« 2020年9月 | トップページ | 2020年11月 »

2020年10月

SARS-CoV-2 RNA遺伝情報にある

 構造を認識し固定できる分子の発見は、新型コロナ感染症の治療法を前に進めることができる。その分子は、ウイルスが複製し細胞に感染するために利用するタンパク質の放出を妨げる[1]。今回研究者らは数千の分子をふるいにかけ、そのうちの少数についてSARS-CoV-2に特異的なウイルスRNAのひだにどのようにバインドするかの試験を行った。少量のRNAを組込んだ細胞を使った試験の結果、キナゾリンはRNAにくっつき、その動きを低下させ遺伝子の発現をおよそ25%低下させた。これはかなり高い親和性の医薬品様の低分子である。さらにRNAを標的とするキナゾリンアミンにRNA崩壊酵素を呼び寄せることができる化合物を連結させた。リボヌクレアーゼを標的とするキメラ、RIBOTACと呼ばれるが、この組合せは細胞内でSARS-CoV-2 RNAの破壊を開始できた。実際の治療に使うまでには数年を要するものの、今回のアプローチは将来のコロナウイルスとの戦いで有用である。キメラで決められました。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 12, p. 9.

DOI: 10.1126/science.abb7927

キメラ (chimera):ミッション:インポッシブル2でも登場。トム・クルーズ扮するイーサン・ハント:「カイメラ」と発音、謎を究明してました。

20.10.31

| | コメント (0)

低温電子顕微鏡法は

 ナノ粒子や生体分子の構造を決定するのに有力な手段であるものの、今も課題に直面している。例えばサンプルが動くことがイメージをぼかし解像度を低下させる。この動きは粒子が広がった氷層の座屈による変形で引き起こされている。そこで今回新しいサンプル固定として座屈を回避し、動きが1Å未満になる方法が開発された[1]。すなわちサンプル固定のために、六角形に配列された丸い穴のゴールドホイルが使われた。ホイルはおよそ800の六角形を持つ3 mm六角形の網状格子で、格子それぞれには300 nmより小さな5000以上の穴がある。座屈を避けるために、穴の直径と氷層の厚さの比は11:1以下にする必要がある。例えば30 nmの厚さの表層では、穴を330 nm未満にすると分子を静止した状態に保つことができる。この技術を使って研究者らは、1.9Åの解像度で223キロダルトンのDNA保護タンパク質の構造を解析した。動きをなくした結果、放射による損傷もなくなっていた。座屈を避けるという理屈、退屈でしたか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 12, p. 9.

DOI: 10.1126/science.abb7927

座屈(buckling):サンプルを徐々に荷重していくと、ある段階で急に変形し、たわみが生じる現象

20.10.30

| | コメント (0)

遺跡のトイレを

 調査し、我々の先祖の消化管に棲んでいた腸内寄生虫を同定する研究が行われていた[1]。すなわち研究者らはDNA分析によって、現在はラトビアの首都リガとイスラエルにある中世のトイレを使っていた人の消化管の健康状態を解明しようとしていた。このような古いDNAも塩基配列の決定に耐えうるものの、それらは通常、骨や歯垢から取り出すもので、泥だらけになったウンチ由来のものはなかった。それでも分析可能なDNAが発見された。塩基配列が決定されたDNAの多くは、環境、人あるいはサナダムシのような寄生虫に由来していたが、いくつかは明らかに人の消化管を住まいとするバクテリア由来だった。しかもそれらのいくつかは工業化した場所にすむ人ではなくて狩猟採集民で見られるバクテリアだった。この研究は、この分野の原理の証明から始まっているが、今後はさらに多くのトイレや化石化した排泄物、いわゆる糞石の研究が計画されている。これによって古い時代からの消化管の微生物叢に関する理解を深めることが可能になる。糞石の分析で、うんちくも。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 12, p. 9.

DOI: 10.1098/rstb.2019.0576

20.10.29

| | コメント (0)

太陽、エンジン、溶鉱炉

 どこからの熱でも大抵廃棄される。熱光起電素子は、それを使う超効率素子であり、バッテリーよりも送電網のエネルギー貯蔵のコンパクトで単純な系を可能にする。ただしこれまで作成された素子は、その要求には至っていなかった。その中最高効率32%を示す新しい熱光起電素子が設計された[1]。熱光起電素子は、凝縮した太陽光や熱ガスの流れを使って熱材料を加熱し、その結果低エネルギー赤外線を放射する。特別につくられた光起電電池は、その放射を捕捉して電気に変換する。効率向上のために、電池の後ろ側を金属層にしてそこから出る低エネルギー光を再利用できる構造にした。ただしベストな電池でもこの金属ミラーは少なくとも5%の光を吸収してしまう。それに対して今回は低エネルギーの99%が反射する電池を、半導体と金属の間に空気層を入れ込むことによって製作した。これによって熱–電気変換効率が24%から32%になった。さらに近い将来40%以上の変換効率も達成できる可能性があり、それは現在最も効率的な熱エンジンに匹敵する熱光起電素子になり得る。熱光起電素子、貴殿もそしらぬ顔で使いますか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 12, p. 7.

