« 2023年6月 | トップページ | 2023年8月 »

2023年7月

C-H結合の活性化を

 促進できるフラストレイティド・ラジカルペアが開発された[1]。ヘキサメチルジシラジド(HMDS)の酸化によって得られる窒素中心ラジカルとラジカルトラップ剤である2,2,6,6-テトラメチル-1-オキソピペリジニウム(TEMPO+)は嵩高さのために、お互い相殺することができない、いわゆるフラストレイティドペアである。この抑圧された反応性が他の分子に向けられた。まず初めにこのラジカルペアがどのようなタイプの反応を促進できるのかを研究者らは確かめ、C-H活性化に利用できることを見つけた。HMDSラジカルは水素原子を分子から引き抜き炭素ラジカルが発生、これがTEMPOラジカルによってトラップされる。得られた付加体は比較的弱いC–O、N–O結合を有することから新しい官能基の構築に利用できる。さらにどの水素が引き抜かれるかは水素原子受容体のサイズによって調整できる。t-BuOラジカルは割れ目に入り込み三級水素を引き抜くことができる一方、嵩高いHMDSラジカルは、一級あるいは二級水素を受け入れることができる。

 フラストレイティドと暮らすと、プラスとなるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 17, p. 4.

DOI: 10.1038/s41586-023-06131-3

23.7.31

| | コメント (0)

木からセルロースを

 取り出すには、同様に木に含まれるリグニンを除去しなければならない。その量が多いほど、セルロース繊維を単離することも困難になる。その中研究者らは、リグニンを取り除くだけではなくて、木に含まれるリグニンの量を減少させる方法を開発した[1]。遺伝子編集技術であるCRISPRを使って、ポプラの中のリグニンをもたらす化合物を生産する遺伝子いくつかを改変した。異なる遺伝子の組合せ69123をモデル化し、そのうち347が研究者らの基準を満たし、リグニンを削減させることができて、同程度の大きさに成長させることができた。さらに検討した結果、 7つの遺伝子編集戦略が、かなりいい木の特性をもたらした。実際に6ヶ月成長させた時のリグニンの量が、改変しない場合と比べられた。その結果、最大35%までリグニンを減らすことができた。より少ないリグニン量は逆に木の中のセルロースの量の増加を示し、同じ量のセルロースを得るために必要とするバイオマスが少なくて済む。またリグニン除去のプロセスは、エネルギーを大量消費する。研究者らはさらに他の商業的に興味深い樹木でも同様の方法を検討中である。

 樹木に注目、僕らの対象はポプラでした。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 17, p. 3.

DOI:10.1126/science.add4514

23.7.30

| | コメント (0)

卵の殻の

 微視的多孔質構造は、酸素や他のガスを殻の内と外で発生させることができるために、ひな鳥は呼吸することができる。研究者らはこの性質を応用して、卵の孔から分子を取り込み胚の性別を判定できる機械を設計した[1]。製作した機械は、食農研究の財団からEgg-Tech Prizeを授与された。財団は、卵からひなが生まれる前に、オスかメスかを区別する方法の開発を推奨していた。歴史的にほとんどすべてのオスは生まれてからしばらくして廃棄されていた。オスは卵を産むこともなく、メスほど肉を生産するわけでもないためである。ただこれは動物福祉の観点から問題で、もし廃棄する卵があれば、食品やワクチン製造にも利用できる。またいずれ廃棄する卵を育てるにも多くのエネルギーを必要とする。機械が区別するのは卵の中で発生する揮発性有機化合物(VOCs)である。VOCsは内部の変化の帰結である。取り出したVOCsはガスクロマトグラフィーや質量分析によって同定され、現状では80%の正確さである。研究者はさらに98%以上の精度向上に邁進し、4百万ドルの賞金の獲得を目指している。

 卵、孫にも教えたい。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 40.

DOI: 10.1371/journal.pone.0285726

23.7.29

| | コメント (0)

2023年7月14日

 Albert Eschenmoser先生が97歳でご逝去された[1]。1925年スイスで生まれ、1951年スイス連邦工科大学(ETH)チューリッヒで学位を取得、1956 年そこのスタッフ、1965年に教授に就任された。1996年には、カルフォルニア・スクリプス研究所のパートタイムメンバーとなり2009年に公式に退職された。およそ60年間の研究生活の中で先生は、有機化学に重要な貢献をされ、開発された反応はその名前を冠している。Eschenmoser開裂、Eschenmoser脱硫連結(sulfide contraction)、Eschenmoserクライゼン転位さらにジメチルアミノ化剤はEschenmoser塩と呼ばれている。1986年Wolf賞、2008年Benjamin Franklinメダル。先生の開発されたコリン環構築法は、Woodward先生との共同研究で1972年に達成したビタミンB12の全合成で威力を発揮した。画期的な成果だと評されている。先生はさらに生命の起源に関する研究も行い、前生物的化学に関する成果は、核酸のバックボーンの中のリボース形成過程について提唱している。さらに異なる糖鎖を有する人工核酸も開発された。2008年のインタビューの中で先生は「化学者として世界を幾分違ったように見る。分子の表面、構造、反応、過程やその背後にあるもの、それらがいかに上手く進むか、上手くいかないか、病とどう関係するのか、をみる」と述べられている。

 スイスでも研究を推進された先生、ご冥福をお祈り申し上げます。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 24, p. 7.

