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2017年8月

きれいに燃焼する水素燃料を

 実質的にほとんど制限のない水から、自ら、供給できるプロセスは、科学者の研究心を掻き立て、水を水素と酸素へ分解する触媒開発が行われている。白金は適しているものの高価である。MoS2は低コスト材料で10 mA/cm2のような電流密度で高性能に働く。ただしその電流密度は工業的な応用には低すぎる。その中今回研究者らは、高価な金属を使わない高性能な代替物の開発に思い至った[1]。それがMoB2のα層である。材料は二次元(2-D)グラフェン様のボロン構造であるボロフェンユニットならなり、それが金属の三次元(3-D)モリブデン骨格に入れ込まれている。研究チームは、α-MoB2MoS2よりも高性能であり、さらに比較としたPt-C触媒よりも優れており、1,000mA/cm2のオーダーの電流密度を配送できることを明らかにしている。このα-MoB2の優れた触媒能力は、高い電子伝導率、触媒部位の高い密度と大量輸送特性によるものであると、されている。2-D3-Dが通じて参上した材料である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 8.

DOI: 10.1021/jacs.7b06337

17.8.20

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天然ゴムである

 ポリイソプレンやポリスチレン-ブタジエンのような様々な合成ゴムは200年以上にわたって重要な市販の高分子材料である。それに対して今回リン原子を含む最初の類縁体であるポリ(1-ホスファイソプレン)とポリ(ホスファ-1,3-ブタジエン)が合成された。研究者らは以前、難燃剤、触媒、センサーへの応用を目指して、リン原子を含む高分子を導くモノマーとして、ホスファアルケンに注目していた。その中ホスファジエンモノマーが、モノマネではなくて、調製された[1]。これはP=CC=Cの繰返し部位を含む高分子を導き得ること、さらに共重合や交差連結も可能である。ホスファジエンの重合は、C=C結合を介して進行し、P=C二重結合を保持する側鎖を形成するリン原子も含まれる。ここでのP=C/C=Cハイブリッドモノマーは、リン原子を市販のブチルゴムやスチレン-ブタジエンゴムへ組込むことも可能にしている。得られた高分子の特異な性質の一つとして金イオンへの配位が示されている。ICHAC-12の組織委員長だったGates先生の、リン高分子へのゲートを開けるという芸当でした。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 8.

DOI: 10.1002/anie.201703590

17.8.19

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電気あるいは太陽

 エネルギーを使った二酸化炭素のメタンへの変換反応の開発が行われている。これによって化石燃料が補完されるとともに大気中の気候変動ガスの削減も可能になる。ただしCO2還元触媒のほとんどは長期間の安定性を持たず、特定の生成物に対する選択性が無くて混合物を与える。従来の還元では一酸化炭素、ギ酸、炭化水素酸化物が得られる。その中今回、安価な鉄がアンカーであるテトラフェニルポリフィリンに組込まれた触媒が、イリジウムフェニルピリジン光増感剤存在下、光化学的にCO2COさらにはCH4に常温常圧で還元できることが報告された[1]。触媒は数日間使っても安定でCH4の選択性は最高82%で、以前の触媒のそれが35%以下であるのとは対照的であった。現状では天然ガスから得られるCH4が安いため、これと競合するのは難しいけれども地球上に豊富にある触媒で高い選択性を達成できた点は素晴しい。メタンへの変換方法、面談でもお伝え下さい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 8.

DOI: 10.1038/nature23016

17.8.18

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文部科学省の白書では

 イノベーションに関する議論が多くを占め、産学連携を如何に育成するかが、巧妙に述べられている[1]。その一つが、より基礎的な科学研究の資金を削減することである。その結果、大学や理研を含む研究所は圧迫を受けている。理研の予算は、過去10年間で20%以上カットされて、それに呼応して理研BSIではこの間に主宰者の数が61から41に減少した。

 日本の大学も同様の困難の中にある。2004年に刷新されてから予算は1%/1年ずつ削減されている。これはそれぞれの大学が、「リサーチを工業的あるいは軍事的なニーズと同調させること」で、戦略的な自発性と、より競争的であることに、責任を持つように、ということを意味していた。ただしこれによって先生を雇用することをやめた。代わりに新しいスタッフが、グラントごとに渡り歩く契約社員として受入れられている。文科省の白書では、この若い研究者らにもたらされた状況も認識しており「不安定な雇用状況と経済的な不透明感の中」では「短期間で成果が出ることを目的として、真に独自で創造的なことを実現することが難しい」とされている。ただしこれは若い研究者らに限ったことではない。より多くの行政上の業務や助成金執筆の負担によって、全体の労働時間のうち1/3ほどしかリサーチには使えていない。これは2002年と比較すると半分程度である。

