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2023年8月

病原体が体に入ると

 抗微生物ペプチド(AMPs)が生産される。研究者らは、AMPs類似の構造と機能を有する新たな化合物を合成し、このペプチドのような分子をペプトイドと名付けた[1]。菌に対してAMPsを利用することは以前から行われていたものの、これを医薬品に利用することには成功していなかった。その中研究者らは、以前に合成した直線状の分子を環状にして、その抗ウイルス活性を検証した。その結果驚いたことに、試験したすべての封筒型のウイルスに対して活性を示した。それらには、コクサッキーBウイルス、ジカ熱、チクングンヤ熱、リフトバレー熱を引き起こすウイルスも含まれる。ここでペプトイドは、すべての封筒型ウイルスの膜に存在するホスファチジルセリンと呼ばれる脂質を標的としていることもわかった。さらに研究者らの持つ未発表データは、ゴールデンハムスターでは、SARS-CoV-2ウイルスに対する治療効果や予防効果があることを示していた。

 ペプトイドまでの道のり、遠いど。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 21, p. 5.

DOI: 10.1021/acsinfecdis.3c00063

23.8.31

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水に漂う

 プラスチック小片は、増え続ける環境危険因子である。小エビや他の生き物がプラスチック粒子を食べ物であると間違えて摂取してしまう。これらは、消化管に蓄積し、動物の成長や振舞いを阻害し得る。最近の研究は、プラスチックの表面に疾病を引き起こす病原菌が集まっているためにさらに影響の大きさを示していた。その中今回、ポリ塩化ビニルマイクロプラスチックが、幼虫の小エビの消化管の中で、白点病ウイルス(WSSV) の延命や複製をサポートし、より多くの小エビが死に至ることが報告された[1]。実験室の研究では、これらのマイクロプラスチックはホストの抗ウイルス機能を損ない、ホストはウイルス感染に対して脆弱になることがわかった。その結果、すでにWSSVと戦っている甲殻類水産養殖業への影響も大きい。今回の研究のように、生命体の健康とマイクロプラスチックとの関係が、病原体を撃退し罹患を防ぐ個々の能力に悪影響を及ぼす例が増大しているように思われるとマイプロプラスチック汚染に関する研究者は指摘している。

 小エビの幼虫にとっても、要注意です。

[1] Chemical and Engineering News 2023 August 7/14, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.est.3c01566

23.8.30

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コンクリートの主要成分である

 セメント製造は世界の二酸化炭素排出のおよそ8%を占める。このセメントからコンデンサーをつくることに研究者らはチャレンジした。通常の超コンデンサーは電解液からイオンを電極表面に物理的に吸着させる。そこで通常の金属プレート電極に代えて研究者らは、炭素ブラックを使ってセメントを入れ込んだ細いワイヤのネットワークをつくった。ついで水をセメントに加えると、これらが反応するにつれて、孔の枝分かれしたネットワークが仕上がり、この間に炭素ブラックが広がった。セメントが水を吸収するほど、水をはじく炭素粒子は自己集合し、枝分かれしてつながった網になる。親水性セメントと疎水性炭素ブラックが、材料全体を通して、ナノスケールの炭素ブラックがもとになったワイヤ形成を促し、炭素ブラックで包まれたセメント二つを塩化カリウム電解液に浸して超コンデンサーが出来た。1 mmサイズのデバイスは1 Vを発生させることができ、三つを連結するとLED電球が点灯。これをもとに計算すると、一辺が3.5 mの立方体ブロックが、平均的な家庭が1日に必要とする電力を供給することができる。

 セメント、攻めんといてね。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 7/14, p. 8.

DOI: 10.1073/pnas.230431812

23.8.29

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メタン生成菌による

 メタン製造に対して、生命が誕生する以前は何がメタンを大気に放出していたのか明らかではなかった。昨年、メタン生成菌を有しない生命体が細胞内でメタンを放出することが発見された[1]。この変換は、鉄イオン(Fe2+)と過酸化水素のような活性酸素との間のフェントン反応が可能にしている。フェントン反応では、フリーラジカルが発生し、メチル化された硫黄や窒素化合物からメタンやエタンが放出される。これらすべての化合物は地球上に存在しているように思われる。そこで先の発見をした研究者らは、この非酵素経路が前生物的な化学で重要ではないかと考えた。そこでFe2+とジメチルスルホキシドを加えた中性の無酸素な水溶液をつくった。光と熱によって水から過酸化水素が発生しフェントン反応を引き起こし、メタンやエタンが発生した。さらに生体分子であるクエン酸塩が配位した鉄でも同様の反応が進行し、別のメチル化化合物からのメタンの発生が確認された[2]。なおこの機構は、太陽が今よりかなり冷えていた頃の初期の地球を温暖にしていた可能性を研究者らは指摘している。

 メタン発生経路を、決めたんや。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 7/14, p. 7.

