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2020年7月

深海に棲む

 生き物の生物発光は、暗闇を鮮やかに照らす。この秘訣は超黒い肌が鍵であることが報告された[1]。16種類の深海魚の肌を分析した結果、これらはわずか0.5%以下の光しか反射しないことがわかった。鳥や昆虫は、超黒い配色を、ケラチンやキチンのマトリックスの中にメラニンを埋め込むことによって、行っている。一方魚の肌の透過電子顕微鏡では、メラニンが詰まった細胞構造しか観察されず、このことは色素だけが色に関係していることを示している。これによって、肌が吸収しない光は脇に飛び跳ねて、近傍で吸収されることになる。この新たに発見されたメラノソ―ムの構造は効果的で、関連のない魚でも見つかる可能性も高い。深海の深さでは、カモフラージュは重要な生存戦略である。隠れる場所がないためフットボール場で「かくれんぼ」をするが如くである。超黒い肌は、ミツマタヤリウオのような大洋の捕食者から魚たちを護るだけではなくて、自身が発する生物発光で、食い尽くされるのを防いでいるかも知れない。深海も研究しんかい、未開領域です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 8.

DOI: 10.1016/j.cub.2020.06.044

20.7.31

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荒野に拡散する

 マイクロプラスチックの動きを追跡している研究者らは、汚染物質が川から大洋に移動するような水路に注目してきた。ただしこの経路では、マイクロプラスチックがさらに遠くの領域に広がっていることを説明することができない。例えばイエローストーン国立公園の川に見られるマイクロプラスチックは、水路では到達することが難しい。研究者らはここではタイヤやブレーキパッドの摩擦によって大気に放出されるマイクロプラスチックの大気輸送に着目した[1]。回収されたタイヤの重量減少などの情報を組み込み、微粒子に対する大気輸送モデルが構築された。その結果大気輸送は、プラスチック微粒子を人口密度の大きい場所から北極を含む遠い場所に移動させていることがわかった。これによって毎年、交通によって生じる微粒子140ktを世界の大洋に、また86.1ktを世界の氷や雪の世界に輸送している。すでに脆弱になっている雪や氷形成の場所へのマイクロプラスチックの堆積は、注視すべきである。これらの黒い物質は太陽光を吸収し熱を発し、雪や氷の融解を誘発する。なお先月、米国西部の自然保護区域から採取したサンプルのおよそ98%にマイクロプラスチック汚染物質が含まれていることも報告された[2]。マイクロに、毎度苦労しつつ、プラスに進んでいる。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 8.

DOI: 10.1038/ s41467-020-17201-9

[2] DOI: 10.1126/science. aaz5819

20.7.30

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熱分解では

 廃プラスチックのようなフィードストックが低酸素条件下で加熱されて、より単純な炭化水素の混合物に分解される[1]。温度、圧力の反応条件の微調整や触媒の使用で、様々な生成物の混合物が、これまでも今後も得られる。熱分解会社エンスィーナは、年間16万トンの廃プラスチックを処理し、ベンゼン、トルエン、キシレンのいわゆるBTX混合物を9万トン製造する予定である。BTXは通常原油から得られる。エンスィーナによれば、設計はモジュール式で、容量は後から追加できる。さらに同様なプラントを世界で四基建設する予定である。Braven Environmentalは、年間6万5千トンの廃プラスチックからディーゼルエンジン用の炭化水素混合物を5千万トン製造できるプラント建設を中央バージニアで計画している。さらにこのプラントではH2とCOが主成分の合成ガスも供給できる予定で、これらがプラントの燃料に利用できる。2021年半ばに稼働予定で、52の正社員のポストも用意される。環境擁護者は、拡張性、有毒な副生成物、使い捨てプラスチックからの逸脱という観点から熱分解の利点について議論している。一方でリサイクル推進者は、エネルギーを節約できること、プラスチックの埋め立てや河川への廃棄を回避できる一助であると反論している。熱分解に、目つぶるんかい?ではありません。

[1] Chemical & Engineering News 2020 July 13, p. 11.

20.7.29

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COVID-19ワクチンを

 開発する四つのグループからその途中経過が公開されている。フェーズII試験の結果を含んでいるが、これらのワクチンのうちどれが有効であるかを示すことは時期早尚である一方、結果は有望でいずれのワクチンもたいていの人で免疫応答が観測されている。ただしこれら四つは違った方法で免疫応答を評価しているために有効性を直接比較することはできず、大規模なフェーズIII試験が必要である。これらのワクチンはいずれもSARS―CoV-2スパイクタンパク質を体内に発生させて、これに対する抗体が2~4週間以内に体内で成長する。ただし課題山積である。スパイクタンパク質にバインドした抗体が感染を防ぐことは保証されていない。ほんのわずかな抗体、すなわち中和抗体だけが、まさにピンポイントで感染を防止することが可能である。ただしこの中和抗体の測定には、より多くの経費と時間も必要である。また抗体応答の寿命も別の因子である。あるグループのワクチンでは、高いレベルの抗体が観測されたものの、2週間後には急速にそのレベルが低下していた。安全性と副作用の問題:四つのワクチン全てが、疲労、頭痛、筋肉痛、不快感、悪寒、発熱のような副作用を引き起こし、ワクチン投与量が多くなるとその程度も大きくなる場合もあった。年齢によるワクチンの効果について:あるワクチンは55歳以上の人では抗体応答がかなり後退していた。他の三つのワクチンの試験には18歳から55歳までの、しかもほとんど白人が協力した。フェーズIII試験は55歳以上や別の人種の方々でも行う必要がある。浮沈するワクチン開発、不惑でチャレンジされますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 4.

