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2019年9月

ビスフェノールA

 (BPA)は、外因性内分泌かく乱化学物質として知られており、プラスチック包装でしばしば見られ、わずかな量のそれが食べ物や飲料に入り込み得る。そのためわずかな量のそれを測定することは重要な課題である。その中、ジュースやソーダのような清涼飲料水の中のわずかな量のBPAを測定する新たな方法が報告された[1]。新しい方法は、塩を加えて凍らせ、BPAを系から抽出し、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析装置を使って、BPAを0.245μg/Lのレベルまで測定が可能である。BPAはどこにでもある化合物であるため、その混入の可能性を排除するためにここではガラス容器のみを使ってBPA抽出が行われている。それも含めてこの方法は、清涼飲料水中のBPA測定の方法として承認された。一方で研究者らは、その測定を他の研究者らにも行ってもらい、同じ結果が得られることを確認し、再現性の重要性を示している。再現性確保で、システムに威厳も付与された。

[1] Chemical & Engineering News 2019 September 2, p. 14.

DOI: 10.5740/jaoac- int.18-0132

19.9.30

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有機シロキサンは

 潤滑油やコーティング剤など、多くの生活に関わる製品に使われている。化学者はそれを有機合成の保護基として使う。現在Si-O結合を形成させる方法は、クロロシランからスタートするが、多くのエネルギーを必要として酸性の廃棄物も生じる。さらに高分子に含まれるSi-O結合を切断する方法はない。その中ACSの学会では、海洋の海綿を使って、持続可能性に関する課題も解決できる方法が紹介された。これらの単純な生き物は、他の生き物が持つカルシウムの代わりにシリカをもとにした骨格を構築している。彼らは、シリカテインという酵素を使って、水から採取したシリケートをシリカに変換している。以前の研究ではこれらの酵素はある種の有機シロキサンのSi-O結合を加水分解しうることを示していた。今回研究者らは、ある種の海綿からシリカテインを取り出し、それが多くの種類の有機シロキサンを加水分解すること、またクロロシランを使わずに、それらを形成できることを示した[1]。さらに酵素は、比較的高い温度で、有機溶媒中で働き、収率が80から90%で、シリカがしっかりできる。現在反応機構の解明と、タンパク質の改変で、溶媒中での溶解度や活性の向上が進められている。海綿が紙面をにぎわした。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 September 2, p. 14.

19.9.29

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スペクトルデータの

 高い信頼性がゆえに、一部を改ざんして期待の結果を得たいという誘惑に駆られる。可能性のある方法は、データにわずかな摂動を加えるだけで、スペクトルの解釈を大きく変更しうる。その中、研究者らは、敵対する分光法(adversarial spectroscopy)を用いて、そのような変更を許さないデータ分析の方法を明らかにしようとした[1]。ここでは抗凝血剤である硫酸クロビドグレルの二つの多形が対象とされて、そのラマンスペクトルにわずかな変更を加え、これがスペクトルの解釈にどう変化するかが見積もられた。線形判別分析、すなわちデータをカテゴリーに分類できるデータの特徴を探索する方法を使うと、簡単にそれぞれの多形のスペクトルを分けることができる、値段が高いかどうかはともかく。ついでほんのわずかな変化をスペクトルに加えると、システムを、多形の一つの分類を間違える方向に仕向けることができた。この小さな変更は、スペクトルの主なピークではなく、ベースラインのノイズである。そのため、スペクトルの感度を認識できると、より強固な分類のアルゴリズムを構築できる可能性が示唆されている。複数のノイズをのぞいて見ましょう。

[1] ACS Meeting, 2019.8 San Diego

19.9.28

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放射性

 カリフォルニウム-252は、豊富な中性子放射核であり、ジェットエンジンの欠陥の試験、地下のオイルやガス貯蔵の発見、ある種のガンの粉砕、原子炉の作動を含む多くの場面で利用できる。ただし純粋な252Cfを取り出すためには、照射されたキューリウムを濃硝酸に溶かし、カチオン交換で、重原子を単離、252Cfと別の生成物をクロマトによって分離する。この段階で、強い酸に弱い材料を含むために、溶液のpHを調整しなくてはならない。このpHのバランスをとる段階で、廃棄物も出て時間もかかるために高価になる。それに対して今回サンジエゴの学会、三時以降かどうかはともかく、で、硝酸から抽出するためにテトラオクチルジグリコールアミンを用いる方法が発表された[1]。99%純度で、小スケールでは単離に成功し、溶媒もリサイクルできる。また配位子は、Cfのようなアクチニド元素に優先的に配位するため、分離の効率が向上していた。アクチニド、お口にどうぞは、いけません。

 [1] Chemical & Engineering News, 2019 September 2, p. 10.

