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2020年8月

パンデミックは

 すでにグローバルなサプライチェーンにも影響を及ぼし、除菌用ローションや診断薬を含む多くの製品の供給が制限されている。その中新たな抗ウイルス薬を製造するのに必要な原材料も同様の状況である。そこで研究者らはAIをベースにしたSynthiaと呼ばれる逆合成解析プログラムを用いて、12の有望な医薬品候補の別の合成経路を探索した[1]。容易に入手できる別の出発化合物を用いて、従来法とは異なるものの類似の段階数と経費で達成できる経路の提供がこの研究の目的である。それぞれの化合物に対してSynthiaが提示した多くのリストから最も適切な経路を絞りこんだ。ついで研究者らは研究室でこれらのうちいくつかの合成を実際に行った。そこにはCOVDI-19に対する臨床試験が行われている抗ウイルス薬への新しい四つの経路も含まれている。今回の成果は、医薬品製造のサプライチェーンが分断された際に、迅速に別ルートを同定できる方法として利用可能である。Synthiaを信じ合うことも大切です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 9.

DOI: 10.26434/ chemrxiv.12765410.v1

20.8.31

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溶液中で

 明るい蛍光発光を示す染料の多くは、固体状態では蛍光強度が減少 あるいは消光する。固体状態では、染料分子はお互い重なり合って緩和し、光子を放出しなくなる。この課題に対する解決方法は、蛍光色素分子同士を離しておくことである。染料同士のソーシャルならぬモレキュラーディスタンスを保つために嵩高い置換基が付与される。この個別の方法は、試行錯誤によるもので、嵩高さが固体状態での発光を保証するものではない。それに対してここではカチオン性蛍光染料に、嵩高い置換基を導入することなく、距離を保つ方法が考案された[1]。それは、大きな中性分子であるシアノスターとして知られている大環状化合物を用いることである。それはカチオン性染料分子に伴う小さなカウンターアニオンを取り囲み、これによって蛍光色素分子同士の距離を保つことができる。そこで染料とシアノスターを混ぜてポリマーや樹脂に入れ込んだ際も、大環状化合物が固体中での構造を決定し、染料同士をお互いに離していた。シアノスターとのコラボ、思案の末のスタートかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 8.

DOI: 10.1016/j.chempr.2020.06.029

20.8.30

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植物のベリーは

 セルロースナノロッドのヘリカル配列を含み、ここからの光散乱で青色を発することが2012年に明らかにされていた[1]。ただし欧州でよく見られるメタリックブルーベリーについては色の起源は謎のままだった。その中研究者らはこの植物には、新しいタイプの構造色が含まれることを明らかにした[2]。学名「ビブルヌム・ティヌス」のベリーは、球形の脂質の層からつくられる光散乱の特徴を有している。これは脂肪酸を含む初めての構造色である。電子顕微鏡によってベリーの皮を観察したところ、細胞壁に膨らんだぼんやりした構造が見つかった。ただしこれらが脂質あるいは消化しにくい ろう状化合物でできているかがわからなかった。そこで別の染色剤と定着剤を使って改めて観察し、それが脂質であることを明らかにできた。今回の脂肪酸による構造発現の発見をベースに研究者らは、新しい合成色を開発したいとしているが、脂質のその構造を安定化させることが容易ではない点課題である。にもかかわらず植物はそれをどのように制御しているかも理解したいとしている。構造色脂質について、し質問ある人は? ベリー、very goodです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 8.

DOI: 10.1073/ pnas.1210105109

[2] DOI: 10.1016/j.cub.2020.07.005

20.8.29

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炭素源として

 石油に替えてバイオマス由来の脂肪酸を利用することも可能であるが、カルボキシル基の遠隔位の炭素の官能基化は困難だった。それに対して今回、「キラル洞窟」を有するIr触媒が設計された[1]。この触媒は脂肪酸を固定しカルボキシル基から三炭素離れた位置の炭素のボリル化を達成できる。実際触媒は多くのタイプの脂肪酸に適用され、30種類の化合物が良好な収率かつ鏡像体過剰率90%以上で合成されている。計算化学によれば、触媒が集合して酵素の活性部位の様なポケットを形成し、これが多点非共有結合性相互作用で化合物をバインドできる。その相互作用にはモノホスファイト配位子と尿素–ピリジン受容体配位子との間のπ-π相互作用、ピリジンのIr中心への配位や基質と尿素配位子との間の水素結合も含まれる。この個別の部品をつなぎ合わせる様なモジュール方式と柔軟性が触媒の反応性拡大に寄与している可能性がある。脂肪族二級、三級アミドやエステルから一連のボリル化化合物が導かれている。それらは、神経伝達物質であるGABAを含む薬理学的に重要な化合物に変換しうる。遠隔位の制御、かっこいいです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 24, p. 8.

