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2024年2月

ブルーベリー

 西洋スモモ、オレゴングレープのような青いフルールが示す独特の青色は、表面のワックスの不規則な構造によるものであることが報告された[1]。研究者らは走査電子顕微鏡を使って、青いフルーツの表面のワックスの結晶を観察し、ワックスのモルホロジーは種によって全て異なる一方で、それら全てが光を散乱するかなり不規則な構造であることを発見した。これは他のいわゆる構造色とは異なる。構造色では、秩序だった周期的な構造によって特殊な色が観察される。研究者らはさらに青いオレゴングレープのワックスも抽出し、黒いカードの上に再結晶させた。再結晶化したコーティングは、黒いカードを青く見せていた。ナノ構造フォトニクスの専門家によれば「自然界で青色は神秘的であり、今回の研究は青いフルーツの謎の一端を解き明かしている」とのことである。特にワックスの構造を除去することや再構成できる点は興味深く、新たな材料への道を開くものである。

 ワックスの入った枠です、って植物にもあるかなあ。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 12/19, p. 8.

DOI: 10.1126/sciadv.adk4219

24.2.29

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乳漿タンパクを

 使って電子廃棄物から金を選択的に取り出す方法が開発された[1]。研究者らはまずチーズ製造工業の副生成物である乳漿タンパクを酸性条件下で加熱し、タンパク質をらせん構造にした。ついで溶液を凍結乾燥させて多孔性の軽いパックをつくった。得られたゲルが、銅、鉛、ニッケルと金とを同じ濃度で含む溶液から金を吸着できるかどうかの試験を行った。その結果、エアロゲルは、93%の金を吸い上げる一方で、他の金属は10%以下だった。さらに実際の電子廃棄物に対するタンパク質スポンジの能力を試験するために、硝酸と塩酸の混合液である王水にコンピューターのマザーボードを溶かした。金イオンは、エアロゲルの表面にとどまり還元されて、エアロゲル1 gあたり金属である金が190 mg得られた。エアロゲルを燃やすと金が解放されて塊になった。得られた金塊にはおよそ91%の金が含まれ、およそ21-22カラットに相当する。これまで金を取り出すためには活性炭が使われているが、活性炭1 gあたり60 mgの金の取り出しに留まり、また活性炭調製の環境負荷も大きかった。研究者らはさらに食品廃棄タンパクを使った希土類元素のリサイクルも達成したいとしている。

 金塊をつくる限界に挑戦していた。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 20, p. 7.

DOI: 10.1002/adma.202310642

24.2.28

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Royal Society of Chemistry (RSC)

 5つの学会が合併して1980年に施立された学術機関である。その会員数は日本化学会(CSJ)の2–3倍程度だ。一方でRSCが発刊している論文誌は現在55タイトルで、CSJの27.5倍である。ACCC9のブース展示には代表的な論文誌のカバーの写真が並び、担当者二人が参加者とやり取りをしていた。今やジャーナル商売の時代をどう生き延びるかみたいな話になった。商業誌との違いは何か。学術機関である以上、化学社会への貢献、若手研究者を支援したいという。この学会に限らず日本で開催される国内学会でも、学生さんや若手研究者らを対象にした賞を提供している。また出版戦略として2028年には論文誌全てをオープンアクセスに移行する計画で、これまでの購読をベースとした運営の方針を転換する予定である。ただその場合、掲載料(APC)は著者負担になり、それが叶わない研究者も出てくる。そこで発展途上国の研究者向けの、減額した価格提案を行うとのことである(今もすでにあるかもしれない)。でそこで「日本は金持ちの国だと思っているかもしれないけど、研究者の貧富の差も大きい。その配慮もお願いしたい」とお願いした。直接の答えはなかった。ただ日本からは投稿数は少ないものの、採択率は他の国に比べて高いというデータがあるとのことだった。

 ブース展示、天神さんでもやっているかなあ。

24.2.27

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Texas-inspired Drug Discovery Efforts

