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2017年11月

医薬品の代謝を

 追跡するために、化合物に含まれる水素原子を、重水素や三重水素で置換えることがしばしば行われる。ただしこの置換えは、お洋服のお着替えとは違って、かなり煩雑である。通常これらの重原子を組込みたい部位にハロゲンを入れて重水素で置換するか、不飽和結合として重水素を付加させるかであるが、この方法には数ヶ月を必要とする。その中今回、この重要な課題が光酸化還元反応を利用して達成できることが報告された[1]。すなわちアミノ基に隣接するC-H結合が、D2OT2ODTに換わる。アミンは、生理活性化合物ではよくあるモチーフであり、この反応で多くの例が示された。また三重水素化のために用いるT2Oを三重水素と酸化白金から調製する方法も開発された。この方法を用いれば、複雑な骨格を有する天然物を再合成する必要はなくて、一旦合成すれば、その重水素化、三重水素化も可能である。さらにここでも光酸化還元反応が、温和な条件の制御できる実用的反応であることも示されている。重水素化の後は、ジュースで一息を。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 13, p. 5.

DOI: 10.1126/science.aap9674

17.11.30

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超小型の

 電子デバイスには、超小型の部品が必要である。そのために科学者は過去数十年に渡り、単一分子だけで制御できる電子回路の研究を行っている。それらの分子のほとんどが、共役系芳香族骨格であり、それによって伝統的に、伝導性が向上する。それに対して今回、芳香族が必要条件ではないことが報告された[1]。伝統的な有機化学では、[4π+2]電子が高い安定性を示し、[4π]系は不安定である(Hückel則)とされている。また20171025日にご逝去されたBreslow先生は、この[4π]系に「反芳香族性」という概念を提唱された。今回の研究ではこのいわゆる不安定な反芳香族分子が、スイッチとして作用するのではないかと考えられた。まず絶縁性を示すチオフェニリデン誘導体(TBTP)を金電極で固定した。ついで走査型トンネル顕微鏡を使って電流を測定した。その結果、素早い電子酸化が、可逆で2電子を取り去り、中性分子が高い伝導性を示す反芳香族ジカチオンに変化、それがスイッチとして安定で、再現性よく、作用していた。奉公すべき分子が増えた。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 6, p. 11.

DOI: 10.1126/sciadv.aao2615

17.11.29

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窒素を含む

 トリアゼニルラジカルは、潜在的な反応性と特異的な物理的特性のために、魅力的な化合物である。フリーなトリアゼニルラジカルは、EPRあるいは、遷移金属錯体における配位子として、以前に検出されていたものの、安定化と単離は挑戦的な課題だった。そのなか今回、多くの典型元素ラジカルを安定化してきたN-複素環カルベンを連結させて、トリアゼニルラジカルを調製、特徴が明らかにされて、口調もなめらかである[1]。研究者らはまずクロロイミダゾリウムクロリドをアジドと反応させてトリアゼニルカチオンを作った。ついでそれを、カリウム金属を用いてトルエン中で還元して対応するトリアゼニルラジカルを発生させた。単結晶構造解析やEPRUV-Visスペクトル測定も行われた。DFT計算の結果は、不対電子が全体のπ系に広く広がっていることを示していた。またこれがリチウムイオン電池のカソード材料として利用できることも明らかにされた。トリアゼニルラジカルが取り合いだぜの日も来るかも

[1] Chemical & Engineering News 2017 October 6, p. 11.

DOI: 10.1021/jacs.7b08753

17.11.28

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蛍光発光材料を

 使った見えないインクで、データの暗号化と暗号解読で自分にだけ明るく見えるようになる。研究者らは、多くの種類の有機染料、ナノクリスタルや別の材料を世に送り出して、秘密情報の安全性を担保し、偽造を許さない戦略を立てている。ただし材料のいくつかは、つくるのに費用がかかるか、つくるのが難しい。さらに多くのインクは、紫外光や可視光条件下でわずかにみえてしまって、インク情報がリンクされてしまう。その中今回研究者らは、安価な鉛をもとにした金属有機構造体(MOF)の透明溶液が調製されて、紙の上では完全に見えないパターンを、インクジェットプリンターでつくることに成功した。紙をメチルアンモニウムブロミド暗号解読用溶液にさらすと、出発化合物が、MOFが組込まれたメチルアンモニウム鉛三臭化物ナノクリスタルになり、紫外光照射で明るく光る。ここで紙を極性溶媒で処理するとMOF構造が壊れて、蛍光は消失する。研究者らは現在、繰返し利用できる鉛をもとにした材料の開発を行っている。見えない・見える戦略、メールでもお知らせ下さい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 6, p. 10.