DOI: 10.1038/s41586-022-04511-9

[2] DOI: 10.1038/s41467-023-39917-0

23.8.28

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オピオイド依存に対する

 人での免疫療法が始めて開始される[1]。さらにフェンタニルにバインドする抗体の臨床試験が8月末に始まる予定である。現状、フェンタニルや他のオピオイドを活性化させる受容体をブロックするのはナロキノンだけであるが、その半減期が多くのオピオイドのそれよりも短く患者は過剰摂取に戻り得る。そこでこれらの薬が脳に到達するのを防ぐ抗体を研究者らは長年探索してきた。すなわちフェンタニルやその類縁体であるカーフェンタニルにはバインドし、ナロキノンにはバインドしない抗体の開発である。その結果新たなそれはすべて人のアミノ酸配列を有しており医薬品開発に適していた。さらに安定な抗体フラグメントを改変した。これらのフェーズIの臨床試験を、ある企業が間も無くスタートさせる。一方研究者らは、開発した抗体フラグメントが、カーフェンタニルを過剰摂取したネズミで正常な呼吸が回復した点に興味を持ち、ナロキノンよりゆっくりと作用し持続できる回復薬になることを期待している。

 オピオイド、おいどんは避けたい。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 7/14, p. 6.

DOI: 10.1021/acschemneuro.3c00455

23.8.27

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原子炉を格納する

 コンクリート構造は、数十年かけて放射性核種を吸い上げ、それらが表面に滲み出る。発電所を閉鎖する際にこれを洗浄すると放射性金属が放出され得る。それに対して超薄いヒドロキシアパタイト層がこれらの残留物を吸い上げることを研究者らは示した[1]。ヒドロキシアパタイトは天然のリン酸カルシウムであり人の骨や歯の成分でもある。粉になったヒドロキシアパタイトは、放射性ストロンチウムなどを吸い上げる。これはストロンチウムがカルシウムの代わりになるためである。そこで研究者らは、セメントの上に、数十μmの厚さのヒドロキシアパタイトのコーティングを施す単純な方法を開発した。すなわちシリカベースの溶液にセメントブロックを2日間浸し、ついで2日間リン酸カルシウム溶液に浸した。シリカ分子がブロックの表面に連結すると負電荷が生じた。またコンクリートからはカルシウムイオンが染み出し水酸化カルシウムに変換されて溶液のpHは11になった。これによってヒドロキシアパタイトが形成された。得られた材料を、ストロンチウムを含む溶液に1週間浸したところ、金属がヒドロキシアパタイト層に蓄積されていた。これによってコンクリートの大部分を放射線から守ることも可能である。

 ヒドロキシアパタイト、やっぱ態度がいいねえ。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 7/14, p. 5.

DOI: 10.1038/s41598-023-37822-6

23.8.26

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C&EN編集委員長である

 M. Yahia氏が41歳で亡くなられた。8月1日に委員長に就任し、スタッフと雑誌のビジョンを大まかにビデオ通話で述べていた矢先である。サンフランシスコで開催されていたACSの学会に赴く途中だった。Yahia氏は以前、Springer Natureの編集長で、その時にはNature Middle Eastを含む複数の雑誌の立ち上げにも関わった。他にも科学ジャーナリズムの中で多くのポストを歴任、2017年から2019年は、科学ジャーナリスト世界連邦(WFSJ)の長だった。世界には、彼のような科学ジャーナリストは多くはない。Yahia氏がC&EN誌に執筆した唯一の論説では、C&EN誌の過去100年のレガシーを再構築し、雑誌の新たな読者を増やすためのエネルギーと情熱を伝えていた。Yahia夫人のお話では、彼がC&EN誌に参加できたことにエキサイトしていたと、サイトにも記載があった。

早世されたYahira氏、ご冥福をお祈りいたします。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 21, p. 5.

23.8.25

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県営名古屋空港行きのバスを待つ

 ミッドランドスクエア前。この暑さから誰か救ってや、と思っていたら、出発時刻の15分ほど前にバスが到着して涼しい車内に招かれた。乗車時間およそ20分で空港着。搭乗券を獲得して保安検査場を通過。出発の20分ほど前にERJ175の機内に入る。座席番号9K、ここで55分ほど休憩する。松本市内上空を飛行しているとのアナウンス。雲の合間から集落が見える。曲がりくねった川、千曲川か、新潟県に入って信濃川に名前が変わる。この由来知らんのうの中、新潟空港に着陸した。ここからウエストコーストライナーという弥彦温泉行きの便がある。前日に予約のために電話したところ「前日の午前中までです」というお答えで乗車を果たせなかったものの、空港から新潟駅、そこから越後線、弥彦線というローカル線の旅を体験できた。弥彦駅から旅館までは歩いてもそれほど時間はかからない。ただ駅を出た瞬間、上からの強い日差し、下からの照り返しに危険を感じて、バスで迎えに来ていただいた。セミナーには、皆おそろい、次回は見習います。ちなみに旅館は「みのや」夜は飲み屋状態だった。

