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2017年9月

ガンの手術の際に

 外科医は、とりだした細胞を分析してすべてのガン組織を摘出できたかを判断してもらう病理学者の結果を待たなくてはいけない。これまで研究者らは、手術の間、細胞組織を質量分析で分析することで、プロセスを、労せず、スピードアップできることを示していた。ただしこのタイプの手術質量分析法は、時に組織を傷つけるため、取り去った組織にしか適用できなかった。その中今回は、ガン組織の分子プロファイルを非侵襲的に、水滴をたらすことで得られる生体適合性合成デバイスを思い至った[1]。このデバイスは水を組織の表面に落とすだけで、代謝物や脂質やタンパク質を抽出することができる。その後、プラスチックのチューブに水滴を集めて、それを質量分析にかけることができる。すでに様々なガンから得た253の組織で試して、質量分析の結果が、正常細胞かがん細胞かを識別できることを明らかにしている。加えてこのデバイスを使って生きたネズミを手術している最中に細胞を痛めず、動物に負荷をかけずに、ガン診断を行っている。これまでは診断はしんどいんだん、だった。

[1] Chemical & Engineering News, September 11, p. 9.

DOI: 10.1126/scitranslmed.aan3968

17.9.30

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シリコリン酸エステルは

 Si-O-P連結を持つネットワーク型化合物で、巨大な表面積を有するかなり多孔性の材料を形成する。キセロゲルとして知られるこれらの材料は、センサーのためのイオン導電性フィルム、触媒担持、歯科セメントのような生体適合性材料、核廃棄物を貯蔵する材料への利用が期待されているために、今日も、興味が持たれている。ただしシリコリン酸エステルは湿気に敏感な材料から作られて、それ自体も湿気に敏感で、再現性よくつくることが難しかった。今回アセトキシシランとリン酸トリメチルシリルエステルとの縮合反応を、無水条件で行い、分子状のシリコリン酸エステルができた[1]。ここではアダマンタン様のこれまでにはない分子ができている。このエステルをルイス酸であるB(C6F5)3と取扱うと、ホウ素にリン酸部位が配位し、二つの新しい化合物を与えた。一つはP=O基がケージの内側を向いた三回対称軸のキラルな化合物である。二つ目の化合物では、Si-O-P連結が再配列し、別の類似な新しいケージを形成している。これらのケージ材料、刑事さん、どうでしょうか。刑事:反応の系時変化も掲示してほしいなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 11, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.inorgchem.7b01572

17.9.29

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現在承認されている

 抗凝血剤よりも、安全でより可逆的な活性を示す硫化ヘパリンが、市販のための準備に大量に生産されている。三つのタイプのヘパリンは現在、抗凝血剤として承認されて、凝固障害の治療や、腎臓透析、外科手術のときの凝固を防ぐために利用されている。豚の腸から取り出される非分画ヘパリンや低分子量ヘパリンは混合物でバッチによってまちまちである。フォンダバリヌクスと呼ばれる合成ヘパリンは安全で均一だけど、摂取したときに出血が止まらないこともある。その中研究者らは、化学酵素合成を使って合成ヘパリンをつくった。それは残溜物も少なくて均一だったけれども合成できたのは数ミリグラムだった。今回スルホキシル基を分子に付与し合成をより簡単にして、二つの鍵となる酵素が高速で作用できるように活性化し、より高い収率で補助因子を生産する方法がみつけられた。今回設計された12-mer-1と呼ばれるヘパリンはグラムスケールで合成できて、ネズミや猿での試験にも成功している[1]。ヘパリンにへばりついて粘り強く研究が続けられている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 11, p. 8.

DOI: 10.1126/scitranslmed.aan5954

17.9.28

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金色の

 毒針を持つカエルは、自分自身の肌の中にある大量の毒にやられることはない。ある種のカエルはパコタロトキシンを、大人のカエルで、おとなしくても2 mg保持していて、これで20000匹以上のネズミを殺すこともできる。それでも電位依存性のナトリウムチャネル膜タンパク質は、このまひ効果に免疫がある。今回研究者らは、ある一つのアミノ酸を置換えることでナトリウムチャネルは、バコタロトキシンにほとんど完全に抵抗できることが報告された[1]。昨年別の研究者らは、毒針カエルとネズミのナトリウムチャネルを区別できる五つのアミノ酸を同定した。今回科学者は、ネズミのナトリウムチャネルを、カエルの五つのそれで置換えて、パコラトトキシンへの抵抗性を比較した。その結果、ある部分のアスパラギンをスレオニンで置換えただけで毒に対する抵抗が確認された。別の四つの部分を置換えても毒に対して敏感だった。トキシンについて得心しましたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 11, p. 8.

