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2018年1月

アトムリスターとは

 原子的に薄いメモリスターであることから名付けられた。でメモリスターとは、メモリーセルやトランジスターと同様に作動することができる、すなわち情報の貯蔵や処理ができるデバイスである。それらは電源をオフにしてもデータが保存されるメモリー不揮発性であることからコンピューターメモリーとしての利用が有望である。そのなかモリブデンジスルフィドのような、様々な原子的に薄い遷移金属ジカルコゲニドを、金属電極の間に挟み、メモリスターがつくられた。異なる電圧をかけると、材料の電気抵抗が連続して変化し、電源を切っても抵抗は安定していた。アトムリスターはデータ貯蔵にも使えるものの、電気通信スイッチのデバイスとしての応用も探索された。50ギガヘルツ周波数をオン・オフすることができる。そのようなデバイスは、低出力通信ネットワークを可能にする。ここでは、たとえばMoS2の中に硫黄がないというような、材料の中の欠陥が、デバイスがどのように動作するかの鍵である。電場では、原子は二次元材料の空いた部分を移動し、電極間での電流の流れを引き起こし、挟まれた材料の抵抗の変化を可能にしている。アトムリスター開発、後戻りしたり、無理したりはしない。

Chemical & Engineering News, 2018 January 15, p. 6.

DOI:10.1021/acs.nanolett.7b04342

18.1.31

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電波望遠鏡を使って

 430光年離れた星間のちり雲の中にあるベンゾニトリルが検出された。すべての星間の炭素の10%ほどを多環芳香族炭化水素(PAHs)が占めている。ただし他の炭素化合物をPAHと、ぱっあと比べるのは難しかった。それは分子の赤外スペクトルの結合伸縮の動きが大変よく似ていて、多くのPAHsはあまり極性が高くないためであった。その中でベンゾニトリルはPAHではないものの、その双極子モーメントの大きさに注目された。ベンゾニトリルはベンゼンとシアニドからできると考えられていることから、ベンゾニトリルを測定することは、どの程度の量のベンゼンやPAH、さらには他の分子が、宇宙にあるのかを推理することのひとつの方法になり得る。研究者らは、ウエストヴァージニアにある望遠用を使って、ある特定の周波数で高解像度の測定をすることができた。その結果、ベンゾニトリルの実験室で確かめられて予測した九つの回転遷移のうち八つが観測された。この発見は、宇宙で分子を探す天体学者にとっても、とってもよいニュースであった。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 15, p. 6

DOI: 10.1126/science.aao4890

18.1.30

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イランのタンカー

 サンチが114日東シナ海で沈没して、惨事になった[1]。タンカーは、揮発性原油成分であるコンデンセートを積載していた。ジェット燃料などに使われるそれらの成分は、海洋生物に甚大な被害をもたらし得る。現段階では実際にどの程度の影響が出るのかを明らかにするのは時期尚早なるも、船の沈没の形態や、沈没の際に燃えずに残った原油成分があるのかによって影響は大である。特に強い黒潮に乗って数ヶ月以内に日本の海岸線に到達する可能性もある。その経路は、クロマグロやヤリイカの産卵地域であり、タチウオやニベ科の魚、鯖やワタリガニの越冬地でもある。さらに海洋哺乳類の移動経路にあたる。この移動の間揮発性成分は、蒸発、消失、分解の可能性もある一方で、バンカー油は持続性があって海岸に到達しうるが、それらは漁場やワイルドライフに、かなり悪い影響を及ぼす。この様な予測モデルとは対照的に、日本の環境省は116日「漏れた油が日本の沿岸に到達することはない」とアナウンスしている。油について、これは危ない。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 22, p. 4.

18.1.29

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雪景色

 アイスバーン、愛するしかない。歩いてバス停に向かう。さっそうとした格好の歩きではたちまち転ぶ。前屈みになって、明治以前の歩行が如く、右手・右足を揃えて前に出す。次は左手・左足を揃えての順になる。あと僅かな距離、一瞬油断があったのか転倒した。瞬間的に身体を斜めにしていた。正直、衝撃は大きくはなかったものの、地面の氷が手袋にこびり付いて離れない。そのバス停始発のバスなので定刻通りに出発。でも途中ゆっくりと走行、通常の二倍の時間がかかった。JR岐阜駅こちらは出発時刻が不安定だった。大垣駅でも待つ。さすがは関ヶ原と思いつつシーンをカメラで切り取る。新幹線が速度を落として通過する米原駅。10分程の遅れのお陰でスムーズな乗り継ぎができた。かなりな降雪量の彦根、能登川辺り。これって当たり前だったかなと、さらに雪を愛でていた。その時、前方の川向こうに広がる街並みが目に入った。雪が一切ない。橋を渡ったところにある川の名前のボードを見逃すまいと、ぼーっとしていたモードを切り替えて目を凝らした。「野洲川」においでやす。ひと川渡ると天気が変わる。わかるかな?

