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2020年9月

ヒドロゲルを持つ除草剤の

 液滴は、葉っぱに落ちても、跳ね返ったり壊れたりしないで、そこにとどまることができる[1]。このタイプのヒドロゲルは、散布する農薬の量を減らしても、同様の穀物保護をなし得る。一般に農薬は界面活性剤と混合して、液滴が葉っぱの表面にとどまる助けをしている。ただしこれらの混合物を散布すると、風によって簡単に飛ばされてしまう。そこで界面活性剤ではなくて、中国の研究者らは葉酸と亜鉛とを交差連結させて、ヒドロゲルをつくりそこに除草剤であるジカンバを入れ込んだ。そのヒドロゲルを風洞の中で、雑草であるアカザのろう質の疎水性の葉っぱの上に散布し、高速カメラで液滴の動きを撮影した。その結果、液滴は、葉っぱに接触すると平たくなったが、ついでそれは球状の液滴に戻り、葉っぱにくっついた。これとは対照的にジカンバの水溶液の液滴は、時間はわからないが、より小さな液滴に砕けて葉っぱから滑り落ちていた。散布できるサンプルがありました。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 14, p. 7.

DOI: 10.1021/acssuschemeng.0c03396

20.9.30

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ノビチョクは

 ソビエトが独自に開発し、2018年ロシアの元スパイが英国で、そのうちの一つで毒殺されたことが報じられた化合物である[1]。ノビチョクは有機リン化合物で、体内の酵素であるアセチルコリンエステラーゼの働きを抑える。この酵素は神経伝達物質であるアセチルコリンを分解し続けるが、もし酵素の働きが停止すると神経伝達物質の濃度が上昇する。これによって筋肉の共同的な動きが妨げられて呼吸困難や心臓の機能低下に至る。この機構はサリンと同様である[2]。もしノビチョク剤に毒された場合でも、ppbレベルの濃度であれば安定同位体比の検証などによる検出は極めて困難である。一方で不純物や副生成物の検出、毒された人が代謝によって排出したものを調査することは化合物がどのように製造されたかを決定する一助になる。専門家によれば、この生物医学的な試験は確立された確かな試験であるとのことである。

そんな中、8月末プーチン大統領に批判的なロシアの政治家が病にかかりドイツで治療を受けていたが、ドイツ政府は彼がノビチョクによって毒されていることをアナウンスしている。ノビチョクに関する事実解明、延びちょるかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 14, p. 5.

DOI: 10.1007/s11419-017-0376-7

20.9.29

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ひずみのある

 環状化合物は好奇心をそそられる化合物であるが、そのエネルギーを有効利用した例は多くはない。例えば環状アレンを用いた立体選択性制御が行われているが、これは大量のキラル化合物を用いた場合に限られていた。それに対して今回触媒的プロセスが報告された[1]。研究者らは、鉄シクロペンタジエニルキラル配位子を持つニッケル触媒存在下、ベンジルトリアジノンと環状アレン前駆体を反応させて二つの中間体を得た。すなわちひずみのかかった環状アレンとNi触媒を含む有機金属中間体である。これらの化学種はただちに反応し、オレフィン挿入を経てキラル付加体を収率85%、94%eeで与えた。構造解析が示した生成物の立体化学は、研究者らが予測していたそれとは逆だった。計算化学によって、遷移状態では溶媒の関与によって、一方がわずかに安定化を受けていることがわかった。この研究は高い鏡像体過剰率で化合物を合成する際にひずみのある中間体が利用可能であることを示している。ひずみ、いつ見ても魅力的です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 7, p. 9.

DOI: 10.1038/s41586-020-2701-2

20.9.28

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計算化学によれば

 フラーレンケージでトラップされたアクチノイド元素は、特異的な金属–金属結合を形成する。それは非常に長い共有結合やσ結合を伴わないπ結合を含む[1]。これまでアクチノイド金属結合としては、気相中のU2とTh2と80炭素フラーレンの中のU2を含むいくつかが知られているだけである。その中今回の計算結果は別のタイプの結合がフラーレン中で形成することを予言している。ここではC70, C80, C90フラーレンの中で、AcからCmまでの元素の間の結合がモデル化された。ケージは金属間同士を接近させるだけではなくて、金属間の結合形成の電子的条件を向上させている。プロトニウムが最も興味ある系で、バナナ形σ結合をC70内で形成、C80内ではσ結合なしに二つのπ結合を形成、C90内では、これまでで最も長い金属–金属結合(5.93Å)が見られた。ただしこれらは計算上の結果であり、さらに洗練したモデルを構築し、電子相関や相対論効果も含める必要があるが、研究者らはそれらを含めても結果は変わらないだろうとしている。またアクチノイド間結合に加えて、アクチノイド–フラーレン系は、先端エレクトロニクス分野で、スイス・アーミーナイフのように万能な分子素子として使えるかもしれない。アーミーナイフ、危みないふです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 7, p. 6.

