« 2018年3月 | トップページ | 2018年5月 »

2018年4月

グラム陰性細菌感染は

 病原菌に余分な膜があって、その抵抗性のために、抗生物質が、これを通り抜けることが難しい。この難儀な病原菌を殺すために、研究者らはシデロマイシンと呼ばれる薬物複合体を改良した[1]。この複合体は通常親鉄剤と抗生物質とのコンビである。それに対して今回は、親鉄剤とセファロスポリンとオキサゾリジノンが組み合わさっている。親鉄剤は病原菌を捕捉してコンビに渡す。病原菌は、セファロスポリンリンカーをβラクタマーゼ酵素で崩壊させるが、そこでオキサゾリジノンも放出される。酵素は抗生物質から病原菌を保護する役目もあるが、先の過程で破壊されたために作用しない。オキサゾリジノンは通常、グラム陽性菌に対してのみしか作用しないが、陰性菌でも、その防護システムが崩壊すると効果を発揮できる。今回の成果では、親鉄剤の驚くべき輸送能力が示されていること、病原性と関連する酵素と抗生物質の耐性がどのように関連しているかも明らかにされている。素速いトロイの木馬である。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 9, p. 14.

DOI: 10.1021/acs.jmedchem.8b00218

18.4.30

| | コメント (0)

ノスカピンは

 1960年代より使われている風邪薬である。前臨床試験は、それは比較的副作用も小さくて、ガン細胞も死滅させることも示していた。ただしそれはケシ植物から得られるが、それはけしからん。ケシからはモルヒネも得られるために保護が必要である。ノスカピンの化学合成は段階が多すぎて実際的ではない。そこでより良い方法を提供すべく研究者らは、25の植物、バクテリア、哺乳類の遺伝子、六つの改変したイースト菌の遺伝子で、イーストを遺伝子工学で操作した[1]。七つの遺伝子は、酵素がイーストの小胞体膜に入るためであり、これによって折り重なり、適正に作用するが、最も難易度の高い段階だった。このイースト法を実用化するには、2から3のオーダーでノスカピン製造を達成する必要があるが、大スケールのバイオ反応容器に移すことで100倍程度にできると信じられている。イーストは通常グルコースを食べるが、代わりにチロシンを与えると、ノスカピン前駆体であるレチクリン誘導体が得られ、これも医薬品候補である。このイースト、いい〜すと思います。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 9, p. 12.

DOI: 10.1073/pnas.1721469115

18.4.29

| | コメント (0)

二種類の触媒を使った

 Minisci型反応で、N-アシル-α-アミノアルキルラジカルを含窒素に付加させる反応が開発された[1]。これによって環に直結した炭素上にキラル中心をエナンチオ選択的に導入できる。含窒素複素環に付加するα-アミノラジカルは、アミン、チオエーテル、ヨウ化アリールなど幅広い他の官能基を許容し、得られた生成物は医薬品として望まれる構造上の特徴を有している。反応は反応混合物に青色LEDを照射し、キラル酸触媒が複素環を活性化、イリジウム光触媒が電子移動を引起こしラジカルが生成し、最終生成物に至る。この成果は、機構的には複雑であるが、高いレベルで鏡像体過剰率の制御が達成されている。しかも入手容易なアミノ酸と複素環を出発化合物とする手順の簡便さが反応系を魅力的なものにしている。「新進気鋭の化学者の登場でもある」と期待も膨らみ、会いにも行きたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 9, p. 12.

DOI: 10.1126/science.aar6376

18.4.28

| | コメント (0)

窒素ガスは

 大気から地上のエコシステムに入ると想定されていて、実質、地質学的な資源から入ることは想定されていない。ただし地質学者は以前より堆積岩は様々な濃度で窒素を含みそれらの多くは有機体が利用できることを知っていた。地質構造の劇的な変化や物理的・化学的気候変動を通してこれらの含窒素化合物が、他の栄養素と同様に土壌に入り込むことができる。今回の新しい論文では、物理的・化学的気候変動のモデルを使って、岩が年間11から18テラグラムの栄養素を土壌に放出していることを予測した[1]。工業時代より以前は年間およそ100テラグラムの窒素の交換が土地と大気の間で行われていた。研究者は、岩を窒素サイクルに加えると、気候変動予測がある程度変化することを期待している。植物は現在、人が放出する二酸化炭素のおよそ30%を吸収している。ただし植物は、生体分子をつくるために栄養素として窒素を必要とするため、どの程度の窒素にアクセスできるかが鍵である。もしCO2が多い環境下でも、より多くの窒素が期待できれば、現在考えている植物成長の限界が、それほど大きくない可能性もある。ただしそれに対する懐疑的なコメント記載されていた。岩について言わずもがな。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 9, p. 10.

