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2019年11月

酸化窒素(NOx)は

 世界中に広がる、乗り物や工場での燃焼で排出される汚染物質で、しかも有害な表面レベルのオゾンの発生を助けている。ただしNOx汚染をノックアウトすることは、その大気中での寿命が濃度以外の因子、例えば別の汚染物質のレベルに依存しているために、かなり複雑になる。今回研究者らは、北米での2005年から2014年の間のNOxの寿命の変化を報告した[1]。研究では、人工衛星によって集められた高解像度の紫外可視スペクトルが使われて、それぞれの地域でのNOxの量が決定されている。隣接する場所のイメージや風の速度のデータを入れ込んでNO2濃度を比較して、対象となった市でのNOxの寿命を明らかにしている。NOxレベルはいずれの場所でも対象期間では低下しているが、NOxの寿命はいくつかの都市で延びている。この違いは、揮発性有機化合物の濃度であり、それがNOxと反応しオゾンを形成する。さらに2013年まではNOxがオゾン形成量を規定していたことから、NOxの排出を減らすことで、さらにオゾン汚染も改善されることが期待できる。オゾン削減、既存の方法と合わせて使えるかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 11, p. 7.

DOI: 10.1126/science.aax6832

19.11.30

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90前後の分子の数の

 ナノサイズの水の液滴が氷晶を形づくる、しきい値であることが報告された[1]。表彰ものかもしれません。以前の理論的な研究では、最低限は、100から300の水分子であるとされていた。研究者らは、高圧のノズルを使って40 と150 K(ケルビン)の間の温度で様々なサイズの水のクラスターを発生させた。赤外吸収スペクトルは、およそ150 Kでは90分子あるいはそれより多い数のクラスターで結晶状の氷の水素結合が形成されることを示していた。150分子までは、これらのクラスターの中の分子は、固体あるいは液体層の間を振動している。研究者らは実験結果を使って、類似の大きさのクラスターの分子動力学シミュレーションを微調整し、実験結果の再現にも成功している。なおこのサイズのクラスターは、大きなタンパク質や、ある種の材料の中にも存在するため、そのような中での水の振る舞いを予測できる可能性もある。さらに別の分子でも類似の、しかも液体-固体の間だけではなくて、液体-液体でも存在しているかもしれない。ケルビン、絶対温度の単位です。-273 °Cまで行けるビン。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 11, p. 6.

DOI: 10.1073/pnas.1914254116

19.11.29

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ミクロサイズの

 磁場に応答して様々な形に変形できるマシーンがつくられた[1]。この磁場操り人形は、体内を航海できて、医薬品の送達、血管閉塞の洗浄やガン細胞の採取を可能にする。今回研究者らは電子ビームリソグラフィーを使い、理想的に、微細な窒化ケイ素上に、たくさんの卵型のコバルトをずらりと並べた。この様々なサイズのコバルトの島は、異なる磁場の強さで磁化されている。より薄いそれは、より大きな磁場を必要とする。ついでこれらの島を磁場に応答して異なる向きに動くことができるようにプログラム化し、洗練された動きを可能にした。マイクロロボットがプログラム化されているために、別の磁場でそれは曲がったりひねったりという複雑な動きをすることができる。さらに翼を上下に動かすことができる微視的な鳥もつくられた。それは磁場の中で、回転したり表面を滑ったり、浮かぶこともできた。今回の手法を3-Dパターンのリソグラフィーに拡大することは難しいものの、リソグラフィーがマイクロ電子工学の分野では、確立された技術であるため、さらに進展が期待される。マイクロでもうまくいくろ。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 11, p. 6.

DOI: 10.1038/s41586-019-1713-2

19.11.28

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ハーバーボッシュ法は

 今も幅をきかせるアンモニア合成法で、窒素と水素を原料として高温、高圧で反応が進行する。ただしこの多段階過程で世界中の排出量の1%分以上のCO2も出している。それに対して今回BaZrO3をもとにしたプロトン酸セラミック膜反応容器の中での電気化学反応で、常圧一段階ステップで合成できる方法が報告された[1]。理想的な条件下では従来の25%のエネルルギーを削減できて50%程度のCO2排出も抑制できる。一段階ステップにできた鍵は、別々の全ての反応を近接させた点である。反応のシステムは窒化バナジウム鉄カソードとニッケルをもとにしたアノードとの間に挟み込んだBaZrO3電解質でできている。従来法では1000 °CでCH4の改質によって水素が製造されているがここでは、CH4はCO2とH+に変換されて、H+のみが固体の電解質を通りカソードに到達できる。アノードからイオンを除去するとルシャトリエの原理に従ってCH4変換が促進される。これはこのシステムの取り得の一つである。カソードではN2が電気化学的に活性化されてH+と反応しNH3に至る。アンモニアって甘いもんやではありません。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 11, p. 5.