セミナーの担当者やサポートされた方の献身的なお世話で、豊かな三日間を過ごすことができました。有難うございました。

23.8.24

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18個のメタロセンを

 慎重に繋ぎ合わせてカーブしたナノメートルサイズの環が導かれた[1]。この新しいタイプの大きなサイズの環状サンドイッチ錯体を研究者らはシクロセンと呼んでいる。研究者らは、シクロセン合成のために、ストロンチウム、サマリウムあるいはユーロピウムイオンとシクロオクタテトラエンとで形成された錯体を交互に積み上げた。まず金属へはシクロオクタテトラエンと、反対側にTHFが配位していた。その後溶媒を除去するとシクロセンに至った。それぞれのシクロオクタテトラエンは、嵩高いトリイソプロピルシリル基を二つ有しており、これが、メタロセンが積み重なった場合に湾曲をもたらす。この湾曲の発見は研究者らにとっては予想外だった。以前三つの金属イオンと四つの嵩高いシクロオクタテトラエンからなる多層錯体を合成した際に、当初は直線状に配列すると思われたものの、それらが曲がっていた。このことは環の形成の可能性を示唆していた。また計算の結果は、錯体がジグザグメタロセンワイヤを形成するよりも環になる方が、エネルギー的に有利であることを示していた。

 メタロセンからシクロセン、路線の拡大について、書くんだい。

[1] Chemical & Engineering News 2023 August 7/14, p. 4.

DOI:10.1038/s41586-023-06192-4

23.8.23

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トラックのタイヤの30%が

 天然ゴム由来である[1]。これは東南アジアの熱帯地方で生育しているパラゴムノキの皮から採取される。一方で(C5H8)nの化学式を持つ様々なテルペンは、イソプレンの前駆体であり、合成あるいは天然の方法で製造できる。そのうち直鎖のテルペンをもとにしたエラストマーは、通常の樹脂の代替品として有望な候補である。さらに別の企業は、今後5~10年の間に西洋たんぽぽの根から得られるゴムを使う製造方法を稼働させる計画である。2018年以降たんぽぽゴムの研究を行い、2035年までには、パラゴムノキ以外の天然ゴムの割合を10%程度にしたいとしている。同様に別の企業は、米国南西部の荒れた土地に育つ低木であるグラユールからのゴム製造を探索している。その企業はグアユールの栽培をスペインで開始している。その場所は他の野菜や食べ物生産には不向きであるため、荒地の利用としても有効である。ブリヂストンもグアユールに1億ドル以上を投資し、10年以内にはそれを使ったタイヤ製造の商業化を、さらに2050までには100%再生可能な材料からのタイヤ生産を目指している。

 タイヤプロジェクト、壮大(そうダイ)や。

[1] Chemical & Engineering News 2023, May 29, p. 31

タイヤシリーズ最終回

23.8.22

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タイヤ工業は持続可能性について

 二つの点にフォーカスしている[1]。燃費を向上させることと化石燃料を使った原材料の再生可能なものへの置き換えである。これによって温室効果ガス排出の低減を目指す。スチレンブタジエンゴムを含む100種類以上の化合物がタイヤに使われている。企業はこれらのいくつかを、タイヤの酸化防止剤をつくるために木材由来のリグニンに、また様々な目的で大豆油への置き換えを調査している。内燃機関自動車で使われるタイヤの場合、CO2排出の80%以上が自動車の燃料消費に関連する。その中シリカはすでにタイヤの添加物として利用され、回転の抵抗や燃料消費を低減させている。ある企業は、土から得ているシリカの、もみ殻灰を使った製造に置き換えようとしている。再生可能エネルギーでこれらが製造されるとカーボンフットプリントは半減される可能性が高い。タイヤの酸化防止剤であるブルカノックスHS(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンがベース)を、ドイツの企業は再生可能な原材料を使って製造する予定である。この方法では、化石燃料由来の材料ではなくて、回収して加工された廃油のような代替物を利用し、最終製品が再生可能材料として使える。

 シリカで、走りかは、どうでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023, May 29, p. 31

タイヤシリーズ第三回

23.8.21

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タイヤが道路と擦れ合うと

 発生するタイヤ道路摩耗粒子(TRWPs)がかなり環境に害をもたらし得ることが多くの研究で示されている[1]。ある研究者らによれば、年間6百万トンのTRWPsが放出されていること、これは使い捨てプラスチックの次の大きなマイクロプラスチック汚染である。2017年の報告では、大洋のすべてのマイクロプラスチックのうち28%がTRWPsであるとしている。別の調査は、大洋のすべてのプラスチックの5–10%がタイヤ由来であることを示している[2]。さらに2018年の欧州委員会による調査は、毎年5万から14万トンのTRWPsが欧州の水表面に入り込んでいると結論づけた。TRWPsに関する別の研究はTRWPsの環境に対する悪影響を指摘している。シアトル地域の銀鮭の大量死は、タイヤ粒子の中の6PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)キノンとリンクしているとした[3]。6PPDは酸化防止剤であり、オゾン、酸素、機械的ストレスによってもたらされるタイヤの崩壊を防ぐために使われている。一方2022年の報告は、6PPDキノンは、ニジマス、カワマス、ホッキョクイワナ、シロチョウザメに対して有毒であることを、示していた[4]。