DOI: 10.1073/pnas.1707873114

17.9.27

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2002年

 研究者らは、大環状化合物(勘定すると14員環ね)の中の二つのメチレン基をホスフィネート基で置換えるとランタニドイオンと形成する錯体の安定性にどう影響するかを見るために、化合物を合成した[1]。得られた化合物はMRIの造影剤としても興味が持たれていた。すべてのデータは二量体構造を指示していた。ただし結晶を成長させるのに時間かかり、その時点ではX線構造解析による確認はできていなかった。研究者らは最近、この配位子を使った新しいプロジェクトを始めた。ここで結晶構造を得ることができた。ただし分子は当初期待していたものの半分の大きさであることがわかった。二量体ではなくて単量体で1:1錯体ではなくて、2:1錯体だったため、先の論文の結論が無効になった。研究者らはジャーナルの編集委員と相談の上、2002年の論文は取り下げて[2]、新たに正しい構造を記した論文掲載[3]が認められた。編集委員長は、この間違いを認めて何年も後になって正しい構造を提出した著者を賞賛している。研究者らにとって今回の例は、修正をする手順の好例であるとしても見て欲しいとも述べている、高齢になっても。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 11, p. 6.

DOI:10.1021/ic010716a

[2] DOI: 10.1021/acs.inorgchem.7b01932

[3] DOI: 10.1021/acs.inorgchem.7b01117

17.9.26

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反応性の高い

 炭素—炭素π結合や、元素同士の間に電荷が偏った極性結合を糧に新しい炭素—炭素結合形成反応が開発されている。それに対して、極性のない炭素—炭素結合を使った反応系は未だに少ない。その中京都大学村上先生らは、極性の小さな二つのσ結合を高い効率で交換するPdイソシアニド錯体が触媒するクロスメタセシスタイプの反応を開発した[1]。方法は、ベンゾシクロブタンの四員環とシラシクロブタンを位置選択的に開環させて、C(アリール)–C(カルボニル)結合とC(sp3)-Si結合を交換し、C(アリール)–SiC(カルボニル)–(sp3)結合を形成させている。「この成果はC-C結合活性化によって導かれるメタラサイクルを利用して、挑戦的な課題である中員環をどのように形成するかを強く示した例であり、一連のσ結合メタセシスを基にした環化付加が、歪みのある環の金属触媒反応で達成しうることを示している」とコメントされている。四員環開環の余韻、快感である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 11, p. 9.

DOI: 10.1021/jacs.7b07667

17.9.25

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有機過酸化物は

 本来不安定で、ぞんざいな取扱いはあかんていである。CH3O-OCH3の結合解離エネルギーは157.3 kJ/molであり、CH3-OCH3335 kJ/molとは対照的である{1}。ただし「O-O結合はなぜ安定ではないのですか」という質問に対する的確な答えはまだない。過酸化物の弱さは、酸素原子上の孤立電子対同士の反発や大きな電気陰性度であるため電子を受取りやすいことが考えられる。共有結合形成は、共有結合をしている間の領域に電荷密度の移動を含むが、これは原子の電気陰性度が大きくなると、よりエネルギーが必要になる。一方で過酸化物の結合の不安定性は熱的にほとんどエネルギーを使わずに結合が切断されることを意味しており、容易に発生するRO•は重合反応の開始剤としても利用できる。一方でその貯蔵は自己分解温度(SADT)以下でないといけない。一旦過酸化物が分解すると連鎖的に反応が進行するため、SADTより10 °C以下の保存が推奨されている。だから簡単には過酸化物は、貸さんのである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 11, p. 5.

17.9.24

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環縮小反応を

 利用すると六員環から五員環を導くことができて、これによって複雑な分子構造をつくることも可能になる。今回、立体中心を側鎖に含む新しい五員環合成が報告された[1]。反応は光が引き起す炭素ホウ素化反応で、光でシスシクロヘキセンが、より反応性の高いトランスシクロヘキセンに変換される。これがさらに有機ホウ素化合物と、独自の経路を通って反応し、置換基の組込まれた五員環に至る。続く反応で、側鎖のホウ素部位が、早速アルコール、アミンやアルケンに変換できる。この反応を使えば、自然界にもたくさんある六員環やDiels-Alder反応で合成できる前駆体から五員環炭素環状化合物や複素環を導くことができる。さらに合成的に難しい連続する四級炭素中心を持つ化合物合成にも適用されている。なおこの反応は1970年代には、トランスシクロヘキサンと有機ホウ素化合物の反応は六員環を与えると、間違って報告された結果を、修正したのが始まりである。五員環合成で、ご印鑑も押してもらえそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 4, p. 12.