DOI: 10.1016/j.joule.2019.10.006

19.11.27

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気体である窒素

 ちょっと仲間はずれである。ハーバーボッシュで使われているような高温高圧下で反応するものの、気体状の窒素が活性な触媒種として作用することはない。その中今回国際研究チームは、窒素ガスを、ルテニウムをもとにした触媒に加えるとp-クレゾールの水素化脱酸素化反応を400%もスピードアップできることを明らかにした[1]。研究者らは反応容器を不活性ガスで加圧しようとした時にこの化学にでくわした。研究者らが気体状の窒素を水素ガスと一緒に固体状態の酸化チタン担持のRu触媒に加えたところ、Ru表面は窒素分子を活性化し、N2HあるいはN2Hが形成していた。これらの酸性水素がp-クレゾールの水酸基を追い出す一助になって、律速段階が水酸基の水素化から窒素の水素化にシフトした。研究者らはAl2O3、ZrO2や活性炭素を含む多重の担持表面でよりよく反応が進行することもみつけた。今回の反応は窒素が単に不活性な傍観者ではないことを示している、普段は小っそうになっているかもしれないけど。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 4, p. 11.

DOI: 10.1038/s41929-019-0368-6

19.11.26

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高純度な重水素は

 次世代核融合や他の科学的な応用で必須な分子である。ただし重水素(D2)を得ることは容易ではない。それは一般に重水の電気分解とその後の抽出、あるいは-249 °Cでの蒸留によって得られる。これらの高価でエネルギーを必要とするプロセスを回避するために研究者らは、水素(H2)とD2を多孔性材料で分離する、量子ふるいわけというプロセスで分離することを考えていた[1]。ちなみにこの方法古いわけではない。ここでは量子力学特性であるゼロ点エネルギーの違いのため、ある特定のサイズの孔がD2とそれより軽いH2を仕分けしうる。材料の条件は、その孔が2オングストロームサイズでかつ、そこに素早く化合物が満たされて、その間D2はほとんどキャッチしないことである。そのなか研究者らは、構造的に類似の分子の中の開口部を調整し、D2をふるい分けることができる小さな孔と、D2を貯蔵できる大きな孔をつくった。これらの材料を共結晶化させて、優れた選択性を示す材料が提供された。これで重水は無用に、でもジュースは欲しいです。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 4, p. 11.

DOI: 10.1126/science.aax7427

19.11.25

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ジャンプする

 クモ、スパイダー、優れたハンターである。失敗だ〜ということはない、おそらく。かなりな距離から餌食を驚かせて、ついで素晴らしい奥行き知覚で、襲いかかる。遅くはない。その二つの目は二層になった網膜をもつ。そこで二つの網膜の層のイメージの相対的な鮮明さが比べられて、それをもとにして距離が見積もられているらしい。ただしクモの心理状態を読むことはできないため実際にクモがどのようにこれを行なっているかは確かではない。それでもこれに触発された研究者らは、クモの網膜を模倣して、携帯電話やロボットのための単純で低出力なセンサーを作成したいと考えた[1]。現存するそれは、赤外光源か可動部品あるいはその両方を必要とする。それに対してある特殊な手法で光と相互作用できる設計された構造を付与した材料から網膜がつくられた。特に素子はパターン化された酸化チタンのナノ柱状構造を持つ二つの領域で出来ていて、それぞれが異なる焦点距離を持ち、クモの網膜が如くである。最後に直径3 mmの金属と光学センサーが組み合わされて、集めたデータをもとにイメージデータの深さが決定された。苦悶するなか、クモに到達したのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 November 4, p. 11.