 キノンに対して呑気ではいけない。

[1] Chemical & Engineering News 2023, May 29, p. 30

[2] DOI:10.3390/ijerph14101265

[3] DOI: 10.1126/science.abd6951

[4] DOI:10.1021/acs.estlett.2c00050

タイヤシリーズ第二回

23.8.20

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大量のゴムの小片を

 150以上の電気加熱プレートの上に落とし、数秒以内に温度を600 °C以上に上げる。酸素がほとんどない大気の中で、これらの小片はガスに変換され、合成オイルとほとんどが炭素ブラックである固体に冷却される[1]。これはドイツのあるスタートアップ企業によって商業化された連続熱分解技術の肝である。これはタイヤ廃棄と材料リサイクルの既存のシステムが排出する二酸化炭素を72%抑制できる。この企業や他のタイヤの化学リサイクル製品の需要は増加し、いずれ使用済タイヤのうち現在は埋め立てや焼却されている、世界でおよそ40億本のタイヤのうち数百万トンの行方を転換できる可能性がある。2021年世界ではおよそ23億5千本のタイヤが製造され、4770万トンの原料が使われた。そのうちおよそ10億本は耐用年数まで利用されている。それでもそれらが寿命を迎えたとき、持続可能な低エネルギー条件での処理が求められる。例えば廃タイヤの化学リサイクルによって製造される、温室効果ガスの排出がより少ない製品をタイヤ企業は入手することに関心を寄せている。とりわけ炭素ブラックに対する期待は大きい。

 タイヤって一体なんや?

[1] Chemical & Engineering News 2023, May 29, p. 30

タイヤシリーズ第一回

23.8.19

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レイチェル・カーソンの

 生誕100周年を記念して、2007年C&ENの編集長は、彼女の著書「沈黙の春」の衝撃の大きさを評価している[1]。1962年当時、人は自然とは別物で、その命運を制御できると信じていた。それに対してカーソンは、自然は、相互連結と相互依存のネットワークであり、人はそのネットワークの一部であると同時に、自分達でそのネットワークを危険に晒していると熱心に主張した。ただし1962年C&ENは好意的にこの著書を受け止めず、家父長的で否定的なタイトル「Silence, Miss Carson」の記事を掲載した。カーソンの著書は、いいとこ取りで新しい情報は何もないこと、情的であること、前後関係を無視している、データを誤解していると評した。「責任ある科学者は、著者らの無知やその先の教育的な課題を理解するためにこの本を読むべきである」と書評の著者は結論づけていた。ただ当時でさえもこれに対する反論が読者から数週間後に寄せられていた。「正直な情報通であれば、私たちの環境が多くの有害な方法で変化しないと主張することはできない」と

 情的でも、常識的で上出来です。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 21.

23.8.18

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ネコの匂いを嗅ぐ

 センスは、たくさんの天然の振る舞いをキャッチする。その感度や精度は洗練された分析装置でも打ち勝つことは難しい。そこでその詳細を知るために耳鼻咽頭学の研究者らのグループは、ネコの鼻腔の解剖学的に正確なモデルを刺激し、その中の空気の流れをシミュレートした[1]。その結果、ネコが空気を吸い込むと空気の流れの一部が肺に流れること、他は素早くネコの嗅覚系に移動することをみつけた。嗅覚系は、鼻甲介と呼ばれるコイル状の構造のネットワークに分かれており、鼻甲介のそれぞれはガスクロマトグラフィーのカラム一本のように作用し、鼻甲介の壁に沿って配置されている受容体と相互作用すると匂い化合物を検出することがわかった。研究者らは今後、神経科学者と共同で、ネコの鼻の物理的な構造が、ネコたちが世界を理解するのをどのように支援しているのかを明らかにしたいとしている。さらにこれらから、より良いガスクロマトグラフィーを構築することも可能である。

 ネコのお鼻のお話でした。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 40.

DOI:10.1371/journal.pcbi.1011119

23.8.17

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韓国では年間

 およそ2百万トンのキムチが消費されている。その筋金入りのファンは、陶器製の容器であるオンギで発酵したキムチが断然美味いと言う。以前の研究ではオンギは、酸味を付与する乳酸バクテリアの成長を促すことを示していた[1]。ただしオンギの内側にある浸透性の壁について言及されたことはなかった。それに対してジョージア工科大学の博士課程の学生キムさんが、キムチの謎に迫った。メンターや母親の支援も受けながら、オンギを検証するためにCO2センサーを取り付け、薄味の塩をまぶしたキャベツを入れて、乳酸に働いてもらった[2]。キャベツが発酵する際にCO2が発生する。それに対してオンギの表面に広がる微小孔がサポートするガス交換が、乳酸バクテリアが棲むゆるい土壌で進行する。対照的にガラス容器の場合にはCO2レベルはかなり高く、バクテリアがこれで窒息する可能性が高い。現在の発酵ではこのCO2を手動あるいは機械的に外に出している一方で、オンギは何もしなくてもそれを可能にしている。