19.9.27

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電解触媒は

 水の分解のような反応を速く効果的に行うための鍵である。適切な触媒があれば、電気エネルギーを使って水を酸素ガスとクリーンに燃焼する水素を発生させることができる。そこでは、メディエーターが電極から電気エネルギーを出発物質に供給し、一連の段階を経て基質の変換が進行する。何年にも渡って研究者らは、水の分解や他の電気化学反応のためのメディエーターを探索してきた。すなわちメディエーターの得体を知ることも大切である。例えばメディエーターはまず、レドックス変化を引き起こし、ついで触媒反応を駆動する。この段階を踏むことで反応が阻害される。基質だけではなくて、メディエーターにも最適の電圧、電流で行わなくてはいけない。またメディエーターが高いエネルギーのレドックス中間体を形成しない限り反応は進まない。その中研究者らは、メディエーターをグラファイト電極にある六員環シートに直接連結した[1]。これによって、電極とメディエーターが共役し一体化できて、これまでの制限を避けることができる。具体的には有機ロジウム錯体をグラファイト電極に連結させて共役させた分子で、実際に水素発生反応が促進されていた。苦心の末の促進でしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 September 2, p. 8.

DOI: 10.1021/jacs.9b04981

19.9.26

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化学結合のみで

 連結している動くルービックキューブがつくられた[1]。びっくきゅりである。この風変わりな仕事を成し遂げるために研究者らは、6種類のアシルヒドラゾン交差連結を含むヒドロゲルでできている色のついた蛍光タイルを使った。およそ1時間触れていると、ヒドロゲル製のタイルは、簡単に、固まったり、柔らかくなったりする。ただし24時間以上かけてアシルヒドラゾンの交差連結が十分につくられると、材料は永久に硬くなる。この可変の粘性を使って、それぞれの面に異なる色のタイルをはめ込んだ小さなキューブが組立てられた。1日後、27個のキューブを一つにしてルービックキューブとした。1時間後、あたかも昔からあるパズルのごとく、キューブを回転させることができたが、24時間後にはそれは固定された。同様の機構を利用した、アンプレーアブルパズルもつくられた。研究者らはさらに、化学的な刺激で色が変化する、スマートでソフトな材料を創造したいとしている。そのような配列が、人の肌に装着されると、医療情報を交換することも可能になる。キューブで充分に遊んでもみたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 15.

DOI: 10.1002/adma.201902365

19.9.25

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セミナー二日目

 一泊予定の先生が、泊まることが出来なくなったとのこと。お聞きすれば、吉田潤一先生が9月14日にご逝去されたとのこと。衝撃を受けた。66歳まさかと、色々お聞きした。亡くなる三日前にはお元気にお話をされていたとのこと。先生は博士課程の途中で、ある大学の助手として赴任された。同じような道をたどっていた自分、1984頃か、学生時代を過ごした大学と赴任先の大学の研究環境の違い。その中でどうやって研究を進めるのか。自分の足でしっかりと歩まなくてはいけない。自分の知識のなさや取組の未熟さも実感した。それから十数年経った頃、ヘテロ原子が組込まれた有機ケイ素化合物の還元電位の差を分子軌道のエネルギーとの相関で説明した論文を発表された。直接お会いする機会があってお聞きしたところ「概念的に新しいもの」を意識しておられた。その後も新学術領域を始め、様々な場面で大変お世話になった。京都大学退職後、鈴鹿高専の校長先生に就任された。高専からは本学へも三年次編入学で学生さんが入って来られていたので、一度は直接ご挨拶をと思っていたものの、果たせなかった。今後、日本の科学政策への提言、その立案でもご活躍される先生だった中でのご逝去。化学界、科学界に留まらず、我が国としても偉大な方を失った。言葉がない。ご冥福をお祈り申し上げます。