DOI: 10.1021/jacs.7b07128

17.9.23

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これまでのところ

 単分子マグネット(SMM)の記憶効果は、14Kまでの極低温でのみ、磁場の影響を受けて作用する。それに対して新しいジスプロシウム(Dy)分子は60 Kまで磁場切替を示すことがわかった。さらに液体窒素温度以上で稼働する分子も設計することができて、それが実現できれば記憶素子として実用化も見据えることができるらしい。マンチェスター大学の二つのグループが別々に発表した成果[1]のうち一つは、Dy(III)カチオンを二つのt-ブチル基を三つ有するシプロペンタジエニルアニオンで挟み、ボラート塩として結晶化させたものである。高温での磁気特性を保持するためには、ランタニド金属と配位子の対称性を制御できる分子の注意深い設計が重要である。Dyは元素の中で最も磁気モーメントが大きく、配位子のエカトリアル位ではなくてアキシャル位を好む。シクロペンタジエニル配位子がこれを達成し、Dyへのバインディングの強さ、Dyイオンの磁気モーメントが、t-ブチル基の水素のような部位と錯体内でカップリングできる特徴を持つ。SMMによるデータ貯蔵は25000ギガバイト(GB)を可能にする。これは最新のiPhone7でも使われているマグネチックナノ粒子のデータ貯蔵の256GBとは桁違いである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 4, p. 8.

DOI: 10.1002/anie.201705426DOI: 10.1038/nature23447

17.9.22

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リチウム電池は

 充電されると電解液のリチウムイオンが、カソードからマイクロメートルの薄い多孔性ポリマーセパレーターを通り抜けて、能動的に、アノードに入る。一般にアノードはグラファイトである。これは小さな針状のリチウムが、悲劇的なショートを引き起こすリスクを削減するためである。もしグラファイトの代わりにアノードが純粋なリチウム金属の場合には、電荷貯蔵容量が10倍ほど向上する。ただしリチウムアノードは針状になる問題を増幅させる。今回研究者らは、電解液溶液の中に安価なナノロッド粒子を入れると電気化学的にリチウムが析出する際に、針状にならずに、スムーズにリチウムや他の金属上にフィルムを形成することを明らかにした[1]。これはナノダイヤモンド表面が、エネルギー的に好ましいLiイオンの吸着部位、表面全体に均一にコートされるようなリチウムイオンの拡散のための核形成部位として作用するためであると説明されている。ナノダイヤモンド、偉大ななのだ、どんだもんど。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 September 4, p. 6.

DOI: 10.1038/s41467-017-00519-2

17.9.21

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複数の水酸基を

 有する化合物、たとえば抗寄生虫薬イベルメクチンを修飾して有用な新しい化合物をつくりたい。これを達成する一つの方法は、個別の水酸基を選択的に酸化してケトンにすることであり、生じるカルボニル基から含窒素置換基への変換も喚起できて歓喜する。その中今回、たくさんの水酸基を有するポリオールとして知られる化合物のある特定の水酸基から脱水反応でケトンを導く反応が報告された[1]。通常は反応させたくない水酸基を保護し、後にそれを除去する。ただしこれは手間もかかり多段階反応になってしまう。ここでは一級アルコール部位ではなくて二級アルコール部位の選択的な反応が進行している。触媒は、強い電子供与性リン配位子を持ち、これがRu中心を電子豊富にして選択性を向上させている。これを使うと1ダース以上ある水酸基の一つだけを酸化し、得られたカルボニル基をもとに、アミドや一級アミンが導かれている。その水酸基「自分だけケトンに」と、キョトンとしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 28, p. 11.