 経済的さらには政治的な逆風が増える中、日本の政策立案者や行政は、科学研究をもっとサポートすべきである。大学は出来るだけ早く「カットがやってくること」をはっきりさせる必要がある。

 日本は、重要な科学的な発見を生み出し公開する力が崩壊していることを悔いている。ただしそれは驚くべきことではない。論文数は、科学や技術への投資ときちんと対応していて、日本では2000年以来それらへの投資も変化がない。その結果2004年には世界第四位だった論文数が2014年には10位になった。中国や他の国では、財政的支援と論文の割合のどちらも増加している。日本は今、過去の成果に満足しているが、将来を守るためには、もっとしなければいけない。

[1] NatureEditorialの一部を、ようやく、訳してみることができました。ご利益(りやく)はないかもしれませんが、誤訳もあるといけないのでオリジナルで確認を。

http://www.nature.com/news/budget-cuts-fuel-frustration-among-japan-s-academics-1.22444

17.8.17

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培養組織から

 新しい臓器を成長させることができれば、すべての臓器を移植する必要性は軽減される。ただし正しい構造の新しい臓器を成長させることは、肝臓のような大きくて複雑な臓器では難しい。その中、雑巾がけはしていない(たぶん)けど、体内に新しい肝臓組織を植え込み、それを成長させるための「種」が開発された[1]。研究者らはヒドロゲルマトリックス中で三つのタイプの人の細胞を組織化することで種にいたったね。まず肝臓細胞と連結する組織細胞の会合体を調製した。ついでそれを血管細胞で作られた器官の間のヒドロゲルの中に会合体をちりばめた。ついでネズミの肝臓から遠い部位にその種を埋め込み、ネズミの肝臓を傷つけて慢性の肝臓障害を再現した。これに呼応してネズミの肝臓は化学信号を出して肝臓の再生を駆動した。この化学信号はまた11週間かけて50倍の大きさに「組織種」が成長することも引き起した。拡大した組織は人の医薬品を代謝する酵素や別の肝臓に特異的なタンパク質を生産していたことから、肝臓組織として適切に機能していることが示された。肝臓再生、感想は?

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 7.

DOI: 10.1126/scitranslmed.aah5505

17.8.16

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法執行機関は

 イヌが爆発物を嗅ぎ分ける力に依存している。ただしそれぞれのイヌのスキルが違うこともあって得手不得手も違う。その中今回、リアルタイムで爆発物からのあり得る臭いを分析することによってイヌの訓練を改良できるデバイスが開発された[1]。調教師は通常、TNTや他の爆発物を含む訓練用の材料をイヌに示してその材料から出てくる揮発物を認識させる。ついで材料を隠してイヌがそれを発見できる能力を評価する。課題は、調教師はしばしば複数の訓練材料を使う時に、様々な混入物があってこれが検出されなくて、イヌの評価の結果がふらついてしまう。訓練材料の妥当性とイヌのパフォーマンスを評価する調教師の正確性を改良するために開発されたリアルタイム質量分析は、1000兆分の1レベルで爆発物に含まれる九つの化合物の測定を可能にしている。この感度はイヌの検出限界とほぼ同等かそれ以上である。四匹のイヌが様々な隠れた爆発物を発見する訓練を受けた。ついで訓練用サンプルを分析したところ、正解だったり不正解だったりであった。爆発物が入っていないとされるサンプルへもイヌは警告を発したが、質量分析では68のブランクサンプルのうち6つは混入物があることがわかった。イヌはブランクもランクづけしていた。飼い主もびっくりである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.analchem.7b00451