19.9.24

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初日、二日目

 ともに終了後バスでホテルに移動。バス(温泉)に直行する人もあり。午後9時からのミキサー、君さ〜どちらから来たの?と所属研究室をお聞きする。異なる研究室に所属の学生さんが相部屋、情報交換の場になった。ミキサーの場所は12時前に閉会。その後委員長の部屋で飲んでもいいよというお誘いに、呼応した学生さん数名。笑いあり、お酒ありで、大いに盛り上がった。研究室の先生のマジックで、化学に邁進したい気持ちが亢進する。気がつけば丑三つ時。大量に仕入れたアルコール類、差し入れていただいた日本酒も含めて、すべて消費した。一方で沢山残ったおつまみ。最終日、三人の先生方の講演。時に夢うつつになりながらも、拝聴した。ポスター発表での優秀発表賞の授賞式。78名の学生さんが対象で5名という激戦。僅差で確定した。賞状をお渡しした時の、嬉しさ、達成感、安堵感、得も言えない表情。副賞は電子版の本。迷ったときには、村井君編集の「Chemistry of Thioamides」を、とアピール。ビールはないけど。すべてのプログラムが終了。来年は広島。「新しい成果を広島で、披露します」でお別れした。

19.9.23

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6時過ぎ

 大浴場、露天風呂に行った。人はいないはずと言う予想が外れた。予想はよそう。若者たちが、朝風呂を楽しんでいた。朝食会場も人人だった。並ぶ一品の多さ、慎重に選ばなくてはいけない。普段食することはない鮎雑炊。それで調子もいいか。8時前に車で会場へ移動。その後参加者の方々がバスで会場入り。奨励賞受賞講演。その中大学へ戻る。5名の先生方の講演を聞くことが出来なかった。学部での会議の進行の任務。午前中に一つ、午後に四つで、その間に、本部事務方の説明会。工学部事務方に予定時間を考えていただいた。五十肩にはなっていない。開始時刻だけど定足数を満たさない。予定時刻を10分ほど過ぎて、始めることが出来た。会議終了後、国際会議場へ移動。Lectureship Award授賞式までは1時間ほどあった、今回の受賞者のSchindler先生。ある時からコンタクトが途切れた。こりゃあ「しんどいりゃら〜」と思いつつ、返事のないメールを複数送った。来ないかもねと覚悟を決める中、ある先生の御尽力で会場に到着。なんだか同じ時期に三つの会議に参加予定を入れていたらしい。岐阜が生き延びた。鍵となる反応であるカルボニル-オレフィンメタセシスの発見が端緒で、複雑な生理活性化合物合成へも拡大された。アワードの価値がさらに上がった。ワールドワイドになりつつある。

19.9.21

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屋外では

 蝉が鳴く。屋内でセミナー開会の宣言をした。皆さん概ね開始時刻に到着。開会の挨拶、今回の参加人数、お世話になった企業さん、団体を紹介、ついでこのセミナーに参加するってと言うお話。「話す、聞く、知り合う」がポイント、名刺交換、メールアドレス、ライン交換。好感度もアップさせたい。で最初の座長さんにマイクをパス。スケジュールがタイト。これが痛い。休憩時間にゆっくりはできない、お手洗の場所をマップに掲載するも、近場が混雑していた。講演者の履歴紹介はなくて要旨集参照で講演時刻を確保。四名の先生方の講演。向山先生や向山賞についての紹介。その後、受賞者Sarpong先生の受賞講演、他を圧倒した。どの結合が切断されて、どこの結合が形成しているのか、読みきれないうちにスライドが次に、これは辛いど。先生はこの日の早朝、香港から関西空港に着陸。無事の移動を祈り、岐阜までの間、メールにて確認、素早いレスポンス。会場に着く前にホテルで着替えをしたい。ホテルに電話もして対応OK、先生の希望通り。先生のレセプションでの挨拶、こちらもセンセーショナルでユーモアもあり。言うもんやねえ。

19.9.20

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残暑厳しい

 三連休最終日、ミキサーで提供する日本酒、焼酎、ビールをトランクに入れる。それらのランクづけはしない。はたと考えて「キッチンペーパー、ティッシュペーパーも必要や」と気がついた。200名が参加する会で、ミキサーの場所は100名弱のサイズである。場所がないすって部屋に戻る参加者のために、飲み物やおつまみを持って帰るための袋、ゴミ袋をテーブルに貼り付けるテープ。ガムテープでは剥がした後が心配である。養生テープがいい。そこでホームセンターに行った。大きな売り場のどこに何があるかがわからない。店員さんに聞く。それ「言っていいん?」と言う店員さんはいない。あちらの棚です。確かに天井まで積み上がっている。幸い足元辺りにもあった。当たり前かもしれない。で養生テープ、なんとか自分で見つけたいと言う努力も虚しく、お聞きした。工具の売り場です。しばらく移動して、養生テープを見つけた。往生しました。