DOI: 10.1038/nchem.2835

17.9.20

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芳香族化合物で

 奉公して、シクロヘキサジエンやシクロヘキセンを合成することはほとんどない。その高い安定性のために過酷な条件が必要になる。その中今回研究者らは、タングステンが媒介する反応系を開発し、脱芳香族化反応を可能にした[1]W(NO)[P(CH3)] (η2 –ベンゼン)トリスピラゾリルボレートのベンゼン環にCF3基を組込んだ錯体が、金属—アレーン相互作用を向上させ、連続的なプロトン化と芳香族配位子上への二つの求核剤の攻撃を駆動することがわかった。これは新しいタイプのタンデム付加反応で、高度に官能基化されたトリフルオロメチル化シクロヘキセンを、位置ならびに立体選択的に導くことができる。研究者らはこれまで、この型の金属錯体を使い、芳香環で予期せぬ反応性を明らかにしてきた。脱芳香族化は、天然物やほかの生理活性化合物のコア構造を構築する鍵段階でもあるため研究者らは、医薬品リード化合物の最適化の段階での官能基化でも使える反応を提供したいとしている。Harman先生らがはるまっている系である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 28, p. 10.

DOI: 10.1021/jacs.7b05118

17.9.19

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45年ぶりに

 お会いした方も多い。なにせ中学校の学年同窓会へも初めて参加した。それでも「村井君や」と声をかけてもらえた。がこちらは記憶にないこともあった。適当に話を合わせていると人違いだった様子。460名余りが卒業、175名ほどに案内を出して70名余りが参加。料理も余りがあった。すでに退職された人もいるし、職業の幅の広さが面白い。小料理屋さんを営む、宣伝は一切しない。200名ほどの信頼できる客人がお見えになれば、その方々が別の客人を連れて来ていただける。小商いの極意を教えてもらった。担任の先生はすでに亡くなられたとのこと、音楽を教えていただいていた。先生の部屋は、ある建物の3階で、自分たちのクラスルームは別棟の3階。一旦1階まで降りて移動が必要だった。廊下側の窓の真正面が、先生の部屋だった。委員の自分は6時間目が終わって廊下に出る。すると時に先生の大きな声が聞こえる。「お〜い村井、今日はホームルームなしや、皆に伝えておいてくれ」という伝言。両隣のクラスはその最中の頃、すでに掃除モードに入っていた。も〜どかしさを両隣のクラスの先生方は感じておられた様子だった。

17.9.18

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選択的触媒還元

 (SCR)システムは、格子に銅を組込んだ菱沸石ゼオライトからなり、ディーゼルエンジン排気でスモッグを引き起す酸化窒素(NOx)をアンモニアとの反応を経て窒素と水に還元する系であるが、これまで議論が続けられていた、その独自の機構が明らかにされた[1]。アンモニア存在下銅イオンは、Cu(NH3)2錯体を形成する。アンモニア部位は化学種に可動性を持たせて、多孔性のゼオライト骨格の中の空洞部分を相互に連結させる。銅化学種が動き回るにつれてそれらは、簡単にしかも可逆に二量体を形成する。これが酸素原子のペアで橋架けになるという仕掛けである。二量体は酸素が媒介するCu(I)からCu(II)レドックス段階を促進し。それがNOxを窒素と水に還元する中核を成す。ゼオライト中の銅イオンを微調整することによって、現状のSCR系よりもより低い温度でNOxの排出量を削減しうる。今回の研究で明らかになった銅イオンの可動性と対になった銅化学種の動的な形成は、メタンのメタノールへの酸化で使われる銅で処理したゼオライトの高い選択性にもライトを充てることが出来そうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 28, p. 8.

DOI: 10.1126/science.aan5630

17.9.17

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炭素とケイ素は

 様々な化学特性を共有しているものの、低配位のそれらはかなり違った挙動を示す。たとえばC=C結合は広く見られる一方で、Si=CSi=Siはあまりなくて、後者は嵩高い置換基がないと単離できない。これらの結合様式の違いは、電気陰性度や結合性軌道のサイズの違いを含むパラメーターによるものであるというApelog先生の談をブログに書いている。先生はACSの学会で、二重結合を形成する炭素、ケイ素アニオンやラジカルは違った構造と特性を有し、シリコンラジカルは熱力学的により安定であることを言及した。この安定性を理解するため関口先生らと共同で、EPRスペクトルと計算化学から、Si=Si化合物で平行に並んだ不対電子で最初の三重項ラジカルを観測している。今回シクロブタジエンの四つの炭素がシリル基で置き換わった化合物からの三重項ジラジカルの観測にも成功した。未だに曖昧な化学種の研究は、有機合成や電子材料設計の端緒で、新しいものが誕生しうる。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 28, p. 7.