 オンギに恩義を感じるキムチファンの方の気持ち、わかりますか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 40

DOI:10.1111/j.1365-2621.2011.02710.x

[2] DOI: 10.1098/rsif.2023.0034

23.8.16

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今時の水着

 さまざまな合成高分子が使われている[1]。通常はポリエステルとナイロンである。水着織物に伸縮性を付与するためにエラステイン(スパンデックス)を含ませ、絶縁材料としてネオプレンを、ウエット、ドライどちらのスーツでも使う。ポリウレタン製の競技用水着の使用は世界中で競技団体によって禁止されている。この水着は空気をトラップすることによって特別な浮力を生み出し、水泳選手に不公正な利点をもたらす。水着の織物に利用されているナイロンや他のいくつかの合成高分子は、太陽からの紫外線によって徐々に壊れていく。そこで製造業者はしばしば紫外線吸収剤を織物に加えている。紫外線吸収剤は紫外線を吸収し、高分子中の結合の開裂を引き起こすラジカルの発生を防ぐ。酸化チタンやベンゾフェノンがこの役割を担う。プールには次亜塩素酸塩として塩素を加えてバクテリアやウイルスを死滅させるが、病原菌に作用するこの酸は水着にダメージを与える。時間が経つにつれて水着の弾力性が失われる、特にナイロンやエラステインでは。使用後水着は、冷たい水によるリンスと陰干しがベストである。洗濯機、乾燥機、漂白は避けるように。

 水着姿、見過ぎていませんか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 23.

23.8.15

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新しい抗生物質を探し求めて人は

 さまざまな場所を訪ねる。その中、ペプチドベースの抗菌薬は低分子よりも耐性を引き起こさないと考えられているために研究者らは、タンパク質ワールドに入り、8-50のアミノ酸の長さのタンパク質を見つけることにした[1]。すなわちカリバチの毒にあるタンパク質を再プログラム化し、少なくともネズミでは、宿主細胞を傷つけることなくバクテリアと戦う抗菌ペプチド(AMPs)をつくった。始まりは単独行動するミカドトックリバチだった。そのハチを刺激すると小さな毒針が痛みを伴うタンパク質のカクテルを放出する。ただし研究者らはこれらには注目せずに、二つの長さの短い毒液からの毒素を使って、異なるアミノ酸で置き換えることによって、抗菌活性を向上させるとともに細胞毒性作用を削除した。試験管並びに感染したネズミのモデルで合成したペプチドのグラム陰性菌に対する効果を試験した。これらはAMPsにはならない一方で、今後の研究の足がかりとして利用できることが報告されている。

 カリバチのこと、わかりばっちたでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 9.

DOI:10.1016/j.xcrp.2023.101459

23.8.14

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センターを抜けるかと

 思われた打球、近本選手の好捕。その裏、塁に出た近本選手、中野選手が盗塁も決めて二点先制。このまま流れることを期待しつつも、ヤクルトはセイフティーバンドを含めた攻撃、苦しい選手起用の中で遂に勝ち越した。阪神6回裏ワンアウト1塁3塁のチャンスに坂本選手がバッターボックスに立った。外野フライくらいはと念じていたところ、ピッチャーが投げた瞬間にバットを横に寝かした。なんとスクイズ。ボールはピッチャーのグラブの下を潜り抜けて、佐藤選手が同点のホームイン。後3回で逆転やで、と再々度生ビール。担当のお姉さんも「追いつきましたねえ、これからですよ」と言う。その後は、バッターの打ったボールがインフィールドにあるごとに歓声が上がる。内野ゴロを捌く選手、さすがはプロだという送球。10回表、この日の試合前に表彰を受けた岩崎投手がマウンドに。すんなり終わるはずだと安心していたところワンアウト満塁。なんとか抑えてと祈りながら応援。二者連続三振、圧巻だったものの寿命が縮まる思いがした。そろそろ最終電車の時間が気になり始める。12回表が終わった。引き分けかという声も。そのなか中野選手の2塁打。大歓声の中ノーアウト満塁になった。佐藤輝明選手が打った瞬間、残っていた観客は勝利を確信した。ヒーローインタビュー、疲労感もなく聞き入り、六甲おろしを歌って、急ぎ駅に向かった。

大正駅、衣装もそのままのファンが車内に満ちていた。

[1] 阪神・ヤクルト18回戦(京セラドーム大阪)