DOI: 10.1038/s41467-017-01248-2

17.11.27

 

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トランプ大統領が

 中国を訪ねた結果、いくつかの化学関連の取引が、その多くは暫定的だけれども、中国と米国の企業の間で行われた[1]。最も期待感のある取引が最も漠然としていたが、中国がウエストヴァージニアのシェールガス開発と化成品製造プロジェクトに対して840億ドル投資する。これとは別に、あたらにできた企業であるAmerican Ethaneは、湾岸のエタンに20年をかけて260億ドル供給することを同意した。それによってNanshan Groupが中国に建設を予定している石油化学製品の施設を増大させる。より具対的な取引として、Air Products & Chemicals35億ドルを、中国の石炭のガス化ベンチャーに投資した。またThermo Fisher Scientific は三つの中国の事業体と、3500万ドルに相当する医療研究のための科学的な装置を供給する覚書を交わした。さらにDow Chemicalは、中国で最も大きな自転車シェアリング会社の一つであるMobikeと共同で、より軽くて環境調和な自転車の開発をすることで同意した。たくさんの投資を通したトランプさんの波及効果、今後どうなるどでしょか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 20, p. 12.

17.11.26

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モバイルやメガネからの

 反射を防ぐために、表面は反射しないフィルムでコーティングされているものの、今あるものは、ある特定の波長の光しか対応できない。今回研究者らは、ナノサイズでガラスに模様付けをしてガラスのモルフォロジーを直接変化させることにより、賢いことに、可視光から赤外光まで対応できるようにした[1]。パターン化したポリスチレン-b-ポリ(メチルメタクリレート)ブロックポリマーがつくられ、これがプラズマエッチングによって、材料にパターンを転写する。この過程では。気体がテンプレート表面を流れ、溝を削り取り、ナノサイズの円錐状の森が出来上がる。平均の幅が10 nm以下のナノコーンは、可視光全体や赤外光(450 nm–2500 nm)の反射を軽減できる。この方法を使って直径10 cmのナノサイズで加工されたガラス材料が調製された。またこの材料を、光を電気に変換する太陽電池にも応用したところ、通常のものの2倍以上のパフォーマンスを示した。ナノコーン作成に金(かな)のこは使わない、多分。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 6, p. 9.

DOI:10.1063/1.5000965

17.11.25

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農産物を水洗いすると

 表面の細菌や農薬を取り除くことができる。ただしある種の殺虫剤は、洗った後も、低濃度だけれども長い間そこに残っている。新しい研究は、重曹(炭酸ナトリウム)が、十三でなくても、リンゴの表面から二種類の農薬を除去できることを示していた[1]。米国農務省の調査によれば、2015年に検査した農産物の85%に殺虫剤が残溜しているとのことである。市販の処理機で漂白殺菌剤を使い、収穫した後、果物や野菜を二分間洗浄すると、土や細菌を除去することができる。ただし農薬残溜物についてはそうではない。そこで殺菌剤とアルカリ性を示す重曹溶液の効率を比較した。大抵の農薬は、アルカリpHでは不安定である。実際に、よく使われている農薬であるチアベンダゾールとホスメットをガーラアップルに使ってその後洗浄した。表面増強ラマン散乱(SERS)測定によって、リンゴの表面と内部の農薬の分布が明らかされた。15分間、重曹水に浸し、フレッシュな水で洗うと表面の農薬残溜物全てが除かれることがわかった。さらに農薬残溜物の一部は皮を通って内部に入り込むこともわかった。内部に入る、こちらはナイーブな課題かも。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 6, p. 9.