DOI: 10.1073/pnas.1912154116

19.11.24

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一度だけ出会って

 お別れ。おバカねえかもしれない、プラスチックとの関係。それに対して科学者は、使い捨てプラスチックをより付加価値の高い製品に変換する方法を考案してきた。その中今回、ポリエチレン、しかもプラスチックバッグに使われているそれも、選択的にモーターオイルや洗剤や化粧品で利用するワックスに変換できる、ワックワクスる触媒が開発された[1]。研究者らは、白金ナノ粒子を、原子層成長法を使ってSrTiO3に分散させた。ついで白金ナノ粒子のサイズと分布を制御し、ポリエチレンの過剰な分解で軽量な価値の低い炭素水素に変換されるのを最小化し、その代わり高い品質の液体炭化水素を導いた。触媒は従来の水素化触媒よりも高性能で、出発のポリエチレンが期待の化合物に変換される。触媒は再利用可能であるものの、現状では高価すぎて、反応のスケールアップや数千時間の利用には耐えることができない。それでも高い可能性を有しているため、さらに汚物、染料、食品の残りが混入したプラスチックでも試験が期待されている。ポリエチレンが一連の液体炭化水素になったんか。

[1] Chemical & Engineering News 2019 November 4, p. 8.

DOI: 10.1021/acscentsci.9b00722

19.11.23

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気候変動によって

 干ばつの頻度が上昇し、その期間も長くなっている。農家の方が頑張ってもその脅威は消えない。その中研究者らは、植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)を真似た化合物を同定した。これを植物に蒔くと、植物が水を保持する一助になることがわかった[1]。ただしその化合物であるクイナバクチンは、いくつかの鍵となる穀物、例えば小麦やトマトでは有効ではなかった。研究者らは構造研究を行い、ABAそのものは二箇所で受容体にバインドする一方で、クイナバクチンがバインドできる部位は一箇所しかないんど、であることを解明した。これをもとに二箇所バインドを可能にする新たな化合物であるオパバクチンが開発された。得られた化合物を実験室でトマトや小麦で試験をしたところ、以前のものに比較すると、高い有効性を示し、持続する効果も高かった。この新たな化合物オパバクチンは、農地の干ばつ対応に有効であることも明らかにされるはずである。オパバクチン、オバマ前大統領もご存知でしょうか。きちんとお伝えするように。

[1] Chemical & Engineering News 2019 October 28, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aaw8848

19.11.22

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おしゃぶりは

 よく泣く赤ちゃんをなだめることができる。一方で両親はおしゃべりが弾むかもしれない。研究者らは今回、この赤ちゃんの必需品を、ハイテクなセンサーに仕上げて、幼児の唾液の中の、グルコースや他の化合物のレベルを追跡できるようにした[1]。市販のおしゃぶりに使われるシリコンに、3-Dで印刷した電気化学センサーを取りつけた。さらに唾液が赤ちゃんの口に戻らないように三つのポリスチレンバルブを含む小さなポリ(ビニルクロリド)を挿入した。おしゃぶりをしゃぶると唾液が出てきてチューブに入る。そこでは使い捨てのグルコースを酸化できる酵素でコートした電極と接触できる。おしゃぶりのキャップのエレクトロニクスは、グルコースのレベルと相関する電流の変化を測定しそのデータをスマホに送る。唾液が酵素と接触しシグナルを発生させるまでおよそ5分である。研究者らはまた、タイプIの糖尿病患者4人の食事前と後の唾液サンプルで素子の試験を行った。その結果は、血液によるグルコース検査の結果と一致していた。ハイテクおしゃぶりで、快適になったかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 28, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.analchem.9b03379

19.11.21

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ジカウイルスに

 ネズミが感染すると、脳欠損を引き起こすのは時間の問題である。それに対して今回新しく生まれたネズミに、ドコサヘキサエン酸(DHA)を与えると、この損傷のいくつかは遅くなることが報告された[1]。南アメリカや中央アメリカでの最近のジカ大流行は、新生児で目立っている。すなわち脳の成長不良による小頭症である。その中研究者らはネズミで、ジカのタンパク質Eが、内皮細胞のトランスポートタンパク質であるMfsd2aと相互作用し、タンパク質の破壊を促進することを発見した。Mfsd2aは、DHAを脳の内皮細胞に循環させる手助けもしていて、タンパク質を不活性化する変異が起こると小頭症を引き起こす。DHAは必須脂肪酸で、Mfsd2aのない細胞は、この分子を取り込むことができない。ネズミが生まれてすぐにジカに感染した後に、これらのネズミにDHAを処方すると、より大きくて重い脳になることもわかった。DHAはすでに、妊婦さんへの栄養補助食品として推薦されていて、ジカ感染のエリアでもそれを摂取することが提唱されている。DHAのジカ感染予防への効果、実感できますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 28, p. 8.