DOI: 10.1038/ s41586-020-2717-7

20.10.28

| | コメント (0)

RNAに含まれる元素は

 複雑な遺伝調節の中で重要である。それは生化学的な環境を感知し、タンパク質生産も調節する。今回研究者らは鉄を感知する新たなリボスイッチ群を発見した[1]。今回それは、通常はメッセンジャーRNAの末端に見られるNiCoと呼ばれるCoやNiを感知するリボスイッチを調査している間に見つかった。バクテリアの中のNiCOのバイオインフォマティクス分析は、Coをバインドするために必要な鍵となる見つからない領域を明らかにした。さらに詳細が検討されたところ、鉄輸送体と酵素に関連する遺伝子のコーディング領域に埋め込まれたリボスイッチがあった。これがCoを含む別の金属カチオンがあっても選択的にFe2+をバインドした。Fe2+にバインドすると四つ葉のクローバーの様に形を変え、それがバクテリアの中の関連するメッセンジャーRNAの翻訳を増加させる。現在さらに、これらのスイッチがタンパク質翻訳を増加させる正確な機構を解明しようとしている。また鉄検出バイオセンサーを開発するために、この新しいRNA構造が使われている。鉄をバインドして、バイトにも行くかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 12, p. 7.

DOI: 10.1038/s41589- 020-00665-7

20.10.27

| | コメント (0)

多剤耐性の

 緑膿菌を含む耐性菌を殺すことができる抗生物質であるアジスロマイシンの作用を、体の中にある重炭酸塩が補助できることがわかった[1]。バクテリアが持つ抗生物質に抵抗できる認知機能のために、アジスロマイシンはしばしば投げ捨てられる。それに対して、生理学的な量の重炭酸塩をバクテリアの培地に加えると、アジスロマイシンは、多くの種類の耐性菌株の90%を、重炭酸塩がない時の1/64の量で殺すことができた。研究者らは以前、重炭酸塩は細胞に入り込みやすい正電荷を有する抗生物質を与えることを明らかにしていた。重炭酸塩はまた、細胞膜でのpH勾配を減少させて、細胞から抗生物質を排除するのに必要なエネルギー発散ポンプを奪い取っている。肌の重炭酸塩の量は体の中よりも低いため研究者らは、局所性感染でもそれが作用するかの試験も行った。アジスロマイシンと重炭酸塩を、負傷して多耐性菌である緑膿菌に感染したネズミに適用したところ、菌の細胞の99.9%が死滅していた。なお重炭酸塩がない場合は99%だった。重炭酸塩、じゅうたん清掃でも使えるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 12, p. 6.

DOI: 10.1021/ acsinfecdis.0c00340

20.10.26

| | コメント (0)

無限列車の乗客を

 守りきったものの、瀕死の重傷を負い死が近い煉獄さん。むかし耳にした母の声が聞こえる。「なぜ自分が人よりも強く生まれたのかわかりますか、弱き人を助けるためです。生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者は、その力を世のため人のために使わねばなりません。天から賜りし力で、人を傷つけることや私腹をこやすことは許されません。弱き人を助けることは、強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」 

 別れの間際、炭治郎に語りかける。「胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け。君が足を止めてうずくまっても、時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って、悲しんではくれない。俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば、後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。若い芽は積ませない。竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる、君たちを信じる。」

 悲しみを堪えて自分に言い聞かせる炭治郎「・・・だけどそんな都合のいい方法はない。近道なんてなかった。足掻く(あがく)しかない。今の自分ができる精一杯で前に進む、どんなに苦しくても、悔しくても。そして俺は、杏寿郎さんのような強い柱に、必ずなります。」煉獄杏寿郎、享年20歳、天国に召された。

[1] 吾峠呼世晴「鬼滅の刃」8(ジャンプコミックス)

とてつもない言葉の力に感激して、紹介させていただきました。

20.10.25

| | コメント (0)

一命を取り留めたものの

 鬼になってしまった妹禰豆子。その場に戻った兄ちゃん炭治郎。唯一残った家族の禰豆子を連れて妹を人間に戻す旅に出た。がしかし鬼を殺す使命を帯びた人に妹の命を奪われそうになる。鬼退治を主務とする隊士、大したものです、に炭治郎もなるための修行の機会を得た。その険しく厳しい訓練をなんとかやり遂げて最終選別にも合格して鬼殺隊の一員となった。でも炭治郎だけは、人の心を持つ鬼になった妹禰豆子と一緒だった。鬼でも人を食わない禰豆子、寝ることで体力を回復させる。鴉は伝令を懸命に伝える。それに従って蜘蛛が巣食う山に向かった。退治すべき鬼と対峙するが、その力はこれまでの鬼とは俄然違う。呼吸を整えて「全集中」するも、その一撃では足りない。その中、父さん、母さんと話した幼少の記憶が蘇る。病弱でも父は神楽を舞っていた。その力を受け継いで鬼を倒すと同時にほとんど力が尽きた。その状況下9人の柱の一人[2]富岡さんがたどり着いた。水の呼吸十一の型、炭治郎の知らない型、鬼は葬られた。とは言え鬼も、以前は人間だった。その過去が蘇る。「鬼滅の刃」その後を決めつけず。

