うまくいくかなど考える余裕もなく言葉を発した。研究室のスタッフ、かつてのメンバー、今のメンバー、家族、学会関連、一杯やる関連の方々の中で、生かせてもらったお陰です。

[1] https://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/2017/taisyo/

17.2.11

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油絵を描く

 画家は数週間、場合によっては数ヶ月、塗った層が乾くまで待って、次の筆を入れなくてはならなかった。そのため「watching paint dry」が退屈と同義語になった。19世紀になって、J. M. W. Turnerのような画家は、「gumtion」法を使い始めた。これによってペイントにゼリーのような粘度を、どの年度でも与えて、1日以内に描画を終えることが可能になった。今回研究者らは、現代のスペクトル法を使ってこの描画方法に含まれる化学を明らかにした[1]、研究者らは、酢酸鉛を,通常油絵で利用される、マスティック樹脂、アマニ油、テレピン油に加えることで、「gumtion」法を再現した。その結果、伝統的な油性ペンキが、酸化的フリーラジカル機構で乾燥するのと同様に絵の具がゲル化した。ただし酢酸鉛の存在がこの過程を促進した。金属イオンは乾燥の速度を向上させるだけではなく、ゲルの分子構築を統合していった。研究者らによれば、この技術的な進歩が、芸術家の能力に大変革をもたらし、感覚、感情、瞬間の光を捕える効果を表現するために、より流動性があって、のびのびとした緩やかな画法を使うようになった。がっかりしていた画家が躍動し始めた頃のことである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 6.

DOI:10.1002/anie.201611136

17.2.10

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がん細胞を

 抑制し成長を鈍化させるために研究者らは、マグネシウムケイ素化合物ナノ粒子を設計した[1]。これによって腫瘍内の酸性環境の脱酸素化を可能にする。ここでは腫瘍内の酸素は除去できるものの正常細胞には作用しない材料で、毒性を示さないものが欲しかった。その結果、直径100 nmMg2Si粒子をポリ(ビニルピロロリドン)で修飾した反応剤が開発された。この反応剤、酸性条件下でマグネシウムイオンとシランに分裂する。ついでシランは、知らんふりして、酸素と反応し、水と二酸化ケイ素を与える。封をした透析袋で、粒子は溶解した酸素ともヘモグロビン内の酸素とも反応する。二種類の腫瘍を移植したネズミで、一方にはMg2Si粒子を、もう一方にはケイ素化合物を注入した。8時間後の血液中の酸素濃度は、前者では後者のそれよりも75%も低かった。一方で正常細胞での酸素レベルはそれほど変化しなかった。ただしナノ粒子の直接投与に代わって静脈内投与した場合には、腫瘍細胞の酸素のレベルはわずかに低下しただけであった。これは粒子が腫瘍を標的に出来るようには最適化されていないためらしい。腫瘍を殊勝にしなくてはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 6.

DOI: 10.1038/nnano.2016.280

17.2.9

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量子力学計算で

 分子や固体材料の特性を計算した半導体のバンドギャップと実際のそれとの間にギャップがあった。そこで新しい計算法が開発され、計算速度と単純化を犠牲にすることなく、バンドギャップを計算する格段に改良された方法が提供された[1]。バンドギャップは材料の価電子帯と伝導電子帯の間のエネルギーの差を示し、これは伝導体、不導体、半導体の間の違いでその大きさが決まる。これまで研究者らは、密度汎関数理論のコーン-シャム法(KS-DFT)を使って電子バンド構造や励起エネルギー、別の基本的な特性を調査してきた。KS-DFTのあるバージョンは、電子密度の数学的な表現であるいわゆる局所関数を利用し、その単純さのお陰で、他の量子法と比較した時のコスト面での有利さから、一般的に使われていた。ただし局所関数プログラムは、バンドギャップについては失敗する傾向にあり、非局所関数法をもとにした方法で補正する必要があった。今回はHLE16と呼ばれる局所関数が開発され31の半導体に適用された。その結果、最もポピュラーな非局所関数法の値とかなりよい一致をしていた。なのでこれで行っちまいましょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.jpclett.6b02757