DOI:10.1002/anie.201705228

17.9.16

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フロー化学は

 新しい化合物を迅速かつ効率的に組立方式で合成しうる。ただし連結が増えると中間体の溶解度の問題、不必要な副生成物が反応器のチューブを詰まらせて、系がつまらなくなるという課題もあった。この限界を克服して今回、必須の抗生物質であるシプロフロキサシン塩化物が、六段階のフローとろ過・結晶化を経て収率60%で合成された[1]。どの段階でも精製のためにラインを外すことはなく、6段階はこれまでの連続フロー系で最長であると研究者らは述べている。バッチ式の既存の合成法では100時間以上を要するのに対してフロー自体は9分で完了する。複数の中間体の溶解度の低さという課題を克服するために、様々な溶媒系を試験し、また系を180 °Cまで温度上昇させて急激に室温まで冷やしている。しかも副生成物であるアミンは、後の段階で利用する酸塩化物と反応するために、過剰の酸塩化物を用いて、本来の反応が邪魔されることを防いでいる。このフローの披露がACS年会で行われた。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 28, p. 6.

DOI: 10.1002/anie.201703812

17.9.15

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身に装着できる

 あるいは埋め込み可能な医療デバイス改良のために、身体に合わせて収縮できるバッテリーやエネルギー貯蔵の大容量コンデンサの開発が行われている。ただしこれまでの電力源は、強酸、強塩基あるいは毒性のある可燃の有機溶液を含む電解液を利用していて、これが漏れた時には身体が損傷しうる。その中今回、生体フレンドリーな水溶液電解液を含む曲げられるナトリウムイオンバッテリーが開発された[1]。バッテリーは硫酸ナトリウム溶液、生理食塩水あるいは細胞培養媒体でナトリウムがもとになった電解液、いずれかに接しているNa0.44MnO2カソードと、炭素でコートしたNaTi2(PO4)3アノードを有している。ベルトの形をしたデザインで、カソードとアノードの間に電解液分離板がある。さらにファイバーのかたちをしたデザインのカーボンナノチューブ電極には、カソードとアノードが埋め込まれて、電解液で囲まれている。バッテリーは以前報告された柔軟なリチウムイオンバッテリーや大容量コンデンサに匹敵する堆積当りの電荷容量と出力を示しているものの、市販できる電圧までは、でんやつなため、改良が企画されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 12.

10.1016/j. chempr.2017.05.004

17.9.14

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ゼブラフィッシュは

 発生の生物研究でモデル有機体として広く利用されているけれども、凍結して解凍するとその胚がほとんど生き残らない。そのため後に実験を行ったり他の研究室と共有することが難しく、手ぶらになる。その中今回、生体適合性のある不凍液であるプロピレングリコールを金ナノロッドと組合せると解凍した後の胚の生存率が、以前より改善されることがわかった[1]。不凍液とナノロッドの組合せをゼブラフィッシュの胚に挿入し、それらを液体窒素で凍らせた。数分後ミリ秒レーザーパルスで胚を解凍した。ナノロッドが光エネルギーを吸収し、胚を素早くむらなく温めると、針のような氷の結晶による細胞膜の損傷、繊細なタンパク質への損傷が軽減された。一時間後胚の31%が生存し、その後の24時間正常に成長した。対照的に水浴を使って温めた場合には、生存しなかった。この方法を改善すれば、凍結が難しい大きな胚を持つ種を保護するためのツールとして、利用できると考えられている。いずれ凍結を受け付けてもらえるかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 12.

DOI: 10.1021/acsnano.7b02216

17.9.13

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レーザー光ビーム

 の波長を二倍に変換できる非線形光学(NLO)材料として知られている無機結晶は、ファイバー光学、光リソグラフィー、レーザーマイクロマシニングなどの応用のためには不可欠で、課題解決の端緒になり得る。ただし200 nmより短波長の深紫外光で可干渉な光を活性させることができるNLO材料はわずかしかない。KBe2BO3F2(KBBF)は例外であったが、ベリリウムの毒性とKBBFNLO特性の弱さがその応用を制限していた。今回研究者らはベリリウムを含まないABF(NH4B4O6F)を使って深紫外光のNLO材料を作成した。ABFの非線形係数はKBBFのそれのおよそ2.5倍である。B2O3NH4との高温反応が高純度の結晶を導き、典型的なKBBFよりも厚く、これによってレーザー光学での応用でもプラスになる。改良された結晶成長の要因の一つは、KBBFではカリウムイオンだったのを、ABFではアンモニウムイオンに置換えたことで生じる格子層の間の水素結合であると推測されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 12.

