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2020年6月

年間およそ

  2000万トンのエチレンオキシドが製造されている。酸素とエチレンとを200-300 °C、3 MPa以下で反応させるが、ほぼ同じ量のCO2も発生する。その半分以上はエチレンの過酸化で、他は発電所での化石燃料の燃焼で発生する。電子化学的な方法がこの量を削減しうるが、エチレンがほとんど水に溶けず、一連の反応が妨げられる。その中今回電解質の中に塩化物イオンを加え、これがアノードとエチレンとの間に電荷を運ぶ媒体として、相互作用を改良することができた[1]。電流は電気化学セルのアノードを通して流れ、塩化物イオンを塩素に変換し、これが次亜塩素酸や塩酸を形成する。次亜塩素酸はエチレンと反応して、エチレンクロロヒドリンを与える。一方カソードでは、水が分解し、水酸化物イオンと水素が発生する。研究者らのセルは、膜を含み、それが触媒の電極を分離し、セルのそれぞれの側の溶液が混ざることを防いでいる。アノード、カソード反応の後、セルから二つの溶液を抜き、それらを合わせると、エチレンクロロヒドリンが水酸化物イオンと反応しエチレンオキシドが生成する。同様のプロセスでプロピレンオキシドも合成することができる。さらに利用されている電流密度は、商業運転への応用も可能な値である。塩化物イオンが、ええんか。い〜よん。

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 15, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aaz8459

20.6.30

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メス鳥は

 同じ種類のオス鳥よりも、抑えられた色彩の羽を持っている。今回カナリヤや関連する鳥で、この違いは赤や黄色の色素分子を破壊する酵素をコードする遺伝子よる可能性があることが報告された[1]。羽の現象に含まれる機構を調査するために研究者らは、ショウジョウヒワを繁殖させた。そのオスとメスはほぼ同じように見えて、カナリアと、かなりやなあ、同一だけど性的には二色型色覚を示している。この雑種のゲノムとカナリアのそれを比較したところ、三つの遺伝子を含むある領域だけに違いが見られた。その遺伝子BCO2だけがオスとメスで違って発現していた。BCO2は酵素であるβ-カロテンオキシゲナーゼ2をコードし、その酵素は赤みがかったオレンジ色の色素であるβ-カロテンを分解する。より赤い羽のオスに対してメスはBCO2をより高いレベルで発現する。研究者らは、これはエストロゲンのBCO2発現への影響ではないかとしているが、それ以上の機構解明はここでは行われていない。カロテンを借りてんで、色が濃くなるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 15, p. 9.

DOI: 10.1126/science.aba0803

20.6.29

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音波で

 空中浮遊する液滴を使って、反応剤の量や温度を正確に制御することが可能になった[1]。これによってフラスコ表面の影響を除去できて、スペクトルによる反応解析をスムーズに行うことができる。研究者らは、超音波浮揚装置を使って、異なる空気圧のポケットをつくり、二種類の液滴の浮遊した上下の位置を保持した。浮揚装置からの音波を変化させると、上の液滴は伸びて下の液滴と融合する。これを用いて、酸塩基反応、ロケットの推進剤の自発的な燃焼、液滴と固体結晶の合体の反応が、ラマン、FT-IR、紫外可視吸収スペクトルを用いて測定された。従来の液滴を融合させる技術は、レーザーあるいは電磁力を使っていたが、応用できる化合物が限定的だったのが、今回の方法は色々な化合物に適用できる。装置はまた大気中、別の惑星での反応、小さなサンプルサイズで医薬品化学も展開できる。ただし大気圧依存であるために、真空中の反応には適用できない。夏で冬でも、浮遊する液滴、素敵です。

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 8, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.analchem.0c00929

20.6.28

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芸術作品の年代特定には

 放射性炭素を使った技術が使われている。海外の絵画に含まれる炭酸鉛が標的である。ただしカンバスの端から得たサンプルはしばしば、異なる色の炭酸塩や白亜のようなペイント充填剤を含み、結果を混同させる。この課題を避けるために研究者らは、カンバスからのサンプルを350 °Cに加熱し、生じる二酸化炭素を集めた[1]。炭酸鉛は、他の炭酸塩よりも低い温度で分解するために、この方法は芸術作品の年代特定に必要なC-14の単離を可能にしている。さらにより年代が新しい絵画のサンプルでは、より古い作品と比較して、より多くの脂肪酸が含まれていることも明らかにした。これは加熱前の結果であるが、これによってさらに正確さが向上する。研究者らは、すでに炭酸塩の量が明らかになっている絵画サンプルにこの方法を適用して、1700年代の作品であると結論づけることが出来たことから、新しい方法の妥当性を評価している。カンバスからのサンプルで芳しい成果が得られた。さらなる研究にカンパも

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 8, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.anal- chem.0c00530