DOI: 10.1021/acs. inorgchem.0c01713

20.9.27

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年間25百万トンのエチレンが

 製造されている。これはプラスチック、ポリマー、長鎖炭素化合物に変換される。その原料は化石燃料であるため、それ以外の方法が探索されている。ただし現状では工業的需要を満たす大スケールな代替の製造方法は提唱されていない。その中酵素や遺伝子改変した細菌を利用する系も開発されているが、酸素が必要であり、エチレンと酸素の混合は爆発の危険がある。それに対して今回酸素を使わずに、エチレンとメタンを生産することができる細菌酵素が発見された[1]。この細菌は土あるいは新鮮な水から得られる。基本的には、微生物が残したイオウを含み2-(メチルチオ)エタノールに分解される代謝廃棄物がエチレンの原料になる。メチルチオ-アルカン還元酵素が分子からイオウを除去しエチレンが放出される。酵素は環境中のジメチルスルフィドからメタンを生産する。細菌がこれらの反応を使うのは、イオウの量が少ない環境の場合に限られる。細胞は、重要な生体分子であるメチオニンやアデノシルメチオニンをつくるためにイオウを必要としており、それがエチレン、メタン生産につながっている。化石燃料で稼ぎますから脱却したい。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 7, p. 6.

DOI: 10.1126/science.abb6310

20.9.26

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金星は

 表面温度およそ470 °C、二酸化炭素、窒素、硫酸の液滴で構成される密な酸化的な大気の状態にある。その中、大気中に地球上の嫌気性微生物と関連する低分子化合物であるホスフィン(PH3)が存在するマイクロ波信号が検出された[1]。酸化的大気の中で、還元状態の分子であるPH3が存在することを説明することは難しいが、その存在は生命の痕跡を示すものである。二つの望遠鏡が受けた信号を研究者らは、約20 ppbの濃度のホスフィンの回転遷移によるものであると同定した。さらにこのガスは惑星の中緯度付近でのみ観測され、極では検出されていない。気体の発生について、既知の光化学あるは地球化学的な過程を排除し、別の反応が惑星で起きていると結論づけている[2]。別の天体化学者らは今回の結果をファンタスティックであると述べると同時に、マイクロ波信号がPH3起源であるスペクトルデータをさらに集める必要があるとともに、生命の痕跡と呼ぶ前にガス形成の基本的な化学の理解が必要であるとも指摘している。金星のことも、気にせいよ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 21, p. 5.

DOI: 10.1038/ s41550-020-1174-4

[2] arXiv: 2009.06499 審査前論文

この記事、9.15頃からwebニュースでも紹介されています。金星、ホスフィンで検索を

20.9.25

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群飛は

 バクテリアの典型的な集団行動である。普段からのその動きは単に動くだけではなくて、その間に、バクテリアに特異的な耐性発現機構を駆動させるシグナルを発信している。さらにそのシグナルを発信したバクテリアは死ぬ。この群飛大腸菌が死ぬ際に、AcrAと呼ばれるタンパク質を放出することが解明された[1]。このタンパク質は、AcrAB-TolC発散ポンプの一部で、バクテリアは細胞外に物質を放出するのに使う。死んだ細胞からのAcrAは、生きた大腸菌の表面のTolCと相互作用し、複数の防衛機構を刺激する。その機構には活性酸素の分解やTolCや別の発散ポンプの発現の増加を含む。研究者らは、別の群飛バクテリアも同様に種特異的なシグナル(necrosignals)を発信することも見つけた。このような振る舞いは、ある一定数のバクテリアの死が、群れ全体の生存を増加させるという、利他的行為の形であることを研究者らは提唱している。人も利他的を借りたい。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 9.

DOI: 10.1038/s41467-020-17709-0

20.9.24

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トロポロンは

 七員環の芳香族化合物で天然にも存在し特異な電子特性を有する。真菌類のα-ケトグルタレート依存酵素であるTropCはトロポロン合成を触媒するがその機構解明が長い間試みられてきた。今回実験とコンピューターの組み合わせで、酵素はラジカル環拡大を促進していることが明らかにされた[1]。研究者らはTropCを結晶化するとともに、三つの可能性のある経路の考えられる中間体の活性部位が計算された。ついで研究者らは様々なアミノ酸残基を活性部位に組込んだ12の酵素変異体を合成し反応に用いた。その結果一電子ラジカル化学を引き起こすことができる変異体のみがトロポロンスチピタアルデヒドを与え、他の変異体は、六員環化合物であるトリヒドロキシベンズアルデヒドを与えた。多くのトロポロンは生理活性を示すこと、トロポロン骨格を含む数百の天然物が知られていることから、合成の標的ではあるものの10-20段階を経る経路も珍しくはない。そのため今回の成果は、新しい生体触媒の創製やその挙動の理解への道筋にもなり得る。トロポロン、コロコロンと合成できる日が来ますように。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 9.