23.7.28

| | コメント (0)

歯磨きタブレットに入っていない

 成分はフッ化物イオンである[1]。フッ化物イオンを避ける理由の一つは、それを含めると歯磨き粉は虫歯予防を宣伝することになる。米国FDAは、フッ化スズ、フッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウムを、歯磨き粉に腐朽防止を付与するものとして承認している。ただこれは歯磨き粉を、店頭販売の薬として管理することを意味する。一方でフッ化物イオンがなければ、化粧品であり、製造段階、臨床試験や他の必要条件もかなり緩くなる。フッ化物イオンを添加すると消費者の対象が格段に増大し、米国歯科医師会(ADA)の承認を得られるものの、規制の負担が新たな製造業者にとっては大きすぎる。なお歯磨きタブレットのほとんどはオンライン販売で、歯磨き粉全体のマーケットが年間180億ドルに対して、およそ2千万ドルである。ただ今後歯磨きチューブがプラスチック廃棄物になることへの関心や、タブレットの価格低下がこの状況を変化させることも予測される。

 タブレットのお話、くたびれったでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 21.

歯磨きタブレット四回シリーズの最終回でした。

23.7.27

| | コメント (0)

パーソナルケア工業の

 主力である界面活性剤は、バイオ由来のコカミドプロピルベタインである。ただしそれほど多くは必要ではない[1]。通常およそ1%である。歯磨きタブレットは、チューブ入り製品の主力の界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩(SLS)を使わない。これは液体の時に最も効果的である。このことは朝食前に歯磨きする人にとっては朗報である。SLSは歯磨きの後のオレンジジュースの味を不快にする成分である。あるフリーランスの化学者によれば、歯磨き剤の洗浄力は、界面活性剤と研磨剤由来とのことである。研磨剤は、炭酸カルシウム、修飾されたあるいは天然のセルロース、亜硫酸ナトリウムを含む。アルミナも食品には安全な選択肢であり、タブレットの研磨剤は基本的にチューブ入りのそれらと同様である。研磨剤は、歯の中の鉱物よりもわずかにソフトであるのが理想的である。歯のエナメルの主成分は、ヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3OH)であり、その硬さの指標であるモース硬度は5である。ちなみに通常の鋼のモース硬度は4と4.5の間、炭酸カルシウムは3、炭酸水素ナトリウムは2.5で指の爪に近い。シリカも研磨剤に使われるがそれのモース硬度は6.5であり、その結晶粒次第で、歯にとって安全かどうかが決まる。

 モース硬度についてもう少し高度に知りたい人は、web検索を

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 20.

歯磨きタブレット四回シリーズの第三回目でした。

23.7.26

| | コメント (0)

ユングブンツラワーの歯磨きタブレットの

 重量比のおよそ45%が甘味料である。またそれは糖鎖アルコールであるエリトリトールと、植物であるステビア由来のステビオールグリコシドのブレンドである。別のメーカーは、キシリトール、ソルビトールやマニトールも使っている。歯磨き粉の味を改善するのに加えて、甘味料成分は、バインダーとしても作用し、歯ブラシの時まで、成分を一つに保つ補助をしている。糖鎖アルコールは、甘さに加えて、ピルの製造機械由来の圧力のもと、その結晶は融合する。それらのいくつかは吸湿性がそれほどないために、空気中の湿気を取り込むことはなく、タブレットの形が崩れることもない。これは他社の製品との違いである。ステビアの抽出物と糖鎖アルコールは、界面活性剤の働きを緩和し、疎水性の汚れや食べかすが水と混ざって除去するのを助ける。キシリトールは微生物が歯に付着しにくくすることによって虫歯と闘う。ただし米国歯科医師会はこのことを現段階では承認していない[1]。

歯科医師会の司会者はどなたでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 20.

DOI:10.1186/1472-6831-10-22

歯磨きタブレット四回シリーズの第二回目でした。

23.7.25

| | コメント (0)

歯磨きタブレットは

 アスピリンあるいはエンドウ豆ほどの大きさで、乾いた粉が圧縮された錠剤である[1]。固体を大臼歯でむしゃむしゃ食べるとタブレットは粉になり、これが唾液と混ざると泡状のねりものになる。その後は歯磨き粉と同様に使うことができて、歯や歯茎の全ての表面を磨き、うがいで除去できる。2023年6月時点での価格は一錠あたり10-20セントで、破産することはないものの、通常の歯磨き粉の5~20倍の価格である。このタブレットは数年前に登場した。通常の歯磨き粉はいずれ廃棄されるチューブ入りであることから、廃棄物が出ないという商品だった。ただこの乾いた製品は、パーソナルケアマーケットでトレンドになり、今では100種類以上のものがあって、どれが実際に歯磨きタブレットなのかと言われるほどになった。製造方法は様々だけど、通常の歯磨き粉と同様に、タブレットは、シミや口の中にある残留物を除去する研磨剤、食べ物や汚れを取り去る界面活性剤、甘味料や香料を含む。

 タブレットで、戯れってはダメだよ。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 20.