19.9.20

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2008年以降

 大気中のメタンの濃度が上昇している。この変化は、生命活動によってもたらされるメタン源、とりわけ農業由来であるとされてきた。そう決めたんらしい。ただしそれに対して別の可能性が報告された[1]。生命活動由来のメタンは、炭素13の量が化石燃料由来のそれよりも小さい。2008年以降のメタンの炭素13の割合が小さいことから、生命活動由来とされてきた。また化石燃料由来のメタンは全て同じ同位体比であると想定されていた。その中研究者は、もし異なる化石燃料が異なる同位体比を有するとしたらと考えた。実際にシェールガスは、炭素13がこれまでの天然ガスよりも少なく、農業ではなくて、水圧粉砕が過去10年間のメタンガスの量の増加の1/3を引き起こしていると推定された。これに対してこの調査には、最も生産性の高いマーセラスシェールが含まれていないという批評がなされた。それに対して、そこのメタンの同位体比のデータがないことを指摘し、それがあればさらに確かな分析になると述べられている。シェールで増え〜るメタンかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 14.

DOI:10.5194/bg-16-3033-2019

19.9.19

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太陽電池の

 効率限界を向上させる方法の一つは、使えない高エネルギー光子を低エネルギー電荷担体に変換できる材料を利用することである。光子が太陽電池にあたると、交渉しなくても、対になった電子と陽電荷を持ったホールとからなる、励起子と呼ばれる電荷パケットが発生する。テトラセンのような有機分子は、励起子を、より低いエネルギーの励起子に分割できる。この分割は、プロトタイプの太陽電池では作用するものの、実用的ではない。それは発生した励起子がナノ秒で再結合してしまうことも要因の一つである。そこで研究者らはこの再結合を避けるための分子を探索し、二つのペンタンセン(PTP)を側面に有するテトラセンが、よりよく作用することを見出した[1]。ペンタセンの低いエネルギー状態のお陰で、中央のテトラセンで分割された励起子はボールのようにペンタセンの別の面に転がり落ちて再結合が避けられている。PTPでは、分割された励起子がおよそ20μ秒、別れた状態で保たれていた。その励起子、礼儀正しいのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 14.

DOI: 10.1038/s41557-019-0297-7

19.9.18

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製鉄業は

 グローバルなレベルで5%以上の温室効果ガスを排出するとともに、潜在的なCO2吸収物を排生産している。例えば年間500メガトンの鉱物が豊富なスラッグと呼ばれる残留物を生産しているが、鉱物豊富なそれの好物がCO2で、吸着した後に、炭酸カルシウムを産むことができる。ただしこの方法はコストがかかり実用的ではない。今回よりよいスラッグの取り扱いをすれば、鉄鋼生産からのCO2排出の10%を相殺できる可能性が提唱された[1]。研究者らは、放置されたスラッグの堆積物、それらは通常表土で覆われているが、それが期待通り炭素を抑制することができるかどうかの試験を行うことにした。閉鎖された鉄鋼工場にある、数十年を経過した堆積物にドリルで穴を開けて、鉱物を分析し、吸収しているCO2量が見積もられた。その結果、本来の能力の3%程度しかCO2を溶解していないことがわかった。主成分である黄長石カルシウムシリケートの反応性の低さと、スラッグの大きな粒子サイズのために、変換がゆっくりとした状態でとどまっているためで、生産段階で溶融したスラッグをより速くクエンチし、より浅い堆積にすれば、スラッグのCO2吸収量は増大するに違いないと結論づけられた。スラッグ改良に、グッドラックを。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p, 14.

DOI: 10.1021/acs.est.9b01265

19.9.17

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通常のバクテリア

 とは異なり、ヒト型結核菌の感染は、一年を通したサイクルになっている。この持久力は、何に由来するのか明らかになっていなかった。5年前研究者らは、ヒト型結核菌に特異的な化合物を同定していた。すなわち脂質である1-チューバクロシニルアデノシン(1-TbAd)である。楽器の名前ではない。さらに1-TbAdは、病原菌が、マクロファージの中のある部分である食胞、それは免疫細胞の一種であるが、その中で生き残る助けをしているかどうかが探求された。その結果今回1-TbAdは、制酸薬として作用し、食胞のpHの上昇と膨張に関わっていることがわかった[1]。これらの変化は、マクロファージがバクテリアを殺すプロセスを阻害する。1-TbAdやその類縁体で試験をしたところ、化合物の活性はアデノシンの1位での脂質の連結の位置に依存していた。異なる連結様式のN6-TbAdは、同様の効果を示さなかった。52のヒト型結核菌の臨床株のうち50で1-TbAdが発見されたことから、結核検出に利用できる可能性も示していた。ヒト型ってとんがった形でしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 14.