四つのグループ:米国企業Moderna、オックスフォード大学(権利はAstraZeneca)、中国企業CanSino Biologics、Pfizerとドイツ企業BioNTech

20.7.28

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転位反応は

 置換芳香族化合物を導く有用な方法である。ただし芳香環の周りで置換基をシフトさせる多くの方法では、官能基は、空いた炭素上に残ったままである。例外的にハロゲンダンスでは、ハロゲンが隣接する炭素にシフトするとともに水素がハロゲンの結合していた炭素上に移動する。その中、日本の化学振付師らは、エステルダンス反応を開発した[1]。反応はジホスフィン–チオフェン配位子、塩基、Pd触媒存在下で進行する。ナフタレン、ピリジンを含む30以上の異なるアレーンを用いた成功例が示されている。この発見はハプニングから生まれ、研究者らは発奮したかもしれない。ここでPd触媒は、Pd-アレーン中間体を形成する前にエステルに挿入する。ついで隣接する炭素でかつ熱力学的に好ましい位置でエステルが再生すると考えられている。さらにエステルダンスと脱カルボニルカップリング反応を組合せた反応も開発されて、一連の高付加価値な分子へのワンポット経路が提供されている。このダンスは、医薬品や農薬のための、エステルやカルボン酸中間体合成にも利用可能である。エステルダンス、いかスてるだんス。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 13, p. 9.

DOI: 10.1126/sciadv. aba7614

20.7.27

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メラニンバイオポリマーは

 鳥の羽や私たちの肌の色相に様々な色をもたらす。これらの分子はまた害のある放射から体を保護する。研究者らは、このメラニンのアップグレードによって、大気圏外のより有害な放射から人を保護できるシールド材料の提供も目指した[1]。ここでの合成類縁体はセレノメラニンで、遺伝子改変された微生物あるいは合成化学的手法で合成された。またそれは天然のメラニンよりも高性能である。ガンの放射線治療と同様のレベルの放射線照射の実験は、これまでのメラニン類縁体では、処置された上皮の細胞でDNA損傷を引き起こす一方で、セレノメラニンで処置した細胞は成人を殺傷する可能性のあるレベルの放射線に晒されても生き延びていた。ただ研究者らは、いまだにセレノメラニンが生物で発見されていないことに疑問を持った。そこで生物学者と共同で、セレンの量が多い南カリフォルニアにあるソルトン湖で、天然のセレノメラニンの存在の可能性を探索することを始めている。ソルトン湖に、潜んどるとんいいねえ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 13, p. 9.

DOI: 10.1021/jacs.0c05573

20.7.26

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貝類であるイガイは

 逆に帯電したタンパク質を分泌する。これらは相互作用し、水に不溶なタンパク質の液滴の懸濁液であるコアセルベートをつくる。この濃いコアセルベートは、タンパク質が交差で連結し接着性が強化されている。この機構を模倣したこれまでのポリマー接着剤は、電荷、塩、溶液のpH条件に依存だった。それに対して研究者らは、これらに依存しないポリマー接着剤をつくった[1]。それにはジエタノールアミドが使われ、それによってコアセルベート形成が促進される。また表面接着に重要なカテコールを含む部位や、紫外光に晒された時に、別のポリマー鎖の同様のグループとリンクできるクマリン基も有する。作成したポリマーの溶液を温めてコアセルベート形成を促し、得られたノリを、水に浸したガラススライドの接着に使った。10分間紫外光を照射し、交差連結させた。この接着剤はpH3-12、0-1M塩濃度で利用可能で、イガイのそれに匹敵する100kPaの接着力を示した。この成果は、水中での接着に関する重要な進歩である。今後は医療条件で利用可能であることを確認することが必要である。コアセルベート、焦るめ〜と、つくれたのかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 13, p. 7.