 会議最初の基調講演J. L. Sessler先生の講演タイトルだ。Abstractにも掲載の1988年の論文[1]も含めて、講演の中でDr. Murai と3回触れてもらった。それから36年も経過する。Pharmacyclesという会社を立ち上げ、臨床試験も重ねた末、FDAはそれを認めなかったのが2008年か。それでもtexaphyrinと名づけた化合物のポテンシャルの高さにこだわった。会社は譲渡するも、その間の研究でtexaphyrinは腫瘍に蓄積されることがわかった。その先にシスプラチン様の部位を組み込んだ化合物も合成し、その効果も検証していた。講演の凄さに圧倒されると同時に、時に入れ込むジョーク、Matter, Antimatter, Doesn’t Matter[2]、待った〜これは何を意味するのか、困った〜と思っていると話は展開した。バンコク到着の夜、Jonathan、彼のフィアンセと三人で話すこともできた。優雅なるかな、夕方から泳いできたとのこと。フィアンセから「あなたも環拡大ポリフィリンの研究をやっているのですか」との質問。「いや、それではいつまでもJ. L. Sesslerから離れることはできないので、小さな世界かもしれないけどに、有機化学の違う分野にいます」とお答えした。

 分野のこと、新聞屋さんにもお伝えしたい。

[1] J. L. Sessler, T. Murai, V. Lynch, and M. Cyr, J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 5586.

村井君のブログ、2009.7.27、2009.7.31、2009.7.31、2011.9.15も参考に

[2] https://tommccallum.com/2017/11/25/matter-antimatter-doesnt-matter/

24.2.26

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高層ビルが

 立ち並ぶバンコク市街。20数年前とは光景が全く違う。THE BERKELEY HOTEL PRATUNAMの受付に向かった。20数年前と同様の丁寧な応対で部屋の鍵を受け取った。部屋は31階らしい。ポーターさんに連れられて11階でエレベーターを乗り継いだ。部屋から見える光景は、スターウォーズ・エピソードIを彷彿させた。一方で階上から見る地上、昔からある市街やそこに住む人たちの生活があった。ホテルのバー、サッカーの番組が流れている。ハッピーアワーなので、泡がカバーするドリンクを所望した。タイのビールの一つシンハー(SINGHA)、コクのある味だ。でも「コクって何かを聞くのは酷です」で、タイのスパイシー料理。チョイスを失敗しないように慎重に選んだ。でもビールが進む。翌朝のACCC9 [1]のオープニングセレモニー、タイ化学会の方、今回のACCC-9の委員長の方の挨拶を、若い男女二人の司会者がリード、フレッシュだった。

 ポーターさんに、ハリーポッターのことは聞かなかった。

[1] https://www.accc9.org

24.2.25

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タイ・バンコク

 スワンナプーム空港に到着した。入国検査では、パスポートと搭乗券を見せる必要がある。少し前の男性「搭乗券は飛行機の中」ということで、搭乗券が登場しない。これは時間がかかりそうである。担当者が何か特別な対応をして、その方は入国していた。異例である。荷物の受取りの場、やたらゴルフバッグが多い。確かに中部国際空港のカウンターでも同様だった。荷物を受け取って両替。公共のタクシー乗り場は1階。エスカレーターで疲れた〜とのんびりしているわけにはいかない。鉄製のエスカレーターにしばらく乗ると、傾斜が続く。自分の前には車椅子をガイドする方が、踏ん張って移動しないようにしている。こちらもここで気が抜けてトランクが滑らないように必至に踏ん張る。トランクのニュースのランクインは避けることができた。タクシー乗り場は、一台ごとにドッグがあって、受付でお願いすると番号を指定された。行き先を伝えると、ドライバーから「そこまでは500バーツだけどいいか」と告げられた。事前に教えてもらった金額通りなので「お願いします」で走り出した。50分ほどかかってホテルだった。

 スワンナムプーム空港から、すまんな という気分だった。

24.2.24

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Steeped: The Chemistry of Tea

 Nature ChemistryのコラムニストM. Francl先生が出版された本である[1]。題名の通り、お茶の化学に関する書籍だ。例えば緑茶、紅茶、ウーロン茶、そしてさらに3つのよくわからない品種すべてが、カメリア・シネンシスという同じ植物から採れ、そのほとんどが加工方法によって異なること、カフェインは植物にとっては農薬であること、牛乳に含まれる球状のカゼインタンパク質とお茶の抗酸化物質との反応についても明らかにしている。また本は、先生自身の実験結果も含む。重水素水とL-テアニンを添加した煎じ汁の味の違いを調べ、ウォッカで茶葉のカフェインを抜いたものも試した。その結果、どれもひどい味で、お勧めできないとのことである。さらに鉄のティーポットにお茶を注いだ時の冷却曲線の作成も行い、先生が実践している紅茶の入れ方も述べられている。中でも寒い冬の朝には、ティーポットとカップを温める。熱いカップの上の温かい蒸気には癒しの揮発成分があり、ストレスの多い教授会に出席するときはマグカップの蓋を開けておくらしい。他にも電子レンジで紅茶を温め直すと炭酸化合物の膜が凝集することもわかったけど、今も先生は電子レンジで紅茶を温め直している。

 お茶、おっちゃんも飲む。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 5, p. 40.