17.8.15

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市販のリチウムイオン電池の

 アノードを、ケイ素を使った材料に置換えると充電量が向上する。ただしケイ素アノードは充電や放電の際に、極端な拡大や縮小を伴って、乞われなくても、壊れてしまう。今回研究者らは通常の直鎖高分子であるポリアクリル酸を、機械的結合(mechanical bonds)を含むポリロタキサンと共有結合で連結させた[1]。ポリロタキサンには、アミンで官能基化されたポリエチレングリコール鎖に多くのシクロデキストリン環が通されている。電池が充電されているとき、ケイ素アノードは拡大するけど、環が鎖に沿って自由に移動して圧力を解消させる、滑車のような系である。この分子網細工は優れた弾力性を有し、およそ400%の圧力まで耐えることができる。これまでケイ素ナノ粒子が使われていたアノード製造はケイ素ミクロ粒子に置換えることができる。また従来のケイ素アノードでは重さベースで20%の高分子バインダーが使われていたのに対して、今回のそれは10%である。機械的結合がエネルギー貯蔵に救いの手を差し伸べた最初の例であるとコメントされている。ロタキサンもたくさん使われる様子である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 6.

DOI: 10.1126/science.aal4373

17.8.14

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阿弥陀ケ滝に

 今年も詣でた。昨年同様の穏やかな流れかと思いきや、荒々しい滝に打たれた。滝壺で戯れる人はいない。滝に向かって右側の洞窟には、お地蔵様がたくさんおられる。手を合わせたいと飛び散る水しぶきを身体で感じながら中に入った。足下に気をつけながら渓流沿いを歩く。岩魚(イワナ)と流しそうめんのセット。案内された場所は流しの下流だった。数本のそうめんを箸に納めて少しずつ食す。それなりの景観の中20分程経過。上流の客人が満腹になった頃から流れが変わった。少しずつの後どんどん流れ来るそうめん。自分たちの前から流してくれるお店の方々、見せ場かもしれない。焼き上がった塩味の効いた岩魚、このミックス「いいわな」、でもノンアルコール。涼を体感できる場を離れて北へ向かった。コンビニでATMに寄りたいとのリクエスト。このクエスチョンの答え:「この先ないなあ」。それでも同乗者はどうしょうと両側を見る。幸い郵便局あり、そこでの手順、雄弁にかつクールに語ってくれた。

17.8.13

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学年同窓会に

 生まれて初めて参加した。40年以上お会いしていない人がほとんどだった。それでも覚えてもらっていた方々に感謝。今でも覚えてもらっていた人がたくさんの人を紹介してくれた。とはいえ、かつては同じ学び舎にいた。すでに退職された方、ばりばり会社勤めの人、ご商売をされている方、医院を切り盛りされている方、ない交ぜである。乾杯は最近売り出し中のアルコール度数の低い爽やかな乾杯酒。お庭で段取りされるタンドリーチキンにも、たんどり〜つけた。後半はライブ演奏、だいぶたくさんの経験がある方がなじみの曲を披露。70歳を超える三名の先生方にも参加していただけた、語りは往時と同じ。当時の体操に健康手帳。逆上がり、懸垂逆上がり、蹴上がり、このセットができれば最高ランクだった(はずである)。自分はできなかった。国語の先生86歳、家で読書に勤しまれているとのこと。帰りがけ「どんな本を読んでおられるのですか」「江戸時代の古文書、原文でやなあ〜」衝撃で小劇場は幕を閉じた。

17.8.12

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プロトンの重さ

 メガトン級ではない。合成化学の実験で分子量を計算するときには水素の原子量は1.0でこと足りる。一方でより正確な質量の探索が継続している[1]1997年、1.0072764660であると報告された。1999年には1.007276466892002年に1.0072764668620081.0072764669520141.007276466879と新しい値が報告されている。今回最新のそれよりも軽い1.007276466583 amu(原子質量単位)であることが、核物理マックスプランク研究所から報告された。より小さなプロトンの質量は物理定数にも影響する。たとえば、水素原子を基底状態からイオン化できる最も小さなエネルギーの光子を示すRydberg定数もその一つである。今回の測定ではPenning trapと呼ばれている素子が使われている。そこでは磁場と電場の組合せの中にプロトンがいる。プロトンが磁場の中で周回する周波数は、電荷と質量の比に比例していて、きれいに値が算出される。続きは近くのPRONTOにて考えてみましょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 5.