DOI: 10.26434/chemrxiv.12780044:審査前

20.9.23

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沈没した船は

 人が制作した無生物の作品のようであるものの、それは微生物群に由来する動的水界生態系のホストである。今回研究者らは、同じ沈没船でも多くの部位で微生物群は複雑であることを、初めて明らかにした[1]。ノースキャロライナ海岸の浅瀬から、博士も混じって、目に見える腐食しているものの人の手が加えられていない自然の物質のサンプルが集められた。その結果、これらのサンプルを集めた位置によって、微生物群が明らかに異なっていた。これは体の中で微生物が好む特定の場所があることと同様である。沈没船の中で微生物は自分自身にとって最も適した場所を選んでいる。さらに沈没船に直接繋がっている新しい鉄酸化菌が初めて同定された。その菌には既知の菌[2]の新種も含む。これらの菌は鉄が豊富な船体の生物腐食を行うとともに、ゲノム分析によれば窒素や炭素固定も行う。これによって菌は別の有機体を呼び寄せて、人工の岩礁のような持続可能なエコシステムを形成する一助になっている可能性がある。この洞察は、水面下の考古学的な場所を保存する戦略へのヒントになり得る。沈没船研究から、ボツにせん成果が。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 9.

DOI: 10.3389/fmicb.2020.01897

[2] マリプロフンドゥス・フェッロオクシュダンス:グラム陰性微好気性の鉄酸化細菌

20.9.22

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地球に落ちた

 頑火あるいは球粒 (EC) 隕石の大きな塊の化学組成は現在の地球のそれと類似である。ただし宇宙空間をさまよい太陽の強い放射を受ける中、これらの岩は氷水を失っているはずである。それでも地球は表面や内部でも水が豊かであることから、水がどこから来たか謎だった。ある説では、太陽系外からたどり着いた彗星や炭素質コンドライトが乾いた地球に水をもたらしたとされている。その中今回13のEC隕石の分析が行われ、EC隕石は地球の全ての水を構成するのに十分な水素を含んでいることがわかった[1]。この物質から地球ができた時、それに含まれる水素が酸素と結合して水が発生したことがここでは提唱されている。さらに隕石の中の水素と重水素の比が地球の内部にある水と一致することもわかった。それでも水が他からやってきたことも除外はされていない。いくつかのEC隕石由来の水は熱かった原始地球で失われた可能性がある。また同位体比は、表面の水がEC隕石のそれとは違っている場合もある。どちらにしてもEC隕石がどのように水素を貯蔵していたのかは次の疑問の一つである。それはともかくEC隕石と地球の水、姻戚関係でしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 7.

DOI: 10.1126/science. aba1948

20.9.21

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人の血液型と

 COVID-19が重症化したり死亡することとの間にはほとんど相関がないことが今回示された[1]。以前の遺伝学的研究では[2]、O型の血液はCOVID-19を防ぐことが示されていた。それに対して今回の論文では、2月中旬から5月中旬までの間にCOVID-19に罹患した957人の患者さんと、他の疾患で入院している患者さんの血液型を比較した結果が掲載されている。すなわちこれら二つのグループには、目立った違いは見られなかった。またこのことは同じ病院から公開された別の論文の結論とも一致していた[3]。この結論の違いは、以前の論文では、COVID-19患者さんと比較する対象が適切でなかったのではないかと指摘されている。さらにCOVID-19と血液型の間の研究が行われていて、その間のリンクはあまりないことも述べられている。広範な社会への広がりや、基本的な健康格差の中でも、COVID-19における血液型の役割は、別のリスクファクターと比べても小さいように思われる。O型血液でも、強気になってはいけません。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 6.

DOI: 10.1111/trf.15946

[2] DOI: 10.1056/NEJ- Moa2020283、2020.6.19 村井君のブログ

[3] DOI: 10.1007/ s00277-020-04169-1

20.9.20

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オレアンドリンは

 南米や他の地域の造園にある有毒な低木であるキョウチクトウに存在する糖鎖を含む化合物である。この植物を食べると吐き気、嘔吐、不整脈を引き起こし、時に死に至る。オレアンドリンは、キョウチクトウの根から花までの至るところにあって、体内に入るとナトリウムやカリウムポンプを抑制する。米国のFDAは、オレアンドリンやキョウチクトウからの抽出物をいかなる疾病の治療のためにも承認していない。そんな中7月に、オレアンドリンがSARS-CoV-2を打ちのめすことができるというプレプリントが公開された[1]。この論文は今のところ他の科学者によって吟味されていない。そのプレプリントでは、試験管の中ではガンが引き起こすレトロウイルス(RNAウイルス)の別の細胞への拡大をブロックすることができるオレアンドリンの可能性が言及されている。ただしプレプリントから人への投与までには、人の細胞や動物での実験を含む多くの研究や、医師によってモニターされる必要である。そんな中トランプ大統領も言及した治療の可能性を含む誇大な宣伝のために、人が個人的にキョウチクトウで治療してみるという境地になることが心配されている。この植物を食べたり、植物からの煙を吸ったりしてはいけない。キョウチクトウ、こん畜生。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 6.