24.2.23

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アルミニウムは

 軽量自動車、アルミ缶や調理器具を製造するために極めて重要だ。ただその製造過程で、鉄やスカンジムなどの金属を含む赤泥が生じ、およそ40億トンの赤泥が廃棄されている。今回研究者らは、この赤泥から鉄を取り出す方法を報告した[1]。これまでの赤泥からの鉄の抽出は、泥の焙煎と前処理を経て、酸化鉄を炭素によって還元していたが、この過程ではCO2が発生する。それに対して研究者らは、処理をしていない赤泥15 gを、アルゴンと水素10%を含む混合ガスで満たされるアーク加熱路の中の銅プレートの上に置いた。高温にすると鉱石は融けて、水素原子とアークから得られた電子が、水素イオンプラズマを発生させた。イオンは、粘性のある融解物の中の酸化鉄の酸素を剥がして、液体の鉄のポケットが形成する。酸素を除去すると鉄が沈澱してきた。反応の10分後加熱を止めて、銅プレートを水で冷やすと、融解物は小塊に素早く固化し、残った赤泥が、鉄を小塊の中で球状の粒子にさせた。このプロセスで赤泥の中の70%の鉄が抽出された。

 アークを上手〜く、使っている。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 5, p. 7.

DOI:10.1038/s41586-023-06901-z

24.2.22

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拡大顕微鏡法は

 通常の回折限界光学顕微鏡と同等の解像度を示す[1]。蛍光ラベルされた細胞組織をゲルに入れ込みタンパク質を消化する酵素で処理する。これによって組織の全方向への拡大が促進され、タンパク質はもとの相対的な位置を保ちながら引き出される。この新たな方法(decrowding expansion pathology)であるdExPathでは、タンパク質を消化する代わりに、タンパク質との接触を保ちながら軟化させる緩衝液を利用する。最初の部分拡大で、タンパク質の分離プロセスが始まる。ただタンパク質はお互いに接触しているために、分散した後に蛍光ラベルした抗体でラベルすることができ、ラベル化の密度とイメージの質を向上さることができる。研究者らはこのdExPathを用いて、様々な人の脳の病理学サンプルの多重イメージングを行った。サンプルとしては、神経膠腫、アルツハイマー病やパーキンソン病の患者さんからのものも含んでいた。いずれもこれまでは観測できなかった細胞集団や構造を観測することに成功した。

 細胞集団の、週だい、希望がなくても。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 5, p. 7.

DOI: 10.1126/scitranslmed.abo0049

24.2.21

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電子タバコ用の

 液体のおよそ75%にはベンズアルデヒドが含まれている[1]。さらに蒸気によって生じる熱がベンズアルデヒドと、電子タバコ用液体の主成分であるプロピレングリコールとの反応を加速させ、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール(BPGA)を与える。この分子の影響を検証するために研究者らは、子牛の肺の表面活性剤をベンズアルデヒドとBPGAに晒した。その結果、表面活性剤の張力の増加と圧縮率の低下を観測した。このことは分子が、呼吸のサイクルを困難にしていることを示唆している。ベンズアルデヒドやBPGAは、二つの疎水性タンパク質に接近することによって表面活性剤層と干渉する。分子ダイナミクスのシミュレーションも、とりわけBPGAは、通常肺リン脂質は肺でパッキングするが、これを妨げていることを示していた。肺表面活性剤の専門家は、電子タバコの蒸気がそのシステムを脆弱にし、肺に疾患がもたらされる可能性が上がることを指摘している。

 パッキング阻害、罰金はないけど、危惧される。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 5, p. 6.