[1]「鬼滅の刃」吾峠呼世晴著

[2] 出雲大社の御本殿には柱が九本ある。

今年の流行語「全集中」?。

20.10.24

| | コメント (0)

二つのスクリュー

 押出しを使って研究者らは初めて、生理活性を示す医薬品原料を合成した[1]。すなわち二つの固体出発化合物を、相互に連動し合う対になったスクリューによって混合、すりつぶし、反応を経て最後に押出した。対になったスクリューによる押出しは、連続的に稼働させることができること、また溶媒も不要であることから、医薬品工業プロセスのコスト削減や環境負荷の低減も可能である。医薬品合成の効率は極めて悪い。連続フロー反応は、バッチ式と比べて反応時間短縮や廃棄物削減に有効であるものの、溶媒が必要である。実際このスクリューを使って薬品ダントロレンやニトロフラトインが連続的に生産されている。押出の結果、後者への変換効率は100%で期待のE体のみを導くことができ、追加の精製段階も不要だった。なお医薬品化合物は多形で結晶化させると異なる物理的、生化学的な特徴を持たせることができるため、押出の方法で得た化合物が、他の方法で得たそれと同様かあるいはそれ以上の活性があるのかを示す必要もある。一流のスクリュー、いずれスクールでも使えるかなあ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 5, p. 11.

DOI: 10.1021/ acssuschemeng.0c03816

20.10.23

| | コメント (0)

キバナスズシロやキャベツのような

 アブラナ科の植物は、カラシ爆弾(mustard oil bomb)と呼ばれる化学防衛システムを有するために辛さの香りがする。植物がダメージを受けると、グルコースで蓋をされた毒前駆体と加水分解酵素が、独善的ではなく、放出される。酵素は糖鎖を解き放ち、人には心地よく大抵の昆虫は忌避するイソチオシアナートが形成される。その中世界中で見られるタバココナジラミは例外である。今回研究者らは、コナジラミはカラシ爆弾を避けるよりもむしろそれを拡散させることを発見した[1]。コナジラミは、植物自身の樹液にある糖鎖に加えて、通常の昆虫は廃棄物を処理するのに使うトランスグルコシダーゼによって、毒前駆体にさらに糖鎖を加える。その結果、毒前駆体はもはや植物の加水分解酵素で認識されず、カラシ爆弾の機先を制して、爆弾は安全化される。もしコナジラミがアブラナ科を消費するのに特化していなければ、どんなタイプの化学防衛システムを緩和できるか興味が持たれることも含めて、昆虫化学は多くの謎を含んでいる。アブラナが危な〜をコナジラミがこなしている。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 5, p. 11.

DOI: 10.1038/s41589-020-00658-6

20.10.22

| | コメント (0)

蛍光造影剤は

 外科手術の間、腫瘍の位置の特定をサポートする。ただし染料が特異的に腫瘍を標的にできないときは、腫瘍と正常細胞の間の明暗差が減少してしまう。その中今回、腫瘍特異的なタンパク質開裂酵素二つが存在する場合にだけ蛍光の明るさが増大する新しい物質が開発された[1]。いわゆるAND-ゲート造影剤は、中心の部分に取り付けられた蛍光染料とアームに連結する二つの消光分子を持ったペプチドからなる。それぞれのアームは、異なる腫瘍特定な酵素に対して開裂部位を含んでいる。二つの消光分子が除去された場合にのみ蛍光が活性化する。研究者らは、ペプチドに異なる酵素開裂部位を組み込み、造影剤の選択性を変化させた。ついで乳房の腫瘍やネズミの転位性肺ガンを取り去るためのロボット外科手術でこのイメージング造影剤が使われた。外科切除の後、通常の白色イメージングでは見ることができなかった残ったガン細胞を、今回の造影剤は映し出していた。造影剤で映像ができる?えいぞ〜。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 5, p. 11.

DOI: 10.1038/ s41551-020-00616-6

20.10.21

| | コメント (0)

協奏的に電子が

 移動し環状の遷移状態を経るペリ環状反応を触媒する酵素が特定された[1]。研究者らはまず複数の菌類から候補となる酵素を見つけた。同じ出発化合物から、ある酵素のグループはヘテロDiels-Alder反応を触媒し、別のPdxIと呼ばれる酵素で代表されるグループは、Alder-ene生成物である置換ペンテンを与えた。これはペリ環状反応が高いペリ選択性で進行していることを示している。結晶構造や分子シミュレーションによれば、PdxIが基質の位置を決めて単一のAlder-ene遷移状態のみが可能である様に仕向けている。タンパク質工学研究で研究者らは、PdxI のペリ選択性を、PdxIの活性部位のあるアミノ酸を変更するだけで、Alder-ene生成物からヘテロDiels-Alder生成物にスイッチすることも可能にした。ここでは選択性の完全な制御までには至っていないものの、基本的に二つのペリ環状反応の選択性を生体触媒を使ってシフトさせることができることを例示している。Alder-ene反応を触媒する酵素も、あるんだ〜。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 5, p. 9.