23.8.13

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深さ3000から6000mの間の

 深海帯は地球の表面の60%以上を占める。ここにも無数の海洋生命体が暮らす。この調査のために研究者らは太平洋の深海平原の3800から5300目の間の深さで観測される5万以上の巨型動物類の地図を作成し、その地図の中のそれぞれの生命体が観測された地理的な位置の全体像を示した。その結果、炭酸塩ベースの組織を持つ、ソフトサンゴ、クモヒトデ、有殻の軟体動物のような動物は、3800 から4300 mの地域に最も広く存在していることがわかった。またこれらは4800 m以下では、全く観測することができない一方で、その地域ではアネモネやナマコが主流だった。これらの浅い部分と深い部分の間のエリアは両方が混じっていた。この移行帯は偶然にも、炭酸カルシウムが不飽和になるCCDと一致していた。ただこの結果はCCDがこれら二つのコミュニティを分離する原因になっていることを実証したわけではない。それでもサンゴや殻を持つ動物は、CCDより深いところで固い組織を成長させることは難しく、炭酸カルシウムが利用できることがエコシステムを形づくる大きな役割を果たしている可能性がある。なおCCDは気候変動に伴って上昇することが予想されている。

 深海帯の研究もしんかい と促されたのでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 9.

DOI: 10.1038/s41559-023-02122-9

CCD: carbonate compensation depth(炭酸塩を補償できる深さ)

23.8.12

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化石燃料に代わるものとして

 水素が注目されている。ただ水素は現在、水蒸気改質と呼ばれる高圧蒸気とメタンとの反応から得ている。この方法は結果として多量のCO2を排出する。別の方法としては水からの水素発生である。それに対して地球の地殻には大量の水素が手つかずに保存されている。ただその掘り出しの気候変動への影響は知られていなかった。そこで研究者らは、この天然の水素製造による温室効果ガスの排出に関する初期的な報告を行った[1]。その結果、それはクリーンエネルギー源になり得ることがわかった。研究者らは、ライフサイクル分析と呼ばれる技術を用いて、天然の水素を得る過程で発生する温室効果ガスを見積もった。同様の類推を通常の油やガス発生にも適用できるようにモデルを修正し、ガスの濃度、井戸の生産性、深さ、製造に必要な電力や廃棄物の取り扱いのようなパラメーターを考慮し、1 kgの水素製造の際に排出される温室効果ガスは0.4 kg程度であることが明らかにされた。

 天然水素に関する推測をしてんねん でした。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 5.

DOI: 10.1016/j.joule.2023.07.001

23.8.11

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非天然アミノ酸の

 これまでの合成法は、保護、脱保護を複数回繰り返す必要があること、隣接する立体中心の制御の困難さも伴っていた。その中今回、ラジカルと酵素の組合せが新たな合成手法の道を切り開いた[1]。ラジカルは容易に炭素–炭素結合形成を達成できる一方で立体選択的ではない。それに対して酵素は三次元構造を正確に構築できる。そこで研究者らは、補助因子としてピリドキサル5’-ホスフェート(PLP)を利用する酵素を改変した。PLP依存の酵素は、アミノアクリレート中間体を通したアミノ酸修飾に適しており、そこにラジカルを入れ込んだ。研究者らはPLP依存のトリプトファン合成酵素β変異体二つをつくった。それぞれD-あるいは L-アミノ酸合成のためである。ついでローダミン光触媒によってベンジルトリフルオロボレート塩から炭素中心ラジカルを発生させ、酵素の活性中心に導入した。それらはアミノ酸のβ位に連結し置換トリプトファン類縁体を与えた。同様の反応は、収率は低下するものの、アルキルラジカルでも進行した。この二重触媒はセリンやスレオニンも修飾し、隣接する三連続立体中心が構築された。さらにこのラジカルと酵素の組合せで、様々な非天然アミノ酸が導かれることが期待される。

 非天然って、何か知ってんねん、かな。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 31, p. 3.

DOI: 10.1126/science.adg2420

23.8.10

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欧州宇宙機関(ESA)は

 今年の1月、宇宙ジュースコンテストを開催した[1]。ノンアルコールカクテルであるモックテルをつくるこのイベントは、惑星間宇宙船であるJupiter Icy Moons Explorer(JUICE)に関することが主題である。宇宙船は4月に打ち上げられ、木星の月であるガニメデ、カリストとエウロパに関する情報収集を目的とする。多くの応募が欧州全域から寄せられた。その中には、小さな衛星の装飾を施したものもあった。別の作品は、綿菓子を使いガス雲を表現し、ある作品は暗闇で発光、木星そのものの模様を模倣した層を形成する飲み物もあった。第一位に輝いたイタリヤのM. Gagnoniさんの作品は、トニックウオーター、ココナッツ水、ジンジャエール、ラセン藻からつくられたスパークリングブルーモックテルだった。これははるか彼方の太陽での生活をほのめかしていた。Gagnoniさんは、ドイツでの宇宙船発射イベントに出席し、そこで彼女の飲み物が振る舞われた。上位9つの作品に、ジュースを主題とするプライズとESAからのお楽しみ袋が授与された。宇宙船打ち上げを記念して、70種類全てのレシピーはデジタル本に集められている。

 ジュースを純〜粋に楽しみましょう。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 24, p. 64.