DOI:10.1021/acs.jafc.7b03118

17.11.24

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海洋二枚貝である

 イガイは、波が打ちつけら続けられる環境でも、岩にへばりついている。これをヒントに多くの科学者は、外科手術などに使える水に強い接着剤の設計を続けている。今回軟体動物が岩に移動するのに使う超薄いロープのような構造のイガイの貝殻の繊維に注目し、強くてタフで柔軟な乾燥した高分子が開発された[1]。イガイのその部分は、大概、コラーゲンの堅くて伸縮性のあるシリンダーであり、タンパク質が豊富な上皮で囲まれて、形が十分にもとに戻る弾力性もある。実際には鉄カテコール結合が含まれて、共有結合の様に強くて、複数のカテコールが配位できる。まずPEGのジグリシジルエーテルのエポキシ基と1,4-ジアミノブタンとの間の共有結合性交差共役のネットワークをつくり、そこに保護したカテコール、2-[[3,4-ビス[(トリエチルシリル)オキシ]フェニル]メチル]オキシランを導入し、残ったアミノ基と交差共役がつくられる。ついでカテコールの脱保護、鉄への配位で、可逆な鉄カテコール結合が形成される。得られた材料の弾性係数は、鉄のないものの770倍、引張強度は58倍、強靱性は92倍、完全にダメージをあたえるためには76倍の力が必要だった。カテコールを再び、カーテンコールで。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 6, p. 8.

DOI: 10.1126/science.aao0350

17.11.23

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テトラペタロンは

 2003年、日本の研究者によって初めて単離されて構造が明らかにされた天然物である。また化合物は、ある種の人の酵素と構造や作用が類似で、植物のリポオキシゲナーゼを抑制することが明らかにされてきた。そのため人のぜんそくを治療できる可能性が示唆されている。それはともかく合成が困難な標的として、多くの研究グループがその合成に挑戦してきたが達成されていなかった。化合物は、多くの立体中心とあまり例のないβで連結したロジノース糖鎖を有する四環性システムの中に、ユニークなテトラミン酸メチルに連結したシクロヘキサジエノン骨格を有する。今回研究者らは、反応性が高いと思われる炭素をマスクしたエステルを含むN-アリールテトラミン酸から合成を始めた[1]。これによって初期段階では提供が困難なC-N結合を組込むことができた。18名が担当した合成を経てテトラペタロンAが導かれ、これの酸化でテトラペタロンCが導かれた。それぞれ18ならびに19段階で、全収率は1%未満だった。なお合成途中で、倒錯しないように、糖鎖を連結し、二つのジアステレオマーをクロマト分離、所望のキラリティーを得、最後にN-テトラミン酸基を脱保護している。「これぞ合成の偉業である」とのことである、以上。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 November 6, p. 7.

DOI: 10.1021/jacs.7b09358

17.11.22

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原子二、三個の

 厚さの材料の例が近年格段に増えており、たくさんのカテゴリーのそれらが、二次元材料クラブのメンバーになっている。そこには特徴的な応力、熱さらには光学特性を持つ、電気伝導体、絶縁体、半導体を代表する有機物、無機物、様々な単一元素からなるものが含まれる。一方で磁場特性を示すものは、二つのクロム化合物が登場する数ヶ月前まではなかった。さらに今回マンガンチオホスファイト(MnPS3)が追加された[1]。冷蔵庫のマグネットと同様に、クロム化合物は強磁性体であり、その磁気モーメントは、同じ方向を向いている。一方でMnPS32-Dの反強磁性体である。上向きと下向きのスピンが交互に現れる。またそれは元素の粉の混合物から高温法を使って二原子程度の薄さの化合物の薄片として得られる。このため今や、超薄い材料は2-Dの反強磁性体を提供する手段になり得る。またこの種類の材料は、見えない磁気データ貯蔵素子をつくる応用に利用可能である。このご時世、強磁性体、反強磁性体、どちらもあって反響も大きい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 30, p. 7.

DOI: 10.1021/acsnano.7b05856

17.11.21

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モントリオール議定書

 1989年に発効されて、クロロフルオロカーボンや関連するハロカーボンの段階的な削減に成功した。これらの化合物は、冷却剤、推進剤、消火剤として有用だけれども、太陽からの紫外線から、地球を守る大気のオゾン層を破壊することがわかっていた。(おぞんましいことです)条約やその改訂版が、問題である化合物の濃度を削減させ、1990年には最も薄い層だったオゾン層が回復し始め、課題が解決されたように思われた。ただし東南アジアにおける新しい測定の結果は、ハロ炭素の放出は増加し、制御されずに、むしろ逆の方向に進んでいることを示していた[1]。とりわけポリ(ビニルクロリド)をつくるのに使われる1,2-ジクロロエタン、塗料除去剤やプロセス化学の溶媒に利用されるジクロロメタンが過去10年の間に上昇している。これらの化成品の寿命は短すぎて、成層圏まではそれほどの量は到達しないと考えられ、条約には入っていなかった。東南アジアでの上昇という点が注目されていて、化合物が熱帯地方まで飛んでくると、より簡単に上昇し、ダメージを引き起しうるイメージである。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 30, p. 7.