DOI: 10.1038/s41586-020-2743-5

20.10.20

| | コメント (0)

ニンニクは

 数千年以上に渡って、違った香りのイオウを含む化合物を添えることで、食を豊かにしてきた。パンチの効いたアリウムは、疫病を含む感染の民間療法としても利用されている。一方で慎ましやかなニンニクの球根にはイオウに関する秘密が未だに隠されていた。研究者らはニンニクの中に含まれるアリシンへのこれまでには知られていなかった経路を今回明らかにした[1]。アリシンは特徴的な臭いがする香り化合物であり、生のニンニクを切ったり潰したりすると放出される。幾分不安定であるためアリシンは徐々に分解し別の臭い化合物になり、食べ物の中では魅力的になる一方で、呼気の中にはそれほど含まれない。ここで研究者らは、アリルメルカプタンをアリルスルフェン酸に酸化する酵素を発見した。ついでアリルスルフェン酸が縮合しアリシンが生成する。

 なおバンパイアを寄せつけない息、そこにはチオールが含まれるが、それを無臭の分子に変換には、生のフルーツや野菜に含まれる酵素を焦がすことで可能になる[2]。サラダやりんごを食べると呼気からニンニクの攻撃的な臭いを除去できる。バンパイヤ、ニンニクはイヤ、憎いや、である。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 October 5, p. 40.

DOI: 10.1074/jbc. RA120.014484

[2] Harold McGee ‘On Food and Cooking: The Science and Lore of the Kitchen’.

20.10.19

| | コメント (0)

先の複雑さを解明するために

 研究者らは現在、ロックダウン期の微粒子汚染化学の分析を行っている。これによってNO2やオゾンに加えて、粒状物質を形成する別の空気中に浮遊する微粒子や物質の役割にたどり着こうとしている。粒状物質汚染の化学組成は、どの汚染物質が相互作用して形成されたかや天候に依存して大きく変化する。もし科学者が組成を同定できれば、ゴツゴツした反応経路を逆算することも可能になり、その原因の物質も推論できる。

 それに関するプロジェクトは2017年からデリーでは実施されていて、2019年に立ち上げられたプログラムでは、国内の多くの汚染された都市での粒状物質を、2017年比に対して2024年までには30%削減することを目的としている。インドの粒状物質の組成はかなり複雑である。主な粒状物質は加熱や料理のための木や石炭の燃焼、建材のごみ、廃棄物の焼却に由来し、二次的にはディーゼル発電機、交通、発電所さらに肥料によって放出される物質の反応に由来する。

農業関連の焼却もまたデリーの大気汚染の主な原因である。デリーの粒状物質の組成をモニターしているチームはいわゆるPM2.5に注目している。酸化窒素や硫酸塩による汚染は、ロックダウンの間に劇的に減少した一方でPM2.5は緩やかな減少だった。その後デリーの南東での小麦の収穫の時期のバイオマス燃焼に関連していると思われる粒状物質が急激に増えた。PM2.5のレベルが劇的に低下しなかった様に、その化学組成も極端には変化しなかった。ロックダウンの間の大気の質の変化が緩やかだったことは、単に交通からの都会の排出を減少させても効果的でないことを示している。ニューデリーのPM2.5は他の場所由来である。大気の質の改善を達成するためには、インドの都市だけではなくて、周辺地域も注視する必要がある。デリーもでえりゃあ複雑です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 34.

ロックダウンと大気汚染最終回、お付き合いありがとうございました。

20.10.18

| | コメント (0)

NO2やオゾンは

 粒状物質との間も非線形な関係である[1]。NO2は大気中の複数の異なるガスと反応し、粒状物質が生成する。そこには農業排出からのアンモニアを含む経路や揮発性有機化合物との相互作用を含む。中国でNO2排出が劇的に低下し、とりわけ武漢では93%減だったけど、北京が位置する国の北の地域は、ロックダウンの間、粒状物質のホットスポットになった[2]。研究者らは、大気の質のデータと大気モデルを使って、粒状物質が増えた時期の大気汚染連鎖反応を紐解いた。大気モデルによれば、オゾンが増加したことによってNO3ラジカルが豊富になり、それが硝酸塩からなる微粒子を増加させていることを示していた。

 この春の出来事は、大気の質を向上させようとする中国の取組みを妨げている。政府は排出の低下が大気汚染を防がないという結論に至る可能性がある。それに代わって、春の異常な汚染のパターンによって、政府は科学者や監視官に、都会の放出よりも別の多くの要因を説明するように求めている。COVID-19によるロックダウン期間は、大気汚染の緩和がどれほど複雑であるかを示す独自の実験期間である。大気汚染を単純にはようせんです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 34.