DOI: 10.1101/2020.07.15.203489

20.9.19

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世界中で数百万人の人が

 飲料水媒介の病気で亡くなっている。これは手頃で実用的な消毒の方法がないためである。この課題を解決するために東華大学の研究者らは、バクテリアを殺し、目詰まりを防ぐことができるシリカエアロゲルからなる強くて柔軟なフィルターを開発した[1]。またその消毒特性の再生は、漂白液に浸すだけで行うことができる。すなわちシリカナノ粒子が散りばめられたシリカナノエアロゲルがつくられて、これがN-ハロアミン官能基で覆われた。ついでこのエアロゲルを希薄な漂白液に浸しN-ハロアミン官能基を殺菌性のN-クロラミンに変換した。得られたエアロゲルは水中の99.9999%の大腸菌を殺し、市販の濾過膜の100倍の流速を保っていた。ファイバーの超疎水性表面の薄い水層がバクテリアの粘着を防いでおり、バクテリアがエアロゲルを汚染することなく素早く外に流れ出ていた。研究者の一人は、このエアロゲルの製造方法は、工業的なスケールでもかなり単純な方法であると述べている。このエアロゲル、え〜やろ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 24, p. 9.

DOI: 10.1021/ acsnano.0c03793

20.9.18

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大西洋サケの筋肉は

 哺乳類のそれと違って温度が10 °C以下になっても柔軟性が保持されている。これは筋肉収縮に含まれるタンパク質であるトロポミオシンの違いであることがわかった[1]。しかも哺乳類とサケ類ではアミノ酸一つが違うだけだった。筋肉が適切に伸縮するためにはトロポミオシンは配座柔軟性と別の筋肉タンパク質と相互作用できる能力を維持しなくてはならない。哺乳類のトロポミオシンは温度が下がると硬くなって標的にバインドすることも難しくなる。一方サケのタンパク質では、哺乳類のそれの77番目にある陽電荷を有するリシンが中性のトレオニンに置き換わっていて、これがトロポミオシン間の静電相互作用を中断させる。哺乳類の体温でこの入れ替えがあれば安定性や機能を失ってしまう。一方でサケでは、不安定化が温度低下によって引き起こされる硬直を防ぎ、サケが極寒の水の中を泳ぎ回るのを可能にしている。トロポミオシン、神妙です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 24, p. 8.

DOI: 10.1021/acs.biochem.0c00416

20.9.17

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新しいJACSの編集委員長に

 E. Carreira先生が就任し、2021年1月からそのチームが始動。P. Stang先生の後を引き継ぐことになる[1]。先生は、キューバ生まれでスペインと米国で暮らし、今はスイスに落ち着いている。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で学士、ハーバード大学でPh.D.を取得した。1992年カリフォルニア工科大学に着任し1998年スイス連邦工科大学に移籍した。先生は最初のスペイン系アメリカ人の委員長で、また米国外で住む初めての委員長でもある。6名の新しい編集長もアナウンスされている。ペンシルバニア大学J. Francisco先生、理化学研究所侯 召民先生、マックス・プランク研究所とスイス連邦工科大学ローザンヌを兼務するK. Johnsson先生、ミシガン大学M. Sanford先生、テキサスT&M大学K. Wooley先生の5名と6人目は中国を拠点とする先生で年末に発表される予定である。Carreira先生の就任に関連して、先生が1996年に書いた手紙、すなわち「当時の研究室メンバーには長時間働くことを期待する」という内容について論争が再燃した。これについて9月5日先生は「あの手紙については後悔しており、現在の指導者としてのスタンスを反映していない。・・・自分自身はこの業界で、研究室であれジャーナルであれ、持続可能で確かな文化的な転換を促進する覚悟である」と発信している。委員長、今は緊張しているでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 14, p. 35.

20.9.16

 

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蓄電池には

 二つの電極とその間に電解液がある。その中表面積の大きな電極を作成していた研究者らはレンガに触発された。これまで研究者らは鉄イオンを用いた重合反応で調製したポリマーナノファイバーを電極に用いていたが、最近は重合の鉄源としてサビに注目していた。天然にある赤い色素は酸化鉄であり、レンガにもそれが含まれる。そこでレンガの中の酸化鉄を用いることにした。まず塩酸蒸気を160 °Cでレンガの孔に入れて酸化鉄を溶かして鉄イオンを放出させた。ついでモノマー蒸気を注入すると鉄イオン存在下、重合反応が起こり、導電性ナノファイバーが出来上がった。蓄電池を完成させるために二つのレンガ電極とゲル電解液を組合せ、最後に防水加工したエポキシコーティングで素子を包み込んだ。素子は3Wの電力を供給し幅広い温度範囲で利用できた。このエネルギー貯蔵レンガは、装飾壁に埋め込むのに十分な強度も有している。レンガが足れへんが という日が近いかも。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 24, p. 7.