18.1.28

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いわゆる化学兵器や

 農薬、他の毒性化合物を高い確率で隔離することが、朝飯前(スラムダンク)になり得る成果が得られた[1]。バスケットの形をした分子で、平面な芳香環と三つの双環性の輪が融合し、曲がったユニットを形成している。三つのフタルイミドがこの屈曲に、三回回転対称軸を保ちながらキャビタントに、ピタンと広がっている。フタルイミドにはアミノ酸部位があり、それぞれのバスケットのへりには三つのカルボキシル基が配置されている。水中では、これらのバスケットが、神経剤と大きさと形が類似の有機リン化合物と超分子錯体を形成する。形成した錯体を300 nmの光にさらすとバスケットからカルボキシル基は脱離するものの、神経ガス類縁体は捕捉されたままで水に不溶になって簡単に除去に成功する。この手法は原理的にどんな標的も水中から取り出すことに適用できる。また化学反応性の制御、環境浄化、さらには生体系からの毒性基質の除去にも応用できる、と言う状況である。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 9.

DOI: 10.1021/jacs.7b11960

この記事の書き出しis slam dunk, thanks to molecular baskets •••である。ただし桜木花道は登場しない。

18.1.27

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頁岩は

 石油が豊富な堆積岩であり、鉱物の骨格の中に固体の有機物がちりばめられている。走査電子顕微鏡では、近接する有機物粒子が、多孔性の点でかなり異なっていることを示しているが、その測定では基本的な化学組成がほとんどわからなかった。それに対して今回、原子間力顕微鏡をもとにした赤外スペクトルが、ニューアルバニーにあるばに〜の頁岩の地質学的形成から得た有機材料のナノスケールの化学的力学的な特徴の解明に使われた。この方法は、従来法では、小さすぎて、さらに接近しすぎていてわからなかった、有機物のばらばらの粒子の組成を垣間みることができる。その結果、人工熟成の間に、ある種の有機物の組成が劇的に変化するものの、他の組成はほとんど変化しないことがわかった。頁岩の中の固体の有機物はほとんど理解されないままだけども、それらの物理的、化学的な乱雑さを特徴づけることができたことは、正しい方向へ向かう大きなステップである、とコメントされている。頁岩(けつがん)の研究、さらにうけ継がんといかん。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 9.

DOI: 10.1038/s41467-017-02254-0

18.1.26

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超平滑なグラフェンは

 通常の方法で成長させた材料よりも電気特性が向上する。その作成には通常の方法では成長の際に出来てしまうしわが課題である。これはCu(100)面あるいは成長基質として使われている銅の面が設定された温度で、グラフェンとは異なる速度で拡大するためである。このミスマッチが機械的なひずみを生じさせて、化学蒸着の間にその面でグラフェンが成長するにつれてしわも出来てしまう。そこで、よりよくマッチする、間違いのない、銅の結晶構造が探索された[1]。その結果、原子の位置がCu(100)面とは異なるCu(111)で成長したグラフェンは完全にスムーズであり11000 cm2/V-secondの電子移動度を示すことがわかった。この値は実用的な方法を使って大きな領域で成長したグラフェンで測定された最も高い値にランクされる。研究者らは、Cu(111)基質を直径10 cmのサファイアウエハーの上に銅フィルムを成長させることで作成した。この方法は、半導体工業技術と同程度の出来である。研究者らは、しわのない単結晶グラフェンの大量生産を目指している。「私はしわのないグラフェン」が私話でなくなった。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 8.

DOI:10.1021/acsnano.7b06196

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つなぎ止められているものの

 自由にスピンできる分子基を持つ結晶材料が設計された[1]。これは固体状態の材料として信じられないほど素早く回転する。材料は、相対的に静止しているけれども素早い動きが制止されない分子ユニットを持つ結晶固体で、いわば両方のダイナミック(amphidynamic)を持つ材料の好例である。研究者らは、Zn4Oを基にしたMOFをビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボン酸で調製した。得られたMOFは、空間的さらには回転の電子的な障壁もほとんどない。ビシクロオクタン部位は1秒間に最高500億回回転するが、これは真空中立体障害のない気相中の分子ローターの回転数のオーダーよりもわずか一桁小さいだけである。同時にZn4O骨格は通常の低周波数の振動もする。以前のamphidynamic結晶では、ローターは、より大きな分子内立体的・電子的障壁がありこれが回転数を減少させていた。新しい材料では、障害の小ささによって、ビシクロオクタン基が連続的に回転し回転方向も1秒間に何度も替わる。今回のタイプの材料からスマート材料や分子機械の設計の期待も広がる。ローター、ご老体にも紹介を

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 8.