DOI: 10.5194/acp-17-11929-2017

17.11.20

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言うには長い名前の

 テトラメチルアンモニウムトリフルオロメチルチオラート[NMe4]SCF3は、安価、安定、使いやすい塩であるために、ここ数年、SCF3基やフッ素を分子に組込む反応剤として化学者を魅了している。たとえば、Franziska Schoenebeckと彼女のグループはこれを、チオホスゲン(S=CCl2)の代替品として、ヒントを得て、アミンやアルコールの官能基化に使っている。さらに同じグループは、この塩を使って芳香族あるいは脂肪族のカルボン酸を、有用なフッ化アシルに変換する反応を開発した[1][NMe4]SCF3は、これまで使われていたSF4に置換えうる。SF4は、毒性もあって、腐食性を示し、添加剤も必要で、官能基選択性も低く、望まない副生成物も発生してしまう。それに対して今回の塩はこれらの問題を回避できる。そのため工業界や学術界からも興味をもたれていて商品化される可能性も高い。寿限無も置換えられるかな。

[1] Chemical & engineering News, 2017 October 30, p. 7.

DOI: 10.1021/acs.orglett.7b02516

17.11.19

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同位体を

 分離する方法は、多くの科学・工業プロセスで鍵となる。たとえば原子力発電や核兵器では、特定の同位体が豊富な燃料を必要とする。また純粋な同位体やそれが豊富なサンプルは科学研究や医療分野でも利用される。同位体は、分留、ガス分散や遠心分離によって分けることが出来る。また化学的、磁気的、静電的な方法も使える。ただしこれらの技術はしばしば、エネルギーと多段階連続分離を必要とする。その中今回研究者らは、表面回折をもとにした、より簡単である利用可能な方法を思いついた[1]。回折についての解説によれば、ネオンのビームをメチルでキャップしたシリコン結晶にあてると、ビームの一部が回折し20Ne22Ne同位体が、わずかに違った角度でビームが散乱する。単一のパスがより少ない同位体である22Ne3.5倍豊富にできる。より高い精度の分離は、さらなる回折段階、あるいは同位体の重さをベースにした速さの違いを使って行えるとしている。ビーム実験の後はビールで乾杯を。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 30, p. 6.

DOI: 10.1103/PhysRevLett.119.176001

17.11.8

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男性の精子の数

 世界中で経験した課題だけれども、中国では2001年以降およそ30%減少している。今回工業都市武漢で行われた研究結果は、この減少は化石燃料の燃焼によって生じる二酸化硫黄にさらされることと関連していることを、示していた[1]。ある病院に、パートナーとの間に子どもを授かりたいとして訪れた1759名の男性から集められた精液のサンプルが分析された。精子の濃度、全精液量、運動精子の量を測定した。その際、年齢や喫煙者であるかという精子の質に影響を与える因子も考慮した。ついで武漢の九カ所の大気環境をモニターする場所から得られた結果を使って、精液を集める前90日間の大気汚染への暴露を見積った。それらの結果は、精子形成の最初の間にSO2への暴露が10 μg/m3増加すると、精子濃度は6.5%、全精子量は11.3%,運動精子は13.2%減少することを示していた。精子減少を制止するべく、武漢での結果に無関心でありませんように。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 30, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.est.7b03289

17.11.17

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トリクロサンは

 かつて抗菌石けんなどに含まれ、これを買っていた人も多くいた。ただしトリクロサンが耐性を引き起す可能性、通常の石けんや水だけと比較して抗菌効果があるかわからないため、昨年FDA201796日を期日に使用中止を発表した。それでも歯磨き粉へは、歯肉炎や歯垢の軽減に有効であることから使用が認められていた。その中今回、歯ブラシの剛毛に使われるある種のナイロンがトリクロサンを含む化合物を取込むことが報告された[1]。研究者らは22種類の手動歯ブラシ、人工唾液、0.3%のトリクロサンを含む六種類のベストセラーの歯磨き粉を使って三ヶ月間実験を行った。トリクロサンと他の歯磨き粉成分は、エラストマーの歯ブラシヘッドに蓄積されていた。半分以上の歯ブラシは、少なくとも三ヶ月間のブラッシングで10 mgのトリクロサンを含むことがシミュレートされた。さらにその後トリクロサンの入っていない歯磨き粉を二週間使ったところ、歯ブラシからトリクロサンがにじみ出ていた。トリクロサンの摂取の上限は0.3 mg/1 kg/1日であることから人への影響はないものの、歯磨き粉を通した化合物の移動というこれまで認識されていなかった経路があることも明らかにされた。研究成果にも磨きがかかっている。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 30, p. 5.