DOI: 10.1021/ acsnano.0c02396

コアセルベート:コロイドからなる液胞の流動層と液層入り混じった物体(ウィキペディア)

20.7.25

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製造現場である工場は

 目的に応じた、あるいは特別注文のロボットシステムを導入している。アカデミアでも同様な自動化の概念が考案されている。その中研究者らは、つかむことができる道具とトレイをロボットに付与し、倉庫や工場でロボットが、液体や固体の調合、ガスクロマトグラフや別の装置を使えるように設計した[1]。このロボットは水から水素ガス発生の光触媒過程の最適化を行った。8日間で688の実験をこなし、人工知能を使って10の化合物の濃度を調整、初期の条件の6倍以上の水素を生産できる混合比に到達した。通常この種の最適化には一年を要する。要するに人が実験を行う1000程度の速さである。ただし最適化された触媒系は実行可能ではないだろうとのことである。それに対して今回のプロジェクトは「概念実証」であり、より多くのコンピューター力と化学の知識をロボットに搭載し、実験を試みる際に、より良い決断ができるように改良したいとのことである。ロボット、ボ〜としないのでしょうか。チコちゃんにチコッとばかり、聞いてみたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 13, p. 7.

DOI: 10.1038/s41586-020-2442-2

20.7.24

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二本の金ナノワイヤを

 お互いにねじってワイヤに銀を沈殿させると二重らせんが形成することを研究者らは以前明らかにしていた。それを継いだ今回の研究では、複数のナノワイヤを束ねて、違った金属でねじれを加えた[1]。すなわち研究者らは、まずポリビニルピロリジノンと市販の界面活性剤とを金ナノワイヤの懸濁に加えて、金ナノワイヤをそれぞれ20〜500のより糸のように束ねた。束は直径50 nmから2μmで数十ミクロメートルの長さだった。ついでテトラクロロパラデートナトリウム塩と1-アスコルビン酸をそれに加えた。ここで酸はPd塩の金への接着を引き起こし、Pdは部分的に金と合金を形成し、より糸はワイヤの結晶格子に入り込んでいるのではないかと類推されている。ナノワイヤはねじれることで、ひずみが緩和され、束の中の全てのワイヤが同じ方向にねじれ、ナノロープが形成された。この前例のないナノロープの有用性は現時点ではわからないものの、時計や自転車の伝動装置が行っているように、機械的にエネルギーを送る方法を提示できる可能性がある。ナノロープで、名乗ろ〜と思った成果ナノでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 13, p. 5.

DOI: 10.1021/jacs.0c03445

20.7.23

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異なる鏡像異性体は

 生体内や工業プロセスでも違った化学を表現する。そのうちの正しい異性体の収率を制御することは、合成化学、医薬品化学では手間と時間のかかるプロセスである。その中今回、驚異的に単純で短いステップの合成法で、ある種のキラルアミンの一方の異性体だけを選択的に得られることが報告された[1]。研究者らはIrシクロオクタジエン化合物とキラルなオレフィンを用いて、溶液中でキラル触媒を調製した。これは不斉合成反応の常套手段である。6分後、S異性体が84-99%鏡像体純度で得られた。研究者らがこの反応を10時間続けたところ、R体を74-99%鏡像体純度で得た。この系では触媒はS選択的でかつそれを素早く与える。ただし時間が経つにつれてそれが分解して、より安定なR体が生成する。この現象は反応の10分ごとの経過を追跡して発見された。またこれまで不斉触媒で同様の観測が行われてこなかったことに研究者は当初衝撃を受けたけど、今では他の反応でも同様の現象が観測されるか探索を行なっている。時間経過を実感、次の計画を立てる系です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 7.

DOI: 10.1021/acs.estlett.0c00410

20.7.22

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消防士の仕事は本質的に

 危険である。ただしそれらは炎に立ち向かうという危険だけではない。燃えている物質から放たれる発がん物質や、炎抑剤からの有毒なパーあるいはポリフルオロアルキル化合物(PFAS)にも晒される。今回の新しい研究結果は、消防士はPFASを炎抑剤以外からも、すなわち保護具からも受けることを示していた[1]。多層になった保護服は、ポリフルオロ繊維でできていて、防水性を付与するためにPFASで処理されている。研究者らは、価電粒子誘起γ線放出スペクトルを使って30の使用済み、使用前の保護服のフッ素レベルを測定した。その結果、時間が経つにつれて、層が擦れあって、PFASが湿気バリアーや外側の防水層から内側の、肌に触れる温度層に移動していることがわかった。またフッ素を運ぶ塵の分析結果は、保護服からのPFASは周りの環境へも広がっていることを示していた。研究者らは現在これらが肌を通して吸収されるかどうかについても研究を続けている。保護服で幸福 とまではいかなくても安全であって欲しい。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 7.