歯磨きタブレット四回シリーズの第一回目でした。

23.7.24

| | コメント (0)

シャーガス病は

 クルーズ・トリパノソ―マ(T.cruzi)という寄生虫が引き起こす病で、ラテンアメリカでは600~700万人が感染する。現在の治療法はひどい副作用を引き起こし、慢性の感染には必ずしも効果がなかった。それ対して研究者らは、シアノトリアゾール(CT3)が寄生虫のDNA複製にとって重要な酵素をブロックできること、それによってネズミでは感染を素早く排除できることを見つけた[1]。ノバルティスの分子ライブラリーにある200万化合物をスクリーニングし、寄生虫を殺す有望な分子を同定した。 創薬化学者は、CT-3の適度な溶解度、生体利用効率、脳幹のバリアを通過できる能力に着目した。T.cruziに感染したネズミのそれを、CT3は5日で除去できた。しかも慢性感染した免疫が抑制された場合でも効果的だった。さらにCT-3はDNA複製で重要な役割を担うトポイソメラーゼと呼ばれる酵素を標的にしていることもわかった。シアノトリアゾール基は システイン残基に共有結合する。次の段階は、臨床試験に入る前のシアノトリアゾールの安全性評価である。

 シャーガス病の薬、探すのに成功したようです。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 5.

DOI: 10.1126/science.adh0614

23.7.23

| | コメント (0)

セラストロールは

 伝統的な中国の薬として利用される、つる植物の根由来のテルペンである。これは体重増加の抑制に効果があることが2015年に報告されて以降肥満の治療薬候補になった[1]。ただその効率的合成や根からの単離が困難だった。そこで研究者らは、チトクロームP450やCYP450sにある代謝酵素に着目し、つる植物がいかにセラストロールを合成するかを調査した[2]。根の中に発現した21を同定しこれらの酵素をタバコや酵母に転写した。ついで液体クロマトなどを使って中間体を同定した。その結果セラストロールに至る違った経路の詳細が明らかになった。そのうちの一つは、CYP450sが初期生成物を中間体であるセラストロジェニック酸に変換する。一般に生合成経路に含まれる自然反応は1つもしくは2つである。それに対して単離されたセラストロジェニック酸はメタノール中1週間加熱すると、脱カルボキシル化、酸化、芳香族化さらに異性化を含む9つの反応を連続で受けた。またこのいずれにも酵素は関わっていなかった。

 セラストロールに光を照らすと、ロールがわかるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 10, p. 4.

DOI: 10.1016/j.cell.2015.05.011

[2] DOI: 10.1038/s41557-023-01245-7

23.7.22

| | コメント (0)

養蜂家が

 ハチの巣を弾いたり押したりしていると、一部が青みがかった色になった[1]。またそこのハチミツは、通常よりも美味で派手な感じだった。時々ハチの巣の周りに色彩豊かな砂糖が見つかる。ブルックリンのハチは、マラスキーノシロップを餌として、赤いハチミツを生産し、フランスの工場に近い巣は、青や緑に変化する。ノースキャロライナの砂丘地域では、ハチは食物染料の補助も受けずに時々、青あるいは紫色のハチミツを生産する。この現象はこの地域では3年から5年ごとに見られる。ただしこの現象に関する実験的な調査は行われておらず、なぜこれが進行するのかは実際にはあまり理解されていない。1970年台、ノースキャロライナでは特に乾いた年には、青いハチミツと砂丘のアルミニウムが豊富な土壌で育ったサワーウッドの花を餌にすることとが関連づけられていた。アジサイやヒエンソウの青色の起源であるアルミニウムアントシアニン錯体が、酸に応答して色を変化させた可能性がある。先月はかなり乾燥していたので今年は、紫色のハチミツを手にすることができるかもしれない。

 ハチミツの色も緻密です。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 3, p. 40.

23.7.21

| | コメント (0)

都会のミツバチは

 巣から数キロメートルのところで行動し、花蜜を飲み、花粉を撒きつつ、そこらへんにいる微生物を寄せ集める。ここで科学者、芸術家と養蜂家がチームを組んで、ニューヨーク大学の研究室で、ミツバチがこれらの微生物を分類しているのかどうかを決めることにした[1]。その結果、巣の底にあった破片は、死んだ昆虫、害虫、花粉やワックスの山だったが、これらは微生物のDNAの宝庫でもあった。世界中のサンプルを集めて分析したところ、予想できる微生物に加えて、植物、哺乳類の内や外さらに水域で成長する微生物も検出された。科学者が町の特殊なサインを検出できるのに十分な微生物を、ハチは集めていた。イタリア、ヴェニスのハチは、木材腐朽と関連する菌類を運んでいた。東京のそれらは、醤油をつくる酵母菌を集めていた。養蜂家によれば、小さな収集家や環境センサーであるハチと協業できることは感激であるとのことである。

 養蜂家、お酒飲むと、酔う方かなあ。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 3, p. 40.