20.6.27

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不斉水素化は

 分子状水素を使った二重結合の還元で立体中心を分子に付与する。ただし不斉水素化はオキシムのN–O結合の切断も引き起こしてしまう。キラルオキサザボロリジンボラン付加物を使ってエナンチオ選択的にオキシムをヒドロキシルアミンに還元することは可能であるが、この反応では好ましくない副生成物も与え、また費用もかかるために、大スケールのプロセスにはそぐわない。それに対してここでは、Irとキラルシクロペンタジエニル配位子との組合せが酸性条件下でオキシム還元を達成することが報告された[1]。反応はオキシムエーテル、N-OHを持つオキシムでも、きしむことなく進行する。これによって98%以上の選択性で期待の鏡像異性体を導くことができる。実際0.05 mol%の触媒を使って25 gのオキシムが水素化されている。反応は期待のメトシキアミンを定量的に与え触媒は不活性になる前に4000回反応を促進した。この発見は、水素化が難しい基質の反応の詳細な設計図を示しており、触媒としてキラルシクロペンタジエニル金属錯体の有用性が強調されている。オキシム還元の成果、おっきいし、と知らしむべしや。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 8, p. 9.

[2] DOI: 10.1126/science.abb2559

20..6.26

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英国の研究では

 11500人のCOVID-19の患者さんに様々なタイプの処置が施されている[1]。そのうち2104人には、少量のデキサメタゾンが錠剤としてあるいは点滴として10日間使われた。その結果、人工呼吸器をつけた患者さんでは死亡者の割合が1/3、また酸素吸入していた人では死亡者の割合が1/5低下した。デキサメタゾンは、COVID-19が重篤になった時にも起きる免疫の過剰反応を抑制できることを期待して広範で利用されている。今回安全にそれが使われている点は特徴的であるが、以前のSARSを含む感染症で使われた場合は大量の薬が投与されていたこととは対照的である。ただ今後多くのデータが必要であること、今回論文として発表されているわけではない点、またウイルスが張り切っている時には本来、免疫系はそれを抑制するために稼働しなくてはならないが、もしこの早すぎる時期にデキサメタゾンを投与してしまうと、却って逆効果になってしまうことも指摘されている。デキサメタゾンで目覚めたぞん」になるまでさらに検証が必要である。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 22, p. 3.

20.6.25

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ナトリウムのような

 アルカリ金属を液体アンモニアに溶かすとカラフルな色を呈する。金属が電子を放出し、これによって深い青色の色相ができる。この色相で次に何が起きそうか。金属がさらに溶けると光沢のある青銅色に変化する。ただここで青から青銅へ変化の過程は未だに謎だった。今回研究者らはX線光電子スペクトルやコンピューターモデルを使って、溶媒和電子が色の変化の間にどう振る舞うかを明らかにした[1]。溶解金属が低濃度の場合には、それぞれの溶媒和電子は、10から12のアンモニア分子のゆったりした殻の中に含まれている。この場合電子は赤色領域の光を吸収するために鮮やかな青色になる。金属をさらに加えて溶媒和電子も増えると、電子はそれぞれのアンモニアの中で対になり、さらに濃度が濃くなると、エネルギーレベルが徐々に曖昧になって、金属で見られる伝導体を形成する。その結果プラズモンとして知られている、電子の海の中の波が溶液の青銅色を生み出す。溶液の青銅色を目視できるまでの段階でも光電子スペクトルは、伝導体やプラズモンの形成を示していた。ナトリウムがどうなっとりうむか、分かってもらえたでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 8, p. 8.

DOI: 10.1126/science. aaz7607

20.6.24

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太陽系外惑星を

 研究する際には、惑星の大気を通して放出される光の分析が最も良い方法である。ただし多くの太陽系外惑星は、エアロゾル粒子が漂い、これが光を遮断するモヤや雲を形成し、良質なスペクトルデータを集めることが困難になる。その中今回29のガス太陽系外惑星が新たに分析されて、そこにはシリケートと炭化水素の二種類のエアロゾルだけが存在し、それがモヤや雲を形成していることが報告された[1]。研究者らは様々な温度や重力の太陽系外惑星のスペクトルを収集し、それらをコンピューターモデルに入力し、エアロゾルの形成過程を計算した。その結果、より高い温度の惑星では、シリケートが主で、677 °C以下ではメタンが存在しそこから炭化水素も形成して全体に広がっていた。一方で鉄や硫化物鉱物はほとんど観測されなかった。ここで得られたモデルは、より小さくて温度の低い、地球外生命が存在するかもしれない惑星を研究する一助にもなり得る。「そのモヤはもしや」で始まった研究、もうやめとこではないね。

[1] Chemical & Engineering News 2020, June 8, p. 7.