DOI: 10.1021/acs.estlett.0c00410

20.7.21

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米国政府は

 COVID-19に対するワクチンや抗体治療の事前注文に20億ドル以上を使っている。これによって、2021年1月には、3億錠のCOVID-19ワクチンを提供し、COVID-19治療を加速させる計画である。ワクチン開発会社ノヴァヴァックスは、16億ドルを与えられて、1億錠のワクチンの生産を始め、この秋に3万人の人でフェーズIII臨床試験を行う予定である。この企業のワクチンにはナノ粒子に埋め込まれたSARS-CoV-2スパイクタンパク質が含まれる。今月末にはフェーズI段階での安全性試験の結果が得られるはずである。ある米国の研究開発公社(BARDA)は、アストラゼネカの3億錠のワクチンに12億ドル提供し、こちらも夏にはフェーズIII臨床試験が米国で行われる予定である。さらにBARDAは、モデルナに5億36百万ドル、ジョンソン&ジョンソンに4億56百万ドルなど複数の企業に、経費を提供している。治療の最先端では、リジェネロン社は4億5千万ドルを得、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を標的とする二種類のモノクロナール抗体を含むカクテルを製造している。以前に受けた財政的な支援をもとにリジェネロン社は、COVID-19に罹患した患者の治療のための抗体のテストも始め、夏の終わりにはその抗体をFDAに無料で提供することになっている。現段階では7万から30万錠を治療用に、42万から130万錠を予防薬として供給できると見積もっている。苦心するワクチン開発、浮沈をかけている。

[1] Chemical & Engineering News 2020 July 13, p. 11.

20.7.20

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今年の6月

 欧州の大気では、少量ではあるものの複数の放射性同位体が観測された[1]。どう言ったらいいか。エストニア、フィンランド、スウェーデンでは、Cs-134, Cs-137, Co-60, Ru-103が観測された。これらの濃度は、1m3当たり数ミクロベクレルで、人や環境には影響しない。ただ複数の元素の同位体が混ざっていることは、その発生源は原子力発電所であることを示唆していること、事故による発生ではなくて原発が通常運転している間に放出された可能性が高い。6月27日国際原子力機関が別の国々にも打診したものの、それらの国々では、放射性同位体の上昇や、原発からの放出はないとのことだった。スカンジナビアのステーションからのデータをもとに、南東から北欧州に入った放射性核種が計算されたものの、各種データからは核種のオリジンはわからなかった。2017年、放射性Ru-106を特定することはできたが、今回はかなり少量であるため、汚染物質の特定は、ようせんかも とのことである。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 6.

20.7.19

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ダイヤモンドは

 永遠であるかもしれないけど、これが最高で唯一の選択肢ではない。日本の研究者らはコンピューターモデルとして新しい3-D炭素構造を作成した[1]。研究者らはこれをペンタダイヤモンドと呼び、その特性はオリジナルなダイヤモンドを超える可能性が高い。それぞれの炭素が別の四つの炭素と結合している通常のダイヤモンドと異なり、ペンタダイヤモンドは三つあるいは四つの別の炭素と連結している。これらは五員環炭素のネットワークを形成しており、そのためペンタダイヤモンドと名付けられている。DFT計算の結果は、実際合成されると標準のダイヤモンドよりも堅いことを、示唆していた。よりよい半導体特性を示し、ディスプレイのようなエレクトロニクス分野でも有用である。またペンタダイヤモンドはダイヤモンドよりも大きな空孔を持つため、新しい材料は1/3ほど軽量になる。合成方法として、環を持つ分子同士のNi触媒反応が提案されている。ダイヤモンドと問答、ダイヤルが切り替わった。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 6.

DOI: 10.1103/PhysRevLett.125.016001

20.7.18

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噛む、咀嚼する、スライスする

 など人の歯は一生、摩耗に耐える。この回復力は歯のエナメルの硬さにも起因している。そのエナメルが以前考えられていたよりもさらに化学的に複雑だった[1]。人の歯のエナメルはヒドロキシルアパタイト(Ca5(PO4)3(OH))が、タイトに詰まった晶子である。ただし晶子の内側が謎である。例えば晶子の内側は酸に溶けるが外側は溶けない。このことは晶子が均一の化学組成ではないことを示唆していた。そこで研究者らは、走査型透過電子顕微鏡(STEM)や3D原子イメージング(APT)を使って人の歯のエナメルの内部構造を可視化した。STEMは晶子には区別できる殻やコアな領域があることを示していた。さらにAPTはコアな領域は二つのマグネシウムのサンドイッチになっていて、中央部分の側面は、炭酸塩、ナトリウム、フッ化物が豊富であることを示していた。さらにコンピューターモデルが使われて、マグネシウムが中央に入り込むことによってヒドロキシルアパタイトが歪み、材料にストレスをかけることが示された。この場合ストレスが晶子を強化している。またマグネシウムの濃度勾配が人のエナメルの硬さに寄与し、コア部分では酸に溶ける傾向にあることが類推された。晶子の詳細、わかりましたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 4.

DOI: 10.1038/ s41586-020-2433-3

20.7.17

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小児肥満症は

 世界中で大きな問題になりつつある。ただその原因は複雑でほとんど理解されていない。研究者らは以前、パーあるいはポリフルオロアルキル化合物や副流煙が子供の肥満にどのように影響するかを示した。それでも実際の生活の中で、複数の因子に子供が晒される場合の影響はほとんど考慮されておらず、その中のある特定の危険因子の重要性は、聞けんのが現状だった。その中今回国際研究グループは、150以上の可能性のある危険因子の個別の影響、混ざったときの影響を調査した[1]。研究者らは六つの欧州の国々から1300以上の6歳から11歳までの子供について、肥満と危険因子にさらされた個別の経験を検証した。その結果、妊婦さんの時に喫煙していた母親の子供は、太りすぎの傾向があった。この研究は、インドアの汚染、特に微粒子物質や二酸化窒素が肥満に影響することを示した最初の例である。さらに母親がより高い教育を受けている場合、インドアの二酸化窒素と小児肥満症の相関はより強かった。研究者らはこのリンクに興味を持っている。インドアでのリンク、インクで書き留める。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 29, p. 7.