DOI: 10.1021/acs.est.3c07874

24.2.20

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リン化合物は

 三価と五価の酸化状態をとり、その相互変換は難しくはない。この特徴を生かしたリンを触媒に用いたC–F結合の活性化が昨年報告された[1]。ただこの場合触媒となるリン化合物は特別に合成された。それに対して今回入手容易な、トリブチルホスフィンが触媒するC–F結合の活性化と続くPh2SiH2による還元が明らかにされた[2]。この反応の発見は、大学院生がZr錯体を用いたC–F活性化反応を探索している際に、予想外の副生成物が得られたことに端を発する。そこで彼女は、この反応にはホスフィン配位子が関わっているのではないかと考え、さらに反応性を調査した結果、たどり着いた。リン化合物は、遷移金属触媒と同様に、C-F結合に酸化的付加し、ヒドロシランのヒドリドがフッ素と入れ替わり、最後に還元的脱離で触媒の再生と生成物を与える。典型元素触媒は今も珍しくて、その開発は挑戦的な課題である。今回の結果はさらにそのようなタイプの探索を促すものであってほしいと研究者は願っている。

 ホスフィン、スフィンクスにはない、多分。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 5, p. 6.

DOI: 10.1021/jacs.2c13318

[2] DOI: 10.1021/jacs.3c10614

24.2.19

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クマムシは

 体長0.2 から1mmの小さな動物で熊のように歩く。また極端な温度や乾燥の状態にも耐えることができる。このような条件になると、クマムシはボールのようになって冬眠する。この謎解きのための研究中、ストレスが発生すると体の組織で活性酸素種の存在が観測されていた[1]。さらに理解を深めるために、過酸化水素を加えて酸化環境をクマムシに用意した。その結果、クマムシは丸くなった。このことは活性酸素種がクマムシに信号を送り、自らを守る行動を起こしていることを示していた。ついで酸化環境を除去したところ、丸い状態からもとに戻った。活性酸素種はストレスに対応するシステインを含む細胞にダメージを与える。そこでクマムシのシステインをブロックしたところ、クマムシはストレス要因が入り込むまでは完全に幸せだった。すなわちクマムシは、システインの酸化と還元の可逆なシステムを利用しているようである。ただクマムシが代謝の停止とどのように再スタートさせているかは今のところ説明できない。

 クマムシがいても、眩しくはないです。

[1] Chemical & Engineering News 2024 February 5, p. 3.

DOI: 10.1371/journal.pone.0295062

24.2.18

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水中スピーカーと

 水中聴音器を搭載したボートに乗っていた研究チームは、アラスカ東南部で無駄話をするクジラの群れに遭遇し、その会話を録音した[1]。その群れの中の一頭がTwainと名づけられたザトウクジラである。次の日再びTwainに出会った研究者らは、録音していたクジラ語のサウンドを流した。20分以上かけてTwainに対して38回それを放ったところ36回応答があった。これは会話なのかどうかを知るために研究者らは、Twainの振る舞いと応答を分析した。スピーカーから流れる音に対する彼女の応答の回数と、実際のクジラに対する応答の回数を計算した。その結果、彼女は、実際のクジラの群れよりもスピーカーに対してより素早く答えていた。さらにスピーカーと彼女のコンタクトが始まる頃には、彼女はボートに近づきその周りを旋回していた。この段階で最も速く反応し、反応時間と再生間隔が同期していた。これは会話の本質的な要素である発話交代をTwainが行っていたことを示唆している。彼女はその後、38回連続で「はい」と言われたら誰でもそうするように、興奮して泳ぎ去ってしまった。研究チームは、この水性の生き物とのチャットの練習が、地球外生命体とのコンタクトに役立つことを期待している。

 クジラに、ジラっと見られたかな。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 40.

DOI: 10.7717/peerj.16349

24.2.16

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中国のお正月には

 ギョウザがつくられる[1]。ギョウザの生地は水と小麦粉が原料である。水の温度を変化させると生地の特性に影響し、違ったタイプのギョウザの皮になる。沸点近いお湯は、小麦粉のタンパク質を変性させて、デンプンをゼラチン化させる。これがグルテンの形成を抑えて、よりソフトであまり弾性がない生地を導く。一方で温度の低いお湯はグルテン形成を促し、より固い生地を与え、巻き上げる前にしばらく放置する必要がある。デンプン粒は水を吸収して膨れる。粒からはアミロースがにじみ出て、温度が上昇すると破裂し、生地の粘性を向上させる。中国では赤色は、幸せ、成功、幸運と関連し、新年のお祝いでは目立っている。歴史的に中国では、硫化水銀(辰砂)で壁画や陶磁器に色をつけていたが、毒性のため今は使われていない。紅花やあかねの根から抽出された染料や合成染料で衣服を赤色に染色する。爆竹は中国の新年を祝うのに使われる。最初の天然の爆竹は、竹の中で加熱されて、中で膨らませて爆発させていた。その後KNO3(75%)、 C(15%)、S (195)を含む黒い粉が、今はKClO4 (70%)、Al(30%)の閃光粉が使われている。

 ギョウザ、ぎょうさんだ。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 29.