DOI: 10.1038/ s41550-020-1114-3

20.6.23

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イカやタコのような

 頭足動物は変装の達人ならぬ達動物である。環境に応答して特殊な肌の色が変化する。このカモフラージュの能力を研究者らは人の細胞に付与した。研究者らは人の腎臓の胚細胞を遺伝子改変し、頭足動物の肌の細胞や臓器に光学特性を与える反射と呼ばれるタンパク質を製造した[1]。反射タンパク質は、人の細胞の屈折率を変化させた。反射ナノ粒子のある細胞の領域は、頭足動物の肌とほぼ同様の屈折率を示した一方で、ナノ粒子のない領域では、哺乳類の細胞の細胞質と同様の屈折率を示した。そこで研究者らは反射ナノ構造を含む細胞の光学特性を、それらが成長する溶液のイオン性を調整することによって、チューニングできた。頭足動物の細胞を実験室で成長させるのは難しいことから、遺伝子改変した人の細胞は反射に関する研究の道を開く成果である。また反射ナノ構造は、位相差顕微鏡法での生体分子タグとして利用できる。頭足動物の体の中の法則、明らかにされようとしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 8, p. 7.

DOI: 10.1038/ s41467-020-16151-6

20.6.22

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タンカーやパイプラインからの

 オイル流出は、海洋生物へのダメージや環境汚染を引き起こす。現状ではこの漏れたオイルの適切な回収方法が十分ではない。化学分散剤は、オイルを小さな液滴に変換できて水の中に分散するが、野生生物に悪影響を及ぼす。代替法は、大体、高価で有毒あるいはスケールアップできないという課題があった。それに対してここでは、単純な浸漬被膜法が開発された[1]。グラファイトと酸化鉄ナノ粒子の複合フィルムとポリウレタンや他のスポンジとが組み合わされている。フィルムには酸化マグネシウムも利用できて、いずれも安価で豊富に存在する環境負荷の小さな出発材料で水性スラリーである。これを通常のポリウレタン製の家具のクッションに塗布すると、様々なタイプのオイルを吸着できるスポンジができる。モデルケースでの試験ではスポンジの重さの30倍のオイルを、広いpHや水中塩分の濃度の範囲で吸着させることができてかつ、何度もほぼ同じ性能で利用できた。ナノ粒子がスポンジに磁性を持たせていることから、磁場でスポンジ誘導することができて、剥がすときは、物理的な接触なしでラジオ波の加熱を利用できる。高性能スポンジ、凡人には思いつかないか。

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 8, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.iecr.0c01493

20.6.21

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低分子オレフィン

(エチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン)からポリマーを合成するときは、アルキンを混入させないことが重要である。アセチレン、プロピン、ブチンのような低分子炭化水素は、水蒸気改質の副生成物で5 ppmのレベルで存在すると重合触媒を汚染する。アルキンを除去するために、ポリマー合成者は、Pd触媒を使ってそれらを部分的に水素化する。ただしこの方法は高価で、過剰な水素化が進行した炭化水素もできてしまう。そこでアルケンからアルキンを分離する方法として、安価なニッケルを混ぜたゼオライトが利用できることが報告された[1]。研究で使われたゼオライトであるファウジャサイトをNi(II)の足場として作用している。ファウジャサイトの孔をNi(II)が満たしてガス状のオレフィン–アルキン混合物がそこを通過する時にそれがアルキンと錯体を形成する。この材料を使って低級オレフィンに混入するアルキンを1 ppmに抑えることができている。ここではNiがポイントで、Cu やZnでは、同様には働かない。またそれを150 °Cに加熱すると、Ni-ゼオライト材料を再生させることも可能である。ゼオライトもおらんといかんです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 11.

DOI: 10.1126/science. aay8447

20.6.20

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スペインとイタリアでの

 COVID-19患者1610人のゲノム研究の結果、O型の人よりもA型の人の方が重度の呼吸器不全になる可能性が高いことがわかった。そこで患者のゲノム配列と2205人の健康人のDNA配列とが比べられた。その結果DNAの二つの領域が、人の病気の重度とかなり関連していることがわかった。それらのうち一つは人の血液型をコードする遺伝子を含んでいた。結果は、medRxivに審査前の論文として掲載されている[1]。この結果について2002から2003年のSARSの研究に関わった研究者らは次のように類推している。血液型は特殊な糖鎖分子で決定されている。それは血液細胞や他のタイプの細胞のタンパク質あるいは脂質と連結している。A型B型の人はそれぞれのAまたはBの糖鎖抗原を有している。一方でO型の人はどちらの抗原も持たない。そこでA型の人の免疫系はB型抗原に対する抗体を、B型の人はA型抗原に対する抗体をつくり、O型の人は両方に対する抗体をつくる。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質はかなりグリコシル化されているために、ホストの酵素を借りてさらに糖鎖をもらうことになる。またスパイクタンパク質は、感染したホスト細胞の血液型の抗原も取り込む。そこでA, Bいずれの抗原にも抗体があるO型では肺疾患に対して対応できるのかもしれない。この肺疾患についての情報、配信可能です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 15, p. 7.