DOI: 10.1126/science.aan4399

18.4.27

| | コメント (0)

脳卒中

 しょっちゅう起こってはいけない。起きた場合には、脳への血液供給が突然失われるために、少しでも早期の緊急処置が必要である。ただしこの可能性が消えた後には医師ができることはほとんどなくなってしまう。損傷を受けたニューロンは、患者の認知能力や運動技能を損なわせる。それでもリハリビによって、シナプス可塑性と呼ばれる脳の回路を書き変える能力が働き得る。今回低分子であるエドネリピックマレイン酸塩を、運動と組合せて使うと、失われた運動技能の回復を促進できることが、ネズミや猿で報告された。研究を行ってきた会社では、その化合物についてアルツハイマー病の治療薬としてフェーズI/IIの試験を行なっていたが、それは安全であるものの有効性がなかった。それでも化合物がニューロンを保護できることから、脳卒中の後の損傷から回復できる可能性を試験することが決められた。実際、脳損傷を受けた2歳のオスネズミと5歳のマカクザルで、リハビリと化合物の服用の組合せが、器用に作用し、有効であることがわかった。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 9, p. 10.

DOI:10.1126/science.aao2300

18.4.26

| | コメント (0)

ヘリウムは

 最も軽い気体であり、風船を空高く保持することができる。さらに多くの技術がこの元素を頼りにしている。例えば冷却剤、不活性ガス雰囲気をつくる、超伝導マグネットなどである。今回の研究成果は、ヘリウムが反発する元素同士の間を取り持つことができることも示していた[1]。国際的な共同研究チームが、理論モデルを開発し、それによっていくつかのヘリウム化合物が、惑星の内部のような相当圧力の高い状態で、通常ならば不安定にも関わらず、安定に存在することを説明している。カチオンAとアニオンBの数が異なるA2Bのようなイオン化合物に高圧をかけて無理矢理一緒にした時には、通常反発し不安定化する。その状態でヘリウムが異なる元素の間に入り込むと、長距離のクーロン相互作用が、苦労んもせずに変化し、化合物が安定化する。モデルでは、最近見出されたヘリウム−ナトリウムが高圧で安定な点についても説明しうる。さらに今後地球のマントル近くに眠っとる別の化合物の中にもヘリウムが見つかる可能性も示唆された。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 2, p. 11.

DOI: 10.1038/s41467-018-03284-y


18.4.25

| | コメント (0)

新しいタイプの

 抗生物質候補が発見されたと広報された[1]。それはメチシリン耐性菌(MRSA)や慢性感染症に関連する休眠状態のバクテリアに対して作用しうる。研究者らは低分子ライブラリーから線虫の一種であるシノラブディス・エレガンスを死滅させるMRSAの能力を低下させる分子を選別した。すなわちCD437CD1530として知られている二つの合成レチノイドが抗生物質候補として特定された。これらの化合物と一緒に二時間培養させるとMRSAMW2は検出限界以下に減少した。さらにバクテリアを高濃度のレチノイドにさらすと突然変異で生き残るはずのMW2は全く見られなかった。CD437の抑制の限界濃度以下の条件でMW2100日間成長させた後でも二倍程度の増加であり、従来のシプロフロキサシンが256倍であるのとは対照的である。すなわち今回のレチノイドは、それ自身あるいは他の抗生物質であるゲンタマイシンとの組合せで、しつこいMRSA細胞を退治できる。そこではレチノイドはバクテリアの膜脂質の二重層を壊し、ゲンタマイシンはおそらく細胞の中に拡散してダメージを与えるというイメージである。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 2, p. 11.