[2] DOI: 10.1126/science. abb7431

[3] DOI: 10.1093/nsr/nwaa137

ロックダウンと大気汚染第五回

20.10.17

| | コメント (0)

NO2排出が60%急落し

 微粒子物質が31%低下した中、世界のオゾンの平均値はわずかに上昇した[1]。別の研究でも米国全体では、粒状物質が着実に減ったわけではなかった[2]。人為的な排出が減少しても、オゾンのような汚染物質が空気中で発生し、間接的に上昇する。

 実際主たる排出が劇的にカットされたことが深刻な大気汚染を引き起こした。例えば北中国やロスアンゼルスでは、厳格なロックダウンの時期に、非常に激しいオゾンの上昇が観測された。これらはほとんどすべての交通や工場をシャットダウンした中で起きたことである。

 ロックダウンに対するオゾンの正確な応答は、何を初めに想定するかに依存する。酸化窒素の濃度が相対的に低い場合、さらにそれを低下させるとオゾンの減少を引き起こす。一方でロスアンゼルスや北京のように、酸化窒素の濃度が高い場合には全てが帳消しになる。酸化窒素が豊富な場合、それがヒドロキシルラジカルを吸収して、ラジカルが大気の揮発性有機化合物と反応するのを妨げオゾン形成を抑制する。また酸化窒素が十分にある場合には、それがオゾンそのものと反応し大気から取り除かれる。その結果都会ではこの化学が支配的でありNO2レベルの低下はオゾンのリバウンドを引き起こす。オゾン生成、既存の機構とは違うのか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 33.

[2] DOI: 10.26434/chemrxiv.12275603.v7

[3] DOI: 10.1038/s41557-020-0535-z

ロックダウンと大気汚染第四回

20.10.16

| | コメント (0)

交通手段からのNO2排出の落ち込み

 交通が要因である汚染物質で劇的に減少したのがNO2である[1]。NO2の効果も1月下旬と2月初めの中国で顕著だった。例えば東中国でのNO2は2019年の同じ時期に比べて65%減少していた。同様の傾向はデリー、ロスアンゼルス、北イタリアや他の地域でも観測された。インドは3月24日から4月初めまでロックダウンを行った。北インドに住む人は、興奮気味に、ヒマラヤの写真をツイートした。過去数十年間の間でこれほどはっきりと見えたことはなかったと。NO2レベルの低下は、その地域での煙霧の相当な減少による可能性が高い。

 衛星や1万以上の世界中の地上のモニタリング地からのデータを基にした研究は、2019年の同じ時期に比べて汚染が改善されていることを示していた。ただし主たる放出が減少しても、大気でそれらの分子と別の分子との二次反応が大気の質に関する全体像を複雑化している。インドでも人はインドアでした。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 32.

[2] DOI: 10.1073/pnas.2006853117

ロックダウンと大気汚染第三回

20.10.15

| | コメント (0)

交通手段からのCO2排出の落ち込み

 パンデミックが襲った時、街の通りは薄気味悪いほど静かだった[1]。旅客輸送が急落し、交通手段由来の排出、特にCO2とNO2がそれに伴って減少した。CO2は温室効果ガスで地球温暖化では主役である。NO2は、健康被害をもたらすオゾンや粒状物質を生産する大気化学の鍵となる化合物である。厳しい移動制限によってCOVID-19の効果的な封じ込めを行ったニュージーランドでは、交通量はロックダウンの期間中最大でおよそ80%減少した。さらに国中の120の市民科学者の芝生の草からの放射性炭素の分析を通して、国もCO2レベルを検証した。植物が成長すると大気からのCO2が抑えられる。化石燃料の燃焼によって生産されるCO2は、区別できる同位体特性を示し、植物は光合成でガスを取り入れる際にその特性が残されている。これらのデータから得た予備的な結果は、ニュージーランドの化石燃料由来のCO2排出は交通の減少とほぼ同じ80%だった。

サンフランシスコでも同様の傾向だった。排出の違いは、平日の通勤時間で特に顕著だった。この変化は3月中ばに、ベイエリア防疫官が屋内退避を命じた時から起きた。屋内退避の命令から最初の6週間。交通は45%減少した。CO2の排出の全体量は、それまでの6週間と比較して、およそ1/4減少した。これらの観測は、もしわれわれの半分が電気自動車を運転すれば、世界はどう変わるかを示す良いモデルである。ここで神社に詣でるのもいいか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 32.

ロックダウンと大気汚染第二回

20.10.14

| | コメント (0)

今年の初め

 世界中の政府はCOVID-19の拡大抑制のため、旅行やビジネスを制限した[1]。このCOVID-19ロックダウンによって大気汚染が異常なほど変化した。最初の兆候は1月末の中国だった。厳しいロックダウンのため多くの人はおよそ3週間家を出ることができなかった。これに呼応して大気汚染の直接の排出がこれまで観測されたなかった速さとスケールで激しく低下した。屋根に分光計を設置できる、あるいはセンサーネットワークをチェックできる研究者らは、人の経済活動とりわけ自動車が急速に減少するにつれて、上空ではどんな変化が起きているのかを記録した。一般に大気化学に関する基本的な質問、例えば旅客輸送が1/2になった時の大気の質の変化、オゾンの複数の複雑に絡み合った経路の反応、大気の条件と人の排出のないまぜが、どのような結果をもたらすのか。に答えるために実験を行うことは極めて困難である。一方で2020年は前例のない特別な年である。5, 6年を待たずして濃度の減少を試験することができる。ロックダウンを記録だ〜んが始まった。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 31.