DOI: 10.1038/s41589-019-0336-0

19.9.16

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水中に棲む

 唯一のクモであるスキューバーダイビングスパイダーは、疎水性の毛を使って腹部に空気の泡を集めて、呼吸をしている。高級かもしれないその構造をヒントに、小さな木のような構造を持つ銅表面を製作し、それを1-オクタデカンチオールのろう状の層でコートした[1]。これによって先のクモのように、ガスバブルを形成させることができる。これをCO2が飽和になった水溶性の電解液に浸したところ、電極はその表面に、大きな泡としてガスをトラップし、触媒反応が進行した。その結果、従来の銅触媒によるCO2還元では、エチレンやエタノールがそれぞれ9%, 4%だったのが、今回の系では、それぞれ56%, 17%まで向上し、逆に水素の発生量が、71%から10%に低下した。今回の系は、CO2を燃料や化成品に変換するための、選択性制御についての新しい方法を示しており、今後別の金属表面でも同様な修飾ができれば、さらに電気化学的な変換が拡大される可能性がある。スパイダーで失敗だ〜を回避できますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 10.

DOI: 10.1038/s41563-019-0445-x

19.9.15

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鳥羽で

 一晩を過ごした。伊勢湾が一望できる露天風呂、そこは1階、フロントは3階。多彩な食材が食卓を飾った。たくさんの種類のカードゲーム。卓と牌の貸し出し。部屋まで宅配された。14枚で手づくりを始めた。数字を表す3種類の牌の合計108枚、ここも煩悩か。字牌を含めて136枚。一人34枚の牌を二段に積み上げるところから始まる。翌朝、一足先に戻るためにフロントで送迎バスを待つ。数名のメンバーが見送りに来てくれた。夜更かしの様子、朝食のこと、まだまだ暑いこの日、皆さんはどこに行く予定なのかを聞きつつ、暑さ回避なら水族館か、海の生き物も実感できる。フロントには小さな男の子を連れたご家族も来られた。一緒に送迎バスに乗った。先の見送りに来てくれたメンバーが手を振る。男の子の父:旅館の人が手を振ってくれてるよ。男の子:バイバ〜イ。父:???旅館の人じゃないかもね。地元の大学生が夏休みで、アルバイトで来ているのかなあ???」言葉を抑える中、鳥羽駅に到着した。

19.9.14

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単一のモノマーを

 ポリマーの望みのところに組み込む新しい方法が報告された[1]。研究者らは、開環メタセシス重合反応で、シクロプロペンエステルを、ノルボルネンが重合する複数の箇所に組込んでいる。例えば100ユニットのポリマーで30%の長さを別のモノマーで置き換えた分子を合成するとしたら、30ユニットのポリマーを合成し、ついでシクロプロペンモノマーを加える。ついでノルボルネン重合で残りの70ユニットを組込む。完成するとニヤッとできる。ここで鍵となるのは、シクロプロペンモノマーを加えた後に、ノルボルネン重合を再開する部分である。重合に使うRu触媒へのシクロプロペンの配位が課題であるため、-30 °Cまで反応温度を下げて3-ブロモピリジンを加えた。これが触媒に弱く配位して重合が継続する。この系では、たった一つのシクロプロペンを入れ込むことも可能であった。今後さらに他のタイプのシクロプロペン誘導体も探索し、単一モノマー挿入の必要条件を明らかにしたいとしている。そのモノマー、もポリマーに飲ま〜れるのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 9.

DOI: 10.1016/j.chempr.2019.07.017

19.9.13

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水素化ナトリウムは

 分子から脱プロトン化するのにしばしば使われる[1]。ただし脂溶性の有機分子と溶液中で混ぜるためには、DMSO、DMFやジメチルアセトアミド(DMAc)のような非プロトン性溶媒を使わなくてはいけない。50年以上の前の報告では、これらの溶媒中でNaHは、爆発しうることを示していた。にも関わらず毎年、この組合せを使った反応例が報告されている。2014から2018年の間、OLでは38-62、JOCでは28-46さらにJMCでは67-94の論文にその組合せが記載されている。研究者らの調査では、塩基と溶媒の間でラジカル反応が起こり、DMSOではMeSMeやエチレンの発生の可能性が明らかになった。そのため安全上の危険をもっと認識すべきであること、代替の溶媒としてTHF、また塩基としてはヒドロキシ基かアルコシキドも、あることで敷居も高くない。ただしそれらを使う場合でも溶媒中での安定性について注意を払うべきである。今後はこれらを大学院教育に含めるようにしたいとのことである。NaH塩基、使用の延期を。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 8.