DOI: 10.1038/nature26157

18.4.24

| | コメント (0)

反応を促進させるために

 触媒的なブレンステッド酸は、プロトンをたくみに使って分子中の結合を活性化する。これらの有機触媒は、様々な反応で、愛想の良いヘテロ原子を含む結合に出会うと、威力を発揮する。一方で、遷移金属触媒がほとんど独壇場である不活性なアルケンの誘惑は難しかった。その中マックスプランクの研究者らは、高い酸性度のイミドジホスホリイミデート(IDPi)を骨格に持つブレンステッド酸を設計することによってこの課題を克服した[1]。反応は水酸基を有する1,1-二置換のアルケンに適用された。基質は触媒の中の酵素のようなポケットで、ポケッ〜としていると、この立体化学が規定されたキャビティで環化反応が促進され、テトラヒドロフランやテトラヒドロピランが高い鏡像体過剰率で導かれる。さらに研究者らは、収率や選択性はわずかに低いものの、分子間反応の例も示した。それでもこれはアルケンの最初のヒドロ官能基化である可能性が高い。酸性度制御の制度が大切である。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 2, p. 10.

DOI: 10.1126/science.aaq0445

18.4.23

| | コメント (0)

世界で最も長い動物の中に

 殺虫剤としての可能性がかなり高いペプチドが発見された[1]。スウェーデンの西海岸の海底からウプサラ大学の研究者らは、ブーツの靴ひものようなミミズを集めた。その長さは50 mにも達する。それを刺激すると三つの新規なペプチドを含む粘液を放出する。研究者らは、それらの一つの配列を明らかにしネメルチドα-1と名付けた。さらに化学的なペプチド合成で十分な量を確保した。ネメルチドα-1の溶液中でのNMRの構造は、阻害剤である、三つのスルフィドを含むペプチドであるシスチンの回りに折り畳まれていることを示していた。カニやゴキブリにわずかな量を注入したところ麻痺して死に至った。ネメルチドα-1は、神経細胞でナトリウムチャンネルの不活性化を抑制することで作用し、チャンネルがいつも開いた状態で寝る暇もなく、これが活動過剰を引き起こし、その後筋弛緩を経て麻痺する。しかもそれは、ネズミや人のナトリウムチャンネルよりも昆虫のそこのほうが100ほど強く作用していた。ネメルチドの知名度が上がりそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 2, p. 10.

DOI: 10.1038/s41598-018-22305-w

18.4.22

| | コメント (0)

α-アマニチンは

 シロタマゴテングダケによって生産される双環性のオクタペプチドで、史上最悪のペプチド毒の一つである。一方でこれを抗体医薬として利用するための探索も行われていた。その中今回実際的な合成法がなかったα-アマニチンの新しい合成法が開発された[1]。ここでは以下の三つの課題の解決がポイントだった。まずはオキシインドールに容易に変換されてしまうデリケートな6-ヒドロキシトリプトチオニンの交差連結の合成で、ここではボロン酸エステルをトリプトファンに組込むことによって達成し、フッ化環化反応の後にそれを除去した。二番目は(2S,3R,4R)-4,5-ジヒドロキシイソロイシン基のエナンチオ選択的な合成で、ここはStreckerアミノ酸反応を使って克服している。最後は正しい立体化学を有するスルホキシドの合成で、嵩高い酸化剤と適切な溶媒選択で達成している。ただしスルホニル基は毒の活性には影響がないものの、それは化合物の空気酸化を抑制している。今後は抗体医薬への展開を見据えている。先はテングだけが知ってんぐ。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April 2, p. 7.

DOI:10.1021/jacs.7b12698

18.4.21

| | コメント (0)

共有結合性有機構造体(COF)をもとにした

 新しいフィルター膜が、薬物を含む廃水を浄化しうることが報告された[1]。医薬品はしばしば下水に流される。廃水処理プラントでは、水を環境中に戻す前にこれらを取り除く必要がある。もしこれらが環境中に広がると、耐性菌の拡大や、水性動物の成長を妨げる恐れもある。COFは、低分子有機素材が共有結合的に連結した結晶性の多孔性ネットワークである。COFの孔の大きさが調整できるため、水ろ過の候補になった。研究者らは、イミンをもとにしたCOF-LZU1に注目、その直径は1.8 nmであり、大抵の医薬品分子が1.8 nm以上であるため、それらをブロックできると考えた。COFを使ったフィルターをつくるために、多孔性セラミックアルミナチューブを担持体に採用、ついでこれを3-アミノプロピルトリエトキシシランと1,3,5-トリホルミルベンゼン(TFB)で官能基化した。これらの修飾によってTFBとパラフェニレンジアミンを縮合することでCOFを担持体の上で直接成長させることができる。仕上がったCOF層は400 nmの厚さだった。その性能を、異なる染料が含まれる水で試験された。サイズが2.36 X 1.74 nmのメチルブルーの99.2%はブロックできたが、1.13 X 0.42 nmのメチルオレンジは30%以下しかブロックできなかった。COFで興奮しましたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 April, 2, p. 7.