ロックダウンと大気汚染第一回です、六回シリーズです。

20.10.13

| | コメント (0)

理論科学者は30年前

 ダイヤモンドのような秩序構造を持つ材料は、半導体が電流の流れを制御すると同様に、光の流れを制御しうることを予測した。このいわゆる光結晶は、光学スイッチングやコンピューティングに利用可能である、それ以来研究者らは、微細粒子を利用して、様々なタイプの、光学導波管や別のデバイスとして機能する光結晶を作成してきた。ただし合成の難しさから、これらの材料の多くは、理想的な立方体ダイヤモンド構造や皆が欲しがる光学特性を示さなかった。その中今回、需要が高まる材料を作成するためのコロイダル化学法が登場した[1]。まずミクロサイズのポリスチレン球と重合できる液滴とを組合せて、単一のオイル液滴を囲みほとんどそれを隠すことができる四つの球のテトラヘドラルのブロックがつくられた。研究者らは溶媒を使い、球を変形させて、液滴をわずかに抜き出して一部を剥き出しにした。ついでオイルを重合させて、それをDNAで修飾した。これによって得られたブロックは、ダイヤモンド構造を組み立てるのに必要な配向になっている。配向させるのが、たいそう難しかったでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 7.

DOI: 10.1038/s41586-020-2718-6

20.10.12

| | コメント (0)

細胞の中の

 機械は糖鎖分子をタンパク質やペプチドに付加させて、それらの機能や特性を変化させることができる。これまで研究者らは、ペプチドホルモンにあるトレオニンやセリンのアルコール部位に糖鎖が結合するO-グリコシル化を明らかにしていたが、その数は限定的だった。一方でインスリンやグルカゴンを含むペプチドホルモンは体の中で、多くの生体内作用を制御している。今回それらが検証されて、これまで見つかっていなかった多くのO-グリコシル化ペプチドホルモンがあることが明らかにされた[1]。研究者らは、人、齧歯類、豚からグリコシル化ペプチドホルモンを、親和性クロマトグラフィーを使って濃縮し、質量分析によって、どの部位がグリコシル化されているかを特定した。分析したペプチドホルモンのおよそ1/3は少なくとも1箇所がO-グリコシル化されていた。ある部位は、ホルモンの循環する寿命を改善し、別の部分は、ホルモンが受容体と相互作用する方法を変化させていた。ホルモンの化学も、深く掘るもん、そこロマンがある。

[1] Chemical & Engineering News 2020 September 28, p. 7.

DOI: 10.1038/s41467-020-17473-1

20.10.11

| | コメント (0)

ヒアリは

 ゲオスミンや2-メチルイソボルネオールのような放線菌の香りのある土壌に巣を作るのを好むことがわかった[1]。これはヒアリの巣の中の放線菌は、菌類のような感染性の微生物からアリを守る助けになるためである。新たに後尾した女王アリは放線菌のいる土壌から大量に放出される一方、感染性の菌類にはあまり含まれない、これらの揮発性物質に引き寄せられる。その結果、微生物の香りが女王アリに、その土壌はコロニーをつくるのに安全な場所であることを伝える。さらにそのような場所に巣をつくった女王ヒアリは、放線菌のない土に巣をつくった女王ヒアリよりも生き残る可能性が高いことも研究者らは示した。今回の研究成果は、バクテリアからの化学信号がアリの巣をつくる行動に影響していることを明らかにした最初である。さらに研究者らは、化学シグナルを使って、公園や農地へのヒアリの侵入を操ることができるかどうかを明らかにしようとしている。ヒアリで、ヒヤリとすることもあります。

[1] Chemical & Engineering News 2020 September 28, p. 7.

DOI: 10.1371/journal. ppat.1008800

20.10.10

| | コメント (0)

シリカナノ粒子は

 ゴムの添加剤や建築材料として、また薬物送達を補助する材料として、さらに太陽光パネルを含む多くの場面で利用されている。そのためシリカナノ粒子の市場は、2025年には51億ドルに達することが市場調査会社によって見積もられている。それに対して2050年にはおよそ6千万トンになると予想されている使い終わったシリコン太陽光パネルを経済的にリサイクルできる方法はほとんどない[1]。その中モスクワにあるSkoltech[2]の研究者らは、市販の太陽電池を含むシリコンウエハーを水酸化アンモニウム溶液に浸し、この混合物をオートクレーブで180 °Cまでの様々な温度に加熱した。その結果、2時間以内にウエハーは直径8–50 nmのシリカナノ粒子の白い粉に分解した。この方法は単純でしかも高価な装置も必要ではないものの、大スケールで実施できる実用性については未知である。大量のウエハーがリサイクルできると右派も左派も「ウハ、ウハ」なんですが。

[1] Chemical & Engineering News 2020 September 28, p. 6.