DOI: 10.1101/2020.05.31.20114991

20.6.19

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黒人でない研究者へ

 #ShutDownAcademia, #ShutDownSTEMというバナーで「通常の業務を一旦置いて、変化を促すための具体的な行動を」と6月10日に呼びかけられた。ある化学者によれば「これは普段から行っている活動の拡大であること、科学社会でも未だに黒人として人種問題を避けることはできず、様々な場面でその課題に向き合っている」とのことである。別の先生は「今回の感染症のパンデミックが黒人に不相応に影響しているとしたら、コロナウイルス対策の継続がBlack Lives Matterの原因と合致している」と指摘している。人種問題について学ぶ日を設け、どうすれば黒人社会と協調できるかを議論したグループもあった。UC Berkeleyのある研究グループは、通常の活動を延期しBlack Lives Matterについてグループミーティングを行った。また学生が主催する「多様性、平等、多様性の受け入れについての講習会」も開かれた。同じ週、ブラウン大学、ハーバード大学、UCLA、UC Berkeleyなどでタウンホールミーティングも開催された。ある黒人学生は「COVID-19に対して向き合ったときの心遣いと援助で、人種問題や多様性にも向き合ってほしいこと、今回の抗議活動が終わった段階でやるべきことが目に見えない限り実際の問題は解決しないこと、大学がより多くの経費を白人以外の学生の採用や雇用に使うことを目にする機会がほしいこと」と述べていた。6月11日別の大学は、過小評価されたマイノリティーのグループからの教員の採用、雇用に関する概要を公開した。公開まで、迂回も必要だったのかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 15, p. 6.

STEM: Science, Technology, Engineering, and Mathematics

20.6.18

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数時間後に取り下げられた

 エッセイが取り扱った論点の一つが研究者の多様性である[1]。「多様性を推進する努力は、能力主義を犠牲にして、ある特定のグループの人を優先的に受入れてしまっている」と記されている。これが掲載されたAngewandte Chemie(AC)は、このエッセイの採択に関わった二人の編集委員を停職とし、審査に関わった人には今後審査を依頼しないこととした。一方でこの雑誌の16名の国際諮問委員が辞任したことをアナウンスした。その直前委員らは「今回のエッセイそのものやそれが出版されたプロセスは、より広い私たちのコミュニティや社会を反映させた方法で、委員会を再構築する機会を雑誌に与えている」と声明を出している。さらに辞任した委員の一人は、今回の例に加えて「ACは、equality(平等であること)に関する課題を解決する点で、リーダーシップが相当欠如している」と述べている。またこのエッセイを批判する化学者の一人は、「エッセイにある意見は、過小評価されたグループに対する表立ったあるいは隠れた差別の問題を適切に取り組んでこなかった化学コミュニティが抱える、より大きな問題を示し」「エッセイの取り下げにはとどまらない」とし「差別を助長するような蔓延する有毒な文化の解体が必要である」と指摘している。一方でエッセイの著者は、彼自身の研究グループは多様性があり、多様性に反対しているのではなくて、ある特定のグループの人間が優先的に雇用されることに反論しているとしている。またエッセイ取り下げについてACから事前の連絡はなく、自分やエッセイを審査した審査員の経歴を台無しにするような行為で検閲以上であると言い、エッセイは取り下げるべきではなくて、反証を書く化学者を招待すべきだったと指摘している。エッセイに一斉に注目が集まっている。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 15, p. 4.

20.6.17

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新型コロナウイルスが

 蔓延する2019年末の数ヶ月前、不可解な肺疾患で多くの患者さん(800人以上、そのうち6人が死亡)が、緊急治療室に運びこまれた[1]。医師らは、これは抗原によるものではなくて蒸気を吸う製品によるものであると判断した。その後、この疾病は、EVALI(日本語では、電子タバコまたは蒸気製品関連肺疾患か)[2]と呼ばれるようになった。そこでEVALIに関するevaluationが始まった。成分の試験の結果、最も疑わしい化合物が酢酸ビタミンEだった。これは偽造で違法なカンナビノイドをベースに製造された蒸気製品の中の汚れ落とし剤として使われている。ただし酢酸ビタミンEがこのような病気をどのようにして引き起こすのか、またそれは単独で作用しているのか謎ばかりである。この謎をなぞるように詳細がStereo Chemistry[3]で紹介されている。蒸気の吸い込みの複雑な化学、調査の結果得られたいくつかの証拠、さらに昨年の夏の悲劇的な出来事に関する蒸気製品解明の詳細、それを受けた化学物質取締り機関への注意喚起についても述べられている。

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 1, p. 11.