DOI: 10.1289/EHP5975

20.7.16

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バイオフィルムは

 抗生物質を避ける頑丈なポリマーマトリックスで保護され、抗生物質で簡単に殺されず、後世にも生き残り得るバクテリアのコミュニティである。研究者らは強力なイメージング技術を使って、その鎧の下にあるものを観察した。かなり均一な細胞があることが期待されたが実際には、バクテリアコミュニティは、複雑なチャンネルの構造物を形成していた。さらに探索した結果、科学者が薬をバイオフィルムの中心に送達できる秘密の扉を見つけることもできた[1]。拡大鏡を使ったバイオフィルムのイメージングでは、単独の大腸菌よりも小さな700 nmサイズまでの解像度で広さ6 mm深さ3mmで特徴が明らかにされて、そこにチャンネルがあった。ついで様々な方法で、チャンネルはタンパク質でできていること、食べ物を吸い上げることができることもわかった。これによってバクテリアへはかなりの栄養素が外から供給されているはずである。また鎧であるポリマーマトリックスに隠れたこの秘密のルートを使って薬も入れ込むこともできる。次に研究者らはチャンネルが最初にどのようにできるかも明らかにしたいとしている。おそろいの鎧の下、おもろい構造だった。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 29, p. 7.

DOI: 10.1038/s41396-020- 0700-9

20.7.15

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ウイルス拡散を防ぐために

 使うことが推奨されているマスク。とはいえどのタイプの素材が小さなエアロゾルを濾過するのか、息を妨げないのか、静電気の影響を受けるのかなどを知りたい。その中、大学と企業の研究者らは0.26μmエアロゾルをどの程度の効率で素材は濾過するのか、また通気性と関連する空気の流れに伴う圧力変化を測定した[1]。その結果、クリネックスがフィルターとして性能がよく、効果を向上させるために布マスクの内側の使い捨て素材として利用可能であることがわかった。またある種のベッド素材や再利用できる買い物袋で使われているスパンボンド式ポリプロピレンも、とりわけゴム手袋でこすって得た静電気があるとかなり性能が向上する。N95マスクでも粒子をトラップするために、帯電材料が利用されている。このことから家にポリプロピレンがあればそれを使うこと、ない場合には綿をほんの数層重ねることを、研究者の一人は推奨している。ちなみにマスク素材にマスクメロンは使えない。

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 29, p. 5.

DOI: 10.1021/acs.nanolett.0c02211

ウィキペディアによれば

マスクメロンは「musk(麝香)で、仮面などを示すmaskではない」とのこと。

20.7.14

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たいていの生体分子は

 キラルである。円二色性(CD)スペクトルがキラリティーに関する情報を与えてくれる。ただし生体分子の混合物に関するデータは解釈が難しい。「データ解釈で〜たらめだ」とだめである。その中今回CDと質量分析を組み合わせてこの課題が解決された[1]。まず質量分析を使って、グアニン四重鎖と呼ばれる構造を形成するグアニンが豊富なDNA配列のイオンが単離された。ついでDNAにある特定の波長、偏光、エネルギーのレーザーパルスが照射された。DNAは光に応答して電子を失いイオンの電荷状態が変化した。この応答の程度がイオンのキラリティーや光の偏光に依存している。ついでイオンの質量スペクトルを得ている。光の偏光を変更させて、偏光と波長の関数として電荷の減少した化学種の強度からCDスペクトルが計算されている。この新しい方法を使って得た気相のCDスペクトルは、これまでの溶液相のCDスペクトルと類似だったことから、気相、溶液相での構造は類似の塩基がスタックしたパターンであることを示唆していた。今後はこれによって同じDNA配列でも、異なるスタッキング配座を区別することが可能になる。スタッキング、ストッキングとは違う。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 29, p. 4.