DOI: 10.1073/pnas.1708817115

18.1.24

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二酸化炭素を

 ホルムアルデヒドのような日用品前駆体へ効率的に変換できるマグネシウム触媒が調製された[1]CO2は通常光合成には必須の分子である一方で、地球の気候を制御する温室効果ガスであると考えられている。CO2は豊富で安価なために化成品や燃料を導く再生可能な炭素源になり得る。ただし過剰反応するまでは反応性が低くCO2を選択的に官能基化できて標的生成物を生産する触媒を見出す必要があった。ヒドロシリル化はその一つの方法であるものの高温で高価な触媒を必要とし、極端な場合、メタンまで完全に還元されてしまう可能性もある。それに対して今回開発された触媒は、安価な亜鉛あるいはマグネシウムが室温で作用する。すなわちマグネシウムイミダゾールヒドリドをB(C6F5)3と取扱い、反応性のカチオン-アニオンペアをつくり、これにCO2が配位しヒドリドが炭素に移動し、ギ酸中間体を形成する。ここに異なるヒドロシランを反応させると様々な生成物に至る。例えばトリフェニルシラン (PH3SiH)では、ビスシリルアセタールを、フェニルシラン(PhSiH3)ではメタンを与えるが、ケイ素は、知らん顔しているかも。軽率なことは言えません。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 8.

DOI: 10.1021/jacs.7b10776

18.1.23

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低エネルギー電子は 

 高エネルギーなX線、γ線やイオンよりもむしろ、結合形成や宇宙空間で複雑な有機化合物の前駆体をつくるような大きな仕事をするかもしれない。研究者らは、メタンや酸素の氷に、星間空間と類似の条件で、低エネルギー電子の衝撃を与えた。その結果、エタンやエタノール、カルボニル基やカルボキシル基が生成しているスペクトル的なサイン、差異が見られた [1]。これまで高エネルギー源から重要な化学反応が起こることは知られていた。それに対して今回低エネルギー源を使って複雑な化学種が形成することが示されたことは、太陽系の内外の表面で、化学が如何に簡単に引き起こされるかのさらなる証拠になる。この化学は、氷の粒、星雲のちり、われわれの太陽系の氷の塊で起こり得る。ただし今回観測された分子は、生命体を構成する分子にはまだ遠いことにも注意すべきである。研究者らは現在、メタン、酸素、アンモニアを含む混合物を使った実験を行なっている。シャーブルックで得られたシャープな成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 1.

DOI:10.1063/1.5003898

18.1.22

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酸塩基親和性の

 スケール、神話ではないけど、それを計算化学によって見積ることで新しいCF3化剤が開発された[1]。温室効果ガスの可能性があり工場の廃棄物であるHCF3から発生させたCF3-をヘキサメチルボラジンに付加させる。カウンターカチオンとしてはKが使われ、クラウンエーテルが配位している。これによって不安定なCF3-の安定性が維持されるとともに、様々な無機、有機親電子剤との反応も室温数分内に完了し、ボラジンは再利用できる。新しい反応剤は、カルボニルやイミンの官能基化や、求核的芳香族置換反応も引き起す。またこれまでよく利用されているCF3-M (M = Cu, Zn, Pd, Ag, Au)TMSCF3、ラジカル(KSO3CF3)、親電子的なヨードニウムトリフルオロメチル化剤も調製できる[1]。従来は高価なハロゲン化CF3だったがここではHCF3が原料になる。ここでの鍵はルイス酸・塩基ペアの最適化を通して不安定なアニオンの安定化に成功した点であり、類似の戦略は他の不安定なアニオンへも展開できて、限界も突破しうる。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 6.

DOI:10.1021/jacs.7b05408

DOI: 10.1002/anie.201711316

18.1.21

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車内販売の

 キャスター付きワゴンが目に入った。ニュースではない。しゃ〜ない「ビールちょうだい」長蛇の列もない。販売されている方の穏やかな関西弁に合わせて、銘柄四種類の缶ビールが出てきた。ドライ、プレモル、エビスに軽井沢。コバルトブルーが基調の缶に満開の桜の図柄。「それにしましょう」「はい、360円です」縁あって手にしたけど高級品だった。「どこがつくっているのでしょうねえ」と聞いてしまった。缶を見ながら特定しようとされている。営業を邪魔してもえいぎょうではない。いいですよ。「ありがとうございました」でお別れする。軽井沢ブルワリー株式会社とあった。ドライほど、どえらいドライでもなく、ラガーほど苦味が強いわけでもない。いやほとんど感じない。一番搾りのまろやかさ、黒ラベルのバランス感でもない。重さのあった缶が飲むごとに軽いわざは他と同様である。浅間名水、桜花爛漫とある。春遠からじ、春眠の候の一品かもしれない雰囲気を、醸し出していた。

18.1.20

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よりたくさんのリチウムを

 含む安価な電極は電気自動車の走行距離を伸ばすことができる。そのためLiを含む様々な電極材料が試験されている。その中Li含有遷移金属酸化物が有望である。これらは通常の市販のそれに比べて容量ベースで30%あるいはそれ以上の電気を貯めることができる。ただしこれらの材料でつくったバッテリーの電圧は、繰返しの充電でへばってり〜になってしまう。この電気化学プロセスを理解することが課題解決の鍵である[1]。今回シンクロトロンX線顕微鏡と散乱法によってLi1.17Ni0.21Co0.08Mn0.54O2の結晶構造とレドックスポテンシャルの間の複雑な相互作用が解明された。すなわちリチウムイオンがカソードからアノードに移動しリチウム欠陥を埋める。ただし全ての金属イオンが放電の時に戻るわけではない。不完全なイオンの往復が微視的な構造変化を引き起こし、酸素の結合配座を変化させて、酸素のレドックスポテンシャルを低下させて、電圧低下の要因となる。リッチ生むバッテリーの立地条件特定に近づいたかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 5.