24.2.15

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抗ガン剤である

 パクリタキソールの合成法が開発されている一方で、天然ではどのような経路で導かれるのかが完全にはわかっていなかった。今回この複雑なオキセタンを含む多環状化合物が導かれる鍵中間体であるバッカチンIIIを形成する酵素が特定された[1]。これまでバッカチンIIIに含まれるオキセタン環は、エポキシ環の形成とその転位で導かれると考えられていた、その中今回、タキサンオキセタナーゼIと名づけられたチトクロームP450酵素が同定された。これがバッカチンIIIに含まれるオキセタン環を導く。タキサンオキセタナーゼIもエポキシ環を形成できるが、これがオキセタン環に変換されることはない。さらにオキセタン形成は、これまでには知られていない経路で導かれることが提唱されている。今回の酵素の同定を含む最近の発見をもとに研究者らは、合成生物学による大きなスケールでのバッカチンIIIの合成を行いたいとしている。

 バッカチンIII、ちゃっかり鎮座している。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 9.

DOI: 10.1126/science.adj3484

24.2.14

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CO2を

 付加価値の高い物質、例えば燃料や化成品に変換しても、それらは数年後にはCO2を放出することになる。それに対して幾つかの研究グループは、CO2を固体の炭素材料に変換する方法を報告していた。ただそれらは600 °C以上の熱を要するか収率の低さが課題だった。その中今回カーボンナノファイバー(CNFs)を導く二段階法が開発された[1]。まず市販のPd触媒を用いてCO2と水を電気分解し、COとH2の混合物である合成ガスを導く。ついでこのガスを鉄–コバルト合金を含む熱化学反応容器に導入し、炭素を沈澱させて合金の表面にC NFsを成長させる。さらに金属コバルトを添加するとナノファイバーの成長が促進されて、1時間で触媒1gあたり平均2.5 gのCNFsが得られた。コンピューターモデリング、X線吸収・散乱顕微鏡法や電子顕微鏡による観察結果は、合金がCOのC–O結合の開裂を促し、金属性のコバルトがC–C結合の形成を促進していることを示していた。なお反応は工業的に適用できる比較的温和な370–450 °Cで進行する。

 コバルトを、ほうばると困るど。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 9.

DOI: 10.1038/s41929-023-01085-1

24.2.13

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反応剤の濃度

 触媒量、光の強度を微調整して反応条件を最適化することは、とりわけ光化学触媒の場合には時間のかかる作業である。例えば光の強度は反応に大きく影響し、理想的な反応条件は、同様の基質の間でも、あるいは異なる研究室の装置でも変化する。そこで一般的な条件を開発するよりも、基質ごとの最適条件を特定したいと研究者らは考えた。すなわち機械学習によって一連の光化学反応を最適化できるRoboChemと呼ばれる自動化フロー化学システムを導入した[1]。RoboChemは1週間あたりおよそ10~20の合成を最適化できる。研究者らはRoboChemに、想定した範囲内でどの条件を変化させるべきかを伝える。するとRoboChemは、発光ダイオードを照射した光反応容器にチューブから650 μlの液体を流して実験を行う。ついでベンチトップのNMRで生成物を分析し、機械学習によって次の実験条件が提案される。このシステムを使って生成物の収率が2倍になった場合もあることから研究者らは、RoboChemを熱や電気化学反応へ拡大したいとしている。

 RoboChemで、冒険です。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 7.

DOI: 10.1126/science.adj1817

24.2.12

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ブロックチェーンは

 暗号通貨に関連するテクノロジーだが、バーチャルコンピューターのように動くため化学シミュレーションもできる。これまで化学のルールをもとに合成経路を予測するソフトウエアを設計してきた研究者らは、このブロックチェーンを用いた [1]。2020年研究者は、自分達のプログラムを用いて、前生物学的な分子のネットワークができる様子を報告した[2]。さらに今回Allchemyというソフトウエアを、オープンアクセスプラットフォームであるGolemを介してコンピューターの分散型ネットワークと繋げて、以前と比べて処理能力を相当向上させた。ここでは高価なスーパーコンピューターにアクセスする必要はなかった。プログラムを実行した結果、9つの単純な出発化合物から110億以上の反応が提示された。結果は代謝のようなサイクルも含まれていたが、そのうちのいつくかだけが自己複製していると考えることができる。50年以上に渡り、高分子がなくて低分子だけで、代謝サイクルを成長させることができるかどうかの議論が続いてきた。この論文はその問題に解を与えているわけではないものの、その可能性を示している。

 ブロックチェーンについて、ブログにちゃんと書きました。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 6.