DOI: 10.1021/acs.oprd.9b00276

19.9.12

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炭素同素体の一つ

 フラーレンが発見されて同定された頃、計算化学は、より小さな炭素分子が環状化合物(シクロ[n]カーボン)として存在することを示していた。が感情的にはならず、実際の分子の合成、単離、同定が行われない限り、類推の域であると言われていた。その中今回、シクロ[18]カーボンが合成されて、特徴が明らかにされた。合成は、原子レベルの技術と、同素体がつくられた1980年代に最初に使われた前駆体分子との組合せである。2016年IBMの研究者らが、走査型トンネル顕微鏡の針先から出る電圧パルスを使って、分子中の結合を一つずつ切断し、ついで原子間顕微鏡で、何が導かれたかを検証するする方法を示していた。それを見ていた今回の研究者とIBMとのコラボで、多環の前駆体から一酸化炭素を取り出す方法を使い、シクロ[18]カーボンが導かれた[1]。分子は9回対称性を持ち、二重結合が連結するよりもむしろ、三重結合と単結合が交互に繋がっていることも決定された。「想像たい」だった同素体の一つが仕上がった。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 26, p. 6.

DOI: 10.1126/science.aay1914

19.9.11

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工業的に

 貴金属触媒を利用するためには、できる限りそれらを担持材料に分散させることが行われている。粒子が小さくなればなるほど、より多くの原子が表面に出てきて、活性は向上するものの、前口上はともかく、それらは不安定になりがちである。反応条件で、近くの粒子と融合してしまい、本来ならば活性部位で、反応効率を最大化し、コストを押させるべき部分が阻害される。原子や粒子を保持する方法の一つは、担持体の上に、ほんのわずかなそれらを置くことであるが、それでは不活性な触媒になってしまう。その中研究者らは、単一金属を含む触媒的イリジウム種を高い濃度で担持できる、製造が簡単で安価なグラフェンエアロゲルを報告した[1]。以前別のグループが金属酸化物担持を行なったが、濃度がわずかに上がると、単一原子触媒が壊れていた。それに対してここでは、重量比でおよそ15%のIrを担持させて活性化させた。スペクトル的にそれらが離れていて、触媒的に活性であることもわかった。活性な触媒をどこかに、おかっせいて欲しいかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 10.

DOI: 10.1021/ acscatal.9b02231

19.9.10

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遷移金属で考えられていた

 結合様式がBa, Ca, Srでも形成できること、すなわちこれらの元素が4ケルビンで八つの一酸化炭素と18電子錯体を形成することが昨年報告された[1]。ただしこの予想外の結果に懐疑論が持ち上がり、会議も開催されたかもしれない。例えば八つのカルボニルが配位した錯体の形成は間違いないけど、金属とCO のこれまでの科学を無視していると指摘を受けた[2]。すなわち先の分析は、金属とオクタカルボニルが中性成分であるとして結合様式の分析が行われている。懐疑的なグループは、それらの部位が電荷を帯びていて、錯体の電荷密度分布が反映されており、遷移金属に特徴的な結合様式は観測されなかったとしている。これに対して最初の著者らは、Caと(CO)8が中性であるという想定は、結合をつくる前の状態に適応していて、遷移金属に見られるような結合、d軌道が関与したそれらが観測されていることを改めて確認したとしている[3]。いずれにしてもこれらのエキゾチックな分子は境界領域に属するもので、軌道や結合様式についてより幅広い問題を議論する機会にもなる。結合様式の常識が変更されるかもしれません。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aau0839

[2] DOI:10.1126/science.aay2355

[3] DOI: 10.1126/science.aay5021

19.9.9

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触媒的非ラセミ化反応は

 ラセミ体混合物を単一の鏡像異性体に変換する反応であるが、系のエントロピーが減少するために、熱力学的には辛い仕事になる。加えてそれぞれの中間体が行ったり来たりで、指摘を受けなくても、微視的可逆性に従う。その中研究者らは、ラセミ体に衝撃を与え、キラル触媒を使いそれぞれの中間体が片側に変換されるように仕向けた[1]。すなわち環状の尿素のラセミ体混合物を使い、R体のみを与えるようにした。青色光でIr触媒を活性化し、尿素が持つ窒素原子より、電子を取り出し、R体とS体のラジカルカチオンを発生させた。ついでキラルなリン酸塩基がC-H結合からプロトンを引き抜き、アキラルな炭素ラジカルが発生。ただしリン酸塩のキラリティーは、Sラジカルカチオンの反応性を向上させている。より遅いR体中間体は脱プロトン化を受けず、出発化合物のR体に戻った。最後に系中に加えたチオールを含むキラルペプチドが、アキラル炭素ラジカルの一方の面から水素を渡し、R体を与えた。ほとんど定量的な収率、94:6の鏡像体比だった。非ラセミ化、夏の終わりに、セミか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 9.