DOI: 10.1126/sciadv. aax7142

19.11.20

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乳酸は

 調節機能があるもののその機構が明らかではなかった。今回研究者らは、DNAを包んでいるたんぱく質の巻き糸であるヒストンを、乳酸が化学的に修飾し、その効果が発揮されることを示した。このヒストンについての報告は、ヒューストンからではなくてシカゴからである[1]。研究者らは高性能液体クロマトグラフィー・質量分析装置を使い、ヒストンタンパク質の中のリシン残基に結合している28の部位を同定した。乳酸は代謝物であり、いくつもの免疫機能を制御している。また今回の報告は、乳酸の後成的修飾の最初の報告である。研究者らは、細胞を低濃度な酸素やバクテリアに晒すと、そのいずれもがヒストンの乳酸化を促していることを発見した。免疫細胞の一種であるマクロファージでは、乳酸化が創傷治癒に含まれる遺伝子を刺激する。研究者らは、このヒストンの乳酸化が、恒常性の維持を助けていることも提唱している。乳酸ってぎょうさん書きました。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 28, p. 8.

DOI: 10.1038/s41586-019-1678-1

19.11.19

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エピジェネティック時計では

 生物学的年齢を測定するためにDNAメチル化を利用する。その年齢と実年齢の違いは、健康問題を反映しうるため、この時計、放っとけいない。DNAメチル化の年齢を推定する最も一般的な方法は、生物学的年齢と実年齢の違いを、3から5年の範囲で示している。この比較的小さな違いは大人の場合だけど、子供では大きな違いが生じる。今回研究者らは、子供に特定したDNAメチル化年齢の推定方法を開発した[1]。まず0歳から20歳までの子供から成人の頰の細胞を集めた。1032のサンプルの中の94のDNAメチル化部位からのデータを使い、モデルが構築された。さらにこのモデルが689のサンプルで試験された。結果として得られたDNAメチル化年齢モデルは、試験をしたサンプルで、0から35年の差が見られた。この子供に特異的なエピジェネティック時計を使うとDNAメチル化の理解がより進み、それと子供の健康との間の関係も理解できる可能性がある。今回の研究成果は、非侵襲的な検査で子供の加齢を研究できて、疾病予防にも生かせるかもしれない。雰囲気も醸し出されている。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 28, p. 6.

DOI: 10.1073/pnas.1820843116

19.11.18

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反芳香族性の壁を持つ

 過去にはない、ナノサイズのカゴが報告された[1]。分子は特異的な磁気特性を有していた。ヒュッケル則によれば環状共役系化合物が4nπ電子の場合には反芳香属性である。これらの分子は一般的に不安定で高い反応性を示す。加えて環には常磁性の環電流があってNMRで高磁場シフトが観測される。今回このナノケージ合成のために比較的安定な反芳香属性Ni(II)ノルコロールが使われて、テトラへドラル状の分子内にゲストを保持できる分子として自己集合できるまで置換基と鉄イオンが加えられた。この分子はおそらく、反芳香族ユニットでカゴが構築された最初の分子建築である。またこのホスト分子は二つ以上のゲストや異なるゲストを同時に取り込むことができる。さらに興味あることに取り込まれた分子のNMRは低磁場シフトしていて、これは通常の場合とは対照的である。今回の研究、好奇心が駆動した研究で、成果はさらに好奇心を掻き立てる。その大切さをアピールできる絶好機である。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 28, p. 7.

DOI: 10.1038/s41586-019-1661-x

19.11.17

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土星の衛星である

 タイタンでは、湖、海、雨のもとが水ではなくて炭化水素である。衛星には炭化水素砂丘もあって、100 mの高さまで砂が積み上がっている。これまで科学者は、タイタンの大気で起こる反応が砂丘の粒子を形成させていたと考えていたが、今回の実験では宇宙の放射と衛星の表面にある氷のアセチレンとが相互作用して形成している可能性を示唆していた[1]。砂丘の粒子は大気化学で生成するそれよりも100倍の大きさであることから、実験室で銀河宇宙放射線(GCR)の氷のアセチレンへの作用が検証された。GCRそのものは十分なエネルギーを有していないけれども、氷のなかの分子からGCRは電子をキックアウトできて、これもエネルギーを持つ。低圧5ケルビンで、アセチレンを電子が蹴るびん とベンゼン、三つの環が連結したフェナントレンや他の多環芳香族炭化水素(PAHs)の形成が観測された。実際にタイタンで観測されるPAHsは、実験室のそれよりも大きいため、より長い反応過程が含まれている可能性がある。タイタンにアセチレンが、いたいたん だった。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 28, p. 6.