DOI: 10.1016/j.chempr.2023.12.009

[2] DOI:10.1126/science.aaw1955

24.2.11

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中赤外光熱(MIP)顕微鏡は

 可視光線を用いて、ある特定の化学結合のIR吸収が引き起こす温度効果が検出する。研究者らはこれを改良し、生体系でのリアルタイムイメージングを可能にした[1]。酵素の活性をイメージングするためにプローブを設計した。プロブは、酵素基質、ニトリルリポーターと自己集合部位からなる。ここでニトリルリポーターは、基質と生成物の間でスペクトルのシフトを引き起こす。自己集合部位は、ナノフィブリルに入り込み、生成物を酵素の近くに留めておく。生成物からのシグナルと酵素の活性の間に相関がある。さらにガン生物学に含まれるカスパーゼ-3とアルカリ性のホスファターゼを標的とした。スペクトルのピークは十分に分離していたことから、基質と生成物のための両方の酵素を同時にイメージできた。その結果、これまで20年間論文では仮説だった二つの酵素の協力を実際に観測することができた。今回のMIP顕微鏡では、蛍光と同様の感度で、蛍光染料に害を及ぼす光退色過程のような課題も避けることができる。さらに研究者らは今後、アポトーシスのような細胞プロセスに含まれる複数の酵素のイメージングをしたいとしている。

 中赤外に、気概を感じましたか。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 6.

DOI:10.1038/s41592-023-02137-x

24.2.7

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マイクロプラスチックは

 生じた場所から遠く離れた南極や富士山の頂上でも観測される。ただこれを理解できるモデルがほとんどなかった。その中研究者らは、違った大きさのマイクロプラスチックがどのように動くのかをモニターできる高速カメラを装備した装置を利用した[1]。球状のマイクロプラスチック、真っ直ぐなファイバーや様々な大きさの曲がったファイバーが空気中を落下する様子を撮影した。その結果、ファイバーと球状プラスチックの体積が同じ場合でも、前者の方が落下速度は最大76%まで小さくなっていた。さらにこれらの値をモデルに入れ込むと、ファイバーの方がおよそ4倍程度大気中で浮遊していることもわかった。シミュレーションの結果は、球は地域的に分散し、ファイバーは地球規模で分散することを示していた。ファイバーの低速度は、これらのマイクロプラスチックが、広大な地平線をカバーするだけでなく、上昇気流によって高い場所まで浮遊することを意味している。マイクロプラスチックが光によって分解すると、その中の塩素や臭素も大気に放出されるため、オゾン層を破壊する可能性も指摘されている。

フィバーもだいびあるば〜。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 29, p. 5

DOI: 10.1021/acs.est.3c08209

24.2.9

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赤ワインを

 グラス1から2杯飲むと頭が痛くなる人がいる。これはブドウの皮に含まれるヒスタミンやタンニン、あるいは防腐剤として使われている亜硫酸塩が原因であるという説がある。それに対して今回赤ワインに豊富に含まれるブドウの皮由来のフラボノイドであるケルセチンが関わっている可能性が報告された[1]。研究者らは、ケルセチン-3-グルクロニドと呼ばれるケルセチンを同定した。この化合物はアルコール代謝アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)を効果的にブロックする。ALDH2が欠乏していると、有毒なアセトアルデヒドが体内に蓄積する。今回発見されたケルセチンは、酵素のおよそ78%を抑制するが、これはかなり大きな割合である。逆算してみると、グラス赤ワイン一杯はおよそ35%の酵素を抑制し、頭痛を引き起こすのに十分な効果である。現在この仮説の臨床実験も進行中である。ただし頭が痛くなる人とそうでない人がいる理由は未だに謎で、考えると頭が痛くなるかも。

 ケルセチン、いけるぜ ではないみたいです。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 15/22, p. 48