DOI: 10.1038/s41467-017-02041-x

18.1.19

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来年2019年は

 メンデレーエフが周期表を発表してから150年目にあたる。周期表として発表されたのは、六番目だったものの、他のそれらと違っていたのは、その当時発見されていない、幻想じゃないかと思われたかもしれない、六つの元素を予測した点である。その後の15年間にガリウム、ゲルマニウム、スカンジウムが発見されてメンデレーエフは一躍有名になった。その周期表には現在、新元素の合成によって第七周期の最後の四つの元素も登場し、正式名(ニホニウム、モスコビウム、テネシン、オガネソン)も公開されている。さらにそれ以降の元素の出現にも期待が寄せられている。ちなみにメンデレーエフが他の研究者と異なった成果を得た可能性の一つは、化学会が立ち上がったばかりのロシアで彼は働いていたことである。化学会は新しい論文誌を出し、そこでは類推や大胆なアイデアを記すことも推奨されていた。一方でメンデレーエフのライバルは、その当時すでに確立されたドイツ化学会に在籍し、そこでは単なる類推の記載は推奨されなかった。またメンデレーエフは若い頃、彼を溺愛する母親が彼を大学に進学させたいとロシア全国を旅した。それでも彼自身は、母が期待する大学ではなくて、父が世話をしていた教師になる専門学校を選びそれが認められた。という体験も関係しているかもしれない。ロシアンの思案で今に至る。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 January 1, p. 2.

1.18

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光によって

 活性化されるモーター分子を使ってある種の筋肉を収縮させる系が報告された[1]。まずは繊維に入れ込んだモーターがつくられた。要請があったかどうかはともかく水溶性である。カルシウムイオンの存在下では、これらの繊維は、ほとんどが水で出来上がったマクロスケールな繊維に組織化されて紫外光に応答して収縮する。しかもそれらは、小さな重量だけれども400 mgの紙切れを持ち上げることもできる。研究者らの以前のバージョンのモーターでは、これらの分子が紫外光を受けた時には二重結合周りで異性化し回転していた。一方で今回のモーター分子が自己集合する繊維に密に詰まると、光の存在下でわずかな動きを示し繊維は曲がる。「もし分子レベルからの小さな動きを増幅出来ると、はるか遠い巨視的なレベルまで到達できる」と研究者の一人は述べている。これまで別のグループでは、高分子で共有結合的に連結した分子マシーンを使った人工の筋肉がつくられていたのに対して、ここではそのような筋肉系が、全て低分子の組合せから組み上がっている。そのモーター,もらいた〜い人もいるかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 11.

DOI: 10.1038/nchem.2887

18.1.17

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肥料の中のリンは

 水の流出に伴う土砂の流れに乗って農地から簡単に出て行ってしまう。これはクランベリー湿原でも同様である。そこでリンの流出を防ぎ、水へ入ってしまう栄養素の量を減らして、害のある藻類が、走塁はしなくても、流れ出すのを防ぐための対策が検討されてきた。研究者らは今回、灌漑用の池やクランベリー湿原の堆積物の中のリンは、硫酸アルミニウムで処置すると捕捉することができて、流れ出すことを防ぎうることを報告した[1]。まず様々な塩の池の水からリンを取り除く能力が調べられた。ある種の塩は、堆積粒子の陰電荷を中和して凝集させてリンを取り出すことができた。ただしこの過程では、残ったリンが隔離された状態で植物や藻に利用することができない。実験室での実験では、鉄やカルシウムの塩と比べて、硫酸アルミニウムは低濃度で効果的にリンにバインド(5から15 mg/L)した。クランベリー農場で、硫酸アルミニウムを使う実行可能性を試験するために15 mg/Lを、灌漑用の池と以前は湿原だったところに散布された。その結果、湿原だったところの水の浅い場所で最も効果的に作用し、水から94%のリンを取り出すことができた。一方で灌漑用では78%だった。感慨深い日も、案外近いかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 11.

DOI: 10.2134/jeq2017.04.0134

18.1.16

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遷移金属に

 基質が付加して後に脱離する可逆な二電子レドックス過程は、大抵の触媒サイクルの特徴である。ただしこの振舞いは、ランタニドやアクチニドには未だにふるまい、である。Fブロック金属も触媒として利用されているけれども、不可逆な一電子あるいは多電子酸化あるいは還元過程を示す。それに対して今回トゥールーズの研究者らは、ウラン錯体が単一金属として、遷移金属では伝統的な酸化的付加—還元的脱離を経る反応を引き起すことが報告された[1]。アゾベンゼンをウラン(III)トリアミド錯体に付加させると二量体のウラン(V)イミド錯体を与える。これは加熱すると簡単にアゾベンゼンを放出できる。構造、スペクトル、磁気的さらには計算化学研究によって、酸化・還元過程の詳細が明らかにされた。反応の最適化には至っていないものの、たとえばアニリン誘導体を導くランタニド、アクチニド触媒開発への道を開く成果である。遷移金属の同類に希土類がなった。軌道的にも考察したい。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 11.