DOI: 10.1021/acs.est.7b02839

17.11.16

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糖鎖の配列を

 決めることは挑戦的な課題で、甘くはない。多くの糖を構成する部位は、お互いが異性体であり、それらを区別することが難しく、グリコシド結合の立体化学の決定には、糖鎖構造を完全に分析する必要もある。その中今回、赤外吸収スペクトルと質量分析を組合せるハイブリッド法によって、糖鎖配列の決定を可能にすることが報告された[1]。まずガス衝突を質量分析計で行う糖鎖をモノサッカリド部位に切断する。得られたフラグメントを、IR光子でさらに分解し、分解物のIRを測定する。研究者らは最初にこの方法でジサッカリドを分析した。モノサッカリド部分の特別なタイプのIR指紋、これはCフラグメントと呼ばれるが、モノサッカリドに含まれる官能基や糖同士の間のグリコシド結合の立体化学情報も含まれる。さらにこの方法がオリゴサッカリドへも広げられた。ここでのポイントは、フラグメント化されても、キラリティーが変わらないことである。糖鎖解析、お父さん如何でしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 30, p. 5.

DOI: 10.1038/s41467-017-01179-y

17.11.15

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発生生物学者

 美術史家と写真家のチームは、自然史博物館に展示された1880年から2015年の間の鳥の標本1300以上の羽根の光の反射率を、電子顕微鏡を使って測定した[1]。それらの鳥たちはシカゴ、デトロイト、ピツバーグを含む米国の工業地帯に暮らしていた。集められたデータから出た結果をもとに黒色炭素の濃度を推定することができた。それによれば1900年から1910年の間の量が最も多く、この1910年以前の量は、以前に見積もられていたそれよりも多かった。現在では大気からサンプリングする方法が通常になっているが1950年以前のそれは不正確である。1960年頃までの鳥の羽根に残る黒色炭素の量は比較的高く、その後減少している。これは石炭燃焼の効率の向上、環境規制、また比較的クリーンな天然ガスへの移行によるものと思われる。今回の調査は、現在では人や野生生物への影響は小さくなっていることを示しているとともに、黒色炭素の気候変動への影響が低く見積もられてきたこと、また将来の気候変動予測にこの方法が利用できることも示している。鳥から取り出された情報、何通りもある。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 23, p. 7.

DOI: 10.1073/pnas.1710239114

17.11.14

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カメラやソーラーパネルの

 内側では、光検出器が光を吸収してそれを有用な電子信号に変換している。この素子の性能は、素知らぬ顔で、光子を、電子や陽電荷種であるホールに変換する効率に依存する。この電子—ホールペア(e-h)が材料の中を移動し電気が発生する。改良のための方法の一つは材料をナノスケールまで縮小させることであり、量子ドット、炭素ナノチューブ、グラフェンが使われ、光子一つから、一つ以上のe-hが発生する100%以上の効率になる。今回、遷移金属ジカルコゲニドと呼ばれる超薄い二次元材料を用いて300%以上の効率が達成された[1]。光検出器は、MoSe2の単一層で挟まれたWSe2の二つの原子層でできている。この場合光子がWSe2層に当たると、電子がホップしてMoSe2層に移動し別のe-hペアができる。小さな電圧を層にかけると効率は350%まで向上する。ジカルコゲニドを使う利点は結晶性であり、量子ドットよりも電子輸送の点で優れている。ここでは二次元(2-D)金属ジカルコゲニドを用いているが、2-D材料は1000以上の化合物ライブラリーがあるもののほとんどの特性が明らかにされていない。ちなみに光子、格子戸は開けない。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 23, p. 6.

DOI: 10.1038/nnano.2017.203

17.11.13

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MOFZIF-8でできた膜を

 外部電場にさらすと、プロペンをプロパンから分離する能力が中程度だったのが、これらのガス分離をよりよく行えるようになることが報告された[1]。この方法は、ZIF-8に類似の骨格を持つ異なる種類の材料へも応用することが可能である。ZIPF-8は、亜鉛にイミダゾールが配位したソフトなMOF結晶で、高級かどうかはともかく、「呼吸」として表現される様式で動くユニットである。500 V/minの外部電場をZIF-8に適用するとこの動きが軽減されて、材料の格子が分極し結晶構造での転移が促進される。この刺激を受けたZIP-8の開口部は、0.34 nmから0.36 nmになる。それでも連結部は電場による動きが少ないために、MOFの分離能が向上する。MOFのエキスパートは「この成果は、活性部位や、電気的に駆動した臓器や組織の配位環境を変えることによって、ある基質に対する選択性をチューニングできる触媒を導き得る」と推測している。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 23, p. 7.