DOI: 10.1002/anie.201802276

18.4.20

| | コメント (0)

米国で生産される

 トウモロコシのおよそ40%は、バイオエタノールを製造するのに使われている。工業プラントがトウモロコシを粒にして、燃料を製造したり、あるいはコーンシロップのような食品を製造する場合でも、高いレベルでのリンを含む副生成物が生じて、それらの一部は廃水処理施設に流れる。リンや窒素のような栄養素は、これらの処理プラントに残り。水に流されていき、結果としてメキシコ湾の水に混じる。そこでは酸欠海域が生まれてしまう。そこで粋のいいイリノイ大学の研究者らは、このトウモロコシプラントから出る副生成物から、栄養素であるリンを回収するのがえいようと、実験を行った。すなわちカルシウムを加え、溶液のpHを変化させることで、数分以内に、有機あるいは無機リン化合物を沈澱させることができた。次の段階としては、回収できたリン化合物の価値を分析し、それらが肥料や動物のサプリメントへのアプリケーションも可能かどうかを判定する必要がある。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 26, p. 10.

18.4.19

| | コメント (0)

最も高い導電性を示す

 有機ラジカルポリマーが報告された[1]。共役ポリマーでは骨格全体にある非局在化できる結合を通して電荷が行き来するが、非共役ラジカルポリマーでは、ポリマー骨格からペンダントのように、ぶら下がる局在化したラジカル部位の間で電荷が動く。その結果、ラジカルポリマーは通常、共役系ポリマーほど導電性は高くない。それに対して今回のそれは共役系ポリマーに匹敵する導電性を示し、ディスプレイやバッテリーへの応用も見据えることができる系である。ポリ4-グリシシジロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(PTEO)は、柔軟なエーテル骨格とペンダントであるニトロキシドラジカルで特徴づけられる。フィルムにしたそれはそれほどの導電性を示さなかったが、80 °Cまで加熱し室温まで冷却したところ、ポリマー骨格が曲がり、ニトロキシド基が会合、材料全体で導電経路が形成された。この配列によってこれまでのラジカルポリマーの1000倍の導電性が付与されている。ペンダント型、ヘンダじゃなくて、ダントツだった。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 26, p. 10.

DOI: 10.1126/science.aao7287

18.4.18

| | コメント (0)

食べ物に煙を

 注ぐとおいしい香味になる。ただしこの美味が微妙で、これによってわずかな量の発がん性化合物を食べることにもなり得る。ACSの学会で研究者らは、微小孔のあるアルミノシリケートでつくるゼオライトフィルターを使うと、煙の中にある発がん性多環芳香族炭化水素(PAH)を最大で93%削減できることを報告した[1]。研究者らは、斜プチロル沸石と呼ばれる天然にあるゼオライトを使い、食べ物に入れ込む前に、オーク・ウッドから多く出る煙をろ過した。その結果、加熱によりゼオライトを活性化し、煙と接触する面を最大にするために微粉末にすると、ろ過は高い効率を示した。ゼオライトは主に、人の発がん性物質として分類されているPAHの一つであるベンゾ[a]ピレンを軽減できている。12人の味利きに、薫製の鳥と薫製のトマトフレークの味を、試してもらった。その結果、ろ過した方は、よりバランスのとれた味で、たき火臭やディーゼル臭が低下していた。その薫製、ぼくにもくんせい。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 26, p. 9.

18.4.17

| | コメント (0)

炭素—炭素結合を形成・切断できる

 酵素は引く手あまたの生触媒である。その中今回、ミルクから来る最も豊富なタンパク質であるβ-ラクトグロブリンが、α,β-不飽和アルデヒドのレトロアルドール反応を触媒することが報告された[1]。このミルクタンパク質はすでにアルドール縮合反応を触媒することが同じ研究者らによって明らかにされていた。さらに別のグループが設計したレトロアルドラーゼと活性部位が類似であったことから、レトロアルドール活性もあることを類推していた。実際酵素は疎水性のフェニル基やナフチル基を有する場合に高いパフォ—マンスを示すことから、親水性の基質で高効率な反応性を示す酵素と相補的に利用できる。現状では触媒回転数が低いものの、乳製品製造工場では毎日多くの乳清が廃棄されていることから生触媒として容易に利用できるために、さらに他の反応触媒としての探索の価値もある。魅力的なミルク由来の酵素である。中身も濃そうかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 19, p. 9.