DOI: 10.1038/s41467-020-17708-1

20.9.15

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分子結び目を導く方法は

 小さな部品の自己集合に依存し、その結果高い対称性の結びができる。ただしおむすびはできない。その中今回対称性を欠いた複雑な結び目が合成された[1]。2,6-ピリジンジカルボン酸アミド(pdc)と1,10-ジフェニルフェナントロリン(dpp)を使って分子が設計された。ルテチウム(Lu)と銅を加えるかLuのみを加えることによって、靴ひもを結ぶが如く、違った結び目が導かれる。一つ目のタイプの結び目では、より糸の中でルテチウムイオンが三つのpdc部分の配位を受けて総角結びが形成される。この対称性のある結び目はこれまでにも別の方法で合成されていた。一方で二番目の結び目は、はじめに銅が二つのdppからの配位を受けてループを形成する。ついでLuを加えるとそれがpdcにバインドしてループをくぐる。さらに末端が閉環メタセシス反応で連結し結び目は金属を放出しても残ったままである。銅-dpp錯体の掌性が、遷移金属不斉触媒のようにLuが絡みの形成を方向づけている。これによって非対称な三回ひねり結びが達成されている。結び目、ルテチウムに注文してできました。

[1] Chemical & Engineering News 2020 September 7, p. 7.

DOI: 10.1038/ s41586-020-2614-0

molecular knots:分子結び目、瀬川さん(https://segawa.ims.ac.jp)のアドバイスです。

20.9.14

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微小な海洋生物が生産する

 揮発性有機化合物が雲の種を生み出し、気候に影響する可能性が考えられてきた。その中すでに植物性プランクトンよりもむしろ微生物が、大洋からの揮発性有機化合物とりわけジメチル硫酸(DMS)の放出に寄与していることが示されていた。ただしこれを実験的に検証するのはかなり挑戦的な課題である。その中研究者らは10年あまり、海洋波シミュレーターを使って、海、空、植物性プランクトンさらに微生物との化学的相互作用を検証してきた[1]。この完全に閉鎖されたシステムを利用すると、実験室で、実際の環境の迅速な化学反応を研究することが可能になる。長年の研究ではここで雲のタネになるエアロゾルが作られることはなかった。さらに微生物の濃度がどれ程大きくてもエアロゾルは形成せず、大気での人の影響を反映させた場合だけそれが形成されることがわかった。今回研究者らは、ヒドロキシラジカルが気体状のDMSを酸化し、硫酸エアロゾルが形成することを明らかにした。これによって雲の形成を促すこともできた。雲形成、いくつもあるのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 24, p. 6.

20.9.13

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地球上に豊富で

 無料の窒素源である窒素ガスを使った反応のほとんどはアンモニア合成である。それに対して今回、窒素ガスから含窒素有機化合物を合成する方法が報告された[1]。窒素分子の反応性を向上させるためには金属を使って強くて安定な窒素–窒素結合に電子を注入するのが通常である。ただしその条件下で親電子剤が存在すると、金属は親電子剤と優先して反応してしまう。そこでここでは、窒素分子を親電子剤として反応させた。新反応は、ジケチミナート担持の鉄を使い、それがベンゼン環のC-H結合と反応しついで窒素分子との錯体を形成する。錯体の部分シリル化が窒素を親電子的にし、錯体中のベンゼンの攻撃を受けることができた。今回の窒素還元とC-H結合活性化の組合せは、画期的な技術突破である。窒素に加えて地球上の豊富で有毒ではない鉄を触媒としている点も特徴である。一方で金属ナトリウム、ブロモトリメチルシランを用いていること、加熱と冷却を繰り返す必要があることから、実用的になるまでにこれらの点を改善する必要もある。親電子剤としての窒素、神殿にもあるよ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 24, p. 5.