DOI: 10.1103/PhysRevLett.119.033001

17.8.11

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肌に張り付けて

 身体の電気信号を伝えるエレクトロニクスは、補綴の感度を改善し、医者が患者の実際のシグナルをモニターする一助になる。ただし現状この目的に利用されている電極は、空気をトラップしたり肌から汗が出たりして、長い時間使っていると肌に炎症を引き起こす。これではいかんでしょうと今回研究者らは、電気信号を中継する金ナノメッシュで柔軟かつ通気性のあるものを開発した[1]。研究者らはまず、生体適合性のあるポリビニルアルコール(PVA)のナノファイバーを電気的に紡ぎ編み込んでメッシュを作成した。ついでその先を70~100nmの厚さの金の層でコートした。このメッシュを人の肌に使った時には、それに水をスプレーしてPVAを溶解させて数十ナノメートルの接着層をつくり、その場所に金の導体を固定した。PVAの水溶性のために、これは簡単に取り除くこともできる。ナノメッシュは肌の不規則性,指紋やしわにも順応できて、しかもガスや水も浸透する。またその薄さにも関わらず、指関節の上の肌の伸縮と同様な伸び縮みも可能である。これを使って温度や圧力の電気信号を伝達させることに加えて、屈曲する筋肉からの電気信号を肌から直接得ることで、筋電図検査もできる。ナノメッシュも、夏の梅酒もいい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 24, p. 5.

DOI:10.1038/nnano.2017.125

17.8.10

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鉄硫黄クラスターは

 様々な酵素の触媒部位に必要な重要な補助因子である。院試問題になるかはともかく、そのクラスターは原始地球の生物触媒の発現にも含まれていたのではないかと言われている。そのためには、これらのクラスターが環境資源から形成される必要があって、前生物的化学での一つの目的はその機構を解明することである。今回研究者らは可能性のある一つを同定した。 [2Fe-2S][4Fe-4S]Fe2+と有機チオールからの合成を紫外光が引き起す[1]。研究者らはシステインを含むトリペプチドであるグルタチオンを硫黄源に使ってモデル系を構築した。紫外光はグルタチオンからスルフィドを発生させてFe2+Fe3+に酸化する。スルフィドと三価の鉄イオンが結合しクラスターを形成する。実際には原始地球ではグルタチオンはおそらく存在していなかったために、研究者らは別のシステインを含むトリペプチドを試験し、それらの多くが安定なFe-Sクラスターを与えることも明らかにした。さらにクラスターの形成は、初期の単純な細胞モデルとしてつかった脂肪酸小胞とも適合していた。クラスのスターたちにもクラスターについてお伝えください。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 11.

DOI: 10.1038/nchem.2817

17.8.9

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妊娠中の

 ジカ感染症は、衝撃的な出生異常を引き起す。生まれてくる子供は異常に小さな頭や脳(小頭症)、異常な反射、てんかん、さらには視聴覚,消化にも問題がある。今回その原因として、ジカは、直に、胎盤の中のオートファジーを邪魔する可能性が見出された[1]。オートファジーは毒を取り除いたりダメージを受けた成分を再生するプロセスであり、これがないと成長する胎児に感染する。研究者らは、オートファジー遺伝子を持たない妊娠中のネズミを感染させたところ、遺伝子を持っているネズミと比べて、検出できるウイルスの数もかなり少なくて、胎盤や胎児のダメージも小さいことがわかった。ついでオートファジーを抑制するマラリア治療薬であるヒドロキシクロロキニンの、ジカ感染の妊娠中のネズミや子供への影響を見た。修飾していないネズミがヒドロキシクロロキニンを投与された場合にも、損傷はかなり低下していた。この発見はマラリアに罹患したり自己免疫異常の妊婦さんを治療するための米国FDAで認証されている薬は、ジカが胎盤関門を通過するのを防ぐことを示唆していた。人以外の霊長類、さらには人でも同様の研究が続けられる予定である。ジカ対策も間近か。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 11.

DOI: 10.1084/jem.20170957

17.8.8

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大環状化合物を

 つくる方法を工夫することは、医薬品開発で使われるDNAでコードされたライブラリーの多様性を増大させ、確かな医薬品候補を迅速に検査し同定できることにも貢献できる[1]。そのようなライブラリー構築では、短い独自なDNA配列で標識された低分子の間の反応を促進し、莫大な数の生成物をつくりだし、それらはさらに独自のDNA配列でタグづけされる。ここではDNAはバーコードのように働き、個別の医薬品標的に旨くバインドする化合物が同定される。ただしこれらのライブラリーには環状化合物は含まれていなかった。それは閉環反応に対して必須である遷移金属触媒が電荷を持ったDNAの骨格にバインドしてらせん構造が崩れてしまう可能性があったためである。それに対して今回DNAタグをマグネシウムイオンで保護してタフにすることで、様々なDNAでコードされた複素環や大環状化合物がRu触媒閉環メタセシスで合成された。マグネシウムイオンはマグネットの如く、ぐねっとしたDNAのすべてのバインディングサイトをカバーしているために、RuDNAではなくて基質とのみ反応していると考えられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 10.