DOI: 10.1126/science.aal2456

17.11.12

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スパムフィルタリングや

 経済予測、材料特性を予測するような動作は、コンピューターが学習したり、データ収集を基にした予測を可能にするアルゴリズムによって、駆動する。材料特性の場合、現状ではコンピューターは、多くのタイプの基質の電子構造情報のデータベースで訓練された後、予測を行っている。それに対して今回、分子のポテンシャルエネルギーから決定された分子の電子密度のマップを機械に学習する機会を設けることによって、分子の構造と特性を結びつける方法をコンピューターに訓練させることが提唱された[1]。実際に存在するマップを学習した後、コンピューターは新しい分子の基底状態の電子密度の予測ができた。分子の基底状態の特性は、1960年代にPierre HohenbergWalter Kohnによって理論化されたように、電子密度から推定できる。実際研究者らは、Hohenberg-Kohnを学んだマシーンアプローチを使って、マロノアルデヒド[CH2(CHO)2]のエノール形の分子内プロトン移動をシミュレートしている。趣味もシミュレートかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 23, p. 5.

DOI:10.1038/s41467-017-00839-3

17.11.11

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MOF化合物は

 金属イオンと有機基が連結した多孔性の結晶材料群である。孔が相当に多いことから、ガス分離、ガス貯蔵や触媒として有用であると、広く言うようである。とりわけこれらの材料の液体版は、液体が結晶の粉よりも安定していること、また加工がしやすいことから、とりわけ有用になり得る。ただし分子配列を保った多孔性液体はほとんどなかった。その中今回、MOFの液体版が作成された[1]X線、中性子散乱法、計算科学から、亜鉛とイミダゾールからなるZIF-4856 Kまで加熱すると固体は融解するものの、結合開裂や分解は起こらないこと、代わって熱い液体は化学的な配置、配位結合、結晶状態の多孔性を保持したままだったことがわかった。液体の特性や構造は、材料を冷却した時に得られるガラス状態とは異なっている。このプロセスは、一時的な状態として液体を利用し、MOFsをマクロスケールで異なる形にするのにも利用されて、ガラス状態や結晶状態を形成しうることも提案されている。あなたも孔のとりこに。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 9.

DOI:10.1038/nmat4998

17.11.10

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空気中や

 発電所から出る二酸化炭素を捕捉してメタノールに変換することは、気候変動を抑制する素晴らしい方法のように思われる。さらにこれは広範に利用されているメタノール製造の安価な方法にもなり得る。ただしCO2の水素化によるメタノール製造の進歩は遅い。現在の系では、エネルギーを必要とするもの、あるいはメタノールを低濃度で副生成物とともに得るしかない。触媒の有力な候補の一つは、銅−酸化亜鉛系だけど、これは選択性の低さと触媒の失活が課題である。その中今回、酸化ジルコニウムに分散させた酸化亜鉛の固溶体が、合成触媒としてかなり有望であることが示された[1]。賞賛すべきことに、硝酸亜鉛と硝酸ジルコニウムから調製されたZnO-ZrO2は、91%までの選択性でメタノールを導き,触媒活性は550時間持続した。しかも固体触媒の触媒毒である硫黄があってもである。計算科学は、固溶体の触媒性能は、個別のものや単に混ぜたものよりも高く、ZnZrが近接していることで、恊働的に水素を活性化していることを示していた。固溶体も雇用したいね、乞うご期待。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 9.

DOI: 10.1126/sciadv.1701290

17.11.9

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装着できる

 センサーがブームである。たとえばフィットビットを手首につける。びびっとる人もいるかもしれないけど、時にvividなそこには身体の状態が記録される。今回研究者らはこれを防御に適用できる成果を発表した[1]。すなわち空気中、液体中で爆発物や神経ガスをモニターして 無線で携帯電話などに送信できる電池で駆動するリングが開発された。リングの外側の表面には、電極がプリントされている。さらに表面の半固体のセミロースが分析物を電極に拡散させる。これがデバイスの中の小型化したエレクトロニクスと繋がって、中ではデバイスが電気化学信号を解釈しデータを転送する。リングはクロノアンペロメトリーと迅速方向波電圧計を使い、ニトロ芳香族化合物や過酸化物、有機リン神経ガスをモニターできる。このデバイスの能力は別の有害な化合物へも広げることができる。また今回の研究のもっとも特筆すべき点は、単純でコンパクトな自律性でワイアレスユニットの中の、エレクトロニクスの小型化と集積化である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 8.