DOI: 10.1186/s40793-023-00467-z

23.7.20

| | コメント (0)

薬の6種類の副作用

  1. パーキンソン病を治療するロピニロールや他の薬は脅迫行動を引き起こし得る。研究者らはこれらの効果を、脳の報酬系を妨げるドーパミンのように薬が作用することと関連づけている。
  2. テトラサイクリンのような薬は、太陽光に対する肌の感度を増加させる。これらの分子は紫外線を吸収し不安定な励起状態に変換される。励起状態では反応性の高い酸素種やフリーラジカルが発生し、これらが細胞分子を酸化する。
  3. 睡眠時遊行症、夢遊食事病のような睡眠障害は、睡眠薬の珍しい副作用である。ある研究者らは、これらの振る舞いを、γ-アミノブタン酸(GABA)受容体とバインドし、セロトニンのレベルを増加させる薬と関連づけている。
  4. 消化不良治療薬であるペプトビスモールは、便を黒くする。これはペプトビスモールに含まれるビスマスが消化器官の中でイオウと反応するためである。膀胱感染症治療薬のいくつかは染料であるメチレンブルーを含むため尿が青くなる。
  5. テトラサイクリン抗生物質は歯を変色させる。特に歯の石灰化が進行中の子供で見られる。テトラサイクリンがカルシウムイオンにバインドし、不溶性の錯体が歯の中で形成する。
  6. 化学療法薬であるカペシタブリンは指紋を一時的に消してしまう。その機構は不明である。化学療法が終了して2-4週間後指紋が復活する。

 薬を服用して副作用、苦労する。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 3, p. 23.

23.7.19

| | コメント (0)

非線形ラマン顕微鏡法は

 化学的、空間的な情報を提供できるため、広く利用されている。ただその中、可干渉性ストークスラマン散乱をもとにした非線形ラマン顕微鏡法は、大きな蛍光のバックグラウンドのために実用的ではないと考えられ、これまで実際に使われたことはなかった。それに対して今回ある研究グループはこれを利用した[1]。研究者らはまず、傾けた狭い帯域通過フィルターを二つ用いた。これによって鋭いシグナルバンドを伝送するとともに蛍光を排除できた。ついでこれらの励起レーザービームを変調し、さらにシグナルビームを復調させて、可干渉性ストークスラマン散乱(CSRS)と蛍光のバックグラウンドを区別することができた。さらに運動量の保存が、CSRSが逆方向と呼ばれるシグナルを集めることを可能にすることを計算した。他の非線形ラマン顕微鏡法では、同様の方法では多くのシグナルをロスする。一方今回のCSRSでは、分厚いサンプルの分析とさらに効果的な内視鏡検査を可能にしている。この成果は、分子にラベルをせずに分子の振動を使ったイメージングの新しい例である。

 ラベルあり、なしを比べる。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 3, p. 7.

DOI: 10.1038/s41467-023-38942-4

23.7.18

| | コメント (0)

John B. Goodenough先生

 2019年、吉野先生らとともにノーベル化学賞を授与された。その時すでに97歳、100歳にてご逝去された[1]。イェール大学で数学の学士を取得し、シカゴ大学で物理を学び、MITリンカーン研究所でコンピューター記憶貯蔵用の磁性材料の研究に取り組まれた。1976年英国オックスフォードに渡り、1986年米国に帰国した。ノーベル化学賞の受賞に至った研究はオックスフォードで展開された。鍵となる点は、固体状態の酸化物が、リチウムイオンの出し入れを容易にし、構造が壊れることなく、充電と放電のサイクルが繰り返される点である。リチウムコバルト酸化物カソードと炭素がもとになるアノードとの組合せが実用的なエネルギー貯蔵になり得た。先生の最も有名な業績は、電池材料の理解と改良であるが、さらに燃料電池材料、磁性や磁気抵抗に関する実績も多くの研究者らを感激させた。2016年から2019年テキサス大オースチンで共同研究者だった先生は、「働くことが先生の原動力だった」と述べている。ご冥福をお祈りいたします。

 リチウムがリッチ生む世界を開発された。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 3, p. 5.