DOI: 10.1038/s41598-023-46203-y

24.2.8

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男性が避妊する新たな方法が

 開発された[1]。それは精管をブロックするヒドロゲルである。ヒドロゲルは、二つの液体を20分かけて注入すると出来上がる。一旦液体が混合すると、溶液が重合してゲルを形成、それが持つ孔が小さすぎて精液は通過しない。企業のプレスリリースでは、オーストラリアで23人の男性で試験をしたところ、インプラントを行なって1ヶ月経った頃、精液の量は99-100%減少していたこと、動物での研究ではゲルはおよそ2年間継続し、必要に応じて崩壊させることはできること、ただしこの点は人ではまだ試験をしていないことが述べられた。特許は、チオールマレイミドクリック反応によって交差連結したポリエチレングリコールゲルであることを示しているが、その化学自体は明らかにされていない。コメントを求められた研究者らは、ヒドロゲルインプラントによる細胞組織での的外れな反応や炎症作用を懸念している。ゲルを用いた同様のシステムは1970年代には登場、スチレンと無水マレイン酸の共重合体が開発された[2]。130人で試された[3]が、いまだに商業的には世に出ていない。反応基質を溶媒に溶かさなくてはいけないことや、使用後に身体をもとに戻すことができるかがわからない点が、課題である。

 インプラント、インクプリントとは違う。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 15/22, p. 9.

[2] DOI:10.1016/0010-7824(79)90052-0

[3] DOI: 10.4103/ijmr.IJMR_635_18

24.2.7

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分子シャトルは

 分子機械のコアとなる成分であり、基本的にはロタキサンが使われる。ロタキサンは、輪の形をした分子を車軸に串刺しにしたもので、輪が前後に動く。それに対して今回、全く違ったタイプの分子シャトルが開発された[1]。それは、長さ2.2 nm、幅0.7 nmの狭い分子箱の中を行き来する平面分子でできている。箱の二つの長い面は、それぞれの端にIr錯体が結合した多環芳香族化合物で、ピラジン分子が箱の短い二つの面に位置する。ゲスト分子は、箱の長い面でπ電子と相互作用する。核磁気共鳴実験は、コロネンのようなゲスト分子が箱の長さに沿って往復することを捉えている。箱の真ん中部分に嵩高いt-ブチル基があると、その動きは鈍くなる。0 °Cでは、1秒あたりおよそ13000回、前後に移動するが、-80 °Cでは1秒あたり30回に低下する。研究者らはさらにシステムを変更して、ゲスト分子が、化学的刺激や光化学的刺激で効果的に反対側に移動するシャトルをスイッチにしたいとしている。

 コロネンが動く、いい頃ねん。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 15/22, p. 8.

DOI: 10.1002/anie.202318829

24.2.6

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ノルウェー政府は

 ノルウェー海28万km2の調査的な深海採鉱を可決した[1]。これは物議を醸している事項に対して政府が許可を出した最初である。ノルウェー海北方の探索の結果は、海底にある鉱物は、マンガン地殻、硫化物の堆積物であること、それは高い濃度で銅、亜鉛、コバルトを含むこと、重要な希土類元素を含むことを明らかにしていた。今回政府は、ネバダ州と同じくらいの大きさの大陸棚を採掘企業が探索することを計画している。これは海底における鉱物堆積物の調査や少量の抽出、鉱物に含まれるものやその価値や作業の環境負荷の検証も含まれる。世界の他の地域での調査では、作業の間に堆積物がかき回されることによる生物多様性の喪失や、ヘルメットクラゲへの激しいストレスも報告されている。さらに研究者らは採掘がどのように深海の炭素貯蔵に影響するかにも関心を寄せている。国際海底管理局として知られている政府間組織は、31の探索許可を、民間企業や政府組織に出した。それに対して多くの科学者や複数の国や企業が、長期の影響が明らかになるまで、その禁止や一時停止を求めている。

 深海採鉱、心外な方も多い。

[1] Chemical & Engineering News January 15/22, p. 8.

24.2.5

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麻酔薬

 その作用する機構があまり明らかになっていない。その中今回麻酔薬の一つであるイソフルランを使って実験が行われた[1]。麻酔を施したメスのネズミは、ある程度反射を維持し、麻酔された状態にゆっくりと変化し、オスのネズミよりも素早く目が覚めた。このことと去勢した雄のネズミ、卵巣を除去したネズミで行った実験から研究者らは、テストステロンが目覚めの違いに影響すると結論づけた。テストステロンやその代謝物であるエステラジオールを与えた去勢されたネズミは、イソフルランの効果により繊細だった。対照的に、テストステロンをエステラジオールに変換する酵素をブロックすると、去勢されていないオスのネズミは鈍感になった。ついで脳全体のイメージングが可能である技術を使って、睡眠と内分泌系に作用する視床下部の一部の活動の性による違いを発見した。さらに人に関する意識を取り戻す実験の結果を確認すると、男性の方が女性よりも手をひねるような刺激に対して反応が鈍いことがわかった。ただし脳波を記録する方法(EEG)では、無意識の状態の違いをモニターすることはできなかった。これは人の視床下部が脳のかなり奥にあることや、麻酔薬の投与の際には、薬の代謝速度の違いやそれが鎮痛剤を含むことが関わっている可能性がある。

 麻酔されるとまずいことも、忘れるでしょうか。

[1] Chemical & Engineering News January 15/22, p. 7.