DOI: 10.1021/ acssuschemeng.0c03783

[2] Skolkovo Institute of Science and Technology

20.10.9

 

| | コメント (0)

前生物的分子の

 ネットワークを類推できるソフトウエア(Allchemy)が開発された[1]。ソフトウエアには初期地球に存在していた六つの化合物すなわち、メタン、アンモニア、水、シアン化水素。窒素ガスと硫化水素を組み込み、反応の規則を繰り返し適用し、反応生成物を連続的に発生された。これによって、クエン酸や尿酸のような多くの生体分子を含む数百の前生物的分子のネットワークが出来上がった。この結果には、これまでシミュレートされていなかった経路や合成法も含まれる。さらにソフトウエアは、一連の反応の中で同じ分子を再生する循環型の合成経路も示していた。生物学では、クレプス回路のように代謝を維持するための循環型分子合成が使われる。例えば、提唱されたイミノジ酢酸の自己再生合成が、実験室で確かめられ、多段階を経た後出発化合物が126%回収された。このソフトウエアは、通常は確かめることが難しい化学を提示できる点素晴らしい一方で、全ての反応の速度論的なデータが含まれていないために現状では限定的である とも指摘されている。Allchemyのようなソフト、あるけ〜ミ。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 28, p. 4.

DOI: 10.1126/science. aaw1955

20.10.8

| | コメント (0)

月の表面に

 酸化鉄を含む鉱物であるヘマタイト(赤鉄鉱)が発見されて以来長年、そのオリジンが研究者らを悩ませていた。酸化鉄は地球ではサビとして広く知られている一方、プロトンを含む太陽風が月の表面の大抵の化学種を還元しており、基本的に月では酸素供給は不足している。ただしこの状況が、地球が月の太陽の間を通過する際に激変することが類推された[1]。これによって月は、地球が保護する磁場の端に移動し、地球の大気からの酸素が月の表面に到達する。この洞察はChandrayaan-1 軌道船によって集められたスペクトルデータから導かれている。そのデータは、地球と向かい合っている側の月の極はヘマタイトが濃縮されていることを示していた。地球の酸素は月の反対側には到達せず、太陽風が、より低い緯度で形成されるヘマタイトを還元することができる。研究者らはこのモデルに自信を持っている一方で、月のヘマタイトサンプル採取とその研究まで、それを実証することはできないだろう、としている。ヘマタイト、ヘマをせず待ちたいとのことです。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 21, p. 9.

DOI: 10.1126/sciadv.aba1940

20.10.7

 

| | コメント (0)

ガソリン車の

 排ガスに含まれる有毒な成分の触媒的変換器には、三方向触媒(TWCs)が内蔵されている。この名前は触媒が持つ、一酸化炭素と炭化水素の酸化とスモッグを生み出す酸化窒素を削減する能力に由来する。TWCsが酸化と還元という逆の反応を媒介できる鍵は、Rhをドープした酸化セリウム–酸化ジルコニウム(CZO)を含む酸素貯蔵材料である。CZOは還元反応の間、断続的に酸素を貯蔵し酸化反応でそれらを放出する。現在使われているTWCsは、テトラゴナル形(t-CZO)であるが、最近の研究は、異なる格子構造を有するパイロクロア形(pyr-CZO)がt-CZOよりも優れていることを示していた。ただしpyr-CZOは高温でt-CZOに変換されて表面積が減少する。その中今回研究者らは、市販のCZOと水素とを1200 °Cで取り扱い、その後それを冷やすと表面積の大きなpyr-CZOになること、さらにその形状は910 °Cまで保持されることを明らかにした[1]。さらにそれは酸化窒素や炭化水素の変換では、t-CZOよりも優れた結果を示した。パイロクロア形への変換、苦労あったんだね。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 21, p. 9.

DOI: 10.1016/j.apcatb.2020.119450

20.10.6

| | コメント (0)

メチシリン耐性

 黄色ブドウ球菌を処置するためにバンコマイシンが利用されているが、他の抗生物質と同様、後世になると、抗生物質耐性が生まれる。それに対して研究者らは耐性が生じないバージョンを、鍵となるある原子を変更することで設計したが、そこでは25段階が必要で活性試験を行うために必要な量の合成はできていなかった。今回同じ研究グループは、そのバンコマイシン合成を19段階まで簡素化することに成功した[1]。この修正したバージョンも菌に対して活性を示すが、安全性を確認するための臨床研究が必要である。合成の妙の一つは、アトロプ異性のコアにある三つの成分を扱う点である。新合成法では、コア構造の単一のジアステレオマーを導く方法を採用し、手間のかかる分離精製段階を避けることに成功している。責任研究者は30年あまりこの課題に取り組んでいる。これまでの合成法は「美しい科学」にとどまっていたのに対して、今回のバージョンでは十分な量を提供できる。バンコマイシン合成の承認、ハンコは無用です。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September