23.7.17

| | コメント (0)

ハイスループット実験(HTE)は

 プラスチックプレートの上で同時に相当数の反応を走らせることができる。そのため、創薬化学の研究室では、類似の骨格を持つ医薬品候補を迅速に合成、さらに反応条件の最適化にも利用できる。市販のプレートの中にはそれぞれが1 μLの1536の反応場を有するものもある。ただし小型化はTHF やCH2Cl2のような揮発性溶媒や反応剤の使用を困難にする。そこで研究者らは、創薬化学の主力の反応4つの反応を高沸点溶媒中室温で行うことができるようにした[1]。それらは、鈴木–宮浦カップリング、還元的アミノ化、N-アルキル化とN-Boc保護である。これら4つとアミドカップリングが、創薬化学で使われている反応の2/3を占める。例えば還元的アミノ化の溶媒としてN-メチル2-ピロリドンを使って研究者らは、抗がん剤であるスタウロスポリンの類縁体46を合成した。個々の反応に必要な天然物は100 nmolである一方、少量の出発化合物から得られる情報量の多さは格段に多かった。なおこの方法で最適化された4つの反応いずれもスケールアップも可能である。

 そのプレート、私にもくれ〜と。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 3, p. 4.

DOI: 10.1038/s44160-023-00351-1

23.7.16

| | コメント (0)

ミロ美術館

 バルセロナのこの美術館には、ジョアン・ミロの作品に加えて、アレクサンダー・カルダーの「水銀の泉」も展示されている。一見すると液体が水銀であるかどうかは明らかではない。近寄るとそうではないかと気がつく。液体の金属的な反射の特徴が、それは水銀の流れではないかと思わせる。泉に埋め込まれたポンプによって、高密度の水銀は空気中に1 m以上吹き上げられる。この作品はスペインのアルマデンという街へ栄誉を授けるものだった。アルマデンの鉱山からは一時世界の水銀の60%が供給されていた。その中、フランシスコ・フランコによって導かれた極右翼の軍隊が、スペイン内乱1936年に街を攻撃した。それに対して1937年のパリ博覧会の際に、カルダーに依頼してスペインのパビリオンに泉をつくることを委託した。隣にはピカソのゲルニカも展示された。どちらも戦争の残忍性と戦争による破壊を非難するものであった。カルダーは後に友人であるミロにこれを寄付した。今は安全性の理由からそれはガラスの中に展示されている。

 カルダー氏の作品って、わかるんだ〜。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 48.

23.7.15

| | コメント (0)

バルセロナには

 二つの科学博物館があり、旅行者も訪れる場所である[1]。そのうちの一つバルセロナ自然科学博物館では、宇宙の起源について生命の始まりから現代の植物や動物に至った跡を辿る展示がある。保存された菌類の巨大なディスプレイは、コレクションの中でも最も印象的な部分であり、実際に食べることができる部分も含まれる。館長は、しいたけととうもろこし黒穂病の展示は、食用あるいは優秀であると評価している。常設展示は、微生物学とマクロ生物学に偏っているものの、宝石、結晶、鉱物の豊富で美しい展示で終わる。街のもう一方にあるコスモカイシャは、博物館であるとともに、科学の遊び場である。化学と物理の相互的な展示は、スタジアムサイズの宇宙であり、およそ100あるアクティビティや展示の中には、強磁性流体を扱ったり、電磁気スペクトルを探求したりすることもできることから、子供だけではなく大人も楽しむことができる。入り口付近の吹き抜け空間には、スペインの南極へのミッションのために、ある化学者が1987年および1988年に建てた研究室がある。およそ2 mの高さと横幅4 mの場所には、クロマトおよびスペクトル装置並びに分析のウエットラボも備えられている。これは2013年まで使われ、その後リニューアルした際に、研究室はここに寄贈された。

 コスモカイシャ、子供も実験開始や。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 48.

23.7.14

| | コメント (0)

アルテミス ルナミッションの

 打ち上げ機は、自由の女神よりも高く、燃料を充填すると2600トンあまりになる[1]。これによって27トン以上の貨物を月に運ぶことができる。火星へのミッションはさらに重量は大きくなるだろう。アポロ計画から50年、材料技術は大きく発展した。当時のポリマー複合材料工業はまだ初期の段階で、宇宙船は、軽量アルミニウムパネル、ハミカム構造、プラスチックやその頃の複合材料で組み立てられていた。これらの多くは、より軽いアルミニウム–リチウム合金や樹脂を染み込ませた炭素繊維に置き換えられた。NASAは炭素繊維複合材料の強さを三倍にしたいとしている。それによって燃料タンクや火星で走る乗り物をより薄くし、重量も減らすことができる。カーボンナノチューブ(CNTs)がそれに呼応できる可能性がある。CNTsは炭素繊維よりも欠陥が少なく強くて堅い。高品質のナノチューブを大量に生産することが複合材料の成功につながる。ただし現状では高価である。そこで大学や企業が参画するコンソーシアム(US-COMP)が超軽量な宇宙に適合できる次世代複合材料の開発に挑戦する。

 コンソーシアムの構想、チャームかな。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 22.