DOI:10.1021/jacs.7b05943

17.9.12

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DFH-4T

 (α,ω-ジパーフルオロヘキシルクオーターチオフェン)のミクロあるいはナノ構造のフィルムは表面に分子を沈澱させることによって簡単につくることができる[1]。さらにひるむことなくフィルムを作るための物理的気相成長法で使われる条件が微調整された。たとえばDFH-4T分子を基質に、より近づけて沈澱速度も向上させた。この条件では、DFH-4Tはワイヤのような中心に連結した垂直に配列するナノプレートからなるナノ構造を形成した。フッ化炭素鎖は多くの目的で利用される。それがない場合に得られるフィルムはスムースだけど、表面増強ラマンスペクトル(SERS)シグナルを示さない。ナノ構造に加えて、フッ化炭素は表面を極端に疎水性にし、ラマンスペクトルでは分析対象の分子の濃度上昇を助ける。また一旦フィルム上に落とした検体は広がることもなく留まっていた。染料のメチレンブルーとSERS基質としてフィルムを使うことで3000倍以上の感度向上を達成している。さらにフィルムを金ナノ粒子の層でコーティングし、メチレンブルーを堆積させると感度向上は1010剰まで向上した。検体と半導体が相互作用した時には電荷移動状態が生じることも分かった。ただしそれにはかなり素晴しい結晶形態が必要である。ラマンもウルトラになるかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 11.

DOI: 10.1038/nmat4957

17.9.11

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米国ミシガン州フリント川

 近くの住民の家の水道から出る水中の鉛量が急上昇していることがわかった。市の水道管を分析したところ、管の崩壊によって出た鉛が確かめられるまだら模様が明らかになった。研究者らはフリントの様々な場所から水道管の10 cmの長さの断片を集めてきて、管の中のおよそ300 μmの厚さの鉱物の層をサンプリングした。ついで誘導結合プラズマ質量スペクトルで様々な金属の濃度を測定し、別の市の水道管の中の金属濃度と比較した。その結果、フリントのそれは鉛とリン酸の量が減少しており、管の崩壊の後にリン酸鉛がかなり選択的に放出されていることを示していた。市は2014年に水資源を替えた後、この放出を抑制するオルトリン酸腐食抑制剤で水を処理しなかった。減った量を比較することで、フリントの管のサンプルから消失した鉛の量も計算することができて1.5年余りの間に1 mあたりおよそ2.7 gの鉛が管から出て、それぞれの家庭には神経毒の金属がおよそ18 g放出されていたことになる。この鉛、あんまりや。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 9.

DOI:10.1021/acs.estlett.7b00226

17.9.9

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ポスター発表が終わった

 バスも増便されているとのこと、バス停に向かう。帰路に着く人も多い中、バス車内。「お座りになりますか」と優先座席を勧められた。ためらいながら着席、しばらくして我に返った。ポケットには「33」の札がある。会場についた時に荷物をクロークに預けた。それを引き取るのを忘れていた。バスはすでに高速に入って天神に向かっている。そこから引き返してもかなり遅い時間になる。討論会事務局にメールにてお願いした。一方でクロークもクローズできずに苦労していた様子。最後の荷物の引き取り手がいない。やむなく事務局で返却することとして、そこは閉じたらしい。いったいこの忘れ物は誰の荷物か?鞄を開けるわけにもいかず、ふと見るとバッグにはサイドポケット。ぽけ〜と再度みるとそこには新聞があった。それをとりだす。「岐阜新聞」これで忘れた本人がほぼ特定された。翌日朝事務局近くへ向かった。呼び止められる声、鞄を渡していただいた。お手数をかけてしまった。

17.9.9

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ふくよかな方も

 住まれる福岡に飛ぶ。中部国際空港の保安検査場、賑わう中マジョリティはラテン系の人たち。どうらってんのでしょうか、国際線ではないはず。その方々は沖縄便のゲートで待っておられた。ボンバルディアが頑張るディアの路線。航空機の入口もコンパクト、ボーディングブリッジの先端と入口との間には小さな橋がかかる。セントレアからの福岡便、前回は三重県の津辺りも見えるけんで、和歌山から瀬戸内海上空、淡路島、小豆島と続いた。確かに四日市の工業地帯が眼下に広がる。その後のシーンを機体の中で期待するも、上昇するにつれて曇の中の飛行になった。ときに少々揺れる、それに合わせる様な「きいろい声」。離陸して20分ほど経った頃、機長からの貴重なアナウンス「岡山上空を飛行中」とのこと。島々を見ることもできず、噂の学園を見かけることもできなかった。天候の影響で混雑する福岡空港、着陸時刻の遅れが丁寧にアナウンスされる中、雨空の福岡空港へソフトランディングした。貯金だらけのソフトバンクの本拠地である。