DOI: 10.1126/science.aab1822

20.7.13

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生体顕微鏡検査は

 生きた動物の数ミリメートルの深さにある細胞を撮像するのに利用する。それに対してここでは顕微鏡が出す近赤外領域の二光子を利用した生体内3-Dバイオプリンテイング法が開発された[1]。研究者らはまず、生体適合性ポリマーで、近赤外の光に応答してヒドロゲルを形成するものを探索した。生体適合性ポリエチレングルコールやゼラチンポリマーにクマリン誘導体を結合させてバイオインク溶液を作成した。ついでバイオインクをネズミの体内に注入し、先の市販の二光子顕微鏡を使って、欲しい印刷パターンの近赤外光を照射した。層ごとにフォーカスした近赤外光をスキャンすると、体内に3-Dヒドロゲル物体を組み立てることができた。これによって外科手術することなく、筋肉や脳の中の肌の中に、小さな構造物を組み立てることに成功している。さらにこれらの印刷されたヒドロゲル構造は、新しい細胞の形成を促すこともできた。バイオインクに幹細胞を加えて平行に印刷すると、ネズミの中でそれらは成長し、天然の筋肉と同じ方向に配列した筋肉繊維になっていた。研究者らはこれらの実験でネズミに副作用を観察はしていない。ただし生体顕微鏡を使っているため肌の2-3 mmの深さの部分が限界である。それでも例えば角膜の手術には利用できる成果である。なお同様の生体内3-Dバイオプリンティング技術は他の研究者らも報告しているが、近赤外光波を変化させるためにマイクロミラーデバイスが使われている[2]。生体内で印刷、痛いないんでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 29, p. 4.

DOI: 10.1038/ s41551-020-0568-z

[2] DOI: 10.1126/sciadv.aba7406

20.7.12

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低分子の炭化水素を

 燃料以外の有用な種類の分子であるハロゲン化アルキルに変換するためには、塩素ガスや臭素を用いて、時には500 °C以上の熱も必要である。さらに合成したハロゲン化アルキルは、有機金属求核剤に変換されて、ついで炭素–炭素結合生成が行われる。その中、より直接的に炭素–炭素結合形成反応できる方法が探索されてきた。今回光触媒であるデカタングステンを用いた反応が報告された[1]。近紫外光存在下、デカタングステートが、メタン、エタン、プロパン、イソブタンのC-H結合から水素が予測できる方式で引き抜かれる。研究者らはこの反応をマイクローフロー反応容器で圧力をかけて行っている。これによって可燃性のガスを安全に取り扱うことができる。反応容器はこれらの低分子炭化水素を液体層に導き、デカタングステートと接触する機会も増える。反応条件が温和であること、光触媒が容易に調製できることから、化学フィードストックを、より興味ある分子に変換する理想的な反応であると化学者は述べている。それは、デカタングステンの出方次第かなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 7.

DOI: 10.1126/ science.abb4688

なおこの反応のオリジナル、Chem. Lett.(2018, 47, 207) (https://doi.org/10.1246/cl.171068)に掲載されている。是非この論文もご覧ください。

20.7.11

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WHOの発表では

 6月29日現在17のワクチンが臨床試験に、132が開発の初期段階であるとのことである。ただしたとえ電光石火のスピードでこれらが生産ラインに乗ったとしても、わからない課題はそれらが市場に出る際のFDAの基準は何かであった。今回それに関する資料が公開された[1]。そこにはいくつかの重要な結論が含まれている。一つ目はフェーズIII試験が基準である。さらに無作為化二重盲検試験でプラシーボ対照も必須である。すなわち医師もボランティアも誰が実際のワクチンを投与されているのかあるいは偽薬なのかがわからない試験である。ワクチンよりむしろCOVID-19治療の試験の数百は、この高い基準に従っているが、これが薬の作用について確信を持って言うことを難しくしている。さらにFDAは、ワクチンを投与された人の50%がSARS-CoV-2の感染に抵抗できることの証明も必要であるとしている。なお初期のCOVID-19ワクチン研究では、ワクチンが免疫応答を誘発するかどうかが評価されていて、いくつかの企業では、ウイルスの感染を阻害する中和抗体の発生が確認されている。どちらにしても今回のFDAの基準を満たすことは、特に感染者が減少している地域では、簡単なことではない。FDAは普段の基準を提示、開発は不断の努力が求められている。

[1] Chemical & Engineering News 2020 July 6, p. 8.

20.7.10

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ステイホームの指示は

 COVID-19の拡大抑制であるが、これによって世界中の多くの場所で、大気の質が向上し温室効果ガスの排出が低下した。今回さらに、もやによって引き起こされる汚染の低下が、太陽エネルギー生産効率をアップさせたことがわかった[1]。インドのデリーは世界で最も大気の質が低い都市の一つである。3月20日ロックダウンが発令されて交通も劇的に減少した。これに伴って動力車の不完全燃焼によって生産される微粒子物質のレベルも以前の50%程度になった。この種の汚染によって、空はかすみがかかったようになり太陽エネルギー生産も減少する。研究者らはパンデミックの前からデリーに、太陽光センサーを設置し統計的分析を行なっていた。太陽光照射は、3月末には8%、4月には6%上昇していた。これらはそのまま太陽電池が生産するエネルギー量に匹敵する。今回大気汚染のレベルの高いデリーでの顕著な結果だったが、世界中で大気汚染の抑制は同様の効果をもたらす可能性が高い。太陽光のデリーへのデリバリーの話、「もやの排出」もうやめた、にできないでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 6.