DOI: 10.1021/acssensors.7b00603

17.11.8

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分子探検家として

 化学者はしばしば、化学空間に入り込み、奇妙な新発見を見ようとする。この過程をアシストするために研究者らは、用いる一連の元素と数の組合せのアルゴリズムを、リズムよくつくり、これによって合成的に妥当性のある安定な分子になり得る組合せに取組むことができる。GDB-11データベースはC, N, OあるいはFを含み、11までの骨格元素を含む分子を構築することができる。とりわけ三あるいは四員環を含まない多環炭化水素がここでは注目された。この構造モチーフは、医薬品候補になる天然物でも見られる。取り上げられた124分子の中で3つは合成例がなかった。そのうち複雑な対象飽和炭化水素であるC11H16が特に魅力的だった[1]。化合物の骨格は、二つのノルボルナンからなり、隣接する部位をシェアしているために、三つのノルボルナンサブユニットになっている。天然物の全合成を行うように、キラル化合物のラセミ混合物を9段階全収率7%で合成し、化合物はトリノルボルナンと名付けられた。それでも電車には飛び乗るなん。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 8.

DOI:10.1039/c7cc06273g

17.11.7

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ほ乳類は

 二種類の脂肪組織を持つ。白色組織は、書式はわからんけれども、エネルギーを貯蔵し、これは肥満、心臓疾患、糖尿病とリンクしている。寒い冬にはこれが、茶色脂肪に変わり、エネルギーを出し、熱を生産し、暖かさを保持、体重増加を防ぐ。科学者はこの過程を促進する医薬品を同定していたが、錠剤として、また注射で投与したときには重大な副作用が伴う。昨年糖尿病治療薬であるロシグリタゾンがFDAによって認可されたが、この薬はナノ粒子にしてネズミの脂肪組織に入れると白色脂肪の茶色脂肪への変換を促進することもわかった[1]。医薬品送達のためにはパッチを使う。デキストランナノ粒子にグルコース酸化酵素とロシグリダゾンを入れ込み、アルギニン酸塩の粒子でコートし、それらを121の円錐状のマイクロニードルを持った7x7 mmのヒドロゲルパッチに包み込んだ。マイクロニードルが肌の表面を刺激すると、血糖がヒドロゲルにしみ出し、グルコース酸化酵素と反応、アルギニン酸を壊す酸が発生し、薬がでる。実際に太ったネズミの腹部にパッチを取り付けて、3日ごとに取り替えることを4週間続けた。その結果、この処置を行ったパッチの下では20%皮下脂肪が減り、空腹時血糖値も低下していた。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 6.

DOI: 10.1021/acsnano.7b04348

17.11.6

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1924年考古学者が

 934-1062年頃のペルシャ絹であるBuyidシルクを、イランのある地方の埋葬場所で発掘した。しばらくして骨董品マーケットに出たのは、こっとうるかもしれないけど、偽物ではないかと疑いがかけられた。数十年後、炭素14分析が、1930年以降に販売された絹のいくつかは偽造であることを実証した。ある法化学者は以前、より少ないサンプルで、14Cより安価な方法で年代を特定する方法を開発していた。その研究者が今回その方法を見本市に展示されたBuyidシルクの糸に適用した[1]。その結果、12が詐欺である可能性が示された。研究者の分析方法は、絹の中のアミノ酸を対象としている。タンパク質は年数を経過すれば、いくつかのそれは配座が変化し、よくある左巻き配座(L)から右巻き配座(D)に変化する。なかでもアスパラギン酸はその傾向が強く、絹タンパク質の中のDLの比から、より古い絹サンプルを判定できる。Buyidシルクの標品での比は29.6%でこれは14Cでの結果である30%とほぼ同じである。一方で先の疑わしい12のうち1151.8%で、これらは高すぎる。さらに偽物の可能性のあるものでは、フェニルアラニンやチロシンのD:L比も異常に高かった。これらは1000年を経た配座変化によってもD体はほとんど見えない。シルクの真贋を知るくことができた。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.analchem.7b02854