DOI: 10.1021/acs.bioconjchem.7b00292

17.8.7

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敗血症は

 体の感染に対する免疫応答が制御できずに悪循環になった時に起こる。炎症シグナルが形成されて、バクテリアが殺されて、別の侵略者が、いかんせん、感染部位に広がり、最悪の場合には臓器不全から死に至る。この敗血症に対する唯一の効果的な処置は抗生物質であるが、それは感染源のみを標的として症状には感知しない。そこで炎症と戦うために、セリア-ジルコニアナノ粒子が作られて、細胞にダメージを与えてそれを殺してしまう活性酸素種(ROS)が捕捉された[1]。セリウムイオンCe3+は天然の触媒を模倣し、スーパーオキシドやヒドロキシルラジカルを除去するが、炎症を処置するためには高いCe3+Ce4+比が粒子の中で重要である。ただし+3の酸化状態にシフトするのはエネルギー的に不利であるために、Zr4+イオンがナノ粒子に加えられて、Ce3+Ce4+比が安定化しセリアのみのナノ粒子に比較して抗酸化力が向上している。そこでセリア-ジルコニアナノ粒子が細胞、炎症と敗血症の動物モデルで試された。その結果ナノ粒子は炎症を標的としてROSを減少させ、敗血症に罹患したネズミをわずかな量の投与で、生存延長させていた。酸化・還元の競り合い、セリアで起こるのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 11.

DOI: 10.1002/anie.201704904

17.8.6

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硫化モリブデンの

 薄いシートの中の硫黄粒子を包む単純な方法が、高性能なリチウム硫黄電池をフルに生かす方法になり得るかもしれない[1]。安価で豊富な元素である硫黄との組合せのリチウム電池は、従来のリチウムイオン電池に比べて重さ当り5倍のエネルギーを貯蔵できる可能性がある。ただしいくつかの材料や化学的な課題のために長持ちするLi-S電池は実現に至っていない。たとえばこれらの電池の電気化学反応は厄介なリチウムポリスルフィドを形成し、それらが電解液にとけ込み、エネルギー豊富なリチウムの利用を低減してしまい、威厳も低下する。加えてリチオ化反応が、カソードの膨張を引き起こし、電極に亀裂も入り、それは使えなくなってしまう。これらの課題を回避するために、中に隙間のある硫黄粒子のポリビニルピロリドン懸濁液と超薄いMoS2薄片を反応させて、薄片をカプセルに包み込んだ。MoS2-Sハイブリッド材料から調製したカソードを取り付けた電池は1000回の充電サイクルの後でも最初の高いチャージ容量が保持されていた。これは強いvan der Walls力がMoS2層に働き、リチウムポリスルフィド形成が抑えられているためであるらしい。さらにMoS2のしわが大きなスペースを提供し、リチオ化の際の硫黄粒子の膨張と適合することもわかった。ぼ〜っちょうとしとると見逃したかもね。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 10.

DOI:10.1021/jacs.7b05371

17.8.5

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酸素分子

 O2は、大津だけではなくて地球上にふんだんにあって、多くの生命にとっても必須のものである。ただし理論的観点から、酸素分子の安定性は奇妙である。その最高被占軌道には、二つの不対電子が含まれていて、ジラジカルになっている。そのため酸素分子として浮遊する代わりに、水素原子の引き抜きやオリゴマー形成するはずである。実際に等電子な硫黄はS8で最も安定である。今回この酸素分子の反応性の鍵が共鳴にあることが報告された[1]1931年のL. Paulingの提案を確かめるために、酸素分子のπ結合が二中心、三電子結合であると考えうること、共鳴は418 KJ/molの安定化エネルギーを生み出すことを決定した。S2における安定化エネルギーは213 kJ/molだった。その結果、O2の三量化は吸熱的で、S2では発熱的である。一方で酸素のσ結合は比較的弱く、もし酸化反応が進んだ時には、結果として発熱的である。酸素について感想は?