DOI: 10.1038/s41467-017-01363-0

18.1.15

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およそ100年前

 物理学者は、雷雨の時には高エネルギー過程が起こり核反応を起こす可能性を提唱した。ただし検出技術の限界などから、これまで実験的な直接の証拠を得ることができていなかった。その中日本の研究者らは、昨年26日雷雨の日本海で、雲と地上の間の稲光を追跡した。その付近での、γ線の時間とエネルギーの相関シグナル、中性子、陽電子を含むデータを集め、γ線が引き起す光核反応を観察したと結論づけた[1]。とりわけγ線の紛れもないサインを検出したが、これは強い電場としての雷雲が高エネルギー電子を空中に浮遊する分子に誘導することで生じ、さらにそれが14N核から中性子を飛び出させ13N同位体に至っている。この同位体は不安定で崩壊し、ニュートリノ、陽電子、安定な13C核になる。また大気中の分子の中の電子の衝突で、陽電子と電子は対消滅を引き起こし、0.511 MeVの特徴的なエネルギーを持つ、我慢せずに、γ線のペアが生じる。同様の過程で14C15N同位体も発生する。これらの成果は、大気の電気現象の理解を広げ、以前には分からなかった地球上での放射性同位体の天然源を明らかにするものである。雷雨から開運へ

[1] Chemical & Engineering News, December 11/18, p. 10.

DOI: 10.1038/nature24630

18.1.14

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電気ウナギは

 電気を発生させる。この普通のうなぎではできん、電気うなぎならではの動作はイオン束によって電力をつくる特別な臓器が働くためで電池は要らない。これらの臓器の構造から研究者らは、ソフトパワー源をつくるための新しい方法を着想した。電気ウナギの臓器には、数千のイオンを別々に保持する膜でKイオンあるいはNaイオンを含むいずれかの部分が交互に含まれている。電気ウナギが充電するときには、膜がイオンの流れを促し、一挙に電力が生じる。一方研究者らはイオングラディエントのシステムをつくるために三次元プリンターを使い、NaClあるいは純水を入れたヒドロゲルを交互にいれる材料をパターン化した。異なる材料に、カチオン選択的あるはアニオン選択的なヒドロゲルをちりばめた。これらを重ねた時には、導電経路が出来上がり110Vまでの電力が生じた[1]。材料は生体適合性もあるために、インプラント医療用デバイスとしても利用しうるとのことである。それを達成するための優秀なPh.D.学生や博士研究員を募集中である。電気うなぎに促された研究、難儀を乗り越えた。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 10.

DOI: 10.1038/nature24670

18.1.13

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1990年代半ば

 ヨーロッパでは新しいタイプの貝毒で罹患する人が出始めた[1]。それはアザスピロ酸と呼ばれる海洋毒物が原因だった。が毒の構造の特定が困難で100%正解には至っていなかった。その中今回アザスピロ酸-3の鍵となる部分の立体化学が修正されて、改めて提案された構造と、その全合成の詳細に関する内容が二つの論文で発表された。正確な構造を持つアザスピロ酸への合成経路は、食物中の毒物を検出する分析法を開発する一助にもなる。2004年に96段階を経て合成された構造を標的に新しい全合成法が開発された。ただし新しく得られたアザスピロ酸-3と標準サンプルの液クロでの保持時間が異なっていた。しばし困惑して悩み、アルコール基の立体化学が2004年の構造とは違っているかもしれないと考えた。そこでC20の水酸基の立体化学を逆転させて、天然物と比較したところ保持時間が一致した。2004年の合成では、正しい天然物を導くことができていたけど19ある立体中心のうち一つの同定を間違えていた。気の毒だったけど、ここでは貝毒が正確に解読できた。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 9.

DOI: 10.1002/anie.201711006

DOI: 10.1002/anie.201711008

18.1.12

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地熱発電所では

 深い地熱の鉱脈から熱水をくみ出し、電気を発生させるとともに、塩を含んだ溶液が残る[1]。ここには数百ppmのリチウムが含まれている。そこでこの食塩水を吸着剤に通すと、塩水が地下に戻る前にリチウムイオン、すなわち現状、電池で高い需要があるイオン、を捕捉することができる。この方法は従来のような大量の酸や塩がでるような環境負荷がない。ここで使われる吸着剤は、[LiAl2(OH)6]+の層でできており、その間に塩化物イオンと水がある。構造の隙間は、追加のリチウムイオンが入り込むことはできるものの、隙間が小さすぎて「ナトリウムイオンも好き」まではならない。仮の食塩溶液を使った実験では、含まれるLiイオンの91%をキャッチし、Li, Na, Kイオンの選択性はLiがかなり高かった。今回の系は従来の吸着剤に比べて容量は小さいもののLiイオンを回収するときに酸を使う必要がない点、魅力的である。地熱法開発、知恵熱は出なかったでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 8.