DOI: 10.1126/sciadv.aaw5841

19.11.16

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660百万年前

 小惑星が地球に衝突した。当時は掌握されていなかったこの衝撃による海洋生物の死滅は、大洋が酸性化したためであると考えられていたものの物理的な証拠はなかった。その中今回ホウ素の同位体を使った小さなプランクトンの殻の研究で、当時の大洋のpHが見積もられた[1]。衝撃から1000年以内に大洋表面のpHは0.25ユニットごとに低下していた。さらにこの間に海洋有機体による光合成が半分程度に低下していることもわかった。4万年ほど経過した頃pHは衝撃の前のレベルまで戻っていたものの、生態系が戻るにはさらに多くの年が必要だった。炭素同位体をもとにした調査も行われて二つの仮説が提唱されている。一つは海洋生物すべてが死滅した、もう一つは石灰化したプランクトンだけが死滅した、である。pHのデータとモデルを考慮した結果、大洋の光合成できる生命体が半分死滅し、その後ゆっくりと植物性プランクトンが回復してきたのではないかと、類推されている。この結果は、今の人為的な大洋の酸性化を考察できる成果でもある。正解かどうかは今後です。

[1] Chemical & Engineering News 2019 October 28, p. 4.

DOI: 10.1073/pnas.1905989116

19.11.15

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小さな電子部品は

 一般的に、ロボットグリッパーを使って組立てられる。ロボットは立派〜である。ただしエレクトロニクスの発展は、さらに小さな部品の組立を要求しているが、非常に小さな世界では、表面力が大きくなって、これまでの方法では、部品を選びそれを正確に取り付けることが難しくなってきた。そこで研究者らはどんなに小さなスケールでも作業できるナノチューブをもとにした電圧駆動の表面を開発した[1]。それは熱や化学反応がなくても20 nmのサイズまでの物体を巧みに扱うことができる。それは誘電体である酸化アルミニウムにコートした垂直に配列された炭素ナノチューブでできている。小さな電圧をかけると、電気的に標的の物体を引き寄せる。一旦物体が目的の位置に移動されると電圧が切られて物体が離れる。研究者らは、チューブの密度やコーティングの厚さを変化させて、粘性の高いオンオフ比を達成している。これを使って研究者らは、銀ナノワイヤ、ポリマー、金属ナノ粒子、LEDチップを拾い上げて配置させていた。成功で、ハイタッチである。

[1] Chemical & Engineering News 2019 October 21, p. 11.

DOI: 10.1126/sciadv.aax4790

19.11.14

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リグニンは

 植物の細胞壁にある頑丈な混合ポリマーで、新しい生理活性分子の宝庫でもある、奉公はしないけど。ただしこれを使えるものにすることが難しい。その中今回科学者は、リグニンから医薬品候補化合物に三段階で変換できる方法を報告した[1]。研究者らはまず、以前開発した方法[2]を使って、松のリグノセルロースをリグニンモノマーや植物の糖鎖などに変換した。ついでRu触媒を使って、その中のジヒドロコニフェリルアルコールを単離することなくアミンに変換した。さらにアミンをコリンクロリドからなる生分解性溶媒の中で環化させて、多くのベンズアゼピンを導いた。そのうち14のベンズアゼピンは、人のガン細胞の成長を抑制し、五つは黄色ブドウ球菌を、給金を支払わなくても、殺していた。研究者らはさらに有望な化合物を絞り込み、合成法も改良して、すでに存在する医薬品や、新たな医薬品製造に取り組んでいる。リグニンでリクライニングは製造できるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 21, p. 10.

DOI: 10.1021/acscentsci.9b00781

[2] DOI: 10.1038/s41929-017-0007-z

19.11.13

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赤外とラマンスペクトル

 異なる分子振動を観測することができる。この二つの方法を使うと、より完全な分子の絵を提供することができる。ただしこれらを一つの装置で行うことは難しい。それは、それぞれで使われる励起波長が大きく異なるためである。ラマンでは近赤外(NIR)を、赤外では中赤外(MIR)を利用する。その中今回これら二つのスペクトル測定が行えるシステムが構築された[1]。研究者らはNMRフェムト秒Ti:サファイアレーザーを光源として利用した。光パルスがそのまま、フーリエ変換コヒーレントアンチストークスラマン分光法に使われている。IRスペクトルに対しては、非線形光学結晶がNIRパルスのいくつかをMIRパルスに変換している。研究者らが留守でも、二つのタイプの光パルスがサンプルを通過した後、それぞれのパルスは異なる検出器に誘導される。実際にトルエン、クロロホルム、ベンゼンとジメチルスルホキシドの混合物のサンプルで同時分光の成果が実証されている。赤外とラマン、浪漫もあります。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 21, p. 9.

