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ベンゼンの

 無機化合物類縁体で、限りなくベンゼンに近い化合物の合成例はなかった。最初のバージョンは、一世紀ほど前にすでに合成されたボラジン(B3N3H6)であるが、緩やかな芳香属性を示すに止まっていた。その後いくつかの無機ベンゼンが合成されたものの、ベンゼンの性質をむき出しにした誘導体はなかった。それに対して今回研究者らがつくった1,4,2,3,5,6-ジアザテトラボリニン誘導体は、従来のものよりもかなりベンゼンに類似である[1]。ボラジンは、ホウ素原子と窒素原子とが交互で三つずつである一方で、ボリニンは四つのホウ素原子が二つずつ連結し、それらを二つの窒素原子が橋渡しをして六員環を形成しているベンゼンの原子価異性体で青色の固体である。ホウ素上は塩素またはトリメチルホスフィンが結合している。X線構造解析の結果は、分子は平面で完璧なヘキサゴナル中心環であることを示していた。理論計算の結果も、分子の6π電子は、かなり非局在化していること、その芳香属性はベンゼンとボラジンの中間であることを示していた。ボリニンで、人参の色も出せるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 February 17, p. 11.

DOI: 10.1002/anie.201915790

20.3.12

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