23.7.13

| | コメント (0)

火星への宇宙旅行

 2025年人類を再び月に着陸させた後の航空宇宙局(NASA)の計画である[1]。その成功は、宇宙の厳しさに耐えうる先端材料に依存する。それによって飛行士は安全に目的地に辿り着き、また戻ってくることができる。宇宙飛行のための新しい材料を開発しそれが保証できるには10年以上を必要とするために、将来のミッションの鍵となる材料を現段階で決めなくてはならない。人の宇宙探索に関する宇宙局の予算は2023年70億ドルを超えている。さらにコストは上昇する。火星に人を送るための燃料費だけでも天文学的な数字である。人を送るための貨物も1ポンドあたり百万ドルに匹敵する。火星で生き延びるためには多くのものが必要で、荷重も巨大である。コストを抑えるためにもエンジニアは、宇宙船と貨物のどちらもスマート材料にしたい。それは軽量かつ超強く、温度や放射に対する抵抗性や環境に応じて柔軟性のあるものである。そこで試行錯誤を繰り返して、これまで存在しなかったものを創造する機会が技術者にもたらされている。

 火星で、稼いでくるのはかなり先です。一気呵成とはいかず。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 22.

23.7.12

| | コメント (0)

研究室の安全性に対する考えが

 年を追うごとに拡大する一方で、研究者の中には未だに「研究室の安全性確保が、研究の生産性を低下させる」と考えている人もいる。それに対してそれは間違った二分法であることを示した論文が公開された[1]。研究室の安全性は研究者らがいかに科学を行うかを変化させる一方で、どの程度の論文を公開するかに対しては影響しない。研究室の安全性の、研究の生産性に対する影響を見積もるために論文の著者らは、カリフォルニア大学(UC)にある592の研究室の出版実績を分析した。2008年UCLAでは実験室の火事で、ある方が死亡した。今回の調査ではこの影響を明らかにするのが目的だった。2008年の出来事によってUCキャンパスの研究室の安全指針が見直された。これが研究のアクティビティの低下につながることが懸念されたが、ほとんど影響がなかったことが明らかにされた。この論文は、研究室の安全性は、科学の犠牲によって成り立ってはいない。新たな安全指針が出ると最初は多くの労力を必要とするものの、いずれ生産性のレベルは回復するものであることを示している。

 安全性の先生からのメッセージでした。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 13.

DOI: 10.3386/w31313

23.7.11

| | コメント (0)

Diels-Alder反応が

 メカノケミストリー条件下で行われた[1]。原子間力顕微鏡(AFM)を使って、アントラセンでコートした表面に蛍光ジエノフィルを接着し、アルケンと反応させた。研究者らは、生成物の蛍光を、応力と時間を見積もる尺度として測定しながら速度定数と活性化エネルギーを計算した。その結果、1MPa以下の圧力で、最も反応を嫌がるジエノフィルも反応することを見つけた。活性化障壁が大きくなればなるほど、より大きな応力を与えた。この反応の速度は、全ての方向から圧力をかけることができる静水圧よりもAFMによる単一の方向からの圧力に対して1000以上感度が高かった。この違いは、ひずみがかけられた分子ではエネルギー障壁がより低いことによるものであると考えられた。このことは溶媒中の反応で障壁を乗り越えることができない反応に対してメカノケミストリーの条件が適用できることを示唆していた。この研究を推進した研究者は「有機合成の挑戦はもはや、どんな分子が合成できるかどうかではなくて、いかにそれを持続可能な方法で提供できるかである。メカノケミストリーが有機化学に革新をもたらすだろう」と、述べている。

 メカノケミストリーが、未完のストリームを整備する。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 7.

DOI: 10.1126/science.adf5273

23.7.10

| | コメント (0)

ペロブスカイト太陽電池は

 現在のシリコンをベースにしたデバイスと同様25%以上の効率で、太陽光を電気に変換する。ペロブスカイトは安くて前駆体の溶液を沈澱させることによって作成できる一方、背後電極に利用される金のフィルム作成には、時間を要する真空をベースにしたプロセスが含まれる。その中研究者らは、金を安価で豊富に存在する材料に置き換えることに成功した[1]。現在金が使われているのは、それが高い導電性を示すこととエネルギーレベルがペロブスカイトのそれとマッチして容易に電荷を抽出できるためである。そこで研究者らはこれら二つの条件を違う材料で満たすことを考えた。電荷抽出には、ペロブスカイトの電子エネルギーレベルとマッチするニッケルと混合したグラファイトを使い、デバイスから電荷を移動させるためには高い導電性のビスマス–インジウム合金を採用した。ニッケルをドープしたグラファイトや金属合金の融点は110 °Cであり、大気条件でプリントすることができる。もし1 GW(ギガワット)の太陽発電所のために電極を生産する場合には、現在金の代替であると考えられている炭素ナノ材料よりもおよそ25%のコストカットが可能である。

 コストカットで、スカットしたい。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 6.