DOI: 10.1021/acs.est.7b03464

18.1.11

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プラスチック

 医薬品や他のものをつくるためにアルキルアミンが利用される。ただしその製造には多大なエネルギーを必要とする。まず大気で待機している窒素ガスをハーバー・ボッシュ法でおよそ500 °Cでアンモニアに変換する。ついでアルキル基をアンモニアに導入するために、化石燃料由来の分子を使って、たくさんの廃棄物とともに有用製品がつくられる。その中今回バクテリアからアミノ酸が単離された。これにアルキル基を導入するために、エタノール、イソプロパノールや別の単純なアルコールを利用している。まずはRu触媒を使い、ついで鉄や他の豊富にある金属を触媒にしている。どちらの場合も触媒は、水素原子をアルコールからお借りして、カルボニル中間体が発生、これがアミノ酸と脱水縮合する。得られたイミン中間体は、触媒から水素を返してもらってアルキル化アミンになる。実際に鉄触媒を使って、グリシンと1-ドデカノールとから界面活性剤合成を行っている。アルキル化のスキル向上で、これで尽きるかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 7.

DOI: 10.1126/sciadv.aao6494

18.1.10

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これまでの記録を

 塗り替える多孔性材料、でも高くはないそれが、天然ガス車を実現するかもしれない[1]。メタンを燃料とする自動車は、燃費の悪いガソリン車よりもCO2の排出量が少ない。ただし高圧でガスを運搬するための高価なタンクとコンプレッサーが必要である。ある種の金属有機構造体(MOF)化合物は、ガス分子が孔の中に密に入り込むために、より低圧でメタン貯蔵が可能である。そのためMOFsは基本的に、メタン燃料車に、より安価で軽くて安全なタンクを提供しうる、ただし実際には、室温64気圧で、吸着剤1 cm3当り263 cm3のメタン貯蔵が目的であるが、それには達していない。その中今回、よくあるMOFにその能力を付与する方法が開発された。MOFの一つHKUST-11,3,5-ベンゼントリカルボン酸リンカーによって連結されたCuの交点を含む。そこでゾルゲル法でHKUST-1の塊がつくられた。研究者らはエタノール中MOFの前駆体を混合し、粒子を遠心分離し、室温で一晩乾燥させた。車のガスタンクには、この方法で作成されたMOF60 Kgほど必要であると推定されているが、連続フロー系を適用することで数百グラムのHKUST-1が製造できる。名探偵もびっくりのメタン貯蔵力である。

[1] Chemical & Engineering News, 2017 December 11/18, p. 6.

DOI: 10.1038/nmat5050

18.1.9

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注文もしないのに

 攻め続けてくるファースト・オーダー[1]。多大な犠牲を払いながらもスター・デストロイヤーを撃破できた。とは言え圧倒的な攻撃力を持つオーダーにはほとんど歯が立たない。主力艦船がレジスタンスの艦船の居場所を追跡している。この探知機を壊すためにそのコードを読み取る男がいるという星に、フィン、ローズとBB-8が入る。豪華絢爛なその場は、武器の売買で大もうけした人たちの歓楽の星だった。うさん臭そうな、でもコードを読み取ることができる男を見つけてオーダーの艦船に潜入した。が作戦がほぼ完了する前に失敗に終わった。その間レジスタンスへの攻撃は続く。ジェダイ・マスターであるルークに助けを求めたレイ。ルークに用だの、ヨーダの言葉「今持っている全てを伝えよ、失敗も伝えよ、失敗こそ最高の師」がルークを蘇らせた。フォースが強くなるレイ、ダースベーダーにならんとするレンとの間で、遠隔ダイアローグ。誘いにのって主力艦船に入ったものの最高指導者スノークに遊ばれるレイ。その時、奇跡が起きた。「新しい世界を一緒につくろう」が新たなダークサイド誕生を予感させた。たくさんの仲間や友を失いつつ、逃げるレジスタンス。スタンスが難しい。諦めるか希望を持ち続けるか。反乱軍の再整備に不安を話すレイ。レイヤ・オーガナ最後の言葉:We have everything we need.

[1] スター・ウォーズ/最後のジェダイ

18.1.8

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ミツバチ、受粉媒介者

 として十分に働いているものの、正当に評価されていないヒーローの類である[1]。狩猟採取、花粉収集、蜜の生産、さらには受粉の媒介で、多くの人が食する食べ物を生産している。ハチは通常、はちゃけている訳ではなくて、養蜂業者が世話し移動するために、センチネル種としては働かないと思われるかもしれない。それでもハチが生産する蜜の中の残留物によって、価値のあるセンチネルである。

 ミツバチや、マルハナバチ、オオカバマダラのような他のハチは、生息地が失われることや、農業用殺虫剤などの危険からの脅威にさらされている。とりわけ穀物に被害を与える虫を殺すネオニコチノイドが、ハチの神経系に思わぬ効果をもたらし、最近のハチの数の激減の主な要因の一つであると疑われている。ネオニコチノイドに被爆するとミツバチの嗅覚学習、記憶、ナビゲーションに影響し、狩猟採集の効率を低下させ、人への食べ物供給、品質、コストへも影響する。脊椎動物へのネオニコチノイドの影響についての新しい研究は、ある種の免疫機能の低下を示すものの、ハチや別の昆虫に対するネオニコチノイドの問題が、人の健康問題と同様かは定かではない。マイクロセンシングデバイスをハチの背中に装着し、個別のハチを同定してその巣の周りでの動きをモニターし、受粉の能力の分析で、ハチの健康をモニターすることが始められている。