DOI: 10.1039/c8ob00139a

18.4.16

| | コメント (0)

初めてのエンジイン

 天然物が1985年に発見されて以来、数十種類のそれらに科学者は魅了されている。化合物が有する抗がん活性は、高反応性を示す二つの三重結合で挟まれた二重結合に起因する。それが独自の機構でゲノムのDNAを解裂あるいは交差共役させる。一部のエンジインは医薬品として承認されて一部は臨床試験の段階である。それらをバクテリアは、ポリケチド合成酵素によって直接生産できるよくあるエンジインであるβ-ヒドロキシヘキサエンを修飾する多段階反応を経て生合成する。ただし反応経路の詳細はわからないままだった。その中研究者らは、ジネミシンAの二つの部位であるアントラキノン部位とエンジイン部位が、β-ヒドロキシヘキサエンから独立して合成されて、その後組合わされることを示した[1]。さらにヨードアントラセン誘導体がアントラキノン成分に至る鍵中間体であることも同定された。この成果は、エンジインの大量合成のためのよりよい経路を提供するエンジンにもなり得る。じ〜んときましたか。園児ならずとも難しいけど

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 19, p. 8.

DOI: 10.1002/anie.201802036

18.4.15

| | コメント (0)

ケレスは

 月のおよそ1/4の直径で、火星のまわりの小惑星帯にあって、太陽系の中では最も大きな準惑星である。研究者らはこのケレスの表面の炭酸塩の地図を作成した[1]。その結果、炭酸マグネシウムとカルシウムが準惑星のほとんどを覆っているものの、クレーターをつくるキロメールサイズの領域が、くれ〜た〜情報はNa2CO3のような炭酸ナトリウムも含んでいる可能性があることを示していた。ケレスで水和ならびに無水炭酸ナトリウムが同定された最初である。ここで水和炭酸ナトリウムが形成されるふたつの経路が提唱されている。準惑星には表面下に大洋があって、そこからの塩が、地殻の裂け目からしみだしてくる可能性、あるいは隕石の衝撃で表面下にある凍った塩をとかした可能性である。どちらにしても塩のなかのイオンが、水が凍ったり蒸発する間に炭酸塩を形成しうる。また水和炭酸塩は数百万年をかけて真空中で水を失っていくが、これは最近も進行していることが類推された。ケレスで起こっていること、オッケーれすか?

[1] Chemical & Engineering News, 2018, March 19, p. 5.

DOI: 10.1126/sciadv.1701645

18.4.14

| | コメント (0)

2015年の

 春と夏に研究者らは、アイルランド海に流れる英国北西部にある10の川の40カ所から堆積物のサンプルを採取した、その後退席したわけではなくて、堆積物の中のミクロプラスチックのサイズと形、組成が決定された。さらにそれらが海水の中で浮かび上がるかどうかの試験も行い、それらは大洋を経て簡単に移動できることもわかった。2015年冬、マンチェスターでは記録的な洪水が起きた。そこで春と夏に堆積物を採取した場所に再び出向き同じ分析を行った。その結果、洪水の後ミクロプラスチックの量がかなり減少していることもわかり、170億個の浮遊するそれが大洋に流れ出していることが推定できた。マンチェスターで見つかったミクロプラスチック片のおよそ半分は30 μmよりも小さく、それらを集める研究のためのネットを通過しうるサイズでもある。しかも一回の洪水で世界の大洋にあると考えられている48500億個の粒子の0.5%が流れ出したことになる。このことから現在のモデルは世界の大洋にあるミクロプラスチックの濃度を低く見積りすぎている可能性がある。大洋のこと、痛いよう。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 19, p. 5.

DOI:10.1038/s41561-018-0080-1

18.4.13

| | コメント (0)

本年3月4日

 かつてロシアの二重スパイだった人と彼の娘が毒殺されようとした[1]。その時に使われたガスが、冷戦時代にソビエトで開発されたNovichok剤として知られる化合物の一つであることがわかった。Novichok剤はサリンやVXに似た有機リン化合物であり、酵素であるアセチルコリネステラーゼを抑制、生化学的な停滞を引き起こし神経系が損なわれる。ロシアの化学兵器プログラム年代記に関する書籍によれば、1970年代初め頃から1990年代初めころまで、新しい化合物兵器探索としてFoliantプログラムがソ連で展開されていた。このプログラムの目的は、化学的な防御では止めることができないが、取扱う場合はより安全で通常の分析方法では検出できない神経ガスの製造であった。これを達成するために、散布される直前に化学兵器を製造できる単純で比較的無害の二成分剤が開発されていた。実際VRと呼ばれるVXの構造異性体である33の基質が使われて、そのコードネームがNovichokで、ロシア語で「新人」を意味する。さらにプログラムではA-230A-232A-234を含むサリンやソマンの様なリン—酸素—フッ素を基にした化合物も開発されていた。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 19, p. 3.