DOI: 10.1073/pnas.1821207116

20.9.12

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SARS-CoV-2抗原テストの

 キットが緊急使用の許可(EUA)をFDAから8月26日に受けた[1]。このBinaxNOW COVID-19Agカードを使うと5ドル程度およそ15分で、特殊な機器を使うことなく試験紙の対になったラインの色で陽性かどうかが検査できる。

米国では毎月およそ2千万件のCOVID-19試験を行なっているが、今回のキットを使えばこれを3倍にすることが見込まれる。RT-RCRと異なりこの検査ではSARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質を標的にしている。検査では医療従事者が、患者さんの鼻腔を拭ってサンプルを取り出しそれを洗ってクレジットカードサイズの検査キットに流し込む。サンプルが流れるとともに、ヌクレオカプシドタンパク質があれば、キットの中の抗体にバインドする。これによってキットにある細長いラインがピンク色と紫色に変化し陽性であることを示す。RT-PCRとの比較による確からしさの検証では、陽性率97.1%、陰性率98.5%で一致していた。今回の抗原テストはEUAを受けた四つ目であるが、さらに複数の抗原テストが候補になっていて、家庭で自己管理できるまでの信頼度の付与が目標である。家庭用キット、キットカットと一緒に買っていね、が待ち遠しい。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 7, p. 4.

20.9.11

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科学の発想や法則、発見に

 科学者の名前がつけられることがある[1]。例えば「ニュートンの運動法則」化学でも同様で1800年代半ばから、名前を冠する反応いわゆる人名反応が知られている。ただしその多くは、白人男性を称賛するものであり、それを使うことは排他性があるのではないかと考える化学者もいる。そこで、如何に反応が名付けられて、それは誰が行ったのか、またこの慣例はやめるべきかどうかについて、レポーターは20名ほどの化学者と話し、その一部がPodcastに収録されている[2]。

 歴史的に最初の人名反応は何かを特定することは難しいが、Merck Indexにはおよそ470の人名反応が、またComprehensive Organic Name Reactions and Reagentsにはおよそ675が掲載されている。これら全てを学ぶ必要はないものの、反応を人名で呼ぶと、複雑な変換反応を端的に表現できる。が例えば複数の研究グループが競合していた反応開発で、一方だけの名前がつけられることは避けられるべきである。また実際には女性、マイノリティーあるいは有色人種の貢献があってこその反応だけど白人男性の名前がつけられていることもある。とこれまでは考えてこなかった観点が多く語られている。そんな中Carolyn Bertozzi先生のツイートの引用:Cope転位はHardy-Cope転位、Elizabeth Hardy はCopeの学生で反応は彼女の学位論文の一部である。人名反応、自明ではなかった。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 24, p. 9.

[2] https://cen.acs.org/synthesis/reaction-mechanisms/Podcast-Chemists-debate-value-name-reactions-in-organic-chemistry/98/web/2020/08

20.9.10

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211Atのガンへの送達

 のためにはまず同位体をつくりそれを精製する必要がある[1]。基礎研究であれ、医療試験であれ研究者らはサイクロトロン粒子加速器を使ってBi-209に対してα粒子を照射し211Atや別の同位体を発生させる。ここでは正しい同位体を得ると同時にアスタチンの過剰加熱や気化を防ぐために、粒子のエネルギーや温度を制御しなくてはならない。ついで211Atのみを他の同位体から分離する必要がある。ある研究者らは照射した標的を650 °Cから800 °Cに加熱し、蒸発した211Atを不活性ガスでトラップしている。それに対して別の研究者らは湿式による精製を検討している。その場合ビスマス標的を酸に溶かし、液–液抽出あるいはクロマトグラフによって211Atを単離する。さらにその研究室ではテルル金属をつめたカラムを開発し、酸性条件下でアスタチンを吸着する。カラムを使えば液–液抽出の半分の時間でアスタチンを90%単離できる[2]。また別のグループでも市販のポリマーを使って独自の分離技術を開発している[3]。211At製造のダークホースは211ラドン経由である。211Rnは崩壊すると211Atが生じる。またラドンは気体であるために分離も容易である。なおラドンとうどんは縁がない。Rnの半減期はAtの2倍である。ビスマス標的から精製した211Rhは病院で移送できて、そこから211Atを抽出しうる。211At抽出の課題は時間である。1時間以内にできれば実験や臨床試験にとってかなり良い。アスタチン研究に関する別の大きな課題は研究費である。新しい放射治療化合物の開発という内容の申請はパスしない。いわば死の谷である。この点現在NIHとの話し合いが行われている。アスタチンに明日はない、にはなりません様に、焦ってはいけません。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 24.

[2] DOI: 10.1038/ s41598-019-53385-x

[3] DOI: 10.1021/ acs.inorgchem.0c00221

四回シリーズ、お付き合いありがとうございました。

20.9.9

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脳腫瘍や

 白血病、多発性骨髄腫を対象に211Atを含む分子の臨床試験が行われている[1]。後者の場合血液中を動くガン細胞を標的とするため、外部からの放射治療は難しく、細胞を標的としてα放出剤を放出できる分子は魅力的である。ただし別の科学者らは、アスタチン–抗体錯体は、抗体の結合を切ることなしに放射線量を増加させることができないと言う課題に直面し別の方法を開発している。これらの開発段階の課題は、アスタチンの基本的な化学に帰結する。すなわちハロゲンの様で金属でもあることである。水中では条件次第でアスタチンは金属の様なカチオンに、またハロゲンの様なアニオンとして振る舞う。これに関する研究を行っているグループは最近、アスタチンの電子親和力を世界で初めて測定した[2]。また計算結果によれば、水中のAtO+ではアスタチンはスピン一重項状態で、気相中ではAtO+はアスタチンをスピン三重項状態にする。またアスタチンの最深部の電子は素早く動き、コンピューターモデルは相対論効果を考慮しなくてはならず、これが計算を複雑化し、兄さんにお願いしても難しい。さらに明日に続く。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 22.