DOI: 10.1126/science.abc8320

20.8.28

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転位反応は

 置換芳香族化合物を導く有用な方法である。ただし芳香環の周りで置換基をシフトさせる多くの方法では、官能基は、空いた炭素上に残ったままである。例外的にハロゲンダンスでは、ハロゲンが隣接する炭素にシフトするとともに水素がハロゲンの結合していた炭素上に移動する。その中、日本の化学振付師らは、エステルダンス反応を開発した[1]。反応はジホスフィン–チオフェン配位子、塩基、Pd触媒存在下で進行する。ナフタレン、ピリジンを含む30以上の異なるアレーンを用いた成功例が示されている。この発見はハプニングから生まれ、研究者らは発奮したかもしれない。ここでPd触媒は、Pd-アレーン中間体を形成する前にエステルに挿入する。ついで隣接する炭素でかつ熱力学的に好ましい位置でエステルが再生すると考えられている。さらにエステルダンスと脱カルボニルカップリング反応を組合せた反応も開発し、一連の高付加価値な分子へのワンポット経路を提供している。このダンスは、医薬品や農薬のための、エステルやカルボン酸中間体合成にも利用可能である。エステルダンス、いかしてるだんす。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 13, p. 9.

DOI: 10.1126/sciadv. aba7614

20.7.27

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NASAの

 Mars Atmosphere and Volatile Evolution (MAVEN)軌道船は、大気反応によって生まれる紫外線夜天光を使って、赤い火星の赤道や極の場所での季節ごとの風のパターンをはっきりと描画していた[1]。一気呵成に描いたかどうかはともかく、火星の大気中では、太陽放射がCO2やN2を引き裂く。ついで窒素原子や酸素原子が、より涼しくて密度の濃い夜の空気中で連結するとNOが生じる。ここで生じたNOが紫外線光子を放出する。MAVENが観測した大気の波や潮汐作用は、科学者が作成していた火星の大気と季節ごとの変化のモデルとほぼ一致していた。ただし軌道船は、予想したよりも強いNOのシグナルを赤道で観測しており、NOがnoではなかった。また南極では、驚くほどの渦巻波動が観測されていた。なおMAVEN軌道船は、2013年11月18日(米国時間)、フロリダから打ち上げられた。いずれMAVENから名文が出されるかもしれません。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 4.

DOI: 10.1029/2019JA027318

[2] https://www.nasa.gov/mission_pages/maven/main/index.html

20.8.26

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迅速でかつ

 正確にCOVID-19の兆候を診断できるポータブルな機器の開発が広く行われている[1]。壊滅的な感染拡大のリスクを低減するためには、診断の範囲の拡大が必須である。ただし現状の診断の範囲は基本的に咳あるいは熱のようなCOVID-19の兆候がある場合に限定されている。一方で感染した多くの人が、感染させる可能性があっても無症状である。現在の診断方法は、検査対象の人の鼻あるいは喉からのサンプルのRNAを一旦DNAに変換しそれを複製する逆転写PCR法である。しかも訓練された技術者が特殊な施設で行う必要があるけど、無症状な多くの人のスクリーニングには時間がかかりすぎる。ウイルスタンパク質を検出する抗原検査は基本的に安価でポータブルであるものの、正確さに課題がある。その中ある企業はSARS-CoV-2を1時間以内に検出できるオーブントースターサイズの機器を開発し生産を拡大しているものの技術の多様性も必要である。他にも多数あって、英国政府が発注しているものは臨床評価も行われているが、その結果が未公開であるため、その方法のインパクトを現状では示すことができない。「臨床評価、印象はいいんでしょう」を超える必要があります。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 4.

20.8.25

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マルガリータ

 テキーラベースのカクテル、リキュールにライム・ジュース。これを家庭で作っていたサイエンスライターの女性、手がただれてしまった[1]。ライム果皮はフラノクマリン類の光増感化合物を含む。ニンジン類や別の柑橘果皮や多くの他の植物も光増感フラノクマリン類を含んでいる。ここでお困りんになるのは、それらが植物性光線皮膚炎[2]と呼ばれている現象を引き起こすためである。通常の日焼けのような症状であるが機構が違っている。フラノクマリンは皮膚細胞を浸透する。ついでUV-A光(315–400 nm)によって励起されると、それらはRNAやDNAにバインドする。その付加生成物がさらに紫外励起されると交差連結が進行し細胞死に至る。酸素の存在下ではフリーラジカルが発生し、さらに皮膚細胞が損傷する。初めに起きた反応はチロシナーゼを刺激しメラニンがつくられて、これで肌が黒くなる。この反応はフラノクマリンと紫外光の両方が必須である。そのため料理やカクテル作りの後は、手をしっかり洗うか、日焼け止めを塗るとよい。マルガリータ、ライムを皆無にはできない。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 3, p. 9.