DOI: 10.1016/j.joule.2020.06.009

20.7.9

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COVID-19抗体検査について

 初期の頃のそれらの精度の低さが報告されている[1]。4月末までに、中国で入院していた患者さんで試験をした54抗体検査の結果がまず検証された。そのうち61%はELISAのような研究室レベルの検査も含まれている。検証結果は、これらの検査の感度の幅が広く、陽性の確かさも変化することを示していた。ただしこれは必ずしも検査そのものの質の問題ではない。サンプルをいつ患者さんから採取したかに依存している。COVID-19の兆候が出た最初の週の検査は、30%程度の陽性率だったのが、2から4週間後は90%になっていた。さらに軽症患者さんと罹患の兆候が出てから1ヶ月後の人を対象に正確な検査が行われている。より最近の抗体検査に関する研究結果は来月報告される予定である。この報告は、ヘルスケア医療介入の評価で有名な英国がベースの慈善団体コクランによってまとめられている。コクランは、空欄も埋めようとしている。なので抗体検査結果は、コクランに送らんといかんかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 6, p. 5.

DOI: 10.1002/14651858.CD013652

20.7.8

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新しい酵素反応は

 光を利用して、立体選択的に二つの炭素化合物をカップリングさせることができる[1]。この反応はケトンやエステルのγ–キラル化合物を、収率47–99%、鏡像異性体選択性93–99%で与える。これらのタイプの末端アルカンの合成は難しい一方で多くの生理活性化合物に含まれる骨格である。研究者らは、エンリダクターゼと呼ばれる一連の酵素がこの標的の反応を触媒することを特定した。反応条件の最適化後研究者らは、既知の酵素である旧黄色酵素が96%の鏡像異性体選択性で最も高い収率で期待の生成物を与えることを見つけた。分子内カップリング反応の選択性の制御は一般的に難しい。一方でこの酵素は系中で反応容器を提供し単一の鏡像異性体のみを与えている。研究者らは、この反応は新規なラジカル機構であることも提案している。酵素が反応物同士を近くに位置させてラジカルを安定化。このエンリダクターゼは、今回の選択的反応を実行できる唯一の触媒である。ただし同様の化学を、光で活性できる別のフラビン酵素で達成できることも期待されている。エンリダクターゼ、便利だ〜ぜ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 22, p. 8.

DOI: 10.1038/s41586-020-2406-6

20.7.7

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多くの動物が

 多様なコミュニティをつくって共存している。微生物叢として知られているこれらのコミュニティは菌、ウイルス、バクテリアを含む。研究者らは複数のバクテリアはホストの消化管に暮らし、神経伝達物質のような生理活性分子を生産することを認識している。さらにこれらの化合物がホストのムードや振る舞いを変化させるのではないかと考えられてきた。今回小さな線虫であるC. エレガンスで、この虫の消化管の微生物叢にいるバクテリアはホストの振る舞いを変化させるだけではなくて分子レベルでも変化をもたらしていることが示された[1]。バクテリアは、プロビデンシア属の菌株で、神経伝達物質チラミンを生産する。ホストであるC. エレガンスは、これをチラッと見るかはともかく、この化合物をオクトパミンに変換し、その化合物が線虫のある特殊なニューロンを活性化、オクタノールのようなバクテリアが生産する揮発物に対する嫌悪感を減少させる。これで線虫が選ぶ食べ物も変化し、そのことで菌株、さらにおそらくホストである線虫も、恩恵を受けることを意味している。線虫C. エレガンス、繊細で偉えがんす。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 22, p. 8.

DOI: 10.1038/s41586- 020-2395-5

20.7.6

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アンモニアと二酸化炭素との

 200 °Cでの複雑な反応で尿素製造が行われている。尿素は合成肥料で、世界中の人が食べる食糧のおよそ半分の成長を促している。ただし原料のアンモニア製造もHarber-Bosch法に依存しているために高温・高圧を必要とし、これらの二つの反応で世界のエネルギーの2%以上を消費している。それに対してここでも電気化学反応で水中、窒素ガスとCO2とを直接尿素に常温・常圧で変換できる方法が報告された[1]。反応は酸化チタンナノシート上にPd-Cuナノ粒子を取り付けた特殊な触媒を使う。触媒をローディングしたカーボン紙でできたカソードとNiでできたアノードを含むフロー反応器セルの中での反応である。膜で仕切られた電極は。炭酸カリウム電解液で満たされたチャンバーの中にセットされている。N2とCO2をセルに送り込むとこれらが触媒に吸着されて反応し尿素が得られる。理論分析では、N2がCO2の還元を促しCOとなり、これがN2と反応して、いくつかの中間体を経てN2が水素化されて、さらにC-N結合が生じる。酸化チタン担持も中間体生成に重要である。反応効率と生産速度は現状では低いものの、この方法は小スケールの尿素製造を可能にし得るため、導入するための投資が、より多くの国で行われる可能性がある。闘志を燃やして、投資やっとうし、が増えるかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 22, p. 7.