17.2.8

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クモの糸は

 その強さから珍重される。ただし工業的に利用するための強靭な繊維をクモは十分にはつくらない。でも雲隠れもしない。そこで研究者らは遺伝子工学で改変した細胞や動物を使って、バイオエンジニアリング糸をつくることにした[1]。研究者らはまず、クモが行っている方法を真似て糸をつくるアイデアに至った。クモの糸のタンパク質はアミノ酸の繰返し領域をひとまとめにするN末端ドメインとC末端ドメインから出来ており、これが強靭さを付与する。N末端ドメインがメインなところは水溶性でありC末端はほとんど溶けない。そこで、ある種のクモからのN末端と繰返し領域に加えて、別の種の比較的水に溶けるC末端領域を使った。研究者らはバクテリアを遺伝子操作しタンパク質をつくった。これは最大500 mg/mLの溶解度を示した。絹の繊維を1 kmほど引き延ばすために、クモが行っているプロセスを真似て、このタンパク質のpH7.5溶液を、ガラスキャピラリーを通してpH 5の水溶性緩衝液に流した。これによって繊維の会合が促進された。苦心の跡も見える。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 5.

DOI: 10.1038/nchembio.2269

17.2.7

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オキシドリダクターゼは

 医薬品合成を含む工業さらには研究段階での反応でバイオ触媒として利用されている。ただしほとんど全ての場合高価な補助因子を必要とする。たとえばそれはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)であって、はでにん使うわけにいかない。この反応剤は現在1モル当りおよそ22000ドルである。これを還元型であるNADPHから再利用できる酵素があるものの、活性が低い、好ましくない副生成物を与える、寿命が短いという弱点がある。一方自然界では細胞内で還元環境を維持するために、NADP+を生産するグルタチオンリダクターゼが使われている。これに触発された研究者らは今回、NADP+の再生に、有機ジスルフィドを酸化剤として、バクテリアグルタレドキシン、グルタチオンリダクターゼを使うシステムを開発した[1]。安いジスルフィドのお陰もあって、再生にかかる経費はおよそ0.05ドル/1モルである。この成果は従来法のいずれよりも優れていると研究者らは述べている。ジスルフィドが酸化するふぃどである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 9, p. 9.

DOI: 10.1021/acscatal.6b03061

17.2.6

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この田舎町を出たい

 という思いで遠くの街の大学に合格[1]。下宿生活が始まる。街の古びた下宿屋、お風呂は近所の銭湯。そこでの生活、隣の部屋に住む一学年上の男子学生、なぜか部屋に来る。親しみがありそうな、優しさがありそうな、過干渉な母もいた実家での生活とは違う、これが大学生か。何気に男女の中になりそうな時、衝撃の出来事。先輩は大学を巣立った。一年後自分も卒業して教師になる。平穏そうな教室、でも二ヶ月でクラスは一変した。今日もしんどい教師。暮らし方も解らず、身体も不調。彼からのプロポーズに結婚、でもその時も交わることができない、受け持ったクラスを最後まで担当することも断念、身体に任せる日々も送る。不調でもやさしく接してくれる夫、でもポケットにはポイントカード、相手はボインか、でもそこは見せて欲しくない。恋愛、結婚、子供を授かる。自然な流れのようでそうではない、ということがわからない人。その中、自分たちは自分たちなりに暮らすことを決めた。

[1] こだま著「夫のちんぽが入らない」(扶桑社)

17.2.5

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オリゴサッカリドと

 ポリサッカリドを連結することは慎重を要する仕事である。立体因子と電子的要因がこれらの分子合成を予想できないものにしている。ただし細胞内で酵素は、酵素だけに、高選択的反応を達成している。これに触発された研究者らは大環状触媒を開発し、それによってβ-グリコシル結合として知られているある型の糖鎖を、予見性と高い信頼度で立体特異的に導く方法を提供した[1]。初めは、キラル触媒がグリコシルクロリドの置換反応の立体化学を制御すると考えたものの、大環状ビスチオウレア触媒を使った際に、同じ立体化学の生成物を与えた。触媒が反応の立体化学を制御しているのではなくて、糖鎖の立体化学が反応を制御している。反応はSN2機構で進行し、触媒の中のチオウレアは糖鎖のクロリドと水素結合し、それをよりよい脱離基にしている一方で、触媒の中のアミド側鎖は、アルコールを活性化し、求核性を向上させる。これによって様々なトランス-1,2-シス-1,2-2-デオキシ-β-グリコシドを導くことができる。Jacobsen先生、グリコシルですが、グリコも知っているでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 16, p. 5.