[2] EVALI:  E-cigarette or Vaping Product Use-Associated Lung Injury

[3] https://cen.acs.org/biological-chemistry/toxicology/Podcast-What-we-still-dont-know-about-the-chemical-culprit-in-vaping-illnesses/98/i21?utm_source=Print&utm_medium=Print&utm_campaign=CEN%20

話の英文の記載あり、リスニングスキル向上にも使えます。

20.6.16

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合成ペプチドは

 これまで固相法を用いて導かれていた。そこではポリマー残基の上にペプチド鎖を並べることができた。固相法、中身も濃そうだけど、一度に50以上のアミノ酸の合成は、ペプチドの凝縮や、必要なアミノ酸を欠いたペプチドが副生してしまうために、できなかった。それに対して今回の方法は、90 °C という比較的高い温度で反応し、アミドカップリング反応を行い、副反応より速く目的の反応を進行させている。自動高速フローペプチド合成と呼ばれるこの方法は、アミノ酸を、残基一つ当たり2.5分の速度で成長するペプチド鎖にアミノ酸を付加させることができる。すなわちこの装置「Amidator」は数時間で長鎖のペプチド合成を可能にしている。従来の、遺伝子改変した微生物や短いペプチドをつなぎ合わせる方法は、数週間から数ヶ月を要することとは対照的である。実際にAmidatorで製造した九種類のタンパク質は、正しい質量を示し、それはまたリボソームと同様の働きを示した。Amidatorから、ペプチドがたくさん、編み出た〜。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 10.

DOI: 10.1126/science.abb2491

20.6.15

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シトクロムP450は

 酸化還元酵素ファミリーである。ただこれらは結晶化が難しく遺伝子情報の解読も進んでいない。そのファミリーの中のCYP116B46は好熱性細菌でつくられるが、その構造解析に研究者らは成功した[1]。これまでこの挑戦的課題に取り組んでいたグループは部分構造しか示すことができていなかった。この成果によって還元酵素ドメインや電子移動のパスの遺伝子操作が可能になる。CYP116B46は比較的安定だったためにX線結晶構造解析を行うことができた。タンパク質は、ヘムドメインとフラビンモノヌクレオチド(FMN)を含む還元酵素ドメインからできている。これら二つの部位は、鉄イオウクラスターを含むフェレドキシンドメインを介して繋がっている。FMN部位と鉄イオウクラスターの距離が近く、直接の電子移動が可能である一方で、ヘムはこれらのクラスターからかなり離れていて直接の電子移動はできない。そのため電子は、タンパク質の中の別の極性残基を介して循環している可能性が示唆されている。このことは、バクテリア酵素の低い活性を説明する一助にもなるだろう。シトクロムP450、知っとくといいです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 9.

DOI: 10.1038/ s41467-020-16500-5

20.6.14

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国勢調査員を

 推薦するようにとのお達しを受けた。期間は一週間、仕事内容の詳細は調査員になった人に市が直接説明するとのこと。急ぎお願いして名簿を作成した。それを提出したものの、この仕事お願いしていいものかと改めて、総務省のウェブサイト[1]を確認。70万人程度の方が調査員になり、その方々が各家庭を訪問して調査についての説明と書類の配布、回答確認リーフレットの配布と調査票の回収、最後に調査票の整理と提出、とある。お願いは出来たものの9月半ばにマスクをして各家庭を訪問、暑さに加えて不審者と間違えられるかも。この場合マスクでリスクが増大する可能性あり。こりゃあ困ったなあと、ある方にお願いしたところ、総務省統計局の別のサイトを教えていただいた[2]。令和2年国勢調査では、「ご不在の場合は、直接、郵便受け・ドアポストなどに入れさせていただきます」「インターネットや郵送での回答のお願い」が記載された下の行には「この場合、国勢調査員が調査票回収のために訪問することはありません」とのこと。総務省は5月上旬には確定していた様子。それでも市によっては従来通りの業務で募集を継続しているところもある。この情報、隠さんと、多いに拡散してほしい。

[1] https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020campaign/about/

[2] https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/covid-19.html

20.6.13

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多糖合成は

 タンパク質や核酸合成よりも、多様な連結構造があるため、挑戦的な課題である[1]。たとえ、短い多糖でも、数週間を要する。実際これまで合成された最も大きな糖鎖は92糖が連結しているが、合成が完了するまでに2年を要している[2]。その中研究者らは2001年、自動固相合成法を多糖合成に適用することを考えた。機械を使って一連のグリコシル化反応で、一度に分子の一つのモノマーを成長させた。多糖が望みの長さになった段階で、それらを樹脂から切り離して精製した。その結果100ユニットの糖鎖高分子合成を200時間以内に全体収率8%で達成している。この反応条件の最適化には20年を要している。その間、それぞれのボトルネックとなる段階が改良されてきた。例えば数百の反応条件に耐えることができて、かつ必要な時には目的の分子を簡単に取りはずすことができる、固相樹脂へのリンカーを開発した。また精製や質量分析法もバージョンアップし、合成された極端に長い多糖の正確な分析を可能にした。今回の系は、生物でのバイオポリマーの役割に関する研究の一助にもなる。多糖がフロンティアに立とうとしている。言った通りでしょ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 9.