DOI: 10.1073/pnas.2312913120

24.2.4

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環境中にある毒や

 人の状態を簡単に読み取るための生物医学センサーや化学センサーを織物ディスプレーと組合せることができる[1]。帽子、T-シャツや他の衣類に施された刺しゅうがそれを可能する。研究者らは、市販の導線性の糸を、硫化亜鉛のリン光体とポリウレタンの薄くて均一な層でコートした。そうですか。異なる量の銅やマンガンでドープされたリン光体は、青、緑あるいは黄色の発光を示す。研究者らはまたシースルーなナイロン繊維を銀ナノワイヤーでカバーし、透明な導電性繊維も作成した。さらにこの繊維をT-シャツ、タオルや膝掛けにミシン縫いして多色の刺しゅうを施した。導電性繊維に120 Vの電圧をかけると多色の刺しゅうが明るく発光した。刺しゅうをした見本は、数千回折りたたむことや洗濯機で50回以上洗濯しても、その機能を失うことはなかった。今回の成果は実用性の点で優れており、機械による刺しゅうが、身につけることができるディスプレイーの実現をもたらすことが期待される。

 刺しゅうのこと、要旨集にもあるかなあ。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 15/22, p. 6.

DOI:10.1126/sciadv.adk4295

24.2.3

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アシネストバクター・バウマニー (A. baumannii)は

 多剤耐性を示す、WHOが最も関心を寄せる、致死的な菌である。それに対して研究者らは、ゾスラバルピンと呼ばれる大環状ペプチドが、リポ多糖体を外膜に移動するのをブロックすることを明らかにした[1]。脂質をシャッフルするタンパク質錯体は、バクテリアごとに異なっているため、今回のペプチドは、A. baumanniiにしか作用しない。またこれまでとは全く異なる機構で作用する抗生物質は、FDAが前回承認したそれから50年以上も経過している。なおA. baumanniiに作用する化合物に関する論文としては2論文目である。昨年、内膜から外膜へ移動する脂質を修飾したタンパク質を移動させる別の系を標的として、人工知能を利用してアバウシンが同定された[2]。アバウシンを発見した研究者によれば、個別の種を正確に標的とする抗生物質は、広範な効き目を示す抗生物質よりも、耐性を引き起こす可能性は低いとのことである。Roche社はすでに、ゾスラバルビンの臨床試験の第一段階を完了した[3]。それは安全で健常者では安全だった。

 老婆心ながら、アバウシンもいいかも。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 15/22, p. 6.

DOI:10.1038/s41586-023-06873-0 and 10.1038/s41586-023-06799-7

[2] DOI: 10.1038/s41589-023-01349-8

[3] DOI: 10.1093/ofid/ofad500.1749

24.2.2

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電気自動車の

 バッテリーでは通常、ニッケル–マンガン–コバルトカソード(NMC)が利用されている。ただその廃棄汚染が課題であるため、性能は低下するもののメーカーは、代替物としてリン酸リチウムを採用し始めている。その中、新しい有機カーソドが開発された[1]。ビス(テトラアミノ)ベンゾキノン(TAQ)である。これまでの有機カソードは低い導電性や電解液への溶解などの課題があったが、今回のTAQは、Coを使ったカソードよりも高い769 Wh/kgのエネルギー密度を示し、6分でチャージが完了する。2000回チャージした後のチャージ容量は70%程度に保たれている。TAQは二次元シート上にスタックし、それぞれのシートがカルボニル基とイミノ基の間の水素結合でお互いが連結している。リチウムイオンはTAQの平たいシートの間を、NMCカソードの場合と同様に、素早く移動する。さらに水素結合由来の圧倒的に強い格子構造がバッテリー電解液への溶解度をかなり抑制している。研究者らはこの技術の商業化に向けてスタートアップ企業を設立した。

 TAQとタッグが組まれた。

[1] Chemical & Engineering News 2024 January 15/22, p. 5.

DOI: 10.1021/acscentsci.3c01478

24.2.1

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