[2] 植物性光線皮膚炎:phytophotodermatitis

20.8.24

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発酵によって製造できる

 安価なアミノ酸を広く利用する研究が継続する中、2017年の世界のアミノ酸生産は850万トンに至り、それらの化学合成の原材料としての有用性も向上している。これとは対照的に2-ケト酸を発酵によって生産することは難しく、今でも高価な触媒あるいは経費のかかる原材料が使われている。その中研究者らは、大スケールでの2-ケト酸合成を支援できる最適な酵素を発見するために、アミノ基転移酵素の特徴を有する13千以上のタンパク質を、コンピューターを用いた調査で明らかにした[1]。ついで幅広い活性が示された27の酵素を大腸菌で発現させて18のアミノ酸で活性の試験が行われた。これによって7つのアミノ基転写酵素に絞り込まれた。さらに最適な酵素は、ほとんど全てのL-アミノ酸を、対応する2-ケト酸に収率99%以上で変換できた。より大きなスケールで2-ケト酸を製造できる活性を持たせるために、アミノ基転写酵素の構造の微調整も行われている。検討が続く2-ケト酸製造、けっと参画する人も増えるでしょう。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 3, p. 7.

DOI: 10.1021/ acscatal.0c01895

20.8.23

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毎年数回

 利用させていただいている旅行代理店からのメール。海外出張の難しさの中、今の海外情報などが掲載されたwebサイトの紹介。そこには国ごとの状況の詳細や、GoToトラベルキャンペーンのツアー紹介も記載されている。背景は夏の情景である。特に個人宛の内容はないものの「弊社も頑張って踏ん張っております」を見て、お返事を差し上げた。旅行関連業界全般が壊滅的な打撃を受ける中、自分たちの働きかけや努力では如何ともし難い状況であること。海外出張は「今年中は」が「今年度中は」になってしまって、何もお手伝いできなくて、申し訳ないです。みたいなメールだった。しばらく経って部屋の電話がなった。誰?この日のこの時間帯に。旅行代理店の方だった。「メールにお返事をいただけるだけでも」と涙声だった、おそらく。先が見えない中、こちらもなかなか言葉が出ない。GoToキャンペーン、やっと政府のオフィスが出来上がったらしい。ただし適用のルールの変更もあるとのことだった。次回ツアーをお願いできるまで、生き延びられることをお祈りするばかりです。

 なおこのセーフじゃない状況、政府にはもっとセーブの政策を考えて実施して欲しい。

20.8.22

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10日齢ネズミの胚芽

 同じであるはずのグループの一部のそれが違っていた。研究者が制御している環境を変化させたことはない。その中建物の管理者に聞いたところ、床の清掃に使っている消毒剤を四級アンモニウム塩(quats、四級アンモ)入りのものにしばらく前に入れ替えたとのことだった [1]。その後四級アンモやそれを含む製品の飼育動物への影響などが、先の研究者に加えて多くの研究者が公表しその結果についての議論も継続中である。その中コロナ感染症対策の一環としてより多くの消毒剤が使われていて、四級アンモを含む製品も多い。これまですでに皮膚刺激性、皮膚感作性、職業性ぜんそくを含む、四級アンモを使うことに伴う職業上の健康リスクが広く知られている。それでも四級アンモのレベルとそのインパクトに関する調査が改めて開始されている。研究者らは少数の参加者の血液を採取し、三つの研究室で分析が行われた。血液分析では四級アンモのレベルとコレステロールバイオマーカーの評価。さらにミトコンドリア機能も見とこうという分析。最後に炎症のバイオマーカー分析である。その結果、参加者の血液の80%に四級アンモが存在し、その量が多いサンプルは、より強いミトコンドリア機能や活性な炎症バイオマーカーを示した[2]。ただしどのような経路で四級アンモが人の身体に入り込むかは謎であるが、消毒剤スプレーに晒されることが経路の一つである可能性がある。スプレーでプレイ、用心を。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 3, p. 30.

[2] DOI: 10.1101/2020.07.15.20154963

20.8.21

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スペインでは毎年

 50万トンの水素が化石燃料から製造され、石油精製、化学工業、肥料工業に供給されている、これに伴うCO2排出はおよそ5百万トンで、スペインでもペインである。さらに世界中では7千万トンの水素製造で8億3千万トンのCO2排出となって世界の温室効果ガスのおよそ2%に匹敵する[1]。その中スペインのある企業はマドリードの南250 kmの場所で、アンモニアプラントがある横に、水を水素と酸素に分解できる電解槽を建設することを計画している。この設備は年間720トンの水素製造能力があり、得られたいわゆるグリーン水素は隣接のアンモニア工場に供給される。さらにこの設備で発生させた酸素は、肥料として利用されている硝酸製造に使われる予定である。2021年の稼働を目指し、天然ガスからの水素製造を補うことができるもののこれによって天然ガス消費の削減は10%程度にとどまる。それでもこの設備によって、温室効果ガス排出は年間39千トン低下させることができると見積もられている。マドリードの成果が世界をリードするかもね。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 3, p. 11.