DOI: 10.1021/acsenergylett.3c00852

23.7.9

| | コメント (0)

Be-Be-King

 シンガーソングライターではない。研究者らは今回初めて、ベリリウム–ベリリウム結合を有する固体化合物をつくった[1]。この化合物は、それぞれのベリリウム原子に対してシクロペンタジエニル基が配位したジベリロセン(CpBeBeCp)である。数十年間に渡るBe-Be結合が存在し得るのかの議論は2009年、気相でBe2ユニットが同定された段階で収束した。さらに今回の化合物の合成はBeCp2のMg錯体による還元で達成され、生成物は保存可能である。ベリリウムは通常+2の酸化状態を好む一方で、ジベリロセンの量子化学計算やX線結晶解析、スペクトル研究はすべて、ここでのBeは+1の酸化状態であることを示していた。この特徴が独自の反応性を付与し、例えばZn錯体との反応では前例のないZn-Be結合形成が進行する。さらに研究者らは電子不足なBe-Be結合を利用して、電子豊富な金属へ結合させること、さらにそこから窒素や一酸化炭素のような低分子との相互作用も探求したいとしている。

 ジベリロセン、路線も拡大する。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 5.

DOI: 10.1126/science.adh4419

23.7.8

| | コメント (0)

CHNOPS

 この6つの元素は生命に必須である。そのうちPが宇宙では最も少なく岩の中にあって、生物がアクセスするのが難しい元素である。土星の衛星であるエンケラドスでも同様だった中NASAのカッシーニ宇宙船に搭載されている宇宙塵分析装置(CDA)は、噴出する噴煙を直接通り抜け、土星の輪から海に由来する氷粒を確保し、その質量分析を行なった[1]。研究者らは、その莫大なスペクトルの中にいくつか通常ではないシグナルがあることに気がついた。それはエンケラドス由来の9つの氷粒であり、そこには別の塩も混ざったリン酸ナトリウムが含まれると同定した。研究者らはリン酸を研究室で再現する実験を行なった。地球より多くの炭酸塩を含むエンケラドスの岩石中心と同様の組成の炭酸質隕石のサンプルを使ってアルカリ性の月の大洋の中での岩と水の相互作用をシミュレートした。その結果、鉱物が形成される際に、トラップされるリンを遊離するのに炭酸塩が重要であることがわかった。すなわち炭酸塩が豊富であることとリンの溶解度の相関が明らかになり、エンケラドスのリンの濃度は地球の大洋の数百倍であると推定された。このことは、エンケラドスに生命体が見つからないのは少なくとも必須な元素がないことには起因していないことを示していた。

 エンケラドスの、リン酸塩なんどす。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 19/26, p. 5.

DOI: 10.1038/s41586-023-05987-9

23.7.7

| | コメント (0)

コンクリートのような合成岩石は

 年間およそ30億トン製造され、橋、ダム、高層ビル、歩道、道路、ハイウエイ、地下のトンネルや下水道建設に利用されている。とりわけアジアやアフリカの低所得国での巨大な建設プロジェクトがその需要を押し上げ、2060年には今の倍になると予測されている。そのプロセスではCO2の排出だけではなく、世界の工業水のおよそ9%が使われている[1]。英国で開発されたプロセスはこの200年以上ほとんど変わっていない。炭酸カルシウムが主な組成である石灰岩とアルミナシリカや他のミネラルの混合物である年度を1450 °C以上に加熱し、CaCO3を石灰であるCaOに変換するとともにCO2を排出する焼成が行われる。これを硫酸カルシウムである石こうとともにすり潰し、水との反応を制御する。これから建築材料やレンガをつくるために、セメントの粉を土や砂利、骨材である粉砕した岩などと混ぜる。得られた混合物を水和すると、粘り気のあるものに変化し硬くなり、強くて硬い岩のような固体になる。このセメント製造プロセスでは、セメント製造1トンあたりで800 kg以上のCO2を排出している。

 コンクリート、ないと困窮する〜と。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 12, p. 22.

DOI:10.1038/s41893-017-0009-5

23.7.6

| | コメント (0)

セメントやコンクリートの

 製造は、世界の人為的なCO2排出の8%を占め、高温、莫大な量のエネルギーを必要とする[1]。その中、水以外のどの材料よりも多く使われているコンクリートを、小さな虫に持続可能な方法で製造させる研究分野が拡大している。虫や生物学とレンガとの間には一見何の関係もないように思われる。一方で自然界では生物学がタフで硬い材料をつくる多くの例がある。動物の骨、歯や貝殻はそれらの代表例である。これらは体あるいは環境から生体が集めた部品を連結させて沈殿させるバイオミネラル化によって出来上がる。さまざまな微生物がバイオミネラル化を駆動する。微生物は、セメントのような材料を分泌し、生体が基礎となるコンクリートをつくり得る。しかも工業プロセスと違って、製造は室温で行われ、排出される不要なものはない。そこでバイオセメントに熱狂する人たちはこのプロセスに資金を投じ、軽量コンクリートブロック、レンガや他のコンクリート建築材料の製造を準備している。

 バイオセメントの面倒を見ている。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 12, p. 21.