 なお最近の研究では、世界中から集められたおよそ200のハチミツのサンプルの75%には、五つの主なネオニコチノドのうち少なくとも一つがわずかに検出されて、45%は二つあるいはそれ以上を含んでいた[2]。測定された濃度は、EUで人に使用する際の残留レベルよりは低かったが、およそ1/3はハチを害するのに十分な濃度だった[2]

[1] 20171228日からのシリーズ「Meet the sentinel」最終回

[2] DOI: 10.1126/science. aan3684

18.1.7

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カリブー:北極の環境森林警備隊員

 カリブーやその亜種であるトナカイは、仲がいいかはともかく、身体の大きさと群れが北極周辺を移動することからセンチネルとして適している[1]。夏には草を食べて、長い冬にはむしろ地衣類を食べる。さらに大気から様々な残留物を取込み、それらを身体に溜め込む。またかなり北に棲む人たちはカリブーを食すために、北極の先住民に頼りながら、年間の狩猟から得たサンプルを集める。センチネルとしてカリブーは、核兵器実験から漏れ出す137Csのような放射性残留物に関する最も長い期間のデータ取得にも貢献している。放射性同位体のモニタリングは、1986年にウクライナ核反応器の事故、さらには2011年の福島の反応器の事故の後、重要性が増している。カリブーに加えて、ホッキョクグマ、アザラシ、イルカ、鯨は重要なほ乳類センチネルである。ホッキョクグマは、海洋食物連鎖の上にいるために、地球のエコシステムでは登場しない、分解しない汚染物質を蓄積する。ただしクマは冬には拡散するために、くまなく探すことが難しく、長期間の研究をする機会がほとんどない。一方アザラシは、たとえばサンフランシスコ湾のような河口に、年間を通して暮らすために、難燃剤や水銀を追跡するのに有用である。

[1] 20171227日からのシリーズ「Meet the sentinel」第十一回

18.1.6

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地衣類:大気の質の指針

 地衣類は、藻あるいはシアノバクテリアとヒューズした菌類からできた複合生命体であり様々な色と大きさのものがいる[1]。いくつかは植物のように見えて、葉っぱのような形あるいは落葉した枝のような形あるいは、はげたペンキのような片である。ただしそれらは根なしで、代わりに木、岩、コンクリートで育ち、霧、風、雨から栄養を吸収する。地衣類は特別な防衛システムを持たないために、残留物も簡単に吸収し、汚染が拡大した時に最も先に死に至る生命体であることから、大気の質に対する、裁量はないものの、最良のセンチネルである。1860年代パリの植物化学者が、空気がきれいなところでは地衣類が元気に育ち、空気が汚染されている地域ではその逆であることを発見して以来、大気汚染のホットスポットを同定するのに使われている。初期の頃の調査は、石炭燃焼由来の二酸化硫黄の効果に注目されていたが、その後、地衣類が二酸化硫黄や他の工場排出物の広い地域での移動に伴う酸性雨の地域への影響のよいメーターになってきた。地衣類は、肥料が使われている農業地域から出るアンモニアや硝酸塩にも繊細で、発電所から出る水銀、鉱山製錬所からの鉛や亜鉛も蓄積する。1980年代、米国農務省林野部が、地衣類のバイオモニタリングを行い、米国内の数千のスポットでの地衣類の広がりや量について調査し、汚染物質の特定や規制を見直す一助にもなっている。

[1] 20171227日からのシリーズ「Meet the sentinel」第十回

18.1.5

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湖に生息するマスは

 誰も言わないかもしれないけど、イワナ属の最大のメンバーであり、北米の上流部、深くて冷たい湖の食物網のトップに位置する[1]。釣り人によって捕獲されても20年以上も生きて、体脂肪も増えて体長60cm、体重10 kgにまでなることもある。育った環境の中で汚染物を蓄積することから、先の全ての特性がバイオモニタリングには最適である。

 世界で最も大きな淡水システムである五大湖では、マスは40年以上も環境保護庁によって厳重にチェックされている。1970年代にモニタリングが始まった時には、2001スットクホルム条約でリストに挙げられた残留性有機汚染化合物に注目されていた。これらの認識できる化合物は今では生産と使用が禁止されていて、それには殺虫剤であるDDTやリンデンにPCBsが含まれる。関心のある大抵の化合物の、マスでのレベルはかなり低下していることは世界的な規制の効果を示しているものの、それらのいくつかは今も簡単に検出できるレベルであり有害な濃度である。過去15年間の間に、汚れにくくて、撥水性で、焦げ付かない特性を持つフッ素化合物や、ポリ臭素化ジフェニルエーテル難燃剤のような新しい化合物がモニタリングに含まれるようになった。マスからのデータと世界中の他の魚からのデータをあわせると、環境中での化合物の評価や危機管理規制措置の効果を測定する一助になり得る。