23.8.9

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カクテルには

 お酒が隠れている。がそれだけではない。酸、砂糖、アルコールのバランスと希釈が肝である[1]。酸としては、レモン、ライムあるいは僅かに量の少ないクエン酸が始まりで、ミカンジュースは食感をドリンクに付与するために、ウイスキーや同様のスピリッツを含むカクテルではよく使われる。柑橘系の香りを最小限にしたいときは、ぶどうの香り、すなわちクエン酸を酒石酸に置き換えるとよい。砂糖を入れる方法は様々だ。一般的にはジュースを入れる。例えばパイナップルジュースを使うと、砂糖成分の添加に加えて、発泡作用さらには比較的量の多い水分として内容物を希釈できる。特別な食感を加えるものが炭酸である。CO2を加えると、シェイクした飲み物の気が抜けるのを防ぐことができる。カクテルバーではしばしば単純なシロップを使う。これはフルーツと砂糖を組合せたもので、甘さと香りを付与する濃縮物を形成する。全ての成分をシェーカーに入れる時にはおよそ44.3 mLでなくてはならない。そこに氷を加えるためである。氷によって希釈され、仕上がった飲み物は柔らかい味になる。最後にドリンクデザイナーは、フレーバー同士の相互作用も考える必要がある。

 シェーカー、正解に至るには技がいるようです。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 24, p. 64.

「Cooking Issues and author of Liquid Intelligence: The Art and Science of the Perfect Cocktail」の著者であるD. Arnold氏のお話がベースである。

23.8.8

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アイスクリームに

 氷の結晶の嫌な臭いのコーティングが出来てしまうと、クリーミーでも快適でもなくなる。また食べ物に利用できる抗凍結剤はほとんど知られていなかった。その中食品工業で広く利用されている大豆タンパク質分離物(SPI)は、食べ物が凍ってもその触感や味が変化するのを防いでいる可能性があることが報告された[1]。これまでの研究では、ゼラチンから誘導したペプチドが、凍結防止効果があることがわかっている。それに対して今回、植物由来の複数のタンパク質をスクリーニングしSPIに至った。SPIペプチドは、より強い凍結防止活性を示す分子量の大きな分子であり、それらの二次構造は類似である。研究者らの仮説では、凍結を防ぐためには分子は両親媒性であること、すなわち親水性であり疎水性である必要がある。その点からSPIは水と氷の接触面で保護効果を発揮する。研究者らはさらにSPIの化学的な相互作用が氷の形成を抑制する機構も明らかにしようとしている。またSPIペプチドは、農業や道路の除氷を含む応用面でも強力な候補である。

 凍結を受付けませんように。

[1] Chemical & Engineering News 2023, July 24, p. 9.

DOI: 10.1021/acs.jafc.2c08701

23.8.7

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1945年のノーベル賞講演で

 Flemingが注意を促したように、抗生物質耐性は不可避である。実際に2019年130万人の人が耐性菌の感染で死亡している。それに対して研究者らは、非天然のカチオン性アミノ酸をペプチド配列に入れ込み、この課題の解決を考えた[1]。P1からP4の短いカチオン性ペプチドを研究者らはつくった。これを大腸菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む12種類の異なる株で成長させ、病原体を死滅させるために必要な量を見積もった。その結果、P3が突出した効果を示し、 4 mg/mlで、ある病原体すべてを4 時間以内に死滅させた。さらにバイオフィルムを使って同様の試験も行った。バイオフィルムは化合物に対する抵抗性は1000倍以上である。最後に蛍光発光顕微鏡写真を作成し、P3がバクテリア膜を破裂させることを確認した。今後はこれらを動物で検証すること、また患者さんから成長させた株を含む別の株でもP3が作用するかどうかを試したいとしている。

カチオン性が、バクテリアに勝ちよん らしいです。

[1] Chemical & Engineering News 2023, July 24, p. 9.

DOI: 10.1021/acsinfecdis.3c00238

23.8.6

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人工合成する分子に含まれるフッ素原子は

 フッ化カルシウム(CaF2)由来である。ここからフッ素原子を取り出す過去250年変わらない方法は、CaF2と硫酸との反応によるHF製造であるが、HFは高い毒性を示し、取り扱いも難しい。それに対して研究者らは、バイオミネラル化に刺激されて、リン酸イオンを使ったCaF2からのフッ化物の取り出しを考えた[1]。リン酸カルシウムの格子エネルギーはCaF2のそれよりも高く、イオンを交換する反応は熱力学的に有利である。そこでCaF2とリン酸カリウムをボールミルですりつぶし、求核的なフッ素源として作用する固体を得た。フルオロミックスと名付けられたこの反応剤は、ハロゲン交換反応で、フッ素原子を有機化合物に導入することができる。さらに様々なタイプのS–F、C–F結合形成にも利用できる。フルオロミックスの粉末X線構造解析によれば、K3(HPO4)FとK2-xCay(PO3F)a(PO4)bという二つの異なる塩の混合物だった。研究者らは、フルオロミックスの反応性の詳細をさらに追究したいとしていることに加えて、この成果が他の科学者が、より環境調和な別のプロセスを考案するトリガーになるだろうと考えている。

 一人が、トリガーになったのかな。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 24, p. 5.