DOI: 10.1021/jacs.0c07433

20.10.5

| | コメント (0)

窒素分子を

 切断してアンモニアを導く化学反応は、世界中の肥料供給に寄与している。ただしこのプロセスは、高圧と400 °C以上の温度が必要であるため、エネルギー負荷が大きい。現状では、鉄触媒が工業的なスケールで使われている。その中研究者らは、遷移金属よりもむしろホウ素原子を組み込んだ反応性分子であるボリレンを使って不活性な窒素分子を捕捉しうることを以前に示していた。さらに今回研究者らは、ボリレンにバインドした窒素分子を、室温で塩化アンモニウムに分解できることを示した[1]。固相の還元剤と酸反応剤が、この多段階の還元とプロトン化を含む複雑な変換を後押している。さらにアンモニウムへのエンルートの中間体を単離し、特徴を明らかにしている。化学者はこの反応が成功したのは、遷移金属とは対照的に、電子豊富なホウ素がさらに電子を受け取ることを嫌がったことによるもので、その結果、窒素分子の還元が引き起こされて、開裂が進行したと考えている。ボリレンの力を借りれんねんで。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 21, p. 8.

DOI: 10.1038/ s41557-020-0520-6

20.10.4

| | コメント (0)

DMSOは

 広い用途を持つ溶媒である[1]。ただしそれを蒸留している際に沸点(189 °C)付近の温度まで加熱すると、自己触媒的な暴走反応によって素早く分解し、熱と水素、メタン、二酸化炭素のような気体が発生する。この反応性の高さが爆発の危険に晒されて、多くの事故を引き起こす。今回企業研究者らはこの暴走の原因となるDMSOのいくつかの分解生成物を同定した。まず研究者らは、DMSOを窒素雰囲気下圧力容器の中で430 °Cまで加熱し、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸を含む分解生成物を同定した。ついでこれらの酸をわずかな量、加熱する前にDMSOに加えたところ、分解反応がかなり促進されることがわかった。溶媒に空気あるいはCO2をバブリングすると同様の効果が観測された。別の研究者はDMSOには多くの課題があるため代替のより安全な溶媒を探すべきであること、そのためにACS solvent selection tool [2]を使うことを指摘している。結論は「DMSOを避けよ」である。DMSOと虚無僧、縁はない、多分。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 21, p. 5.

DOI: 10.1021/ acs.oprd.0c00113

[2] https://www.acs.org/content/acs/en/greenchemistry/research-innovation/tools-for-green-chemistry/solvent-selection-tool.html

20.10.3

| | コメント (0)

ハウスダストの量について

 今年と過去2年間を比較したところ今年の方が四級アンモニウム塩のレベルが増加していることがわかった[1]。塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(ADBAC)のような四級塩は多くの洗浄剤に含まれる。米国の環境保護局は、この四級塩がSARS-CoV-2に対して効果的であることを提唱する一方で、ネズミによる研究では、塩は繁殖や発育に問題を引き起こすことが明らかにされている。そこで化合物の安全性の評価をより詳細に行うために研究者らは、質量分析装置を使い、インディアナの40箇所の世帯から2020年6月に集めたダストを分析し、過去二年のデータと比較した。その結果、塩の量は増加し、ADBACについてはおよそ2倍になっていた。研究者らは残存したダストは、家庭内で人を塩にさらす可能性を指摘している。なお塩の増加によって、塩にさらされることが他の地域でも同様かどうかを見る必要もある。ダストを1ダースも出すといけません。

[1] Chemical & Engineering News, 2020 September 14, p. 7.

DOI: 10.1021/ acs.estlett.0c00587

20.10.2

| | コメント (0)

コンタクトレンズを

 米国ではおよそ45百万人が利用している。それらの使い捨てのシリコーンヒドロゲルは使い終わった後、排水管に流されてマイクロプラスチック汚染物になっていることが提唱された[1]。研究者らは廃水処理施設に入ったコンタクトレンズに何が起こるかをシミュレートした。その結果、それらは化学的に分解されず、より小さな破片に砕かれることがわかった。ついで下水汚泥が検証されてそこでレンズ破片が見つかった。さらにどの程度のコンタクトレンズが排水管に流されるかを知るために利用者の習慣が調査された。それによればおよそ20%の利用者がレンズを排水に流すことがわかった。この調査から計算したところ年間およそ44000 kgのレンズ材料が米国の廃水に含まれることが類推された。「今回の研究結果は、どこにでもある大量生産される材料でいつまでも壊れず、現在さらには将来の人類が忘れてしまうような材料と人との壊れた関係を示している」と述べられている。利用者には、使い捨てレンズのリサイクルについて検眼医に相談することが推奨されている。レンズは排水に入れんず ということでお願いします。

[1] Chemical & Engineering News 2020 September 14, p. 7.

DOI: 10.1021/acs.est.0c03121

20.10.1

| | コメント (0)

« 2020年9月 | トップページ | 2020年11月 »