DOI: 10.26434/chemrxiv.8206634.v1

19.9.8

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淀屋橋から

 京阪特急。京都三条まで覚えのある行程。Webサイトを見ると「プレミアムカー」なるものがあった。ミレニアムの頃に出来たのか。いや平成になった頃かららしい。その間気づかずに利用していたようである。ネット予約もできる座席指定券500円。それぞれの座席にはコンセント、こうせんと使えないなどということはない。プラグを差し込むだけで良い。車内ではWiFiも使えて、静かな50分間がプレゼントされる。時々乗務員の方が、冊子はいかがでしょうかと、車内を回る。希望することを察してはそれを渡す。この京阪電車、昔は、エコーの効いたええ声のアナウンスで駅の名前を告げていたが、今回はエコーが抑制的だった。小学生の頃は、終点京都三条まで地上だった。七条を過ぎた辺りから、左手に鴨川を見て、ゆっくりと走っていたような、それで「京都に来たんだ」と感じた覚えもある。今では地下を走り、出町柳まで延伸されて、おいでまちや になった。

19.9.7

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胃腸の中の

 ある種の大腸菌は、コリバクチンと呼ばれる一連の代謝物を製造する。これが人の結腸ガンのリスクと関連している。コリバクチンは10年以上前に発見されたものの単離には至っていない[1]。以前に二つのグループがコリバクチン-DNA付加物を報告していた[2]が、全体の構造は解明されていなかった。今回それらのうちの一つのチームが、分子とDNAが交差連結したコリバクチン代謝物の構造を明らかにした[3]。また構造決定の段階で、合成法も開発し、その分子のさらなる研究を可能にしている。研究者らは構造解明のために、DNA中の二つのアデニンとの交差連結した付加物として分子を捕まえて、質量分析、同位体標識、化学合成を組み合わせて構造を決定した。コリバクチンは、二つの求電子的スピロシクロプロピルジヒドロ-2-ピロンと容易に加水分解されるジカルボニルを含む。その中のシクロプロパン環が開くことでDNAを惹きつける。合成は、ジアミンを二つのβ-ケトチオエステルでアシル化し、二重シクロ脱水化を経ている。今回の結果を受けて、さらにバクテリアの病原性、片利共生やガンでの役割に関する研究を推進することができる。コリバクチン、こりばきちんと解明されますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 8.

[2] (DOI: 10.1021/acs.biochem.8b01023, DOI: 10.1126/science.aar7785

[3] DOI: 10.1126/science.aax2685

19.8.6

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内科的腫瘍学では

 何かないかと、主に遺伝子に主注目している。それに対して、遺伝子と環境の両方の重要性が明らかにされた。ここで言う環境は栄養摂取である。研究者らは、メチオニンを少なくした食事は、活性なガン細胞を餓死させることができるのではないかと考えた[1]。一炭素経路と呼ばれる代謝サイクルから、ガンに罹患した細胞はエネルギーをもらう。放射や5-フルオロウラシルを含む治療方法はこの経路を標的にしている。それに対してメチオニンが少ない食事がこの代謝を減速させることができるかどうかを明らかにするために、健康なネズミに制限した食事を与えて代謝がモニターされた。2日以内に、メチオニンと関連する代謝が低下したため、ガンに罹患したネズミでも同様な実験を行った。その結果、メチオニンが制限された動物は、それを制限されていない動物よりもがん細胞が小さく、一炭素代謝の分析では。メチオニンがもとになった副生成物は減少した。さらに5-フルオロウラシルによる治療や、放射線治療をメチオニン制限と組合せると治療効果も向上していた。ウラシル治療の裏も知ることになったのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12.p. 7