DOI: 10.1126/science.adi1557

23.8.5

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1,4-ジオキサンは

 以前考えられていたよりも、一般市民や労働者がガンを発症するリスクの高い化合物であると、米国環境保護局(EPA)は7月7日に公表した[1]。この分析は2020年の後半に公開したリスクアセスメントを補足するものである。2020年のそれは、飲料水や大気からのリスクが考慮されていないという批判を受けていた。さらに石鹸や洗剤のための界面活性剤を合成する際の副生成物になる1,4-ジオキサンについては考慮されていないとも評されていた。今回はそれらについても分析し、飲料水に残留するそれや大気からの一般市民へのリスク、それが副生する現場の労働者へのリスクも評価し、ガンのリスクがより高いことを示していた。EPAは、1,4-ジオキサンはヒト発ガン性物質であると考えている。これはさらに腎臓や鼻の組織に対する負の影響とも関連している。1,4-ジオキサンは、接着剤、シーリング材製造にも含まれ、飲料水の残留物質である。EPAは9月8日までパブリックコメントを募集している。さらにモニタリングのデータが古いため、現在のリスク緩和策についても注目している。

 1,4-ジオキサン、何も起きんさ ではなかったかな。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 17, p. 10.

23.8.4

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折り紙は

 小さいほど折った時の切れ味を保つのが難しい。それに対して研究者らはDNA折り紙システムを開発し、多くの形に折り畳むことに成功した[1]。研究者らは、四つの単量体のDNAタイルから、自己集合した一辺が240 nmサイズのDNA足場を合成した。これは折り紙を四枚並べて正方形にしたような形である。それぞれの折り紙は、取っ手と呼ばれる伸縮できる部位を、折り目のそれぞれの側に有している。ついでそこにノリの役目を持つDNA分子を加えると、それぞれの取っ手が塩基対で連結し、足場分子に折り目ができて新しい形に変換される。異なる取っ手を持つ分子を連結させることによって、長方形、小さな正方形、八角形、封筒形や他の形になることが、原子間顕微鏡で確認された。さらに研究者らはDNA折り紙を開く方法も開発している。折り紙に使われたノリDNAに対してより強くペアになるリリーサーDNA配列は足場を、開いたもとの状態に戻すことを可能にしている。

 取っ手、これがとっても素敵です。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 17, p. 5.

DOI: 10.1038/s41586-023-06181-7

23.8.3

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古代エジプトテーベの

 共同墓地にある壁に、古代人は装飾を施した。研究者らはこれをマクロX線蛍光法で分析した[1]。携帯できる装置をお墓に持ち込み、その中の二つの絵画に着目した。そのうちの一つは、肉眼で見ても、腕の部分の塗り直しと再配置が確認できた。さらに化学的な特徴を測定すると、新しく塗られた腕の染料が最初のそれとは異なっていることがわかった。二度目に腕に使った顔料は鉄を含む黄土で、一番目のそれはヒ素を含む顔料だった。ついで研究者らは古代エジプトNakhtamunにある墓地礼拝堂で、当時ファラオだったラムセスII世の肖像画の謎を紐解いた。ヒ素のレベルによれば、首飾りや杖は別の形をしていたものが後に、他の絵とマッチするように調整されていた。これらの例から推断するのは早計かもしれないものの、エジプトの絵画はしばしば、職人たちがペイントする前に、より熟練したものが作成したガイドラインに従って描かれている可能性が高い。その中で先の例で見たような修正について、ワークフローや修正の理由をさらに理解したい。

 墓地の謎、一人ぼっちでも、ボチボチ考えてみよう。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 17, p. 5.

DOI: 10.1371/journal.pone.0287647

23.8.2

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発砲すると

 ガスや微粒子が放出され、それらは人や表面に付着する。犯罪科学者はこの射撃残渣を分析して犯罪を調査する。この分析は現在、銃弾の中の重金属の検出が基本だった。それに対して人の肌や人工の肌の膜組織を使って、有機射撃残渣が、肌や別の表面に残存するか、またそれらがどのように移動して失われるかが評価された[1]。銃弾の中にあるジフェニルアミンやニトログリセリンのような有機化合物の残渣を検出するためにLC/MS法が開発された。ただこれらの化合物は小さすぎるため錯体化して検出した。650以上のサンプルを対象に、発砲の後、手洗いの後にどのように移動するかを検証した。その結果、有機残渣は、無機残渣よりも短い時間しか残存しないものの、手洗いや握手をしても、もとの場所に留まっているようだった。さらに研究者らは、無機残渣を検出できるレーザー誘導分解分光法と電気化学センサーも開発し、98%程度の正確さで、5分程度で検出する持ち運び簡単な技術も開発した。

 発砲よりも八宝菜。

[1] Chemical & Engineering News 2023 July 17, p. 4.

DOI: 10.1016/j.forc.2023.100498

23.8.1

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