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 10.

DOI: 10.1021/jacs.7b04232

17.8.4

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96穴型マイクロプレートに

 ガスマス装置、マイクロソフトエクセルマクロス分析セットを組合せて、およそ75000の反応をわずか数日内で行えないかというアイデアが、お出でた[1]。この新反応発見方法は以前研究らが行っていた17の基質を96の穴に入れて、それぞれに異なる金属と配位子の組合せを加えた反応を行いGC/MSで分析する方法 [2]の改良版である。以前のGC/MSデータ解析では、質量が近すぎて副生成物の解析がルーチンで使う時の障害になっていた。そこで今回の方法では基質を入れるプールを使うことにした。それぞれのプールにはたとえばアルキン、ハロゲン化物、ボロン酸を入れる。これらは類似の官能基だけれども化合物には反応しない置換基を含んでおり、これによってプールごとの基質の質量は異なる。これらを三つのマイプロプレートの96の穴に入れて、それぞれの穴に、異なる金属前駆体や配位子などを入れる。化合物が反応した時には、質量が個別で、これらがGC/MSで検出できてマクロ解析で同定できる。この解析によって、二つあるいは三つの基質が関わる数千の可能な反応の結果を自動的に分析できて新反応の発見につながる。研究者らはこれを利用して、これまで例のなかったNi触媒の三成分カップリング反応も発見している。96穴型、あなたが使ってもいいですよ。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 9.

DOI:10.1126/science.aan1568

[2] C&EN, Sept. 12, 2011, page 10.

17.8.3

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採掘作業や

 石炭火力や他の世界中の水銀汚染は、神経毒の水銀を北極に蓄積させる。ただしこの蓄積の化学的な機構の詳細が解明されていない。主たる仮説は、Hgは人為的であれ天然資源であれ、大気を浮遊し雨や雪になって地上に落ちてHg(2+)として北極に集まる、であった。一方今回の研究では、汚染の主な原因は、沈澱からのHg(2+)ではなくて、気体状の元素水銀が大気から吸収されることを示していた[1]Hg(2+)は反応性が高くて短い寿命であるのに対して、Hg(0)はより安定で大気中に長い間留まり長距離を移動する。研究では北アラスカや別の地点で二年間、大気中、雪、植物中のHgレベルが測定されて、生態系では、Hg(0)がおよそ70%Hg(2+)はわずかであることがわかった。Hg(0)は年中ツンドラに、積んどるわの如く蓄積されて、さらに夏に植物は大気から直接それらを取込んでいた。また北極の土のHgレベルは温帯域のレベルのおよそ五倍であることもわかった。これは温度が高いとHgは植物や土から放出される傾向で、それが大気に拡散していると考えることが出来る。今回の発見は、人が食する植物や魚やほ乳類に残存するHg汚染を削減するための新しい方針を示唆している。汚染はようせん、レベルにしたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 9.

DOI: 10.1038/nature22997

17.8.2

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神経細胞は

 しばしば化学的に交信する。神経伝達物質の一つであるドーパミンは、行動やモーター制御に報いる脳の回路の中で、シグナルを運ぶことが知られている。今回さらにドーパミンは、脳の外で免疫細胞の間を、譲歩すること無く情報を伝達し、抗体生産を促進することが報告された[1]。病原体が身体に侵入したとき、脅威を認識した免疫細胞は活性化されて、リンパ節や脾臓に移動する。一旦そこに行けば、T細胞とB細胞が神経細胞での交信と同様に、免疫学的なシナプスを介してお互いに交信する。この細胞間の会話がさらにそれらを活性化し、B細胞が成熟し抗体を生産し始めて感染を除去する。研究者らは、人の扁桃線、脾臓、リンパ節からの免疫細胞を研究し、サンプル中のT細胞はドーパミンで満たされた微小体を含むことを明らかにした。これらの微小体は、神経細胞でドーパミンや関連する神経伝達物質を運搬するそれらと類似である。さらに細胞培養では、免疫で重要なドーパミン移動タンパク質に曝された人のB細胞は、それらの表面で応答し、これがT細胞とB細胞の間のシナプスの強化とB細胞の成熟を促すフィードバック・ループを始動する。ドーパミンが細胞に待望されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 July 17, p. 7.

DOI:10.1038/nature23013

17.8.1

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