DOI: 10.1126/science.aal1875

17.2.4

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超強酸が必要なとき

 化学者は、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)や、トリフルオロメタンスルホニルイミド(CF3SO2)2NHあるいは(CF3SO2)3CHに行き着く。これらの酸やそれから導かれる塩は、燃料電池の電解液、活性種の安定化剤、触媒として高い人気がある。その中、この超強酸の一族を広げる研究で新しいC-H酸が報告された[1]。新しい有機超強酸は、だれかの協賛も受けてか、対応するアニオン部位の設計から始まり、標的となるC-H結合に隣接する場所に電子求引性置換基が組込まれた。これによって陰電荷が非局在化し塩基性が低下する。最も電子求引性の大きな置換基の一つであるCF3SO2基をより多く導入することでさらにC-Hの酸性度は向上する。そこでこの置換基を三個以上導入し、しかも陰電荷がまんべんなく広がるように対称性を維持した分子を、市販の(CF3SO2)2CH2から合成した。その結果、CF3SO2基を四つ組込んだプロペンが他の誘導体よりも、向山アルドール反応、Friedel-Craftアシル化や他の反応で最も高い活性を示した。超強酸も調教すべし。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 9, p. 9.

DOI: 10.1002/anie.201609923

17.2.3

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ケベック市ラバル大学教授

 Khaled Belkacemi先生も、129日市のモスクで夜の礼拝中に起きた銃撃の犠牲になった六名のうちの一人だった[1]。先生は食品化学の分野で、不均一系触媒を使いバイオマスや生ゴミを変換する研究に従事されていた。この醍醐味ある研究は先生がご逝去された後も持続するに違いなく、食品工学での工業的応用も見据えられている。先生はケベックのCenter for Green Chemistry and Catalysisのメンバーでもあり、Andre Charette先生やChao-Jun Li先生も「再生可能バイオマスの高付加価値化成品へ変換できる不均一系触媒での高い業績を生み、快活で前向きなメンバーだった先生」の突然の死にショックを隠せない。食品科学のPaul Angers先生は「彼の触媒は、普段生じる残り物から例えば生分解性プラスチックをつくることを可能にした」とも述べている。アルジェリアからカナダに移民し、奥様と三人のお子様と暮らしておられた。お子様の一人は「父は、自分の国を去ったことで、自分たち家族に、恐怖から遠く離れた場で住む機会を与えてくれた」と記している。先生のご冥福をお祈りします。

[1] http://cen.acs.org/articles/95/web/2017/01/Quebec-shooting-victim-chemist.html?utm_source=Newsletter&utm_medium=Newsletter&utm_campaign=CEN

17.2.2

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シリコンは

 SF作家によって一度は執筆されたトピックスを、科学ジャーナリストがカバーする機会を与える。すなわち埋め込み型センサー、着用できるスマートガシェット、さらには電子皮膚である。ただしシリコンは、走り込んでも、生体組織のように曲げたり伸縮させたりするデバイスに必要な柔らかさにはならない。すでにこのタイプの半導体高分子がつくられているものの、電気特性を犠牲にせずに柔軟性を持たせることが難しい。その中研究チームは、もとの長さの二倍に伸びてもシリコンに匹敵する速度で電気が流れる薄いポリマーフィルムを作成した[1]。このフィルムでつくられた着用できる回路は、曲げ、ひねり、さらには軽く突き刺しても大丈夫である。この延性のある耐久性は閉じ込めに由来する。弾性力のあるスチレン共重合体と混ぜると、共役したいくつかの高分子が分離し、それ自身を閉じ込めてナノスケールの繊維状の会合状態を形成する。このナノの閉じ込めで高分子が傾き結晶化することを防ぎ、電荷の動きを促進、強固な伸縮性のある半導体になっている。この半導体に感動たい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 January 9, p. 8.

DOI:10.1126/science.aah4496

17.2.1

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