20.8.20

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陸水生態系で

 水銀は大惨事をもたらすが、そのモニタリングは野生生物に対する危険を伴う。研究者らは今回、トンボの幼虫が有毒な水銀の監視員として働くことを示した[1]。無機水銀が食物連鎖に入リこむと、それは神経障害を引き起こす毒であるメチル水銀に変換される。ただし「無機水銀のレベルがメチル水銀の生態系への蓄積と相関がある」、そう考える場合がすべてではない。そのため研究者らは生きた動物からサンプルを集めて、環境中の被毒リスクを理解しなくてはならない。その中トンボの幼虫は、水銀を蓄積する生き物で、大陸の陸水生態系で広く暮らしている。4000人の市民科学者の協力を得て10年かけて研究者らは、100の国立公園からトンボの幼虫を集めた。ついでそれらの水銀レベルは、同じ時にサンプリングした別の生命体のそれと相関があったことから、様々な場所に棲む魚や別の野生生物の水銀濃度を類推することができた。さらに生物的因子の、食物網に入り込む無機水銀量への影響が示された。これによって動物の生息場所の水銀レベルを緩和するための管理技術に情報を渡すことも可能になる。トンボ、道頓堀でも見かけますか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 3, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.est.0c01255

20.8.19

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実験室で

 化学反応をモニターするための外部センサーは通常一つのパラメーターだけを測定する。また外部にあるために、反応容器の壁を通過する必要があってノイズも伴う。その中、追加の情報を集めることができる新しいタイプの撹拌子が開発された[1]。それは通常の撹拌子よりも少し大きく、3-Dプリントされたカプセルの中に、積層可能なセンサーボードが組み込まれている。作るのは簡単で20ドル以下の経費で足りる一方で、100時間以上連続的にデータを集めることができる。収集できる特性の数がこれより少ない市販のシステムの価格は2000ドル以上である。研究者らは二種類のバージョンの試験を行なっている。教育用の使いやすいプログラムを組み込んだデバイスと研究室や工場で利用可能な進歩させたデバイスである。これらのどちらも温度、色、導電性、反応時間、粘度を、従来の方法に匹敵する精度で測定することができる。またハードウエア、ソフトウエアどちらも無料で、パラメーターを変更すればセンサーのタイプやサンプリングの速度をカスタマイズできる。現在の撹拌子は–40から85 °Cの範囲であるが、さらにその幅を拡大し、反応条件を一定に保ち、実験の再現性を向上できる試作品を提供したいとのことである。撹拌子、拡販して行けそうである。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 3, p. 5.

DOI: 10.1021/ acssensors.0c00720

20.8.18

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タンデム太陽電池は

 相補的な光吸収特性を示す材料を組合せた電池である。例えば半導体特性を示す安価な、三塩化メチルアンモニウム鉛とホルムアミジニウム類縁体のようなペロブスカイト材料や、シリコンの組合せがそれらに該当する。一般に太陽電池の評価は電力発生効率や安定性の検証だったが、ここではそのライフサイクルを見積もるために「ゆりかごから墓場まで」分析が行われた[1]。原材料の加工や精製に必要なエネルギーが、ペロブスカイトとシリコン層のタンデム電池、二種類のぺロブスカイトタンデム電池で検証された。その結果、それらを製造するために、シリコンを含まない電池は0.35年分、ペロブスカイト–シリコン電池では1.44年分、標準的なシリコン電池では1.52年分のエネルギーを必要とすることがわかった。製造方法にも依存するものの、ペロブスカイト電池は温室効果ガスの発生でも有望だった。1 kwあたりのCO2の排出グラム数は、シリコンフリーが10.7、シリコン電池が24.6だった。シリコンフリーが不利〜ではなかった。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 3, p. 4.

DOI: 10.1126/sciadv.abb0055

20.8.17

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賦形剤は

 医薬品の治療成分ではない添加剤であり錠剤のかなりの部分を占めている。これらは一般に不活性であるとされてきたが今回その生理活性を検証するために系統的な研究が行われた[1]。コンピューターモデリングと酵素アッセイ、生体外試験によって、600以上ある賦形剤成分のどれが重要な生物学的経路と相互作用するかが絞り込まれた。そのうち2つが動物試験で生理活性の可能性が示された。塩化1-セチルピリジニウムは、防腐剤や界面活性剤として多くの薬で使われている。チメロサールはある種のワクチンの防腐剤である。これらはネズミの血中に達して生物学的標的と十分相互作用できる。ただしこのことはこれらの賦形剤が有毒であるということではないものの、不活性でもない。例えば多くの薬を服用している高齢者はこれらの成分を多く取り込み、代謝しきれない可能性がある。今回の研究では賦形剤の70%は不活性であるために、問題を引き起こす可能性のある賦形剤の置き換えも可能である。特に一生のうちに長い間服用する糖尿病や避妊薬のような薬では重要である。それでも薬成分の置き換えには2年ほどを要し、25万ドル程度の経費も必要になる。賦形剤で不経済になりませんように。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 3, p. 4.