DOI: 10.1038/s41467-019-12442-9

19.11.12

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JR松本駅から

 徒歩およそ15分、国宝松本城。昔の姿でそびえるお城に入る。急な階段、一段が30 cm以上かもね、という段もある。訪ねる皆さんが慎重に足を運ぶ。6階まで登って降りる。二階には月見櫓。はぐらかすことのないこの櫓、天守閣と一体になって今も残るのは松本城だけとのこと。この日幸いにしてここから月を愛でることができた。城を出てお堀の周りを歩く。写真撮影をしようかなあと思っていたら「シャッターを押してあげましょうか」というポーズの女性。お願いした。フォーカスが甘い。三度試みるも不十分。お渡ししたカメラの不調であるものの「ごめんなさい」というレスポンス。どちらからお見えになりましたか。I am from Thailand.でお別れ。トイプードル二匹とお堀の周りを歩く方から「シャッターお願いできますか」とiPhoneを託された。連写にならないようにシャッターボタンに軽く触れた。いいショットをプレゼントできた。そこには毅然とした二匹もいた。

19.11.11

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有機リン酸塩とカルバメートは

 広く使われる殺虫剤で、アセチルコリンエステラーゼを抑制することで昆虫を殺す。ただし50種類以上の昆虫が、こん畜生と、変異させた酵素であるカルボキシルエステラーゼ(CAE)によってこれに対して抵抗する。今回研究者らは新しい殺虫剤の開発ではなくて、このCAEを抑制しうる分子の同定に焦点を絞った。ここではボロン酸が注目された。コンピューターによって23000以上のボロン酸のCAEへの親和性が確認された。そのうち500を検証し、入手困難なものなどを除いて構造的に幅広い5つの候補を特定した。さらにそこから二つについて、カルボキシルエステラーゼに対してバインドする可能性のあるものを選択、これらに構造が類似の市販化合物を探した。最も有望な化合物と通常の殺虫剤の組合せを、クロバエの幼虫と成虫のアブラムシで試験をした。その結果、通常の有機リン酸塩の殺虫効果が大幅に増幅されていた。加えて人の細胞や生きたネズミに対する毒性も試験し、低い毒性であることも確認した。今後は相乗効果を示す殺虫剤と抑制剤の組合せの安全性をさらに検証する必要がある。検証せんといけんでしょう。ご意見は?

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 21, p. 9.

DOI: 10.1073/pnas.1909130116

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工業染料は主に

 コールタールのような再生できない原料由来である。植物由来の染料は魅力的な代替物ではあるものの、高価で資源集約型であること、合成染料のような性能が期待できない。その中、より環境調和な合成染料合成の方法を探索していたところ研究者らは、黄色、オレンジ、赤色染料を、セルロースとリグニンから合成する方法を開発した[1]。このアイデアは、熱水で5-(ブロモメチル)フルフラールと炭酸バリウムとの反応からカナリア黄色結晶ができるという1911年の報告から、お出でた[2]。研究者らはこれまでバイオマスを原料として高収率で導かれる関連化合物である5-(クロロメチル)フルフラール(CMF)の研究を行ってきた。CMFは炭酸バリウムと熱水存在下、黄色結晶になった。導かれた分子を特定すると、それを微調整して、天然や合成繊維を染めることができる黄色から赤色の複数の発色団をつくった。研究者らは、染料はこれまでリサイクルされたことはないことや染色工業の汚いイメージを世に知らせる必要があることを指摘し、それによって他の研究者らがこの分野に興味を持つことを期待している。染料専用の研究分野が広がりますように、

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 14, p. 9.