 ちなみにマスは、平衡石と呼ばれる耳の骨で、年齢が分かりマス。あたかも樹木の年輪のように。

[1] 20171227日からのシリーズ「Meet the sentinel」第九回

18.1.4

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セグロカモメ

 科学者が、環境中に拡散した化合物で最も課題の大きいものをモニターしようとした時に、鳥が注目された[1]。例えばセグロカモメは、センチネルとして、米国とカナダの五大湖領域の汚染のデータを提供してくれていた。サンプルとして鳥を集めたものの、最初はその卵が注目されていた。さらに大きなクチバシを持つウミガラス、北のフルマカモメ、黒い脚のミツユビカモメ、シロカモメやクロウミバトのような北極にいる海鳥も注目された。さらにバルト海に棲むウミワシもである。どの種を対象に選ぶかは、鳥たちが棲む遠く離れた場所にアクセスできるかと、種の間のデータの比較ができるかに依存している。さらに残溜物の傾向を追跡することに加えて、気候変動や侵入生物種に依存した鳥たちの餌の変化もみる必要もある。

 鳥たちから得られた最も顕著な成果は、DDT、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)、ダイオキシンのような汚染物質の濃度が研究されたことで、1970年から1980年代にそれらが禁止されたり、規制されたりしたことで、その濃度が低下した。より最近では1975年から2003年に臭素化難燃剤の濃度が急激に上昇したが、産業界がそれらを代替物に置換えた頃から、臭素化物が収束し始め、素早い減少が見られた。長鎖のフッ素化アルキル化合物は1975年から2009年に増加、2008年に企業がそれらを使わないようにすることに同意したあと減少し始めている。1975年から1993年には、海鳥の卵の中の水銀量が増えたがその後頭打ちになっている。何通りもの鳥たちが登場した。

[1] 20171227日からのシリーズ「Meet the sentinel」第八回

18.1.3

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海岸の番犬イガイ

 1960年代、塩素化殺虫剤、水銀、石油由来の炭化水素が、沿岸海岸や河口への脅威になりつつあった[1]。そこで異なる地域で異なる動物で汚染問題の深刻さの調査が試みられた。すなわちチェサピーク湾の魚、ニューイングランドのロブスター、フロリダのカニ、カリフォルニアとアラスカの異なるカニの種である。ただしこれらの全く異なる種の習慣、ライフスタイル、食物網、代謝の違いが、相対的な結果を不確かなものにしてしまった。そこでより広範な調査が必要とされたが、経費も課題もあって1975年海岸で、イガイ観察による難分解性の有機汚染物や重原子をモニターすることが提案された。イガイは、海と淡水のどちらの種も、牡蠣やハマグリと同様に、大概の場所にいて、汚染のモニターには最適であった。さらに海のイガイは河口で商業的に育てられていて遠い場所へ運ぶこともあった。海のイガイは海洋プランクトンを餌として粘液のある繊毛のえらを通して吸い取りろ過して得ている。大抵の動物のように、PCBsや炭化水素のような汚染物を代謝するのに必要な酵素能力がないために、周りの海水から汚染物を濃縮させる傾向にあった。現在この方法は世界に拡大されて、人の健康リスクも評価も行われている。ちなみにDDTのような汚染物の濃度は、西海岸では着実に減少している一方で、東海岸の濃度はそのおよそ二倍で最近はほぼ一定である。

[1] 20171227日からのシリーズ「Meet the sentinel」第七回

18.1.2

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ミジンコ属:頼りがいのある淡水プランクトンII

 最も最近のゲノム技術でDNARNAの配列を決定し、長い年月をかけたミジンコにおける遺伝子発現が如何に変化したかが追跡されている[1]。これによって、ミジンコの異なる世代が、自然あるいは人間が引き起した、窒素やリン肥料の変化、環境への化合物の流入、気候変動にどのように順応しているかを比べることもできる。これらの結果から、存在する化合物と新しい化合物の、別の動物や植物さらには人間への毒性を類推することも可能になる。ミネソタ湖のミジンコが、1965年に販売された殺虫剤であるクロロピリフォスに暴露された影響が解析された。その結果、産業革命前(1301-1646)に生まれた甲殻類のサンプルは、殺虫剤が使われ始めた時(1967-1977)に生まれたサンプルよりも、クロロピリフォスに対して可動性レベルの点において2.7倍繊細であった。これらの結果は、この生き物は、クロロピリフォスに対するある種の耐性の体制があったことを示していた。さらにクロロピリフォスが湖にはない最近(2007-2011年)のミジンコではこの耐性は失われたようである[2]

 ちなみにミジンコの遺伝子はおよそ31000、一方で人の遺伝子は20000ほどしかでんし、とのことである。

[1] 20171227日からのシリーズ「Meet the sentinel」第六回

[2] DOI: 10.1007/s10646-014-1397-1

18.1.1

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