DOI: 10.1126/science. aaz9906

20.8.16

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女性の方が男性よりも(シリーズの最後です)

 エストロゲンのレベルは高く、そのホルモンはB細胞活性化や細胞生存に含まれる遺伝子を上方に調節できるため、細胞死に対して抵抗することができる。このエストロゲンが駆動するB細胞の保護が免疫系を高めることによって、免疫細胞から女性に恩恵がもたらされる。エストロゲンにバインドする細胞受容体は、SARS-COV-2が攻撃すると考えられる肺や腸を含む多くの組織に存在する。ただしこれらのエストロゲン関連の免疫保護の多くは、女性のエストロゲンレベルが急激に落ちる閉経で消えてしまう。ただしこの減少がCOVID-19に対するリスクに影響する可能性はなさそうである。もしホルモンとリスクが関連するのであれば、高齢女性は高齢男性と同様のリスクがあるはずである。男女のリスクの違いは全ての年齢で同様である。

COVID-19による死の性差に関して、いくつかの因子を検証してきたが、これらは単に生物学による違いではないはずである。生まれながらの性がこれらの違いをいかに引き起こしているのかということに短絡的にフォーカスしている可能性もある。さらに多くのデータ、基礎疾患、年齢、喫煙、晒されるリスクを含めた様々な変数を考慮した研究が必要であると、述べられている。性差の精査に加えた多面的検証が、正解の世界を導き得る。

四日分、お付き合いいただき、ありがとうございました。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 25.

20.8.15

 

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男女の違い(前日の続き、ちょっと長いです)

 生物学的視点では免疫系が鍵である[1]。一般に女性は男性よりも頑丈な免疫系を持つ。免疫系の病原体への応答に含まれる多くの遺伝子はX染色体で生き続ける。大抵の場合、男性の性染色体はXYで、女性のそれはXXであるため、男性はXを一つ、女性は二つ持っていることになる。これらの遺伝子は、二つの染色体で同時に活性化し得る。そこで女性では両方の遺伝子が免疫細胞に、より多くの抗体をつくることを許容し脅威をなくすことに繋がる。加えてウイルスや菌に対する免疫応答が男女によって異なる。私たちの体が病原体に侵入された場合、リンパ球と呼ばれる二種類の白血球がそれを攻撃する。2つのリンパ球であるB細胞とT細胞の病原体認識が異なっている。T細胞はさらに二種類ありCD8+ T細胞は感染した細胞を破壊し、CD4+ T 細胞はこの攻撃を支援する。B細胞は病原体破壊を引き起こさず、標的となる病原体に対する抗体をつくり、T細胞が攻撃を開始した後に、感染した細胞を系外に除去する。

ここでT細胞については男女でそれほど差はないが、B細胞は一般的に女性の方が多い。このことは、女性の免疫系には、T細胞が標的とする侵略者の脅威を認識できる良いシステムが備わっていることを、示している。さらにCD4+ T細胞もサイトカインと呼ばれる免疫応答分子で男女に違いがある。男性は炎症を促進する種類のそれを生産し、女性は病原体を除去するそれを生産する。COVID-19の重篤な患者さんでは、免疫系が炎症のサイトカインを過剰生産してしまう場合があり、これが腫れ、苦痛、臓器損傷を引き起こす。このいわゆるサイトカインストームが一旦起きてしまい、T細胞が分子を量産し続けるように活性化されると、体はそれを制御することが出来なくなる。ただしB細胞はこの制御不可能な炎症を止めることが出来て、荒れ狂うストームから体が保護される。これがCOVID-19に罹患した女性が重篤になるのを軽減している可能性もある。サイトカイン、ないといかんですが、増えすぎると。続きは明日のブログに

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 25.

20.8.14

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一般に男性の方が(前日の続き)

 様々な感染症をもらいやすく、これが男性の寿命が女性よりも短い理由の一つである[1]。そのためCOVID-19についても、性による違いをもとにした予測に従った結果であると、人の健康や疾病防除に関する研究者は述べている。さらに私たちが経験した以前のコロナウイルスである2002年から2003年のSARSや、2015年のMERSでも男女差が見られている。MERSでは、より多くの男性が罹患し死に至り、SARSでは男性の死亡率が高かった。1918年のインフルエンザパンデミック(スペイン風邪)のデータも同じ傾向を示している。COVID-19の死亡率は、糖尿病や心臓疾患のような基礎疾患と深く関連している。SARSやMERSからのデータの分析でも、基礎疾患の違いで説明が可能だった。さらに男女による普段の振る舞いや行動も関連している。世界全体を見渡したときにはそれぞれであるものの一般的には、男性のほうが女性よりも喫煙し酒を飲む。世界のある地域では、男性の方が女性よりも外に出て働くことも多く、これがウイルスに晒される可能性を広げている。基礎疾患もしっかりんと考慮する必要がある。続きは明日のブログに

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 23.