18.4.12

| | コメント (0)

ビルマニシキヘビから

 得られるカテリシジンと呼ばれるペプチドは、ネズミの細菌感染に対応できることがわかった[1]。カテリシジンは、詩人ではないけど、免疫系のペプチドで、動物を微生物感染から保護できる。大抵は人や他の哺乳類から単離されて、抗菌薬として活性試験が行われているもののその安定性や活性の持続性が限定的であった。より良い薬候補の探索の中、生医学、ゲノムデーターベースから六つの新規なカテリシジンが見つかり、それがビルマニシキヘビ由来だった。昼間かどうかはともかく、ペプチド合成装置でこれらのカテリシジンを合成、その活性試験が行われた。その結果、CATHPb1と呼ばれるそれが、哺乳類から得られる類似のペプチドよりも、ネズミの血清の中で安定かつ活性も持続した。CATHPb1は、メチシリンやバンコマイシン耐性感染の前日あるいは4時間後に投与すると、それらの感染を軽減できた。毒性も示さずプロテアーゼ分解も受けないことから、経口投与も可能である、蛍光灯の下でなくても。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 12, p. 15.

DOI: 10.1021/acs. jmedchem.8b00036

18.4.11

| | コメント (0)

1889年ゴッホが

 描いたひまわりには、色落ちする傾向のある黄鉛顔料が使われている。今回その数と配置が分析された[1]。誰かが応援しているかはともかく、黄鉛顔料は無機染料の一種である。耐光性のあるそれはPbCrO4を含む。光に敏感な黄鉛顔料は、光の影響で、黒ずんでくるがCrO4-SO42-に置換えられる。光に敏感な別のタイプのものは、違った量の硫酸塩を含む。研究者らの分析の結果は、より暗い黄色の花、明るい花、さらには背景に黄鉛顔料があることを示し、別の染料と混合されている部分もあった。耐光性黄鉛顔料はオレンジ—イエローである。一方で光に繊細なサブタイプの顔料は、分析した画の表面のおよそ1/3で見つかり明るい黄色領域になっていた。さらに二つのサブタイプや、黄色と他の染料が複雑に混合した重なる層の可視化にも成功している。今回の成果は、画を保存するときに、どの部分がより劣化しやすいかを判断する場合や、芸術歴史家がゴッホの使ったオリジナルな色をデジタル再構成するときの一助になる。ゴッホの絵からいただいたごっ褒美である。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 12, p. 15.

DOI: 10.1002/anie.201713293

18.4.10

| | コメント (0)

ニュージーランドの洞窟

 退屈どころか、ここにいるユニークなツチボタルが、天井や木の枝に点在し、不気味な青緑色の光を放ち、旅行者を引きつけている[1]。この異彩である光の一切が調べられた。その結果、蛍や他の生物発光する生き物と同様に、ツチボタルの光もルシフェリンと呼ばれる低分子の酸化によって生じ、この反応はルシフェリン酵素によって触媒されている。ただしこの生き物独自のルシフェリンを同定することは容易ではなかった。研究者らは分析に十分な材料を集めて、クロマトグラフィー、質量分析さらにはNMRスペクトルで解析を行った。すなわち単離したルシフェリンから二種類の前駆体であるキサンツレン酸とチロシンが発光に関わること、またこの前駆体の組合せはニュージーランドのツチボタル以外では見られていないこともわかった。そこで現在それらからつくられるルシフェリンそのものの構造同定が行われていて、生物発光を使った疾病追跡へ応用することも目論まれている。ツチボタルの発光のツボに至る。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 12, p. 14.