[2] DOI: 10.1038/ s41467-020-17599-2

20.9.8

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アスタチン同位体のうち

 210Atは崩壊するとかなり有毒で、2006年ロシアのスパイを殺害するために使用された悪名高き210ポロニウムにポロっと変化する[1]。211Atが崩壊すると害のないビスマスあるいは、半減期が0.5秒の211Poが生じる。また211Atはα粒子を出す225アクチニウムや212鉛と比べて幾つかの利点がある。225Acでは腫瘍にそれを運ぶ分子の結合そのものが切断される。そのため225Acにはそれを保持する特別なキレート剤が必要である。それに対して211Atは、単一のα粒子だけを放出するため、それを保持する分子の開裂や患者の体の他の部位へ移動するリスクは小さい。212鉛は別の有望な候補だけど、それはα粒子だけではなくて高エネルギーのγ線も放射し、長期の使用は医療従事者に健康上のリスクをもたらす。これらのことからアスタチンは、半減期、放射、化学の点で、α粒子放出のゴルディロックスで、ゴールドの如くである。アスタチンのお話、再び明日に続く。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 22.

ゴルディロックスは、小さな女の子の名前で、三匹の熊との童話からの比喩で、「ちょうどよい」を意味するらしい。(Wikipediaより)

20.9.7

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アスタチン(At)は

 地球上で最も稀な天然元素である[1]。その名はギリシャ語の「不安定」に由来し、最も寿命の長い同位体は210Atで半減期は8時間ほどである。ある教科書によれば、どんな時も地球上には1オンス(およそ28g)しか存在しないとされている。この儚さは元素についての、融点や色を含む基本的情報も得られていないことを意味する。加えてアスタチンは簡単に分類することができない。確かに周期表ハロゲン族に位置するものの、ホウ素、ケイ素、ヒ素、テルルのメタロイド対角線にある元素である。時にハロゲンのように、時に金属のように反応する。また元素は化学的珍しさに止まってはいない。211Atは有望なガン治療可能な同位体である。そのためこの捕まえにくい元素についての詳しい情報が望まれている。アスタチンがガン治療の観点から興味を持たれるのは、それが崩壊する際に、陽子二つと中性子二つとからα粒子を放出する元素の一つであるためである。α粒子は、より大きなエネルギーを有するが別の放射に比べるとその及ぶ範囲は短くて、DNAの二重ラセンを突き通すことによってガンを撃退するが、そのダメージは、粒子の周りの数えるほどの細胞に限られる。アスタチンのお話、明日に続く。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 22.

20.9.6

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ミトコンドリア膜電位は

 ミトコンドリアの機能を示し、ガンや神経変異病を含む多くの疾患で変化するものの、非侵襲的にそれを観測することは難しい。それに対して今回研究者らは、膜電位をモニターするための生物発光プローブを開発した[1]。プローブは、トリフェニルホスフィンに連結したルシフェリンとアジドトリフェニルホスフィンとでできている。いずれもトリフェニルホスホニウム塩のカゴの中にあり、ミトコンドリアを標的として、シュタウディンガー反応を引き起こし、ルシフェリンが放たれる。ルシフェリンは酵素ルシフェラーゼと反応して作用する。このプローブが遺伝子工学的に細胞やネズミに入れ込まれた。酵素反応が光を放出し、その強度はプローブの二つの部分の濃度に依存する。別の細胞と比較してミトコンドリアの中での反応加速が膜電位測定を可能にする。研究者らはこのプローブを使って、年齢による膜電位の測定を行い、ニコチンアミドリボシドがこれを逆転しうることも示した。さらにガンに罹患したネズミについて、膜電位を調整できる抗生物質であるニゲリシンの投与前後での膜電位も測定した。ミトコンドリア膜電位を見とこう、今度ではいかんです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 10.