20.8.13

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女性よりも

 男性の方がCOVID-19に罹患しやすくて死亡率も高いように思われる[1]。ただし科学者の手元にある現在のデータだけでは、男性と女性それぞれの相対的なリスクについて結論を出すことは難しい。それでも集められたデータはその違いを示している。COVID-19に罹患した人とCOVID-19よって無くなった人の男女比が、国ごとに(日本は含まれない)示されている。20か国のうち、罹患した人の割合は8か国で女性の比率が50%を超え、他の国は男性が50%を超えていた。一方で無くなった人の割合は、22か国中21か国で男性が50%を超えていた。さらに17百万人から得られたデータは、全体として男性の方が女性よりもCOVID-19によって死亡した割合が多く、この違いは、歳を重ねるごとに増加していることを示していた[2]。これは、男女の免疫系の生物学的な違い、性ホルモン、普段の行動や社会での違い、例えば喫煙や医師の診断を受ける習慣、糖尿病や心臓疾患の違いなど、考えるべき因子は幅広い。院試には出ないけど、データの判読が行われている。続きは明日のブログに

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 22.

[2] DOI: 10.1038/ s41586-020-2521-4

20.8.12

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シクロヘキサン環の

 それぞれの炭素にフッ素原子が全てシスの位置で組み込まれた六フッ化ベンゼンが2015年に合成された。高い極性のフッ素原子と極性のほとんどない水素原子の特徴から、二つの顔を持つローマの神のようで’Janus face’分子になった。同じ研究グループが今回フッ素原子に代えてトリフルオロメチル基を組み込んだ[1]。ヘキサトリフルオロメチルベンゼンの水素化によって全てがシスの1,2,3,4,5,6-ヘキサキス(トリフルオロメチル)シクロヘキサンが合成された。この反応は高温・高圧でも14日間を要したが、それでも期待の生成物は収率13%だった。化合物の結晶構造は、シクロヘキサンの伝統的なイス形配座が三つのアキシャルCF3基によって幾分平面であることを示していた。これまで合成されたすべてがシス置換のシクロヘキサン誘導体の中で今回の化合物は、CF3基がぶつかるために環反転の障壁が最も大きかった。極性はフッ素置換のそれと比較するとそれほど大きくはなかったが、CF3基は、塩化物イオンを引きつけるそれなりの親和性を有していた。オールシス置換、山紫水明なるか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 11.

DOI: 10.1002/anie.202008662

20.8.11

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フルーツが

 熟したかどうか、色の変化なしで知ることは難しい。今回その作業を簡単にできる新しいエチレンセンサーが開発された[1]。センサーに向けてシドニー大学の研究者らは、しんどいに〜ということもなく、10.12-ペンタコサジイン酸(PCDA)とエチレンに反応するチオール基で修飾したPCDAを使って球形小胞をつくった。ついで小胞の溶液をキトサンと混ぜて、混合物とフィルムとしてキャストし、紫外光を使ってモノマーを交差連結させた。その結果得られた青いフィルムの性能試験のために、湿気のある容器の中で、キーウィフルーツをそのフィルムで包み三日以上観察した。フルーツが熟すにつれて、それはエチレンを放出し、放出されたエチレンがチオールと反応し、ポリマーの形状が変化するとともにその色が紫色から赤色に変化していった。センサーはエチレンに選択的で、空気、二酸化炭素や窒素のような別のガスに応答して色が変化することはなかった。繊細なフルーツセンサーが普通に広がりますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 11.

DOI: 10.1021/ acssensors.0c00117

20.8.10

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様々な結晶系

 多形体に結晶化できる化合物はほとんどない。最も多産の一つであるROYとして知られている低分子にここでは新たに二つの多形体が加わった[1]。多形体は、医薬品として使われる際にも独自の特性を示し、標的の多形を生み出すための方法が開発されてきた。20年以上もの間研究されてきた2-アミノチオフェンを含むROYは、十数個の多形体をつくり、さらに多くの多形を形成させる秘策があるのではないかと研究が継続されてきた。その結果二つのグループから新たなROYの多形体が報告され、これによって14の多形体で、そのうち11の単結晶X線構造解析が行われている。新たな成果の一つはROYの分子サイズと形は模倣し組成がわずかに異なる化合物による。研究者らは、混合結晶播種法によって配座や構造にほんのわずかな変化を引き起こさせて、新しい結晶すなわち純粋な薄いオレンジ結晶を得た[2]。別のグループは、結晶化の条件をハイスループット法によって探索した[3]。それによって化合物と有機溶媒を含むナノリットル液滴中で結晶を成長させて深赤色のブロック形のROYの結晶を得ている。色々な形のROY、面白いです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 9.

