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211Atのガンへの送達

 のためにはまず同位体をつくりそれを精製する必要がある[1]。基礎研究であれ、医療試験であれ研究者らはサイクロトロン粒子加速器を使ってBi-209に対してα粒子を照射し211Atや別の同位体を発生させる。ここでは正しい同位体を得ると同時にアスタチンの過剰加熱や気化を防ぐために、粒子のエネルギーや温度を制御しなくてはならない。ついで211Atのみを他の同位体から分離する必要がある。ある研究者らは照射した標的を650 °Cから800 °Cに加熱し、蒸発した211Atを不活性ガスでトラップしている。それに対して別の研究者らは湿式による精製を検討している。その場合ビスマス標的を酸に溶かし、液–液抽出あるいはクロマトグラフによって211Atを単離する。さらにその研究室ではテルル金属をつめたカラムを開発し、酸性条件下でアスタチンを吸着する。カラムを使えば液–液抽出の半分の時間でアスタチンを90%単離できる[2]。また別のグループでも市販のポリマーを使って独自の分離技術を開発している[3]。211At製造のダークホースは211ラドン経由である。211Rnは崩壊すると211Atが生じる。またラドンは気体であるために分離も容易である。なおラドンとうどんは縁がない。Rnの半減期はAtの2倍である。ビスマス標的から精製した211Rhは病院で移送できて、そこから211Atを抽出しうる。211At抽出の課題は時間である。1時間以内にできれば実験や臨床試験にとってかなり良い。アスタチン研究に関する別の大きな課題は研究費である。新しい放射治療化合物の開発という内容の申請はパスしない。いわば死の谷である。この点現在NIHとの話し合いが行われている。アスタチンに明日はない、にはなりません様に、焦ってはいけません。

[1] Chemical & Engineering News 2020 August 10/17, p. 24.

[2] DOI: 10.1038/ s41598-019-53385-x

[3] DOI: 10.1021/ acs.inorgchem.0c00221

四回シリーズ、お付き合いありがとうございました。

20.9.9

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