DOI:10.1002/anie.201911387

[2] DOI:10.1039/CT9119901193

19.11.9

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遷移金属錯体の

 かたちには、ちょっとした派閥がある。幅つをきかせているのは、八面体、三方両錐形および平面正方形である。科学者は六角形を100年以上前に提案しているが、これまで結晶として捕まえられたことはない。その中今回、ロンドンインペリアルカレッジの研究者らは、三つのヒドリドと三つのマグネシウムジイソプロピルフェニル配位子によって囲まれたPd原子からなる錯体の構造が捕まえられた[1]。平面六角形化合物は、凝縮した金属層や配位高分子の孔で形成しうることは知られていたものの、この配座の遷移金属錯体は驚きである。マグネシウム配位子がPdより電荷密度を受け入れ、ヒドリドは、電子が満たされたPdのd軌道と重なり、化合物を安定化させている。この化学種の反応性はかなり興味があるだけでなく、この成果は、遷移金属と別のあまり知られていない典型元素金属との組合せが、予想外の特性を持つ錯体を導く可能性があることも示唆していた。六角形もかっけいいなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2109 October 14, p. 9,

DOI: 10.1002/anie.201911387

19.11.8

 

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インクジェット技術を

 使ったデジタルデバイスのプリントは、オーブンでのすすぎや硬化のような段階が必要である。それに対して今回初めて、全てをプリントで組み立てた半導体が製造された[1]。素子をつくるために研究者らはエアロゾルジェットプリンティングという技術を使った。それは紙やプラスチック材料の上にインクの層を正確に置く方法である。これによってインクがインクリースするのを回避している。またこのプリント法では、インクを微細な小滴に壊し、バックグラウンドになる溶媒の量を最小化できて、不必要な材料のプリンターの外への洗い流しや蒸発の必要がない。研究者らは最初に、カーボンナノチューブをプリントし、トランジスターの導電チャンネルを形成させて水をもとにした銀ナノワイヤインクを使って電極をプリントアウトした。ついでヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合した六角形の窒化ホウ素とを混ぜた層を塗布して絶縁性を付与し、ついで最後の電極層をプリントし、性能を試験した。得られたトランジスターは柔軟で1000回曲げてもその性能は保持されたままだった。法事でも使えるか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 14, p. 9.

DOI: 10.1021/acsnano.9b04337

19.11.7

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過酸化水素の

 電気化学的な合成法が開発された。それはエネルギーが少なくて、必要な場所で過酸化水素水を製造できて、厄介な安定化剤が不必要である[1]。これまで一般的にH2O2はアントラキノンを含む多段階で合成されており、多くの廃棄物が発生していた。電気化学的合成も知られてはいたが、液体の電解質を使うために、電極で発生した生成物の分離の必要があった。それに対してここでは市販のミクロポアを持つ固体材料が使われて、重量比20%までの濃度で製造できている。高圧の水素と酸素を混合する危険を最小化するために、それらを別の反応器で反応させ、酸化イリジウム触媒がH2からH+を、酸化炭素触媒が酸素からHO2-を発生させている。これらの中間体が、電極に届く前に、イオン交換膜を通過し、お互いが反応しH2O2に至る。この方法は病院などH2O2を必要とする場所でも適用できることからH2O2の移動の必要もない。もし太陽光パネルと水素の代わりに水を使うことができれば、化石燃料が全く必要ない系になり得て、化石燃料のために稼ぎも必要なくなる。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 14, p. 8.

DOI: 10.1126/science.aay1844

19.11.6

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マグカップのような

 セラミックスは、固くて軽量で耐熱性もあって大切である。ただしそれらは脆い。この弱さを克服するために研究者らは3-Dプリンターを使い、強くて延性のあるセラミックスを創成した[1]。このような材料は航空機エンジンなどに利用可能である。セラミックス物体をつくる伝統的な方法は、圧力と熱で、無機固体を溶融するものの、この過程が小さな穴やクラックを生み、材料に負荷がかかると直ちに壊れることになる。それに対して3-Dプリンティングではこのような重大な欠陥なしにセラミックスをつくることができる。研究者らは(メルカプトプロピル)メチルシロキサンとビニルメトキシシロキサンをリン酸オキシド反応剤と混ぜた。これを赤外レーザー光に晒すと、ラジカルが発生し、シロキサンの重合が始まり、固体を与える。ここで二つの光子が同時に到達した時だけラジカルが発生し、それが重合の起こる部位を限定している。未反応のシロキサンを洗い流し、ポリマーを1000 °Cで1時間加熱、有機成分も取り除くと、シリコン、酸素、炭素だけが残る。これによって20μmの幅のセラミックス柱や複雑な格子がつくり出された。それらはこれまでつくられた材料の中で、最も固くて強い設計された材料である。材料は医療にも展開できるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 14, p. 5.