ROY:赤(Red)、オレンジ(Orange)、黄色(Yellow)の多形体として結晶化することからROYと呼ばれている。黒いわけではない。

[2] DOI: 10.1021/jacs.0c04434

[3] DOI: 10.1016/j. chempr.2020.04.009

20.8.9

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CO2を

 ある種の有用品へ変換する反応を実用的にするために、安価で入手容易な原料を使った触媒反応の開発が行われている。ここではCO2の強いπ結合から電子を取り出す鍵反応が、イミダゾリウム2-カルボキシレートカルベンをCO2に配位させることによって達成された[1]。ついで研究者らは、地球上に豊富にある三つのアルカリ金属で強固なCO2結合を還元した。CO2それ自身はアルカリ金属とは反応しない一方で、カルベンとCO2とから形成される両性イオンは、ナトリウムリチウム、ナトリウムあるいはカリウムと反応し、アルカリ金属クラスターを与える。加える金属の量次第で、CO2は一電子あるいは二電子還元を受ける。反応は常温・常圧で進行し、取り扱い困難あるいは高価な反応剤や触媒の利用を回避できる。得られたクラスターの価電子軌道は完全には満たされていないことからも、それは興味ある反応性を示す。これによってメタノールやジメチルエーテルのような高付加価値な化成品や材料を導き得る。さらに今回の成果はカルベンの広がりのある利用可能性も示している。カルベンがCO2還元と関係、歓迎です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 7.

DOI: 10.26434/ chemrxiv.12665336.v1

20.8.8

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米国の発電所から

 年間およそ20億トンのCO2が排出されている[1]。これを工業的に捕捉する方法はアミン水溶液を使うことである。ただし吸収したCO2を放出する際に、エネルギーを必要とすることも課題である。十数年前からアミンで修飾した金属有機構造体(MOF)でCO2捕捉が試みられてきた。例えばジアミノ基を内側に組み込んだMg2(dobpdc)として知られているMOFがCO2を選択的に吸着し、ほとんどエネルギーを必要とせずにそれを放出できることが報告された[2]。ただしその後ジアミノ基がMOFから外れていくことがわかった。それに対して今回、より安定なMOFが開発された[3]。それはMOFが持つ孔同士の長さにフィットした四つのアミノ鎖が組み込まれている。この新しいMOFは、米国エネルギー庁のCO2捕捉目標を満たし、低温蒸気を使い1000回の繰り返し使用でも安定である。炭素捕捉のスペシャリストは、今回のMOFや関連化合物は、CO2捕捉の実用的かつ低エネルギープロセスになり得ると予測している。特に通常のMOFでは分解してしまう高温でも低温でも安定に利用できる点、特筆すべきである。今回のMOF、NHKの「モフモフ」に登場するかな。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 27, p. 6.

[2] DOI: 10.1021/ja300034j

[3] DOI: 10.1126/science.abb3976

20.8.7

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原子や分子が衝突すると

 玉突き台の上にあるボールのように、お互いが跳ね返るのではないかと期待される。ただしCO分子が衝突したとき、時にスクエアダンスが始まる。今回研究者らは、コンピューターシミュレーションを使い、分子の炭素–炭素同士が800 m/sの衝突速度でぶつかると、二つの分子は酸素原子の相互作用に促されるように、ある場所で回転しお互い後ろ向きになり、もと位置になるまでこれが繰り返されることを明らかにした[1]。これはまさにスクエアダンサーがお互いに後ろ向きになって踊る「ドーシードー」に類似である。この効果は、分子の前向きの推進力が回転エネルギーに変換されているためである。またこの振る舞いは20回衝突でわずか一回程度起こるのみであるものの、これまでのモデルではこの現象は説明できない。星間空間では、CO分子は回転エネルギーを光エネルギーとして放出し、望遠鏡がそれを捕まえてチリ雲や星雲のイメージがつくられている。そのためCOのスクエアダンスは、これらのCO濃度がかなり高い彗星や太陽系外惑星近くではより多く起こる可能性がある。CO同士の「ドーシードー」、どしどし研究を進めたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 13.

DOI: 10.1126/science.aan2729

20.8.6

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2019年4月

 ノートルダム大聖堂が火災で破壊された。その後大聖堂の屋根や尖塔に使われていた鉛の行方に関心が持たれてきた。その中研究者らは2019年12月と2020年2月に、大聖堂近くの土のサンプルを複数集めて蛍光X線で鉛の量を測定した[1]。ついでそのデータをもとに、どの程度の鉛が火災で落ちたかが見積もられた。その結果、大聖堂の1 km以内におよそ1000 kgの鉛が落ちたことがわかった。これは地方自治体が見積もった量の6倍に相当する。研究者らの検証実験は、鉛で編み上げられたチリがその地域に落ちたことや建物にも入り込んでいる可能性を示している。米国の疾病管理予防センターは、残留する塵や土を取り込むことは、家庭で子供が鉛に晒される一つのパターンであると指摘している。火災の直後の環境調査は防疫官に危険を警告していたものの、火災の後すぐには、土、ちり、血液サンプルはほとんど集められておらず、この火災からの鉛が人の健康にどのように影響するかを解明することが難しいのが現状である。鉛の影響があんまりわからないのか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 13.