DOI: 10.1038/s41557-020-0481-9

20.7.5

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マイクロ流体の

 電気化学セルは、二つのガラス状炭素電極で挟まれたフッ素化エチレンプロピレンフィルムで特徴づけられる。その電極は25μmの幅で、反応剤が通過できるマイクロ流体チャンネルが存在する[1]。このスリムな空間があることで、一方の電極で発生した安定ラジカルは、もう一方の電極で発生した寿命の短いラジカルと出会うために移動する必要がほとんどない。もしこの空間が大きすぎるとラジカル同士が出会う前に分解しうる。ここでガラス状炭素電極も重要である。通常の金属電極を使うと表面を滑らかにすることが難しく、電極同士を接近させるとそれらが衝突して、回路はショートする。一方で炭素状電極は、スムーズで平面である。このプラットフォームの合成能力を示すために研究者らは、液晶化合物である5CBを、多層に積み重なったセルを使って合成した。現状ではマイクロ流体電気化学セルをセールで販売(sell)する計画はないが、実験情報を参考にすれば、組み立てることができる。セルの組み立ては任せる。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 22, p. 6.

DOI: 10.1126/science.aba3823

20.7.4

 

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2017年秋

 欧州全体に放射性Ruのくもがゆっくりと広がっていった[1]。このオリジンを明らかにするべく研究者らは、2017年複数の国で捕捉した放射性同位体を検証した。それらはおそらく通常よりも若い年代の使用済核燃料を処理していた場所由来であると類推された。たとえばセリウム144をつくろうとしていたロシアのウラル山脈にあるマヤック核施設と関連があるとしたが、マヤックはその注文を受けたものの後にキャンセルしている。別の解釈としては、放出されたRuの安定同位体の比から、核兵器放射能由来ではなくて、ロシアでのみ稼働している加圧水型原子炉由来であることが推定された[2]。さらにごく最近発表された別の研究によればRuはより電子豊富な形態で含まれている[3]。少量のRu(III)ポリ塩化化合物と106RuO2であると推定される化合物である。これらはプルトニウム–ウラン溶媒抽出法を示すものであり、若い世代の燃料が発熱過程に悪影響を及ぼし、火災あるいは爆発によってRuが放たれたものである。これらの結果に対して政府は何も発表していないものの、空気フィルターから採取されたほんのわずかなサンプルの核鑑識でも、その由来が確認できることが常識になりつつある。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 22, p. 5.

DOI: 10.1038/s41467-020-16316-3

DOI: 10.1073/ pnas.2001914117

村井君のブログ:2019.12.29も参考に

20.7.3

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三種類の金属から成る

 ニトリルの薄いシートを空気亜鉛電池の触媒として使うと、バッテリーのエネルギー密度が向上し、また柔軟なファイバーの形にすることもできることが報告された[1]。ニッケル、鉄、マンガンという廉価な金属を用いた新しい材料は、高価な貴金属触媒の代替物になり得る。NiFeMnヒドロキシドの単分子層はチタンカーバイドのシートの上で自己集合できる。これをアンモニア大気中で焼きなまし、ヒドロキシドをニトリルに変換できた。この出来上がった材料を使い空気亜鉛電池を作成したところ、従来のそれが550 Wh/kgだったのが693Wh/kgに改善されていた。ファイバーの形をした空気亜鉛電池は、ねじれていても曲がっていても同様のパフォーマンスを示すこともわかった。これらファイバー三つを太陽電池式発光ダイオードと連結させると、柔軟なエレクトロニクスに応用が可能な、エレクトロルミネッセントパネルへの応用も可能である。ルミネッセントも見ねせいと、お伝えを。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 June 15, p. 10.

DOI: 10.1021/ acs.nanolett.0c00717

20.7.2

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冬になると

 世界中の道路に塩がまかれる。その量はおよそ6千万トンである。塩でしおらしくなるわけではなくて、氷を溶かすためである。この道路の塩が上水道を汚染することは知られている。一方で大気の質に対してどの程度の影響があるのか検証されていなかった。今回大気に舞い上がった道路の塩が大気汚染を引き起こしていることが報告された[1]。2016年2月3月にミシガン大学の研究者らは単一粒子質量分析並びに電子顕微鏡法を使って、五つの種類の粒子を特定した。道路の新鮮な塩、道路の何年も経った塩、すす、道路のチリと、燃焼したバイオマスからの粒子である。新鮮な道路の塩粒子は、かなりの量の塩化物を含み、その表面では、二窒化五酸化物が反応し、塩化ニトリル(ClNO2)が生じる可能性がある。ClNO2は塩素原子とNO2に分解し、それが大気化合物と相互作用するとオゾンや粒状汚染物質が生成する。モデリングでは、測定されたClNO2のうち80-100%は、道路の塩エアロゾル由来である。ただ現状の地域における大気環境モデルには、このような排出は含まれていない。道の塩、未知だったのが、見違えるほど、明らかになってきたかな。

[1] Chemical & Engineering News 2020 June 15, p. 10.

DOI: 10.1021/acscentsci.9b00994

20.7.1

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