DOI: 10.1038/s41586-019-1437-312

19.9.5

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爆薬や推進剤のような

 エネルギー材料をつくる化学者は、生成物の立体化学や位置化学は気にしない。郊外でも市内でもそうである。その中今回合成化学者らは、四つのニトロエステル部位を有する六つの立体ならびに位置異性体の全てを合成した[1]。計算は、それらの化合物の爆発特性は類似であることを示していた。それに対して実際に合成した研究者らは、異性体によって融点が異なること、六つの化合物のうち二つを組合せると、融解によって不定形になる爆薬を形成すること、別の異性体は、86 °C以上の融点を有し、これは単独の融解によって不定形になる爆薬として最適であること、またある位置異性体は-40 °C以下でも液体で、推進剤として魅力的であることを見つけた。新たな爆薬を製造しその試験をすることは、危険を伴うことから、計算に依存しているところが多い。それに対して今回は、計算結果と、実験の違いが顕著になり、より確たる理論の開発の必要性も示された。合成を担当した学生はそれらをキログラムスケールかつ高純度で合成できることを記し、さらなる特性の解明は米国陸軍が興味を示している。US army, ああ見えても化学にも造詣が深い。

[1] Chemical & Engineering News 2019, August 12, p. 6.

DOI: 10.1021/jacs.9b06961

19.9.4

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MITの研究者らは

 人工知能にUS特許やReaxyデータベースに掲載の反応のアルゴリズムを学ばせた[1]。教育を受けた知能は、アルゴリズムを使って、与えられた分子に至る反応条件を含む合成経路を提案し、どの経路が、ステップ数や予測された収率の中で、最も好ましい経路かを評価する。さらに研究者らのシステムでは、ロボットアームがチューブをつなぎ、異なる反応剤をフロー化学モジュールや膜がベースの分離器に供給できるようになっている。このフロー化学をベースにした自動化では、より高い温度や圧力での反応も可能である。研究者らのロボットは、ぼ〜っとはせずに、アスピリンを収率91%で、(S)-ワルファリンを収率78%、4.1:1の鏡像体比で合成している。さらにそれは五つの医薬品関連化合物のライブラリーも構築している。すでに他の研究者らも、AI合成プランナーや自動合成を開発しているが、今回のMITのそれは、全自動系に最も近い。そのためこのコンセプトは合成設計を劇的にスピードアップし、異なる合成経路も台頭させることも可能にし、革新的である。苦心の賜物である。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 12, p. 5.

DOI: 10.1126/science.aax1566

19.9.3

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二つの塩素原子を

 アルケンに付加できる触媒で、ハロゲン源として塩素塩だけを使う方法は、塩素化天然物を合成する新しいアプローチを提供しうる[1]。今回の系は、古典的な19世紀の化学の懸案になっていた課題をアップデートしたものである。1870年頃より、炭素–炭素二重結合に塩素ガス(Cl2)を付加させて、隣接する炭素上に塩素が組込まれたジクロロ化合物が合成されてきた。塩素ガスは、取り扱いに注意が必要であることから、研究者らは、ヨードベンゼンジクロリドのような代替物を使っていた。これは1886年にドイツの化学者Willgerodtが、ヨードベンゼンに塩素ガスを通して調製した化合物であるものの、塩素ガスを必要とする。それに対してここでは塩素化剤として塩化セシウムを、セレクトフルオルと呼ばれる酸化剤や触媒量の4-ヨードトルエンと混ぜた。これを様々なアルケンと反応させると、隣接ジクロリドが最大88%収率で導かれた。新たな塩素化を記念して、演奏会いかがですか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 August 5, p. 11.

DOI: 10.1021/acscatal.9b02313

19.9.2

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箱根に向かう日

 早い目覚め。小田原経由、「城に行ってみよう」と家を出た。小田原駅から徒歩10分。何処の出自か諸説ある北条早雲からおよそ100年の小田原北条氏が始まった。早雲の幸運にも恵まれて、戦国時代には他の武将の攻撃も退けた。ただし豊臣軍の攻撃を受けて開かれた「小田原評定」では意見が分かれた。表情も硬くなったでしょうか。結論の出ない会議として例えられるも、実際にはそうではないらしい。籠城する中、豊臣軍はいつまでも撤退しない、手伝いがなくても。当時は半農半兵で、職業軍人はいなかった。その中豊臣軍はその制度を導入していた。大軍をもって小田原城を包囲し、一夜城と呼ばれる石垣山城も築城、長い間対峙した。その結果ついに降伏した北条氏。城跡や周辺から出土した陶器や武具、宮下英樹著の漫画「センゴク権兵衛」の展示。城を出てsamurai館へ。どちらも見応えがあって時間が足りない。その中、武士の心と記されたボードを見つけた。英語表記の一部をカメラで切り取った「SPIRITS OF MURAI」小田原でこれは俺だわ、だった。

19.9.1

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