17.9.8

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命を落とす子どもの

 40%強は1歳未満である。しかもそのほとんどは開発途上国で生まれた子どもたちで、新生児死亡は大きな課題である。もし生まれて最初の数ヶ月のリスクにフォーカスできてフォースが使えれば、死亡問題の多くを解決することも可能である。今回この新生児死亡の主な原因である血液感染によって引き起される炎症状態である敗血症に立ち向かう方法が報告された。身体によいバクテリアと前生物的な糖を組み合わせると敗血症を防ぐことができる。インドの田舎で4500人以上の幼児で行った結果である[1]。現状では感染を防ぐ方法がほとんどなく、胎内にいるときや母乳で育つ段階での対策が試みられている。今回の試験では、乳酸菌とフルクトオリゴサッカリドの組合せ、あるいはプラシーボが与えられた。2ヶ月後の敗血症の割合は前者が明らかに低かった。おそらく糖は胃腸の中で乳酸菌が成長するのを助け、それが身体に恩恵をもたらすバクテリアの食べ物となり、バクテリアが幼児の胃腸内を棲家として、病原株を追い出すと考えられている。ここがテリトリ〜ヤとバクテリアが棲み始めたのかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 8.

DOI: 10.1038/nature23480

17.9.7

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より安全で廃棄物の少ない

 1,2-ジアミン合成法が報告された[1]。反応では、どこにでもあるけんアルケンとアジ化ナトリウムを、炭素アノードと白金カソードを持つ単純な電気化学セル、それにマンガン触媒とを組合せている。二当量のアジドをC=C結合に加えることにより1,2-ジアジドが発生し、これが容易に還元されて1,2-ジアミンに変換される。電気化学的なセットアップは合成の研究室では通常ではないものの、有機化学の研究グループでは近年注目度が向上している。電気化学合成の利点の一つは、反応条件を微調整できる点である。たとえばそれぞれの反応物は、測定できる酸化電位を有している。これによって別の官能基には影響しない範囲に電圧をセットし期待の反応を実行できる。今回の反応も酸化や求核置換反応に敏感なアルケンや、嵩高い四置換アルケルに適用できる。鍵となる中間体は容易に酸化を受けるマンガンアジド中間体であるらしい。これが一旦酸化されるとアジドトランスファーとして作用し1,2-ジアジドが、水素ガスや酢酸ナトリウムのような環境調和な副生成物とともに生成する。ジアジド合成、切れ味どうでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 14/21, p. 8.

DOI: 10.1126/science.aan6206

17.9.6

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マーチングバンドの

 メンバーは数時間練習をすれば、ある隊列から別の隊列へスムーズにステップを踏むことができる。ある種のコロイド状の粒子も同様にしゃれたフットワークを、しゃれではなくて、示すことができる。ただしこの場合、練習は要らない。研究者らは10μmの長さの高分子立方体を作り、それぞれの立方体のある面を100 nm厚さのコバルトのフィルムで選択的にコーティングした[1]。これによって直に磁気を帯びることになる。ついでこのマイクロ立方体の懸濁水溶液を形成させて磁場を制御すると、立方体は直ちに可逆に様々な形とパターンで会合した。ある場合に立方体は、直鎖と環になったような配置の間でスイッチした。別の場合に立方体は、折り畳まれたり、それが開いたり、回転の複雑な動きをした。さらに研究者らは立方体のパターンを使って、生細胞の捕捉、輸送、放出も行った。この戦略によっていつか、マイクロロボット、人工筋肉や別の生体模倣のデバイス開発もできることが提唱されている。これっていいでしょう。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 7, p. 9.