DOI: 10.1029/2020GH000279

20.8.5

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COVID-19ワクチン

 の初めてのフェーズIII臨床試験が先週開始された。それらはModernaとNIHが開発するmRNA-1273とPfizerとBioNTechが提供するBNT162b2である。どちらもフェーズIII試験にはおよそ3万人が登録し、そのうちランダムに選ばれた半分はプラシーボが投与される。mRNA-1273に関する発表では、ボランティアを募集するwebsiteにはこれまでに15万人が登録しているとのことである。現在も感染が拡大していることと試験に対する関心の高さから、11月か12月にはワクチンの効果と安全性が明らかにされるはずである。もし結果がよかった場合には、いつそれらが一般に行き渡るかであるが、緊急事態では未承認ワクチンの備蓄や配給も考えられる。Modernaは2021年には数億錠のワクチンを提供できる準備をしており、さらに来年中には10億錠に近い数まで押し上げることがゴールであるとしている。Modernaから、もう出るかなと待っている。

[1] Chemical & Engineering news, 2020 August 3, p. 10.

20.8.4

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外傷や脳卒中に

 苦しめられると体は、炎症応答としてスーパーオキシドアニオンとして知られている酸素ラジカルアニオンを発生させる。もし過剰のスーパーオキシドアニオンが生じてしまうと、これらのラジカルはさらに体にダメージを与え、脂質から水素原子を引き抜き、DNAに大打撃を与える。その中研究者らは、費用効率の高い炭を使って、スーパーオキシドと反応しそれらを過酸化水素と水に分解できるカルボニル基が分散した炭ナノ粒子を作成した[1]。粉末の炭を奮発し濃硝酸で処置した、酸化ナノ粒子と複製したナノザイムは、過剰の過酸化水素を、体にある天然酵素よりもかなり速い速度で分解する。今回の成果は、低分子医薬品や酵素ではなし得ないことを、ナノ材料がなし得た好例である。さらに今回のナノザイムは、サイトカインストームの効果やスーパーオキシド生産に関わる炎症応答の低下に利用可能である。なおこれらの応答は、COVID-19に罹患した人では、肺の膨れや他の臓器へのダメージを引き起こす可能性も指摘されている。ナノザイム、隅に置けない炭ナノだ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 12

DOI: 10.1021/acsanm.0c01285

Nanozyme:ナノ材料がもとになった人工酵素のこと。

20.8.3

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古代ローマ人は

 当時、ダイニングの陶磁器やカラフルなモザイクなどをガラスで作成していた。ただしローマ人はその中で特に、無色の半透明の、アレキサンドリアンと呼ばれるガラスを好んだ。これは考古学の謎の一つだったものの今回、アレキサンドリアンサンプル中のハフニウム同位体がこの太古の起源を明らかにした[1]。古代ローマの都市で現在のアンマン(ヨルダン)に近いゲラサで、異なるタイプのガラス片が集められた。その中のストロンチウム、ネオジム、ハフニウムの分析が行われた。SrとNd同位体は以前も使われたものの、これらの元素の同位体では、地中海の他の地域で集められたガラス片と区別することはできなかった。それに対してサンプルは特徴的な176Hf/177Hf比を示し、これはナイル堆積物の砂に見られる鉱物の比であるため、アレキサンドリアンはエジプトで製造されたガラスの一つであることがわかった。今回の研究は古代ローマ時代の取引の慣習を明らかにするだけではなくて、Hfが別の加工品の分析にも利用可能であることも示している。アレキサンドリアん、ど〜りゃんステキさん

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 11.

DOI: 10.1038/s41598-020- 68089-w

20.8.2

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輪状の

 分子集合体を合成しようとしていたところ研究者らは、単純なモノマーから非結合性相互作用だけでつながったナノスケール鎖を組み立てた[1]。これは化学におけるオリンピック級の手柄である。水素結合相互作用だけで、六員環スプラマクロサイクルが形成されている。この雪の結晶のような構造が積み重なりさらに曲がって蛇のような構造やヘリカルコイルを形づくる。研究者らはある種の極性と非極性溶媒を混ぜた時に、環が連結することを観測した。さらに環の内側は、別の環を形成するように仕向けられていた。環の溶液にモノマーを加えていくと、22までが繋がった長いスプラモレキュラー鎖を形成した。このような大きくて、一定の大きさの環が曲がったり輪になったりするプロセスは注目すべきであり、機械的にかみ合わさった大きな長さのスケールの分子構造の特性を探究する道を開く成果である。この成果を公表した日本の研究者らは最初、オリンピックゲームのシンボルに類似の五つの輪がリンクした鎖を作成したことから、成果を東京オリンピックの年に出版したかったとのことである。オリンピックは延期されたものの、2020年に礎が公開された年、TokyoならぬChiba2020になった。環を見て考えて、感動されたでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 July 20, p. 11.

DOI: 10.1038/ s41586-020-2445-z

20.8.1

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