DOI: 10.1038/s41589-020-0602-1

20.9.5

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海溝は

 大洋の最も離れた生息地でもある。表面から11 kmまで離れた場所にあるV字型の裂け目の底に沿った生態系は、死んだ生命体や上から沈んできた特別な物質が豊富である。今回の研究結果は、深さがわからなかったこの領域まで、水銀汚染が広がっていることを示していた[1]。北京大学と上海海洋大学の研究者らは、ニューブリテンを含む三箇所の深海の溝の底から集めたエビのような端脚類で、高濃度の水銀やメチル水銀を観測した。端脚類の平均的なメチル水銀濃度は、新鮮な水環境から集めた端脚類のそれのおよそ3倍だった。さらに水銀量全体の平均は、北米で最も工業化されていて汚染も広がっている地域の一つであるニュージャージーの海岸沖に棲む端脚類の水銀量の平均の7倍だった。今回の研究結果から研究者の一人は、このような高い濃度の残留物は、深海の食物網全体で、一般的になっているのではないかと指摘している。端脚類が、破格な情報を発信している。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.es- tlett.0c00299

20.9.4

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磁性ナノ粒子を

 正確に埋め込んだ液滴は、磁石によって巧みに操作できることが報告された[1]。フッ化炭素と炭化水素を別の面に有する液滴で、半球の表面に酸化鉄ナノ粒子を組み込んだものが、MITの研究者らによってつくられた。この液滴は重力に反して回転し、マグネットによって自分自身で配列し、光学特性を変化させることができる。この特性はセンシングへの応用が期待される。研究者らはさらに、炭化水素の層を液晶で置換えて別のタイプの液滴もつくった。この液滴の周りで磁石を動かしても、液滴が動いたり回転したりすることはなかった。一方でナノ粒子は、マグネットを追いかけるように、液滴のサイドに沿って滑り落ちて行き、液晶の配列が効果的に新しい向きに再配列していた。この特性は、ディスプレイのような光学的な応用に利用する液晶を制御する新しい方法になり得る。偏光顕微鏡は、液晶液滴の中の酸化鉄ナノ粒子が磁石に応答して動く様子を見事に捉えていた。液晶、気性が激しいかはともかく、なんでもできそうである。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 9.

DOI: 10.1021/acscentsci.0c00686

20.9.3

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I-COVIDと呼ばれる

 サンプル採取の方法が開発され、イリノイ大学で利用されている[1]。ここの学生やスタッフはキャンパス内にある40箇所のステーションで、唾液サンプルの提供が求められている。これによって現在では1日あたり15000検体の試験が可能である。また5時間で結果を得ることができて、陽性の人へは同じ日に連絡して、隔離を要請、また接触者にも感染者との接触があったことを通告する。

 唾液は酵素や阻害剤を含む複雑な流体である。イリノイでは唾液を95 °Cで20分間加熱し、それを緩衝液と洗浄剤と混合する。これによってウイルスは死滅しウイルスのRNAを剥き出しにすることができるとともに、酵素など唾液に含まれるRT-PCR検査を邪魔する可能性のある他の分子も不活性化できる。その後通常のRT-PCR試薬と装置が使われている。この方法はSalivaDirectと呼ばれるプロトコールと類似であるが、そこでは唾液処理を熱と僅かな量のプロティナーゼKで行う[2]。検査の感度は無症状の人の88-90%であるが、これは10人に一人は見逃すことを意味している。複数回の検査によってこの確率を下げることができる。

 今のところ最近のモデル研究は、イリノイ大学の検査戦略を支持している。またイェール、ハーバード大学の研究者らは、一週間に数回の検査と、常習的な手洗いとマスク着用がキャンパスでの大流行を防ぐことができると予測している[3]。イリノイ大学も出入りの多い大学かな。ちなみにUniversity of Illinois at Urbana-Champaignです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 31, p. 4.

DOI: 10.1101/2020.06.18.159434

[2] DOI: 10.1101/2020.08.03.20167791

[3] DOI: 10.1001/jamanet- workopen.2020.16818

20.9.2

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大量のバッタが

 西アフリカ、西南アジアや中東で発生している。この数十年間には見られなかった大群は、穀物を破壊し、すでに食べ物が不足している地域でそれらを食い尽くしている。その中科学者は、本来単独行動しているバッタがそれほどの損害をもたらす群れをなすバッタに変容する過程を、明らかにしようとしてきた。その結果、低分子である4-ビニルアニソールが昆虫に群れを形成させるシグナルであることがわかった[1]。研究者らはトノサマバッタが放出する35の揮発性化合物の混合物から鍵となるフェロモンとしてそれを特定した。群生しているバッタは簡単に4-ビニルアニソールを放出し、年齢や性別には関係なく、仲間を魅了する。また単独でいるバッタが近くにいた場合にもそれを生産する。さらに研究者らは、4-ビニルアニソールを検出するために使われているOR35と呼ばれる嗅覚受容体も同定した。そこでバッタのOR35をつくる遺伝子をノックアウトできれば、フェロモンに応答しないはずである。またOR35をブロックできる化合物があれば群れ化を防ぐこともできる。ここで無理かと諦めてはいけない。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 August 10/17, p. 9.

DOI: 10.1038/s41586-020-2610-4

20.9.1

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