DOI:10.1016/j.matt.2019.09.009

19.11.5

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仏像

 立像と坐像があった。良さそうな像はなどと、比べようもない。中国北魏の頃から江戸末期までの像が71展示されていた[1]。古代より不老長寿がテーマの一つだったらしい。坐像は、あぐら、坐禅か、椅子に座る、現代風に足を椅子に上げた像、時代や地域によっても違っている様子。どの像も、実にきめ細やかなつくりだった。想像して欲しい。表側だけではなくて、裏側も同様。穏やかな顔、凛とした目鼻立ち、勇壮な姿。往時の彫師、匠の技が、生えている。普段は、東京、京都、奈良、大阪の、美術館、博物館やお寺に住む像が一堂に会している。手のひらサイズから、人サイズまで大きさも様々である。韋駄天、如来、観音、見ただけではわからんのん、で解説読ませていただく。禅宗が我が国に入ってきた。それまでの像が「静」だったのが「動」が混じってきたような感じ。キリスト教が禁止されていた江戸時代、マリア観音が長崎でつくられた。白磁や青磁に彫り込まれている。童子を抱くマリア様。抑制的な信仰に長崎奉行の手入れ。1800年の歴史が凝縮されていた。仏像に夢中で、頭ぶつぞう、は回避された。

[1]仏像 中国・日本(大阪市立美術館)

19.11.4

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筆記試験

 卑近な例だと、毎回の講義の後にクイズを出します。通常の試験の小問一つに相当します。答えは主に化学構造式と矢印で記載なので50人ほどの答えの採点は2時間ほどで完了します。2021年度入試から始まる大学入試共通テストでは、国語と数学に筆記試験が導入される予定です。国語は50万人ほどが受験します。先ほどのクイズの採点時間をベースに考えると、一人で採点だと2万時間、一日10時間採点するとして2000日が必要です。ただし共通テストだと、短い間でその結果を各大学に送付しなくてはなりません。このギャップを埋めるために採点者を増やすことになりますが、200人が毎日10時間採点を担当したら10日で完了します。報道によれば1万人ほどを確保するかもしれないとのことです。ただ1月下旬に採点に専念できる人をどうやって確保するのか?一定の採点基準を担保するためには?を含めて課題山積です。筆記試験、ひっきりなしに問い合わせがあるかも。

19.11.3

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同じ学科の入学試験

 受験生は同じ試験問題を解くのが一般的です。例えば国立大学のある学科を受験する場合、前期日程試験、後期日程試験、それぞれの枠組みで同じ試験問題です。それに対して2021年度入試からは、英語民間試験が導入される予定でしたが、様々な課題が指摘されて「延期」になりました。報道されているようにその事前の試験は、複数の民間の団体が提供するため、試験問題(出題の意図も含めて)は団体ごとに異なります。そのためこれまでは「受験生の合否判定は、受験生が同じ試験問題を解いたことが前提」でしたが、今回の制度変更では「受験生の合否判定は、違った試験問題を解いていても点数化すればよい」という方式への大転換です。一方で受験生としては、どの民間試験を受けると自分に有利かということも受験戦略に入れて事前の準備をするでしょう。民間試験を提供する業者さんも「うちの試験が有利ですよ」という競争も始まるでしょう。この点も含めて数年後に導入するかどうか、議論していただけますように、祈っています。民間試験、みかん食べながらでも考えるか。

19.11.2

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大腸菌が

 バイオリアクターにつくり変えられた。それは、精神活性作用を示す、魔法のキノコに含まれる成分である、家宝かもしれないサイロシビンを大量に製造することができる[1]。鬱や別の脳の疾病を治療する臨床実験を行なっていた研究者らは、いずれ大量製造が必要になるであろうと考えた。サイロシビンは数十年前に発見されていたものの菌類が使っている酵素経路が2017年まで明らかにされていなかった。これまでに報告されていた化学合成では、トリプトファンを基にした化合物を出発に、最後の段階でリン酸化されていた。ただしサイロシビンのリン酸部位は不安定で、そのためサイロシビンの合成的なリン酸化は難しい課題であった。一方で生物はリン酸化が得意である。そこで大腸菌を慎重に操作し、リン酸部位も組み込むことができる酵素を生産させた。最適化の結果、バクテリアのバイオリアクターから1g/1Lの量のサイロシビンを製造することができる。サイロシビン、研究者の裁量で市民にも提供されるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2019 October 7, p. 11.

DOI: 10.1016/j. ymben.2019.09.009

19.11.1

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