23.7.5

| | コメント (0)

絶縁抵抗の測定に

 来ました。電源を切ってよろしいでしょうか。ここで「嫌だ」と抵抗勢力になってはいけない。「2時間くらいですかねえ」「いや予定はそう書いてありますが、15分程度で終わります」こりゃあ爽快だ、とは言え電気がないと何もできん。授かった15分、掃除をしようと思い立った。でも掃除機は正直ここでは使えない。拭き掃除か、と付近に雑巾があるか捜した。でもなかったのでペーパータオルとアルコール消毒液の組合せを使った。こんなに汚れが溜まっていたかと感心しながら、拭き終わった後、なんだか綺麗になった気分である。5分ほどして「測定が終わりました。ただ一つだけお部屋を確認したいのですが」と、現在自分がお借りしている部屋番号を告げられた。鍵がどこに?見限られたかと思いつつ引き出しをかき回した。「事前に借りて来ればよかったのですが」と言われる中、時間がかかってしまった。見つかって部屋を開けて確認が再開された。待ち時間より短い時間でこちらも終了した。

 絶縁抵抗、強えっていことがわかりました。

23.7.4

| | コメント (0)

ソルベイ社は

 イタリア・ロジャニャーノに、グリーン水素製造施設の建設を計画している[1]。さらにここで得られたガスを原材料として用いて過酸化水素の製造を行う。これは欧州ではおそらく初の取組みである。イタリアのガス会社と共同してソルベイ社は、年間756トンの水素を発生させる設備をつくり2026年中頃に始動させる予定である。9.5 MWの太陽光発電所は電解槽を稼働させて水の電気分解によって水素を発生させる。ソルベイ社の見積もりでは、ロジャニャーノでの過酸化水素や他の関連する化合物製造に伴うカーボン・フットプリントを、この水素発生によって15%削減できるとしている。地域政府は、水素設備製造のためのコストとして17百万ドルを供与した。ソルベイ社の株主はロジャニャーノの環境負荷に関心を寄せる。企業のソーダ灰製造由来の有毒かもしれない流出物が、近くの海岸に到達して海岸が白くなっている。ソルベイ社によれば、新たな製造設備はソーダ灰製造でも利用され、流出物の削減だけではなく、かなりの量の温室効果ガスの排出を削減できるとしている。

 ソルベイ社がやるべい。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 12, p. 7.

23.7.3

| | コメント (0)

現代社会に欠かせない

 希土類元素15種類、これらは性質が似ていて分離することが難しい。主に+3イオンを形成し、Ndのような軽いイオンはDyのような重いイオンよりもわずかに大きいサイズだ。一般的にはホスホン酸配位子と溶媒を使って分離するが、数百回の洗浄が必要になる。それに対してタンパク質を用いる方法が開発された[1]。第一世代のLanMと呼ばれるタンパク質は重い希土類よりも軽い希土類を5倍好んだ。今回さらに研究者らは、ゲノムデータベースを網羅的に調査し、別のLanMをエンコードできるおよそ700種類の配列を特定した。そのうちの一つはヨーロッパナラ由来である。Hans-LanMと呼ばれるタンパク質は、重い希土類よりも軽い希土類に対しておよそ40倍の親和性を示す。X線構造解析の結果は、タンパク質の酸素原子9つが重い希土類元素に配位し、軽い場合には10の酸素原子が配位する。これが水素結合ネットワークを通して、強くバインドし、タンパク質二つで二量体を形成、その結果、軽い希土類元素に対する親和性を向上させている。実際にHans-LanMの変異体をカラムに詰め、希土類マグネットの組成をまねたNdとDyの混合物の分離を行った。その結果、それぞれを99%以上で分離でき、それぞれ98%以上の純度だった。

 同類の希土類元素の分離、軌道に乗り始めている。

[1] Chemical & Engineering News 2023, June 19, p. 5.

DOI: 10.1038/s41586-023-05945-5

23.7.2

| | コメント (0)

およそ12億光年先にある

 SPT0148-47と呼ばれている星雲は、およそ3億光年先にある二番目の星雲で覆われている。アインシュタインリングと呼ばれるほぼ完全な星雲の並びが、レンズ効果と呼ばれる光学的な現象を通して、より近い系の重力場が光を歪める、あるいは増幅させることを可能にしていた。これによって天文学者は宇宙が15億光年以下の頃のSPT0418-47を見ることができた[1]。その中JWSTに搭載された中赤外装置(MIRI)は、宇宙塵の中に、多環芳香族化合物(PAHs)に由来するスペクトルを検出した。これは星が形成される際に放出された紫外線放射をPAHsが吸収して赤外線を放出、それをMIRIがキャッチしたものである。これまで知られている星の形成段階でPAHsが存在することが発見されたのは、SPT0418-47が初めてである。そこでこの新たなミステリーを解き明かすためにさらに多くの調査や研究、またPAHsのオリジンは何かについても探索する必要がある。

 赤外観測も、生き甲斐である。

[1] Chemical & Engineering News 2023 June 12, p. 4.

DOI: 10.1038/s41586-023-05998-6

JWST: James Webb Space telescope

23.7.1

| | コメント (0)

« 2023年6月 | トップページ | 2023年8月 »