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数時間後に取り下げられた

 エッセイが取り扱った論点の一つが研究者の多様性である[1]。「多様性を推進する努力は、能力主義を犠牲にして、ある特定のグループの人を優先的に受入れてしまっている」と記されている。これが掲載されたAngewandte Chemie(AC)は、このエッセイの採択に関わった二人の編集委員を停職とし、審査に関わった人には今後審査を依頼しないこととした。一方でこの雑誌の16名の国際諮問委員が辞任したことをアナウンスした。その直前委員らは「今回のエッセイそのものやそれが出版されたプロセスは、より広い私たちのコミュニティや社会を反映させた方法で、委員会を再構築する機会を雑誌に与えている」と声明を出している。さらに辞任した委員の一人は、今回の例に加えて「ACは、equality(平等であること)に関する課題を解決する点で、リーダーシップが相当欠如している」と述べている。またこのエッセイを批判する化学者の一人は、「エッセイにある意見は、過小評価されたグループに対する表立ったあるいは隠れた差別の問題を適切に取り組んでこなかった化学コミュニティが抱える、より大きな問題を示し」「エッセイの取り下げにはとどまらない」とし「差別を助長するような蔓延する有毒な文化の解体が必要である」と指摘している。一方でエッセイの著者は、彼自身の研究グループは多様性があり、多様性に反対しているのではなくて、ある特定のグループの人間が優先的に雇用されることに反論しているとしている。またエッセイ取り下げについてACから事前の連絡はなく、自分やエッセイを審査した審査員の経歴を台無しにするような行為で検閲以上であると言い、エッセイは取り下げるべきではなくて、反証を書く化学者を招待すべきだったと指摘している。エッセイに一斉に注目が集まっている。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 15, p. 4.

20.6.17

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