DOI: 10.1038/s41598-018-21298-w

18.4.9

| | コメント (0)

炭素—炭素単結合は

 最もなじみのある共有結合であり通常その長さは1.54 Åである。この長さを嵩高い置換基を使うと引き伸ばすことができるという新しい実験成果が報告された [1]。研究者らはまず、かなりひずみの高い部位と二つのスピロ環ユニットを持つ安定なジヒドロピラシレン化合物を設計した。そこでは二つのスピロ環が向き合い中心の炭素—炭素単結合を引き伸ばすことができた。ラマン分光によって伸縮振動が観測されてC-C単結合の存在が確かめられた。さらにX線構造解析も行われた。その長さは、以前にカゴ型二量体で計算されたアルカンの結合長の理論限界であるカン1.803 Åよりも長い1.806 Åだった。ちなみにこれまでは結合解離エネルギーが0で解裂すると考えられて、過去の計算は結合長と結合解離エネルギーの間の直線関係を想定して行われていた。それに対して今回の北大チームの結果は、この相当に長い結合は、直線関係から外れる可能性を提唱している。北大でさらに極大まで伸びますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 12, p. 11.

DOI: 10.1016/j.chempr.2018.01.011

18.4.8

| | コメント (0)

入学式が終わって

 大学へ戻った。行動も難しいほど、講堂には溢れるほどの保護者の方々、立見の方も多い。その中最初の挨拶。祝辞に続いてキャンパスの豊かな樹木のお話。それらと同様、新入生たちも多彩で多様。どの時期にどんな花が咲くかはわからない。適度な距離感で、彼ら彼女らの成長・成熟を見守ってもらうと共に、その育ちを実感する日が来ることを願っています。みたいな内容。時に滑舌の悪さが気になった。反省する間も無く舞台に並ぶ皆様の紹介。名前や学科名を間違えないようにと念じながら一人一人進んだ。来賓の方々、教務委員長のお話に続いて、随分前の卒業生の方の講演。乗用車と商用車、ビジネスからビジネスへ、会社名を見た瞬間、ヨウ化水素と一酸化窒素だと思ってしまった。今の学生に期待すること、好奇心旺盛、謙虚、一芸に秀でる、挫折を味わう。100年に一度の変革の時とは言われるものの、これについてはほとんど代わりはなかった。昼食の後、生徒から学生になった新入生の前に立った。フレッシュ感に触れっシュで、トーンが柔らかくなって来た。

18.4.7

| | コメント (0)

昨日あちらに

 お座りになっていた方ですね。787に搭乗して座席についた頃、客室乗務員の方に声をかけられた。「そうです」「一泊三日お忙しいですねえ。くつろいでください」とのこと。聞けば今回のクルーは二日前に、成田シアトル間を飛んだメンバーと全く同じとのこと。パーサーの方からも同様な労いの言葉をかけていただいた。短い期間で頻繁に海外に出向くのかともお尋ねいただいたけど今回が例外。座席の横には高齢のアメリカ人男性。乗務員が配るアイマスクに日本語で「これはキャンディーですか」と聞かれた。思わずIt’s an eye mask.と言ってしまった。「私の日本語は上手ではないです」と言いながら丁寧に話される。かつては沖縄に住んでいた。海兵隊員だったけど、今は毎日が日曜日。「アベさん好きです」?!「どうしてですか」「トランプさんとの関係が良いので」「417日アベさんは、フロリダに行きます」「ゴルフやるんだな」「はい、バンカーショットで挽回しないといけないので」

18.4.6

| | コメント (0)

セーフコ・フィールドを

 左に見てホテルに向かう。ここシアトルにも愛し合っとる人々がいる。そのシーンも見えないほどのスピードで疾走するタクシー。ワシントン大学訪問。「何しとん」面談と打合わせ。終了後キャンパス内をガイドしてもらった。たくさんの学部、学科の建物が広大な場に点在、それぞれが歴史を感じさせるつくりになっているものの中はモダン。日本でもなかなかお目にかかれないほどの見事な満開の桜。思わずカメラで切り取った。その季節は短いというものの4週間程度。寒暖の差が花を持続させているように思う。平日でも大勢の人たちが集っていた。噴水、ジョージ・ワシントンの像。広大な広さと高い天井の図書館。ここはsilentであるようにとの掲示、でも飲み物持ち込み可。建物4,5階ほどの高さの棟、モニュメントかと思われたが煙突、地下には駐車場、排ガスを外に出す。イタリア料理をいただきながら続いた打合せ。翌日朝、同行された方々はボーイングツアーに出向かれた。村井君はgoing my wayで帰路に着いた。気苦労もあった。

18.4.5

| | コメント (0)