[2] DOI: 10.1038/ ncomms14851

[3] DOI: 10.1021/ jacs.0c00751

20..6.12

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パーあるいはポリ

 フルオロアルキル化合物(PFAS)が工場の48 km風下で観測された[1]。このことは工場からの大気への風に乗った流れが、有毒なPFASを環境に拡散していることを示していた。さらにPFASの工場から大気への移動はこれまで考えられていた以上に幅が広い。またこの地域ではかつてパーフルオロオクタン酸(PFOA)が放出されていて、さらにこの発がん性物質に置き換えたGenXと呼ばれる新規なフッ化エーテルも製造されている。このGenXは加水分解を受けて、健康リスクが明らかになっていないヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸(HFPO-DA)に変化する。なお今回の研究では工場施設の風下にある水や土壌のサンプルを集めて、質量分析によってPFASを検出し定量化されている。論文の第一著者はオハイオ州立大学の四年生である。これによって得た発見は、PFOAの拡散も風が後押ししていることに加えて、大気に放出されたGenXに関連したHFPO-DAが土壌や水を介して移動していると科学者に注意を促すものでもある。土壌をどうしよう、同情を超えた対策を

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 8.

DOI: 10.1021/ acs.est.9b07384

20.6.11

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ティタバワシー川が

 5月19日に氾濫した。ダムも決壊しミシガン州ミッドランドにあるDowの製造施設も被害を受けた。5月22日米国の民放テレビ局であるCNBCが訪ねた際にDowのCEOは、閉鎖してある池には、塩があって、これは地下水の改善のためのもので化学的な危険因子はなく、何かが漏れ出したことはないと述べた。このサイトでは一世紀以上に渡ってケミカルの製造が実施されて、製造現場やその周辺が汚染されていた。とりわけ塩素がもとになったケミカル製造の結果としてダイオキシンが観測されていた。米国環境保護局(EPA)の測定では、ティタバワシー川に沿ったところの堆積物で、ダイオキシンレベルの上昇が見られている。CEOは洪水が堆積物の中のダイオキシンをかき混ぜたという構図にはなっておらず、実際に2017年の洪水ではそのような影響はなかったと述べている。ただEPAとともにテストすることは強調した。気候変動に関するコンサル会社のCEOは、ミッドランドで起きたことは一例であり、化学会社は気候変動に伴うリスクがこの10年で上昇し今後10年さらに上昇することを考えるべきであると警告している。これは異国のことだけど、考慮しなくては。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 13.

20.6.10

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ある企業の抗原テストは

 サンプルを鼻あるいは鼻の奥や喉から採取する。集めたサンプルは、ウイルスを壊す溶液に加えてタンパク質を認識できるようにする。すなわち得られた溶液を試験紙に加え、もし溶液にウイルスタンパク質が含まれていたらそれらは試験紙の上に広がり、それが結果としてモノクロナール抗体と呼ばれる抗体に捕獲される。その抗体はSARS-CoVヌクレシオカプシドタンパク質の特異的な部位を認識できる。この抗体はまたSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の同じ部位にバインドすることも期待されている、次に蛍光を測定するデバイスが試験の結果を読み取る。ただしこの企業の試験で発光するプロセスの詳細は明らかにされていない。なおこれまでの類似の抗原テストでは通常、蛍光分子が連結した二番目の抗体が使われている。この二番目の抗体は抗原–抗体複合体にバインドする。別の抗体検査の方法はポリクロナール抗体を利用する方式である。ここでは複数の部位がウイルスタンパク質の認識に使われる。ただしモノクロナール抗体と比べて、標的としないタンパク質にもバインドすることがあり偽陽性である場合があって結論がでない。ポリクロナール、モノクロナールどちらでも、ウイルスが黒うなるわけではないが、検査法確立に、苦労している。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 8, p. 4.