17.11.5

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フサコケムシ

 小さな海洋生物である。そのムシ12700 kg、およそスクールバスの重さに匹敵する量が採集された。1980年代後半のことである。そこからわずか18 gのブリオスタチン1 が単離された。この量では、食卓塩の容器も一杯にならない。それでもそのほとんどがガンの化学療法のための試験に使われたが、成功はしなかった。その後化学合成によって供給されて、臨床試験が継続、アルツハイマーやHIV治療の可能性も示しているが、ほとんど供給できないという課題があった。これではいかんだい、である。その中今回、従来法のおよそ半分のステップに相当する29段階合成法が開発された[1]。合成は、収束型、段階型、最終生成物を結晶として得ることなどいくつもの独自の特徴を示す。合成を達成したWender先生は、「ここには合成の特別なブレークスルーはない。clever chemistry and hard work. マラソンの如く、どのように始めて、レースの途中はどう過ごすか、ゴールラインをどう跨ぐか である」とコメントしている。フサコケムシの貢献、無視はできない。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 5.

DOI: 10.1126/science.aan7969

17.11.4

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アンチマルコフニコフ選択性を

 達成できるアルケン酸化反応が提供されると、直鎖の光学活性アルコールへも変換できる。それらはさらに香粧品になる。ただし交渉すればできるわけでもない。触媒系の開発が必須である。その中研究者らは、天然の酵素を使って、高い選択性を示すアンチマルコフニコフアルケン酸化触媒をつくった[1]。鉄が組込まれた酵素でP450LA1と呼ばれるP450が最初に利用された。45%のアルデヒド選択性であった。そこで酵素の直接的な改変を繰返し、aMOxとよばれるバージョンを開発し、81%のアルデヒド選択性を達成した。このパフォーマンスの高さは、鉄オキソ基が、アルケンを攻撃して発生する高エネルギーラジカルや炭素陽イオン中間体が安定化されるためである。P450LA1からaMOxまでは12の変異を繰返す。ただしそれが高い選択性を示すことを予測することは難しく、この直接変異の繰返しによる触媒調製が有効であることも示していた。常温・常圧、水溶液中での酵素プロセスが、従来の触媒系に置き換わる日もプロミスされるかもしれない。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 16, p. 4.

DOI: 10.1126/science.aao1482

17.11.3

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エチレンアミン類は

 エポキシ硬化剤の様な製品の中間体であり風力発電製造で需要がある。それらは油、道路材料や紙の添加剤でもあることから、グローバルなエチレアミンマーケットは年間55万から60万トンになる。それに至る現在の主な二つの製造ルートは、モノエタノールアミン(MEA)とアンモニアとを、水素化−脱水素化触媒存在下で反応させる経路と、ジクロロエチレン(EDC)とアンモニアとの反応である。ただしMEAプロセスは効率が悪くて、三つ以上のエチレンユニットの組込みは難しい。一方でEDCプロセスは高価で、欲しくない塩素化学も含む。その中今回エタノールアミンに官能基を組込んだ化合物製造が、アミン、一酸化炭素との反応を経た経路で達成された[1]。この新しいプロセスは、高収率で、少なくとも三つのエチレンユニットを含む一連のアミンを与え製品群を拡大することができる。しかも従来法を置換えることも可能である。AkzoNobel社が特許で述べるプロセスでした。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 9, p. 16.

17.11.2

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三次元構造の

 分子をつくるために有機基の金属がアシストする自己集合が広く利用されている。たとえば今回研究者らは、2,2’-ピリジル基とトリアゾリルピリジン基からつくられた多座配位子と様々な金属塩とのマッチングが行われ、独自のトリメタリックで三次元に固定されたらせん錯体(L3M3)6+が導かれた[1]。ここでLは配位子、MFe, Co, Ni, Cu, Znあるいはこれらのうち二つの組合せである。研究の一環として質量分析によって、複数の金属を使ったときのらせん錯体形成の機構や熱力学的安定性が明らかにされた。その結果ある種の金属は配位部位で他の金属を蹴り出し、らせん同士で相互変換しうることがわかった。たとえば(L3FeZnCu)6+は、三つの異なる金属が組込まれた、ほかにはありゃあ〜せんらせん錯体の最初の例である。ただし三核錯体は、最も安定な単離できるr(L3Cu3)6+に至る中間体としてのみ存在していた。トリメタリックは、反磁性と常磁性の組合せで構成されるスマート材料を提供しうるため、それに至るトリックも興味がもたれる。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 October 9, p. 15.

DOI:10.1021/acs.inorgchem.7b01980

17.11.1

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