スルホニルメチルリチウムの

 窒素を含む炭素立体中心前駆体への付加は、アルツハイマー治療薬としてフェーズIIIの臨床試験が行われているヴェルベセスタットの重要なキラル中心を構築できる反応である。この収率向上を目指してフロー化学が適用された。およそ1 kgのスケールでは成功したものの数百kgオーダーの反応では、懸濁や会合が課題として顕在化してきた。課題の一つは、有機リチウムを発生させるときに生じる不溶物を除去することだった。そのためにリチウム反応剤はバッチ式でばっちり合成し、フロー系では、溶媒を最初に加えてその後にリチウム反応剤を流し、さらに溶解させるためにN,N'-ジメチルプロピレン尿素を加えた。また反応温度を正確に制御することで3時間以上プラントを稼働させることができて100 kg以上の生成物製造に成功した。ただし先月ヴェルベセスタットが臨床試験から取り下げられたため、この系そのものが利用されるかは明らかではない。それでもフロー化学のスケールアップモデルがもうでるかな、という期待に答えた成果である。

[1] Chemical & Engineering News, 2018 March 12, p. 10.

DOI: 10.1021/acs.oprd.7b00385

18.4.4

| | コメント (0)

高い信頼性を有する

 鈴木・宮浦反応は炭素—炭素結合形成には必須の反応である。ハロゲン化アルキルとアルケニルホウ素を含む様々なタイプの有機ホウ素化合物とを連結できる。さらにアルケニル基はZEがあるけんで、後者のほうが熱力学的に好ましくないZ体よりも速くて単純に導かれる。その中今回、光レドックス触媒を使ってZアルケンを導く方法が注目された[1]E-スチレニル有機ホウ素化合物を出発化合物に用いてIr触媒と可視光で励起状態中間体を発生させて、それがどちらかのアルケン配座になる系が開発された。化合物内に意図的に導入したメチル基が歪みを働かせて、分子中のピナコールホウ素がZ体にフリップした。今のところ反応はスチリルホウ素に限定されているが、これはZアルケン有機ホウ素を発生させる第一歩であり、それは鈴木・宮浦クロスカップリングのうちの未探索な領域への入口である。引き続き系が最適化されていく。

[1] Chemical & Engineering New, 2018 March 5, p. 7.

DOI:10.1002/anie.201800286

18.4.3

| | コメント (0)

桜舞うキャンパス

 いつもの年とは違ったタイプの緊張感で本部に出向く。人事異動通知書を任命権者の方から直接いただいた。戻って工学部、この4月に8名の方が赴任された。代理で通知書をお渡しした。しばし歓談。これまで過ごした場所のことをわずかに話された後、どんな研究を行ってきたかを全員が話した自己紹介。ここでも「何かをやってみたい、やれるかな」というチャレンジ精神と不安が交錯する綯い交ぜのフレッシュな気持ち。30年以上前のその日が蘇った。赴任した時は一人だったので、特に自己紹介することもなかった。その月の半ばに開かれた全体の会議、タバコの煙が部屋を覆っていた。名前を言って「よろしく願いします」のみで、当時の会議時間からすれば0.3%ほどの時間だった。その後禁煙になり、会議時間も短くなった。さらに今回は先生方に「主にどんな研究分野で活動しているかがわかるプレゼンテーションを」というオリエンテーションを行った。大いに期待、行きたい場にしたい。ここには難題もあれども、この先何代もこの場が続きますよう、ご支援、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致します。

18.4.2

| | コメント (0)

レジでの支払い

 自分の前に一人のお客さんがお見えになった。電話予約した商品を受取に来られていた。クレジットカードでの支払い。カードを通してしばらくジットしている。なんだか反応がない。レジ横のガシェットがレジスタントしているのか。担当の店員さん、ちょっと経験のある別の店員さんに相談するも解決しない。そこで店長さんらしき方が登場。テーブルの上にあるケーブルの連結の不具合かと、いくつかの箇所を押さえ込んで、改めてチャレンジ。「もう一度カードをお借りできますか」抑制的にお客さん「二重払いにならないように確かめて下さいね」とお願い。再びカードが読込まれたが結果は同じ。店長さんらしき方「すみません。現金でのお支払いでお願いできますか」「カードで支払いたいので、後でまた来ます」とは言えいつ復帰するかわからない。「では支払いができるようになったら電話下さい」電話番号は予約の段階で伝えているとのこと。なんとか収まって商品を受取っておられた。エイプリルフールでもあるまいに、クレジット支払いがクレイジーになっていた。

18.4.1

| | コメント (0)

« 2018年3月 | トップページ | 2018年5月 »