20.6.9

 

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誰かの心を見る

 また知力を伸ばす。これらは単なる言い回しではなく、高分子科学と顕微鏡法の助けで実際にできることになるかもしれない。化学技術者らは、臓器を柔軟で透明なヒドロゲルに変換する方法をみつけた[1]。その人がポスドクだった頃、脳組織を透明にして、ポリアクリルアミドに固定する方法を開発していた。ただし得られたサンプルは壊れやすかった。それに対して今回、アクリルアミド、交差連結剤と開始剤の量を調整し、交差連結したものではなくて、絡んだヒドロゲルを作成した。長いポリマー鎖は絡み合い、またお互い外れることもできた。これによってゲルは構造的な完全さを有するとともに、柔軟性と伸縮性も併せ持っていた。研究チームはこれをELAST法と名付けた。このポリマーの型が生物組織に入り込むと細胞や分子は、伸縮できるゲルの中で絡み合うことができる。これによって壊れやすい組織を扱うことが容易になり、蛍光標識した細胞や生体分子をつくることが迅速にできるようになる。得られたゲルをもとの形に戻すと、イメージングやラベリングに利用できる。これによって、脳全体のマッピングができることが期待されている。ELASTイラストがもとで言い出すことになったのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 May 25, p. 8.

DOI: 10.1038/ s41592-020-0823-y

ELAST: entangled link-augmented stretchable tissue-hydrogel

20.6.8

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化石燃料に代わるものとして

 きれいに燃える水素が注目されている。水素はしばしば、メタンの水蒸気改質や水の電気分解で生産される。ただしこれらのプロセスは温室効果ガスの発生に伴うエネルギー大量消費プロセスである。気候変動させないアプローチは、太陽光のような再生可能エネルギーをベースにする必要がある。これまで研究者らは、光システムや光増感剤と水素を生産する触媒を組合せてきたが、今回二つの研究グループが独立で、生体系でこの技術を実行する方法を報告した[1]。これによって生命体の細胞が生きている限り持続的に水素を発生させることができる道が切り開かれた。すなわちシアノバクテリアの光化学系I(PSI)と呼ばれる光合成機能の一部とヒドロゲナーゼ酵素とが融合された[2]。もう一つのグループは、緑藻クラミドモナスを使って同様のことを行った[3]。これらの研究は、光から有用な化合物を生産する生体系を開発する重要な礎である。生体系のこと、もっと知りたいけ〜。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 May 18, p. 9.

[2] DOI: 10.1038/s41560- 020-0609-6

[3] DOI: 10.1039/ c9ee03859k

20.6.7

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相転移材料は

 熱を吸収したり放出したりできる材料で、通常はワックスや脂肪酸である。ただしこれらは冷凍温度で使うことはできない。それに対して今回0°C以下でも蓄熱できて光によって熱を放出できる材料が報告された[1]。これは極寒の環境下でも湯沸かし器、エンジンオイルや機械部品を解凍できる有用な材料である。研究者らは光で切替可能なアリールアゾピラゾール化合物から始めて、ドデカノエート基を加えた。材料のE体は、ワックスと同様に60 °Cから90 °Cで融解するのに伴って蓄熱できた。紫外光を照射するとZ体に異性化し、-30 °Cでも安定な液体として2週間保存ができて、そこには熱も同様に貯蔵されていた。ここに可視光を照射すると材料はもとのE体に変化して固体になり熱を放出した。この相転移は数千回繰り返すことができた。この概念は数百mgで披露されたが、実際には数百g必要で、より多くの熱貯蔵も必須である。それでも今回の成果は賢い分子技術で、0 °C以下で液体状態を保つ重要な課題をクリアしている。相転移の利用、想定していましたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 May 25, p. 7.

DOI: 10.1021/jacs.0c00374

20.6.6

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地球の大洋は

 40億トン以上のウランが溶けている。これは地球上にある既知の資源を全て合わせた量のおよそ1000倍であり、世界の原子力発電所を数世紀にわたって稼働するのに十分な量である。ただし「海は広いな大きいな〜」であるため、海水中のウランの濃度はおよそ3 ppbで、これを抽出するのはタフな仕事である。その中、導電性ポリマー鎖によって特徴づけられる新しい吸着剤は、この仕事を容易にすることができる[1]。研究者らは、過去の研究では電気化学的な方法でウランを抽出することが示された有望な多孔性芳香族材料であるMISS-PAF-1のウラン取り込み特性を改良した。得られた材料はサリチルアルドキシム基を含む吸着部位でウランイオンをトラップできる。性能を向上させるために研究者らは、MISS-PAF-1のチャンネルにポリフェニルアセチレンを装着した。これによって導電性の鎖が吸着部位の近くにイオンを輸送する経路を確保し、ウランを濃縮することができる。天然の海水の試験では、修飾したMISS-PAF-1は、修飾していないそれや別の吸着剤より3倍以上のウランすなわち、吸着剤1g当たり13 mgを56日間で抽出していた。吸着剤、祝着至極。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 May 18, p. 9.