DOI: 10.1126/sciadv.1701108

17.9.5

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極東サソリ科の

 サソリに刺された時は、総理でなくても非常な痛みを感じる。これはその毒の中にある100以上のペプチドによるものである。特に29番目のアミノ酸ペプチドであるBmP01は、ほ乳類にある最も有名な痛みの受容体を標的とする。このTRPV1と呼ばれている受容体であるイオンチャネルは、唐辛子の辛さのもとであるカプサイシンの受容体としてのほうが有名である。ただし研究者らはこの同じ受容体でも違った結果になる点、明らかにできていなかった。TRPV1にうまくヒットするために必要なBmP01の濃度は、マイクロモルの範囲で、サソリの毒の中にあるペプチドの量よりも遥かに高い。それでもその低濃度で犠牲者にかなりの痛みを与えるのはなぜか。今回研究者らは、BmP01に加えて、サソリの酸性な毒の中のプロトンがTRPV1を活性化していることを明らかにした。BmP01TRPV1の二つのプロトンがバインドできる一方に結合しプロトンと一緒に、僕も知ってる、ボクシングのワンツーパンチのような方法で、組織を損傷させるチャネルを強く活性化している。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 7, p. 8.

DOI: 10.1126/sciadv.1700810

17.9.4

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Pdナノ結晶形成の

 研究で、小角X線散乱を使っていた博士研究員と学生は、指導教員に「なにか奇妙なことが起こっている。ナノ結晶が突然にしかも予想外に、典型的な無機結晶に同種の材料にもかかわらず、原子のように振舞い、三次元超格子を形成している」ことを報告した。この聴講したことのない超格子は、磁気学、エレクトロニクスや触媒分野での応用が期待される。それらは通常低温でゆっくりと溶媒を蒸発させることにより調製されるが、今回のそれは、230 °Cでわずか数秒だった[1]。さらに合成条件とカルボン酸界面活性剤の構造を変えると超格子の構造をチューニングすることもできる。この方法で鉛テルリドや鉄ナノ結晶の超格子も調製できる。研究者らは、ナノ結晶はそれぞれの臨界直径(Pdではおよそ5 nmFeではおよそ11 nm)になるまでは個別に成長するが、そのサイズになるとナノ結晶同士の間で引力が働き一緒になってしまう。ただし界面活性剤がこの凝集を防ぐために超格子形成に至っている、と提唱している。超格子「ちょこっとしか」から大量にへ、更新されるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 7, p. 8.

DOI: 10.1038/nature23308

17.9.3

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時間が経つにつれて

 リチウムイオンバッテリーは頻繁に再充電しなければならなくなる。また稀にアノードのリチウムが鋭く尖ったようなものになって、これがカソードとアノードを分ける膜に穴をあけてしまって発火が発覚することもある。今回リチウムイオンを直接イメージすることによってこれらの問題がなぜ起こるかを理解する助けになることが報告された[1]。研究者らは蛍光発光性分子でリチウムイオンに選択的に配位できる有機化合物を再設計した。これは紫外光ではなくて青色の光で励起できる。ついでマイクロ流体チャネルの中に、蛍光発光分子である2-(2-ヒドロキシフェニル)ナフトオキサゾールと電解質を入れたテスト用のプラットフォームを作成した。ついで塩化リチウム溶液をチャネルに入れて、イオン濃度の増加と蛍光強度の増大を明らかにした。この系によって電解液の中でのリチウムが拡散する様子が明らかにされた。研究者らはさらに、片側が透明な蛍光イメージング法を利用できる試験用のバッテリーの設計も計画している。バッテリーがばっちりー見えている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 7, p. 8.

DOI: 10.1021/acssensors.7b00087

17.9.2

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分子構造の配座は

 通常の多角形に加えて、予期しない形が金属と配位子との新しい組合せを探索していると登場する。最新の例は、面取りされた分子による星形五角形のPd配位錯体である[1]。大抵の自己集合した配位錯体は、ある単一の配位子が金属に配位して組立てられる。二つあるいはそれ以上の配位子を使って合成される例は少ない。加えて配位子はしばしばキレート配位子することから一つの金属に二つ以上の原子も配位する。それに対して今回の新しい分子星は、姿勢はともかく、つかみどころのない二等辺四辺形で輪になった五角形である。ただし初めてのヘテロレプティックなキレートしていない多成分スプラモレキュラー配位錯体で,五つのPdが組込まれた錯体でもある。研究者らは、Pd(II)塩と当モル量の1,4-フェニレンビス(メチレン)ジニコチネートと4,4'-ビピリジン配位子をワンポット室温で反応させて合成している。この化学は、複雑な配位錯体構造がいかに生成するかに関する知見を導き得ること、また多区画な生物系を模倣するゲストバインディングへの応用も可能である。星形が欲しかったのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 August 7, p. 8.

DOI: 10.1002/chem.201702264

17.9.1

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