DOI: 10.1016/j.chempr.2020.04.012

20.6.5

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バニリンは

 最もよくあるアロマ化合物であり香料である。ただしそのうち85%は石油由来であり、食品化学工業は、より持続可能な原料を見つけようとしている。今回電気化学的な方法でリグニンからバニリンをつくる方法が報告された[1]。まず製紙工業の副生成物で厄介な高分子であるリグニンと苛性ソーダを水に溶かし溶液を加熱する。ついで電流をかけて、リグニンを分解し酸化を経て、バニリン最高収率4.7%を得た。素晴らしい結果ではないかもしれないが選択性は高い。リグニンからのバニリン合成は銅触媒による酸化反応が知られているが、高温と圧力を必要とし、経費のかかる触媒除去のプロセスも含まれること、また全体収率は0.3%である。今回の方法は、世界の紙パルプの90%を供給しているクラフトプロセスからのリグニンを使っていて、年間およそ150百万トンが発生し、これは原油に続く最も大量の炭素を含む、現在の、原材料である。バニラアイスの成分でもあるバニリン、二輪車でも運べます。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 May 18, p. 7.

DOI: 10.1021/acssuschemeng.0c00162

20.6.4

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1910年頃に

 描かれたムンクの「叫び」かつて活気ある黄色だった部分が、灰色がかった白に変化し剥がれ始めていて、美術品保存修復技術者の叫びを呼び起こそうとしている。この変化は、湿気が絵の中の塩素化合物と組み合さりズレが生じ、またカドミウムイエローの中の硫化カドミウムがCdSO4に酸化されて剥がれ始めているためであると報告された[1]。研究者らは様々なスペクトル法を用いて、非侵襲的な方法で、絵から小さなサンプルを取り出し分析を行った。絵の崩壊は、絵の具とそれを塗る方法、環境、保存状態などに依存している。叫びの場合2004年に盗まれて2006年に戻ってきた。おそらくこの2年の間の環境が悪く崩壊を加速している可能性がある。ノルウェーのオスロにあるムンク美術館は2006年以降、暗闇で絵を保存している。今回の研究成果は、CdS絵の具の崩壊の機構に関する貴重な情報をもたらしているとともに、これらの名作を将来に伝えるためにはどのように保存すればよいかを考えるヒントも示している。「叫び」で酒びたりにはなりませんように。

[1] Chemical & Engineering News 2020 May 18, p. 7.

DOI: 10.1126/sciadv.aay3514

20.6.3

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遺伝子操作で

 作成されたアデノウイルスベクターと呼ばれるアデノウイルスは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を人の細胞にエンコードする遺伝子を届けることができる[1]。ワクチンから発生したスパイクタンパク質への免疫系の働きが訓練となって、実際のウイルスの侵入を防ぐことが期待されている。開発した中国企業ではフェーズIの試験を108人で実施した。たいていの人の免疫系が発達していた。実際に感染を防ぐ抗体の濃度も測定した。その結果、高用量の人では75%が、中あるいは低容用量の人では50%の人しか、中和抗体を発達させていなかった。この結果に研究者らは少々落胆気味である。さらにアデノウイルスベクターは、通常の風邪を引き起こすアデノウイルスであるAd5をもとにしている。以前Ad5に感染した多くの人はすでに、それを標的とする中和抗体を持っているため、ワクチンに対して強い応答をすることはあまり期待できない。ただし高用量ではこのことも克服できるものの安全性が課題である。フェーズI試験を受けた人のうち81%が、頭痛、筋肉痛、疲労、発熱があった。さらに今後大規模なフェーズII試験、カナダでの臨床試験も予定されている。臨床試験が、輪唱の如く引き継がれて、あり得んでしょうみたいな大きな成果が出ますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 1, p. 13.

DOI: 10.1016/S0140-6736(20)31208-3

20.6.2

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抗菌グッズが

 品不足である。そこで化学に馴染んでいる人は友人や親戚から、SARS-CoV-2殺菌に有効な代替品はないのかと聞かれるかもしれない[1]。そこでC&ENはガイドを作成した。最も重要なことはラベルを読むことである。米国環境保護庁(EPA)は、殺菌剤の承認規制を行い、ラベルには殺菌剤を安全に使う方法を記載している。例えば排気されたエリアで使うべきもの、混ぜてはいけない薬品のリスト、それを守らない場合には毒ガス発生のリスクや、想定していた効果が大きくなりすぎたり、弱くなってしまったりする。どんな布で使うかもその効果の程度に関わる。例えばペーパータオルを長い時間ある種の殺菌剤につけておくと分解する。ティッシュの中の織物は反応しないように設計されているため、類似品を自分自身で作成するのは避けた方がよい。液体殺菌剤は標的とする表面にスプレーし、ラベルに記載の時間、放置しておくべきである。SARS-CoV-2は脂質膜に囲まれているため多くの殺菌剤によってそれを壊すことができる。商品のいくつかはテストされていて、その結果がEPAのデータベース「リストN」[1]に掲載されている。ラベルを比べるとさらに詳細が分かるかも

[1] Chemical & Engineering News 2020 May 25, p. 24.

[2] https://www.epa.gov/pesticide-registration/list-n-disinfectants-use-against-sars-cov-2

20.6.1

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